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中小零細工務店の経営実態と支援策に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)中小零細工務店の経営実態と支援策に関する研究. 古下 1. はじめに. 勝大. 1-3.工務店・中小零細工務店についての定義. 1-1.研究の背景と目的. 「工務店」という言葉について、木造住宅建築業者. 我が国の住宅では、依然として戸建て住宅の需要が. を戦後以降に工務店と呼ぶようになり、統計上戦後の. 高く半数を占めている。また戸建て住宅の多くが木造. 初期では現在で言う工務店は「大工」として計上され. 住宅在来工法にて建てられ、その多くを従来「工務店」. ていた 2)。後述する工務店のタイプについて、棟梁タイ. が供給してきた。現在では戸建て(木造)住宅の施工を担. プの工務店があるが、これが工務店の原点であり、以. う住宅生産者には、大手ハウスメーカーから工務店ま. 降様々な工務店が見られるようになっている。本研究. で大小様々な規模の事業者がいる。大手ハウスメーカ. では工務店と冠するものすべてを工務店と定義する。. ーについて、受注は請け負うがその後工務店の中でも. 次に、 「中小零細工務店」について、政府発表の定義. 比較的経営規模の小さい中小零細工務店への下請け・. では「新築住宅供給戸数が 50 棟未満の事業者」となっ. 孫請けを行っており、実質「中小零細工務店」の施工. ている。また中小工務店の中でも規模の大小があるた. シェア率は高い。しかし、社会情勢の影響もあり中小. め、本研究においては、50 棟未満の工務店を中小零細. 零細工務店に限らず、年々経営規模が縮小しており、. 工務店と定義する 3)。. 倒産・廃業に追い込まれるケースも増加しいている。. 2.住宅業界の現状考察. 住宅着工件数についても、平成 23 年度の住宅統計では、. 2-1.統計結果による考察. 新設着工件数は約 84 万戸と 2 年連続で増加したが、90. 住宅着工件数について、数年前の大幅な着工数の減. 年代から近年まで続いていた 100 万戸台に及ばない数. 少以降、東日本大震災直後は落ち込んだものの、住宅. 字である。住宅供給数が少なくなると、中小零細工務. エコポイントの駆け込み需要もあり 2 年続けての着工. 店はより一層淘汰される可能性がある。一方で、こう. 数上昇し現在約 84 万戸である(図 1)。また、来年の消. した社会情勢の中、未だに経営を存続している中小零. 費税増税を控え、それまでの間、着工数が上昇する見. 細工務店もある。. 込みである。更にそのうち戸建て住宅の新築件数は半. 本研究では、こうした中小零細工務店が如何にして. 数を占め、うち約 86.1%が木造住宅である (図 2)。. 経営を存続し、また、いかなる支援策が求められてい るのか、九州地区における年間建設数約 50 棟未満の中 小零細工務店を対象として、その経営実態を明らかに するとともに、それらが求める支援策に関する展望を 提示することを目的とする。. 1-2.研究の方法 第 3 章にて中小零細工務店の実態調査として、既往 研究(平成 18 年調査)1)で得られた九州地区の地場工務. 図 1-10 年間の新築住宅着工総戸数 4). 店に対して継続調査を行う。第 2 章及び第 4 章では統 計調査・文献調査を行い、住宅業界の現状考察・支援 の現状を分析する。また第 5 章.公的支援策の事例とし て、アンケート調査の予備調査として平成 24 年国土交 通省により発表・公募した「地域型住宅ブランド化事 業」の概要・調査結果を考察する。6 章では、すべての 調査から考えられる中小零細工務店の今後の課題につ 図 2-10 年間の新築戸建数に占める木造戸建の割合 5). いて考察する。. 39-1.

(2) 2-2.住宅業界の組織構成. 表 1-グループ分けの基準・振り分け結果. 業界における住宅生産者の組織編成について、大手 メーカー・パワービルダー・中小零細工務店で大きく 分類される。注文住宅系の建築会社には、ハウスメー カー(住宅メーカー)、工務店を組織するフランチャイ ズチェーン会社(住宅 FC)、ある程度の規模を持ったパ ワービルダー、主に地域に根差した工務店、自社で建 築家を抱える設計事務所(建築家)が存在する。工務 店について、1)着工件数もある程度の規模を持ち規模 の大きいビルダータイプ、2)フランチャイズチェーン (FC)に加盟する FC タイプ、3)ハウスメーカー等で営 業を積んで独立する営業中心タイプ、4)大工出身の棟 図 3-H23 年度営業実績によるグループ分類. 梁タイプ、5)1・2 級建築士を自社で抱えて工事だけで なく設計も積極的に行う設計事務所タイプ、などがあ る。歴史の長い工務店には棟梁自らが経営を行う棟梁 タイプの工務店が多い。. 3.中小零細工務店の実態調査 3-1.調査概要 中小零細工務店の経営状況・支援の課題を把握する ために、既往研究で行われたアンケート調査の継続調 査を行う。継続調査は、平成 18~24 年までの 6 年間で 図 4-A グループ細分化による分布図. の工務店の経営状態の変化、必要としている支援や支 援の実情の把握を目的としている。アンケート項目に ついては、6 年間での社会情勢の変化に対応し、経営概 要に加え、地域型住宅ブランド化事業の項目で得られ たキーワードをもとに一部変更してアンケートを行う。 アンケート調査の対象は、平成 18 年実施の九州地区地 場工務店へのアンケート調査による有効回答 138 社 (142 社のうち 4 社倒産)で、本調査ではそこから有効回 答として得られた 62 社を分析対象とする。. 3-2.調査結果. 図 5-分類グループの既往研究からの変化 表 2-「今後のビジネス戦略についての考え」の比較. 経営規模によるグループ分けの基準は既往研究同様 A~C グループにて分析を行った(表 1、図 3)。また本研 究では A グループ内での分布が多く見られたため、更 にフェーズ 1~3 で分析を行う(図 4)。まず経営実態に ついて、48 社(全体の 68%)が前回のグループからの変 化が見られなかった。一方、10 社(16%)で経営規模縮小 によるグループの下降、6 社(10%)で経営規模増大によ るグループの上昇が見られた(図 5)。また、今回のアン ケートでは新築の着工数に加え、リフォームでの年間 売上額,年間売上棟数の項目を設けた結果、比率の大き いところで新築,リフォーム合算での売り上げの約 85% をリフォームへとシフトしている工務店もあった。. 変化が見られなかったが、グループ A の工務店で「今. 次に、経営上の考えについて、 「今後のビジネス戦略. 後のビジネス戦略について不安を抱えている」が 28%. についての考え(表 2)」の項目では、全体的に大きな. から 35%への増加している。他方、B グループでは「現. 39-2.

(3) 表 3-「経営上の悩みについて」の比較. 状のビジネス戦略で十分にやっていける」と答えた工 務店が 40%から 53%まで上昇し、独自の優位性が期待さ れる。また、「経営上の悩みについての関心度(表 3)」 の項目では、全体で「顧客の獲得」が最課題であるの は変わらないが、 「後継者の育成」 「自社のデザイン力」 の項目も高い。グループ別分析では、B グループにて「顧 客の獲得」 「資金繰り」への悩みが 3 割減少しているの が特徴的である。. 3-3.調査の考察 以上、九州地区での中小零細工務店の経営実態の既 往研究との比較を踏まえての現状把握を行った。全体 の調査を通して、この社会情勢の中で倒産あるいは廃 業とならず未だ経営を維持しているところが多くある。 また横ばいだけでなく、6 年前よりも経営状態が良くな っている工務店も見られた。この理由として、独自の 競争優位性を確立すると同時に、支援組織への参加が 増えてきているのが要因となっていると考えられる。 現在、国産材・地域材に対する補助金等での公的支 援や長寿命住宅への公的支援を促しているが、我が国 の在来木造住宅を支えている工務店を対象とした支援 策が求められる。また、工務店同士のネットワークの 図 6-工務店の現状及び方策. ごとく支援の組織化が期待されている。このように工. 4-2.住宅フランチャイズチェーンへの加盟. 務店に対する様々な支援の内容についても様々な意見. フランチャイズチェーン(以下 FC)は、本部と加盟店. が見られたので、支援内容も多岐にわたることが考え られる。. から構成され、加盟した工務店は一定地域の独占販売. 4.中小零細工務店の方策. 権を獲得できる。加盟店は、経営に関しては独自で行. 中小零細工務店の現状について、中小零細工務店で. うが、商品管理は全て本部が行い、同品質の商品を同. はコスト面をはじめとする様々な問題を抱えており、. 価格で顧客に提供出来る。住宅 FC の場合、本部と全. 大きく①顧客の獲得、営業力の不足、②より安心、安. 国様々な地域の加盟店とで構成される。本部では、商. 価、高品質の建材仕入れルート、③資金繰り、④顧客. 品開発、資材・建材等の仕入れ、広告・宣伝活動を行. ニーズへの対応などがあげられる。パワービルダーに. い、加盟店に対し技術・営業・経営面で指導を行う。. よる廉価販売の影響で、価格と顧客の確保が出来ない. これらのノウハウを受け、各加盟店は顧客へ商品の提. 中小零細工務店は、倒産・廃業を余儀なくされるケー. 案・サービス提供が可能となる。. スもある。こうした倒産・廃業を回避するために、い. 4-3.独自の競争優位を確立. くつかの支援・類型が考えられる(図 6)。. パワービルダーが低価格を実現している一方、工務. 4-1.M&A による経営存続. 店ではやや割高なイメージが持たれている。中小零細. 国土交通省の発表によると、全国での建設業許可業. 工務店が競争優位を持つためには、パワービルダーと. 者数は平成 11 年の約 61 万業者をピークに減少して、. の差別化、工務店による独自性を発揮することが必要. 6). 現在約 48 万業者まで低迷している 。長引く不況によ. となる。具体例として、高いデザイン力・素材を用い. る消費者の住宅購買意欲の低下などを背景に経営状態. た住宅を設計する高価格帯住宅を専門とする工務店が. の悪い住宅生産者は苦境に立たされている。資金繰り. あげられる。またパワービルダーと同様ローコスト住. が厳しい中小零細工務店に対し、同業他社が吸収合併. 宅を実現する工務店・アフターサービスの徹底・顧客. という形で存続する M&A がみられる。M&A を行うこ. への手厚い情報発信やフォロー等も考えられる。. とで、経営は存続され、腕の立つ職人がいる場合など. 4-4.支援策の活用. の雇用も存続・特殊な技術(のれん)の継承が可能となる。. 39-3. 支援策は、様々な分類が可能であり(図 7)、その一つ.

(4) として、公的支援にて工務店等住宅生産者を対象とし. 5)政府による住宅生産者への多種多様な支援策があり、. た支援策がとられており、積極的に支援策を活用する. 支援策を活用することで棟数の確保・売上高への寄与. ことで補助等が受けられる。毎年支援事業に公募の定. も見込まれる。. 員を上回る募集があり、採択された際には各事業毎に. 今後は工務店単体として機能するだけでなく、同業. 補助金の交付が行われ、その補助金を含め建設を行っ. 他社との連携も視野に入れた活動や、また、多種多様. ている。. な支援策を有効活用していくことが経営を存続してい. 5.支援策の事例. く上で必要であると考える。同時に、木造住宅生産を. 5-1.公的な支援策~地域型住宅ブランド化事業~. 大きく担う中小住宅生産者へ、今後一層様々な支援を. 平成 24 年度、長期優良住宅・地域材の振興を目的と. 期待したい。. して「地域型住宅ブランド化事業」を公募・採択した 7)。 この事業では、一社毎ではなく、グループを組織し、. その提示した戸数に合わせて補助が受けられる。第 1 回公募では全国で 592 の応募があり、うち 363 グルー プが採択されている(図 8)。またブランド化事業のグル ープ内でも見られるが、こうした公的支援だけでなく、 支援組織を形成して情報を提供する企業支援も増えて. 図 7-支援策の類型. おり、工務店同士の連携を強めるための研究会も一部 で発足している。. 5-2.支援内容の類型 工務店に対する支援策を対象に支援内容の類型を行 う。支援事業のように、直接補助金等で工務店の住宅 供給をサポートする支援がある一方、ノウハウ,情報等 をレクチャー,コンペ形式にて中小住宅供給者同士を競 い合わせ受注支援を行う受注斡旋型という支援体系も 存在する。また、アンケート調査にて、工務店が必要 としている支援について、「デザイン力」「顧客獲得の ノウハウ」 「後継者育成」などがあげられ、育成塾と称 して支援組織内で後継者の育成、営業スキルのレクチ ャーなどを行っている例も見られる(表 4)。. 6 まとめ 本研究について、中小零細工務店の経営実態と今後. 図 8-地域型住宅ブランド化事業概要 8). 講じられるべき支援策について以下のようにまとめた。 1)中小零細工務店の中でも、顧客のニーズに対応し経 営状態が良好になっている工務店もあり、デザイン等 を含めた顧客に合う様々な「提案力」が必要となる。 2)今後、中小零細工務店のみに限らず住宅生産者は苦 境に立たされることが予測されるが、独自性を持って 経営を存続・改善していくことが求められる。 3)支援組織への参加が既に増加してきており、今後も 支援の内容によっては、組織団体への加盟を検討する 中小零細工務店が増えると判断される。 4) 中小零細工務店に対する支援には公的支援、企業支 援があり、支援内容は、金融支援型、建材確保型、デ ザイン主導型、市場情報提供型、受注斡旋型に分類で きる。. 39-4. 表 4-支援の類型と支援内容 9).

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