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博 士 ( 工 学 ) 田 家 史 郎

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 田 家 史 郎

学 位 論 文 題 名

ボ イ ラ 用 脱 酸 素 剤 マ ル ト オ リ ゴ 糖 の 開 発 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  ポイラを構成している鋼材は水中の酸素により腐食する。その防食には脱酸素剤として、

ヒドラジンや亜硫酸ナトリウムを添加する方法が行われるが、これらの脱酸素剤には種々の 問 題 が あ り 、 そ れ ら に 代 わ る 新 た な 脱 酸 素 剤 へ の 要 求 が 高 ま っ て い る 。   このような観点から本論文では、高温高濃縮ポイラ水の条件を再現し得るテストポイラを 試作し、それを用いてまず溶存酸素による炭素鋼の腐食挙動を調ベ、このような環境では、

特に微量酸素の除去が重要であることを明らかにした。ついで、新規脱酸素剤としてマルト オルゴ糖を提案して、それらの脱酸素能カと反応機構を詳細に検討し、新規脱酸素剤の開発 に至った経緯を述べたもので、8章から構成されている。

  第1章は緒諭であり、最近のポイラ事故の増大とその原因について述ベ、新しい脱酸素剤 の開発の必要性を強調した。すなわち、従来の脱酸素剤であるヒドラジンおよび亜硫酸ナト リウムについて述ベ、前者には発癌性物質の疑いがあり、後者には容易に酸化されて薬液の 濃度が低下し、煩雑な濃度管理が必要である等の問題点があることを指摘し、新脱酸素剤の 必要性を述べて、本研究の目的を明らかにした。

  第2章では、ポイラ水の実際環境の再現のため、新規テストボイラを試作し、それが独自 の水循 環方式や 伝熱方式を 持つこと を述ベ、 その詳細 な構造と 性能につ いて論じた。

  第3章では、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ケイ駿ナトルウムとを含み、電気伝導度 か (1,000〜4,000) 皿S'cm‥ 、pHが11.0 ‑,12.0の 高 濃 縮 ポ イ ラ 水 を 対 鍛 に 、温 度150℃ 以 上 、圧 力5k g*c m‑2以 上の条件下 で、酸素 の溶解挙 動を検討 した。

その結果、酸素の溶解度はポイラ水の温度と其に低下するが、塩類濃度およぴpHには影響 されないことが明らかになった。

  次 に 温度215℃ 、圧 力20k g'c m‑2に お い て、 高 濃縮 ボイラ水 中におけ る炭素鋼 の 腐食挙 動を調べ た。溶存酸素濃度が限界値(D OCri)の10肛g‑dm‑3以下では、腐食によ る鉄溶出量は極めて小さく、溶存酸素濃度により変化しないが、溶存酸素濃度がD OCri以 上になると、酸棄濃度並びに塩類濃度の増加に伴い、鉄溶出畳が増大し、かつD OCr;も低 下することが見いだされた。このように高濃縮ボイラ水中では、微量の溶存酸素によっても 腐 食 が 顕 著 に 生 じ る の で 、 脱 酸 素 処 理 が 特 に 重 要 に な る こ と が 示 さ れ た 。   第4章では、新規脱酸素剤としてマルトオルゴ糖を提案し、さらに合成法を開発した経緯 を述べた。マルトオルゴ蛸はグルコース(CaHル06)が脱水縮合した構造を有し、食品素材 とし利用し得るほどに人f本に対し安全であり、脱酸索能カも充分に大きく、水溶性であり、

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  友価に人手し得ることなど、脱酸索剤に期待されるマルトオルゴ糖の特微を論じた。さらに、

  コーンスターチのロ―アミラーゼ分解において、反応温度90℃で、反応時間を制御するだ けで、平均重合度(グルコース基の数)が異なる7種のマルトオリゴ糖が得られることを見い だ し 、 マ ル ト オ リ ゴ 糖 の 合 成 法 並 ぴ に そ れ ら り ン 酸 付 加 体 合 成 法 を 確 立 し た 。     第5章においては、平均重合度13.9のマルトオリゴ糖(MO)と溶存酸素との反応の生 成物を高速液体クロマトグラフイー並びにガスクロマトグラフイー/質量分析法により検討   した。まず、MOの酸化分解の程度はその量が多いほと大きくなるが、充分な酸素除去率を 得 る に は 、 グル コー ス基 数で 表し たMOの溶 存酸 素に 対す る添 加率(K=CG/C02) は2以   上が必要であり、またMOはグルコース基丶lモルあたり、1.1モルの酸素と反応すること   が明らかになった。さらに反応生成物は炭素数(C数)が6以下の17種のカルボン酸およぴ   C数6以下の2種のラクトンであり、それらの主なものはグリコール酸(C数:2)、乳酸(

  C数:3)、ジデオキシペンタン酸(C数:5)およびグリコイソ糖酸(C数:6)で、それらの   間 の 生 成 モ ル 比 は2.6:2.1:1.2:1.0で あ り 、 蒸 気 中 に は 微 量 のジ アセ チル   が検出された。

    次にこれらの実験結果を基に、マルトオリゴ糖の酸化分解機構の推論を試み、従来の見解   のように、各グルコース基間のグルコシド結合の開裂反応が起こる機構ではなく、還元末端   のグルコース基から順次分解される機構が合理的であることを諭じた。このとき、(A)グル   コース基が直接酸化分解して脱離する、(B)加水分解によルグルコース基のまま脱離後、酸   化分解される、という2つの過程が並列的に進行する機構が妥当であることを述ベ、このモ   デルによると、溶存酸素とグルコース基との反応割合や主要なカルポン酸の生成量(モル)が   説明できることを示した。また(B)の過程に比ベ、(A)で生成する有機酸の種類と量が少な   く 、 か つ 酸 素 反 応 量 っ ま り 酸 素 除 去 量 が 大 き い こ と を 見 い だ し た 。     第6章では、種々の重合度のマルトオリゴ糖とそれらのりン酸付加体を用いて、溶存酸素   に対する反応性を詳細に検討した。すなわち、重合度の増加と共に、酸素除去に要するマル   トオリゴ糖の量と生成する有機酸の量は減少するが、重合度が6以下では重合度の低いもの   ほど、生成した有機酸が脱炭酸して、逸散しやすくなり、一方重合度か大きくなると共に、

  臭気物質であるジアセチルは生成し難く、重合度が6以上では、ほとんど検出されなかった。

  また 、リ ン酸 付加体 にお ける 遊離 リン 駿の 生成 串は 重合 度13.9で100%であるが、重   合度の低下と共に減少し、5.9で最小となった。駿索除去に要するマルトオリゴ馳の量と   有機酸の生成量、ジアセチルの生成量等に及ばす重合度の効果は、第5章で提案の機構を基   に、(B)に対する(A)の生起割合が重合度と其に増大することやジアセチルの生成か重合度   の 増 加 で 抑 制 さ れ る こ と な ど か ら 、 合 理 的 に 説 明 し 得る こ と を 明 ら か に し た 。     この結果、水に対する溶解度が充分に大きぃこと、酸索除去畳に対するマルトオリゴ糖の   分解量すなわち有機酸の生成量が少ないこと、リン酸付加体から遊離するりン酸をマーカ―

  にしてオリゴ糖の濃度管理が容易であること、臭気の原因となるジアセチルの生成量が少な   いことの観点から、平均重合度14付近のマルトオルゴ糖のりン酸付加体が脱酸素剤として   最適であると結諭した。

    第7章では、給水条件が異なる2種類の実機ボイラにマルトオリゴ糖を適用して、その脱   酸素処理効果を確認した結果を述べた。何れの実機ボイラにおいても、マルトオルゴ繊の効   果は優れており、既存の脱酸素剤の問題点を解消する新規脱酸素剤であることが証明された

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こ と を 述 ベ 、 本 研 究 の 工 業 的 意 義 を 強 調 し た 。   第8章は、本研究の結諭であって、得られた結果を総括した。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ボイラ・用脱酸素剤マルトオリゴ糖の開発に関する研究

  給 水中 の溶 存酸 素 に起 因するポイラ 構成鋼材の腐食防止のために、脱酸素剤として、ヒ ドラ ジン や亜 硫酸 ナ トル ウムが使用さ れている。しかし、前者には近年、発ガン性の疑い が持 たれ 、後 者に は 化学 的に不安定で 、取扱が面倒であるなどの問題があり、これらに代 わる新たな脱酸素剤が待望されている 状況にある。

  本 論文 は、 マル ト オリ ゴ糖の還元性 、安全性、安定性に注目し、マルトオ1Jゴ糖の脱酸 索能 カと 反応 機構 を ボイ ラ水環境条件 下で詳細に検討し、汎用中・低圧ボイラ用の脱酸素 剤 と し て 、 マ ル ト オ リ ゴ 糖 を 提 案 す る に 至 っ た 研 究 結 果 を ま と め た も の で あ る 。   第1章 で は 、 本 研 究 の 背 景 、 従 来 の 問 題 点 、 本 研 究 の 目 的 に つ い て 述 べ て い る 。   第2章で は、 ポイ ラ水 の実 際環 境を 実験 的に 再 現し 得る新規テストボイラを試作し、そ の構造と性能にっいて諭じている。

  第3章で は、 高濃 縮ポ イラ 水条 件下 で、 炭素 鋼 の腐 食に及ぼす溶存酸素の影響を検討し て い る 。 溶 存 陵 索 濃 度が 限界 値の10皿g‑dm−3以 下で は、 腐食 によ る 鉄溶 出畳 は極 めて 小さ ぃが 、限 界値 以 上で 鉄溶出丑は増 大し、また塩濃度の増加とともに、限界値も低下す る の で 、 商 濃 縮 ポ イ ラ で は 、 脱 酸 素 処 理 が 特 に 重要 にな るこ とを 明 らか にし てい る。

  第4章で は、 温度90℃ で、aーア ミラ ーゼ によ るコ ーン スタ ーチ の分 解反 応 時間を制御 して、平均 重合度(グルコース基の数)が異なる7穏のマルトオリゴ糖を合成し、さらに、

それらのりン酸付加体の合成を検討し ている。

  ぬ5琶で は、 平均 重合 度13.9の マル トオ リゴ 蛸(MO) の反 応生 成物 を、 高 速液体クロ マト′ノラフイー並ぴにガスクロマトグラフイ一/質量分析法により、詳細に分析している。

その 鮎栄 、高 い酸 素 除去 率を得るには 、溶存酸素に対するMO(グルコース基数で表した)

の添m;* は2以上 で ある 必要 があ り、 またMOは グル コース基1モルあた.り、1.1モルの 酸索 と反 応す るこ と を明 らか にし てい る。 反応 生成 物は 炭素 数(C数) が6以 下の17種の カ ル ボ ン 酸 お よ ぴC数6以 下の2種の ラク トン で、 主な もの はグ リコ ー ル酸 (C数:2)、

乳酸(C数 :3)、ジデオキシベンタン 酸(C数:5)及びグリコイソ糖酸(C数:6)であり、

そ れ ら の 間 の 生 成 モ ル 比 は2.6:2.1:1.2:1.0で あ る こ と を 見 い だ し て い る 。   これらの 実験結果を基に、マルトオ1Jゴ糖の酸化分解機構を推論 し、(A)還元末端のグ ルコース基 が順次、直接酸化分解されて脱離する、(B)還元末端のグルコース基が順次、

加水 分解 を受 けて 、 グル コー ス基 のま ま脱 離後 、酸 化分解される 、という2つの反応が並

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人 明

浩 生

寛 和

真 昌

辺 田

尾 田

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列的に進行する反応モデルを提案し、これ によルマルトオリゴ糖の酸化分解反応の化学量 論を ほば 説明 し得 るこ とを 示 して いる 。

  第6章で は、 種々 の重 合度のマルトオリ ゴ糖のりン酸付加体の反応性を詳細に検討して いる。すなわち、重合度の増加と共に、酸 素除去に要するマルトオリゴ糖の量と有機酸の 生成 量は 減少 する か、 重合 度が6以下では 重合度の低いものほど、生成した有機酸が脱炭 酸して、逸散しやすくなり、一方重合度が 大きくなると共に、臭気成分のジアセチルは生 成し 難く 、重 合度 が6以 上では、ほとんど 検出されない。また、リン酸付加体における遊 離リ ン酸 の生 成率 は、 重合 度13.9で定量 的であり、マルトオリゴ糖の濃度管理に、リン 酸が マー カー とし て有 効な こ とを 検証 して いる 。こ の結果、平均重合度14付近のマルト オ リ ゴ 糖 の り ン 酸 付 加 体 が 脱 酸 素 剤 と し て 最 適 で あ る と 結 諭 し て い る 。   第7章で は、2種 類の 実機 ポ イラ にマ ルト オリ ゴ糖 を適用して、その脱酸素効果を確認 し、マルトオリゴ糖が従来の問題点を解消 する新規脱酸素剤であることを実証している。

  第8章は 結諭 で、 本研 究の 成果 を総 括し てい る。

  これを要するに、著者は、実際のポイラ水条件下におけ るマルトオリゴ糖の酸素酸化反 応 の機構を解析し、これを基に新゛規脱酸素剤としてのマルトオリゴ糖の開発に成功してお り 、工業化学の進歩に寄与するところ大なるものがある。

  よ って 著者 は、 北海 道大 学博士(工学)の学位を授与さ れる資格あるものと認める。

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