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博 士 ( 医 学 ) 鈴 木 貴 之 学 位 論文 題名 Integral role of TCF8 in the negative regulation of ● ● tumor ang10geneSlS

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 鈴 木 貴 之      学 位 論文 題名

Integral role of TCF8 in the negative regulation of      ●    ●

    tumor ang10geneSlS

(TCF8 の腫瘍血管新生における機能解析に関する研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【背景 と目的】 癌は心 血管系疾患と並び、人類の生命を脅かす疾患のひとつである。癌の 形成には、その中核となる癌幹細胞を含む腫瘍細胞に加えて、癌周辺の微小環境が重要な役 割を担 っている ことが 知られて いる。 中でも、 腫瘍血管新生は、l‑2mm以上の固形腫瘍の 形成には必要であり、腫瘍形成の重要な因子のひとつである。このため、腫瘍血管を標的と した治 療薬の開 発が望 まれてい る。現 在使用さ れている 抗血管 新生治療 薬である抗VEGF (Vascular endothelial growth factor)抗体、ベバシズマプは、抗癌剤と併用することによ り、大腸癌や乳癌をはじめとした臨床試験において、延命という一定の効果をあげている。

一 方で 、 例 えば 、 膵 臓癌 等 に おい て は 、腫 瘍形成 の後期に なるとVEGFに加えて 、bFGF (basic Fibroblast growth factor)などの他の血管新生促進因子が発現し、ベバシズマプ抵 抗 性 を 示 す こ と か らVEGF非 依 存 的 な 抗 血 管 新 生 療 法 の 開 発 が 求 め ら れ て い る 。   本学位論文では、腫瘍血管新生に関与する新規遺伝子の同定とその機能解析を目的とした。

中でも、転写因子TCF8 (Transcription factor8)に着目して、その腫瘍血管新生における 機能解析を進めた。

【 材料と手 法】  生 体内の血 管新生 部位にお けるTCF8の 発現レベルを解析するために、

抗TCF8抗体を使 用して 、ヒト病 理組織 を免疫組 織学的 手法により解析した。TCF8の血管 内 皮細胞 における 役割を 明らかに するた めに、siRNA法に よりTCF8の発 現を抑 制したヒ ト 臍帯静脈 内皮細 胞を使用 した。生 体外血管新生モデルには、マトリゲルを用いた3次元 培養系を使用した。細胞の浸潤能は、ポイデンチャンパーを使用したマトリゲルに対する浸 潤 アッセイ により 検討した 。TCF8の標 的遺伝子 としてMMPl (Matr故metalloprotease1) を 同 定 する た め に、 ル ア ルタ イ ムPCR法 によ るmRNAの 発現 解析と、 ク口マ チン免疫 沈 降 法 に よるMMP1の プ 口モ ー ター領 域に対 するTCF8の 結合を解 析した。 細胞・ 細胞外基 質 問相互作 用は、 接着アッ セイによ り検討 した。生 体内の 腫瘍血管新生におけるTCF8の 機 能を明ら かにす るために 、TCF8ヘテ 口欠損マ ウスにB16/F10メラノーマ細胞株を移植 す る腫瘍血 管新生 モデル系 を使用し た。結 果の解析 は、HEと 抗CD31抗体を使用した免疫 組織学的手法により行った。

【 結果】  ま ず、生 体内の血 管新生 部位にお けるTCF8の 発現を解析するために、乳癌や 肝臓癌、脳腫瘍をはじめとした病的な血管新生部位をもつ腫瘍組織と肉芽組織をはじめとし た比較的生理的条件下に近い血管新生部位をもつ組織に対する免疫組織学的解析を行った。

そ の結果、 腫瘍組 織の血管 内皮細胞 でTCF8が高 発現し ており、一方で、肉芽組織の血管 内 皮細胞に はTCF8の発 現がほと んどみ られなか った。 これらの結果から、TCF8は、腫瘍 血 管 新 生部 位 の 血管 内 皮 細胞 に 特 異的 に 発 現し て い る 遺伝 子 で ある と 考 えら れ た。

  次 に、TCF8の 血管内皮 細胞にお ける役 割を明ら かにす るために 、siRNA法によりTCF8 の発現を抑制したヒト臍帯静脈内皮細胞を使用して解析を進めた。まず、生体外血管新生モ

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デルであるマトリゲルを使用した3次元培養系における血管様構造を解析した。その結果、

TCF8発 現抑制 細胞は、 コント口ールと比較して血管様構造の形成が1.8倍程度亢進してい た こ と か ら 、 TCF8は 血 管 新 生 の 負 の 制 御 因 子 で あ る と 考 え ら れ た 。   血管新生には、血管内皮細胞や血管内皮前駆細胞の浸潤能の亢進や細胞・細胞外基質問相 互作用の変化が伴うことが知られていることから、これらの細胞生物学および分子生物学的 知見を得ることを試みた。ポイデンチャンバーを使用してマトリゲルに対する浸潤能を解析 し たところ 、TCF8の発 現抑制細胞では、コントロールと比較して2.5倍程度細胞の浸潤能 が 亢進して いた。 細胞の浸潤には、MMPと呼ばれる細胞外基質分解酵素が関与しているこ とから、これらに対して解析したところ、TCF8の発現抑制細胞では、コント口ールと比較 し てコラゲ ナーゼMMP1の発現が3.5倍 程度亢進 してい た。MMP1のプ 口モー ター領域は、

‑427bpと‑409bpにTCF8の 特 異的 結 合 配列 で あ るCACCTGを 有し て い たこ とか ら、これ ら の領域に 対するTCF8の結合を クロマ チン免疫 沈降法により解析した。その結果、TCF8 のMMP1プ 口 モー ター への直 接的に結 合する ことが明 らかとな った。 これらは 、TCF8が 血管新生の負の制御因子として機能することを支持する結果である。細胞・細胞外基質問相 互作用に関して、接着アッセイにより解析したところ、TCF8の発現抑制細胞では、コント 口 ールと比 較してI型コ ラーゲンゲルとマトリゲルに対する接着能が30%程度低下してい た。

  最 後に、生 体内の 腫瘍血管 新生に おけるTCF8の 機能を明らかにするために、野生型と TCF8ヘ テ口欠 損マウス にB16/Fl0メラノー マ細胞 株を移植 する腫瘍 血管新 生モデル実験 を行った。その結果、TCF8ヘテ口欠損マウスでは、野生型マウスと比較して形成された腫 瘍 が2.5倍 程度大 きかった。さらに、TCF8ヘテ口欠損マウスでは、腫瘍血管新生の亢進と 野生型マウスではみられなかった腫瘍の横紋筋組織への浸潤や肺転移がみられた。これらの 結 果 か ら 、 TCF8は 腫 瘍 血 管 新 生 の 負 の 制 御 因 子 で あ る と 考 え ら れ た 。

【 考察 】 腫瘍血 管新生 に対する 治療法と しては 、抗VEGF抗 体による 治療法な どが検 討 されているが、その効果は限定的であることも多く、新しい分子標的治療薬の開発が望まれ ている 。本学位 論文で 明らかに したTCF8が 血管新生を負に制御するという機能は、TCF8 を腫瘍血管に特異的に発現させる手法等により、腫瘍血管新生を制御できる可能性を示唆し て お り 、 癌 の 新 し い 治 療 法 を 確 立 す る 上 で 有 用 な 知 見 で あ る と 考 え ら れ た 。

【結論】近年の研究により、腫瘍血管をはじめとした腫瘍問質の作用が腫瘍形成に深く関 与していることが明らかとなってきている。本学位論文では、腫瘍血管新生に関与する新規 遺伝子と して転 写因子TCF8を 同定し 、その機能解析を行った。その結果、TCF8は、腫瘍 血管新生の負の制御因子であり、血管新生に関与している細胞の浸潤能をはじめとした多様 な細胞の機能制御に関与している遺伝子であると考えられた。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査

教 授    畠 教 授    瀬 教 授    川 准教授   演

山 鎮 次 谷    司 口 秀 明 田 淳 一

     学位論文題名

Integral role of TCF8 in the negative regulation of      ●    ●

    tumor anglogeneSlS

(TCF8 の腫瘍血管新生における機能解析に関する研究)

  学位論文は、rIyanscription factor8 (TCF8)と腫瘍血管新生の関連についてまとめられて い た。TCF8は腫 瘍血管 内皮細胞 に発現 しており 、血WVO、ex vivo、ならぴに血晒む〇に おいて血管新生を抑制していることが示されていた。

  質 疑応答は 、まず 、濱田淳 一准教 授よりTCF8の 発現レ ベルと機能の矛盾点に関する質 問があった。申請者は、本質問に対して、TCF8は腫瘍血管新生を抑制のために発現するが、

腫 瘍の著しい増殖のために腫瘍血管新生を抑制しきれていなぃという点を学位申請論文の 遺 伝子改変 マウス の結果を 引用する ことに より説明 した。 濱田淳一准教授からは他に、

VE ‑cadherinの発現レ ベルとTCF8の発現を 調節す る分子基 盤に対する質問があり、申請 者 は、前 者に関し ては、TCF8はVE‑cadherinの発現 レベルを 転写レベ ルでは 制御して お ら ず、VE‑cadherinの膜ー の移行 因子等の 発現を制 御する ことによりVE‑cadherinの細胞 内局在を変化させている可能性があると回答し、後者に関しては、TCF8.の発現を調節遺伝 子 として は、過去 に腫瘍 細胞でTGF‑pによ りTCF8が誘 導される という報 告があ ると回答 し た。つい で、瀬 谷司教授 より、Matrigelの主成分 に関す る質問があった。申請者は、

Matrigelに含まれる主成分として、細胞外基質であるラミニンとIV型コラーゲンを挙げた。

瀬 谷司教授はさらに、Matrigelに含まれる他の成分であるプラズミノゲンやアンジオスタ チ ン、VEGFとTCF8の関連に 関して 質問を行 い、」申 請者は プラズミノゲンやアンジオス タ チ ン とTCF8の 関 連 に関 す る 実験 結 果 や報 告 は な ぃが 、VEGFに 関し て は 、TCF8の 誘 導 には関与 してい ない点を 説明した 。さらにB16/Fl0メラノーマ細胞株以外の実験系にお け るTCF8と腫瘍 血管新 生の関連 と、本 研究の臨 床分野 への具体的な応用に関する質問が

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あった。申請者は、前者に対しては、他の系として、マウス肺癌細胞株であるLewis lung carcmomaに関する系があり、将来的に実験を計画している旨を回答し、後者に関しては、

TCF8をウィルスベクター等を使用することにより、腫瘍血管内皮細胞に特異的に過剰発現 させ、腫瘍血管新生を抑制して腫瘍を退縮されうることを説明したが、瀬谷司教授からその ための技術は充分に確立されておらず、現段階では困難であるという指摘がなされた。次に 川口 秀明教 授から、VEGFと大腸 癌をはじ めとした腫瘍血管新生の関連について質問があ り、申請者は両者には関連があり、実際に臨床分野では抗VEGF抗体であるアバスチンカ§

使用されていることを説明した。さらに血¥litro血管新生モデルにおける実験結果の解釈に 関しての質問に対して、申請者は既報により血管様構造の形成数と血管新生能に関しては相 関関係があるという点を説明し、TCF8の発現抑制細胞では、コントロールと比較して血管 様構造の形態が脆弱であることから、TCF8は血管内皮細胞の分化にも関与している可能性 を説明した。

  最 後に、畠 山鎮次教 授より 腫瘍の悪 性化とTCF8発現レベルとの相関関係に対する質問 があり、申請者は、脳腫瘍、乳癌、肝癌及び大腸癌においてTCF8の発現レベルを解析し、

これ らの腫 瘍血管内 皮細胞 にはTCF8は発 現しているが、腫瘍の悪性度との関連に対して は明確な結果を示すことができない点を説明した。また、R‑Rasの下流ではFocal adhesion kinase (FAK)やpaxillinなどが活性化されることが予想されるため、それらの細胞内局在 に関 する質 問があり 、申請 者は、学 位論文 を引用してTCF8はpaxillinの細胞内局在を変 化さ せる点 を説明し た。さ らに、TCF8の 細胞質 内におけ る機能 に関する質問とT細胞の 分化に関する質問があり、申請者は、前者に関しては、自身の別の論文を引用することによ りR‑Rasの活 性化因子 であるCalDAGIIIと の関連を説明し、後者に関しては、既報を引用 する ことに より、TCF8のホモ欠 損マウス の胸腺 において 、CD8+T細胞の分化異常がある ことを報告した。

  こ の論文は 、Cancer Research誌で高く評価され、今後の腫瘍血管を標的とした腫瘍の 治療法を開発する上で大きく役立っことが期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併 せ 申 請者 が 博 士 (医 学 〕 の学 位 を 受け る の に充 分 な 資格 を 有 する ものと判 定した。

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