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「特別固定費貢献額による全部原価計算」と固定費補償

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(1)

一49一

「 特 別 固 定 費 貢 献 額 に よ る全 部 原 価 計 算 」 と 固 定 費 補 償

ヘ ソ チ ェ ル の 所 説 の 検 討 *

河 野 二 男

1.序

新 し い 原 価 計 算 方 法 が 提 案 さ れ る 際 に 必 ず 比 較 の 対 象 と さ れ る の は 全 部 原 価 計 算 で あ る 。 西 独 の 原 価 計 算 論 の 発 展 の 経 過 を た ど っ て み て も そ れ は 例 外 で は な い 。 シ ュ マ ー レ

ン バ ッ ハ(E・Schmalenbach)が 経 営 の 価 格 政 策'及 び 内 部 的 経 営 指 導 の た め に 比 例 率 ま た は 限 界 原 価 の 必 要 性 を 主 張 し た 際 に は 勿 論 の こ と,シ ェ ア ー(J・Fr・Schar)の 「分 岐 点 の 算 定 」,ル ン メ ル(K・Rummel)の ブ ロ ッ ク 別 計 算(Blockkos七enrechnun9),

1950年 以 降 で は7ユ テ ッ ズ(W・S七epf)の 比 例 原 価 計 算(Proportionalkostenrechn‑

ung)や ク ロ イ ツ ア ー(Ph.Kreuzer)の 弾 力 的 計 画 原 価 計 算(FlexiblePlankosten‑

rechnung) ,ま た,弾 力 的 計 画 原 価 計 算 を 組 織 的 に ア メ リ カ 的 直 接 原 価 計 算 に 類 似 し た 方 法 で 展 開 し た プ ラ ウ ト(H.G.Plau七)の 「限 界 計 画 原 価 計 算 」(Grenzplankosten‑

(1)

rechnun9) ,さ ら に 段 階 的 固 定 費 回 収 計 算 の ア ク テ(K・Agthe).補 償 貢 献 額 計 算 を 提 唱 した リー ベ ル(P・Riebel),ヴ ェ ー ム(旺B6hm)や ヴ ィ レ(F・Wille)も 全 部 原 価 計 算 の 批 判 か ら 出 発 し て い る と い え る 。

キ ル ガ ー(W・Kilger)は 西 独 の 限 界 計 画 原 価 計 算 の 生 成 の 原 因 及 び そ の 原 理 に つ い て 表 示 し説 明 し て い る が,そ れ に よれ ば,理 論 的 基 礎(シ ュ マ ー レ ン バ ッハ の 限 界 原 価 理 論 と ル ン メ ル の ブ ロ ッ ク別 原 価 計 算)と 全 部 原 価 計 算 の 欠 陥(価 格 下 限 を 継 続 的 に 表 示 しな い こ と,利 益 分 析 の 際 の 評 価 の 誤 り,販 売 計 画 と利 益 計 画 の 際 の 意 思 決 定 の 誤 り,及 び 作 業 遂 行 計 画 ・方 法 計 画 の 際 の 意 思 決 定 の 誤 り)と に よ っ て 限 界 計 画 原 価 計 算

尊 原稿 受領1969年11月14日

(1)拙 著 「増補 ・改 訂 管 理 会 計 の基 礎 」65頁 〜73頁 。 商経 学 叢 第27号,拙 稿 論 文 「西 独 の限 界 計 画 原 価 計 算 論」

参 照 。

(2)

が 生 成 し,さ ら に こ の 限 界 計 画 原 価 計 算 を 補 完 計 算 に よ っ て 修 正 し よ う と し た も の が プ ラ ウ ト(且.G.Plaut)の 陞 路 分 析(EngpaBanalyse),や ヴ ェ ー ム ・ヴ ィ レ(H.H.

B6hmu.EWille)及 び リー ベ ル(P.Riebel)の 若 干 の 異 な る 種 類 の 補 償 貢 献 額 (Deckungsbeitragen)trこ よ る 原 価 計 算 方 法 と メ レ ロ ヴ ィ ッ ッ(K.Mellerowicz)や ア ク テ(K・Agthe)に よ っ て 提 案 され た 段 階 的 固 定 費 回 収 計 算 で あ る と し て,西 独 の 原 価 計 算 論 に お け る新 しい 原 価 計 算 方 法 の 位 置 づ け を 行 な っ て い る こ とか ら も 明 らか で あ る 。 しか る に,こ の よ うな 全 部 原 価 計 算 に 対 す る 強 い 批 判 か ら 出 発 す る 限 界 原 価 理 論 の 展 開 の 方 向 と は 別 に,む しろ 全 部 原 価 計 算 と正 面 か ら対 立 す る と い う の で な くそ れ を 修 正 す る 方 向 で,し か も 限 界 原 価 理 論 に 支 え られ た デ ィ レ ク ト ・コ ス テ ィ ン グや 補 償 貢 献 額 計 算 に 批 判 の 矢 を む け な が ら 多 元 的 目的 に 利 用 可 能 性 を 求 め る 原 価 計 算 方 法 の 展 開 が 企 図 され て い る 。 ム ン チ ェ ル(G.Munzel)の 修 正 全 部 原 価 計 算 や ヘ ン チ エ ル(EHenzel)

に よ っ て 提 唱 され て い る原 価 計 算 が こ れ に 属 す る と い え よ う。

2.ヘ ソ チ ェ ル 理 論 の 基 礎

ヘ ソチ ェル は1967年 に 「特 別固定費 貢献 額に よる全 部原価計算 」 と題す る論文 を発(2)

表 し,こ れ がにわか に注 目をあび論議 の的 とな ってい るが,と くに直接原価計算 論者や

(3)(4)

補 償 貢献額 計算 の主張者か ら活発に 論議 され,こ れ に対 してヘ ンチ ェルは反論 した。

こ こに検 討 しよ うとす るヘ ソチ ェル の提案 の出発 点は,従 来 の全 部原価 計算 におけ る 固定費 の配賦計算方法 の改善及 び直 接原価計算や補 償貢献額計算 におけ る固定費 計算や 価 格計算 等に対 す る批 判に あ る。す なわ ち,今 日の計算制 度の形態 はそ の本来 の 目的 で あ るべ き企業指導 の手段 と しての役割 りを果 しえな い欠 陥があ る とい う観点か ら,ヘ ン チ ェルは,「 固定費計算 に特 別 な意 味を与え るこ とに よって,意 識的 に補償貢献額 計算

に対 す る原価計算 の新 しい形態 を提 起 した」 とい うのであ る。

ヘ ンチ ェルは ,ま ず従来 の全部原価 計算に対 して,そ れが 「製 品の計算 に固定 費を含

(2)FHenzel,VollkostenrechnungrnitgesondertenFixkostenbeitrtigen,ZfBNr.8,1967.

(3}WM瓢nneLKamdieVollkostenrechnungdurchdenAusweis"gesonderterFixkostenbeitrage"geretted

w甑 還 撒i晶1瓢

1̲、 。、 。㎞ α,ix、 。s、enb。。、、gen,。lnew。 、、ere、,,11ungn、、。,iu、em

gleihnamigenAufsatzvonProf.Dr.F.Henze1,ZfBNr.12,1967.

KLorc』,Vo且lkostenrechnungmitgesondertenFixkostenbeitrtigen,EineweitereStellungnahrnezudem vonProf.Dr.F.HenzelvorgeschlagenenKalkulationsschema,ZfBNr.3,1968.

(4〕F,Henzel,̀̀VollkostenrechnungmitgesondertenFixkostenbeitrtigen",SchluβwortzuderStellngmamne vonW.Mtinne]zudemgleichnamigenAufsatz,ZfB38Jahr.Nr.2.1968.

F.Henzel,ErwiderungzuvorstehenderKritikvonB.Hecker,ZfB37Jahr.Nr.12,1967.

(5)F.Henzel,Vallkostenrechnung̲,ZfB1967,S。485.

(3)

「特別 固定費 貢献額 に よる全 部原 価計算」 と固定費 補償(河 野)‑51一

め る とい う問題性,す なわ ち,そ の配賦基準 量に よる比 例的配賦 の問題性 が最近 ます ま す問 われ るよ うにな った 。かか る固定費 の比 例化は一般 に可能 であ り意味があ るのであ

(6)

ろ うか?」 と問題 を投げかけ,さ らに補償 貢献額 計算 に対 しては,そ の主張者が固定費 の比 例化 を否定 し,固 定費 を含 めた製品 の計算 では ,固 定費 がた とえ ば賃金に比例す る(7)

とい うブイ クシ ・ンの もとで算 定 した総原 価は粗 悪に な る とい う理 由か ら,一 般 に固定 費 を計算 に含 めずに直接費 のみで計算 し,こ れ を販売収益 に比 較す るとい うが,売 上 高

く ラ

と直接費 との差額 としての補償額(Deckung)の 概念 が問題であ る とし,さ らに残余 原 価 の如何 ほ どの部分が,そ して結局,利 益 の如 何ほ どが価格を通 じて補償 され るであ ろ

(9)

うか と問題 にす る。 この観点か ら,ヘ ンチ ェルは直接原 価計算 の問題 点を次 の よ うに指 摘 しこれ を彼 の新 しい原価 計算 方法で あ る 「特 別固定 費貢献 額に よる全 部原価計算」 の 論拠 としてい る。

α)固 定費 が計算 に入 らないので,個 々の製品 ごとの固定費額が不 明で あ る。

(2)さ らに各製 品 の総原 価がわか らない。

(3)そ のために,各 製品か ら得 られ る利益 幅 もわか らない。

(4)さ らに半製 品 ・製 品の棚卸価額 も不 明であ る。

(5)変 動 費 ・固定費 の区分がはた して可能 であ るのか,そ こに は多 くの 自由裁 量が入 るのではないか,ま た時 間や経 費がかか るのでは ないか。

(6)補 償額(Deckung)と い う概念 に も問題が あ る。

直接原価計算方 法の これ らの問題点 は固定費計算につ いて観点 の相 異,換 言すれ ば計 算制 度におけ る固定費処理 をめ ぐる見解 の相異 にあ ると理 解す る ことが でき る。一 般に 完全 操業 の時期 におい ては固定費処理 の問題 は起 らな いが,景 気変動や 経済的構造変 化

(10)

と くに景気後退 の時 期 には,固 定費が企 業政 策に及ぼ す影響が問題 とされ る。

本質的 観点か ら景 気後退 に よる売上 高減少の際に,固 定費を含ん だすべ ての原価 を維

博 稿 「ヘ ン チ ェ ル 原 価 計 算 論 序 説 」 香 川 大 学 経 済 論 叢

{10}固 定 費 が 企 業 政 策 に 及 ぼ す 影 響 に 関 す る 論 文 と し て 次 の も の が あ げ ら れ る 。 H.Roeper,DerMythosderfixenKosten,1958.

KUhnU]lrich,PreispelitikundfixeKosten,1958.

Traub,W.undWildeH.,Liquidittit,Elastizitat,fixeKosten,1958.

0喝R.Schnutenhaus,DieEntauberungderfixenKosten.

{6〕Derele,a.a.0.,S.485.

(7}Derele,a.a.0.,S.485.

(8〕Derele,a.a.O.,S.485.

「Dekg」 と い う 概 念 は,既 に1923年 に 当 時 機 械 組 立 工 場 の 経 営 計 算 重 役 で あ 一)たPeiserが.「 機 械 組 立 工

場 に お ラ る 経 営 計 算 の 基 礎 」(GrvndlagenderBetriebsabrechnunginMasch'batalten)の 中 で 用 い

れ て し る 。 そ こ で 「Deckunglと は,売E高 に 生 じ た 直 接 支 出 を こ え る 売 上 高 の 余 剰 で あ る と 定 義 さ れ て い る 。

elbe,a.a.0.,S.(9)De492.

F.Hnzel,NeuereTendenzenaufdemGebietederKostenrechnung,ZfhF,1962 ,SS.351〜353.平 林 喜

第41巻 第3号 参 照 。

(4)

持す るか,ま たは経営 が市場状態 に適応す るために,一 時的 にあ るいは当分の間,固 定 費 を断念 す る ことがで き るか ど うか の問題提起 が価格政策 の重大 な論点 な ので あ る。換 言すれ ば,経 営 の弾力性が固定 費に よって阻害 され るか ど うか の理 解の問題な のであ る

(11)

が,こ れ につ いては対 立す る2つ の見解 があ る。

そ の一つ は,固 定費 の増大 が市場変動へ の硬直 ・非弾 力性及 び適応 可能性 の不足を招 来 させ る と確信 す るこ とは謬 論で あ るとい う見解 であ る。固定 費の大 きい経営 は,当 面 の支出を伴 うために流動性 に危険 を もた らす ような変動費 の小 さい経 営 よ りも,一 時的 に固定費 を断 念す ることに よって 大 幅 に 価 格引下げ を 行 な うこ とが で きる。 したが っ て,経 営 に とっては固定費は容易 に価格に対 して弾力的 であ る。

他 の見解 は,直 接原 価計算支持 者の一般的見解 で あって,設 備は大低 の場合に他 の生 産 のため に利用 しえ ないために 固定 費は生産 の弾力性 を弱め る。多額 の固定費 を負担 す る経営 は不景 気 の時期 におい て も継 続生産 しなけれ ば な らないの であ って,固 定 費を断 念す ることは実体損失 を招来す る。 これ に反 して,固 定費 は小 さ く変 動費が大 で あ る よ

うな経営 は,生 産制 限に よって市場 状態 の変化 に適応す るこ とが可能 であ りそれ に よっ て実体 損失 を回避す るこ とがで き る。 また,需 要 の構造 的変化の場合 に,他 の製 品の生 産 ・新製 品の生産に移 行す る ことが可能で あ り,経 営 に弾 力的適応 ㊧可能 性を与 え るこ とが で きる とい う見解 であ る。

直接原 価計算及 び補 償貢献額計 算は固定費が経 営 の内的 ・外的変 化に対 して非 弾力的 で あ るとい う理解 の も とで,原 価 を変動費 と固定 費 とに区分す る ことに よって価 格政策 的 ・企 業指導 的 観点 か ら,よ り有効 な原 価計算 シス テ ィムた りうる として生成 した もの であ るか ら,固 定 費 の非弾 力性 とい う理 解が前 提 とな ってい る。

原 価計算の一つ の任務 は,給 付や 用役 の生産及 び販 売に要す る費用を節減 す るとい う 企業 指導的 目的,あ るいは積 極的 な意味で価格政策 的 目的 として把握 し うる。直接原 価 計算や 補償 貢献 額計算 が これ らの諸 目的 に有 効 な手段 として形成 された と主張 され てい る。 しか るに,こ の方法 は企業指導的 役割 りは別 と して も,価 格政策的 手段 としては き わ めて多 くの仮定を含む計算方 法 であ る点に注 目すべ きであ る。

原 価計算を 企業資本維持 のため の原 価回収 の計 算手段 と して理 解す るな らぽ,全 部原 価 補償を達成 しうるか,し たが って,ま た最大 利潤を達成 しうる よ うな原価計算 シス テ ィムで なけれ ばな らない。固定費 の弾力性 に関す る前記2つ の見解 は,い ずれ も部 分原

〔11}F,Henzel,Vollkostenrechnung̲,a.a.0.,S.486.

(5)

「特別 固定 費貢献額 に よる全部原価 計算」 と固定 費補償(河 野)‑53一

価補償 を前提 とした 議論であ る。 したが って製 品の計算 に固定 費を含 め るか,ま た は固 定費 を排除 し補 償貢献額 計算 の立場 を とるか は別 の問題 であ って,そ れ は全部原価補償 か 部分原価補償か の問題 であ る。ヘ ンチ ェル の理論 は,直 接原価 計算及 び補償 貢献額計 算 を固定費補償 の観点か ら批判 し,さ らに また従来 の全部原価計算 を基 本的 に改革 し企 業指導 手段 として よ り有 効 な計算 方法た ら しめ ようとして提 唱 され た もの であ ると理解 す る ことがで き よ う。

3.補 償 貢 献額 計 算批 判

ヘ ンチ ェルは,全 部原価計 算の批判 及び補償 貢献 額計算 の批判 を論拠 と して 「特別 固 定費 貢献額 に よる全部原価計算 」を提 唱 した。そ の批判 点は既述 した ところであ る。 こ こで先 ず,ヘ ンチ ェルに よって明示 され た具体 的数値 に よる補償 貢献 額計算 の批 判を例

(12) 示 し た い 。

第1表 は 異 な る製 品A〜Eの 達 成 さ る べ き 価 格,変 動 費 及 び 補 償 貢 献 額 を 示 した も の で あ る 。 こ の 資 料 に よれ ば,補 償 貢 献 額 が そ れ ぞ れ 絶 対 額(第4欄),価 格 と の 割 合(第

5欄),変 動 費 と の 割 合(第6欄)で 表 わ され て い る 。

第1表

2 格働蝉

1ABCDE

200.00 100.00 150.00 100.00 250.00

3

48.751

20.00 50.00 20.00 40.00

41516

絶 対 額(単 位)価 格 と の 割 合%13と の 割 合%

151.2575.60310 80.0080.00400 100.0066.70200 80.0080.00400 210.0084.00525

製 品A〜Eの うち ど の 製 品 が 有 利 で あ るか を 補 償 貢 献 額 で 判 断 す る の で あ る が,し し,補 償 貢 献 額 が 絶 対 額 で あ る が,価 格 と の 割 合 で あ るか,変 動 費 と の 割 合 で あ るか に よ っ て そ の 順 位 が 異 な る こ と を ヘ ソ チ ェ ル は 指 摘 す る の で あ る 。 第4欄(絶 対 的 補 償 貢 献 額)で は,製 品Eが210.00DMで1位 で あ り,つ い でA,C,BDと な る 。 第5欄

(価 格 と の 割 合)で は,E,BD,A,Cの 順 位 で 第4欄 と異 な る 。 さ らに,変 動 費 と

(12}F.Henzel,Vollkostenrechnung.a.a.O.,S.487.

(6)

の割 合に よる順 位をみ て も 第4欄 とは異 な る(第5欄 と順 位は偶然 同 じで あ る)。 そ こ で,も しこの よ うな資料 を販売 指導者 が与え られ た とすれば,第4欄 の順位 に基 づ いて 処理 すべ きか,第5,6欄 の順 位 を根拠 に して処理 すべ きかが問題 で あ る。次に固定費

(13)

を顧 慮 し各製 品の利益 まで表示 す る と第2表 の よ うにな る。

第2表

A

格(DM)

費(DM) 補 償 貢 献 額(DM) 費(DM)

利益 と価格 との割合(%)

200 48.75 151.25 107.75 43.50 21.7

B 100

20 80 30 50 50

C D E

150 50 100 80 20

13.4

100 20 80 30 50 50

250 40 210 142 68 27.2

こ の 資 料 に よ れ ば,単 位 当 り利 益 で はE,BD,A,Cの 順 位 で あ るが,利 益 の 価 格 と の 割 合 か ら み れ ばBD,E,A,Cの 順 位 と な る 。 第1表 と第2表 とか ら 明 らか な こ と は,利 益 に よ る順 位 と補 償 貢 献 額 に よ る順 位 と は ま っ た く異 な る とい う こ と で あ る 。 こ の 点 に つ い て,ア ク テ は 各 製 品 の 固 定 費 強 度 が 異 な る た め で あ る こ と を 指 摘 し,段 階 的 固 定 費 回 収 計 算 が 企 業 指 導 及 び 価 格 政 策 に お い て よ り有 効 で あ る と述 べ て い る 。 こ こ で,ヘ ン チ ェ ル は,さ ら に 当 然 の こ と と して,個 々 の 製 品 の 収 益 性 を 判 断 す る た め に は 売 上 高 を 考 慮 しな け れ ば な らな い と して 第3表 及 び 第4表 を 示 して い る 。

第3表

ABCDE

間 一 原 変 動 費

195,000 180.000 550,000 80,000 80,000

固 定 費

431,000 270,000 880,000 120,000 284,000

単 位 当 り 原 価

変動費 個 定劃 総 額

48.75 20 50 20 40

107.75 30 80 30 142

156.5 50 130 50 182

補 償 貢 献 額 単位 当 り

605,000 720.OOO 1,100,000

320,000 420,000 合 計i1,・85,…ll,985,…1

151.25 80 100 80 210

卜,165,…1

(13)Derselbe,a.a,O:,S.489.

(7)

「特別 固定費貢献額 に よる全 銭原価 計算」 と固定費補償(河 野)‑55一

第4表 ABCDE

生産量 価格 売 上 高

販売量(単 位)1(DM)

4,…]20・:800,。 。。l

ll900

,000L9,0001001 11,00015σ1,650,㎜

1:濃騰1:1:1認1

156.5 50 130 50 182

壁 位当胎 計騒 巻

6・6・ …i43・5

50450,0001

1,430,00020 200,00050 364・OOO168

174,000 450,000 220,000 200,000 136,000

21.8 50 13.3 '50

27.2

舗3・,…1 4,25・,・ ・d

13,・7・,…1 1us・ ・…

製品Eは 単位 当 り利益 が68.00DMで 最高であ るが,期 間利益 は最 低で あ る。それ に 対 して,製 品Cは 単位 当 り利益は20.00DMで 最低で あ るが,期 間 利益 は第2位 で期間 補償 貢献額 は最高で あ る。 さ らに,製 品Bは 単位 当 り補償 貢献額 は最低 であ るが,期 間 利益 は最 高であ る。 この よ うにみ ると,5製 品 につ いて の判断 の基 準は,単 位 当 り絶対 的補償 貢献額,期 間 の絶対 的補償 貢献額,単 位 当 り絶対 的利益,期 間の絶対的 利益 のい ずれ を選ぶか に よって異 な る。そ のために,こ の計算 方法 は意思決 定を誤 らせ る結 果に な る と批判 してい る。ヘ ンチ ェルはその際に補償 貢献 額計算 の利用 可能性 として次の3

(14)

点を あげ てい る。

(1)若 干 の製 品を ロ ッ ト生産 してい る経営 で利用 され る。

(2)原 価種類 が多数 であ って,し か もプ ログ ラムが つね に変 化す る よ うな多品種 製品 生産経営 の場 合は 困難 であ る。

(3)典 型的 な注文生産 の場合は困難 であ る。

ヘ ンチ ェルは,補 償貢献額計 算を この よ うに理解す る立 場か ら 「特 別固定費 貢献 額に よる全部原価計算 」を提 唱す るので あ る。

4.特 別 固定 費貢 献 額 に よ る全 部 原価 計 算 の 本質

ヘ ンチ ェルの主 張す る 「特 別固定費 貢献額 に よる全 部原価計算」 は修正全部原価 計算く の

で あ るが,す べ ての原価 を原価 負担 者へ配賦 す る限 りでは真 の原価転 嫁計算で あ る。そ の計 算方法 は 「全 部原価計算 の新 しい種類 の形態 」で はあ るが,そ れ があ くまで も全部

{14}Derselbe,a.a.0.,S.492.

{15}Derselbe,a.a.0叩SS.493〜498.

(8)

原価 の計 算の枠 内に 位 置づけ られ る論拠 は,「 製 品の収益力 の 認識 のみが正 しい企業家

(16)

の処理 を導 く」 ことが でき るとの理解 の もとで,固 定 費を含 め た製 品計算が 当然必 要 で あ ると主張す るためであ る。 しか し,こ の計 算方法が伝統 的 な全部原 価計算 と異 な る点 は,原 価 を変動費 と固定費 とに区分 し.固 定 費を さ らに支出を伴 うもの と支 出を伴わ な

(17)

い もの とに区分 して計 算す る ことであ る。

この計算 手続を簡単 に述べれ ば,ま ず,直 接材料 費は 直接 に 原価 負担 者へ 賦課 す る が,そ の他 の原価 一 これ を企業維持費(Unternehmenserhaltungskosten)と 呼 んで い る はすべ て原価部 門 ごとに区分 して把握す る。個 々の最 終原価部 門に直接 に帰属 しえない原価,と くに 管理費 ・販 売費 は 部 門の月 当 り正常 作業時 間に よって 配賦 され る。 この最終原価部 門 の総原価 は作業時間 に よって給付 に配賦 され るが,変 動費(賃 金 +直 接材 料費以外 のそ の他 の変動費),支 出を伴 う固定費,支 出を伴わ ない固定 費に対 し,そ れ ぞれ 別 々の時 間率が適用 され る。

この方法 に よって全体 の原価が 把握 され ると共に,個 々の給付単位 に対 して発 生 した 支出を伴 う固定費 と支出を伴わ ない固定費が表 わ され る。 しか しこの計 算方法 の もつ最

大 の意味 は,か か る新 しい計算 に よって 伝 統的 全部原 価計算 と 同 じ結果 がえ られ るこ と,即 ち 同 じ総原 価が算定 され,一 ・層重要 な情報 を提供 し成 果あ る企業指導 を可能 に し うる と確信 してい る。 ヘ ンチ ェルが,彼 が提 唱 した原価計算 方法が企業指導 の効果的 な 手段 であ る と強 調す るのは このため であ る。'

したが って,伝 統的全部 原価計算 とヘ ンチ ェルの提 案す る 「特 別固定費 貢献額 に よる 全部原価 計算」 の方法 とが結果的 に一一致す るとい う点 が,こ の計算 方法 の特徴 で もあ る か ら次 に この点 につい て検討 し よ う。

q8)

第5表 は伝統的 全部原価計算(個 別)を 表示 した ものであ り,第6表 と第7表 とはそ

(19)

れ それ ヘ ンチ ェルの修 正全部原価計 算 の場 合の注文品Aの 計算を示 した もの であ る。

ヘ ンチ ェルに よれ ば,彼 の 「特 別固定費 貢献額 に よる全 部原価計算」 はj第7表 が示 す よ うに伝 統的全部原価 計算 の場合 と総原 価が等 し くな る とい う利点が あ るが,さ らに

(1⑤W.Mtinne1,a.a.O.,S.759.

全 部 原 価 計 算 に 対 す る 批 判 は 大 別 して 異 な る2つ の 方 向 の 原 価 計 算 シ ス テ ィ ム と し て 展 開 さ れ て い る と 思 わ れ る 。 そ の1つ は,原 価 部 門 や 原 価 負 担 者 へ の 固 定 費 の 配 賦 を 行 な わ な い も の で .直 接 原 価 計 算 や 補 償 貢 献 額 計 算 が こ れ に 属 す る が .こ れ も さ ら に ア ク テ や メ レ ロ ヴ ィ ソツ の 提 案 す る 段 階 的 固 定 費 回 収 計 算 と リ ー ベ ル の 直 接 費 計 算 と,さ ら に ヴ ェ ー ム ・ヴ ィ レ の 標 準 一 限 界 価 格 計 算 と に 細 分 す る こ と が で き る 。 こ れ ら の 方 法 の 本 質 は 従 釆 の 全 部 原 傾 計 算 の 本 質 と ま っ た く異 な る 部 分 原 価 の 計 算 に 求 め る こ と が で き る 。 そ れ に 対 し 今1つ の 方 法 は,そ

れ の 修 正 を め ざ す も の で あ っ て ム ンチ ェ ル の 提 案 及 び 本 稿 で 取 扱 っ て い る ヘ ン チ ェ ル の 提 案 と が 考 え ら れ る (18)F.Henze且,a.a.O.,S.495.

(19〕Derselbe,a.a.0.,S.497.

(9)

「特別固定 費貢献額 に よる全部原価 計算」 と固定費 補償(河 野)‑57一

第5表

A

1時 間 2時 間 番時間 跨 時 間

@3.80

@3.00

3.50 7.60 1.50

20.00

製 造 間 接 費

(直接賃 金の200%)

12.60 25.20 一般 管理 ・販 売間接費(製 造 原価 の200%)

57.80 14.40

工場 の 目標価格

72.20 11巫L 83.20

第6表

1 23

正 常 作 業..‑1時 間 労 働 当 豊 変 動 費

部 ㌦

間(月)1鮭

4

1時 間 労働 当 り固定 費

その他 小 計隣 讐 1蕎 難

5

2,000 10,000 6,000 4,000 10,000 2,000

3.ool

::il ::欝

・.・・1 2.00

1・00i O.80i O.80[

5.00 4.50 4.00 4.60 3.00 4.00

2.00 10.00 10.00 5.00 2.00 3.00

2.00 5.00 10.00 5.00 2.00 3.00

1時

小 計騰鋤 温

4.00 15.00 20.00 10.00 4.00 6.00

9.00 19.50 24.00 14.60 7.00 10.00

品A 第7表

陵 動 劃 離 幅 甕麟 釧 合

=

22

20.00 1時 間4.50

9.20 1.50

10.00 10.00 1.00

5.00 10.00 1.00

20.00 19.50 29.20 3.50

3巻 時 間35.20 21.00

16.ool

[

72.20 利 益(1時 間2.00)3巻 ×2

材 料 費 の20%利 益 と し て 計 上

7.00 4.00

目 標 価 格 83.20

(10)

そ の 上 に 価 格 政 策 や 時 々 の 市 場 状 態,競 争 状 態 へ の 適 応 の た め に も よ り有 効 な 計 算 方 法 で あ る と 強 調 す る 。 た と え ば,こ の 例 に よれ ば 目標 の 価 格 が83.20DMよ り低 い な ら

ば,利 益 が 達 成 さ れ る か ど うか が 示 さ れ る 。 危 急 の 際 に は,35.20DMの 変 動 費 ま で 値

(20)

下 げす ることがで きる。 す なわちJ35.20DMが 短期的 価格下 限で あ る とい う。 確か に,こ の方法 は市 場状態 の変 化に対 して弾 力的に適応 し うる点では,従 来 の全部原価 計 算 の場合 よ りも優 れ てい ると言え るか も知れ ないが,そ れ を もって補 償貢献額計算 を批 判 す る論拠 とはな らない と考 え る。次 に前 述の よ うに全 部原価計算 の場 合 と同 じ総 原価 が 算定 され るとい うこ とについては,後 述 す る よ うに ム ンチエル等 の厳 しい批判 の的 と な ってい る。 さ らに,こ こで変動費 であ る35.20DMが 短 期的価格下 限で あ るとみ るに は諸前提 があ る とい うことは既述 の ごと くであ る。

ヘ ソチ ェルは固定費 の処理 及びそ の補償 の重要性 を認識 し,企 業 資本維持 の観点 より 原価計算 の機能を把握 す るために,こ の例で,35.20DMの 変動費 まで値下げ しうるの は きわ めて危急 の一時的 処理であ り,近 い将来に操 業発展が期待 し うる場 合に限 られ る .と理解 してい る。そ のために,ヘ ソチ ェルは 月次計 算におけ る完全 操業,不 足操 業,超

過 操業 の各場 合におけ る固定費補償 の状態 につい て例示 し,特 に不 況及 び不足操 業 のた め の未補 償固定費が如何 ほ どの値で あ り,後 に どの よ うに回収 さるべ きか とい う計算 例 をあげ てい る。 前記 の資料 に基づ き,さ らに 正 常操業時 間を月 当 り34,000作 業時 間 と

(21)

仮 定 し,各 場 合 の 月 次 損 益 を 算 出 し て み る と次 の よ うに な る 。 完 全 操 業 の 場 合

加 工 に よ る 利 益34,000作 業 時 間@2.00=68,000 材 料 に よ る 利 益137,000の 仮 定 の も とで2%=27,400

益95,400 不 足 操 業 の 場 合

1.作 業 時 間 の 利 益29,800時 間@2.00

2.休 止 部 分 の 未 補 償 固 定 費(不 足 操 業 に よ る 損 失) 3.加 工 に よ る 超 過 利 益

4.加 工 生 産 材 料 の 利 益12,000の20%

=59 ,600

=‑58 ,000 1,600 24,000

25,9tCO

但O]Derselbe,a,a.0.,S.497.

(21}Derselbe,a.a.0.,SS.498〜500.

(11)

「特別固定 費貢献額 に よる全部原価 計算」 と固定 費補償(河 野)‑59一

第8表

フ ラ イ ス 盤

1正 常轡i鶏 響 陳 業劇 休1 "時間噛 灘 画 難

2,000 10,000 6,000 4,000 10,000 2,000

100%

80%

90%

60%

100%

100%

2,000 8,000 5,400 2,400 10,000 2,000

2,000 600 1,600

4。OO 15.00 20.00 10.00 4.00 6.00

134'… 29,8004.200

30,000 12,000 16,000

158'…

超 過操業 の場 合

完 全操業 の原価率 で計算す る。 そ のため に,発 生 した 固定費 が34,000時 間で既 に補 償 され て いる。前 記の一期間 で不足 操業 であ った3部 門,旋 盤,フ ライ ス盤,研 磨が 次 の期 間で120%操 業 が達成 され るとす る。そ の場 合に次 の ように原価超 過補償が達成 さ れ る。

超 過 時 間 時 間 当 り 固 定 費 2,00015.00

1,20020.00 80010.00 4.000

原価超過補償

30,000 24,000 8,000 62.00062,000 そ れ か ら 超 過 時 間 に 対 す る 超 過 費 用(時 間 賃 金 の25%)が 控 除 さ れ る 。

盤3.50の25%=O.875×2,000時 間=1,750

フ ラ イ ス 盤3.20の25%=0.80×1,200時 間=960

磨3.80の25%=0.95×800時 間=760

3,4703,470

益58,530

+2.00(時 間 当 り)の 計 算 利 益

全 体 時 間 数34,000+4,000=38,000x2.00=76,000

134,530 材 料 に よ る 利 益160,000の20%32,000

月 次 全 体 利 益166,530

(12)

ヘ ンチ ェ ル は こ の 計 算 方 法 の 長 所 を 次 の よ うに 列 挙 し て い る 。(22)

(1)正 しい 原 価 価 格 に 結 び つ い た 厳 密 な 原 価 計 算 を 行 な うか.市 場 に お け る所 与 の 価 格 の も と で 製 品 ま た は 注 文 品 の 販 売 に よ る 利 益 を 直 ち に 算 定 し う る 。

(2)た とえ ば 賃 金 に 関 連 し た 配 賦 率 に よ る い ま ま で の 配 賦 計 算 に よ る 誤 っ た 可 能 性 を 回 避 す る こ と が で き る 。

(3)支 出 を 伴 わ な い 原 価 と,短 期 的 ま た は 長 期 的 に 支 出 を 伴 う原 価 とを 区 別 す る こ と に よ っ て,価 格 政 策 や 流 動 性 計 算 に 対 す る必 要 な 基 礎 が 提 供 され,時 々 の 市 場 状 態 や 競 争 状 態 へ の 適 応 が 可 能 と な る 。

(4)企 業 老 に た え ず 操 業 度 を 示 し,不 足 操 業 度 の 危 険 と非 補 償 固 定 費 の 損 失 を 示 す こ とが で き る 。

(5)企 業 維 持 費 の 概 念 を 明 確 に し,価 格 を 通 じて そ れ の 必 要 な 補 償 を 行 な い 経 営 維 持 を 強 調 す る 。

(6)経 営 計 算 の 簡 単 化 に 役 立 つ こ とが で き る 。

こ の よ うな 長 所 を もつ と 自 認 す る ヘ ン チ ェ ル の 計 算 方 法 に 対 し て は,メ ンネ ル(W・

Mannel),ヘ ッ カ ・一(B.Hecker),ロ ル ヒ(KLorch)等 の 反 対 論 が あ げ られ る 。

5.ヘ ソ チ ェ ル 理 論 に 対 す る メ ソ ネ ル の 批 判

ヘ ンチ ェルが彼 の提 案す る修正 全部原価計 算は伝統的 全部原価計算 と結果的 に一致 す るとい う点につ いて,メ ンネル(W・Mannel)は それ は偶然 の一致 にす ぎない と批 判 し

(23)

てい る。 メ ンネルは,「 特別 固定 費貢献額 に よる全 部原 価計算 は古 い配賦計算 と同 じ結 果 を導 くとい う主 張のため に,ヘ ンチ ェルは一 例を 関連 させ てい るがそれは十分 に一 般

(24)

的 妥 当 性 を も つ べ き で あ る 」 と し,さ ら に,「 こ の2つ の 計 算 方 法 に よ っ て 同 じ結 果(総 原 価)が え られ る の は 偶 然 の 出 来 事 で あ る 。 ヘ ソ チ ェ ル に よ っ て 証 明 に 使 わ れ た 例 は,

(25)

彼が意識 的に望 ま しい結 果 の一致 をみ る よ うに構 成 してい る とみ な さざるを えない」 と

(26)

述 べ,具 体 的 に 次 の よ うに 問 題 点 を 指 摘 して い る。

ヘ ンチ ェルは第6表 で作業時間 当 りの原価構成 を示 してい るが ,こ れ に第2欄 の正 常

(22}Drselbe,a.a.O.,S.501

偉3)WlfgangMtinne且,KannleVollkostenrechnungdurchdenAusweis"gesonderterFixkostenbeitrtige"

Cl、)僻臨1寵 監もlf量.幅12'196乳SS●759〜78"

?5)Drselbe,a.a.O.,S.762 tZ6}Drselbe,a.a.0.,SS.762〜764.

(13)

「特別 固定費 貢献 額に よる全 部原 価計算」 と固定 費補償(河 野)‑61一

第9表

P 賃 金 間 接 劃 総 計

6.000 35,000 19,200 15,200 30,000 8,000

12,000 160,000 124,800 43,200 40,000 12,000

18,000 195.000 144,000 58,400 70,000 20,000

113,400392,000 505,400

製 造 間 接 費

賃 金 り209% 226,800

蕨舗 撰盛i

L99・…1

作業時 間に よる一般 管理 ・販 売費 の配賦

9,720 48,600

29,160 19,440 48,600

9,720 165,200

作 業 時 間 を 乗 ず れ ば,第9表 の よ うに 各 部 門 ご と に 月 次 原 価 が 算 出 され る 。 ヘ ン チ ェル に よれ ば 製 造 間 接 費 を た と え ば 直 接 賃 金 の200%と し て 計 算 し て い る の で,製 造 間 接 費 は226,800DM,一 般 管 理 ・販 売 間 接 費 は165,200DMで,間 接 費 合 計 は392,000DM に な る 。

しか し な が ら,一 般 管 理 ・販 売 間 接 費 を ヘ ン チ ェ ル に よ っ て 示 され た 配 賦 基 準 で 配 賦 す れ ば 第9表 の よ う な 数 値 と な る 。 これ を ヘ ソ チ ェ ル の 例 示 に よ っ て 個 々 の 部 門 へ 配 賦 され た 間 接 費 と比 較 す れ ば,金 具 部 門 で よ り多 く の 数 値 が 配 賦 さ れ る こ とに な り,こ の 点 に ヘ ンチ ェ ル の 計 算 方 法 の 一 つ の 欠 陥 が み ら れ る と メ ンネ ル は 指 摘 し て い る 。 ま た,

さ ら に10DMの 材 料 費 が 発 生 し旋 盤 部 門 の み で1注 文 品 が 生 産 され て い る と仮 定 ず る と,第6表 で 表 わ さ れ て い る原 価 率 を 基 礎 に し て い る第10表 は 伝 統 的 全 部 原 価 計 算(個

第10表

ヘ ン チ ェ ル に よ る全 部 原 価 計 算

1234)6

製 造 間 接 費

(製造 賃金 の200%) 管 理 販 売 費

(製造原価 の25%)

10.00 3.50

7.00 20.50

5.13

25.63

1.材

2.変 動 製 造 原 価(1時 間) 金3.50

そ の 他1.oo 3.割 当 固 定 費

支 出 を 伴 う10.00 支 出 を 伴 わ な い5.00

10.00

4.50

15.00

4.総 29.50

(14)

別)と ヘ ソチ ェル の計算 方法 との相異 を示 してい る。 したが って,メ ソネルは古 い配賦 計算 と同 じ結果を導 くとい うヘ ンチ ェルの提案 は妥 当性に欠け,し か もそ の計算 方法が 原価計算 の 目的に適 合 してい るか ど うかが論 じられ てい ない と批判 してい る。

ヘ ンチ ェルは ,生 産 プ ログ ラム分 析のために原則 として 「特別 固定費貢献額 に よる全 部原価 計算」が必要 であ る ことを立 証 しよ うとした。そ の論拠 は補償貢献額 計算 に対す る批判 か ら出発 してい る ことは既 述の とお りで あ る。 ヘ ソチ ェルは,「 製 品 と注文品 の 収益 力の認識は正 しい企業 処理 を保 証す ることがで きる。 しか るに,補 償 貢献額 計算 に よっては企業 の生産 プ ログラムに属 す る製 品種類 の収益 力につい ての適切な判断を下 す ことは 不 可能で また誤 った 決定を招来 す る」 として 補償 貢献額 に よる 意思決定を批 判く わ

し,さ らにそ の論拠 として,「 補償 貢献額 計算 に よってえ られ る 絶対 的貢献額,貢 献額 の価 格に対す る割 合,そ れ の変 動費に対 す る割 合は収益 力を表わす こ とがで きない し,

また貢献額 が利益 を含むか ど うか は判断 しえない。 さ らに,企 業家 がそ の処理に際 して 補 償貢献額 計算 を用 い て期間 または単位 当 りの絶対的 貢献額 の高 さで判断すべ きか,価

(28)

格 に対 す る割 合か,変 動費 に対 す る 貢献額 の割 合で 判断すべ きかが 問題で あ る」 とい う。

この よ うなヘ ソチ ェルの補償貢献額 計算に対 す る批 判及び彼 の提 唱 してい る計 算方法 に対 して,メ ンネ ルは,平 均原価計算 であ る給付単位 計算に対 し,し たが って問接費配 賦計算 に対 し鋭 く反対 し,「原価 計算 目的のために は 単位製 品利益 や 給付 単位 原価 の算 定は不必要 であ る。即 ち個 々の製 品種 類に対 して示 され る単位製 品利益 や期 間利益 は製

(29)

品 の収益 力を認識す ることがで きない。それ は任 意的 な間接費 配賦 の結果 であ る」 と述 べ ,こ の よ うな計算 的問題解決 のために補償 貢献額 計算 が生成 した根拠 があ る として,

そ のた めに個 々の プログラムには,特 別 にその生産 に よって 附加的に 発生 し生産 の中 止に よって回避 され る原価 のみ が賦課 さるべ きであ る。そ のために製品種 類にそ の直接 費 のみ を賦課 す る補償貢献額計算 が生成 したのであ る。 しか も,こ の計 算方法 は間接 費 の配賦 及び固定費 一比 例化 を行 なわない ために,間 接費 配賦基 準 の如何 に依存す る純 利

く   

益 よ りも補償 貢献額 が重要 な情報 を提 供 す る」 とい う。

これ に対 し,固 定費 は給付 の販 売に よって補償 され るため に固定 費計算が必要 であ る

¢7}F.Henze1,Vollkostenrechnung̲,a.a.0.,S.492.

¢8}F.Henzel,a.aLO.,S.488.

(29}W.Mtinnel,a.a.O.S.765.

⑬O;Derselbe,a.a.0.,S.766,

(15)

「特別 固定 費貢献額 に よる全 部原価計算 」 と固定費補償(河 野)‑63‑

(31)

とヘ ンチ ェルは反 論す るので あ る。 しか し,メ ンネル とヘ ンチ ェル との議論 はそれ ぞれ まった く異 な った観点か ら問題 を把握 してい ることに注意すべ きで ある。 メンネルは, 従来 の全部原価計算 とまった く異 な った方法 を と り企業 政策 とい う唯一 の原価計算 目的

を追求す るため に,原 価 負担者計算 とい う従来 の原価計 算 の主要 目的 を第2義 的 に考 え る。 これ に対 し,ヘ ンチ ェル は,補 償 貢献額計算 を も含め て今 日の計算制度 が,企 業指 導 の手 段 としての 役割 りを果た しえない 欠 陥が あ るとい う観点か ら,「特別 固定費貢献 額 に よる全部原価 計算」を提案 した とい う経 過か らみれ ば,当 然それ が有効 な企業指導 の計算手段 であ るべ ぎで あ るが,ヘ ンチ ェルの方法は原価負担 者計算 を第1目 的 として い る と考 えて よい。全部原価計 算的観点 の枠内で経営政策的 原価 計算機能 を方向づけ て い るにす ぎない と理解 し うる。

次 に,価 格政策 に関す る点で あ るが,メ ンネ ルは,ヘ ンチ ェルの計算 方法につ いて,

(32)

「ヘ ソチ ェルが 確信 してい る よ うに 価格政 策 と流動 性計 算に対す る基礎 とな らない」 と 結 論す るので あ るが,そ の論拠 を全部原価に基 づ く価格 政策に欠陥 があ る とい うことに 求 め る。 即ち,「 ヘ ンチ ェルの計算 は,そ の本質か らすれ ば真 の全 部原価計算 であ るた めに,こ の計算方 法に よれ ば全 部原価に基 づいた経済的に重要 な価 格政策的 ・販 売政策 的 意思決定が可能 であ る とい う見解 であ るが,全 部原価 に基づ く価格 計算は正 に風 変 り

(33)

な結果 を もた らすので適切で ない」 と指摘 し,さ らに 「全部原価 に基づ く普通 の価 格計 算 の根 本的欠陥 は,注 文や製 品 の価 格を孤立 させ,,そ れを全体生産 プ ログラムか ら遊離

(34)

させ販売収益 的考慮が ない こと」 であ る と リーベルの見解を 引用 し,メ ソネルは価格 政 策的 ・販 売政策的観 点か ら 全部原価計 算 及び ヘ ンチ ェルの 修正全 部原価計算 を批判す る。

さ らに,価 格 計算が実際 原価 に基 づ くな らば不 利な誤 った決定 を招来す る。相対 的に 低価格 の不 利な操業 の時期 に 「総原価+利 益額=価 格 」を固執 すれ ぽ高い要求 とな り, 他方好況時 におけ る総原価で の価格要 求は低 きに 過 ぎる傾向に あ る。 とくに多 品種 生産 経営 におけ る全部 原価 一価格 計算 の場 合に は特 に誤 った資料 を提 供す る ことにな る とい う。 メ ンネルに よれ ば 「原価+利 益額 」原則に よる価格政策 は市場 面 を考慮 して いない

el)Derselbe,a.a.0.,S.766。

億2)F.Henze1,ErwiderungzuvorstehenderKrinkvonB.Hecker,ZfBNr.12,1962,S.791, B3)W.Mtinne1,a.a.0.,S.773.

F.Henzl,Vollkostenrechnung̲,a.a.0.,S.501.

㈹W.Mlinn1,a.a.0.,S.769.

P.Rlebe1,DieMingelderVollkostenrechnung,in=Zeltschrift釦rB邑c』ha!tungsfachleute,1964,Heft' 1,SS,5〜9.

(16)

と批判す る。 価格要 求の基礎 とされ る 単位 製品原価 は 操 業度に依存 し,他 面,販 売数 量 ・価格 の関数 で ある とい う。 リーベルに よれ ば,全 部原価計算 に よっては決 して利益 最 適価格政策 を行ないえ ない。 しか もそれ は決 して一 義的 に長 期的価格下 限を決定す る

もので はない。短 期的観点で の原価的価格下 限は直接費計算 と補償貢献額 計算に よって 表 わ され る。 と りわけ,直 接費(Einzelkos七en)を 算定 し,固 定 費 と比 例費 とを分離す

(35)

る こ と は 短 期 的 価 格 下 限 の 算 定 を 直 ち に 可 能 に す る 。

そ の 点 に 関 し て,メ ソ ネ ル は 価 格 政 策 に 対 す る 補 償 貢 献 額 の 意 義 が 論 じつ く さ れ て い な い と し て,「 補 償 貢 献 額 計 算 や 直 接 原 価 計 算 の 信 奉 者 が,一 般 に 直 接 費(Einzelkos‑

ten)な い し 限 界 原 価(Grenzkosten)で 販 売 す る こ と が 正 しい と し て 固 執 して い る と 思

(36)

うのは誤 ってい る」 ので あ って,不 足操業 の時 期に おいては原価計算的 観点か ら必要 と あれ ば さ らに値下 げす るが,こ れ も短 期的観点 か らなので あ ると限定 す る。

だが,ヘ ソチ ェル の修正全部 原価計算 は,原 価を変動 費 と固定費 とに区分 し,固 定費 を さ らに支 出作 用性 に よって区分す るた めに,少 な くとも短 期的価格下 限を表わ し うる

とみ るむ き もあ るが,ヘ ンチ ェルの い う変 動費 と して表わ され た原価 は短期的価格下 限 を表 わ さない とメ ンネルは批判 す る。そ の理 由 と して,短 期的 には一 義的 に固定費 と し て特 色づけ られ る賃金を も変動 費 のカテ ゴリーに ヘ ソチ ェルが含め てい るために,ヘ チ ェルのいわゆ る変動費 は高い値 を と り緊急 の場合 には価格が短期的 にヘ ソチ ェルの変

(37)

動 費 以 下 に な る こ とを 意 味 す る も の で あ る とい う。 そ こ で,メ ソ ネ ル の い う実 際 的 原 価

的 価格下限 は,短 期的観点か らは リーベルの意 味に おけ る直接費を さし,生 産 中止 の際

(38)

には事実上除去 され る原価 であ る と主張 す る。

さ らに,メ ンネルは ヘ ンチ ェル の流動性計算 の点 に関 して,一 給付 の支出を伴 う変 動 費をそ の財務 的価格下限で あ る と規定す るこ とはで きない。財務的価格下 限は個 々の給 付 単位に対 して計算す ることは不可能で,全 体 量計算 において のみ可能 であ る。 と くに 多品種生産経営 にお いて流 動性を保証す るために,一 製 品が少 な くとも如何 な る価 格で 提 供 されね ばな らな いか の問題 は失 なわれ るとい う。 しか しメ ンネルの この思考 は平均

'㈲W .Mttnnel,a,a,O"S.770.

⑬⑤Derselbe,a.a.0.,S.770.

H.G.Plaut,Unteme』mungssteuerungmitHilfederVoll・oderGrenzplankostenrechnung,ZfB31 Jg.1961,SS.460〜482.

操 業 後 退 の 時 期 に お い て も,労 働 法 的 ・労 働 市 場 的 条 件 及 び 経 済 的 考 慮 か ら賃 金 は 固 定 費 で あ っ て 除 去 し え な い と メ ン ネ ル は み て い る 。 そ の た め に,ヘ ン チ ェ ル の よ う に 賃 金 を 変 動 費 と み て そ れ に 含 め る こ と は,変 動 費 の 値 が メ ン ヘ ル の い う変 動 費 よ り 高 く な る こ と を 意 味 し,そ れ だ け 弾 力 性 を 失 な う と メ ン ヘ ル は 主 張 す る 。 倒W.Mtinnel,a.a.0.,S.773.

(17)

「特別 固定 費貢献額 に よる全部原価計 算」 と固定 費補償(河 野)‑65一

単位 計算 の否定 に基 づ くもので あ るこ とを指摘 してお きたい。

次に,メ ンネルは経 営 の製品 がつねに計算 した価格で販 売 され る とい う仮定は実践的 経験 と矛盾す る。企 業指導 として決 してかか る非弾力的 価格政策を行 なわ ない 。 したが

って,ヘ ンチ ェルの基本的前提 は実際 に はほ とん ど満 され ない と指摘 して い る。

この点 に関 して,ヘ ンチ ェルはそ の反 論 と して,ま った く多 くの場 合に要求 さるべ ぎ 価 格は全部原価 に基づ いて算定 され,し たが ってそれ は当然固定 費 と利益額 とを含 んで

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い る として適用例を列挙 してい る。 さ らに,ヘ ソチ ェルに よれ ば,価 格が市場 におい て 与件で あ ると して もそ の価格 の妥 当性 が全部原価計 算に よって計 算 され た価格 との比較 に よって与え られ る。即 ち,所 与 の価格に よって何 が補償 され てい るか を知 るため にそ れが必要 であ る。利益 が発生す るか,固 定 費が補償 され るか,支 出を伴 な う固定費が補

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償 され る か,ど の 部 分 が 補 償 され る か を 判 別 す る こ とが 可 能 で あ る 。 そ の 際 に,ヘ ンチ ェ ル は 所 与 の 市 場 価 格 を 判 断 す る場 合 に,(1)不 利 な 価 格 で の 注 文 は 例 外 で あ る か,(2)不 利 な 価 格 が 如 何 ほ ど の 期 間 に わ た る か.(3)不 利 な 価 格 は 当 該 注 文 以 外 の 他 の 有 利 な 注 文

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の価格 に よって調整 され るか,の3点 が吟 味 されねば な らない と附 言す る。

ヘ ソチ ェルに対 す るム ンチ ェルの批判 の よ うに ,ヘ ソチ ェル の方法 は決 して非 弾力的 価格政 策 を志 向す るのでは ない。そ の理 由は,第1に 全 部原価計算 の修 正,第2に 全部 原価 に基 づ く提 供価格計算 が妥 当す る事 例が多 い とい うこ とを指 摘 して い ること,第3 に価格が所 与であ る場合 には,そ の価格 と全部原価 に基 づ いて計 算 された提 供価格 との 比較 を行 な うとい う点で あ る。む しろ,リ ーベルや ム ンチ ェルの ような補償 貢献 額計算 論者 の主張す る変動 費 または直接費 を価 格下限 と考え る価格政 策 こそ問題 であ る。

メンネルは最後に利益計 画 の点 に関連 してヘ ンチ ェル の意見 と対立す る。既述 の よ う に,ヘ ンチ ェルは新 しい計算方法 を用い て妥 当な簡単 な方法 で異な る操業 度におけ る期 間利益 が どの ように 予定 され るかを 明 らか に しよ うと した。 ヘ ンチ ェル の 方法 に よれ ば,各 経営 部門に おいて作業時間 当 り配賦率 の中に等 しい利益(こ の例で は2.00DM) が 算 入 され,し か も 投 入 材料 に 対 し 一 定 の 利 益 率(こ の例 で は20%)が 計 算 され て い

(39}ヘ ン チ ェ ル に よ れ ば.全 部 原 価 に 基 づ く提 供 価 格 の 計 算 が 妥 当 す る 場 合 と して,

1特 別 な 個 別 生 産 の 場 合,即 ち.建 物 ・架 橋 の 建 設,持 別 機 械 の 製 造,修 繕 工場.f工 業 生 産 。 2国 家 注 文 の 調 弁 価 格 。

3競 争 製 品 の 存 在 し な い 新 製 品 の 採 用 。 4新 し い 生 産 方 法 の 利 用 に よ る 新 製 品 生 産 。

FHenzel,  Vollkostenrechnung̲'t,Schluβwortzu̲,ZfBNr,12,1968,S.122.

(40}FHenze置,a.a、O.,S.122.

(41}FHenzel,a.a.O.,SS.122〜123.

参照

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