Bull.Fac.Educ.HirosakiUnit).57:47′‑55(Mar.1987)
青年男子の運動能 と体格 ・体力について
StudiesonPhisique,PhysicalFitness andMotorAbilityinYoungMen.
佐 藤 光 毅 *
KakiSato
(1986.12.18受理) 要 旨
青年男子 (年齢18才〜22才,32名)を対象に狩野運動能検査(20項 目), マ ッ ト運動の前転,体格(12項 目), 体力 (9項 目)を測定調査 (1984年, 6月) し,体格 ・体力と基本的運動能力について検討 した。
結果
1.運動不足が影響 していると推察 され る高体脂肪率,体力 と運動能のやや低い傾 向が指摘 された。
2.運動能 と前転のできばえ との相関 (r :‑ .723,p<.001)か ら,幼少年期におけ るいろいろな運動 経験不足が影響 してい ると推察 され る自分の体 と動作‑の理解不足が指摘 された。
これ らのことか ら,青年男子に対す る今後の体育的課題 としては,体力の向上 と併せて基本的運動の改善 をね らうよ うな内容,指導法等の検討の必要性が示唆 された。
Ⅰ 目的
最近,青少年の体格 と体力のアンバ ランスについて文部省体育局の 「体力 ・運動能力調査報告」や,全国 4).8),10),ll),14),16)
各地の報道機関その他に よって数多 くの指摘が有 る。
また,青少年の動作,行動には幼少年期のそれか ら発達せずにいる発達停滞者がみ うけ られ,増加傾向に 14)
あるといわれている。 この ことは,幼少年期において基本運動の習得が十分成 されていないままに成長 して 11)
きたのではないか と考え られている。特に, この傾向は,女子に多いことが指摘 され,男子にあって も50人 3)
に1人 ぐらいの割合で観察 され る。 しか し,青年男子の実態 の把捉や指導法等検討 された ものについてはあ ま りみ うけ られない。
以上の様な見地か ら,本研究は,青年男子の基本的運動能の習得状況 と,巧ち性 (マ ッ ト運動の前転)に ついて調査 し, これ らと体格,体力 との関連について検討 した。
Ⅱ 方法
対象 ;本学男子学生 年齢 18才〜22才,32名。
測定項 目 ; 1) 体格
身長,体重,周径 (胸軌 跡 乳 上腕囲,前腕乱 大陸目礼 下腿国).皮下脂肪厚 (上腕,肩甲骨下, 腹,大腿).
2) 体力
背筋九 握力,懸垂腕屈伸 (2秒に1動作),腕立伏臥腕屈伸 (2秒に1動作),立位体前屈,伏臥上
*弘前大学教育学甑保健休育科教室
DepartmentofHealthandPhysicalEducation,FacultyofEducation,HirosakiUniversity
48 佐 藤 光 毅 体そ らし,開眼片足立ち,垂直跳び,反復横跳び。
3) 基本運動能
17)
狩野運動能発達検査 (20項 目)0 2)
4) 巧ち性 (姿勢変化における身体意識) :マ ット運動の前転
前転の最 も良いと思われ るものを想定 し,出来 るだけそれに近い運動をするように指示。 4回の演技 7)
をVT Rで録画 し,個人内において最 も良いと判断 された ものを,石垣 らに よる前転の運動パ ターンの 分類に,「完成型」‑‑ 1点 ,か ら,「できない」・・‑・13点,の得点を与え, さらに,点数間を 「脚が まが る」,「脚が開 く」,「回転方向が左右にずれ る」な どの欠点にその程度に よって 「小」・‑‑0.25, 「中」
‑‑0.5,「大」‑‑0.75プラスして評価 した (実施者数は30名であ ったが,他の測定項 目の欠落等で成 績 としたのは,28名である)0
測定期 ;昭和59年6月。
Ⅲ 結果
1.対象の体格,体力の特徴
18) 対象の体格的特徴は,表1に示す ように身長172.4士4.83cnL,体重63.9士8.37kgで ともに 日本人の平均値
表1 身体計測値の平均値 と分布幅
豆 I S・D I Max. l Min.
身 長 C仇 体 重 kg
ロー レル指数 周 径 C7n
胸 囲 腹 囲
上 腕 囲 (左 +右/ 2) 前 腕 囲 ( 同 上 ) 大 腿 囲 ( 同 下 腿 囲 ( 同 皮 下 脂 肪 厚 耽れ
上 腕 肩甲骨下
腹 大 腿
上上 49023576211 257752737526872253 72429234111 378384861 11l152859914562242 774022723464
184.4 84.0 162.4 101.8 88.5 34.8 29.4 63.0 42.0
000075921222 701 005197日H 073347822361762243 00005856
169.4C仇,60.5kgよ り大 き く, ローレル指数が125.0士16.8と124.5ではば同程度にあ った.皮下脂肪厚の上
13) 1)
腕部 と肩甲骨下部か ら,長嶺,鈴木式(1964)に よ り体密度を求め,Bro蓋ek式(1963)に よ り体脂肪率を求め
13) 6)
ると14.6士3.24%で, これ までの本邦における文献値 (長嶺 と鈴木 11.52±5.57%‑‑1964,猪飼 と藤平田
9) 15)
ll.3%‑‑1967,北川 ら12.1士2.9%・・‑・1974,佐藤 11.0士4.7%‑‑1975)よ り高い値であった。
体力について体格 と同様に見てみ ると,表2に示す ように 日本人の平均値 よ り高い値の項 目は,腕立伏臥 腕屈伸 (36.5士12.3回と30回) と反復横跳び (49.9士4.2回と46.0回)であ り,握力は (47.7士6.0毎)同 じ 値で,他は低い値であったD
2.運動能について
図1に示 した検査項 目の内容の得点合計の分布は,表2に示 した ように10点か ら18点であ り,平均は15.2 士1.8点で,狩野が示す15才〜19才の偏差値 (以下偏差値 と記す)50の16点 よ り低い成績であ った。 また,偏 差値32の14.5点以下に10名が記錠 した。
表2 体力,運動能,マ ッ ト運動 「前転」の得点の平均値 と分布幅
支 I S・D
背 筋 力 kg 握 力 (左 +右/ 2) kg
懸 垂
腕 立 伏 臥 立 位 体 前 屈 cn 伏臥上体そ らし cn 開 眼 片 足 立ち 秒 垂 直 と び cn 反 復 横 と び 狩 野 運 動 能
マ ッ ト 前 転
( N
‑28)130.3 47.7 6.0 36.5 12.0 56.2 56.4 57.7 49.9 15.2 3.1
16.64 5.95 3.2 12.3 7.28 7.22 46.73 7.50 4.2 1.8 1.3
2 00243010359827617271751 00
粥38120495404一2
検査項 目
A 平衡機能をみ る
1.眼を閉 じて左右片足で立つ
2.両足をそろえて立 ち,身体を前に曲げ両手を 膝の間か ら足首の後を回 して前に組む 3.眼を開けて左右交互に爪先立ち,他の脚は膝
を直角に曲げる
4.手を膝の問を通 して床に支持 し,肘を曲げて 外側には り,両膝を肘の上にのせ,足を床か
ら離 して,体重を両手で支える
5.右足を伸ば し,右足や手を床につけ ることな く,左膝を曲げて,錘を腎部につけ,つ ぎに 平衡を失 うことな く立ちあが る
6.眼を閉 じて,左右交互に片足の爪先で立ち, 他の脚は膝を直角に曲げる
B 全身運動の協調をみ る
7. 7mの距離か らの投球を片手で受ける 8.その場で とび上 りなが ら空中で手を2回た
たき,同時に両足を1回打合せ,両足を20 C珊以上離 してお りる
A
9.直径40C冊の円内で両足をそろえてとび上 って 左 または右へ360度回転 して円の外へ出ない よ うにお りる
10.地上70cnのなわを,両足をそろえその場で と び こえる
ll.地上 1mのなわを,両足をそろえその場でと び こえ る
12. 7mの距離にある25×25C流の的に ゴムま りを 投げつけ る
C 手指運動の協調をみ る 13.棒反応速度 2lc7n〜40C7n 14. 12C7n〜21C仇 15. ‑12cn 16. タ ッ ピ ン グ 100〜199打/分 17. 200〜299打/分 18. 300打〜/分 D 分離運動, または模倣運動
19.拳で膝をたたき掌で膝を さする,実験者の模 倣をしなが ら左右交互にお こな う
20.拳で睦をさす り,掌で膝をたた く
C D
riiiiiiiiiiiiiiiii
1 2 3 4 5 6 7 8 9
冗 L 冗 L 冗 L
検 査 項 目 番 号
10 1112 J3 14 15 16 17 18 19 20 註),氏;石
L;左 図1 狩野運動能発達検査項 目と項 目別合格率
50 佐 藤 光 毅
次に,図1に示 した この運動能 テス トの項 目別合格率についてみ ると,特に低 いのは, 6番 の限を とじて 片足 の爪先で立ち,他の脚は膝で直角に まげ10秒保持 が,右で1名,左で2名合格のそれぞれ3.1,6.3%の 合格率であ ったo次 いで,9番 の直径40C硯の円内で,両足をそろえて跳びあが って,左 または右へ360度回 転 して円の外‑ 出ない よ うにお りるが, 6名合格18.8%の合格率であ った012番 と18番 の 7mか らのボール の的あて, タ ッピングの1分あた り300 回以上が同率で13名の40.6%であ った。
3.前転ので きばえについて
観察 された運動パ ター ンの分布状態は,図2に示す よ うに2点か ら8点であ った。準完成型の2点台には 7) 40%,かかえ こみ型 の3点台には50%を示 し,平均値は表2に示す よ うに3.1士1.3点であ った。石垣 らが不 成功型 としている 5点以下に 2名が観察 された。 また,不十分 な動 きとしては,回転運動中に足が開 く8名,
点 型 1、完成 型
2、準完 成 型 3、かかえこ■■み
4 、 幼 か 児 か 型 え こ み塾 ̲盈 二≡ 盈芸
題 を 姦
5、幼児 型 6、
か 足 か 保 持 え 型
こみ7、
か 手 か T E L え き 型
こみ8、幼 児 手着 き型
FlE):
幼 児
型か ら 上 が 成 功 を示す
前転 の
運 動 パ タ ー ン の 分 類(石垣ら1984)
2 3 4 5 6 7 8点 図2 マ ッ ト運動前転ので きばえの分布
背中がのび るが1名,回転方向不良1名,が観察 された。 これ らの ことは,今後,指導上の問題になると考 え られ る。
4.運動能,前転 と体格,体力 との相関につ いて 運動能 と体格 との相関は,腹囲 とrニ
ー0.396,有意水準5%の低い相関 係 数 が得 られ ただけで,前転 と体格 との相関 紘,統計的に有意な相関係数が得 られ な か った。
運動能 と体力 との相関は,表3に示す よ うに懸垂腕屈伸 とr‑0.388,p<0.05, 立位体前屈 とr‑0.496,p<0.01,上体 そ らしとr‑0.349,p<0.05,垂直 とび とr‑0.671,p<0.00 1,前 転 とr‑
‑0.723,p<0.001がそれぞれ統計的 に 有意であ り,前転 との相関が最 も高 く算
出された。
前転 と体 力 との相関は,運動能 と同様
表3 狩野運動能, マ ッ ト前転 と体力 との相関 狩 野 運 動 能
N‑32 マ ッ ト前 転N‑28
背 筋 力
握 力 (左 +右/ 2)
懸 垂
腕 立 伏 臥 立 位 体 前 屈 伏臥上体そ らし 開 眼 片 足 立ち 垂 直 と 反 復 横 と 運 動
びび能
o・337 十 o・372*
≡;………* 巨 …;…喜… 0.496** ト 0.344 0.349* 1 ‑0.545**
0.171 1 ‑0.071 0・671*** ト o・456**
0・216 l ‑0・301 l ‑0.723***
註):*,**,***;有意水準5%, 1%,0.1%を示す。
に表3に示 し,背筋力 とrニー0.372,p
<0.05,上体そ らしとr‑‑0,545, p<0.05,垂直 とび とr‑10.456, p<0.05がそれぞれ統計的に有意 であ った。
5.運動能の偏差値32(14.5点)を基準 とした体格,体 力の差異につ いて
運動能 の得点が15.0点以上 の者を Ⅰ群 (22名),以下 の者を Ⅰ群(10名)として, これ ら2群問の体格的特 徴につ いてみ ると,表4に示す よ うに 丑群 の平均値は,身長を除 いた他の項 目おいてI群 よ り高 く,中で も ロー レル指数 (134.4土18.0,120.7土14.7)と腹詞 (78.2土6.7C茄,71.3土5.2C茄)は,統計的に有意であ っ た (t検定に よってそれぞれ,p<0.05,p<0.01)。 この ことは,肥満傾向にあ るものは,運動能 力が劣 る 傾 向がある とい う一般的傾向 と同様にみ ることがで きる。 しか し,個別的にみ ると図3に示す よ うに, Ⅱ群
表4 狩野運動能14.5以上 (Ⅰ) と以下 (Ⅱ)の体格の比較
̲(I) N :22
Ⅹ S.D
身 長 C7n
体 重 軸
ローレル指数 周 径 cm
胸 囲 腹 囲
上 腕 圃 (左 十右/ 2) 前 腕 囲 ( 同 上 ) 大 腿 囲 ( 同 上 ) 下 腿 因 ( 同 上 ) 皮 下 脂 肪 厚 取木
上 腕 肩甲骨下
腹 大 腿 囲
132497517515872253 14039124111 528712552142 74692353
註):*,**;t検定に よる有意水準5%. 1%。
j I) N:10 X S.D 171.1 5.5 67.0 7.80 134.4 18.0
728413988647872253 l17414651111 870504563142 03974576
1.9
‑ 4.4
‑13.7*
‑ 3.6
‑ 6.9*♯
‑ 1.6
‑ 1.0
‑ 2.2
‑ 1.6
‑ 2.0
‑ 2.7
‑ 4.7
‑ 1.1
52 佐 藤 光 穀
ロー レル指数
●
平 均● ●●
● ● ● ●● ●
● ● ● ●●
̲… ̲̲偏 差 値 32
100 110 120 130 140 150 160 ロー レル指数
図3 ローレル指数 と狩野運動能の分布
の10名中1名 (○印)の ローt/ル指数は.97で比較的 「やせ型」である. このことか ら.観察は個 々の特徴 を把握す ることが重要であることを示唆 しているものといえる。
体力について,体格 と同様にみ ると.表5に示す ように Ⅰ群の平均値は.握力を除いて [群 よ り高 く,中 で も立位体前屈(13.5士6.9cn,8.0士7.2cn)と垂直 とび (60.0士6.9cn,52.7士6.len)は,統計的に有意で あ った (t検定に よってそれぞれ.p<0.05,p<0.01).
表5 狩野運動能14.5以上 (I) と以下 (Ⅱ)の体力の比較
̲(1) N :22
Ⅹ S.D ̲([)N:10
X S.D
背 筋 力 kg
握 力 kg
懸 垂 腕 屈 伸 回 腕 立 伏 臥 腕 屈 伸 回 立 位 体 前 屈 cn 伏 臥 上 体 そ ら し cn 反 復 横 と び 回 垂 直 と び cnE 閉 眼 片 足 立 ち 秒
604193098662265467114 3240242116643704671113 ***664353830401052177日H
註):辛,**;t検定に よる有意水準5%,1%.
Ⅳ 考察
本対象の体格は, 日本人の標準 よ り若干高いと言えるが, ロー レル指数が同程度で体脂肪率が高いことか ら,活性組織量 (除脂肪量)が体の大 きさに比べて少ないと考え られ る。体力は.今 日の 日本人の青少年が 文部省体育局の 「体力 ・運動能力調査報告書」等に よって指摘 されている柔軟性 と筋力の低下傾向が同様に み られた。 さらに, これ らを含めた他の項 目においても標準値 より低い レベルにあった。 この体の大 きさに
比べて活性組織量が少な く,体力が劣 っているとい うことは, 日常生活において身体運動量の少ないことが 起因 しているものと推察 され る。
運動能についてみ ると,運動能の成績の平均は,狩野が示す偏差値50の16点 よ り低 く,前転のできばえの 19)
低い レベルに10%,不合理な動作に10例が観察 された。 このことは永田が指摘 しているよ うに,今 日,児童 生徒について問題視 され るよ うにな った 「運動遅滞症候群」,すなわち,運動や行動が未発達のまま停滞 した 者の増加傾向ともみ うけ られ る。
運動能 と体格の相関は,腹囲だけが統計的に有意であった。 このことは,図3に しめす ように,概観す る と肥満体傾向の者が運動能が劣 るとい う一般的傾向と同様にみ られ る。 しか し,個 々に見 ると, ローレル指 数の最大値は162.4(身長165.4C洗.体重73.5kg,体脂肪率19.3%).最小値は97.6(身長179.lc7n,体重55.8 kg,体脂肪率10.4%)であ り, これ らの運動能の レベルは,13.0点 と10.0点でいずれ も劣 っていたC この様 に見 ると肥満体型傾向とともに痩身体型傾向であ って も運動能が低 くなる傾向にあるものとも考え られ る。
運動能 と体力との相関は,体格 よ り高 く中で も腕九 柔軟性,パ ワーとの相関が高 く,身体知覚能力 とし てみた基本的回転運動のマ ッ ト運動の 「前転」のできばえと体力との相関は,運動能 と体力 との相関 と同様 の傾向にあ った。 この ことか ら,運動能や前転運動に及ぼす体力の影響は十分考慮 されなければな らないと いえる。 さらに,運動能 と前転の相関は,‑0.723と最 も高い負の相関係数が得 られ,運動能の劣る者は, 体力的に も劣 り前転のできばえ (姿勢変化における身体意識) も劣るとい う傾向にあることが把握 された。
12)
これ らの ことは,図4に示す よ うに宮下が指摘 している運動不足の悪循環 と,加えて同国の⊂コ部に記 し
ゝ‑l■
「運 動 不足 」 → 「体 力 低 下」 ‑ 「体 力 向 上 をめ ざ して 運 動量 増加 」 → 「突 然 死 を含 む事 敬 の 発生 の増加 」 →
「運 動量 低 下」 ‑ 「運 動 不 足 」 → 「体 力 低 下 」 運 動 不足 の悪循 環 (宮 下1982)
班/j>年野 に お け るい ろ い ろ な運 動 の5経験 不足 → い ろ い ろ な運 動 が うま くで き ない 一 連 動 き らい (み ず か らス ポ
5)
→ 「運 動 不足 」 → ・ ・ ・・
図 4 青年期における運動不足に関連 していると考え られ る要因
た,幼少年期におけるいろいろな運動の経験不足に関連 した問題 として把握 され る。特に,前転のできばえは 16)
後者の問題,すなわち,身体意識に関連 し,佐藤が指摘 している自分の体 と動作‑の理解不足,知覚一運動 行動の組織化の欠如を意味 していると考え られ るCなお, この理解度 とできばえに関しては,今後,教科休 青のあ り方を検討する上で重要な事項になると考え られ る。
以上のことか ら,青年期に対す る体育的課題 としては,楽 しさや体力つ くりをね らった内容だけでな く, 基本的運動の改善をね らうよ うな内容,指導が必要 と考える。例えば,動 きのスキルや技能を高めるための 運動の具体的な内容や段階等を検討 し,明示 するC さらに, これについて十分な理解が得 られ るよ うな指導 と, 自ら問題を解決 させ るよ うな方向づけ等が必要であると考える。 また,特に顕著な運動停滞者について は,特別 クラスを設ける等の配慮が必要であると考える。先の引用文献 (19)のまえが きには 「差別」すべ きでないと述べ られているが,本対象の様な年齢では,個 々に合 った特別な指導の必要性が強調 され る。そ の方法については今後の検討が期待 され る。方向ずけについては,生活時間の改善の必要性,例えば,意図 的な身体運動の時間を組み入れ るな どが示唆 され る。
54 佐 藤 光 較
Ⅴ 括論
青年男子 (年齢18才〜22才,32名)を対象に,狩野運動能検査 に よ り基本的運動能の習得状況, マ ッ ト運 動の前転に よ り姿勢変化の身体知覚能力 (空間概念の把握状況) と体格,体力を調査 し以下の成績を得た。
1.体格は,身長172.4士4.83C7n.体重63.9土8.37kgで EI本人の平均値 よ り大 で あ り, p‑ レル指数は 125.0土16.8でほぼ平均 レベルにあ った。体脂肪率は,14.6土3.24%で本邦におけ るこれ までの文献値 よ り 大であ る。
2.体力は,今 日の 日本人の青少年が指摘 されている柔軟性,筋力の低下が同様にみ られ (立 位 体 前 屈 12.Oc7n,伏臥上体そ らし56.2cm,握力47.7kg,背筋力130.3kg), さらに,他の項 目において も標準値 よ り低 い レベルにあ った。
3.運動能 (20点満点)は,10点か ら18点 まで分布 し,平均は狩野が示す当該年齢の偏差値50の16点 よ り 低 く15.3士1.8点であ った。
4.前転のできばえ (石垣 らに よる運動パ ター ンに得点を与えた)は,かかえ こみ型の3点台に50%を示 し,低 レベルに3名,不合理な動作に10例がみ られ,平均は3.1士1.3点であ った。
5.運動能 と体格,体力,前転ので きばえ との相閲は,体格 よ り体力 との相関関係が高 く,懸垂院屈伸, 立位体前屈,上体そ らし,垂直 とび等 (0.388,0.496,0.349,0.671)に統計的に有意な相関係数が算出さ れた。
前転 との相関は,最 も高 くrニー0.723, p<0.001であ った。
6.狩野が示す運動能の得点偏差値32(14.5点)を基準に15点以上を Ⅰ群 (22名),以下を Ⅱ群(10名)に 分けて,体格,体力につ いてみ ると,体格では,運動能の劣る Ⅱ群は ローレル指数 (+13.7),腹 囲 (+6.9 cm)が統計的に有意 に高か った。体力では,I群は握力 (‑0.6kg)を除いて Ⅱ群 よ り優れ,中で も立位体前 屈 (+5.5cnt),垂直 とび (+7.3C耽)が統計的に有意であ った。
以上のことか ら,運動不足が影響 していると推察 され る高体脂肪率,体力 と運動能のやや低い傾向が指摘 され る。 また,運動能 と前転の相関か ら,幼少年期におけ るいろいろな運動経験不足が影響 していると推察 され る自分の体 と動作‑ の理解不足が指摘 され る。
従 って,青年男子に対す る今後の体育的課題 としては,体力の向上 と併せて基本的運動の改善をね ら うよ うな内容,指導方法等の検討の必要性が示唆 され る。
本論文の要 旨は 日本体育学会第36回大会 (岐阜大学,1985.10)において発表 したO 引用文献
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16) 佐藤 裕 (1980):「自分の体 と動作‑の理解」を深める,セルフ ・ケアの能力を どう育てるか,節 体育 Vol.50,No.10,ll,40‑45.
17) 労働科学研究所編 :労研 ・適性検査の手び き,労働科学研究所,1978,170‑2
0 0 .
18) 東京都立大学身体適性学研究室編 :日本人の体力標準値 第三版,不味堂出版,1980.
19) 運動遅滞研究全編 :小学生の運動指導◎ と くに遅れた子の伸ば し方◎,同文書院,1984.14‑16.