• 検索結果がありません。

石井脩夫 吉田稚子 本間豊彦

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "石井脩夫 吉田稚子 本間豊彦"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

一 654 一

品医大誌 48(5):654〜656,1990

上肢運動麻痺を伴った帯状庖疹の一例

A Case of Herpes Zoster with Motor Paralysis of the Upper Extremity

石井脩夫 吉田稚子 本間豊彦

東京医科大学麻酔学教室

 佐藤翌朝

 飯塚  亨  畑山  聖

和気陽一郎 近藤ゆかり

木下四大

はじめに

 帯状三二は水痘の治癒後に脊髄後根神経節に潜伏

していたVaricella−Zoster virus(以下V−Z virus)

が何らかの誘因によって活性化し,該当する神経支 配領域に限局性に発症し帯状庖疹後神経痛等の合併 症を呈するが,運動神経や交感神経を侵す場合もあ

る.

 本邦における報告では顔面神経麻痺を伴ういわゆ るRamsay−Hant症候群や膀胱直腸障害の合併例 が多く,その他の運動麻痺は比較的少ない.

 今回著者らは,左C8・Th1領域の庖疹とともによ

り広範囲に運動神経麻痺の出現した症例を経験:した ので若干の考察を加えて報告する.

症 例

 81歳,女性,身長147cm,体重45 kg.

 主訴:左C8・Th1領域の疹痛,庖疹.

 既往歴:高血圧.

 現病歴:平成元年9月■左前腕に水工出現,国

■頃より前腕から腋窩にかけ疹痛が出現したため皮 膚科を受診.鎮痛剤,アシクロビルの点滴静注等の 治療を行っていたが痙痛が増強したため紹介され当 科を受診した.外来にて星状神経節ブロック,鎮痛 剤内服にて経過観察中■より左前腕の麻痺が出 現,痙痛の軽減もみられないため入院となった.

 入院時所見ならびに治療経過:血液一般,生化学 検査,心電図および胸部レ線写真には異常を認めな かった.単純ヘルペス抗体価64倍,水痘帯状庖疹ウ イルス抗体価は128倍と高値を示した.

 入院後は洗魚のコントロールと交感神経ブロック を目的に硬膜外チューブをTh2〜3間より上方に 約5cm挿入固定し, C6〜Th、領域のanalgesiaを 確認後0.25%ブビバカイン4m1を一日3回注入し た.当初手関節,手指の屈曲伸展はほとんど不可能 であり,下垂手を呈し前腕の筋力,握力は測定不能 であった.筋電図では上腕二頭筋,擁骨手根屈筋背 側骨間筋はneurogenic pattarnを示した(図1).

上肢の筋の支配神経は上腕二頭筋C,C6 C7,三角 筋C、C5 C6,尺側手根屈筋はC7 C8 Th1,擁側手 根屈筋C6 C7 C8,背側骨間筋がC8 Thlであるこ とからC,C、 Th1が中心に障害されていた.庖疹に 痂皮が形成された後パリ通電療法,低周波療法,積 極的な筋力回復訓練を併用したところ右第1,2,3 指の筋力は徐々に回復したが第4,5指の回復は遅 れた.約一か月後,硬膜外チューブを抜去し,星状 神経節ブロックに移行,二か月後に麻痺は日常生活 に支障がなくなるまでに回復し,退院となった.退 院後は週2〜3回の星状神経節ブロック,パリ通電療 法,リハビリテーションを行い,現在握力は8kgま で回復している.痙痛はほとんどなく,庖疹痕の知

覚異常を認めるのみである(図2).

(1990年6月7日受付,1990年6月25日受理)

Key words:帯状庖疹(herpes zoster),運動麻痺(motor paralysis),神経ブロック

(nerve bloclO

(1)

(2)

1990年9月

石井他8名:上肢運動麻痺を伴った帯状庖疹の一例

一 655 一

〈針筋電図〉

入院時 退院後

第一背側骨間筋

1一細1小指鳩

÷一吟一一一一一罎サー一 一・tV・一一fift t尺側手根屈筋

〈誘発筋電図〉

右 19cm

22cm

66.9m/s左56. 9m/s 14. 5cm22. 5cm 42. 6m/s40. 6m/s

導出不可

図1

初 診

入 院

O. 5

1

退 院

2 3 4/M

アシクロビル XXX 500皿g×3

S. G. B

Con t,

 Epi

A. P

レーザー

握力(kg)

7/////7///////7/////////Z2

左   0

右  15

1////1////////////////////Z

7///1/////////////

 4 4.6 5   8

      14 癒 痛  10

o

図2 治療経過

考 察

 本症例は体分節運動麻痺であるが,V−Z virusが 知覚神経のみならず運動神経も侵すことは1866年 にBroadbentが報告して以来よく知られている.

運動神経麻痺はV−Zvirusが脊髄の後角より前角 と運動神経根に拡散することによって起こり1),庖 疹と必ず同側に認められるが症例の10〜20%は皮 膚の分節と一致しない.本症例ではC8 Th1に限局

した庖疹であったが筋電図所見ではC7 C8 Th1の

(2)

(3)

一 656 一 東京医科大学雑誌 第48巻第5号

障害と推測される.また初期は疹痛による運動制限 の可能性もあるが前腕,手指を動かすことはほとん どできず下垂手を示した症状からより広範囲の障害

があったと思われる.

 体分節性運動麻痺の発生頻度はThomasら2)に よると,帯状庖疹1210例中61例(5%)で,そのう ち上肢の麻痺は16例(1.3%)である.またGrant ら3>は101例中5例(21%)に認め,うち2例(2%)

が上肢の麻痺であったとしている.本邦における塩

谷ら4)の報告では949例中54例(5.7%)であり,う

ち24例(2.5%)に上肢運動麻痺を認めている.こ の様に体分節性運動麻痺の発生頻度は報告者により 異なるが,上肢運動麻痺は2.5%以下であり比較的

少ない合併症である.

 帯状庖疹と免疫について,八森5)は,潜伏期間中 に液性免疫では特異抗体が低値であるが存続し,帯 状庖疹発症後に特異的IgG, IgA, IgM抗体ので

きていることを本症の20〜80%に認めている.ま た,流血中の免疫複合体も50%以上に認められ,免 疫複合体の組織への沈着が帯状曲柱における組織損 傷の病因の一つであると報告している.さらに細胞 性免疫も発症に深く関わっていることは,白血病,悪 性腫瘍,免疫抑制療法などの細胞性免疫低下状態に おいて帯状庖疹の発生率が高いことでよく知られて いる.比喜ら6)はリンパ球幼若化反応,遅延型過敏 反応,抗体価について検索し,帯状庖疹痛の除痛に 費やした日数と,発症時低値であったリンパ球幼若 化反応が最高値となった日数には有意の正の相関を 認め,遅延型過敏反応の最高値とは逆相関を認めて

いる.また,抗体価との相関は認められなかったが,

皮疹が重症なほど抗体価は高く,ウイルス増殖が皮 膚のみならず所属知覚神経節でおこり,細胞性免疫 はウィルス増殖による細胞障害を抑制するように働 くのではないかと述べている.本症例においても抗 体価は高く,また高齢であったことから免疫能の低 下が推測され重度の運動麻痺を合併したものと考え

られる.

 運動麻痺の回復について予後は比較的良好であ り,50%〜70%の治癒率の報告が多い.しかし脊髄 の前角細胞や前根などへの損傷の強さにより永久的

麻痺が残ることもある.

 帯状庖疹に対する早期神経ブロック療法の利点

は,帯状庖疹後神経痛への移行を減少させるのみな らず,運動神経,脊髄などへの炎症性変化や局所の 出血,壊死などの改善,運動麻痺発生の予防,神経 変性の抑制などが考えられる.しかし,細胞性免疫 を補う一般的治療法が確立していない現在,皮疹が 重症で知覚神経や運動神経に対する障害の強い症例 には神経ブロック療法とともに抗ウイルス剤を併用 し,細胞障害を最小限に抑えるべきであろう.本症 例では外来にて投与せざるを得なかったためアクシ

ロビル5001ngを三日間用いたが量的には不足して

いたと思われる.

 疹痛管理がなされれば運動麻痺にたいして低周波 療法,パリ通電療法,筋力増強訓練などを早期に開 始し拘縮の予防が重要である.本症例では神経ブロ ックとともに種々の療法を併用し,退院時には患側 の把握は4.6kgまで回復し半年後の現在は8kgま

で回復している.

ま と め

 帯状吉凶に上肢運動麻痺を合併した症例を報告し た.体分節性運動麻痺の合併は比較的少ないが,永 久的麻痺を残す場合もあり早期の交感神経ブロック とリハビリテーションなどの併用療法が効果的であ

った.

文 献

1) Rubin D, Fusfeld RD:Muscle paralysis in herpes  zoster. Calif Med 103: 261n−266, 1963

2) Thomas JE, Howard FM: Segmental zoster

 paresis−a disease profile. Neurology 22: 459ns−466,

 1972

3) Grant BD, Rowe CR: Motor paralysis of the

 extremities in herpes zoster. J Bone Surg 43: 885

  一v896, 1961

4)塩谷正弘 他:帯状庖疹に合併する運動麻痺.ペイ  ンクリニック1;119〜126,1980

5)八森啓:帯状庖疹.小児内科19:87〜89,1987 6)比喜和夫,檀健二郎:帯状庖疹と細胞性免疫.ペイン  クリニック2:289〜298,1981

(別刷請求先 〒160新宿区西新宿6−7−1      東京医科大学麻酔学教室 石井脩夫)

(3)

参照

関連したドキュメント

⑥'⑦,⑩,⑪の測定方法は,出村らいや岡島

そこでこの薬物によるラット骨格筋の速筋(長指伸筋:EDL)と遅筋(ヒラメ筋:SOL)における特異

するものであろう,故にインシュリン注射による痙攣

閃 三 メ筋 ゾ肉 り色 シ素 例テ

⑫ 亜急性硬化性全脳炎、⑬ ライソゾーム病、⑭ 副腎白質ジストロフィー、⑮ 脊髄 性筋萎縮症、⑯ 球脊髄性筋萎縮症、⑰

鉄筋まで 15mm ※3 以下 鉄筋まで. 15mm

参加メンバー 子ども記者 1班 吉本 瀧侍 丸本 琴子 上村 莉美 武藤 煌飛 水沼茜里子 2班 星野 友花 森  春樹 橋口 清花 山川  凜 石井 瑛一 3班 井手口 海

その目的は,洛中各所にある寺社,武家,公家などの土地所有権を調査したうえ