保育者の語りにみる幼稚園における保護者支援 : 幼小連携に関する語りの分析
著者 田宮 縁, 池田 優, 鈴木 富美子
雑誌名 静岡大学教育実践総合センター紀要
巻 22
ページ 53‑62
発行年 2014‑03‑31
出版者 静岡大学教育学部附属教育実践総合センター
URL http://doi.org/10.14945/00007798
静 岡大学教育学部附属教育実践総合 セ ンター紀要 No22 p 53〜 62(2014)
〈 論文〉
保育者の語 りにみ る幼稚園における保護者支援
:幼小連携 に関す る語 りの分析
田宮 縁ネ池田 優 ‥ 鈴木富美子 **+
Educational Support for Parents in Kindergarten:
Analysis of Teachers'Narat市 es of Cooperation with Kindergartcn and Elementay School
Yukad Tamiya Masaru lkeda Fumiko Suzuki
要 旨
子 どもの基本 的生活習慣 の確 立 の背景 には、保護 者 の意識 や 姿勢 が大 き く影 響 す る。保護 者 が 「幼稚 園 の保護 者 ら しく J振 る舞 えるよ うになつてい くためには、一定の期間が必要 となるこ とを踏 まえなが ら、具体的かう丁 寧 な指 導 に加 え、環境 の変化 に よる子 どもの体験 の不足や 関係 性 の中で育つ子 ど もの 姿、 育 ちの過程 な どを鳥腋 的 な視 点 を もつて支援 に臨む こ とが重要 で あ る こ とが明 らかにな つた。
キー ワー ド 保護 者 支援 幼稚 園 保 育者 の語 り 幼 小連携 家庭 との連携 1 問題 と目的
(1)「 幼小連携」 につ いて
幼小連携 は、2008(平 成 20)年 1月 の 中央教育審議 会 の答 申にお け る生活 科 の課 題 に、 「小 1プ ロブ レ ムな ど、学校生活への適応 を図 ることが難 しい児童 の 実態が あ るこ とを受 け、幼児 教育 と小 学校 教育 との具 体的 な連携 を図 るこ と」 が指摘 され た ところか ら、研 究 開発校・研究指定地域以外 の幼稚 園や小学校 で も活 発 に動 き始 めてい る。
しか し、幼小連携 については、以前 よ り課題 とされ て いた。 例 えば、第 3の 教 育 改革 とい われ た 1971
(昭和 46)年 6月 の 中央教育審議会答 申 「今後にお け る学校教育の総合的 な拡充整備 のための基本的施策 について J(以 下、 「四六答 申」 )で は、 「 (1)4、
5歳 児 か ら小学校 の低 学年 の児 童 ま で を同 じ教 育機 関 で一貫 した教育を行 うことに よつて ,幼 年期 の教育効
果 を高 める こと」 と幼小連携 の元 とな る考 え方 と方 向 性 も示 され てい る。
さらに遡 るな らば、 日本 の幼稚 園教育 の礎 を築いた
倉橋惣三は、『幼稚園雑草』の中で次のように述べて
い る。
小 学校 と幼稚 園 との関係 とい うこ とについてい ろい ろの問題 が ある。 しか も、それ が今 日必ず し も理想 的 に滑 か に行 つて い な い 問題 で あ ります が 、
(中
略 )幼 稚 園 の時期 か ら小学校 の時期 に繋 つて い くとい うことは 当然事 実で あ りますか ら、
(中+)教 育学部学校教育講座
+・
)祥 *)静 岡市立東豊 田幼稚園
略 )幼 稚 園 の教育 は小 学校 の教育 に無 関係 、無頓 着 だ とい うこ とは 、 は な はだ奇妙 な こ とにな るの です。
(中III)し か るに往 々議論 が起 こつた とい うのは、 つ ま り幼稚 園 と小学校 の関係 をあま りに 区別 してい る ところか ら起 こって くる結 果 で あ り ま しょ う。実際問題 として、子供 の個人 の発達か らい つて も、あるい は子 どもの教育全体 か ら見通 していい ま して も、幼稚 園 と小学校 は教育的 に決 して離れ てい るもので はないので あ りますか ら、
今 よ りは もつ と結 び つ け る工夫 も され て いい と思 うので あ ります。
倉橋 は 「幼稚 園 と小 学校 の連絡 Jを 述 べた上 で、当 時 の コロン ビヤ大学 (原 文 の ママ )や シカ ゴ大学の 8 歳 まで の初 等教 育 の方法 につ いて解説 してい る。 この
『 幼 稚 園雑 草』 の初 版 (1926(大 正 15)年 、 内 田老 鶴 園か ら出版 )当 時 か ら、幼小連携 につい ては議論 が な され てい た。
四六答 申や倉橋 の持論 は、現在 の幼小連携 につなが る もので あ るが、微妙 に意 味合いが変化 してきている こ とも否 めない。
(2)幼 稚 園教 育要領 、小学校学習指導要領 にお ける 幼 小連携
1956(昭 和 31)年 に 刊 行 され た 「幼 稚 園教 育要
領 」
(以下、 「教育要領」 )で は、学校教育法におけ
る幼稚園の 目的 にあ るよ うに 「適 当な環境」が必要で
あ る とい う明確 な考 え方 は保 持 していた ものの、学校
田宮 縁・池田 優・鈴木富美子
教 育の中に位置づ け られて小学校教育 と一貫 した教育 の場に したい とい う意思 も強 くあ り、 「 6領 域」 を打 ち出 し領域の説明内容 が教科 をイ メー ジさせ るもの と な つて しま った (小 田,2003)。 ここで使用す る領域 とは、幼稚園教育の内容
(幼児期 に適切 な経験 )の 分 類 の視 点であ り、 「健 康 J「 社会 J「 自然」 「言語」
「音楽 リズム」 「絵画製作」の 6つ の領域がある。
さ らに、 1964(昭 和 39)年 告示 の教育 要領 で も、
領域 ごとではな く、 「総合 的 に指導 」す るものであ る とい う考 え方は述べ られていた ものの、 6領 域 の考 え 方 がそのまま引き継 がれてお り、教育現場では、小学 校 教育 と同 じよ うに領域別 に指導 してい る実態があつ た。加 えて、領域別の指導書 も刊行 され、矛盾 を抱 え た形で幼小連携が進 んでいった。
現行 の 「 5領 域 」の教育要領 は、 2回 の改訂 を経て い るが、 1989(平 成 元 )年 に改訂告示 された教育要領 の考え方 を踏襲 した もの となつてい る。 5領 域 とは、
心身の健康 に関す る領域 「健康」、人 とのかかわ りに 関す る領域 「人 間関係
J、身近 な環 境 とのかかわ りに 関 す る領 域 「環 境 」 、 言葉 の獲 得 に 関す る領 域 「言 葉 」及び感性 と表現に関す る領域 「表現」である。 こ の 5つ の領域 に、 「ね らい」 (幼 稚園修 了までに育つ こ とが期待 され る心情、意欲 、態度 な ど )と 「内容」
(ね らい を達成す るために指導す る事項 )を 幼児 の発 達 の側面か らま とめ、示 してい る。
1989(平 成元 )年 告示 の教 育要領 は 「環境 を通 して 行 うこ と」 とい う幼稚園教育の基本 を明示 し、発達や 活 動 の系統性 重視 か ら幼児 の主体性 を重視 す る教育ヘ 転換 した もので ある。 また、以前 の 6領 域 か ら 5領 域 へ変更 し、 5領 域 は子 どもの発 達 を見 る ときの窓 口で あ る と、領域についての考 え方 も変更 してい る。 この 四半世紀、幼稚園教育の基本的 な考 え方 は変わ らない ものの、小学校 との連携 について は、改訂 ご とに連携 が強調 され ている。
1989(平 成 元 )年 の教育要領 では、幼小連携 につい て の記載 はないが、『 幼 稚 園教 育指 導 書 増 補 版 』
(文部科学省 ,1989)の 「第 4章 指 導計画」に 「小 学校 の連携 Jの 節 が設 け られ てお り、小学校 教育 との 連携 について十分な理解 を もつて指導計画 を作成 し指 導 を行 うことが求 め られ てい る。 その 中で は、特 に、
領域 と教科 とは別 な もので あ る こ とが明確 に示 され 、
「領域に示 されている内容が様 々な活動 を展開す る中 で総合的に指導 され る」 とい う幼稚 園教育の独 自性が 強調 され 、早期教育に関す る警鐘 も述べ られ てい る。
また、同年には、小学校低学年に 「生活」が、遊びを 通 して総合 的 に指 導 す る幼 稚 園 教 育 との具 体的 な接 続・発展 の教科 と して新設 され た。
1998(平 成 10)年 の改訂 では、改訂 の基本的 な方 針 の一つ に 「④小学校 との連携 を強化 す る観 点 か ら、
幼 稚園にお ける主体的 な遊 び を中心 と した総合的 な指
導か ら小 学校への一貫 した流れができるよ う配慮す る こと」があげ られ、教育要領では、幼小連携 について
「第 3章 指 導 計 画 作 成 上 の 留 意 事 項 」 にお い て
「 (8)幼 稚 園 においては、幼稚園教 育が、小学校以 降の生活や 学習 の基盤 の育成 につ なが る こ とに配慮 し、
幼児期 にふ さわ しい生活 を通 して、創 造的 な思考や 主 体的 な生活態度 な どの基礎 を培 うよ うにす る こと」 と 示 され 、その解説には、 「修 了近い時期 には、小学校 への入学を念頭 に置 いて皆 と一緒 に教師の話 を開いた り、行動 した りす ることができるよ うに指導 を重ねて い くことも大切である」 と、小学校 の生活や学習 を可 能 にす るた めの基礎 とな る幼児 の体験 が述べ られ てい る。 また、小学校 と幼稚園の教師間の連携の重要性 も 強調 されてい る。
2008(平 成 20)年 に改訂 された現行 の教育要領で は、 「第 3章 第 1指 導計画 の作成 に 当た つての留 意事項」 は、平成 10年 改訂 の教育要領 と同様 な内容 が記 されてい るが、解説 には 「共 に協力 して 目標 をめ ざす とい うことにおいては、幼児期 の教育か らみ られ るものであ り、小学校教育へ とつながつてい くもので あ るこ とか ら、幼稚 園生活 の 中で協 同 して遊ぶ経験 を 重ね る こ とも大切 で あ る Jと 「協 同的な遊び Jが 強調 され てお り、また、幼稚園教育 と小学校低学年におけ る体験的な学習活動や合科的な指導 の類似性 について も述べ られ てい る。 さらに、 「円滑 な接続 」 を図 るた めの指導方法 の工夫 についてまで言及 してい る。
「 2 特 に留 意 す る事 項 Jで は、保 育所 も加 え、
「保育所・ 幼稚園・ 小学校 の合同研修、保育士・幼稚 園教諭 。小学校 教諭 の交流 、保 育所や 幼稚 園 の園児 と 児童 の交流 な ど、三者 の連携 をす す め、幼児期 の教育 の成果 が小 学校 に繋 が るよ うにす る こ とも大切 で あ る」 と、幼稚 園教育 といつた狭い枠組みではな く、幼 児期 の教育 とい う就 学前 の子 どもを視 野 に入 れた連携 をすす めてい くこ とが述べ られて い る。
また 、小学校生活科 において も、 「入学直後は合科 的 な指導 な どを展 開す るこ とが適切 で あ る。例 えば、
4月 の最初 の単元では、
(中略 )大 単元 か ら徐 々 に各 教科 に分化 してい くス ター トカ リキュ ラムの編成 な ど も効果 的 で あ る」 (文 部科 学省 ,2008)と 学校探 検 を 中核 に、他 教 科 を合 科的 に扱 う「ス ター トカ リキュラ ム」 とい う丈言 を使用 した解説がな され てい る。
(3)「 家庭 との連携 Jに つ いて
家庭との連携についても、 1989(平 成元 '年
以降、
改訂 毎 に変化 がみ られ る。 1989(平 成 元 )年 の教育要 領 では t「 家 庭 との連携 」 についての記載 はないが、
『 幼 稚 園 教 育 要 領 指 導 書 増 補 版 』 (文 部 科 学 省 ,1989)で 「家庭 との連携 Jの 節 が設 け られ てお り、
母親 が幼稚園や教師に信頼感 をもつ ことで、幼児が安 心 して過 ごせ る。 また、信頼関係 の もと、幼稚園教育
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保育者の語 りにみる幼稚 園における保護者支援
に対す る家庭の理解 と協力 をえられ る、 といつた信頼 関係 にかかわ る内容 が 中心 だ った。
1998(平 成 10)年 の教育要領 では、 「第 3章 指 導計画 Jに 「家庭や地域社会 との連携 」がカロわってい る。子 どもの家庭や地域社会 での生活経験 が幼稚園 に お ける生活 を豊 か な もの に してい くとい う趣 旨の も と、
「連続性」 と 「循環」 とい う文言 を用いて、家庭や地 域社会 との連携 の重 要性 が述 べ られ てい る。 そ の背 景 には、学校週 5日 制の実施 もあると考 えて よい。解説 の中では、 「保護者 自身、幼稚園生活 がわか らなかつ た り、幼児の発達 につ いて不安 を抱いていた りするこ ともある Jた め、保 育参観や保 育参加 の機会 を設 け、
幼稚 園の生活や幼児期 の教 育 が め ざす もの に理解 を求 めてい くこ との必 要性 につい て述 べ られ てい る。
解説 に述べ られ ていた保 育参観や保 育参加 が、2008 (平 成 20)年 の改訂 では、教育要領 の本文 に 「
(中略 )家 庭 との連携 に 当た つて は、保護者 との情報交換 の機会 を設 けた り、保護者 と幼児 との活動 の機会 を設 けた りな どす るこ とを通 じて 、保護 者 の幼児期 の教育 に関す る理解が深 まるよ うに配慮す ること Jと 明記 さ れ た。 さらに解説 で は、 「情報 交換 は保護 者 会 な どの 場 を活用す るだ けで な く、降 園時の機 会や 連絡 帳 な ど の場 を活用す るな ど Jと 具 体 的 な方 法 が述 べ られ 、
「子育てへの不安や孤立感 を感 じてい る保護者が増 え る中 Jと 現在の保護者 の実態 に触れ 、 「教師の幼児ヘ のかかわ り方 を間近 でみ るこ とで、幼児へのかかわ り 方 を学 んだ り」、 「保護 者 同士 の体験 の共有 か ら同 じ 子育てをす る仲 間意識 を感 じた り」す る と、保育参加 や保護者 会 の有用性 につい て解説 して い る。
1988(平 成 元 )年 以 降、 2回 の改訂 を経 て、 「家庭 との連携」の内容 は変化 して きてい る。 内容 の変化 は、
子 どもの生活 の基盤 で あ る家庭環境 、特 に保護 者 の変 容 を意 味 してい る。
(4)研 究 の動 向
幼小連携 につ いて 、姜 (2012)は 幼小連携活動 には、
「子 ども同士 の交流 J「 教 員 同 士 の 交 流 や 情 報 の交 換」 「カ リキュラムのつ なが り」の 3つ に分類 され る としてい るが、幼小連 携接 続期 問題 につ いて は、以前 よ り実践 や研 究が多数 な され ていた (佐 々木 ら ,2004、
河 崎 ら ,2003、 お 茶 の 水 女 子 大 学 附 属 幼 稚 園・ 小 学
校 ,2006、 住野 ,2006な ど )。 また、連携教育カ リキュ
ラム と して、幼稚園・保育所 と小学校 の接続期 のカ リ キ ュ ラム を抽 出 し冊 子 を作成 して い る地方公 共団体 (姫 路市教育委員会 、埼玉県教育委員会 な ど )も ある。
一方、子 どもを取 り巻 く人的環境 、特 に、保育者 、 小学校教師、保護者 の意識 に注 目した調査 については、
筆 者 が 調 べ た 限 りで は 、 野 口 ら (2007)、 徳 永 (2009)、 山田・ 大伴 (2010)、 廣瀬 ら (20H)が 主 た る ものであつた。
野 口 ら (2007)は 、教師 が実践 を語 る際 に数 多 く用 い る用語 のイメー ジに着 日し、同一の語 に対す る幼稚 園 ・小 学校 教師 の と らえ を比較検討 した結果 、有意 な 偏 りがみ られ る と した。 全体 的 には、幼稚園教師 は子 どもの主体性や 自主性 を重視す る一方、小学校教師は 教 師側 の指導 、方 向付 けを重視す る傾 向にある こ と、
子 ども理 解 に 関 して は 、 「子 ど もの 立場 にな る」 、
「受容 、認 め」 については共通であったが、 「子 ども の内面、姿、行動 の読 み取 りや捉 え J、 「共感、共に 過 ごす 」 とい うカテ ゴ リーは幼稚園教師 に多 く、 一方、
「対話・話 し合 い (話 )・ コ ミュニ ケー シ ョン」 と い つた直接的なや り取 りを指すカテ ゴ リーについては 小 学校教師の方 が多い と述べてい る。 さらに小学校教
師 は 「家庭・家庭環境・生育歴」 とい うカテ ゴリーが 多 い こ とか ら、子 どもを理解 す る際 、背景 と して家庭 につ い ての理解 が重視 されてい るこ とも示唆 されてい た。
徳永 (2009)は 、 5歳 児 、 1年 生、 4年 生 の担任 を 対象 に ア ンケー ト調査 を実施 し、幼小連携 にお け る実 態 と課 題 を明 らか に してい る。 3学 年 に共通 してい る 項 目は 、 「教師 の全 体へ の話 を開 くこ とがで きない」
「自分 のものを整理整頓 がで きない」 「好 き嫌いが多 い」 「人の嫌 が るこ とを言 つた り、 した りす ること」
で あ り、 5歳 児 の頃 か ら 4年 生 に至 るまでの課題 で あ る と して い る。 また、 「知 つていることを言わないで はい られない」 とい う項 目は、 5歳 児 と 1年 生担任 に
共通 してお り、徳永 は 「双方 の学年 で人の話 を聞 く、
自分の考 えを話す習慣 が身 に付 くよ うな指導が求め ら れ る」 と分析・ 考察 をカロえてい る。
廣瀬 ら (20H)は 、幼稚 園 の造形 表現 、小学校 の図 画 工作 とい う具体的 な保 育・ 授 業場 面 を想 定 し、準備 か ら実施 、評価 に至 るまでの中で、教師が どの よ うな 事柄 を重視 してい るか を調べ 、保育観や授業観 を検討 してい る。活動や授業への導入 について、幼稚園教諭 は、子 どものイ メー ジを膨 らませ るな ど子 どもの内面 を重視 してい るのに対 し、小学校教諭 は活動 の手順 を 明示 した り道 具 の使 い方 を説 明 した りす るな どその後 の活動 が円滑 にすすむ こ とを重視 してい る。廣瀬 らは、
この結果 を踏 まえ、小学校 においては評価 を重視す る とい う姿勢が導入 よ り方向付 けを しっか りと行 う。 ま た、幼稚園は評価 よ りも子 どもの内発的動機付 けを促 す こ とに力 点が置 かれ てい るので はない か と 「推測の 域 を出ず」 と断 り考察 してい る。
山田・大判 (2010)に よる 5歳 児 を担任 している幼
稚 園教諭 、保 育 士
(以下 、保 育者 )、 小学校 1年 生 を
担任 してい る小学校教諭 、保護者 を対象 とした調査紙
調 査 で は、集 団生活 にお け る気 にな る姿 として、保育
者 は '約 束や ル ール を守れ ない」 「困 つた時や分か ら
ない ときに 自分 か ら助 けを求 めに くい Jと い う姿を多
く選択 し、一方 、小学校教諭 は 「一つ 一つ直接大人 に
田宮 縁 池田 優・鈴木富美子
確 かめた り報告 した りす る こ とが多 い」 「食べ P/Jの 好 き嫌 いが多い」 を多 く選択 してい る。以上の結果 よ り、
保 育者 は 「集 団生活 の 中で 自立的 に行 動す る姿」 を求 め る傾 向にあ り、小学校教諭 は 「担任 が一対一でかか わ る必要がある姿 を気 にな る姿」 と して選択す る傾 向 が ある としてい る。 また、保護者 か らみた小学校就学 前後の心配 に関 しては、 「就学前 よ りも就学後の方が、
よ り多 く、多岐 にわた つて意識 を向 けてい る。 (中 略 )保 護 者 の意 識 が友 達 に 高 くあ る こ とが表 れ て い る」 と述べてい る。
以上 の よ うに、人的環境 に注 目した研 究 は限 られ て お り、質問紙 による量的調査である。 さらに 「幼小連 携 」 を保護 者 支援 の視 点か ら実証 的 なデー タをも とに 論 じてい る研 究 も筆者 が調 べ た 限 りでは見 当た らない。
(5)本 研 究の 目的
以上 の よ うに、 「幼 小連携 」 に関す る政策や研 究 の 動 向は、保護者 不在 の ま ま進 んでい る。 しか し、幼稚 園 の生活 と家庭 の生活 とは、子 どもを中心 に考 える と 連続的な営みであ り、双方 が影響 しあいなが ら発達 を 促 してい くもので あ る。 した が つて 、 「幼 小連携 Jに
つ いて も、子 どもの発達 とともに、保護者 の発達 も視 野 に入れ てい く必要 が あ る。
本研 究では、保 育者 の語 りを分析 し、 「幼 小連携 」 とい う視点か ら保護者 に対す る支援のあ り方 を検討す る ことを 目的 とす る。
2 方法
(1)質 問紙調 査 「小 学校 入 学 まで につ けたい力 Jに
ついて
2013(平 成 25)年 10月 、当園の卒園児 が入学す る 近隣小学校 3校 の 1年 生 を担 当す る教師 と教務主任 14名 を対象に、第 2筆 者 、第 3筆 者 が作成 した f小 学校 入 学 まで につ けた い 力 Jに つ い て質 問紙調 査 を 行 った。幼稚 園教師 (以 下、保 育者 )が 考 える幼稚 園 修 了までに育 って ほ しい力 と小 学校 教師 が考 える就 学 までにつ けて きて は しい力 を明 らかにす る こ とで、幼 小連携 を考 えてい く一つ の契機 とな るこ とを企 図 した ものである。結果 につ いて は、前述 の先行研 究 の結 果 と類似 してい る部分 もある。 さらに、 5歳 児 クラスの 保護者 に も同様 の質問紙 調査 を行 った。結果
(各項 目 にお ける 自由記述 は省 略 )は 、以下 の とお りで あ る。
問 :必 要だ と思われ る こ とを 3つ 選 んで○ をつ けて く だ さい。具体的には どうい う姿かあれ ば ( )内
にお書 きくだ さい。
(2)手 続 き
保 育者 の語 りを引 き出す 一つの資料 と して、上記 の 質 問紙 調査 「小学校 入学 まで につ けた い力 Jの 結 果 を 使 用 し、小学校 教師 と保護 者 の結果 の饉幅 につい て注
目す る。
対象者 への 了解 を得 て、討議 の 内容 を ビデ オカ メ ラ と lCレ コー ダー にて記録 し、後 日逐語録
(約16000 文 字 )と して 起 こ した。語 りを意 味 内容 で 区切 り、
カー ドを作成 し、 KJ法 を用いて分析す る。
(3)対 象 。日時・ 場所
対象 :静 岡市立東豊 田幼稚園 保 育者 6名
(園長 、教 務主任 を含 む
)。小学校 、私立幼稚園の経験 も含 む平 均勤務年数 は、 21年 、 レンジ
2‐35年 。
日時 :2013(平 成 25)年 12月 19日 15:Oll〜 1615 場所 :静 岡市 立東豊 田幼稚 国会議 室
3 分析結果
52件 の語 りをグルー プ化す る と以下の よ うにな る。
【 大タイ トル】※
(1)基 本的生活習慣の確 立
(2)人 的・物的な環境の変化への対応 (3)幼 稚園か らの発信
(う
)好き嫌 いな く食べ る 7% 17%
(え
)誰とでも遊べる 64% 4%
(お
)持 ち物の片付けができる 43% 22%
(か )時 間を意識することができる 0% 61%
(き )こ れからやろうとすることが
分かり準備したり、練習したりする
7% 39%
(く)場
に応 じた行動 を とる 7% 35%
小学校教師 (14名
)保護者 (23名
)(あ )人
の話 を最後 まで聞 く 1009る 65%
(い
)自 分 の思 い を言 う 71% 70%
※
【 中タイ トル】 【
/」ヽ タイ トル】 件数
「自立」までには一 定の時間が必要
片付 け・ 衣服の着脱等 4
個 人差
1保 護 者 も反 復 の 中で学ぶ
保護者の時
FFlに関する意識 子どもの時間に関する意識
1小学校 の生活 リズム
2子 ど もの 育 ち が
保 護者 を変 え る
1自
立」に対する保護者の意識
3保護者のマナー
1r簡
単
J「便利」は子ど もの体験を奪う
家庭教育に対する保護者の意識 2 物的環境の変化
1世 代 間 伝 達 の な
い時代
接 し方 がわ か らない 4
子育 ての方法 3
先輩の保護者か ら
1保護者 の視 野 保護者の友達関係に関する考え 6 保育者の友達関係に関する考え 2
子 どもの実態
156
保育者 の語 りにみる幼稚 園における保護者支援
特別支援教育 子 どもの実態 6
他 児 と関係 4
公立幼稚園の役害
1 1そ の他 質問紙から保育を振り返る 2 小学校での不登校 2
保護者支援 とい う視点か ら、今後の支援方法を方向 付ける 3つ の大タイ トルが抽出された。
(1)基 本的生活習慣の確立
① 「自立」までには一定の時間が必要
「生活習慣については、定着ってすごく難 しい。担 任な り、お母 さんたちは、気をつけて繰 り返 し繰 り返 し、言つていかない と。や つぱ り、
(子どもが )忘 れ ちゃ うつてい うか、本当に意識 してできるようになる にはす ごく時間がかかる」 と、保育者は指示 されてで きるの と自立的にできるよ うになるの とでは意味が違 うとい うことを語 る。形式を覚えてできるよ うになる ことも大切だが、状況や場が変わって も自立的 に行 え るように育つてほ しい と保育者 は願 つている。つま り、
幼稚園で 「おはよ う」 とあい さつができて も、別な場 所でもできなければ、身に付いた とは言えない。近所 の人 とも小学校の先生 ともあい さつができるよ うにな ることをめざしているとい うことである。
3歳 児の現時点 (12月 )に ついて 「新入の ときに比 べると、身に付いてきたかなつて。今、園服の始末な んかも、袖がひっ くり返った り、裏返 しになつていた りす るの も、 4月 に比べ る とずいぶ んで きるよ うに なつてきて。や つぱ り、まだ、声をかけない と、遊び だ しちゃ うとか、そのままや りっ放 しで行 つちや うと 力、 2〜 3見 られ ます け ど、繰 り返 しして きた ことで 身に付いてきた子 もいたので、何度 も繰 り返 しやつて きたことでできることもあつた Jと 担任は語つた。つ ま り、幼稚園修了までに自立的に行 うことが可能にな るよう一人一人の子 どもの実態に合わせなが ら入園当 初 より丁寧な援助を行 うことが必要 とい うことだ。
また、 「幼稚園なんかで も行事が立て込んで くると、
私たちの気持ちも行事の方へ行 っちゃ うので、『 ロッ カー、ぐちゃ ぐちゃだよ』 つて言 つて、 1週 間に 1回 か、 2回 片付けるよ うな時間を設 けない と。その都度 その都度はなかなか大変で」 と、手をかけ、 日をかけ てゆっくりと身に付いてい くものであ り、短期間で基 本的生活習慣は定着 しない と、保育者は感 じている。
②保護者 も反復の中で学ぶ
保護者は 「時間を意識す ることができる」を小学校 教師 と比較 して重視 してい る。幼稚園では、 「 (5歳 児クラスの )4月 頃か らずつと、『長い針 が 9に なっ た ら片付けだよ』 とか、子 どもが徐々に気付 くよ うに なっていき、最近では誰かが『 9に なったか ら片付 け
だ よ』 つて声 を掛 け合 うよ うになってきているかなっ て。 これ も積み重ねなのかな」 と 5歳 児 の担任 は語 つ てい る。集団生活の 中で、担任 も時間を意識す るよ う な働 きかけを行い、 5歳 児 な りに行動す る様子 が 見 ら れ る よ うになつて くる と、感 じてい る。
一方、 「小学校では (小 学校 の先生 は )チ ャイ ムで 動 く
(中略 )自 然 に身 に付 くもの と思 つてい るのか も しれ ませ んが」 と、小学校教師 としてのキャ リア をも つ園長 は、小学校教師の考 えを代弁 し、 さらに、 「時 間 を意識 す るつてい う保護者 の、考 え方なんです け ど ね」 と、時間を意識 しなけれ ばな らない と考えている のは、保護者 自身で、その ことを保護者 は 自覚 してい るので はないか と指摘 してい る。 この背景には、園か らの保護者 への働 きかけ
(例えば、登園時間、降園後 の 園庭 開放 の時 間な ど保 育者 か らの繰 り返 しの声 か け )が あ り、子 どもに時間を意識 させ たい とい うより も時 間 を守 ろ うとす る保護 者 自身 の意識 が強 く働 いて い る と捉 えることができる。
「保護者 がす ごく変わってきて、
(中略 )保 護者 が ルール を押 さえ られ ない。
(中略 )8時 50分 が登園 時 間だ とす る と、 8時 50分 まで に門の中に入 つてい るの を想像 します よね。
(中略 )そ れ が、保護者 は違 うんです。 9時 まで に入れ ばいい と思 つているんです。
(申
略 )こ こ 3年 くらい前 か ら、 8時 50分 に『 門、
閉 めます よ』 ってい って門 を開める。
(中略 )だ んだ ん 8時 50分 までに入れ るよ うになってきた」 と、毎 日正 門で親子 を迎 える教務 主任 は語 つた。丁寧 な支援 を繰 り返す ことで保護者 も徐 々に時間に対 しての意識 が高ま り、結果的 に子 どものモデル となるよ うな振 る 舞 い が可能 とな る こ とが、保 育者 の語 りか ら理解 す る こ とができる。つま り入園 と同時 に保護者 も子 どもと ともに発達 してい くのである。
(2)人 的・ 物 的な環境の変化へ の対応
① 子 どもの育 ちが保護 者 を変 えてい く
昼食の時間の子どもの会話から、「ある子が『 これ、
まじい』つて。女の子ですよ。その言葉、聞いた時は、
びつくりしたんですけど、お家ではそ うい うことを
言つているのかなつて」と、家庭の多様性について語
りながら、「『 まじいじゃなくって、おいしくないっ
てい うんだよ』って伝えていったんですけど。そのこ
とをお母 さんに伝えたら、『 お父さんが言つているか
ら、気をつけますって』 J。 つまり、父親のまねをし
ている娘の姿を知 りながら、よりよい方向付けをしよ
うとしない。いわゆる 「しつけ」の必要性を感 じてい
ない保護者も存在するとい うことである。さらに「肘
をついて食べている子がいるので、『肘をついて食ベ
ないんだよ』つて、『 お行儀悪いよ』つて
(幼稚園で
伝えたら
)、お父さんが肘をついて食べていたら『お
父さん、いけないんだよ』って子どもに言われたと親
田宮 縁 池田 優 鈴木富美子
か らも聞いた」 と、 3歳 児の担任 は語つた。幼稚園が マナーを子 どもに教えてい くことで、子 どもだけでは なく、このように保護者 も刺激 され、自身の生活 を振 り返 る機会 となる場合 もある。 この語 りか ら、子 ども の育ちが保護者を変容 させてい くとい うことを読み取 ることができる。
「親の子育てに関する価値観がだんだん違つてきて いるのかなつて。 10年 前 にもつていた
(受け持 つて いた子の )親 と最近の親 ってまたちが う。
(中略 )親
が子 どもをもの じゃないんだけど、かわいが り方つて い うか、育て方ってい うか、わか らない。 ものってい うか。扱い方がわか らない」。 この語 りか ら、保護者 に とつて子 どもは、愛情の対象ではあるが、発達段階 に必要な家庭教育を行い、社会で生きる基盤 を育てて いこうとい う考えをもちあわせていない保護者 も中に は存在す ると解釈す ることができる。現行の『 幼稚園 教育要領解説』 (文 部科学省 ,2008)に も示 されてい るとお り、 「幼児へのかかわ り方を学ん」でい くこと が必要なのだろ う。四六答 申では、 「家庭は、単に衣 食住の場であるばか りでなく、人間 としての精神的成 長の基盤でもあることにかんがみ、幼年期か ら青少年 期を通 じて、基本的な生活習慣 と行動の節度 を学ばせ ることによつて 自制心 をつ ちか うこ と
(中略 )」 と
「家庭教育に期待すべきもの Jが 記 されている。 この 40年 の間に家庭教育、保護者 の姿の変化 は否めない。
3歳 児の担任が、 「 3歳 児は繰 り返 し繰 り返 し伝 え てい くことで、いろんなことができるよ うになつてい くかなつて。片付けも、遊びもや つていると、みんな で片付けるつてい うのがだいぶ上手になってきた」 と 語 ると、 「 3歳 児でも片付 け られ る じやん。で も、
5歳児でも片付けられない子 もいる。ただ個の違いだ と 思 う。あるいは、家庭の姿勢 とい うか、そ うい うもの も影響 している場合 もあるよね。幼稚園は、子 どもに しつけ面を支援 してい くと同時に、保護者へ も支援 し てい く必要は大きな問題かな。大事なことかなつて思 います」 と、園長が続 ける。 このように集団の教育力 を活か して指導することで、身に付 く場合 もあるが、
「個人差」も大きい。また、その背景には家庭の 「姿 勢」、教育に対する考え方の差が大きく影響 している とい うことである。幼稚園では、子 どもに対 して基本 的生活習慣の自立を促 してい くと同時に、その意味と 必要性について保護者へ も伝え、協力を求めなければ ならない と保育者 らは感 じていることがわかる。
② 「簡単」 「便利」は子 どもの体験 を奪 う
家庭の教育に対する姿勢の差はあるに しても、食事 のマナーを身に付けることは、子 どもの発達上、欠 く ことができないことである。 「今、 うちの幼稚園で年 長 さんでお箸が持てない (子 がいる
)。 (中略 )確 か
に昔 と比べて子 どもたちが少な くなつてきた とい うこ
ともあるし、いろいろなこと話 しちや うと、あの
(上か ら握つてまわす )蛇 日、少 なくなつた じゃないです か。みんなこれ (レ バー :上 下に手を動かしながら
)になっちゃって」 と、箸 を使用できない要因 として、
きょうだいが少ないため、家庭内で子 ども自身が見て 学ぶ機会が減少 していことにカロえ、生活環境の変化に より「子 どもたちの握力 もだんだん低下」 しているの ではないか と教務主任は予想す る。その対応策 として、
「うちの幼稚園も直 してもらつて」 と、握力をつける ために当園では、従来の蛇 口に改修 も行 つた と補足す る。生活が便利 になる反面、毎 日行 つていた動作がな くな り、無意識の うちに獲得 していた粗大運動や微細 運動を経験することができな くなつてきていると感 じ ているのだろ う。 また、 「小学校が これ
(レバーの蛇 口 )ば か りでない」 と、多様 な蛇 口に子 どもが対応す ることができるようにあえてを用意 しているとい う保 育者の語 りか ら、子 どもの将来を見据 えた願いを保育 者がもちなが ら保育に臨んでいることを読み取 ること ができる。
箸については、 「幼稚園は、以前は 2年 保育だつた ので、『 4歳 児にはもうお箸が使 えるよ うに』 つて指 導 してきたんです けど、なかなかそれが うしろになつ てきちやつて。
(中略 )お 箸の持ち方って鉛筆の持ち 方にもつながるので、『 ちゃん と握れ るように してく ださい。教えて くだ さい』つて。『 幼稚園では、一回 しかご飯を食べないので』って、言 うんですけど、な かなか定着 しないんです」 と、幼稚園での生活は限 ら れてお り、子 どもの生活習慣すべてをカバーできるわ けではない。幼稚園での指導 を定着 させ るためには、
家庭の協力が不可欠である。 さらに、お箸を持 とうと しない子が鉛筆を正 しくもてないのでは と疑間を呈 し ている。
以上の語 りよ り、生活や遊びで行われていることが、
生活や遊びにとどま らず、すべて学習の基盤 となつて いる。 しか し、保護者 にとつては、 日の前の子 どもの 姿を見ているだけで手一杯で、子 どもの生活環境の変 化 よる経験の不足にまで思いが及ばない とい う実態を 提えることができる。
(3)幼 稚園か らの発信
①世代間伝達のない時代
「幼稚園の先生を しているか ら。いろいろな保護者 の方を見た り、聞いた りしているか ら、親力の低下を 感 じるのかもしれない」 と、幼稚園での勤務が 2年 目 の保育者は語る。ベテラン保育者 は、長いスパ ンで保 護者の変化 をとらえているが、新人保育者にとつては、
今の保護者がすべてである。 「きつと、 自分が落ちて いるとは思つていない。気付かない と思 うんです よ。
知 らないか ら直す こともできない し。私たちがそれを
気付かせてあげられ るように」 と、基本的生活習慣は
保育者の語 りにみる幼稚 園における保護者支援
自然に身に付 くものではない とい うことを一つ一つ丁 寧に伝えていくことが必要だ と感 じていることが分か る。すると、ベテラン保育者 も「親 も子 どものように 認めてあげなが ら J、 子 どもとかかわる経験がない人 がほとん どなので、 「先入観 を持たないで、『 お母 さ ん、がんばったね』 とか、『 えらいよ』 とか」認めた り励ました り、 「『 ここは、こ うした方がいいん じゃ ないの
?』って」具体的に方向付 け した り、「『 こん なに子育てがんばったんだか ら、次 は こ うした らど う
?』とい うような」提案 を してみた り、子育ての苦 労に共感 しなが らかかわつてい くことが重要であると 語 る。 さらに自身の子育ても振 り返 りなが ら、 「なん か、自分 もできない。子育てをしていると、 自分が親 に教えてもらつた ことしか子 どもに与えられない。た いていそ うだ と思 う」 と世代間伝達の視点を述べてい る。平成 24年 人 口動態統計月報年計 (概 数 )に よる と、第 1子 出生時の母親 の平均午齢 は 303歳 である。
したがって、幼児をもつ保護者 の年齢 は 30代 半ば と 考えてよいだろ う。 とすると、保護者の世代は、食事 のマナーや排泄の訓練な どの基本的生活習慣が、現在 のように大きな問題 になつていた とは考えにくい。家 庭で一定の基本的生活習慣 を身 につけてきた世代であ る。 しか し、前述の保育者は こう続 ける。 「で も、 自 分 が ど うや つて 自分 の子 に教 えたか、そ うや つて言 わ れ る と記憶 に浮 かんで こない。 いつ おむつ を、 ど う や つて とつた とか。
(中略 )漠 然 とした こ とは 自然 に 身 に付 いた と思 う Jと 自身 の子 育てを振 り返 る。つ ま り、子育ては、マニュアル にそ つて指導すれ ばできる ものではない とい うこ とで あ る。常 に、親 と子 のかか わ りの中で、子 どもの反応 にあわせ なが ら試行錯誤 を 繰 り返 し、促 して い る。 した が って 、 「自分 が ど う や つて 自分の子 に教 えたか J明 確 な説 明 をす る こ とは、
難 しいので あ る。
「自分が どうい うふ うに育 つたのか を親 に聞 くの も 大事」 と、親世代 も試行錯誤 の 中で子育て を してきた 現 実 を知 るだ けで も保護 者 に とつて は有益 な ものなの か もしれ ない。 しか し、核家族化 の進展 に よ り、 この よ うな親世代の知見が伝達 され に くい。 このよ うな状 況 にあ るこ とも考慮 しなが ら、子 ども とともに親 の育 ちを支 えてい くこ とも幼稚園の大 きな役害 となつて き ている ことが、語 りよ り解釈 できる。
別 な保 育者 は、 「懇 談会 で、 1学 期。 お母 さんた ち で フ リー トー ク して悩み を話 し合 うことをや つたんで す。それは、先輩 のお母 さんたちか ら話 を聞いたのが、
『 や っぱ 自分 も楽 にな った し、 なん か、 こ うや つてや れ ばいいんだ とかがわか って よか った。 また、 2学 期 に なってか らも、ぜ ひ こ うい つた時 間 を とつて欲 し い』みたいな話 もあつた」 と語 る。要 は、世代間伝達 の難 しい時代だか らこそ、専門家ではな く、身近な経 験者 の話 を開 くこ とが 、保 護者 も共感 を覚 え、子育 て
の活力 を得 るのではないだろ うか。保護者 の状況 も考 慮 しなが ら、時 には、 人 と人 とを結 びつ けるコー デ ィ ネー ター と しての役割 も保 育者 には求め られてい ると い うことである。
②保護者 の視 野 を意識
「も う一つ淋 しか ったのが、誰 とで も遊べ るとい う の が 、今 年 の うちの 園 の 重 点 目標 だ つた の に、 4%
だ った Jと 、 「
(え)誰 とで も遊 べ る」に関 して、小学 校教師 が 64%に 対 して保護 者 が 4%だ つたことを語 っ てい る。 当園では、 1学 年 1学 級 とい う比較 的小規模 な園であるため、近隣の 3校 の小学校 には、それぞれ 十数名 の就学 となる。 したが つて、― クラスに数名 と な るた め、誰 とで も遊 べ る、かかわれ る子 に育っては しい とい う願い を込 めて、 「人 とのかかわ りを楽 しむ 子 Jと い う重点 目標 をかかげ、保 育に臨んでいる とい
うこ とで あ る。 また、園の方針や保育実践について も、
保護 者 へ は頻繁 に伝 え る よ うに努 めてい るが、保護者 の意識 としては、 4%と い う結果だ つた。 その要因 と して、 「自分の子 ども中心ってい う思いが強いん じゃ ないか な。
(中略 )仲 間 関係 とか友達 関係 とか別 に意 識 してい ないわ けで はない けれ ど、次の 2つ 日、 2番
目の ラン クだ と とらえてい るのか も しれ ない」 と、園 長 は語 つた。 この語 りか ら周 囲 との関係性 で子 どもを とらえ るのではな く、 自分 の子 どもだ けに注 目し、可 視化 が可能 なで き る よ うにな つた こ とを保護者 は求 め る傾 向にあるのか も しれ ない と、保護者 の心情 を想像 してい ることが分か る。 また、 「誰 とで も、つてい う け ど、保護者 自身 が好 きな人 同士の グループなんです よ。そ こに属 していれ ば、安心」で、 「子 どもたちに もそ うい つた感 覚 で言 つて い るのかな。
(中略 )私 た ち として は、誰 とで も遊 んでは しいんです。 でも、一 人で も友達 がいれ ばい い」 とい う捉 え方 を保護 者 は じ てい るのではないか と、教務 主任 は語 る。つま り、保 護者 は、 自身 の人 とのか かわ りに対す る考 え方や行動 をその ま ま子 どもに置 き換 え狭い捉 え方 を してい るが、
子 どもた ちは、就学 とい う大 きな環境の変化 の中で、
新 た な人間関係 を築 い て いか なけれ ばな らない。 そ の 際、誰 とで もかかわ る こ とがで きれ ば、生活や 学習が スムー ズにス ター トで きるが、 このよ うな視点に保護 者 は及 ばない と、保 育者 は感 じてい る。
一方、 「昨年、問題 として出てきたのがね。『誰々 ちゃんが遊んで くれない』
(中略 )Aち ゃんもそ うだ し、 Bち ゃんもそ うだ し。年中の ときに、家で言 うそ うです。
(中略 )で も、その ときにはお母 さんは必死 に、『 ちゃん と、みていて くだ さい』つて。私たちも
『 ちゃん と、みています』って感 じで、友達関係 をみ てい く」 と、教務主任 は続 ける。子 どもたちにとって、
友達は一つの居場所である。 3歳 児後半か らは、特に
友達 を強 く求めるよ うになって くる。その時期には、
田官 縁 池田 優 鈴木富美子
保護者 も必死で保 育者 に子 どもの思いを訴 えるとい う こ とである。
本調査 が対象 は 3・ 4歳 児 の保 護者 で あったのな ら ば、 「
(え )誰とで も遊 べ る」の割合 は高か ったのか も しれ ない。 5歳 児 の時点 では、保護 者 の意識 と しては、
友達 とのかかわ りについ て心配 して いないのか も しれ ない。安定 してい ると思 つてい るか らこそ、 この項 目 を選択 しなかった とも考 えることがで きる。 しか し、
新 た な環境 へ の移行 後 、 山 田・ 大伴 (2010)の 指摘 の とお り、再び友達 関係 への意識 が高まることも予想で きる。何れに して も、長期間での子 どもの変容 とい う よ り、 「今」に注 目した保護者 の意識 と考 えて よいだ ろ う。保護者 は、現時点での我 が子 のみ に注意 を注ぎ、
周 囲 との関係性や 子 どもの変 容 の過 程 につ いてまで考 えるこ とは難 しい と、保育者 らは捉 えてい る。具体的 な子 どもの変容過程や 実態 、見通 しな ど鳥 厳的 な視点 で子 どもをみ るこ とがで きるのは、専門家 としての保 育者 の重要 な役 日で あ る。
4 考察
本研 究は、当初 、移行期 の子 どもを もつ保護者 に対 す る支援 に対 して の支援 の あ り方 を検討 す るこ とを意 図 していた。 しか し、考 察 を進 め る中で、保護者 支援 も子 どもと同様 に短期 間で行 え る もので はない とい う こ とが次第にみ えてきた。子 どもの基本的生活習慣 の 確 立の背景 には、保護者 の意識 や 姿勢 が大 き く影響 し てい る。そのためには入園 と同時に保護者 への指導 も は じま り、 「繰 り返 し Jの 中で 、保護者 も 「幼 稚園の 保護者 らしく」なつてい く。つ ま り、保護者 としての
「役害
1取得 」 (Mcad,GH,1913/1991)の た めの一定の 期 間が必要 なのであ る。
Mead G Hは 、 「 意 味 の あ る 他 者 (signincant other)」 の期待 を取 り入 れ る こ とに よつて 自我 が形 成 されてい くと考 え、その こ とを役 害 1取 得 の 自己形成 と呼んで説明 している。保護者 も子 どもとともに幼稚 園 に入 園 し、新 しい役割 を取得 してい くので あ る。 子
どもとともに発達 してい くとい つて よいだ ろ う。
しか し、家族形態や地域社会 とのかかわ りの変化に ともない、保護者 に とつて 「意味のある他者」は限定 されてきてい るのではないだ ろ うか。 また、駆 け出 し の保護者の視野は狭 く、 日の前 の子 どもの姿を見るだ けで手一杯 な状態 で あ る。 した が つて、専門家 として の保育者 は、 「意味のある他者」の一人 として、丁寧 な指導
(例えば、 リュ ックに入れ る ものについては、
子 どもが 自分で処理できるもの と伝 えるだけでは理解 して もらえないので、形状や機能 を具体的に伝 えるな ど )と あわせて、環境 の変化 に よる子 どもの体験の不 足 、人 との関係性 の中での子 どもの姿 と子 どもの育 ち の過程などを鳥厳的な視点 をもつて支援 に臨む ことが 重要である。
5 今後 の課題
本研 究 を通 して、以 下の 2点 が今後の課題 として残 された。
一つは、 「小 1プ ロブ レム」の解決が幼小連携の主 た る 目的 とされ ていることについての検討である。
現 在 、押 し進 め られ て い る 「幼 小連 携 」 は 、2008 (平 成 20)午 1月 の 中央教育審議会答 申以降、活発 に議論 され るよ うになつてきた。 「小 1プ ロプ レム」
につ いては、幼児期 の教育 と小学校教 育 の円滑 な接続 のあ り方に関す る調査協力者会議 (2000)で は t「 自
制心や 耐性 、規範意識 が十 分 に育ってい ない、
4ヽ学校
1年 生 な どの教 室 にお いて、学習 に集 中で きない、教 員 の話 が聞 けず に授 業 が成 立 しない Jこ とと定義 して ヽヽる。
しか し、本調査で、 5歳 児 の担任保育者 は、以下の よ うに語 つてい る。
「場 に応 じた行動 を とる」つて、 「人の話 を最後 まで聞 く」 と共通 してい るか も しれ ませんが、誕生 会 や み ん な で集 ま る よ うな場 に集 ま つ た時 、今 、 ち ょつ と話 を しちゃい けない ときだ な とか 、 自分 で、
空気 を読 む とい うか…。特 に、今 、私 、年 長 の担任 な の で 、 これ か ら先 の こ とを考 え る と、 「いつ で も Jで は ない けれ ども、 「今 は静 か に しな けれ ばい けない時 だ な」 とかそ うい うこ とが少 しずつ判 断で きるつて こ とが、主体性 を もつてすす め る とい うと ころではつ ながってい くのかなつて思 うんです けれ ど
(中略 )全 員 で は、 な い ん です よ。 一 部 。
(中略 )例 えば、一人 が大 きな声 を出す と、い い かなつ て子 どもも思 って一緒 に騒いで大 き くなっちゃ うこ とが あ ります よね。
(中略 )本 当は、 みん な ちゃん と座 つて待 ってい なけれ ばな らないの に一緒 にふ ざ けちゃ う。
(中略 )我 慢 がで きない つてい うか、わ か らない つてい うか、そ の雰 囲気 が わ か らない。
(中
略 )そ れ がす ご く嫌 だ つて子 た ち もい るんです よ。
(中略 )同 じ教室 (保 育室 )に い ると、そ こを 分 け るつて い うのが難 しか つた りす るので。
上記 の語 りか ら、・「場に応 じた行動 を とれ ない子」
や 「人 の話 を最後 まで開けない子」は存在す るものの、
5歳 児 の中で も一部 で ある と感 じてい る こ とがわか る。
また、他児 との環境 の調整 に苦慮 してい る様子 を解釈 す るこ とが で き る。
さらに、教務 主任 は、次の よ うに語 る。
い るん だ よね 。 「静 か に しな けれ ば な らない 時」 つて言 つて くる子 も。
(中略 )で もそれ じゃ、
活 か され な い。 数 人。 それ で も同調 で きるん だ け ど、
や っば り、はみ出 して しま う子の方が多か った り。
611
保育者の語 りにみる幼稚 園における保護者支援
(中
略 )公 立幼稚園な ものですか ら、
(中略 )一 応 面接で入 つて こられ るので。 だいぶ特別 支援 の体制 とい うのか、就園時の相談があつた り、子 育て相談 会 があ るので、○○ ドクター に相 談に乗 つていただ いた り、専門機 関に行 くってい うの も以前 よ りは、
対応 す る道 もた く さんに なって きたので 、 いいか な とは思 うんです け ど。や は り、その年 に よつて
(中略
)。専門機 関 との連携 な ど特別 支援教 育 の体制 も以前 よ りは整 つて きてはい るが、年度 によつて特別支援 が必 要 な子 どもたちの人数 にば らつ きがあ り、安定 した ク ラス経営が難 しい年 もある と感 じているこ とがわかる。
「小 1プ ロプ レム」の定義 をみ るかぎ り、特別 な支 援 を要す る子 どもた ちの特徴 と重 な る部分 が あ る。 し か し、現在の幼小連携 は、その点を整理 しないまま議 論 が進 んでい るので は ないだ ろ うか。
2つ 日の課題 は、第 2筆 者 、第 3筆 者 作成 の 「小学 校 入学 まで につ け た力 」の項 目が 「参加 の型 」 (無 藤 ,2009)が 中心だ った こ とで あ る。
幼稚 園か ら小 学校 へ の移 行期 につ いて は、 さま ざま な考 え方 があ るが、無藤 は、 「参加 の型 」 を身 につけ、
「文化 的な道 具」 の使 い方 を学 ぶ時期 と してい る。
「参加の型」 とは、 「クラスの中で学習者 として『 い る』」ことであ り、 「与えられた枠や 日標 を自分の 目 標に転換する」 ことである。一方、 「文化的な道具」
とは、 日常生活の中でふれてきた数量や図形、標識や 文字 な どの使 い方 を学 んでい くこ と、つ ま り、 実際 の リンゴの数 をお は じきに置 き換 えた り、数 字 に置 き換 えた りしなが ら筆算 をす る。読 めるよ うになつたひ ら が なを書 くな ど、数 字や 文字 とい つた 「文化 的 な道 具」の使 い方 を学んでい くことである。
HⅣ igahust,RJ(1953/1995)は 、 「社 会 や 事 物 につ いての単純な概念形成 Jを 乳幼 児期 の発 達 課題 の一つ にあげてい る。小学校教師は、 「文化的な道具 Jの 使 い方 を学んでい く上で、幼児期 に どの よ うな体験 をつ む こ とが必要 と考 えているのか。実際の子 どもたち と のかかわ りの中で感 じてい る教師の率直な考 えを今後 明 らか に してい きたい。
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0」ndCXrtOushilv 1309492 htm
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icsFilcyaflcld■ lc/2011′ 11/22/1298955̲1̲l pdf
謝 辞
本研究の調査に協力してくださつた幼稚園の教職員 のみなさんに感謝申し上げます。
04
′U