別紙様式1
修士 学位論文
論 文 題 名
パーキンソン病患者におけるアーチサポートの有効性
(注:学位論文題名が欧文の場合は和訳をつけること。)
平成25年 1月 10目提出
首都大学東京大学院
人間健康科学研究科博士前期課程人間健康科学専攻 学域 学修番号:11895601
氏 名: 井上 美幸
論文題名:パーキンソン病患者におけるアーチサポートの有効性
【要副
本研究ではパーキンソン病(以下PD)患者において重心後方偏位が姿勢制御をより困 難にすることに着目し、足底アーチサポート装着の1)静止立位バランスの改善2)動的立位 バランスの改善3)すくみ足(以下FOG)の改善に対する影響を明らかにすることを目的と する.そのため本研究では健常高齢者(contro1群)、パーキンソン病患者(以下PD患者群)
の2群における1)静的及び動的立位、一歩動作時の重心動揺の違いを検証した.また一歩 動作時には同時に足部加速度を計測し検証する.2)前記運動課題における(1)裸足(contro1 条件)(2)補高としてヒール装着(以下H条件)(3)アーチサポート装着(以下A条件)(4)ヒ ールおよびアーチサポートの両方装着(以下H+A条件)の4条件における違いを検証す る.対象は健常高齢者9名とPD患者9名とした.各課題を10秒間、各2回計測した.計 測機器は定圧分布から定圧中心(以下COP)を算出するニック社製F−Scan1皿システムを用 い、矩形面積、総軌跡長、平均重心移動速度、縦最大最小値、縦移動値を算出し数値を比 較した.また加速度計は日本光電社製web−1000システムを使用し計測した.アーチサポー
トは中村プレイス社製401Nを、トルは厚さ7㎜のゴム板を踵型に切り出し本ものを使 用した.その結果4条件間における有意差は認められなかった.
静止立位における矩形面積、総軌跡長、重心移動速度で有意な群間差は認められなかっ た.動的バランスにおける矩形面積は、C条件、A条件、H条件で危険率1%の有意差、
H+A条件で危険率5%の有意差を認めた.総軌跡長は、A条件、H条件、H+A条件で危険 率1%、C条件で危険率5%の有意差を認めた.重心移動速度は、C条件のみ危険率5%の 有意差を認めた.一歩動作における重心速度は、H条件のみ危険率1%の有意差を認めた.
総軌跡長はC条件、H条件で危険率5%の有意差を認めた.それ以外の解析値は、群間に 有意差を認めず、また認めた場合において、多重比較検定で有意差を認めなかった.
PD患者の動的立位バランスでは負の加速度制御に問題を生じ、縦方向の運動の滑らかさ が健常者よりも欠けており前方向へのCOPの制御の低下を示していた.アーチサポートは その装着により、動的立位バランスにおける姿勢調整機能があり、立位での体幹前傾動作 時に前方向への制動を改善し転倒のリスクを軽減する可能 性があると考えられた.
一歩動作においてFOGにおける補高の効果は、スムーズな前方への初動、加速の少ない 下腿の振り出し、それによる下腿減遠の困難さの緩和、接地の容易さ、より構成されるこ とを確認できた.今回FOGへのアーチサポートの効果を確認に到らず今後の課題としたい.
【キーワード】パーキンソン病、すくみ足、アーチサポート、COP、加速度
1.はじめに
パーキンソン病(Par㎞nson−sdisease:PD)はα一シヌクレインの過剰な蓄積による黒質線 条体変性を病態基盤とする進行性神経変性疾患である.PD患者の好発年齢は50〜60歳で ある1).年齢分布は65歳以上の高齢者に多く認められる2).PD患者の転倒はADLやQOL に大きな影響を及ぼすと考えられる.大脳皮質一基底核系の出力増加は、歩行の開始、停 止や障害物を避けるなどの随意運動の障害を生じる、基底核一脳幹素の出力増加は、リズミ カルな手足の動きや無動、寡動といった筋緊張調節機能の障害を生じる3,
PD患者はこれらの障害により、姿勢保持能力低下を呈し重度になるほど転倒リスクの 増加を伴うと報告されていた4).PD患者は、健常者に比ベバランス機能に関して、身体
を支える支点となる足底圧中心(C㎝ter0fPressure;COP)の前方移動が有意に少なく5)、
下腿三頭筋の筋活動減少によりCOPが後方へ偏移すること5)6)、立位保持能力の低下を特 徴とすると報告されていた7).PD患者の立位姿勢は胸椎後腎増大に伴い不良である傾向が.
臨床上認められた.すくみ足(FreezingofGait:FOG)はPD患者の50%に発生するとされ た8け0G発生は、内部因子・外部因子にわけて考えられ、内部因子として前頭葉一基底核 系、基底核無幹系、運動器の状態など、外部因子として感覚情報刺激、重力方向などの関 与を区分して報告されていた3,FOGの運動療法は、歩行再開の手段として経験的に外部 因子(視覚刺激や聴覚刺激など)を用いることが多いように考える.多用されている外部 因子を用いた運動療法は個人差を伴い、短期的な有効性を認めるが、持続性の無さを報告
されている1)2)8).またFOGは下肢機能も関与する可能性を示唆した報告もあった9).
アーチサポートは一般的に姿勢制御、運動制御に関与すると考えられ、PD患者におけ る姿勢制御、歩行能力の改善、転倒予防にも影響を与えると考えられた.また、アーチサ ポートは、装着下であるならば持続的な刺激を与え続けられることが特徴として考えられ、
その点においても有用だと考えられた.
本研究は、PD患者の障害特性に対し、アーチサポートを用いて、外部因子としての足 部固有感覚刺激、足底触覚刺激を与えるとともに、物理的な高低差によって内部因子に影 響を与えることを考えた.本研究はPD患者へのアーチサポート装着により、姿勢制御や FOGの改善をどの程度生じるか、静止立位、静止立位からの一歩について、裸足、アーチ
のみ、ヒ』ルのみ、アーチとヒールについて、足底圧分布計測装置、加速度計を用いて明 らかにすることを目的とした.
2.対象と方法 2−1対象
健常高齢者9名(年齢74.3±3.5歳、男性2名、女性7名、身長154.0±7.31cm)、PD患 者9名(年齢70.2±5.5歳、男性3名、女性6名、身長1554±8.37cm)を対象とした.PD 患者はホーンニャール重症度分類ステージ、I:1例、■:4名、皿:2名、皿以上:2名、
発症から平均10.3土9.3年であった.PD患者は自力で歩行可能で、すくみ足を自覚する者
とした.
なお本研究実施に際し、首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の審査承認後 に計測を実施した(承認番号11068).対象にはヘルシンキ宣言をもとに本研究の目的と方 法を書面で説明を行い、同意を得た場合、同意書に署名後、計測を行った.
2.2計測装置
計測装置は、足底圧分布計F−Scan皿1システム(ニック社、50Hz)、加速度計web−1000シ ステム(日本光電、100Hz)とした.
足底圧分布計(図1)は、足型のセンサーシート上に設置された圧センサーにより、定 圧分布、COP計測した.加速度計(図2)は、縦方向をX軸、前方方向Y軸、側方方向Z 軸となるように外果に設置した.
二㌃え∴ ぷふ∴
⑥
コンラジ.。\も
図1:足底圧分布計と足型センサーシート
〕zぐ
図2:加速度計と設置位置
2.3アヒチサポート
アーチササポートは中村プレイス社製401N(図3)を用いた.
ヒール部分は厚さ7㎜のゴム板を踵型に切り出したものを自作 して使用した.
図3:アーチサポート 2.4連動課題
計測空間は、視覚・聴覚刺激の少ない状況下で行った.対象は計測空間でロンベルグ肢 位とした.視線は水平前方を見るように指示した.
運動課題は課題1:静止立位バランス課題、課題2:動的立位バランス課題、課題3:一 歩動作課題とした.課題1は、静止立位保持を10秒間2回計測した.課題2は、最大体幹 前後傾動作を行った.対象はロンベルグ肢位から上肢を肩関節90度屈曲位として、験者の 1〜10の声がけにあわせて、前方4秒、後方4秒、2秒中間の計10秒間体幹の屈曲・伸展 を行った.計測は2回行った.課題3は、課題に先立ち対象の最大一歩幅を計測し、60%
にあたる位置に目標を設置した.計測はロンベルグ肢位から、目標位置に向かって、一歩 を右足より踏み出し、左足を揃えるまでとした.計測は験者の声がけにて開始して2回行 った.3種類の課題は、それぞれについて4条件(1)裸足(C)、(2)アーチ(A)(3)ヒ ール(H)、(4)両方(H+A)に対して行った.計測は、右足底のCOPの変化(課題1,2,
3)および右外果部の加速度(課題3)とした(図4).
く自 一一■〉
笹
録聴1 録聴二
回4:課題動作
機
器聴、
2.5解析方法
COPより算出した解析値は、矩形面積、総軌跡長、平均重心移動速度、縦最大値、縦移 動値とした.解析は、COPの移動座標値は個人間の特異性を除くため、身長の長さで正規 化をはかった.課題3の一歩動作は足底圧分布計と加速度計のサンプリング周波数が異な り、一歩動作の時間も異なるため、自然3次スプライン補間を用いてデータのサンプル系 列から全データのサンプル数が同じ長さになるように時間軸の正規化を行った.時間軸は 運動課題を100%とする%表示とした.COPの解析は危険率1%のもと、静止立位におけ
るCOP平均値は一元配置分散分析、それ以外は二元配置分散分析を行い、有意差のあるも のについて危険率1%、5%におけるTukeyの多重比較検定を行った.
3.結果
3.1COP軌跡
1・舳κ鮒 一.
1蛎:液1け位バランス:二おけろlW㈱組1)
ノ之1:高市Iヒ、tfヴ;二才ぶ㌃ろ( Oザ (c㎜)
・r均腋 般人値 最∫1・航
健常{鮒碓
前後 C条件 33.61二〇.3 34,1 33.O 〈条{吋=33.壮O.3 33,8 32,4 11条件 32.6±O.二 33.1 3〕、l H+A条打1: 31.3±O.2 3I.7 30.7 内外側 C剣 仁 12、ポ。,o 12,7 12.5 〈条1年 12.ポO,1 12,7 12.4 H条咋 12.5±0.l 12,6 12.3 H÷一く禾咋 12,6±O,O 12,7 12,5 P一)患打鮮
前後 C条件 34.3二〇.3 34,9 33.5 〈条例=3218一 I0,2 33,3 32.2 H条住 34.1士O,2 34,8 33.6 1けA条州=32.4±O.3 33,1 31.7 内外側 C条例113.4二〇、l 13,6 13,3
A条f {二 13.2、 、O.1 −3,3 12.O
H条件 13.いO.1 13,2 13.O Hl〈・条件 13.けO,l 13,3 12.9
表2:動的、 位バランスにおけるCOP(c㎜)
最大値 最小艇 変化埴 舳:動的立位バランスにお1する(w(識艶)
lwム汽一併
図7:・松鋤f乍:二おけろ。o1〕(■課題3)
継常{榊僻 舳後 c条件
く条件 11制 11 l1+〈条件 内外側 c条件 く条件 11条件 11+〈条咋
P【).倣仔締
舳董 C条f乍
く条f 1:
l1条件
11一十・〈刹年 内外側 ( 矧年
く条件 11禾咋 111〈条件
35,8 37,3 35,3 34,9 12,9 13,3 35,3 13,0
36,8 34,7 35,3 33.9 1319 13,3 13,5 13.3
21,2 14,6 25,4 11,9 25,6 9,7 23,9 1一、O l l.4 115 11.8 1,5 25.6 9,7 11.7 1,3
25,6 11,2 25.9 8,8 25.6 917 25−2 8,7 13.l O.8 12,5 0,8 12.8 0,7 12.4 0.り
静止立位におけるCOPは、表1のようにな った.COPの平均値は、内外側方向における 健常高齢群のC条件とH+A条件、PD患者群 のA条件とH+A条件以外に統計的な有意差 を認めた.最大値、最小値に関しては、平均 波形から算出しており、統計的な検討は行わ
なかった.
動的立位バランスにおけるCOPは、表2 のようになった.パラメータは平均波形から 算出しており、統計的な検討は行わなかった.
前後方向における変化量は、健常高齢群とPD 群において、H条件以外で健常高齢群の変化 量が大きくなった.H条件は同じであった.
PD患者群の方が動的立位バランスの反応は 少ないと言えた.
・歩…劉』f乍ミニ方j:ナろCOP (cm)
帷締高附淋 前後 C条何:
〈条件 H条件
11+〈灸f ll l ・1外側 C条何1
〈条件 1冊1年
11+A条f 1=
1,『)鮒片縦
舳後 c条件 く条f生 11村ト H+A条件
「勺外側 C条件
く条仲 H条件 11山く条件
ムとノく寸沌 ∫壱一・{直 変fヒ地1
34,4 37,3 34,9 32,8 12,5 12,7 12,9 13.4
3617 34,5 37,1 33,7 13,4 13,3 14.l 13,8
16,2 17,1 21,7 21.3 4.7 5.6 6.り 6,7
25,8 19,2 25,3 24.0 9.9 7.3 9.1 8.9
18,2 20,2 13,2 11.5 718
7.1 6,0 6,7
10,9 15,3 11.8 9.7 3.5 6,0 5.0 4,9
一歩動作におけるCOPは、表3のようになった.前後方向における変化量は、健常高齢 群とPD患者群とにおいて、健常高齢群の変化量が大きくなった.内外側方向の変化量も 健常高齢群の変化量が大きかった.
3.2COP軌跡の解析値の統計的な検討
COP軌跡の解析値は、二元配置分散分析により、健常高齢群とPD患者群の群間の比較 を行った.静止立位における矩形面積、総軌跡長、重心移動速度などで有意な群間の差は 認められなかった.動的立位バランスにおける矩形面、COP前後移動範囲、総軌跡長、COP 移動速度で有意な群間の差を認めた.一歩動作における一歩重心速度、一歩総軌跡長に有 意な群問の差を認めた.さらに群間に有意差をみとめたものに対して、各条件間の多重比 較をTukeyの方法を用いて行った.
動的バランスにおける矩形面積は、C条件、A条件、H条件において、危険率1%の有 意差を認め、H+A条件は危険率5%の有意差を認めた.総軌跡長は、A条件、H条件、H+A 条件で危険率1%、C条件で危険率5%の有意差を認めた.COP移動速度は、C条件のみ危 険率5%の有意差を認めた.COP前後移動範囲は、A条件、H条件、H+A条件で危険率1%、
C条件で危険率5%の有意差を認めた.
一歩動作における重心速度は、H条件のみ危険率1%の有意差を認めた.総軌跡長はC 条件、H条件で危険率5%の有意差を認めた.
それ以外の解析値は、群間に有意差を認めず、また認めた場合において、多重比較検定 で有意差を認めるものはなかった.
(mm二)
1・
1二1
運1 川
逼舳 当
量 .I
』 211
n C条住 A条件 11条件1州条件 図8:矩形而積(動的立位バランス)
(mm)
300 250 卓=OO 量毒15o
藻。。,
50
0 C条件 A条件 H条件11+A条件 図10:総軌跡長(動的立位バランス)
(mm)
蘂 }I フ川1 州冊
噂舳ξ 尋書棚 無用
二1州 11111
し条仲 .、条件 H条例H+A条件 図12:総軌跡長(・歩動作)
6
)
τ=4
揖
言3
詮
逆2
0
図9
(㎜1)
C条住 A条住 1i条件1いA条{牛 前後移動範開(動的★1位バランス)
(m㎜ scc)
ll.1衛
.;仙
包・.^
碧【o.!n
禽
漣 ,、馬
U U.111
. ,1
0 図11:
C条件 A条件 11条件 11・A条件 COP移動速度(動的立位バランス)
(mm/seゼ)
一、6 1.I l.=望 景ザ・
言 ,.。
連
; i・^
l1.l i l.!
C条件 ^条件 H条作出^条件 閑13:COP移動速度(・歩動作)
34加速度の一歩繰題の結果
一歩動作課題において測定した一歩の動き出しから着地まで時間を100%とし正規化し た外果の加速度波形を4条件それぞれについて算出した.健常高齢群のものを図16,PD 患者群のものを図17で示した.グラフ横軸が時間、縦軸が加速度である.加速度Xが上 下方向、加速度Yが前後方向、加速度Zが左右方向を示し、それぞれ上・前・右方向が正
である.
健常高齢群、PD患者群では波形パターンに大きな違いを認めた.
PD患者群では多様性のある運動を呈していた.PD患者群は、加速度上下方向のX成分 において、一度下方に下がってから動き出すという傾向が顕著であった.PD患者群のH 条件では前後方向の加速度Y値がはじめから前方へ移動していたがそれ以外は後方に戻っ たあと一歩の踏み出しを呈した.
I」r一.■一一}
1、、1
二…1義11=二/
∴∵
裸足 ヒール
舳加、 ・帖里 1 沖如一・ 一ユ三測一・ . 叱!州1
槻 ヒ・ル
ヨ棚拠、
革舳態1
−I↓ 油舳竈
舶一八l l :軌期1
…醐一一・ ;舳〃1 ヨ的 1. ;1苅口=
ア・チ 両方 図14:健常高齢群加速度波形
アーチ 砺 図15:PD患者群加速度波形
4.考察
4.1PD患者の静止立位バランスについて
静止立位におけるCOPの平均値は、内外側方向における健常高齢群のC条件とH+A条 件、PD患者群のA条件とH+A条件以外と前後方向における4条件で統計的な有意差を認
めた.健常高齢者に比べPD患者では静止立位バランスが低下していた.ヒールの挿入、
アーチの挿入それぞれで静止立位への影響が認められるが、両方の装着では逆に挿入の効 果が現れにくくなる可能性があった.ヒール、アーチいずれでも単体の使用が望ましいと 考えられた.
4.2PD患者の動的立位バランスについて
動的立位におけるCOPは前後方向における変化量は、健常高齢群の変化量が大きくPD 患者群の方が変化量は少なく、またPD患者群では健常高齢群と比較して4条件すべてで 矩形面積の減少と平均COP移動速度の低下を認めた.これはPD患者の顕著な動的立位バ
ランス能力の低下を示していると考えた.総軌跡長は4条件すべて減少しているが、これ は動的立位バランス課題においては、PD患者の場合がならずしもバランス能力の良さと
してではなく、むしろこれらはPDの無動、寡動、姿勢調整障害が反映されたものであり バランス能力の低下を示すものと考えた.これは先行文献の記述とも一致する1)9).また、
動的立位バランス課題Contro1条件のとき、PD患者群で縦移動距離は減少しているにも関 わらず縦最大値は逆に有意に増加していた.これは水野らによればPD患者では負の加速 度制御に問題を生じており、縦方向の運動の滑らかさが健常者よりも欠けているとされ13)、
この結果も前方向へのCOPの制御の低下を表しているものと思われた.移動距離自体は減 少しているにもかかわらず前方への最大値増加がみられたことから、この時PD患者は体
幹前傾動作時に前方向へCOP安定域から逸脱しやすい状態、つまり前方へ転倒しやすい状 態になっていると考えられた.これは立位での前方へのリーチ動作といった日常生活で頻 繁に行われる動作においてPD患者の易転倒性を示唆しているものと思われた.
413PD患者の一歩動作とすくみ足について
一歩動作におけるCOPρ前後方向における変化量は、健常高齢群とPD患者群とにおい て、健常高齢群の変化量が大きくなった.これは一歩動作においてPD患者ではCOP変化 量が少なく、無動やFOGの影響を表している可能性があると考えられた.
PD患者の一歩動作について加速度の結果をみると、H条件でのみPD患者は一歩動作の 動き始めで一度Y方向成分において後方へ動かすことなく最初から前方へ下腿を振り出せ ていた、またCOP軌跡においてもH条件では矩形面積、総軌跡長の減少を有意に確認し た.これらよりPD患者においては補高がスムーズな前方への下腿の振り出しを行いやす
くし、すくみ足の改善に有効であることが確認できたと考えた.
またH条件における一歩動作の特徴を考察した.H条件での下腿の振り出しは、加速度 においてX,YZ方向すべてに他条件より波形が平坦であり加速が少ない状態を示し、また 同時にCOP移動速度も有意に低下していた.このことからH条件では下腿の後方への加 速の反動を用いないスムーズな下腿振り出し動作の初動の後、遊脚状態である動作中もあ まり加速をせず比較的ゆっくりとしたクリアランスの少ない、すり足に近い一歩動作を行 っていたと推測した.このような速度を低下させた動きの少ない下腿の振り出しでは、同 時にPD患者にとって困難な負の動きの制御の必要性も減少させることができる効果が期 待できると考えた.振り出し動作終わりの足部接地時では、H条件では他3条件の場合に くらべ接地に伴う振動がほとんど出現せず、よりスムーズな接地を示す結果であったと推
測できた.
4−4アーチサポートの効果について
先の考察でも述べたとおり、今回の研究結果でPD患者では健常高齢者と比較して静止 平位バランス、動的立位バランス能力、および一歩動作遂行能力において低下を認めた.
静止立位においてアーチを使用する場合、単独の使用が望ましいことが推測された.
動的課題におけるA条件での結果ではPD患者群は健常高齢群と比べ矩形面積、総軌跡 長、縦移動値において有意に減少を示していた.しかしCOP移動速度、縦最大値では有意 差は認められなかった.一方C㎝tro1条件ではこれらの全項目で健常高齢群と有意差を認 めていた.つまりContro1条件ではCOP移動速度と縦最大値に有意差が生じていたにもか かわらずA条件で健常高齢群とPD患者群で差が無くなっていた.これはA条件ではCOP 移動速度が低下し縦最大値が減少していたことを示し、PD患者はアーチサポート装着に より体幹前傾動作時に前方向へCOPの安定域からの逸脱しやすさを軽減し姿勢を制動し やすくなりCOP速度のコントロールも改善していたと考えられた.アーチサポートはその 装着により、動的立位バランスにおける姿勢調整機能があり、立位での前方向への制動を 改善し転倒のリスクを軽減する可能一性があると考えられた.
一歩動作において今回実験ではヒールの有効性を確認することができたがアーチの効果 を確認するに到らなかった.この検証は引き続き今後の課題としたい.
今回群内条件間比較の結果では有意差は認められなかったが、これはPD群内では各条 件間で計測されたCOPの差異は非常に小さなものであったためと考えた.また対象は薬物
コントロール下の者であり測定は。n時に行ったため今回FOGの影響が十分測定結果に映 されなかった可能・性も推測された.
5.鰯
PD患者の静止立位バランス低下に対しヒール、アーチともに影響を及ぼすがいずれの 使用でも両方の装着より単独での使用が適切である可能一性が推測された.
PD患者の動的立位バランスではPD患青では負の加速度制御に問題を生じており、縦方 向の運動の滑らかさが健常者よりも欠けており前方向へのCOPの制御の低下を示してい た.アーチサポ』トはその装着により、動的立位バランスにおける姿勢調整機能があり、
立位での体幹前傾動作時に前方向への制動を改善し転倒のリスクを軽減する可能一性がある と考えられた.
一歩動作において今回すくみ足における補高の効果を確認することができた.その効果 は、スムーズな前方への初動、加速の少ない下腿の振り出し、それによる下腿減速の困難 さの軽減、接地のスムーズさ、より構成されていたと考えられた.アーチサポートの効果 を確認するに到らなかった.この検証は引き続き今後の課題としたい.
6.謝辞
本研究にあたりご指導いただきました池田誠先生及び諸先生方、ご協力いただきました 対象者の皆様に深く感謝いたします.
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E価㏄tiv㎝es§of伽e㎜lhs叩Poれi11so16㎞rP肛㎞s㎝一sdis曲sepatiemts
<Abstracレ
The purpose of this s伽dy is to assess the impact of the p1antar arch suppo血。n the improvement of1)static standingba1ance,2)dynamicミta−nding ba1ance,and3)freezing of gait,in PD patie耐s−In this study,we exa血 ned the di舖erences between the two groups of COP in Parkinson,s disease patients(PD)and hea1thy e1der1y group(contro1)for the stadc standing ba1ance,the dynamic standing b出mce aod the one step operadon.During operatio干。ne step,we have verified it m♀asures the a㏄e1eradon of the foot−W6 exan㎡ned曲e dif6erences in the four condidons,曲at is(1)barefoot(condition contro1),(2)
hee1(c6ndition H),(3)arch support inso1e(condition A)and(4)both肌。h support inso1e and hee1(conditions H+A),in motor tasks−Subjects were㎞ne PD patients and nine hea1thy e1der1y−W6have measured for10seconds,twice for each亭u吋ect.W6used the F−
Scan■system made by Ni胞to ca1cu1ate the foot pressure center(COP)from the foot pressure dis血ibuせ。nmeasurement.W6comparedthe rec伍ngu1町area,the toωpath Iength,
average COP moving speed,maximum vertica−direction,a皿d the vertica1movement disセmce.Wさmeasured foot a㏄e1emdon using the a㏄e1erometer web−1000System m㎜ufactured by Niho皿Kohd㎝.The arch support inso1e used was401N man誠ac鮒ed by
N吐amuraBrace.Thehee1wascutbyourownmbberp1ate,whichhasathic㎞essof7㎜.
As a resu1t,there was no sig血血。ant di舐erence between the£our condidons.In the sta−tic s痂ding ba1ance,曲ere was㎡o sign脆。㎜t di揃er㎝ce iηthe average COPmoving speed曲e rectangu1aエarea,and the tota1path1e11g=h.
In the dynamic standing b創ance,we found sig血ica皿t di揃erence the rectang阯aI−area and the toωpath1en鋲h with the four conditions,and we found sig㎞ica皿t di舐erence the average COPmoving speed with曲e condition con血。L In the one step opera丘。n,there is a signiica皿t di揃erence in moving speed COPconditon H,曲ere was a significant di舐erence
inthetotaIpath1eng血㎜dHcondidonC.Therewasnosign脆。a皿tdi揃erenceintheother
between the two餌。ups.W6was fomd that PD had a problem in the forward direclion of the acce1eradon con血。1.And we found that曲e Arch support insoIe bad a funcdon of
posturecontro1toforward.It肥duqesthehskoff捌s.E舐ectofcondtionHforFOGwas
composedby smoot㎞ess ofsta耐,a s1ow swing,easeofdece1eradon−a皿dl㎜ding.AStudy
on the E茄ect of arc1h supPort iI1so1e is a cba11enge for future、
Key words:Parkinson,s disease,freezing ofgait,arch suppo血inso1e,COP,acce1eradon