原 発 性 ・ 転移 性肺腫瘍における接着分 子C D 4 4 発 現に 関する研究
‑
P5 3 蛋白発 現と K r a s点 突 然 変 異との 関 連 ‑
金 沢 大 学 医学 部 医 学 科 外 科 学 第1講 座 ( 主 任: 渡 辺 洋 字 数 授)
春 原 智 之
C D 4 4分 子は選 択 的スプ ラ イ シング機 構に より, 標 準 型C D 4 4 (C D 4 4 sta nda rd fo r m ,C D 4 4s) と変 異 型 C D 4 4 (C D 4 4
V aria ntfo r m ,C D 4 4v6) を 発 現し, 痛 転 移に関連し ている といわ れ ている. 原 発 性 非 小 細 胞 肺 癌11 6例, 転 移 性 肺 腫 瘍9 0例 を対
象にC D 4 4s, C D 4 4v6, p5 3蛋 白 発 現 を 免疫 組 織 染 色 法を用い測 定し, また, Kr a s 点 突 然 変 異 (コ ドン1 2) の有 無 をドッ ト プロ
ッ トハイプ リ ダ イ ゼ ー ショ ン法 を 行い検 索し, 各因 子 間の相 関, 臨 床 病理学 的 因 子との関 連 を 検 討し た. 原 発 性 非 小 細 胞 肺 癌 に おける各 因 子の陽性 率は C D 4 4s, 3 4.5 %( 腺 病, 3 0.9 %, 扁 平上皮 痛, 3 9.6 %) , C D 4 4v6, 6 0.3 % (腺 病, 4 4.1 %, 扁 平上皮 痛,
幻.3 %), p5 3蛋 白, 4 9.1 % ( 腺 胤 3 8.2 %, 扁 平上皮す軋 64.6 %), &r a s 点 突 然 変 異3 3.0 % (腺 病, 4 2.6 %, 扁 平上皮 痛, 2 0.0 %) であ
っ た・ C D 4 4s 発 現は高 分 化 型で有 意に高 く (p<0.0 5), C D 4 4v6発 現は腺 病に比べ扁 平上皮 痛で有 意に高か った (p<0.0 5) . C D 4 4v6 の発 現と リン パ節 転軌 遠 隔転 移の有 無の相 関は認め ら れ な かっ た が, 腺 病で はp5 3蛋 白 陰 性 症 例, Kr a s 野生型症 例
の両者で, C D 4 4s 発 現は リン パ節 転 移 陰性 症 例, 遠 隔転 移のない症 例で有意に高かった b<0.0 5). Kr a s 点 突 然 変 異と C D 4 4s,
C D 4 4v6発 現に は相 関は認め ら れ な かった. 治 癒 切 除 症 例7 4例の検 討で は, C D 4 4s 発 現の低い症 例の予 後は有 意に不 良であっ た ゎ<0.0 5). 転 移 性 肺 臆 壕に おける各因 子の陽 性 率は C D 4 4s, 2 4.4 % (上皮 性 腫壕, 3 4.7 %, 非上皮 性 腫 壕, 1 2.2 %), C D 4 4v6,
3 5.6 % (上皮 性 腫 瘍, 4 乱0 %, 非上皮性 腫瘍, 1 9.5 %), p5 3蛋 白, 3 5.6 %(上皮性 腫瘍, 3 4.7 %, 非上皮性 腫瘍, 3 6.6 %), Kr a s 点 突 然 変異, 3 3.3 %(上皮 性 腫瘍, 4 7.7 %, 非上皮性 膿 瘍, 1 6.2 %) であった. C D 4 4s, C D 4 4v6 発 現ともに非上皮 性 腫 瘍 肺 転移 巣に比
べ上皮 性 膿 瘍月市転 移 巣で有 意に高かっ た b<0.0 5). 特に大 腸 ・ 直 腸 痛, 頭腰 部痛の肺 転 移 巣で発 現が高 く, 反 面, 腎癌, 軟 部 組織悪 性 腫瘍, 骨. 軟 骨 悪 性 腫 瘍の肺 転 移 巣で発 現が低かった. K r a s 点 突 然 変 異の頻 度は非上皮性 腺 癌 腫 瘍 肺 転 移 巣に比べ 上皮性 膿 劇市転 移 巣で有 意に高く b<0.0 5), 特に大腸 ・ 直 腸 痛肺転 移 巣で高かっ た. 無 再 発生存 率は, 上皮 性 腫 瘍に比べ非上 皮 性 腫瘍で有 意に低 くbく0.0 5), 非上皮 性 腫 瘍ではp5 3蛋 白 発 現 陽性 例で有 意に低か った(p<0.0 5). 原 発 巣 別に み る と大 腸 ・ 直 腸 痛で は, C D 4 4s陽 性 例で有 意に低 く (p<0.0 5), 軟 部 組 織 悪 性 腫 瘍, 骨 ・ 軟 骨 悪 性 腫 瘍で はp5 3蛋 白 陽 性 例で有 意に低かっ たb<0.0 5). C D 4 4v6発 現 と 無 再発 生 存 率の間に相 関はなかった. 以 上の結 果か ら, 原 発 性 肺腺 痛に おいて は, p5 3遺 伝 子 異常,
K‑r a S 点 突 然 変 異のない症 例では C D 4 4s 発 現は転移 を抑制 する働 き をし ていること が示 唆さ れ, 原 発 性 非 小 細 胞 肺 癌で は
C D44s, C D 4 4v6 の発 現は予 後 予 測 因 子に なり うること が示 唆さ れ た. 一 方, 転 移 性 肺 腫 瘍で は, 非上皮 性 腫 瘍でp5 3蛋 白の
発 現が, 大 腸・ 直 腸 痛で C D 4 4s 発 現が肺 転 移の発生 に関 与し ている可 能性が示 唆さ れ た.
Eey w o rds n o n‑S m all c ell lu ng c a n c e r, m eta Staticlu ng tu m o r,C D 4 4,p5 3pr otein
,K r a s
悪 性 腫 瘍の大 きな特 徴のひ とつ に転 移 能の猿 得があ げら れ る. 転 移は悪 性 腫 瘍の治 療を困 雉なものに して いる大 きな要 因 であり, 複 雑な生 物 硯 象の結果と し て成立 する転 移の メカニズ ムを 解 明 する た め, 多くの研 究が行わ れ てきた. 最 近で は, 分 子生物 学の急 激 な 進 歩に よりこ の分野の研 究 も大 きな進 展 をみ せ て おり, 特に, 接 着 分 子 群と痛 転移の関連につ いて さま ざま な知 見が集 積 されつ つある. 接 着 分子は構 造上の類 似 性か ら イ ンテ グ リン ファ ミ リ ー , カ ドヘリン ファ ミ リー , セレク チン フ
ァミ リ ー , イム ノダロブ リン ス パ ー ファ ミ リ ー , C D 4 4 ファ ミ リ ー の5 種 類に分 類さ れ, その機 能は多様である. 転 移との関 連 とし て は, 食道 癌, 胃 痛, 乳 癌に おける カ ドヘ リン の発 現 減 弱お よ び カ テニ ン の異 常1), 大腸 癌, 肺 癌に おける糖 鎖 抗 原と セ レ ク チン の関 連2 川, 肺 癌, 腎 痛, 大 腸 痛に おける インテ グ り
ン4 ) ti), な ど が報 告さ れ ている.
C D 44 は接 着 分 子のひ とつ であ り, その遺 伝 子に は少なくと も2 0の エクソ ンが認め ら れ る. m R N Aの成 熟 過 程で, エクソ ン 1 、5(1s 、5s) とエ クソ ン1 6 、2 0(6s 〜1 0 S) が選 択 的スプ ラ イ シ
ング に より 発 現し た糖 蛋 白 質が標 準 型C D 4 4 (C D 4 4 声ta nda rd fo r m, C D 4 4s) である. C D 4 4sで は党 規さ れ ないエクソ ン6 、‑15 (1v 、1 0v) が選 択 的スプ ラ イ シング に よりエクソ ン5sと6sの間 に挿入 さ れ発 現し た分 子が変 異 型C D 4 4 (C D 4 4 v a ria ntfo r m , C D 4 4v) であ り, その中でも特にエクソ ン6vが挿入 さ れ発 現し た分 子が C D 4 4v6 と呼ば れ, エクソ ン8v 〜1 0vが挿人 さ れ発 現し た分 子は 上皮 型C D 4 4 (C D 4 4 epithelial fo r m ,C D 4 4 E) と呼ば れ る7 ). 1 9 9 1年ラッ ト膵 痛 由 来 細 胞 株に おいて, 転 移 能 を 有 する 細 胞 株と転 移 能を有さ ない細 胞 株の遺 伝 子 解 析に て, 転 移 能を
平 成8 年1 2月9 日受付, 平 成9 年2 月4 日受理
Abbr evi atio n s : C D 4 4 E, C D 4 4 epi th elial fo r m; C D 4 4s, C D 4 4 stan d ard fo r m ;C D 4 4v, C D 4 4 v a ria ntfo r m ;C D 44v6,
C D 4 4 v a rian tfo r m e xpr e s s ed e x o n v6; D A B, 3,3 1‑dia min obe n zidin e tetr ahydr o ch lbride; D F S ,d is e a s e‑fre e s u rviv al; P B S, pho sphate‑bu鮎r ed sal in e;3生率, 3 年生存 率; 5 生率, 5 年生存 率
肺腫 瘍に おけるC D 4 4, p5 3蛋 白, K‑r a S
有す る細 胞 株に は C D 4 4分 子の変異が見ら れ, こ の変 異 型C D 4 4 を転移 能がない細 胞 株に導入する と高 頻 度に肺 転 移 巣を形 成 す ること が報 告さ れ た8,. 以 軋 C D 4 4分 子と転 移との関 連が注目 さ れ, 特にエクソ ン6vの挿入 さ れ た変 異型C D 4 4 (C D 4 4 v a ria nt f。 r m e Xpr e S S ed e x o n6,C D 4 4v6) と転 移との関 連が種々 の悪 性 腫瘍で報 告さ れ た. し か し, 原 発 性非 小細 胞 肺 癌に おいて はい まだC D 4 4 と転 移との関 係は明 白で なく 予 後に及ぼす 影 響 も 未 知である. また, 細 胞 株 を 用い た実 験に おいて C D 4 4の発 現を 制御し ている因 子と し て痛 遺 伝 子r a sがあ げら れ る桝. r a s 遺 伝 子は点 突 然 変 異に より 活 性 化し, さま ざま.な正常 細 胞に悪 性 形 質を付 与し て転 移 能 を 獲 得さ せ, 悪 性 腫 瘍の転 移 能 を 増 強 する‑ 叫 1 2). また, 痛 抑 制 遺 伝 子p5 3の不 活 化に よ るp5 3蛋白 過 剰 発現と ともに, 原 発 性 非 小 細 胞 肺 癌に おいて発病 機 構に重 要な 役割 を 担っ ている と考 えら れ ている1:l )■1 7). し か し な が ら, 原 発 性 非小 細 胞 肺 癌に おけるr a s遺 伝 子 活性 化, p5 3遺 伝 子 不 油 化と C D 4 4 発 現の3者の関 連についての報 告は ない.
悪性 腫 瘍の転 移に おいて, 肺に転 移し やすい腫 瘍, 肝に転 移 し やすい腫 瘍, 骨に転 移し やすい腫 瘍, リン パ節に転 移し やす
い腫 瘍な ど, 転 移の臓 器 特 異 性があること が知ら れ ている1 8 )・
マ ウスを 用い た実 験で は, 肺に転 移 性 を 有 する細 胞 株と C D 4 4
2 1 5
の発現の関 連 性が報 告さ れ1 t り2 1 ), C D 4 4 と臓 器 特 異 的 転 移の関 連が示 唆さ れ てい る. 臨 席 的に み る と転 移 性 肺 睦 瘍に おいて,
上皮 性 腫 瘍の肺 転 移に比べ, 非上皮 性 腫 瘍の肺 転 移は 2 次 的 な 所 属リン パ節 転 移 を きた し にく く3 2 I, 切 除 後の予 後 も 非上皮性 腫 瘍で不 良である という 事 実がある2:‑). こ の相 違を, 生 物 学 的
アプロ ー チを 用い明ら か に し た報 告は少なく, 転 移性 肺 腫 瘍に
つ いて C D 4 4 の発甥を検 索し た報告 も 極め て少ない2 d).
本 研 究は, 原 発 性 非 小細 胞肺 癌に おける C D 4 4s と C D 4 4v6 の発 現 を 検 索し, 臨床 病 理 学 的 因 子, 転 移お よ び予 後との関連 を明ら か に し, さ ら に K‑r a S点 突 然 変 異と C D 4 4 発 現, P5 3黄白 発 現と C D 4 4 発現に関 連がある か どうか を検 討し た. また, 転 移 性 肺 膿 瘍について同様な検 討を行い, こ れを上皮 性 腫 瘍 肺 転 移 巣と非上皮 性 腫 瘍 肺 転 移巣に分 け 検 討 を 行うこと に よ り, 両 者の生 物 学 的 相 違を明ら か に し, 肺に形 成さ れ る悪性 腫 瘍に お け る C D 44, p5 3蛋 白, Kr a s 点突 然 変 異の役 割を明ら か にする ことを目的と し た.
対 象お よび方 法
.l . 対 象
1 9 8 8年〜1 9 91年の期 間に金 沢 大 学 医 学 部 第1外 科で 切除さ れ
Tab le l・ C linic opa thologl C alfind ingsin l 1 6 prim a ry n o n‑S m allcel1 1u ng c a n c e r ca s e s
Clinic opa thologlC al find illgS
No.(%)ofc as e s A
l 1 A denoca. E pi de r m oi dc a.
No.ofca ses e x a min ed
A ge
Sex M ale Fe m ale
e
A B g I
Ⅱ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅳ St a
T fac te r
T I T 2 T ニミ
T 4
N fa c ter
N O N l 、 N 3
M fa c t e r M O M I
D i ff tr entiatio n Well M oderat el y Po o rl y
1 1 6
6 6.4 ± 1 0.4射
8 4(7 2.4) 3 2(2 7.6)
3 2(2 7.6) 1 5(1 2.9) 3 3(2 8.4) 1 4(1 2.1) 2 2(1 9.0)
3 0(2 5.9) 5 1(4 4.0) 1 6(1 3.8) 1 9(1 (i.4)
5 1(4 4.0) 6 5(56.0)
9 6(8 2.8) 2 0(1 7 .2)
4 4(3 7.9) 43 ( 37.1) 2 9(2 5.0)
6 8(5 8.6)
6 4.8 ± 1 1.3̀l)
4 4(6 4.7) 2 4(3 5.3)
2 3(33.8) 8(1 1.8) 1 5(2 2.1) 8(1 1.8) 1 4(2 0.6)
2 4(3 5.3) 2 8 ( 4 l.2) 6( 8.8) 1 (〕(1 4.7)
3 0(4 4,l) 38(5 5.9)
5 6(8 2.4) 1 2(1 7.6 )
3 5(5 1.5) 1 8( 26.5) 1 5(22.1)
4 8(4 1.4)
6 8.6 ± 8.3a1
4 0(8 3.3) 8(1 6.7)*
9(1 8.8) 7(1 4.6) 1 8(3 7.5) 6(1 2.5) 8(1 6.7)
6(1 2.5)* 2 3(4 7.り) 1 0(2 0.8) り(1 8.8)
2 1(4 3.8) 2 7(5 (う.3)
4 0(8 3.3) 8(1 6.7 )
9(18.8)* 25 (5 2.1)* 1 4(29,2) Ade n o c a.,ade n o c a r cin o m a;eP i der m oi d c a・,eP ide r moid c a r cino ma・
a)Ye a r s.言± S D .
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p<0.0 5.