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培地調製法がもたらす分離生物種の差異と新規微生物の探索

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2016 年 2 月 10 日

培地調製法がもたらす分離生物種の差異と新規微生物の探索

応用生物科学専攻 生命分子化学講座 応用菌学 山岸 彩沙

1.背景と目的

環境中に存在する微生物は遺伝資源として重要であるが、現在単離培養されている微生物数は全 体の 1%にも満たないと推測されている。これらの生物遺伝資源を最大限利用するためにより多くの 未知微生物の培養化が望まれており、そのための新規技術や手法が求められている。先行研究にお いて、培地中に含まれる寒天とリン酸塩の同時滅菌が環境由来のコロニー形成に負の影響を与え、

別滅菌による培地調製法がコロニー形成率ならびに新規性の高い細菌の培養効率上昇に効果的で ある事が明らかとなった。これを受けて本研究では、寒天とリン酸塩の別滅菌による培地調製に加 え、①嫌気微生物を対象とした単離、 ②増殖の遅い微生物のみを対象とした単離、を行う事で、

新規微生物獲得のさらなる効率化を目指した。

2.方法

寒天とリン酸塩の同時滅菌および別滅菌により調製した 2 種類の寒天培地に、北海道大学の林と 池から採取した土壌・底泥試料を段階希釈した後塗布し、25oC・暗所下、好気または嫌気条件にお いて培養した。3 週間の培養過程で生じたコロニーを経時的にカウントし、異なる培養法が単離可 能な微生物数に及ぼす影響を評価した。さらに、培養 7 日目以降に形成されたコロニーを増殖速度 の遅い微生物として単離した。これらの単離株の 16S rRNA 遺伝子の部分配列を決定し、BLASTClust により互いに 97%以上の相同性を持つものを一つの Operational taxonomic unit(OTU)として分類 した。先行研究で単離された微生物のデータも含め、それぞれの OTU について RDP Classifier に より属、科、目レベルでの新規性を調べ、各培養条件での新規微生物の取得割合を算出した。

3.結果と考察

コロニーカウントの結果から、嫌気培養を含む本研究で実施した全ての環境試料・培養条件にお いて、先行研究の結果と同様に寒天とリン酸塩の別滅菌による培地調製法がコロニー形成率の上昇 に効果的である事が示された。嫌気培養で単離した 168 株について解析をおこなったところ、寒天 とリン酸塩の別滅菌による新規微生物の獲得効率向上効果は確認できなかった。一方で、好気で増 殖が遅い微生物として単離された 225 株を解析した結果、寒天とリン酸塩の別滅菌により新規微生 物の獲得効率の大幅な向上が確認された。その中には目レベルでの新規性が提示される微生物も 4 株含まれていた。

RDP Classifier により目レベルでの新規性が示唆された株について、近縁の微生物との詳細な系 統学的解析をおこなった結果、そのうちの一株(SO-S.41 株)はα-Proteobacteria 綱の目レベル で新規な細菌である事が確認された。SO-S.41 株は寒天とリン酸塩の同時滅菌により調製した培地 では増殖せず、また固体培地・液体培地の双方で非常に低い増殖速度・増殖密度を示した事から、

本研究で使用した単離手法がこの微生物の単離に必須であった事が示唆された。SO-S.41 株の新 目・新属・新種の細菌としての提案を目指し、現在本株の各種生理生化学的・形態学的な諸性質の 解析を進めている。

以上から、寒天とリン酸塩を別滅菌する培地調製法と、増殖の遅い微生物のみを対象とした単離 を組み合わせる手法が、難培養かつ新規な微生物の獲得に効果的である事が示された。

参照

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