• 検索結果がありません。

人はなぜ道具を使うのか:遺伝子とミームの複雑なダンス

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "人はなぜ道具を使うのか:遺伝子とミームの複雑なダンス"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

人はなぜ道具を使うのか:遺伝子とミームの複雑なダンス

私達が道具を使うのは、もちろん、それによって効率的に目的を達成できるようにである。人間は生身 の肉体だけでは成し遂げることのできない様々なことを、道具を作り、使うことで可能にしてきた。一般 的な技術論では、人間が「主」でテクノロジーが「従」という関係が前提されており、テクノロジーはも っぱら人間がその意図に従って利用するだけのものとみなされる。

しかしながら実際のところ人間とテクノロジーの関係はこれほど単純なものではない。私達は時に「テ クノロジーとの共生」という言葉を使うことがある。このよう言葉は、たいていの場合は比喩的に「テク ノロジーをうまく使いこなすこと」あるいはそれに類することが意味されている。しかし実のところこ の語り方には単なる比喩を超えた真実がある。

「共生」とは一般には異なる生物種が相互に利益を与えあうような関係性、あるいはよりミクロな視点 からは異なる種類の遺伝子がそれぞれの表現型を通じて相互に依存しあう関係性のことである。しかし 人間においては、遺伝子とは別に世代を超えて伝播される文化もまた遺伝子と相互に依存しあう関係を 持ちうる。進化生物学者のリチャード・ドーキンスは、アイディアや表現、行動様式などの文化的産物も また、遺伝子と類比的な複製と変異と選択のプロセスを経て進化し拡散すると考え、そしてそのように して伝播される文化的な情報の単位を「ミーム」と呼んだ。テクノロジーの産物もある種のミームであ る。ミームという観点で考えるならば、人間とテクノロジーの関係は、生物的な遺伝子と人工的なミーム が、それぞれ自らの拡散の機会を増やすために互いに相手を利用するという共生関係として見ることも できる。人間はテクノロジーを利用することで自らの生存と繁殖の機会を増大させ、それによって自分 のもつ遺伝子を拡散させる。一方でテクノロジーは人間に使われることでそのミームの反復の可能性を 増大させる。私達が生存と繁殖の機会を増大させるためにテクノロジーを利用するとき、テクノロジー は私達の生存と繁殖に乗じてそのミームを複製・拡散させているのである。

一般的には人間があるテクノロジーを有益とみなせば、そのテクノロジーのミームはより広まる傾向 にあり、逆に無益または有害であればそのミームは廃れていく傾向にある。したがって人間とテクノロ ジーとは、通常は互いに利益を与えあっているとみなすことができる。しかしながら、人間とテクノロジ ーの関係は常にこのように友好的なもの(相利的なもの)とは限らない。人間にとって最も優先的に追及 されるべき目的は、個人の幸福の増大、そして人類全体の繁栄であろう。ところがテクノロジーの産物の 中には、そういった目的にほとんど資することがなく、それどころかむしろ益よりも害をもたらすほう が多いにもかかわらず、世界に蔓延しているものがある。典型的には麻薬などがそうだ。そういったテク ノロジーの産物は、人間の心理や生理の脆弱性、社会システムの脆弱性を利用して、人々がそれを使わず にはいられないように駆り立てる。このようにしてこれらの産物は人間に「寄生」し、そのことによって 生存と繁殖を続けている。

本発表では、テクノロジーがいかにして人間や社会の脆弱性を利用して、人間の幸福に資することなく 蔓延しうるかということを、いくつかの具体例を通じて考察する。そして特に、現在発展が著しい情報技 術と、現在の社会経済システムの行方がどのようなものになりうるか、あるいはなるべきかを議論する。

参照

関連したドキュメント

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

我々は何故、このようなタイプの行き方をする 人を高貴な人とみなさないのだろうか。利害得

と言っても、事例ごとに意味がかなり異なるのは、子どもの性格が異なることと同じである。その

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた

は,医師による生命に対する犯罪が問題である。医師の職責から派生する このような関係は,それ自体としては

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場

これも、行政にしかできないようなことではあるかと思うのですが、公共インフラに