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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

魚釣りリール用ギヤの高機能化による回転フィーリ ング向上に関する研究

井上, 徹夫

http://hdl.handle.net/2324/1654870

出版情報:Kyushu University, 2015, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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名 : 井 上 徹 夫

論 文 名

:魚釣りリール用ギヤの高機能化による回転フィーリング向上 に関する研究

区 分 : 甲

論 文 内 容 の 要 約

魚釣り用リールは大きく分類すると2種類あり,ハンドル回転軸と糸を巻き取るスプール軸が平 行のものを両軸リール,ハンドル回転軸とスプール軸とが90。直交しているものをスピニングリー ルと呼んでいる.現在殆どのスピニングリールでは,直交軸歯車機構として,フェースギヤを用い たギヤシステムを搭載している.フェースギヤは,ハイポイドギヤなどと比較して ピニオンギヤ 軸方向の調整が不要であり 且つ フェースギヤの加工においても 鍛造などで低コストに大量生 産が可能なことなどの特徴を有している.特に,強ねじれの歯車を使用したフェースギヤは,非常 に滑らかな回転フィーリング(巻き心地)を得られる利点がある.しかし,組立て時のかみ合い位 置調整が難しいという欠点を有している.回転フィーリングへの要求は年々厳しくなってきており,

好フィーリングを得るためのかみ合い位置調整には,多大の工数を要している.

一般に魚釣りでは,リールのハンドルを回転させて ゆっくりと糸を巻き取りながら魚を誘う.

熟練したアングラーは その日の水の濁り具合やプランクトンの量 ルアーに近づく魚の挙動も感 じると言われている.しかし,ハンドルにはギヤが直結しており,アングラーの指先にギヤ対から 発生する振動を与えてしまう.この振動が大きい場合はリールの価値そのものが低下することとな り,この振動が小さい場合は,魚の挙動や水面下の状況が正確にアングラーの指先に伝達され,よ り釣りを楽しみ釣果を上げることができる.回転フィーリングの向上と組立性の向上は,リールを 高性能化する上で,現在非常に重要な喫緊の課題となっている.

本論文は,スピニングリールに於ける最も重要な機能である回転フィーリングの向上を目的に,

組立誤差や加工誤差などの外乱にロバストなフェースギヤ 3次元修整歯面の開発 微小振動の検出 によるリール回転フィーリングの数値化 および人の指先の触覚を考慮した高機能なフェースギヤ の開発,の三つの観点から検討した研究結果をまとめたものであり全6章からなる.

第 1章は序論であり,本研究の背景と目的および本論文の構成について述べた.

第 2章では,回転フィーリングを向上させる手法として,フェースギヤの歯面修整方法を開発し た.その中で, 3次元CAD (Computer Aided Design)によるかみ合いシミュレーションにより,

フェースギヤ対のかみ合い状態、を詳細に解析し,かみ合い伝達誤差(TE: Transmission Error)を 最小化する TE制御曲線を導出した.更に,導出された TE制御曲線を有するフェースギヤの歯面 修整量と修整幅を,品質工学のパラメータ設計により最適化した.最適化された修整歯面(TE制 御歯面)を有するフェースギヤを製作してスピニングリールに組み込み,かみ合い位置の変化が,

回転フィーリングに与える影響度を官能評価により検証した.その結果, TE制御歯面を有するフ ェースギヤは,かみ合い位置の変化に対してロバストであることを明らかにした.

第3章では,回転フィーリングに影響を及ぼす製造ぱらつきの調査を目的に,リールの組立誤差

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とフェースギヤ対の加工誤差を設定し,

TE

制御歯面のかみ合い伝達誤差に対する影響度を,かみ 合いシミュレーションにより調査した.その結果,

TE

制御歯面は,組立誤差に対してはロバスト であるが,加工誤差の影響は受けやすいことを確認した.ただし,加工誤差のうちピニオンギヤね じれ角は,かみ合い伝達誤差に影響を及ぼさないことを発見し,この現象は,正面圧力角誤差とね じれ角誤差が打ち消し合ったためであることを明らかにした.一方,フェースギヤ回転誤差は,一 番大きな影響を及ぼす要因であることが判明した.その結果に基づき,金型ブランクをダイセット

に焼き巌めて固定した後に ギヤ部の放電加工を行う金型製作工程を開発し フェースギヤ回転誤 差を最小化した.以上の成果により,組立ラインにおけるライン不適合率を劇的に減少することが できた.

第 4章では,回転フィーリングの定量化を目的に,回転フィーリングの予測を試みた.初めに,

フェースギヤ対のみによる調査を行い,品質工学のマハラノビス−タグチシステム(M Tシステム:

Mahalanobis Taguchi System)を使用することで,フェースギヤ対のかみ合い伝達誤差から回転 フィーリングの予測が可能になった.更に,組立状態での回転フィーリングの予測のため,骨伝導 スピーカを使ったフェースギヤ対の振動計測・評価手法を提案した.実験により得られた振動計測 データを解析した結果,この振動計測装置は,高い感度で微小な振動の違いを識別できることが確 認され,回転フィーリングの定量化が可能となった.また,回転フィーリングに影響を及ぼしてい る歯面誤差要因を追究するため フェースギヤとピニオンギヤ歯面の

TE

制御曲線上のみを座標測 定機で測定する手法を開発した.その結果,フェースギヤ対として評価するかみ合い伝達誤差測定 だけでは分からなかった歯面誤差要因の究明が可能となった.

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章では,回転フィーリングの更なる向上を目指し,指の触覚と振動の関係性の解明を試みた.

ここでは,振動発生装置を製作し,かみ合い伝達誤差を分類した波形パターンと回転フィーリング との相関を調査した.この研究から,かみ合い周波数が刺激検出能力の最大となる周波数を超えた ときに,回転フィーリングが向上することを明らかにした.これを利用して,フェースギヤの歯面 に複数の溝を付加することにより,かみ合い周波数を高くする新しい歯面形成方法を開発した.調 査の結果,回転フィーリングは,適切な溝本数と溝幅をフェースギヤ歯面に適用することにより向 上することを明らかにした.

第 6章では,本論文の総合的なまとめと,今後の課題について述べた.本論文の研究から得られ た成果により,人の触覚を考慮した高機能なフェースギヤの開発に繋がった.

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