一
'3'Iによる甲状腺疾患の診断補遺
金沢大学医学部放射線医学教室(主任平松博教授)
道 井 貞 夫
Furthersmdiesondiagnosisoftllyroid diseasesbyusingradioactiveiodione
SADAoMIcHII
DepartmentofRadiology,SchoolofMedicine, KanazawaUniversity
(Director:Prof.H.HiramatsuM.D.)
内 容 当科を訪れた319例の甲状腺疾患患者,37例の正常 者について,1311甲状腺摂取率,唾液内排泄率,PB'3'I 交換率,1311‑T3赤血球摂取率,尿中1311排泄率等の甲 状腺機能検査法及び甲状腺Scintigramを施行し,以
下の如き結果を得た.
1) 31甲状腺摂取率は臨床症状とよく合致し,疾患 群間の重なり合いが少ないことを確め,本法に及ぼす 誤差因子について考察を行った.
2)唾液内1311排泄率は臨床症状とよく一致し,ま た機能充進症の治療経過判定に有力な方法であると考 えられた.
3)PB1311交換率(ま,100/4cの1311投与量では測定 誤差が大きく,余り診断的価値を認めなかった.
4)尿中'3'排泄率は疾患群間の重なり合いが多く,
診断上余り有意義ではなかった.
5)<<invitro"にて行う甲状腺機能検査法として,
131‑T3赤血球摂取率を測定し,正常,機能低下症にお いては諸家の成績と同じ傾向を示めしたが,機能充進 症では平均値において,約10%程諸家の成績より高 かった.著者iま本法のmechaniSmとしてHamolsky の提唱するTBP説りこついて検討し,この説が完全な ものではないが,このmechanismの説明に好都合で あることを確かめた.
6)'3'I甲状腺摂取率と唾液内1$l排泄率及びBMR
抄 録
との比較では著明な相関々係を認めた.1311甲状腺摂 取率と血中PBI,Cholesterolとでは可成りの相関々 係を認めたがPB1311交換率との比較では全く相関々 係を認めなかった.
7)単純性甲状腺腫の大きさは,その1311甲状腺摂 取率と比例することを発見し,このことから単純性甲 状腺腫の発生機序の一端として,甲状腺一下垂体一 (TSH)−甲状腺腫増大一甲状腺ホルモン生産量の正 常化というmechanismが存在することを推定した.
8)単純性甲状腺腫の年令別分布では,10代が最も 多く,20代30代と続き,10才未満では更に少なく,
60才以上では僅かに5例であった,これは諸家の報告 と一致した傾向であった.年令別の1311甲状腺摂取率 は,その平均値において20才代が最も低く(5〜6%
他の平均値より低い)他は殆んど変化のない値を示し
た、
9)T3Suppressiontestによって甲状腺機能充進 症と単純性甲状腺腫との鑑別を行い,同時に甲状腺上 位中枢と甲状腺との関係,所謂"Feedbackmechani‑
sln"について考察した.
10)58例の甲状腺疾患患者について甲状腺Scinti‑
gramを行い,悪性腫瘍の部位判定に有力な手段であ ったが,しかし直径2cm以下のSpaceoccupying lesionをScintigram上に描写するのは困難であった.
1311による甲状腺疾患の診断補遺
第3項血漿蛋白結合1311交換率
第4項1311標識ノ‑Triiodothyronine赤血球摂取 率
第5項尿中1311排泄率 第6項甲状腺Scintigram 第 3 章 検 査 成 績
第1項1311甲状腺摂取率 第2項唾液内1311排泄率 第3項血漿蛋白結合1311交換率
第4項1311標識ノ‑Triiodothyronine赤血球摂取 率
第5項尿中1311排泄率 第6項甲状腺Scintigram 第 4 章 総 括 並 び に 考 按
第 1 節 各 種 検 査 成 績 の 吟 味 第1項1311甲状腺摂取率 第2項唾液内1311排泄率 第3項血漿蛋白結合1311交換率
第 1 章 放射性アイソトープの医学への応用,即ち核 医学と称せられる新分野は,新核種の開発,放 射線測定器の進歩と相俟って,最近著しい発展 を遂げ殊に放射性ヨード'3'Iは甲状腺疾患の診 断,治療の両面に不可欠のものとなっている.
診断面では単に無機'3'Iの承としてではなく種 々の化合物に標識して諸種検査を行う様になっ て来た.Thyroxine,Triiodothyronine等にI311 を標識したものが次々と報告されており,
第4項1311標識J‑Triiodothyronine赤血球摂 取率
第5項尿中1311排泄率 第6項甲状腺Scintigram 第2節各種検査成績の相互比較
第1項1311甲状腺摂取率と各成績との比較 第2項単純性甲状腺腫の検査成績
1)腺腫の大きさと'31甲状腺摂取率 2)年令と1311甲状摂取率
第3項単純性甲状腺腫と甲状腺機能充進症と の鑑別(I‑TriiodothyronineSuppres‑
sionTestについて)
第4項1311標識/‑Triiodothyronine赤血球摂 取率
A)二三の基礎的実験
B)'3'I標識J‑Triiodo出yronine赤血球
・摂取率と他検査成績との比較 第 5 章 結 論
文 献
緒 言
Thyroxine誘導体の応用は今後益々この方面に 普及されてゆくであろう.著者は'3'Iを用いる 従来の甲状腺機能検査法を仔細に検討すると共 に,それらに関する若干の新知見を得,更に従 来の'3'I甲状腺機能検査法とは全く性質の異な る'3'I標識I‑Triiodothyronine赤血球摂取率試 験(以下'3'‑T3赤血球摂取率とする〕を検討し 一定の興味ある知見を得たので,こ上に取りま
とめ報告し諸賢の御批判を仰ぎたいと思う.
第 2 章 検 査 方 法
第 1 項 1 3 1 1 甲 状 腺 摂 取 率 が , β 線 は 水 中 飛 程 2 . 2 m m に 過 ぎ ず , 体 外 計 測 に は 1939年Hamiltonl)によって初めて1鋤Iが甲状腺疾β線によらねばならない.現今ではγ線の計測には効 患の診断に使用され,1311の入手が容易となるにつれ率の良いScintillationcounterが一般に使用されて て1311甲状腺摂取率は甲状腺疾患の診断に重要な役割いる.使用した1311は、英国Ammersham製で我国放 を果す様になって来た.従ってこの測定には最も誤差射性同位元素協会にて配分されたものである.後に至 の 少 な い 方 法 を 採 ら ね ば な ら な い . っ て 臨 床 用 の 1 3 1 1 を 大 日 本 製 薬 が 取 扱 う 様 に な っ て 以 著者の行った方法は,後述する如く誤差の少ないも来,カプセルに封入された形となって来ており,1力 の で あ っ た . う 。 セ ル に 1 0 0 " c 入 っ た も の を 使 用 し た . 協 会 よ り 送 付 放射性ヨード1311はβ線,γ線の二種類を放射するされたものはSpecificactivityが非常に高く,検査量
井 道
Abstract
Thyroidfunctiontestsincludingl311‑thyroidal uptakerate,salivaryl311excretionrate,PB1311 conversionrate,1311‑Thredbloodcelluptake andurinaryl311excretionrate,andalsothyroid scintigramwerecarriedoutbyusingradio‑
activeiodine,1311,in319patientswiththyroid diseasesand37casesofnormals.
Theresultsobtained"werefollowed:‑
1)1311‑thyroidaluptakeratecoincidedwith clinicalsymptomsanditwasconfilmedthat thistestshowedfewOverlappingamongthe groupsofvariousstatesofthyroid.And factorsinHuencingonthel311‑thyroidaluptake
ratewerereferred.
2)Salivaryl311excretionratecoincided fairlywithclinicalsymptomsandwasconside‑
redasavaluablemethodwhichwassuitable foranassessmentofclinicalcourseofhyper‑
thyroid.
3)PB1311conversionrateindicatedless diagnosticvaluethanothersduetocounting errorswhensmallerdose,1:311oflOO"cwas administered.
4)Urinaryl311excretionrateoverlapped amongthegroupsofvariousstatesofthyroid, sothistestwaslessworthyofclinicaldiagno‑
S1S,
5)1311‑T3redbloodcelluptakewhichwas performedonthemethodof<<invitro",showed thesametendencyinnormalandhypothyroid rangesastheresultsofotherreporters,the rangeofhyperthyroid,however,showedabout 10%higherinitsuptakethantheothersin average.TheauthordiscussedaboutHamol‑
sky'sTBPhypothesis‑mechanismofthistest andconfirmedthathisopinionwasnotcomplete butconvenienttointerpretthismschanism.
6)Inthecomparisonofl311‑thyroidaluptake ratewithsalivaryl311excretionrateandBMR, therewereobviouscorrelation,andalsocosi‑
derablecorrelationswereobservedincomparing 1311‑thyroidaluptakewithPBIandCholesterol, andnocorrelationwithPB1311.
7)Someproportionalrelationshipwasdis‑
closedbytheauthorbetweensizesofgoiter andl31I‑thyroidaluptakerateinsimplegoitrous patients,theillustrationasthemeChanismof simplegoiterwerethereforefiguredoutwhich shoWedthecircle‑thyroid‑pituitarygland‑
(TSH)‑enlargementofthethyroid‑normaliza‑
tionofthyroidhormoneproduction.
8)Inthedistributionbyagegroupsin simplegoiters,therewasmostnumerousin teenagerfollowinginthetwenties,thethirties) andfewg、rcasesundertenyearsofage・In oversixthyearsofagethesewereonlyfive patients.Theauthorrecognizedthatithada sametendencyastheresultofpreviousworkers.
Inthel311‑thyroidaluptakevaluebyagegroups insimplegoiter,therewaslowervalue(5‑6
%)intheaverageoftwentiesthanotheragers whiChshowedintheiraveragesalmostsame valueamongeachother.
9)Differentialdiagosiswereperformed accordingtothemethodofT3suppressiontest betweenhyperthyroidandsimplegoiterand relationofthyroiduppercenterandthyroid‑
socalled<(Feedbackmechanism''weredis‑
cussed.
10)Thyroidscintigramwastakenon58 patientsofthyroidanditwasfelttobevery usefulforlocalizationofmalignanttumor,but di伍culttodiscoverthespaceoccupyinglesion ofsmallerthan2cmindiameter.
蝿…
目 次
言法方査緒検
一早幸早12第第
第1項1311甲状腺摂取率 第2項唾液内1311排泄率
道
としては不適当であるので,蒸留水にて稀釈し1mノ あたり100"cとし,別に用意した容器にこれを保存し た.調製の際1mIをピペットにて採取し試験管に入 れ,日付(Assaydate)を入れ,標準試料として密栓 をして保存した.
1回検査投与量としては,成人には100"cを基準と した.これは'3'甲状腺摂取率測定には一般に10〜30
cにて充分であるが,他種甲状腺機能検査法等,臨床 研究的目的もあって,同時に行う都合上100"cを投与 した.しかし幼小児には放射線障害防止という観点か ら,10〜30"cを年令に応じて投与した.
1311投与方法は,Wernerz),Keating3)等は簡単な経 口投与によっているが,著者も特別の場合を除き経口 的に投与した.経口投与する時はあらかじめ調製した 100"c/1m/の検査用溶液の保存瓶よりピペットにて 1mJ(Specificactivityが減衰した時は,その整数倍)
を採り,別に用意した小ビーカーにこれを入れ,水を 加えて嚥下を容易とする.更に水を3回入れビーカー の壁や口腔中に附着した1311を定量的に完全に服用せ しめた.カプセルの場合は咬まずに嚥み込ませるのみ にて,この点contaminationの心配はなかった.唯カ プセル毎のCount数が異なると,これは全て意味がな くなるので,その誤差がどの位のものか測定してみた ところ,いずれも±2.3%を出でず,測定結果には影 響のないことが解った.
測定時間は各研究者によって意見が異り,Keating3), Oddie4)5),Astwood6),Luellell7)等は時間的経過を測 定するよう主張している.Krisss),Crispell9)は1時間 値,Billonlo)は2時間値,Waynell)は4時間値,
Millerll)は7時間値,Barettll)は6時間値,Oshreyll) は機能低下症と正常の鑑別には8時間値が最適と述べ ている.著者は1311100"cの投与後24時間を経過し た頃には,甲状腺の1311摂取量の時間的変動が少ない という点,又臨床上routineに行うのに便利であると いう意味もあって24時間値のみを検討した.
測定には患者を特製の椅子に固定し,測定中身体の 動揺のないよう努めた.
Scintillationcounterは神戸工業製SA‑1000A型で ScintillationProbeはPS‑1型,クリスタル,Nal, 大きさ1×1吋?,使用電圧1200Vにて行った.又 Probeには厚さ2.0cmの鉛製Collimaterを覆せて他 よりの散乱線を除去した.XProbeは操作に便ならし めるため,移動可能なる支持台に固定して測定した.
前頚部とProbeのクリスタル前面迄の距離,即ち測
井
定距離は30cmとした.これは余り近いと患者の動揺 やCollimaterの死角に入ったりして測定値が不正確 になり,余り遠過ぎると放射能減弱があり,筧'2)の報 告によれば本邦では20〜40cmの間を採る人が多い.
濾過板としてBrucerl4)‑筧13)の提唱するAB法によ る フ ィ ル タ ー を 使 用 し た . A フ ィ ル タ ー は 厚 さ 1 . 6
,皿でProbe前面,クリスタルの直前に嵌め込み散乱 線の除去にあて,Bフィルターは10×10×1.3cmでこ れは甲状腺前面,Probeとの中間におき,甲状腺より の1311の放射線を遮断して身体より出る1311放射線の みを測定するため着脱を可能として備え付けたもので ある.従ってBフィルターは甲状腺を完全に覆うこと が出来なければならない.
先に調整保存した標準試料を測定する時,誤差をよ り少なからしめるためPhantomに入れて測定した.
これは科研製プラスチックPhantomで,これにより 散乱線の条件を人間のそれに可及的等しくして測定値 の誤差を少なからしめた.
摂取率値を出すには,測定値を計算して出さなけれ ばならない.これには数種類のものがあり本邦にても 差があるが12)著者の使用したのはAB式14)である.こ れはABの両フィルターを使用するところから,この 様に呼ばれているが最も誤差の少ないもので,±5%
以下の測定誤差であるといわれている.
1311甲状腺摂取率=
患者(A)c.p.m.−患者(AB)c・p.m.
標準試料(A)c.p.m.−標準試料(AB)c.p.m,
×100%
A : A フ ィ ル タ ー の み AB:A,Bフィルター使用 c、p、m:countPerminute 第2項唾液内131I排泄率
本法は最近になって急激に注目されはじめた方法 で,1954年Thodel5)が1311投与後唾液の放射能を測定 し甲状腺機能の判定を行って以来,Ingbarlの,Fellinger 17)等の追試の報告があるが,我国においては当教室の 久田'8)等の報告を見るに過ぎない.
測定方法は,前項に述べた如く1311100"cを投与後 24時間目に酒石酸紙を用いて唾液数mJを採取(採取 15分前に水道水にて充分含嗽させ可及的口腔内を清掃 しておく,この際口腔中より出血している場合は血液 による1311のcontaminationがあるため除外する).
採取唾液1m/をピペットで試験管にとりWelltype scintillationcounter(これは溶液のまゞ測定出来,感
錘癖
、
〜
〜
1311による甲状腺疾患の診断補遺
度は普通型の約1000倍である)にて測定した.対照 としては標準試料の1000分の1の線量のものを試験 管に栓をして保存し,これを以って測定すれば唾液1J についての1311排泄率が求められる.
唾液内1311排泄率=
唾液1m/c.p型一×100%D/J
対照c,p.m.
対照:これは前項の標準試料の1000分の 1即ち0.1〃cである.
第3項血漿蛋白結合'3'I(PB'3'I)交換率 本法はChaikoffl9),Clark20),Freedberg21),Taurog 19),Shelinegg)等によって提唱された方法で投与した 1311が一定時間内に甲状腺ホルモンに合成されて血中 に現れる量を見んとするもので,甲状腺ホルモン生産 能の指標となると大体考えてよいものである。本検査 法には前記の人達は可成り大量の'3'I(300〜500"c) を投与して行っているが,著者は100"c投与によって 検討を行った.
1311100"c投与後24時間目に肘静脈より約5mノ採 血する,直ちに二重鰺酸塩約10mgにて抗凝固する.
遠心3000r.p.m,10分後血漿を分離,2本の試験管に 各々1mノあてピペットにて入れ,一方はその儘とし他 方に10%三塩化酢酸約10m/を入れて蛋白を沈澱せ しめる.この中にPB1311が含まれているので,この PB1311分離には三塩化酢酸の他に,Reilly23)のイオン 交換樹脂法,Schultz")のブタノール法等があるが,こ 畠ではこれ等についての検討は行わなかった.沈澱 したPB1311は無機ヨードを完全に除去するため,更 に2回,計3回の三塩化酢酸による洗樵を行った.かく
して得られたPB1311と血漿との131Icount数をWell typescintillationcounterにて測定した.なおこれら はCount数が少ない場合が多かったので測定には2, 5,10分と計数時間を延長してcountingerrorを少な からしめるよう努めた.
PB1311交換率=
蛋白結合1311c.p.m.×100%
全血漿1311c.p.m.
第4項1311標識ノ‑Triiodothyronine赤血球摂 取率(以下1311‑画とする)
本法は他の諸法と異なり人体内に1311を投与せず試 験管内にて行う検査法である.著者はHamolsky25)の 方法を以下の如く多少の改変を加えて行った.
1)肘静脈より約5mノ採血,二重膠酸塩約10mg にて凝固阻止.
2)別に用意した試験管2本に上記血液各々1mノ 採る.Hematocritを測定.
3)2試験管の血液に1311‑T30.1"c/0.1mノ添加す る.
4)37。Cの恒温槽内にて2時間,Incubation.
5)Welltypescintillationcounterにて全血の c・p・m.を測定.……(c,)
6)遠心3000r.p.m.10分後上清を捨て約10倍量 の生食水にて5回赤血球を洗漉する.
7)Welltypescintillationcounterにて赤血球の c.p.m.を測定.….(c2)
'3'1‑n赤血球摂取率=
l00 C ? × 一
一二−−旦一×,00%
cl
H:Hematocrit値
8)2本の試験管の成績の平均値を採る.2本の各 々の成績が3%以上違う時はやり直す.
第5項尿中'3'排泄率
本法は1311の一定量を投与し一定時間内に尿中へ排 泄される量をみるもので,甲状腺機能を間接的にみる ことになる点,唾液内1311排泄率と同義であろう.こ れに関してはMcarther26),Keating37)等の報告があ る.無機の形で投与された1311は尿便中には0.06 2.8%しか現れず,大部分は腸管にて吸収され血中へ 入り甲状腺に摂取されるか,又は腎臓より尿中へ排泄 される,これら以外の臓器としては,下垂体及び肝臓 に2〜5%28)分布されるに過ぎない.それ故に尿中へ 排泄された1311量を知ることにより甲状腺機能が推定
出来る.
1311100"cを投与する前,充分に排尿せしめる.投 与後は用意したる容器に24時間の全尿を集める.こ の際夜間の排尿には患者が面倒がって容器に入れない ことがあるから注意する.蓄尿に際してはヨードの昇 華を防ぐため,2.5N‑NaOH約3mノ,Nal約1mg 加えた.24時間の全尿量を測定してからよく内容を攪 梓し,その1mノをとりWelltypescintillationcoun?
terにてCount数を測定し同時に対照として唾液内1311 排泄率の項にて使用した対照試料を測定する.尿の Count数が多過ぎる時は稀釈して計測した.著者の使 用したWelltypescintillationcounterは10,000c.p.m.
を超える時は,数え落しが生ずるので稀釈することに
した.
1311による甲状腺疾患の診断補遺
TableISummaryof'3'Ithyroidaluptakerate invariousstatesofthyroid.
No.of
patients Range Average
−
│ N i l
37 1.6〜39.5
16.8
口
Hyperthyroid
64 36.5〜98.6
64.2
rangeO.8〜19.9%Avge.6.2%,単純性甲状 腺腫209例,rangeO.6〜84.5%Avge.22.2%
悪性甲状腺腫18例,rangel.6〜40.9%Avge.
14.1%という結果を得た.
正常者では40%を超えるものはなかったが8
%以下のものが5例あった.これについては臨 床的検査であったので詳細な検討が行えなかっ たが,本摂取率値を低下させる因子の関与が考 えられる(後述).諸家の成績をみると,Werner, Quimby,Schmidt29)30)は正常250例で,range 9〜55%Avge.26%,機能充進症302例,range 22〜79%Avge.55%,Luellen7)は正常,range 10.5〜26.0%Avge.18.0%,冗進症,range 35〜76%Avge.71%,Freedberg2')は正常13 39%Avge.30%,木下31)は正常50例range 13.2〜41.0%Avge.22.1%,機能充進症150 例,range33.0←95.5%Avge.58.9%,悪性
甲状腺腫range5.4〜39.6%Avge.15.2%, 浅越32)は正常range6.3〜32.7%Avge.17.2
%,機能冗進症range42.0〜95.2%Avge.
74.1%としている.
これらをみると正常範囲は大体10〜40%で あるといえる.したがって40%以上の'3'I甲
Hypothyroid
28 0.8〜19.9
6.2
Simpleg。ite"│Strumamalign。
209 0.6〜84.5
22.2
18 1.6〜40.9
14.1
状腺摂取率を示めした時は,必ずとは云えない が(後述)機能冗進症に診断の重点をおいて他 種検査所見の裏付けを行えばよい.
一方機能低下症と正常との間にはいくらかの overlapがあり10%以下を示すもの即ち機能低 下症とは云えず,他種検査成績の裏付けが必要
であった.
単純性甲状腺腫の成績は,その成因の多元性 から広汎な分布を示すことは当然考えられる.
三宅33)はrangel.1〜97.8%Avge.22.5%と云 っているように非常に広い分布を示す。
悪性甲状腺腫の成績は,悪性変化の程度によ り'3'Iの摂取能が異なってくるので,種々の段 階の摂取率がみられるがしかしこれは単純性甲 状腺腫と異なり,正常範囲を逸脱し異常高値を 示す症例はなく,概して低値乃至正常値を示し
た.
第2項唾液内'3'I排泄率
著者の得た成績は,正常28例range4.5 65.1%D/ノ,Avge.17.2%D/ノ,機能充進症41 例rangeO.1〜19.6%D/ノAvge.2.6%D/ノ,機 能低下症16例rangelO.3〜75.7%D/ノAvge.
42.8%D/ノとなっており正常と機能冗進症との
TableISummaryofsalivary'3'Iexcretionrate invariousstatesofthyroid.
No.of patients Range Average
│HyperthyroidlHypothyroidlSimplegoite"│Strumamaligno
Normal
2 8 4 1 1 6 1 1 3 1 3 4 . 5 〜 6 5 . 1 0 . 1 〜 1 9 . 6 1 0 . 3 〜 7 5 . 7 0 . 3 〜 7 8 . 2 2 . 6 〜 3 4 . 3
1 7 . 2 2 . 6 4 2 . 8 、 1 5 . 8 1 7 . 3
一
道 井
尿中1311排泄率=
尿1mノc・p.m・×全尿量(m/)×100%
対照c,p.m.×1000
対照:標準試料の1000分の1 第6項甲状腺Scintigram
甲状腺に摂取された1311の分布を外部よりの測定に よって肉眼的に観察しようとするのがScintiscanning 法で,得られた甲状腺像が甲状腺Scintigramである.
従って本法は甲状腺の外形の測定,悪性腫瘍の如く 1311摂取の低いものなどの部位,状態を判定するのに 有力な手段である.
Scintigramを撮るにあたって第1に問題となるの は,そのScintiscannerに使用されているクリスタル と,Conecollimater‑−殊にその形状によって大きな 影響を受ける解像力である27).
著者の使用した装置は,島津製Scintiscannerで Medicalspectrometer,ContTaster等の附属装置があ る.これには2×2吋紗のNalクリスタルと,焦点距 離5cmのHoneyconecollimaterが使用してあり,
Taperedconecollimater,Cylindricalconecollimater 等と比べて,その解像力において優っている.Medical spectrometerは,1311の0.364MeVのみの波長の放 射線を撰択的に取り出し,他の波長(散乱線を含めて)
の放射線を全て除去する装置である.Contrasterは更 に取り出した1311のPulseが或る程度の強さ以上にな る時,はじめて記録紙上に打点としてしるされる装置 で,これらはいずれも甲状腺像をより鮮明に描写する ためのものである.著者はScintigramを得ようとす る患者の1311甲状腺摂取率値の高低に応じて,100 500"cの1311を投与し,24時間後にScintigramを撮 った.Scanningspeedは30〜40cm/min.,Ratedown l/1〜1/10を使用,Collimaterの先端から甲状腺表面 迄は,その焦点距離が5cmであるので,5cmにした.
Medicalspectrometerは使用前,必ず標準試料にて 1311のSpectrumに一致させた.ContrasterのTime limiterは多くは0.1〜0.4sec.を使用した.記録紙上 の描写には,本装置は電気熱ペン式と電磁石打点式と 両用に使えるが,多く後者を使用した.
… ̲
第 3 章 臨 床 検 査 成 績
'311甲状腺摂取率正常者37例では,range1.6〜39.5%average '3'I甲状腺摂取率を第1表,第1(以下Avge.)16.8%,機能冗進症64例,range 36.5〜98.6%Avge.64.2%,機能低下症28例 第1項
各疾患別の 図に示した。
Fig.1'3'Ithyroidaluptakeinvariousstatesofthyroid
100
%
●
● ●
● ● ●
●
● ● ● ●
菫:一 ● 一:寿.:●●●
●
● ● ●● ●
①二剣a.司直︒固︻吾両信0冒巽
●●
●
●
●
● ● ●
● ● ●
● ● ● ●
● ● ●
● ● ● ●
●●●● ●
50
●
●
● ● ● ●●
● ●
● o %●
● 、
● ワ ●
。.● ●b:。:%。.●
●
NormalHyperthyroidHypothyroidSimplegoiler Strumamaligna
道 井
一一−一■一一▲司句=一一
Fig 2 Salivary'3'Iexcretionrateinvariousstatesofthyroid.
10C
%D/ノ
の与呵幽匡◎室の角︒xの目爲︻託﹄ン窒飼の
に
●
● ●
● ●
●
●
● ● ●
●
50 ●
●
●
●
●
●
● ②
●
●
● ● ●● ●
←騨綴
1
−
● ●
● ⑥
⑪
●
⑱
●●o●
●●●●●
●●
●
NormalHVperthyI・oidHypothyroidSimI)lcg,)ilerStrumamalign&
間には多少の重なり合いもゑられるが,しかし 4%D/ノ以下の値を示せば殆んど確実に冗進症 と診断してよいであろう・
久田'8)は正常range3.9〜36.5%D/ノAvge.
15.9D/J,機能冗進症rangeO.1〜3.8%D/ノ Arge.1.5%D/ノ,機能低下症range21.4〜43.3
%Avge.33.6%D/ノとしている.
正常値と機能低下症値との間の重なり合いは 著しく,この点での診断的価値は簿い、これは 唾液腺自身の機能変動があって,甲状腺と垂液 腺との関係を上まわるためかも知れない.
FawcettandKirkwood34)によれば,唾液腺中 には甲状腺の2倍の量のTyrosiniodinaseが存 在し,これにより唾液中にヨードが出現すると
述べているが,正常者ではこのiodinaseの量に 相当の差があり正常と機能低下症との間には,
それ程差がないのではなかろうか,何れにせよ 唾液腺が甲状腺ホルモン代謝上如何なる役割を 占めているのか現在の所不明であるが,著者の 経験でも垂液'3'I排池率が正常者と甲状腺機能 冗進症との鑑別の良き指標となり得ることは確 実であった.
第3項PB'3'I交換率
本法は24時間中の甲状腺ホルモンの生産能 力をみる理論的には非常に優れた検査法である
が,著者の行った結果は第、表第3図に示した
如くである.機能充進症は平均値において正常 より高くなっているが,機能冗下症と正常との
TablemSummaryofPB[31Iconversionrate invariousstatesofthyroid.
HyperthyroidlHypothyroidlSimplegoite¥Strumamaligna
−一一一一一一一一
Normal No.ot
patients Range Average
24 19.0〜99.8
64.9
57 1.8〜86.5
31.4
7 0.8〜48.2
19.7 22
8.1〜63.4 25.8
15 0.8〜53.8
19.3
−
1311による甲状腺疾患の診断補遺
一 − − 一 一 一 一 一 − − − = − − − − − −
Fig.3PB'3'Icoversionrateinvariousstatesofthyroid.
10〔
兜
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Normal Hyl)erll,yr[,idHypotl,yl・is,id Simpl!Jg,」iIL,rSIruIIM,r,,i,ligna
間には大きな差を認めなかった.これは検査方 法に誤差の出る原因があるのではないかと考え ているが,更に前述した如く投与'311量が少な いためのcountingerror等も一因をなしている のではないかと考えられる.
著者の得た成績は,正常22例range8.1 63.4%Avge.25.8%,機能冗進症24例range 19.0〜99.8%Avge.64.9%,機能低下症15例 range0.8〜53.8%Avge.19.3%となっており 久田1s)は正常range8.7〜73.2%Avge.36.7
%,機能冗進症range52.4〜97.3%Avge.
87.0%,機能低下症range4.0〜19.3%Avge.
10.4%としている.浅越32)は正常range7.7 29.5%Avge.14.5%,機能冗進症range30.2
99.0%Avge.72.6%,機能低下症rangel.6 8.4%Avge4.8%としている.木下31)は正常 10例rangel5〜40%Avge.20%,機能充進症 30例range46〜92%Avge.60%としている.
第4項'3'‑T3赤血球摂取率
正常,機能充進症,機能低下症,単純性甲状 腺腫(未治療,治療中)の成績を第Ⅳ表,第4 図に示した.
正常男子47例range10.9〜24.6%Avge.
17.6%,女子58例range9.2〜23.6%Avge.
15.4%,機能冗進症14例range23.1〜48.3%
Avge、33.8%,機能低下症7例range6.8 12.7%Avge.9.7%,単純性甲状腺腫未治療28 例rangel0.8〜22.8%Avge.16.6%,治療中
TableIVSummaryofredcelluptakeof'3'I‑T3fromwhole bloodinvariousstatesofthyroid.
I Euthyroid
Male Female │HyperthyroidlHyP6凧五E豆孟SiSimplegoitermplegoitET孟孟
No.of patients Range Average
47 10.9〜24.6
17.6
58 9.2〜23.6
15.4
14 23.1〜48.3
33.8
7 6.8〜12.7
9.7
28 10.8〜22.8
16.6
26 11.9〜27.8
19.3
ー
1311による甲状腺疾患の診断補遺
Fig.5Urinary(3'Iexcretionrateinvariousstatesofthyroid
00
1 ●
●
●● ●
⑨ ●
●
% ● ●
g何﹄巨旦︾①﹄︒×④三国為当甸屋﹄︒
● 頚
● ●
●
● ●
●
●
●●
50 ●
●
● ●
● ●
●
●
●
●
〆
NormalHyperthyroidHypothyroid Simplegoiter Strumamaligna
で,夜中の蓄尿等には多大の困難が伴い,正確 性を欠くものと思われる.現在では大体の傾向 を見るものとなっているに過ぎない.Keating37) の成績をあげると,正常75例Avge.64.5%, 機能充進症123例Avge.24.3%,機能低下症 46例Avge.81.7%となっており,正常と低下 症との差は余りない.
第G項甲状腺Scintigram 第5項尿中'3'I排泄率
第5図に示す如く本検査成績は,平均値にお いては明らかな差を表わしているが,前章にお いて述べたる如く種々の点で正確性を欠いてい る検査法である.最も大きい点は甲状腺へ摂 取された量と尿中へ排池された'3'Iの量を合計 しても,投与量に及ばないという点であろう.
次に排尿毎に患者をわずらわせねばならない点
Fig.6Thyroidscintigram
b)Thyroidcancer
I
I I
I I
!!II!',,!,,!
獅!"II',il,
IIII 1柵川
a)Hyperthyroid
11I
11I I
II
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11 I
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I
I
# 道
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Fig.4Theredcelluptakeof'3'I‑T3invariousstatesofthyroid
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隣
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● ●
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−
..3
●
● ● 10 ●
●
● ●
MaleFemaleTrealedNot‑treatedHypo‑Hyper‑
N u I . m a l l h y r o l d t h y r o i d SImple
gol[e1,
26例rangell.9〜27.8%Avge.19.3%であつこれらの鑑別は容易であった.
た.正常では女子より男子の方が平均値におい Hamolsky35)の成績を挙げると,正常男子,
て精々高い値を示している.これは諸家"〕36)の590例rangell.8〜19.0%Avge.15.2%,正常 成績においても同様の傾向がうか堂える.又女.女子1,351例11.0〜17.0%Avg●、13.9%,機 子では月経中の摂取率は平常の時のそれよりも能冗進症男子66例rangel9.5〜37.9%Avge.
低値を示した.姫娠中の単純性甲状腺腫の例23.7%,機能冗進症女子213例rangel7.0〜
では正潮直の下端にあった.月経,姫娠が本成35.0%Avge.22.5%,機能低下症男子65例 績に如何なるmechanismで影響を及ぼすのかrange5.5〜11.6%Avge.9.7%,機能低下症 不明であった.単純性甲状腺腫ではその成因の女子130例range6.1〜11.0%Avge.9.3%と 多元性のため可成りの範囲にわたった価を示しなっており,Robbins36)は正常300例,range た.乾燥甲状腺末にて治療中のものは未治療の10.1〜23.0%Avge.15.4%,機能冗進症15例 ものに比し平均値において高値を示した.機能rangel7.1〜26.4%Avge.21.3%,機能低下症 冗進症,機能低下症の成績と正常値との間には57例range6.4〜16.2%Avge.12.1%と述べて 多少のoverlapを見たが,しかし大体においている.
TableVSummaryofurinary'3'Iexcretionrate invariousstatesofthyroid.
│Norma!│HyperthyroidlHypothyroidlSimpleg6ite"│S{…maligna
‑
No.of patients Range Average
4 71.5〜96.8
85.3
7 16.2〜64.6
34.2
3 86.9〜96.1
92.5
16 24.9〜90.7
61.7
3 22.5〜65.8
31.1
道
甲状腺Scintigramは本論文の主旨ではない ので詳細を略するが,著者の行った58例の甲 状腺Scintigramの中,代表的なものを第6図に 示した.a)は甲状腺機能冗進症で,'3'I甲 状腺摂取率74.3%,唾液内43'I排泄率0.4%
D//,PB'3'I交換率99.8%,PBI11.77/dノ,
BMR+57.0%,尿中'3'I排泄率50.7%,'3'I‑
井
−
T3赤血球摂取率35.5%であった.b)は悪性 甲状腺腫の例で組織学的にfollicularadenoca‑
rcinomaであった.'3II甲状腺摂取率23.6%, 唾液内'3'I排泄率34.6%D/J,PB'3'I交換率 18.9%,PBI3.57/dl,BMR+8.1%,尿中'3'I 排泄率88.3%,'3'I‑T鍬赤血球摂取率14.6%で あった.
総 括 並 び に 考 按 第 4 章 淵
第1節各種検査成績の吟味 第1項'3'I甲状腺摂取率
アイソトープを用いる甲状腺機能検査法は前 述した様なものがroutine化しているが,'3'I甲 状腺摂取率だけを見ても測定器械には,
GMcounter,Scintillationcounter,Medical spectrometer等の種類があり,又標準線源用の Phantomを使わない場合があったり,摂取率計 算式,標準線源の大きさ,測定距離などもまち まちである.従ってそれ等の結果についても可 成りの誤差が生ずる様にも考えられる.筧 が マネキン人形を使用して本邦の病院,研究所の 該設備の調査を行った際,著者の使用した装置 の精度測定のため当院を訪れた.その結果測定 誤差は±2%を出なかった.これは著者の使用 した装置が安定な働作をすることを示めすと共 に,Brucer'4)のABフィルター法が誤差の少な い方法であることの証明にもなる.理論的には 全ての散乱線を除去して'311の0.364MeVの 放射線のみを測定し得るMedicalspectrometer による測定が最も正確と考えられるが,実用上 は前述の通りScintillationcounterによるもの で充分である.しかしながら如何に正確な方法 にて測定を行っても,それ以前にヨード含有食 物及び薬剤,抗甲状腺物質取び薬剤等の摂取が なされていては,真の甲状腺機能を求められな い.本邦においては海藻類の摂取が多く,この 点には充分注意する必要がある.ヨード含有薬 剤で比較的多く遭遇するのは,ヨードチンキ,
ルゴール氏液等の無機ヨード剤と造影剤,甲状 腺末等の有機ヨード剤である.Barett38),Tseng
")等によればCholecystographyによる'3'I甲 状腺摂取率の低下は30日以上で恢復,Broncho.
graphyでは5週間,Intravenouspyelography では3〜5週間,Myelographyでは10〜18カ 月間恢復するのにか上ったと報告している.又
ルゴール氏液,ヨードチンキ等は患者がその使 用を忘れていることがあり,これらの恢復には 12週間もか上ると云われており,甲状腺製剤で は3週間40〕が必要と云われている.抗状腺剤は 今日では非常によく普及している薬剤である が,これ等の投与後当然甲状腺機能は抑制され ており,休薬後その恢復には12週間41)以上の 期間が必要であり又,その恢復期には一時的に 異常な高摂取率を呈することがあり,Rebound phenOmenonとして注意せねばならない42).又
日常の食餌中に存在する抗甲状腺性物質も多く のものが知られており,GreerandAstwood43)
)による1−5‑Vinyl‑2thio‑oxazolidoneや,
Cyanide45),AllylthioUrea40),Sulfa剤47)‑49), Phenylthiourea50),Thiouracil49),PAS5')等の 抗甲状腺性が知られ,牡蛎,蕪,生人参,キャベ ツ,葎,梨,牛乳等について,甲状腺へのヨー
ド蓄積率を減少させることが解っている43).
甲状腺に関する報告で'3'I甲状腺摂取率につ いては殆んど検査施行前に2週間程のヨード欠 乏食を与へて後施行している.ヨードの摂取を かようにして全く与えないならば,その甲状腺 はヨード飢餓の状態になるわけで当然'3'I甲状 腺摂取率の上昇が考えられる.著者の行った例 においてもこの様な傾向が見られた.しからぱ 何を以って'3'I摂取率の基準とするか.現在こ
1311による甲状腺疾患の診断補遺
の点に関する試永は全くないと云ってよい.考 えられることは,尿中に排泄される総ヨード量,
血中総ヨード量を測定して'3'1摂取率を補整す るということであるが,これにしても補整の計 算式を作るのが非常に困難である.又尿中,血 中の微量ヨード量の測定は,可成りの熟練を要 し,しかも相当誤差を含む.この誤差によって '311甲状腺摂取率の誤差を大ならしめては,'3'1 甲状腺摂取率が信頼度の高い検査法であるだけ に仲々困難なことである.しかしこの点に関し ては近い将来なんらかの方法で基準となるべき ものを決定せねばならないものと考えている.
【311甲状腺摂取率は甲状腺疾患の診断にあた って現在では,欠くべからざるものとなってい るが,しかし前述のようなヨード摂取量の多少 によって正常,機能冗進症,機能低下症の間に 多少の重なり合いが生ずる点やむを得ない.諸 家の本法の正常値は,前述の如く大体10〜40%
前後にあるが,著者の成績からでは,1.6〜39.5
%と少し低めになっている.これは前述の理由 で厳重なるヨード制限を検査施行前に行なわな かったためか,あるいは北陸地方の特徴なのか,
現在のところ区別出来なかった.
第2項唾液内'3'I排泄率
唾液,胃液中に径口投与.したヨードが高濃度 に現われることは,1929年Lipschitz52)52)等に よって報告されている.13I1の出現によって唾 液腺のヨード代謝の研究(Goldsmith"),19 49)は急速に進歩し,1954年Thode'5)等が'311 の唾液内排泄を測定して甲状腺機能を判定す ることを発表して以来多くの追試者16)'7) が現 われている.ヨード代謝の面における甲状腺と 唾液腺との関係について多くの報告があり,桔 抗的ないし相殺的関連性の存在は明らかであ る.本成績は冗進症において非常に唾液内1311 の排泄量が少ない.従って機能充進症と正常と の鑑別は非常に容易である.
著者は正常4〜40%,機能冗進症4%以下,
機能低下症40%以上としたが,正常と低下症 との間には可成りの重なり合いがあり,この点
余り有用ではない.しかし正常と機能充進症と の間には重なり合いも少なく,診断にあたって の信頼度は非常に高い.本成績は抗甲状腺剤に て若干の治療を受けた機能冗進症の'311甲状腺 摂取率が低く,正常範囲に下っている時にも,
明らかに4%以下のことが多く,抗甲状腺剤の 影響を受けない傾向がある.このことは機能冗 進症の治擦経過観察に有効で,著者は数例につ いてこのことを確かめ治癒判定に価値があっ た.第7図に示めす如く'3'I投与後4〜5カ月
Fig.7Followupof'3'Ithyroidaluptake andsalivary'3'Iexcretionratein
treatinghyperthyroidpatients.
l311 treat−
ment dose
lヨll treiI1−
ment dose
ノ◎ 30%功
①︺剣﹄
宮○二①﹄○×国
●02
印
①基銅一己﹃一つ一c﹄為︹声厚 語障甸1戸塞呵の
01
l O l 2 1 8 months 5
頃より【311甲状腺摂取率は正常値となっている が,唾液内'3'I排泄率は7〜10カ月にならない と 正 常 値 へ 戻 ら な か っ た . 本 法 が 抗 甲 状 腺 剤 の 影響を受けぬ原因については,明確ではないが 1311̲T3赤血球摂取率と同様の傾向を有するのは 興 味 深 い . 機 能 冗 進 症 の 治 療 経 過 判 定 に は BMRがよいといわれているが,BMRは比較 的誤差が多く本法の如き鋭敏性はないと考えて いる.この点に関しては今後症例を増して検討
したい.
第3項PB'3'1交換率
PB'3'I交換率は原理的にみれば,その時間内