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傾斜面における広葉樹立木の傾斜度

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Kyushu University Institutional Repository

傾斜面における広葉樹立木の傾斜度

今田, 盛生

九州大学農学部

https://doi.org/10.15017/15920

出版情報:演習林集報. 27, pp.13-22, 1980-03-29. 九州大学農学部附属演習林 バージョン:

権利関係:

(2)

傾斜面における広葉樹立木の傾斜度

今  田 盛  生

Inclination Rate of Standmg Hardwood   Trees on an lnclined Hillside

Morio IMADA

緒   言 1 調査地概況  i 位置および面積  ii 地況および臨監

皿 調査方法

 i 調査プロットの設定方法  三i立木の測定方法

目 次

皿 調査結果  i 平均立木傾斜度  ii 立木傾斜度別本数:比率

N 考. 察

V 摘   要

引用文献 R6sume

 一般に,針葉樹の大部分はその成立地床の傾斜度のいかんにかかわらずほぼ直立するの に対して,広葉樹はその地床傾斜度が大きい場合には斜回する傾向がある.このような広 葉樹の適性は,高品質構造用材の生産技術上,充分留意すべきものであって,急斜面にお いては広葉樹の高品質大県材生産は困難である1)とされている場合がある.しかしなが ら,その傾斜度限界などについては具体的にはふれられておらず,実践段階におけるこの 点での技術的基準が明らかでない現状にある.

 そこで,傾斜面に成立する広葉樹の天然生立木の傾斜度が,その地床傾斜度とどのよう な関係にあるかを明らかにし,前述のような広葉樹構造用材生産を目的とする生産(育成)

林面の傾斜度限界という技術的基準について若干の考察を試みた.もちろん,この技術的 基準を検討するにあたっては,それに関連する材質試験結果も考慮すべきであるが,ここ ではその基礎的段階の立木実態調査結果を主体とした考察にとどめるものとする.

 なお,この調査にあたっては,九州大学宮崎地方演習林研究室の井上晋教官はもとよ り,同総務掛長の田中玄三事務官,同業務主任の田中光義技官はじめ職員各位から多大の 御協力をいただいた.ここに記して衷心から感謝の意を表する.

1調忌地概況

i位置および面積

 調査地は,宮崎県東臼杵郡椎葉村に所在する九州大学宮崎地方演習林24林班および33林

(3)

9 o

・・亀  

■  r壷、

@ ,・.・  8

鴇   eマ

,、

婚δ

1,000

 1300

      1,100

0 500m

L....一,.M一..t

1,050

!貧

層ノ

sf.・.

F;,

         1,loo. 1,409

1,00e

      1,050     34

霧薩

32

︑熱難鯉.慨滋藤逡翻

落旭 ..・㌔

コk唖 レ

[fi li

30

 凡 例  ・r・ 1,200

蘭置戸:調査プロット設定範囲

●陶=演習林界 一●一:林班界

1,200

E25

31

29

 一一

1,300

1,300

24

1.lbO 1,100 1,150 1,200 図一1  調査プロット設定位置

 1,300

1,400

1,300 1,400

班の図一1に示す範囲内にあり,九州山地のほぼ中央部山岳地帯にあって,日向灘に注ぐ 一ツ瀬川の源流地域に属している.

 調査にあたっては,10m×10mの正方形プロットを図一1の両範囲内に散在させて設定 した.その設定数は24林班16個,33林班14個で合計30個であり,したがって総調査面積は 0.30haである.

ii地況および林下

 本調査地の地況については,標高1,000〜1,200mの間の急斜地の多い地帯にあって,プ ロットの地床傾斜度は5。〜40。の範囲にある.その地質は四万十寒帯古生層に属し2),地 床のほとんどすべてが草丈2〜3mの密生したスズタケで覆われている.

 林況については,温帯林に属し,モミ・ツガなどの針葉樹とブナ・ミズナラなどの落葉 広葉樹との混交林であるが,広葉樹の混交率(約80%)の方が大きい.本調査プロットは,

このような温帯林の広葉樹丁令単層林分内に設定したが,その林分構成の概況は表一1に 示すとおりである.なお,プロット内の構成樹種としては,ミズナラ・シデ類・クリ・ミ ズメが多く,サクラ類・ミズキ・カエデ類・エゴノキなども含まれている.

       H 調 査 方 法

 本調査は,森林生態学上の観点から実施されたものではなく,その目的が主として広葉 樹構造用材生産における実践上の技術的基準設定にある点を考慮し,以下のような方法に

よって1977年に調査した.

i調査プロット

 調査にあ1ヒっては,つぎのような条件を満足する傾斜面に,10m×10mの正方形プロッ

(4)

トを設定した.

 ① 広葉樹の40・v60年生の壮令単層林内であり,以後の間伐工程によって構造用材生産 が可能な程度に本数密度が大きいこと.

 ②地床傾斜度による影響を的確に把握するため,10m×10m内とその周囲に針葉樹の 上層木が成立せず,その樹冠による側圧(直立化)作用が認められないこと.

 ③ 前述と同様の観点から,10m×10m内とその周囲に広葉樹の暴領木が成立せず,そ の樹冠による側圧(斜立化)作用が認められないこと.

 ④10m×10m内の地床の傾斜状態は起伏がほとんどなく一様性に富み,その範囲内の 平均傾斜度はその中央部の一測定値で示し得る状態にあること.

 このようなプロットを,地床の傾斜度が緩傾斜から急傾斜までほぼ連続するように配慮 して設定した.その設定総個数は30個であり,各プロットの地床傾斜度は表一1に示すと おりである.なお,地床傾斜度はポケットコンパスによって測定した.

ii立木の測定方法  1)立木傾斜度

 立木の傾斜度(実質的には鉛直度)の測定にあたっては,生産技術上,壮令期以後では 上層木のみが直接の対象になる点を考慮し,各プロット内の上層木のみを対象として毎木 測定することにした.その測定方法としては,枝下樹幹の斜面方向への平均的な傾斜程度 を判定して樹幹に沿って長さ1mのポールを密着させ,クリノメーター(昭和測器工作所 製)を用いて測定した.

 測定木のなかには,斜面方向よりも,むしろそれ以外の等高線方向などへの傾斜度の方 が大きいものが総調査本数344本のうち7本(総本数の約2箔)あった.そのような場合 でも,その最大傾斜度ではなく,あくまでも斜面方向への傾斜度をもって測定値とした.

 また,地床傾斜度12。までの緩傾斜プPット内には,斜面方向の上方へいわば逆傾斜し た立木が4本(総本数の約1%)あった.そのような場合には,負号を付して測定値とし

た.

 2) 林分構成要素

 まず,胸高直径については,立木傾斜度の場合と同様な観点から,上層木のみを対象と し,直径巻尺を用いて毎木測定した.なお,成立本数密度も上層木本数のみによって示す

ことにした.

 つぎに,樹高については,各プロット内の最高樹高木とみなされるもの1本のみを対象 とし,アルティレベルを用いて測定した.なお,枝下高は,その樹高測定木のみを対象と し,測高用ポールを用いて測定した.

皿 調 査 結 果

 前述のような方法によって調査した結果を示すと表一1のとおりであり,この調査結果 について,必要に応じ林況写真を示しながら考察をすすめてゆく.

i平均立木傾斜度

 表一1の最大・最小の立木傾斜度をみると,同一緩斜面内においても斜立程度が相当大 きい立木があり,また逆に同一急斜面内においても直立状態に近い立木も含まれているこ とがわかった.しかしながら,プロットごとの平均立木傾斜度としては,地床傾斜度が大

(5)

表一一一1  調査プロットの概況および立木傾斜度の調査結果

No.

立木傾斜度(度)

地床傾斜

x(度)

平均{駄1尉

10。以下傾 ホ木の本数 范ヲ(%)

15。以下傾 ホ木の本数 范ヲ(%)

本数

i本/ha)

樹高

im)

枝下高

im)

平均胸高 シ  径@(cm)

1234567890          1 5778012233

    ﹁⊥−i←イ⊥−⊥ーム

5660353778    11

123456789012 111111111222 67︐7883337788 111112222222 200614105706112111111121

3456789022222223 2237990033333344 39715798

1 

1211凸ーム2 4428898258 11111   111 006860952410 222212112232 2639050021222234 0021700101

90

82 75 56 43 100 100 93 75 75

100 100 100 89 57 100 100 100 100 92

1,000 1 13・8 1,700 i 11・7 1,200 1 11.0  900 1 18・2  700 [ 16.0  700 1 16・9  600 1 13・5 1,500 1 12.8 1,600 1 9.4 1,200 1 13.1

5.2 1 14・7 6・4 1 13,6 5.8 1 14.3.

3.4 1 17.0 6.2 [ 13・8

7.4 1 19・2 2・6 [ 16.2 7.6 F 14.9 6.8 1 10.7 7.1 i 13・2

309838220008

        ームー−

904134574184 3711415611 1

78X0

Q9

K93577300娼3323娼        1

1,800 1 17.1 1 9.4 1 16.5 1,000 1 17.8 1 10・5 1 19.7  700 1 17.8  1 3・5  1 16.0  900 [ 16.0 1 9.5 1 14.3 1,400 1 15.9 1 9・O 1 17・8  700 1 19.0  1 6・2  1 18・0 1,100 1 11.3 1 6.2 1 14.4 1,200 1 13.7 1 9・4 1 15・5  700 1 15.8 1 5・2 1 18・2  900 1 15.0 1 4・3 1 15・9 1,300 1 15.8 1 4・2 1 12・8  700 1 11・6 1 4t 3 1 14・9

62108832

  1凸−占   ーウ飼

93019400

26  一 ウμ

59 X5 Q3 P1

e41250

1, 700 1, 900 1, 300

 900

1, 100 1, 700 1, 200 1, 100

15. 9 14. 1 12. 2 15・ 6 10. 3 15・ 1 18. 2 15. 8

5, 7

10. 8 9・ 4

10. 5 7. 9 9. 6

10. 9

45

13. 4 14. 9 14. 0 13・ 9 12. 6 16. 1 15. 7 15・ 3

平均1

1−1−1一

iC147 1 14.7 1 7.o 1 ls.3 注=①樹高・枝下高は,プロット(10m・×・10m)内の最高樹高木の測定値で示してある・

  ②材積は,プロット面積が小さいため示していない・

きくなるにつれて概括的には増大している傾向が認められた.その両者の間の傾向をより 明示したのが十一2である.この図一2から,林分総体の平均立木傾斜度としても,斜面 によっては相当大きなばらつきがあるものの,地床傾斜度(x度)と平均立木傾斜度(y度)

との間には正比例的な関係があることが推察された.そこで,その回帰式を求めたところ,

つぎのような結果を得た.

 y一=4−O十〇・4x (r==O.75, F=37.22 >7.64)

(6)

30

  20     10立木傾斜度︵y度︶

o

●●

ee e

    e e

e e

y=4.0十〇.4X

e

e

e e

ee

e

e

e

F

●●

   10 20 30

      地床傾斜度(X:度)

図一2  地床傾斜度と立木傾斜度の関係 注)回帰式は1%の危険率で有意(F=37.22**>7.64)

 であり,相関係数は0・75である.

40

 すなわち,地床傾斜度が5。増すごとに,平均立木傾斜度ほ2。ずつ増加するという関係

にある.

ii立木傾斜度別本数比率

 前に示した回帰式に基づく両者の関係をより明示したのが図一3の模式図である.この ような模式的に示された図上においてはし,15。の傾斜面における10。の斜立木状態を的確 に判断できる.しかしながら,現実の森林内にあって,15。程度の傾斜面に成立している 記憶を観察した場合には,写真一1に示すようにその10。程度の斜立状態を的確に判断す

ることは困難であり,ほぼ直立状態にあるものと錯覚するのが普通である.したがって,

この程度の傾斜面において,間伐木選定のための実際の作業をすすめる過程では,筆者の 経験上,その立木傾斜という点について意識するには至らないというのが実情である.

loe

lso

1120

20e

ll

i

Ii4:

2so

:16e

300

8 1

35e

         図一3  地床傾斜度と立木傾斜度の関係の模式図          注)この模式図は,図一2の回帰式からの算出値に        基づいて描かれている

 しかしながら地床傾斜度が15。前後から,30。前後の急斜面に至ると,図一3の図上で はもちろん,現実三内においても,写真一2に示すように一見してそこに成立している林 分全体の立木が斜面方向の下方へ傾斜している状態(ただし,その傾斜度が15。程度かど

うかは判断できない)が判然としてくるようになる.したがって,このような傾斜面にお いて,間伐木選定作業をすすめようとする場合には,その作業開始前に立木傾斜という点

(7)

写真一1  緩斜面における立木傾斜状態 注)①No・10プロット(地床傾斜度13。,

  立木傾斜度8。)の状態である・

 ②ポールは鉛直に立ててある・

  ③スズタケ刈払後の状態である・

写真一2  急斜面における立木傾斜状態 注)①No.25品目ット(地床傾斜度33。,

  立木傾斜度17。)の状態である・

  ②ポールは鉛直に立ててある,

  ③スズタケ刈払後の状態である.

に留意し,将来の主伐木になると予想して保残する優良形質木(以下,主伐候補木という)

を選定する段階では,なるべく傾斜度の小さい立木をそれにあてるように配慮すべきであ

る.

 そこで,筆者の育林技術上の経験に基づき,直立状態と錯覚する程度の10。の平均立木 傾斜度,さらに一見して斜立状態と判断できる程度の15。の平均立木傾斜度を一応の基準 として以下の分析をすすめてゆくことにする.したがってまた,図一3の対応関係から,

地床傾斜度としては,15。および30。を一応の基準とすることになる.

 その立木傾斜度の基準に基づき,それ以下の斜立木がプロット内灘立木に占める本数比 率を示すと表一1のとおりである.また,その地床傾斜度の基準に基づき,30個の全プロ

表一2  地床傾斜度別プロットグループの立木傾斜度別平均本数比率

地床傾斜度別

プロットグループ

プロット個数  立木傾斜度別平均本数比率(%)

(個) 10。以下 15。以下 15。以下 プロット

P6。〜30。プロット R1。以上 プ目ット

10 P2 W

78.9 R0.0 P7.0

93.8 T8.8 R7.4

(8)

ット.を15。以下(10個),16。〜30。(12個),31。以上(8個)の3グループに分け,その グループごとに,前述の本数比率を平均して示すと今一2のとおりである.

 表一1および2について,地床傾斜度が15。以下の場合をみると,10。以下の直立状態 に近い立木の本数比率は,No.4とNo.5プロットがそれぞれ56%,43%とかなり小さ いもののその平均比率は78.9%となって,直立状態に近い立木が大部分を占めているとい える.さらに,それらに傾斜度が相対的に小さい11。〜15。までの斜立木本数を加えると,

その平均比率は,(No.5プロットがかなり小さいものの)93.8財にも達していることか ら・ほとんどすべての立木力言15。以内の傾斜状態にあるといえる・

 つぎに,地床傾斜度が16。〜30。の場合をみると,10。以下の直立状態に近い立木の本数 比率は,No.12(70%)とNo.18(67%)の2プロヅトが大きい値を示しているものの,

全体としてはばらっきが大きく,その平均比率は30%であって前者の場合に比較して半分 以下に低下している.しかしな:がら,それらに11。〜15。までの斜立木本数を加えると,

その本数比率は,全体としてのばらつきは大きいが,その平均は58.8%であり,70%以上 に達するプロットが12個のうち5個(約42%)あるという結果になっている.したがって,

概括的には,地床傾斜度がほぼ30。以下の傾斜面であれぽ,15。以下の傾斜度が相対的に 小さい立木がほぼ半数を占めるものとみなしてさしつかえなかろう・

 さらに,地床傾斜度が31。以上の場合をみると,10。以下の直立状態に近い立木の本数 比率は,:No.24プロットが相対的に大きな値を示してはいるものの,他の7プロットはい ずれも30%以下であり,皆無のものも3プロット含まれていた.そのため,その平均本数比 率は大幅に低下し約17%にすぎなかった.それらに11。〜15。までの斜立木本数を加えた

.としても,No.24プロットの例外的な場合もあり,ばらつきは大きいが,その平均本数比率 は約37%にとどまり,8プロットのうち4プロットは25%以下となっていた.したがって,

概括的には,地床傾斜度が31。以上に達すると傾斜度が相対的に大きい立木(傾斜度16。

以上)が大部分を占めるようになるとみなしてさしつかえなかろう.

Ivr考

 以上のような調査結果に基づき,はじめにふれた生産(育成)野面の地床傾斜度限界に ついて考察するのであるが,その前提として,まず立木傾斜度限界について考察しておか ねばならない.

 1) 立木傾斜度限界

 写真一3は,35。の急斜面に成立する極度の斜立木(立木傾斜度40。)であるが,広葉 樹の育林技術者としては,このような斜立木からは高品質材の生産は不可能と判断するで

あろう.したがって,この程度の斜立木は,その壮令期において,たとえそれに通直でし かも充分な長さの枝下主幹が形成されていたとしても,主伐候補木に選定することはさし ひかえるにちがいない.実際に,育林技術者が,間伐木選定にともなう主伐候補木選定3)

にあたって,主伐候補木になり得るかいなかの技術的判定に苦しむのは,写真一一・2に示す ような15。前後の斜立木の場合である.

 このような育林技術上の判定に対する的確な科学的根拠は,これに関連した材質試験な どによって得られるということはいうまでもない.すなわち,要するに,広葉樹大径木の 地床傾斜の影響による立木傾斜度とその材質のいわば正常度(直立木における正常材を基

(9)

写真一3 急斜面における斜立木状態 注)①地床傾斜度は35。である・

  ②右側の大きく斜立した大径木は広葉樹    (イヌシデ,40cm)で,その立木傾斜度   は40。である。

  ③左側のやや斜立した大径木は針葉樹    (ツガ,40cm)で,その立木傾斜度は   10。である.

  ④ポールは鉛直に立ててある.

準としたもの)との関係が解明され,その 結果から高品質材生産資材として許容され 得る立木の傾斜度限界が設定されねばなら ない.しかしながら,木材理学の分野にお いては,幼二二を対象とした人為的屈曲tc

よる材質研究4)5)が主としてすすめられ,

大径木の自然状態での前述のような育林技 術の実践上の研究成果は得られていない現 状にあるものと推察される.

 したがって,前述のような木材理学の分 野での研究成果が得られるのを待たずに,

現段階において,現実の実践上の要請に対 応して,当面の暫定的基準を設定しようと するならば,育林技術上の実際の作業段階 における経験によって予測するほかはない

であろう.

 筆者の前述のような経験は約10年間にわ たる約30haを対象としたものにすぎず,

必ずしも充分とはいえないが,その間にお ける経験からすれば,実際の主伐候補木選 定作業中に,それに含めるべきか否かの判 定にしばしば苦しむ15。程度の立木傾斜度 をもって,高品質材生産が可能な基準的限 界としておくのが妥当と考えられる.

  2) 地床傾斜度限界

前述の基準的な立木傾斜度限界15。に対応する地床傾斜度をもって,そのままその限界 とする場合には,以上の調査結果などから明らかなように地床傾斜度は30。ということに なる.しかしながら,これが実践上の技術的基準として果して妥当かいなかについては,

ことに16。〜30。の傾斜面の場合についてさらに検討しておく必要があろう.そこで,育 林技術上および森林組織技術上のそれぞれの観点から検討を加えた.

 (1)育林技術上の妥当性

 地床傾斜度が160〜30。の場合には,前述のように16。以上の傾斜度が相対的に大きい 立木がほぼ半数を占めている.したがっ℃主伐候補木の選定にあたっては,これらの立 木をさけて15。以下の斜立木をそれにあてるように配慮しなければならないが,主伐候補 木は,この立木傾斜度のみならず,目標生産樹種・立木形質・基準立木間隔(目標主伐木 本数に基づいて設定)などの制約条件を総合判断して選定しなければならないから,すべ ての主伐候補木を15。以下の斜立木のなかから選定するのは作業上困難であると予測され る.しかしながら, 15。以上の斜立木が主伐候補木に含まれる比率は,筆者の経験上,充 分に必要な配慮をすればそれほど大きくはならず,実践上さしっかえない程度におさえ得

るものと考えられる.

(10)

 したがって,育林技術上の観点からは30。という地床傾斜度限界は,実践上の技術的基 準として大きな支障を生じないものと判断される.

 (2)森林組織技術上の妥当性

 地床傾斜度限界が30。とされた場合,それに対応して森林組織技術上においては,広葉 樹構造用材を生産目標とする作業級を設定するにあたっては,30。以下の傾斜面で構成さ れる森林範囲を,その作業級範囲とするのが原則となる.しかしながら,その範囲設定段 階においては,この地床傾斜度のみならず,林分構成状態・目標生産規模・地形上のまと まり・林道網設定計画など幾多の制約条件を総合判断しなければならないから,一定の森 林範囲全域に31。以上の傾斜面が含まれないようにすることは実際上は不可能な場合があ ろう。したがって,31。以上の傾斜面がその一部に含まれるが,その占有率を実践上さし っかえない程度におさえることは,その作業級の目標生産規模(直接的には目標面積規 模)にもよるが,極度の大規模でない限り,それほど困難ではないと推測される.

 また,31。以上の傾斜面が一定の作業級に含まれた場創こは,その作業州内の森林組織 段階において,それを生産(育成)野面(主要生産設備用地)から除外し,保護樹帯など

の付帯設備用地に編入するなどの方策も考えられよう.

 なお,札幌営林局管内において,1,183ha(分散団地で構成)の森林に,広葉樹の「高品 質材生産林6)」が設定されている.その設定にあたっての地床傾斜度限界も30。が基準と なっている.

 したがって,森林組織技術上の観点からも,30。という地床傾斜度限界は,極度の大面 積範囲に作業級を設定する場合でない限り,実践上の技術的基準として大きな支障は生じ

ないものと判断される.

 (3)総  括

 以上の諸点を総括して判断すれば,広葉樹の高品質構造用材生産の実践上の要請に対応 し,その生産(育成)林下の地床傾斜度限界について,木材理学分野での材質研究などに よる研究成果を待たずに当面における暫定的基準を示すとすれば,30。とするのが妥当で

あろう.

 なお,この地床傾斜度に関する基準は,直接的には森林組織技術上において重視される べきものであって,育林技術の施行段階において生じるかもしれない前述のような不合理 を,森林組織の計画・設計段階においてあらかじめ排除しておく必要がある.

V 摘

 広葉樹の高品質構造用材生産における生産(育成)林地の傾斜度限界を明らかにするこ とを目的として,九州大学宮崎地方演習林の広葉樹天然生林を対象として,地床傾斜度と 立木傾斜度の関係を調査した.この報告は,その調査結果とそれに基づく前述のような地 床傾斜度限界を明らかにしたものであり,その概要はつぎのとおりである.

 (1)地床傾斜度(x度)と立木傾斜度(y度)との関係は,つぎのような回帰式で示さ

れる.

   y=4・O十〇.4x (r==O.75)

 ② 高品質構造用材生産のための立木傾斜度限界は,当面の暫定的基準としては15。と するのが妥当と判断される.

(11)

.(3)森林組織上の地床傾斜度限界は,当面の暫定的基準としては30。とするのが妥当と 判断される.

引 用 文 献

︶︶¶←り9

3

4

5

6

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1957

今田盛生:ミズナラ構造材生産林分の間伐技術体系における間伐木選.定方法・85回日林講,71 rv73, 1975

芳村了一一 一石田茂雄:ヤチダモの傾斜樹幹における材部の組織構造 1 入為的屈曲と導管.の 形態・分布・北大演習林研究報告,30(1),163〜182,1973

芳村了一:ヤチダモの傾斜樹幹における材部の組織構造 皿 人為的屈曲と年輪内における繊 維状細胞の長さの変化.北大演習林研究報告,33(2),437〜448,1976

日中営林局計画課:札幌営林局における一高品質材生産林設.定に関する調査報告書.1,札幌 営林局,札幌,1976

R6sume

   The author analyzed the relationship of the inclination rate of the hillside to the inclination rate of standing hardwood trees. The area analyzed was a natu・ral hardwood forest in Mi yazaki s Experimental Forest attached to Agricultural Department of Kyushu University. The purpose of this analysis was to set the provisional standard limit of the inclination rate of the hillside to the production of high ・quality structural hardwood timber. This report is for the presentation of the・ results of this analysis. The contents of this report are summarized as follows:

   (1) The relationship of the inclination rate of the hillside (xO) to the inclination rate of standing hardwood trees (yO) are presented by the following regression equation       y=4.0十〇.4x (r=O.75)

   (2) lt is termed satisfactory that the provisional standard limit of the inclination rate of the standing hardwood trees to production of high ・quality structural hardwood timber be 150.

   (3) lt i$ termed satisfactory that the provisiQnal standard limit ef  the inclination rate of th. e hillside to forest organiz. ation for the above production be 300.

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