• 検索結果がありません。

ボリューメトリックトモグラフィ ( VT ) による インプラント術前・術後検査

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ボリューメトリックトモグラフィ ( VT ) による インプラント術前・術後検査"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

クリニカル・テクノロジー

ボリューメトリックトモグラフィ ( VT ) による インプラント術前・術後検査

荒木 和之,岡野 友宏

Volumetric Tomography for Pre- and Post-implant Examination Kazuyuki ARAKI and Tomohiro OKANO

Department of Radiology, Showa University School of Dentistry

 昭和大学歯学部歯科放射線学教室  (20091118日受理)

 要旨

 歯科インプラントの際は術前術後に,口内法X線撮影法,パノラマX線撮影法,CTなどの 画像検査が頻用されている.三次元画像が得られるCTは近遠心方向だけでなく頬舌方向の顎 骨断面像を得ることができ,被写体の立体的な距離などの情報を正確に把握できる,鮮明な画 像が得られるが,被曝は多くなる.これに対して今回紹介するボリューメトリックトモグラフィ

Volumetric tomography, VT)法は,顎骨の頬舌的断面像を11枚という少ない投影画像から再 構成でき,従来のCT画像再構成と比較すると,コントラストや精細さには劣るが,被曝が少ない,

メタルアーチファクトの影響が少ない画像を得ることができる利点がありインプラントの術前 や術後検査として適すると考えられる.

(2)

1

2 3

4 5

7

(a)

(b)

(3)

 図1 VT撮影を行うパノラマX線撮影装置(OC200D).

 図2 VT撮影時に使用する補助器具.バイトプレートを保持し,撮影部位によって患者の立つ方向を決定する.

 図3 バイトプレート.矢印は5個の金属球の1つを示す.

 図4 咬合状態を印記したバイトプレート.シリコン印象材を用いて咬合関係を印記した状態を示す.

 図5  VTパノラミック画像の例.咬合平面にみられる4個の小さな円形不透過像がVT専用のソフトでマーカーと

して認識され,ややわかりにくいが実際には2番から5番の番号が振られている.1番のマーカーは上顎左側 第2大臼歯の金属冠と重複したため認識されていない.このマーカーがVT断層像作成時の補正に使われる.

 図6 バイトプレートを取り付けたVT撮影補助器具をOC200Dに設置した状態.この写真では下顎左側大臼歯部 を撮影する位置づけとなっている.

 図7 投影画像の撮影方向模式図(a)と撮影された11枚の投影画像(b).(a)は下顎左側臼歯部撮影の場合の撮影 の模式図を示す.黒い点で表された位置(11か所)のそれぞれの位置にX線管がある幾何学的配置で撮影す る.(b)は撮影された投影画像11枚を示す.(a)の位置関係で撮影された画像がb上段左端になる.そこか ら右下段に向かって角度を4°ずつ変えて撮影しているので,投影画像も少しずつ変化しているのがわかる.

 図8  VT法の断面像模式図(ヨシダ提供).VTで作成される断面像は,被写体の6×6×6 cm立方体を256枚の断

面像で表示する.この断面像は自動的に歯列弓に直交するよう作成される.

 図9  下顎左側第二小臼歯部および第一大臼歯部のインプラント術前検査VT断層像.(a)が第二小臼歯部,(b)

が第一大臼歯部を示す.これらは図7に示した投影像から再構成されたものである.骨体部の皮質骨に加え 図9(a)ではオトガイ孔が,(b)では下顎管が明瞭に認められる.

 図10  上顎中切歯部インプラント周囲炎疑いのVT断層像.上顎中切歯部に埋入しているインプラント周囲炎の疑 いでVT撮影を行った症例のVT断層像.インプラント唇側の歯槽骨頂は歯頸部から2.5 mmの位置にある が,歯頸部から8 mmの位置までは骨のdensityが低下しており,インプラント周囲炎による骨吸収が進行 しているのが示唆された.

 図11 下顎大臼歯部のインプラント周囲炎疑のVT断層像.(a)は第一大臼歯部のVT断層画像,(bVTパノラ ミック画像を示す.それぞれの画像の数値は歯槽頂の位置を計測した値を示す.インプラントのネジ山開始 部を基準として歯槽頂は頬側で3 mm,舌側で2 mm,近遠心部でそれぞれ3 mm根尖方向に下がっている.

6 8

(a) b

(a)

11

(b) 10

9

(4)

 緒言

 インプラントの術前や術後の画像検査としては,口内 法X線撮影法,パノラマX線撮影法,X線断層撮影法,

CTなどが利用されている.それぞれの特徴をみると,

口内法X線撮影は特殊な装置や用具などが不要で比較 的手軽に検査でき鮮鋭度が高い画像がえられるが,三次 元の被写体を頬舌方向からみた平面の画像とするため,

頬側や舌側の変化をとらえにくい,一度に観察できる範 囲が狭い,画像の拡大率が一定でない,などの欠点があ る.パノラマX線撮影も比較的手軽に検査できる,顎 骨全体を一度に供覧できる利点があるが,三次元の被写 体を頬舌方向からみた平面の画像とするため,頬側や舌 側の変化をとらえにくい,画像の拡大率が一定でない,

などの欠点がある.一方,X線断層撮影法とCTは撮影 装置がやや特殊になり,手軽に検査できるというもので はなくなるが,近遠心方向だけでなく頬舌方向の顎骨断 面像を得ることができ,かつそれぞれ一定の拡大率で画 像が形成されるので,被写体の立体的な距離などの情報 を正確に把握できる.この両者のみを比較すると,CT がより鮮明な画像が得られるが,被曝は多くなる.本邦 ではインプラント術前の顎骨の精査法としてCTが頻用 されている.今回紹介するボリューメトリックトモグラ フィ(Volumetric tomography, VT)は,最大11枚の投 影画像からCTの画像形成原理の1つを利用し歯列弓に 直交する断面像を得ることができる.インプラントの術 前検査や術後の経過観察に有効と考えられる検査法であ る.

 原理と撮影手順

 X線を用いて被写体の三次元情報をえる検査法として はCTがすでにその発明から十分な時間がたちかなり進 歩して,臨床でも高頻度で利用されている.CTでは,

通常被写体の周り360°全体に渡って撮影を行い,その 投影データから断面像を再構成する.精細でコントラス トの高い画像を生成するが,被曝が多いなどの欠点もあ る.一方,ボリューメトリックトモグラフィ(VT)は,

パ ノ ラ マX線 撮 影 装 置Orthopantomograph OP100D/

OC100Dあ る い はOP200D/OC200D(Instrumentarium

Finland)に補助器具を追加して最大11枚の投影画像を

撮影し,この投影画像から断面像を再構成する.図1に 昭和大学歯科病院に設置されているOC200Dを,図2VT撮影時に用いる補助器具を示す.以下,画像が作 成されるまでを撮影手順を追って説明する.

1)バイトプレートの準備とVTパノラマ画像の撮影  VT撮影は患者ごとにバイトプレートを作成しそれを 咬合して行う.専用のバイトプレートには金属球が5

所挿入されており,後述の画像再構成時のマーカーとな る.

 図3にバイトプレートを,図4にはシリコン印象材を 用いて咬合状態を印記した例を示す.患者はまず,この バイトプレートを咬合した状態でVTパノラマ画像の撮 影を行う.図5に撮影したVTパノラミック画像の1例 を示す.VTパノラマ画像は通常のパノラマエックス線 写真より撮影範囲が少し狭いが,ほぼ顎骨全体を供覧で き,これからVT画像を撮影する部位の確認および金属 マーカーの確認ができ,VT画像表示時には断層位置を 示す参照画像となる.

2)投影画像の撮影

VTパノラミック画像を撮影後,検査部位ごとにVT 投影画像を撮影する.検査部位は,上顎・下顎,右側大 臼歯部・右側犬歯小臼歯部・前歯部・左側犬歯小臼歯部 左側大臼歯部の計10部位に分かれている.検査部位の 設定は,上顎と下顎ではバイトプレートを固定する位置 を変えて,それぞれの顎内では補助器具のレバーを該当 する部位にあわせて行う.図6にバイトプレートを取り 付けた補助器具をOC200Dに設置した状態を示す.こ の写真では下顎左側大臼歯部を撮影する位置づけとなっ ている.その後このバイトプレートを咬合した状態で患 者を固定し11枚の投影画像を撮影する.この11枚の投 影画像の撮影は,投影角度を少しずつ変えて行い,中央 を0度とすると最大で±20°の角度になる.図7a)に その模式図を図7(b)に撮影した11枚の投影画像を示す.

 3) 画像再構成 代数的手法(逐次近似法)とフィル ター補正逆投影法(FBP

 従来のCT画像再構成に用いられてきたフィルター補 正逆投影法は処理が高速短時間で済み,正確な解(断面 像)を得ることができるが,そのためには十分な数の投 影画像が必要となり,またノイズや撮影中の患者の動き で解(断面像)が不正確になる1).一方,VTでは得ら れた11枚の投影画像の画素値を元にStatistical inversion 法という計算方法で,画像再構成処理を行い被写体の断 面像を作成する.Statistical inversion法は代数的手法(逐 次近似法と呼ばれることもある)の一種である.代数的 手法は先にある解(断面像)を仮定しその断面像から投 影像を計算で得て,実際の投影像と比較し,その結果か ら先に仮定した解(断面像)を修正する,この過程を繰 り返し行うことで真の解(断面像)に近づけていく方法 である.計算に時間がかかる欠点があり臨床ではあまり 用いられて来なかった2〜5).しかし,近年のコンピュー タの進歩が短時間での処理を可能にしてきた.代数的手 法は近似解を求めるもので,解の正確さはFBPより劣 ることがあるが,少ない投影像からも計算可能で,ノイ

(5)

ズや患者のわずかな動きがあっても解(断面像)を得る ことができる.すなわちVT法ではCTと比べるとコン トラストや精細さには劣るが,被曝が少ない,メタルアー チファクトの影響が少ないという利点がある6)  4)画像の観察

VT法では再構成処理で作成された断面像は被写体の

6×6×6 cmのボリュームを縦×横が6×6 cm の断面像

256枚で表示する.断面像は歯列弓に直交する方向が自 動的に作成される(図8).

 臨床例

 臨床例を示す.

1症例1:下顎左側第二小臼歯部および第一大臼歯 部のインプラント術前検査

 図9VT断層像を示す.図9(a)が第二小臼歯部,

9b)が第一大臼歯部にあたる.これらは図7に示し た投影像から再構成されたものである.骨体部の皮質骨 に加え図9(a)ではオトガイ孔が,図9(b)では下顎管 が明瞭に認められる.一方歯槽頂部は,近遠心に残存し ている第一小臼歯と第二大臼歯の影響でやや不明瞭と なっている.

2)症例2:上顎中切歯部インプラント周囲炎

 上顎中切歯部に埋入しているインプラント周囲炎の 疑いでVT撮影を行った症例である.図10にインプラ ント部のVT断層像を示す.インプラント唇側の歯槽 骨頂は歯頸部から2.5 mmの位置にあるが,歯頸部から 8 mmの位置までは骨のdensityが低下しており,イン プラント周囲炎による骨吸収が進行しているのが示唆さ れた.一方,インプラントの舌側は周囲骨の障害陰影が 重複するため不明瞭となっている.

3)症例3:下顎大臼歯部のインプラント周囲炎  図11は下顎左側大臼歯部のインプラント周囲炎の疑 いでVT撮影を行った症例の画像を示す.図11(a)は第 一大臼歯部のVT断層画像,図11b)はVTパノラミッ ク画像で,数値はそれぞれの画像で歯槽頂の位置を計

測した値を示す.この結果よりインプラントのネジ山 の開始部を基準として歯槽頂は,頬側で3 mm,舌側で 2 mm近遠心部でそれぞれ3 mm程度根尖方向に下がっ ていることが示された.

 まとめ

 VT法は,顎骨の頬舌的断面像を11枚という少ない投 影画像から再構成でき,従来のCT画像再構成と比較す ると,コントラストや精細さには劣るが,被曝が少ない,

メタルアーチファクトの影響が少ない画像を得ることが でき,インプラントの術前や術後検査として適すると考 えられる.

文   献

1) Natterer F: Mathematics of medical imaging inside out: Inverse problems and applications. Bull Amer Math Soc, 42: 89 91, 2005

2 Epstein CL: 13 Algebraic Reconstruction Techniques.

In Introduction to the Mathematics of Medical Imaging, Second Edition. Society for Industrial &

Applied Mathematics, Philadelphia, 2003, pp 493 508 3 Kak AC, Slaney M: Principles of Computerized

Tomographic Imaging. Principles of computerized to- mographic imaging. IEEE Press, NY, 1988, pp 329 4) Siltanen S, Kolehmainen V, Järvenpää S, Kaipio JP,

Koistinen P, Lassas M, Pir ttilä J, Somersalo E:

Statistical inversion for medical x-ray tomography with few radiographs: I. General theory. Phys Med Biol, 48: 1437 1463, 2003

5) Kolehmainen V, Siltanen S, Järvenpää S, Kaipio JP, Koistinen P, Lassas M, Pir ttilä J, Somersalo E:

Statistical inversion for medical x-ray tomography with few radiographs: II. Application to dental radiol- ogy. Phys Med Biol, 48: 1465 1490, 2003

6 Cederlund A, Kalke M, Welander U: Volumetric to- mographya new tomographic technique for pan- oramic units. Dentomaxillofac Radiol, 38: 104 111, 2009

図 1 図 2 図 3 図 4 図 5 図 7(a) (b)

参照

関連したドキュメント

 局所々見:右膝隅部外側に栂揃頭大の腫脹があ

調査の概要 1.調査の目的

⑹外国の⼤学その他の外国の学校(その教育研究活動等の総合的な状況について、当該外国の政府又は関

上部消化管エックス線健診判定マニュアル 緒 言 上部消化管Ⅹ線検査は、50

③委員:関係部局長 ( 名 公害対策事務局長、総務 部長、企画調査部長、衛 生部長、農政部長、商工

在宅医療 注射 画像診断 その他の行為 検査

(2) 交差軸(2軸が交わる)で使用する歯車 g) すぐ歯かさ歯車.

日歯 ・都道府県歯会 ・都市区歯会のいわゆる三層構造の堅持が求められていた。理事 者においては既に内閣府公益認定等委員会 (以下