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分 担 研 究 報 告 書
ヒトの感染に関与する家畜の探索
西川 禎一
106
平成2 9 年 度 厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 食 品 の 安 全 確 保 推 進 研 究 事 業 ) 食品での新たな病原大腸菌のリスク管理に関する研究
研究者代表 工藤由起子 国立医薬品食品衛生研究所
分 担 研 究 報 告 書
ヒ ト の 感 染 に 関 与 す る 家 畜 の 探 索
(食 中 毒 調 査 に お け る 食 品 中 の 病 原 大 腸 菌 の 統 括 的 検 査 法 の 開 発 に 関 す る 研 究 ) 研 究 分 担 者 西 川 禎 一 大 阪 市 立 大 学 大 学 院 生 活 科 学 研 究 科
研究要旨
平 成27年 度 にET EC O169: H 41の病 原 プ ラスミ ド の全 塩 基 配 列 を決 定 し た. そ の結 果 ,本 プラスミドはRepF IIプラスミドファミリーに属 するが,他 のRe pF IIファミリー のET ECプ ラスミ ドと比 較 してサイズが大 き く, 挿 入 配 列 の割 合 が高 くてプ ラスミド の 安 定 性 に関 する遺 伝 子 が少 ないこと,が明 らかになった.このような特 性 は,本 プラ スミドがi n vi t roで容 易 にO169から脱 落 する原 因 になっていると推 察 される.しかし な がら, O 169は 四 半 世 紀 に 渡 り 主 要 なET E Cの地 位 を 占 め て お り , 病 原 プ ラ スミ ド を 落 と さ な い 選 択 圧 が 野 外 で は 働 い て い る . 本 プ ラ ス ミ ド に は ,CS6,CS8 -l i ke, K 88 -l i ke, 以 上3種 類 の腸 管 定 着 因 子 がコ ー ド さ れて いる . 極 めて不 安 定 で 脱 落 しやすいプラスミドであるにもかかわらずi n vi voではよく維 持 されている理 由 として,
異 な る 宿 主 に対 応 で き る 定 着 因 子 を コ ー ド し ,O169の感 染 適 応 力 の増 強 に本 プ ラ ス ミ ド が 大 き く 寄 与 し て い る ため と の 仮 説 を 立 て た .3種 の 定 着 因 子 遺 伝 子 を 用 い て 組 み 換 え 用 菌 株T OP1 0を 形 質 転 換 し , 腸 粘 膜 上 皮 細 胞 に 対 す る 付 着 性 と 宿 主 特 異 性 をヒト,ブタ,ウシの培 養 細 胞 を用 いて検 討 した.その結 果 ,定 着 因 子 K 88 -l i ke遺 伝 子 で 組 み 換 え た株 は ヒ ト のみ な らず ブ タ と ウ シ の腸 粘 膜 上 皮 細 胞 に も強 い接 着 性 を 示 した.本 プラスミ ドは多 様 な 宿 主 への感 染 力 をO16 9に提 供 する ことで,野 外 では保 持 されている可 能 性 があり,ET EC対 策 にはOne Heal t hも考 慮 した検 討 が必 要 と考 えられる.
研究協力者
坂 瑛里香 大阪市立大学大学院生活科学研究科 修士課程 鄭 冬明 大阪市立大学大学院生活科学研究科 修士課程
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大森裕子 大阪市立大学大学院生活科学研究科 修士課程 中台(鹿毛)枝里子 大阪市立大学大学院生活科学研究科 准教授
和田崇之 長崎大学 准教授
麻生 久 東北大学大学院農学研究科 教授 Weiping Zhan カンザス州立大学獣医学研究科 教授
A.目 的
大腸菌(Escherichia coli) は,恒温動物 の腸内に広く分布しており,ヒトにおい ても出生と同時に腸管内へと急速に広が り常在菌として定着する(1).しかしなが ら,大腸菌の一部には特殊な病原因子に よって人に下痢症を起こすものがあり,
行政的には病原大腸菌,学術的には下痢 原性大腸菌(Diarrheagenic E. coli,以後 DECと略す)と呼ばれる.
DECは,その病原機構に基づいて①腸 管病原性大腸菌(Enteropathogenic E. coli, EPEC ), ② 腸 管 毒 素 原 性 大 腸 菌
(Enterotoxigenic E. coli, ETEC),③志賀 毒素産生性大腸菌(Shiga toxin-producing E. coli; STEC), ④ 腸 管 侵 入 性 大 腸 菌
(Enteroinvasive E. coli, EIEC),以上4群 に長らく大別されてきたが,2012年1月 か ら は ⑤ 腸 管 凝 集 接 着 性 大 腸 菌
(Enteroaggregative E. coli, EAEC),も DECに認定された.他にも分散接着性大 腸菌(Diffusely adherent E. coli, DAEC),
細胞膨化致死毒素産生性大腸菌(CTEC),
腸管凝集接着性大腸菌耐熱性腸管毒素
(EAST1)遺伝子保有大腸菌(EAST1EC),
細胞剥脱性大腸菌(CDEC)など,新た な DEC の候補とされるサブグループが 複数存在する.
このうちETECは,大腸菌によるヒト 下痢症の最も一般的な原因菌である (2).
その主な感染経路は,汚染された水や食 べ物を体内に摂取することであり,1〜3 日の潜伏期間を経て水様性下痢を主徴と する症状を発症する(2).下痢は菌が産生 するエンテロトキシンの作用によるもの で,胃腸炎症状は原則として見られない (3).しかしながら,水分や電解質の喪失 による脱水症を引き起こし,死亡する場 合もある(4).ETEC は特に発展途上国に おいて頻発し,EPEC やロタウイルスそ してクリプトスポリジウムとならぶ主要 な下痢症原因菌である(5)。これらは5歳 未満で死亡した下痢症患者の半数以上を 占めており、ETEC だけでも年間 2 万人
108 から 7 万6 千人の乳幼児が死亡する(6).
これらの国を訪れる旅行者や軍人にも下 痢症を引き起こすため,いわゆる旅行者 下痢症の原因菌としても知られている.
ETECのO169:H41(以後O169と略す)
は 1991 年に日本で初めて発見されたが
(7),以後, O169感染の報告が日米で相
次ぎ(8-10),1990 年代には ETECによる 集団感染の多くが本血清型菌によるもの となった(11).O169はエンテロトキシン STpを産生し,腸管定着因子CS6を保有 する.また,巨大なプラスミドを有し,
STp もこのプラスミドにコードされてい ることが確認された(12).さらに,O169 は既知の付着因子 CS6 を有しているが,
他のETECでは見られないHEp-2細胞へ の強い凝集接着性を示すことが報告され た.その細胞付着像はEAECのHEp-2細 胞への付着像に酷似しているが,EAEC の凝集接着に関与する線毛の発現を制御 する遺伝子 aggR を保有していない(12).
O169が1991年以降急激に広がったこと から,その腸管定着因子が従来の定説と は異なる宿主特異性を有する可能性も否 定できない.また,この接着性もプラス ミドの脱落により喪失することから,付 着因子をコードする遺伝子もプラスミド 上にあり,本菌が未知の定着因子を保有
する可能性が示唆された(12).
O169を試験管内で培養すると,その病 原プラスミドは極めて容易に脱落し,
O169 は細胞付着性も毒素産生性も喪失 する(13).しかし,O169は既に四半世紀 以上に渡り主要なETECとして数多くの 集団発生を起こしており,野外において はプラスミドを喪失させない選択圧が働 いていると考えられる.一般に,ETEC には厳密な宿主特異性があって,ブタや ウシのETECはブタやウシのみに感染し,
ヒトのETECはヒトのみに感染すると考 えられている.しかしながら,27年度に 報 告 し た O169 の 病 原 プ ラ ス ミ ド
(pEntYN10)全塩基配列の解析では,CS6 以外に2 種の接着因子候補(CS8-like と K88-like)の遺伝子が新たに発見された.
K88-like の遺伝子はブタ ETEC の腸管定
着因子であるK88と一部相同性を有して いた(13).そこで,本プラスミドが自身 を維持する遺伝子が少なく in vitro では 脱落しやすいのにもかかわらず野外で保 持されている理由として,これら3種の 接着因子が O169 の宿主特異性を広げて 感染の連鎖を保たれやすくすることでプ ラスミドを保持する O169 が優勢を保て るようにし,ETEC O169の急激な流行を 支えている,との仮説を立てた(13,14).
109 本研究の目的は,組み換え実験用の大腸 菌株に3種の接着因子候補遺伝子それぞ れを組み込み,その細胞接着性と宿主特 異性を検討することで,前記の仮説を検 証することにある.従来の付着性試験で は培養細胞への菌の接着状況を顕微鏡観 察することで接着性を定性的に評価して きたが,今年度は定量的に調べるため付 着菌数を測定した.さらに,昨年度の試 験 で 強 い 付 着 像 を 示 し た 接 着 因 子 K88-likeに対するモノクローナル抗体の 作製を試みた.
B. 方 法 1.使用菌株
下痢症患者の便から独自に分離した ETEC O169:H41の YN10株,大腸菌の実 験室株としてOne Shot® TOP10
Chemically Competent E. coli ( Life technologies ), O169の接着因子である CS6、K88-likeおよびCS8-likeの各遺伝子
でTOP10を形質転換した株を実験に供
した.
2.培養細胞
ヒト結腸癌由来の上皮細胞である Caco-2(15)および喉頭ガン由来のHEp-2 細胞(16),ブタ小腸由来の上皮細胞であ
るIPEC-1(17)およびブタ空腸由来の上皮
細胞であるIPEC-J2(18-20),ウシ腸粘膜
上皮細胞であるBIE(21)について,各細胞 指定の組織培養液を用いて実験に供した.
3.付着性試験
25 cm2のフラスコに細胞がフルシート
になるまでHEp-2,IPEC-1,そしてBIE を培養した.フルシート後はPBSで洗浄 し,トリプシン処理した後3 倍に希釈し て継代した.トリプシン処理したフルシ ートの細胞を培養液12 mlで懸濁し,予
め直径13 mmの丸形カバーグラスを入れ
た24穴プレートの各ウェルに0.5 mlずつ 分注し,CO2インキュベータで48 時間 培養した.その後上清を除き,メチルα
−D−マンノピラシド(和光純薬)を0.5%
含む細胞培養液を0.5 ml加えた.供試菌 株を培養したLBブイヨンを10 μlずつ接 種し(50倍希釈),3時間培養した.細胞 をメタノール固定後,10 %ギムザ液で細 胞を染色し,鏡検した(23).また,付着 菌数測定用のウェルからは丸形カバーグ ラスをピンセットで取り出し,滅菌PBS 中で振り動かして洗浄,これを3本の PBS容器中で連続した.洗浄済みのカバ ーグラスを1% Tween80溶液に浸けて細 胞を溶解させ,PBSで段階希釈した.ス パイラルプレート法で寒天培地に塗布し,
37℃で一晩培養した.翌日コロニー計数 を行い接着していた生菌の数を算定した.
4.モノクローナル抗体の作製
110
K88-likeの特異的な付着性に関与する
と推察される遺伝子faeG1とfaeG2の塩 基配列に基づきアミノ酸9個分の合成ペ プチドを抗原としてラットの後足裏に接 種し、約3週間飼育後に腸骨リンパ節を 取り出した。細胞融合により、ハイブリ ドーマを作製した。96ウェルプレートで 培養し、抗原と反応する抗体を産生する
細胞をELISA法と凝集反応試験により選
別した。スクリーニングにより、抗体の 産生が確認された細胞群を限界希釈、シ ングルコロニーとなるまで培養し、
ELISA法でモノクローナル抗体が作製さ
れていることを確認し、以降の実験で利 用した.
5.免疫電顕
供試菌は,O169およびO169cured,
Top10,K88-like組込み株を使用した.親
水化処理した炭素膜グリッドに菌懸濁液 をのせて吸着させた後,1% TritonX-100 で菌体の中身を抜いた.2% BSAで10倍 希釈した1次抗体および金コロイドで標 識した抗ラット2次抗体と1時間反応さ せ,2% モリブデン酸アンモニウムで染 色し,乾燥後,電子顕微鏡で観察した.
6.ウエスタンブロット
供試菌はBuffered Peptone Waterで16 時間培養後,超音波処理破砕によりタン パクを回収し,SDS-PAGE(12.5%)を行
った.1次抗体として作製したモノクロ ーナル抗体,2次抗体としてHRP標識さ れた抗ラットIgG抗体を用いた.検出に はECL Prime Western Blotting Detection Reagentを用いた.
7.凝集反応試験
供試菌はLuria Brothで16時間培養後,
1%ホルムアルデヒド添加生理食塩水で 処理し,実験に供する際にはホルムアル デヒド添加生理食塩水を除き,生理食塩 水で再懸濁した.96ウェルプレートにモ ノクローナル抗体を段階希釈し,死菌懸 濁液を加え,室温で一晩静置した.
C. 結 果
1.ヒト,ブタ,ウシ由来の腸粘膜上皮 細胞にに対する接着性
28 年度に顕微鏡観察で判定した結果 が今回の定量試験でも再確認された.す なわち,O169野生株とK88-like遺伝子を 含む領域を組み込んだ pSV28K88-like で 形質転換されたTOP10K88-like 株は,付 着試験後のヒト由来HEp-2細胞,ブタ由
来 IPEC-1 細胞,ウシ由来 BIE 細胞から
107前後の菌が回収された.一方,病原プ ラ ス ミ ド pEntYN10 が 脱 落 し た O169cured株,実験室株の TOP10 ,CS6 遺 伝 子 を 含 む 領 域 を 組 み 込 ん だ
pSV28CS6 で形質転換された TOP10CS6
111 株,ならびにCS8-like の遺伝子領域を組
み込んだ pSV28CS8-like で形質転換され
たTOP10CS8-like株は 1-2桁低い菌数に とどまった(図1-3).ただし,ブタ由来
IPEC-1 細胞では病原プラスミドを喪失
したO169curedとTOP10CS6株もやや高 い菌数を示し,O169cured 株はウシ由来 BIE 細胞でも他と比べて高い菌数を示し た.しかしながら,顕微鏡観察では 28 年 度 に 報 告 し た の と 同 様 に O169 と
TOP10K88-like 株のみが強い付着像を示
した.
2.モノクローナル抗体の作製
ELISA法による抗体産生チェックにお
いて,抗 FaeG1として 29個,抗 FaeG2
として 25 個の陽性サンプルが確認され た.これらについて,TOP10K88-like を 抗原として凝集反応試験を行ったところ,
それぞれ2個ずつの陽性が確認された.
これらを限界希釈し,シングルコロニー となるまで培養を繰り返し,再びELISA 法によりスクリーニングを行った結果,
FaeG1で1クローン,FaeG2で2クロー ンのモノクローナル抗体産生細胞を得る ことができた.
3.免疫電顕
菌体間で金コロイド数に有意な差は見 られず,抗K88-like抗体が強く反応して いる様子は見られなかった(図4).
4.ウエスタンブロッティング
ハウスキーピングのDnaK を1 次抗体 とした試験では,有効なバンドを確認す ることができた.続いて,定着因子が発 現していることを確認するため抗CS6抗 体 を 1 次 抗 体 と し た 試 験 を 行 い
TOP10CS6 で有効なバンドを確認できた.
実験手技と定着因子の発現確認ができた
ため,抗K88-likeモノクローナル抗体を
利用した試験を行ったが3クローンいず れの抗体も明瞭なバンドを生じさせなか った.
5.凝集反応試験
3 種のモノクローナル抗体いずれもが
TOP10K88-like を凝集したが,本来陽性
と期待される O169 では確認できなかっ た.そこで,念のためにネガティブコン トロールのTop10を調べたところ陽性反 応が見られた.このことから,今回作製 したモノクローナル抗体はK88様定着因 子と特異的に反応するものではないこと が示唆された.
D. 考 察
ET EC は 宿 主 の 腸 粘 膜 へ の 定 着 , す な わ ち 上 皮 細 胞 へ の 接 着 と 局 所 で の 増 殖 , を 果 た し な が ら エ ン テ ロ ト キ シ ン を 産 生 し て 下 痢 症 を 引 き 起 こ す . し た が っ て , 接 着 因 子
112 は 極 め て 重 要 な 病 原 因 子 で あ る が , Caco -2 細 胞 が 使 わ れ る よ う に な る 前 は ,i n vi t ro で の 接 着 試 験 に 有 用 な 培 養 細 胞 は な く(15),赤 血 球 凝 集 試 験(24)や 菌 体 疎 水 性 試 験(25)な ど が 接 着 性 の 指 標 と し て 使 わ れ て い た . そ の よ う な 時 代 に HEp -2 細 胞 に 凝 集 接 着 す る E T EC と し て 出 現 し た O16 9 は 異 色 の 存 在 で あ っ た(12).
O169 の 病 原 プ ラ ス ミ ド pEnt Y N10 の 全 塩 基 配 列 を 解 析 し た と こ ろ ,C S6, CS8 -l i ke, K 88 -l i ke の 3 種 の 定 着 因 子 候 補 遺 伝 子 群 を 認 め た(13). ブ タ ET E C の 定 着 因 子 で あ る K 88 (別 名 F4)は 線 毛 を 形 成 す る が ,O1 69 の 電 子 顕 微 鏡 観 察 で は K 88 様 の 線 毛 は 観 察 さ れ て お ら ず (12) , し か も pEnt Y N10 の K 88 -l i ke 遺 伝 子 群 に は 主 要 線 毛 サ ブ ユ ニ ッ ト を コ ー ド す る fa e Gと 相 同 性 の あ る 配 列 が 2 つ 保 有 さ れ る 前 例 の な い も の で あ っ た .fa e G 配 列 の 系 統 発 生 樹 に よ る と ,2 つ の fa eG 遺 伝 子 は , ブ タ か ら 分 離 さ れ た 大 腸 菌 の fa eG よ り も ,ヒ ト か ら 分 離 さ れ た Sa l mo nel l a ent er i ca serovar Infa nt i s の fa e G と 近 い こ と
が 分 か っ た(13). こ の こ と か ら , pEnt Y N10のK 88 -l i keが ヒ ト へ の 感 染 の た め に 働 い て い る 可 能 性 が 推 察 さ れ た . 実 際 に 3 種 の 各 遺 伝 子 で 組 み 換 え た TO P10 株 を 用 い た 実 験 に よ っ て 定 性 的 に も 定 量 的 に も K 88 -l i ke が i n vi t ro に お け る O16 9 の 特 異 な 接 着 像 を 創 り 出 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た .
ET EC は ヒ ト の み な ら ず ブ タ や ウ シ の 下 痢 症 原 因 と も な る . そ の エ ン テ ロ ト キ シ ン LT と ST の 毒 性 は 家 畜 と ヒ ト に 共 通 の も の が 多 い . し か し , 腸 粘 膜 へ の 定 着 因 子 が 異 な る た め , 家 畜 の E T EC は 家 畜 の 間 で , ヒ ト の ET EC は ヒ ト の 間 だ け で 感 染 を 循 環 さ せ て お り 相 互 の 行 き 来 は な い と さ れ て き た (3).し か し な が ら ,pEnt YN 10 の よ う に i n vi t ro で は 脱 落 し や す い プ ラ ス ミ ド が O 169 に 保 た れ て い る と 言 う 事 実 は , 本 菌 が 常 に 効 率 よ く 感 染 を 繰 り 返 し i n vi vo に 保 た れ て い る こ と を 示 唆 す る . 本 プ ラ ス ミ ド 上 に コ ー ド さ れ た 3 種 の 定 着 因 子 遺 伝 子 を 使 い 分 け る こ と に よ っ てO 169 が 多 様 な 宿 主 に 感 染 す る 能 力 を 得 て い る と す れ ば , 脱 落 し や す い プ
113 ラ ス ミ ド が 保 持 さ れ 続 け る の も 理 解 で き る .K 8 8 は も と も と ブ タ ET EC の 定 着 因 子 で あ り ,ヒ ト に 感 染 す る た め の C S6 や CS8 な ど と 宿 主 に 合 わ せ た 使 い 分 け を O16 9 が し て い る と す れ ば ,E T EC 感 染 症 対 策 に つ い て 考 え を 改 め る 必 要 も 生 じ る . ヒ ト ET E C の 汚 染 源 が 本 当 に ヒ ト だ け な の か , 新 し い 視 点 で 調 べ 直 す 必 要 が あ り そ う だ .
K88-like 抗原を簡便に検出したり,そ
の菌体における局在や宿主細胞との結合 に重要なエピトープを決定したりする目 的で今回はモノクローナル抗体の作製を 試みた.しかしながら,免疫電顕でもウ ェスタン・ブロッティングでも明瞭な反 応が出ず,凝集試験によってK88-likeで 組み替えた菌体のみならず TOP10 自体 とも反応していることが判明した.抗原 として作製した合成ペプチドと同様の抗
原を TOP10 が保有している可能性を予
想せず,合成ペプチドを用いたELISAと
TOP10K88-like の凝集試験でクローンの
選別を進め,陰性対照としてTOP10を凝 集試験に置いていなかったことが失敗の 原因である.基本に立ち返り,再度挑戦 する予定である.
E. 結 論
ET EC O169: H 41の病 原 プラスミドの 全 塩 基 配 列 を 決 定 したと こ ろ, 本 菌 に はCS6,C S8 -l i ke,K 88-l i ke,以 上3種 類 の腸 管 定 着 因 子 がコードされている ことが明 らかとなった.極 めて不 安 定 で 脱 落 し や す い プ ラ ス ミ ド で あ る に も か か わ ら ず 維 持 さ れ て い る 理 由 と し て , 異 なる宿 主 に対 応 できる定 着 因 子 をコー ド し ,O169の 適 応 力 増 強 に 本 プ ラ ス ミ ド が寄 与 し てい る ためか もしれ ない . 今 回 ,i n vi t roで は あ る が ,K 88 -l i ke 遺 伝 子 が ヒ ト , ブ タ お よ び ウ シ の 腸 粘 膜 上 皮 細 胞 へ の 付 着 性 に 寄 与 す る こ と が 明 ら か に な っ た .ET ECの 宿 主 特 異 性 に つ い て 固 定 観 念 を 取 り 払 っ て 考 え直 す価 値 があると考 える.
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1981;677(3‑4):471‑6.
G. 健 康 危 険 情 報 な し
H. 知的財産権の出願・登録状況 な し
I. 研 究 発 表 1 . 論 文 発 表
Wang, L. , Zha n g, S., Zhen g, D., Fuj i hara, S., Wa kaba yashi , A. , O kahat a, K ., Su zu ki , M., Sae ki , A., N a ka mura, H. , Har a -K udo, Y., K age -Na ka dai , E., a nd Ni shi ka wa, Y. (2017) Pre val enc e of
di arrheageni c Escher i chi a col i i n
foods and fecal speci mens obt ai ned fro m cat t l e, p i gs,
chi ckens , as ympt o mat i c carri ers, and pat i ent s i n Osa ka and H yo go, J apan. J pn. J . Infect D i s.70: 464 -9.
Wang, L. , Na ka mura , H.,
K age -Na ka dai , E., Har a -K udo, Y., and Ni shi ka wa, Y. (2017)
Preval ence , ant i mi cro bi al resi st ance and mul t i pl e -l ocus vari abl e -nu mber t ande m-re peat anal ysi s profi l es of di arrheageni c Escher i chi a col i i sol at ed fro m di fferent ret ai l foods. Int . J . Fo od Mi crobi ol . 249: 44 -52.
2 . 学 会 発 表
Parvej , M. S ., K a ge -N akadai , E. , and Ni shi kawa, Y. (2017) Mol ecul ar charact eri st i cs of di arrheage ni c Escher i chi a col i (D EC ) i sol at es fro m poul t r y. T he 1 6t h Aw aj i Int ernat i onal Foru m o n Infect i on and Immuni t y, Awaj i Yu me but ai Int ernat i onal C onferen ce Cent er, J apan, Abst ract : 68. 2 017/ 9/ 5 -8 T akeuchi , N., T ani mot o, Y. , T a mai ,
S., Yana gi da, S., Ya maguc hi , Y ., K age -Na ka dai , E., a nd Ni shi ka wa, Y. (201 7) Di ffusel y ad herent
118 Escher i chi a col i (D AE C) st rai ns i sol at ed fro m heal t h y carri ers i nhi bi t IL -8 secret i on of epi t hel i al cel l s by t he t ype V I se cret i on syst e m (T 6SS). T he 1 6t h Awaj i Int ernat i onal Foru m o n Infect i on and Immuni t y, Awaj i Yu me but ai Int ernat i onal C onferen ce Cent er, J apan, Abst ract : 71. 2 017/ 9/ 5 -8 O mori , Y. , Zhe n g, D., Ban, E.,
K age -Na ka dai , E. , T achi bana, T ., Wada, T ., Hara -K udo, Y., an d Ni shi kawa, Y. Ad hesi on of hu man ent erot oxi geni c Esche r i chi a col i (ET EC) O16 9: H41 t o porci ne i nt est i nal epi t hel i al cel l s by t he no vel col oni zat i on fac t or.
V acci nes for Ent eri c Di seases, AA U Sao Rafael At l ant i co Hot el , Al bufei ra, Port u gal , A bst ract ; Post er A128 . 20 17/ 10/ 9 -11 柳 田 咲 、玉 井 沙 也 加 、能 重 匠 、
谷 本 佳 彦 、松 崎 壮 宏 、中 臺 枝 里 子 、山 口 良 弘 、児 玉 年 央 、飯 田 哲 也 、西 川 禎 一 .上 皮 細 胞 からのサ イトカイン分 泌 における分 散 接 着 性 大 腸 菌 の抑 制 効 果 、 第90回 日 本 細 菌 学 会 総 会 、平 成29年3月 19 -2 1日 仙 台 国 際 センター
WS4 -4 (P -216) 優 秀 発 表 賞 受 賞 鄭 冬 明 、坂 瑛 里 香 、大 森 裕 子 、池
崎 沙 耶 加 、中 臺 (鹿 毛 )枝 里 子 、 和 田 崇 之 、工 藤 由 起 子 、西 川 禎 一 .上 皮 細 胞 に対 する腸 管 毒 素 原 性 大 腸 菌O1 69: H41の特 異 な接 着 性 に寄 与 する新 規 付 着 因 子 、 第71回 日 本 栄 養 ・食 糧 学 会 大 会 、 平 成29年5月19 -21日 沖 縄 コンベ ンションセンター 2A -E 52(p.243) 柳 田 咲 、玉 井 沙 也 加 、能 重 匠 、 谷 本 佳 彦 、松 崎 壮 宏 、竹 内 成 美 、 中 臺 枝 里 子 、山 口 良 弘 、児 玉 年 央 、飯 田 哲 也 、西 川 禎 一 .培 養 細 胞 からの炎 症 性 サイトカイン分 泌 に 対 する分 散 接 着 性 大 腸 菌 の抑 制 機 構 、第7 1回 日 本 栄 養 ・食 糧 学 会 大 会 、平 成29年5月19 -21日 沖 縄 コンベンションセンター
2A -E53(p .244)
谷 本 佳 彦 、竹 内 成 美 、玉 井 沙 也 加 、 柳 田 咲 、 中 台 枝 里 子 、 山 口 良 弘 、 西 川 禎 一 .上 皮 細 胞 からのサイトカ イン分 泌 に対 する分 散 接 着 性 大 腸 菌 の抑 制 効 果 に関 与 する因 子 の 探 索 、第3 8回 日 本 食 品 微 生 物 学 会 学 術 総 会 、平 成29年10月5 -6日 あわぎんホール 1 C02 (p.51) 谷 本 佳 彦 、竹 内 成 美 、玉 井 沙 也 加 、
119 柳 田 咲 、中 台 (鹿 毛 )枝 里 子 、山 口 良 弘 、西 川 禎 一 .健 康 者 由 来 の分 散 接 着 性 大 腸 菌 はV I型 分 泌 装 置 によって上 皮 細 胞 からのIL -8 分 泌 を抑 制 する、第70回 日 本 細 菌 学 会 関 西 支 部 学 術 集 会 、平 成2 9 年11月25日 大 阪 府 立 大 学 I-si t eなんば 若 手-1 4
120
図1.ヒト上皮細胞 HEp-2 への付着菌数 (n=5)
p<0.05:O169 と CS6 の間、K88-like と O169 non plasmid, CS6, CFA/Ⅲ-like の間 p<0.01:O169 と O169 non plasmid, Top10, CFA/Ⅲ-like の間、
K88-like と Top10 の間
4.50 5.00 5.50 6.00 6.50 7.00 7.50 8.00
菌 数 Lo g
a
b a
b
b
b
121 図2.ブタ上皮細胞 IPEC-1 への付着菌数 (n=3)
p<0.05:O169 と Top10, CFA/Ⅲ-like の間、K88-like と O169 non plasmid, Top10, CFA/Ⅲ-like の間
5.00 5.50 6.00 6.50 7.00 7.50
菌 数 Lo g
abc
ac
ab
b
c
c
122
図3.ウシ上皮細胞 BIE への付着菌数 (n=3)
p<0.05:O169 と CS6, CFA/Ⅲ-like の間、O169 non plasmid と Top10, CFA/Ⅲ-like の間 p<0.01:O169 と Top10 の間、K88-like と Top10, CS6, CFA/Ⅲ-like の間
5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5
菌 数 Lo g
a
ab
c
bc
c
a
123
図4.免疫電顕 金コロイド計数結果 (n=3)
抗 FaeG1,抗 FaeG2,両抗体同時に反応させた結果を示している。