• 検索結果がありません。

物 質 と そ の 構 造

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "物 質 と そ の 構 造"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

物 質 と そ の 構 造

化学は物質を対象とする学問である。物質の性質を理解するためには,物質を構成す る粒子や物質の構造をまず理解しなくてはならない。この章では,物質の分類,物質を 構成する粒子と原子の構造,物質量,周期律などについて学ひ¥これから化学を学ぶ上 で必、要となる基礎的事項を理解する。

1 • 1 組成からみた物質の分類

身の回りの物質は,純物質と混合物に大別される。純物質は, 一定の 化学組成を持つ単一の物質で,ろ過や蒸留等の物理的操作によって別の 物質に分けることはできない。純物質は,同じ条件で測定すれば,常に 一定の融点や羽1¥点などの物理的性質を示す。一方,混合物は,空気のよ

うに2種以上の純物質ーからなる物質で, 物理的操作によって純物質に分 けることができる。混合物を純物質に分ける操作を分離という。

純物質は,さらに単体と化合物に分類される。単体とは, H2やO2の ように 1種類の元素からなる物質である。単体の中には ,O2と03(オゾ ン)のような構造と性質の異なる物質が存在するものがあり,これらを 同素体という。化合物とは, 1‑120やCO2のように2種以上の元素が結合

してできた物質で,純物質の多く は化合物である。

1 • 2 物質を構成する基本粒子

物質固有の性質を失うことなく存在できる最小の単位を分子という。 分子は電気的に中性の物質で,希ガスを│徐くと2個以上の原子から構成 されている。物質を原fまで分けると.その物質の性質は失われてしま う。原子は正電荷を持つ原子核と負電荷を持つ電子からなり, 原子核は 正電荷を持つ陽子と電気的に中性の中性子からなっている。

「 陽子(正電荷)

「 原子核 一一→

原子 斗 」 中性子 (電気的に中性)

」 電子(負電荷)

電子は,1897年に英国のトムソンによって陰極線粒子として発見され

主な分離法

蒸留,ろ過,溶媒抽出,クロ マ卜クラフィー,昇華

同ーの原 子番 号 を 持 つ 原 子 (同 位体)のクループ全体を 元素という (12節参照)

希ガスについては21節,8 2節参照。

『理科教育力を高める基礎化学~ (長谷川 ・園仙・吉永共著/裳華房)

(2)

化 学 結 合

原子が様々な様式で結合することにより, 多様な物質が形成される。この章では,オ クテット則と軌道概念に基づいて,結合の様式,イオン結合と共有結合を形成する原因 となる力,および,分極や分子間力等について学び,化学結合の考え方と,分子の形や 物質の性質と電子構造の関係を理解する。

2. 1 オ ク テ ッ ト 則

周期表の一番右の列のHeNe, Arなどの元素は, 希ガスと呼ばれる (8.2節参照)希ガスは不活性な気体で, 単原子分子として存在できる 唯一の元素のグループである。不活性ということは,逆にいうと, 化学 的に非常に安定ということである。希ガスの電子配置を見ると,最外殻 電子数が 2または 8であるという特徴がある。希ガスの性質と電子配置 の特徴から, 以外殻1ちf数が2または8の状態が化学i'l0に安定な状態で あると考えられる。希ガス以外の原子は不安定で寿命が短く,生じても すぐに分子に変化する。このように分子に変化するのは,最外殻電子数 が2または8の安定な状態になろうとするためと考えることができる イオンや分子を形成する原子の最外殻電子数が2になる場合は多くはな く, 8になる;場合がほとんどなので, I原子が結合する際には,最外殻電 子数が8になる」ということができるこれをオクテッ卜則 (八附子則)

という

2.2 イ オ ン 結 合

2.2・1 イオン対 の生成

ナトリウムは最外殻であるM殻に電子を l個持ち,塩素は最外殻の M殻に電子を711111持っているので,オクテッ ト則を満たすためには, Na  はM殻の電子 111111を放出し,塩素は M殻に電子を I個もらえばよい (図21)。これを表すのに,元素記号の周りに最外殻電子を点「・」で表 す簡略法が用いられているNaが電子をl個失いNa+となると,M殻 の電子はなくなり L殻が最外殻となって, Neと同じ電子配置となる。

(3)

'一一一一一一 一一

( 第 3 章 )

L 、 J 物質の状態と気体の性質

液体の水がOOCで固体の氷に変化し 1000Cで気体の水蒸気に変化するように,物質 は温度や圧力によって状態が変化する。この章では,状態図,理想気体と実在気体,気 体分子運動論等について学び,物質の状態変化を原子や分子などの粒子の熱運動に関連 づけて理解する。

3. 1 物 質 の 状 態

物質は, 気体 (gas),液体 (liquid),団体 (solid)のいずれかの状態で 存在している。状態の違いは 物質の構成粒子である原子・分子・イオ ンの集合状態の違いである。粒子聞の凝集力が最も大きいのが団体であ る。イオン結晶や金属などの固体は 強い力で粒子同士が結合している が,分子結晶は分子間力で結合しているため結合力が弱く,融点・沸点 が低い。粒子が凝集すると,物質の集合状態が安定化し,このときエネ ルギーが外部に放出される氷によってものを冷やすことができるのは,

団体が液体になるときに周囲から熱を奪って吸収するためであるo

3.2 熱 運 動 と 熱 平 衡

1827年にブラウンが,水中に浮遊した花粉を顕微鏡で観察中に,花粉 から飛び出した微粒子が不規則な永久運動(ブラウン運動)をすること を発見し,物質の構成粒子が絶えず運動していることを示した。この運 動を熱運動という 熱運動のエネルギーの尺I:! になるのが ì:~U主である

高温の物質を放置すると,物質の温度は時間とともに低下し,周囲と 同じ温度に達し一定となるこの状態では,物質から周囲に放出される 熱と,周囲から物質に与えられる熱とが等しくなり,見かけ上,熱が移 動しないこの状態を熱平衡という

3.3状 態 の 変 化

温度や圧力を変化させると,物質の状態は,固休・液体・気体の間で

エネルギー

ー 一 一 ー

0

。 。 ; 一

‑ t

一 一 蒸 発

困 掛 。

圃緩怒

物質の状態変化 凝集している粒子を離すため にはエネルギ が必要であ る逆にいえば、凝集すると,

そのエネルギ一分安定化す る

分子結品

分子が分子間力で凝集しでで きた結晶のことをいい,水素 結合で凝集した氷や,ファン デルワ ルス力で凝集したナ フタレンなどがある

(4)

反 応 速 度

化学反応式には時間の要素が含まれていないが,化学反応は時間の経過と共に進行し,

反応の速さは濃度や温度に依存する。この章では,反応速度に影響する因子,反応速度 の表し方,遷移状態と活性化エネルギー 触媒等について学び 化学反応を反応速度と いう観点から理解する。

41 化 学 反 応 式

化学反応式は,反応に関わる物質の化学式と記号(+,→,数字など) を用いて化学反応を表した式である。化学以比、は,物質がそれILI身ある いは他の物f'fと作JIJして別の物t'Iへ変化することをいうが, ミクロな悦 }.I~ から見ると,物f'fを構成する J);l

‑ r

のおlみ換えの過程と拠えることがで きる。この変化の前後で 元素の種類と総数は変わらない。水素と酸素 との反応では, H‑I‑I結合と 0=0結合が切れて O‑H結合が形成され るが,反応式の左辺と右辺のHとOの数は同じであるo

H2+ t 02  I‑hO  H H+ t oO I‑I‑O‑H 

化学反応式は,化学量論的に書かれ,反応物 (出発物質,原iGjともい

う)と生成物を示しているだけでなく,反応に関与する物質の量的関係 も示している。水の生成反応で、は,水素111101と酸素 (1/2)11101が反応 して,水1molが生成することが反応式から分かる。しかし, 化学反応 式には反応の進行が速いか遅いかという時間の要素が含まれていない。

4・2 化 学 反 応 の 速 度

化学反応には,燃焼のように進行が速いものと,鉄が錆びるように遅 いものがある。化学反応の進行する速さを反応速度といい,単位時間当 たりの反応物の減少量や生成物の生成量で表す。反応物や生成物の量と

しては,濃度あるいは物質量が用いられている。例えば,過酸化水素の

化学量論

化学反応にあずかる物質の量 的関係を取り扱うことを化学 量 論 (stociometry)とい う。語;原はギリシャ語の sto icheion (元素)とmerton( る)が組み合わさったもので ある

(5)

化学熱力学と平衡

物質の状態は,温度,圧力などの外的条件によって変化し,状態変化が起こる際には,

エネルギーの授受を伴う(第3章参照)。この章では物質の状態変化を熱と仕事という 観点から学び,状態関数,内部エネルギー,エンタルビー,工ン卜口ピ一等の基礎的事 項と,反応の方向性を含む物質の巨視的な性質を理解する。

5 ‑1 化 学 熱 力 学

物質の三態変化や化学変化が起こるときには,エネルギーの出入りを 伴う。このエネルギーは,エネルギーの一形態である熱として出入りす る。このため物質の性質について詳しく理解するためには, 物質の変化 と熱(エネルギー)との関係を理解する必要がある。物抗を構成約':fの 集令体と従えて,熱の1M,]ワする現象を説明する学問体系を熱力学といい,

これを化学変化に応用したものを化学熱力学という。化学熱力学に基づ いて化学反応を考えると 反応が自発的に起こるかどうかを予測するこ

とや,平衡に達したときの物質の量的関係を知ることができる。 エネルギーは,外部に対して仕'jf.をするriUJを点す物JLlIlli:と定義され る。エネルギーには,熱のほかに,運動エネルギー,ポテンシャルエネ ルギー,光エネルギー,電気エネルギー,化学エネルギ一等,多くの形 態がある。これらのエネルギーは相互に変換できる。太陽光電池では,

光エネルギーを電気エネルギーへ変換している。

5‑2 系 と 外 界

熱の関与する現象を説明するために,現象や性質が明瞭になるように 自然界を境界によって分け,分けられた一部分を系と呼んでいる。現象 を理論的に説明するときには,条件を簡略化して非現実的な状態 (例え ば, 重さはあるが大きさがない粒子,これを質点という)を考えること がしばしば行われる。系は,このような実現不可能な仮想的部分でもよ い。境界は,系の範囲を決める実在あるいは仮想的な面 (二次元で考え るなら線)となる。系の外側を外界という。外界は系と境界で仕切られ,

ラザフォードは,砲身を削り を聞ける際の仕事量力¥発 生した熱量とほぼ等しいこと に気づいた。またール は,羽根車で水を撹持して熱 を発生させる実験を行い,温 度変化を調べ,エネルギーと 熱が同じであることを見

し,4.184 Jの仕事量が1ca の熱量を生み出すことを明ら かにした。

(6)

酸 と 塩 基

酸塩基は古くから知られており,紀元前5000年にはすでに,穀物を発酵させて酢が作 られていた。化学が自然科学として発展してきた中で,早くから酸塩基に関する研究が 行われ,理論的解釈もなされてきた。この章では,酸塩基の強弱,解離,中和,緩衝作 用等を学び,化学の基礎となる事項と酸塩基に関わる定量的取扱いを理解する。

塩基性とアルカリ性

ルカリ性Jは,もともとは アルカリ金属の水酸化物ある いは炭酸塩が示す塩基として の性質を指していたが,

r

基性Jと同じ意味で用いられ ることが多L

電解質はイオン性の結品で,

この中の陽イオンと陰イオン が解離するときに必要な工ネ ルギーが格子エネルギーであ る。格子工ネルギ は非常に 大きため,電解質を水に溶 かすだけで陽イオンと陰イオ ンに角平離するとは考えられな かった。イオンは水溶液中で 水手日イオンとなり溶解してい ることが明らかになった。こ れを生成するエネルギーが水 和エネルギーで,格子エネル ギーよりも大きなエネルギ である。水和エネルギーを生

じるため電解質が水の中で 解 離できる。

電解質が陽イオンと陰イオン に 分 か れ る こ と を 電 離 と い い,電離した割合を電離度と いう。電離度の大小で強電解 質と弱電解質に分類する 強電解質 ほとんどの塩類,

強酸,強塩基 弱 電 解 質 弱 酸 , 弱 塩 基

6. 1 酸 と 塩 基 の 定 義

紀元前5000年には,酢が調味料として使われていたことがパビロニ アの古文書にみられ,紀元前3000年には植物を燃やした後の木灰を利

けん

)'f:Jして石鹸もつくられていたようである。木灰を入れた水の上澄みから 得た, 酸の働きを弱める物質を総称してアルカリとH乎んでいた。この物 質を強熱すると,さらに強いアルカリ性物質が残ることも知られており,

この加熱後に残る物質を元の灰よりも基本的な物質であると考え, 塩基 とH手んだ。Jtnυ!lL』げσの)}ん五j宇がアルカ リよりも)仏ム.い;定江主でj義 で、ある。水に溶けやすい 無機塩基を,現在も,アルカリと呼んで、いる

1833年にイギリスのファラデーが電気分解の法則を発見し,1887年 にスウェーデンのアレニウスが,水に溶かしたとき電気を通す物質は,

水中で陽イオンと陰イオンに分かれているという電離説を提H目した。水 に溶かしたとき電]1JI;[する物質のことを電解質という。電解質溶液に電流 が流れるのは,電圧を掛けるとイオンが電極に移動するとして説明でき たしかし,なぜ, 電Wio質が水中で、簡単に正負のイオンに分かれ,しか も,強いクーロン力によって引き合う正負のイオンが分かれて存在でき るのかは説明できなかった。その後,電

W

f,質溶液の凝固点降下や沸点上 昇の異常性が電]1]1[;説でうまく説明できたことなどから,電)1jl[;説が支持さ れるようになった

アレニウスは,この電離説を酸塩基に適用し,酸は水溶液中で水素イ オン (H+)を出す物質,塩基は水溶液中で'*酸化物イオン (OIn を出す 物質であるとした。これが,アレニウスの酸塩基の定義である

木灰から得たアルカリ(塩基)がi駿の働きを弱めることは古くからまIJ られていた。酸と塩基がその性質を打ち消し合う過程を中和というが,

(7)

酸 化 と 還 元

酸化還元は,鉄が錆びる現象や電池や電気分解など,身の回りの多くのことに関係し,

生体内の化学変化や光合成にも関わっている。酸化と還元は,同時に対をなして起こる。

この章では,酸化還元の定義,酸化剤と還元剤,酸化数,電池や電気分解等について学 び,電子授受の観点から酸化還元反応を理解する。

7 • 1 酸 化 と 還 元 の 定 義

燃焼や,鉄のような金属が錆びる現象は古くから知られており,ある 物質が酸素と結び付くことを酸化,酸素を失うことを還元と呼んでいた。

例えば,銅Cuを空気中で加熱したとき,酸素と結合して酸化 銅 (II )  CuOを生じるのが酸化で,CuOを炭素の粉末とともに加熱したと き, CuOが酸素を失いCuに変化するのが還元であるまた,飲みかけの油

を長く放置しておくと,泊中のエタノールC2HsOHが空気中の酸素と化 合して,アセトアルデヒドCH3CHOを経て食酢CH3COOHに変化する (側注化学反応式参照)この現象も酸化である。還元は酸化の逆反応で あり,アセ トアルデヒ ドと水素が反応してエタノールを生じるのも還元 であるそのため,酸素と結び付く,または水素を失うことを酸化,逆 に,酸素を失う,または水素と結びつくことを還元と定義するようになっ た。エチレンC2I‑L,が水素と反応してエタン CzH6になる反応も還元反応 である

酸素の授受による酸化還元の定義

古くは,燃焼や金属の灰化 (酸化)を説明するために, 可 燃性の原質であるフロギスト

ンの存在を仮定しE 金属の中 に含まれるフロギストンが加 熱により金属から離れると燃 焼や灰化が起こると考えられ ていた。1777年にフランスの ラホアジ工が,燃焼や錆びる 現象が,物質と酸素とが結び っくことで起こることを明ら かにした。

CAOH+ j0 一一→ CH3CHO + H2

HO+2 02 一一→ CH3COOH  Cu iJ(l

2Fe 

O ‑一一→ 2 FeO  (7.1)  2CuO + C 一一一→ 2 Cu + CO(7.2)  L   ... │  一一一一‑.t

Feが際化 Cが門主化

酸素と水素の授受による酸化還元の定義

01が,;~J止 C"I[,が)~1J

「ー ψ

2H2

O一一一→ 2S 

2l:IzO (7.3)  CH2=CHH一一一→ CH3‑c}I(7.4) 

d

 

JLSが際化

(8)

無機化合物の構造と性質( 1  ) 

一 典 型 元 素 の 化 合 物 ‑

化合物の構造と性質は,構成している元素の種類と数,それに電子状態に依存する。

無機化合物は,有機化合物に比べると,構成元素の種類が多いが,グループ化して性質 を理解することができる。この章では,周期表の族ごとに元素をまとめて,元素とそれ を含む化合物の構造と性質を学ひ¥典型元素からなる無機化合物について理解する。

無機(inorganic)と意味が反 対の単語に有機 (organic) あるOrganicには 有機体 の"という意味があり,こ は 有 機 物 か ら で き て い る 組 織,すなわち生命体を意味し ている。有機化合物である尿 素が無機化合物から合成さ るまで,炭素を含む種々の有 機化合物は生命体からしか作

られないとされてきた。

18族元素の電子配置 He  1s

Ne [He] 2s22p

Ar  [Ne] 3s23p Kr  [Ar] 3d'4s4p

Xe  [Kr]4d'O 5s5p

Rn [Xe] 4114 5d'O 6s6p

大気の組成 気体 体 積 %

N 78.084  O 20.9476  Ar  0.934  CO 0.038  Ne  0.001818  H 0.000524  CH 0.0002  Kr  0.000114  H 0.00005  Xe  0.0000087  Kr Xeの 化 合 物 (Xe+

[PtF6]ーなど)が.1962年に イギリスのハーネ トらに よって合成された。

8. 1 無 機 化 合 物

i1!1fi機」とは「生命力がない」という意味であり, 無機化合物は,古く は,金属や損など生命と無関係な化合物と考えられていたしかし,新

しい化合物の発見と合成に伴って 無機化合物と有機化合物の境がはっ きりしなくなってきたため 現在では 炭素以外の元素からなる化合物 と,炭素の酸化物, 金属の炭酸j;ftなとaの簡単な炭素の化合物を無機化合 物としている有機化合物と無機化合物は,簡単には.C‑H結合の有無 で大別できる無機化合物を椛成している元素の性質には周期性があり,

周期表の同じ族に属する元素は似た性質を示す (1・6iii'i参照)

8.2 18族(希ガス)

化学的に不活性で化合物を作りにくく,単j京子で存在している(単原 子分子ともいう)元素であるヘリウム He,ネオン Ne,アルゴン Ar,ク リプトンKr,キセノンXe,ラドンRnを希ガスというこれらは全て気 体で,不活性ガスとも呼ばれていた。大気中に全てが存在し,これらの 元素は液体空気の分別蒸留により分離された。

希ガスの最外殻電子の配置は S2p6となっている (Heではぷ)(2・1 節参照)。このため,電子を出し合う共有結合は形成しない。イオン化エ

ネルギー (2.2・2項参照)は非常に大きく,電子親和力 (2・2・3項参照) は小さい。このような理由から, 18族元素は分子やほかの元素と化合物 を生成せず,原子として安定に存在する。希ガスの沸点は低く, Heは 4.2 K. Neは27.1K, Arは87.3Kで,極低温の状態を作る冷媒として 用いられ, 超伝導磁石の冷却にも用いられている

(9)

無機化合物の構造と性質 (n)

一遷移元素の化合物‑

遷移元素は,周期表のほぼ中央に位置した元素群で,全元素の半分以上を占めている。

遷移元素には,電子が満たされていないd軌道またはf軌道があり,それらの軌道の電 子が遷移元素の化学的性質に関係している。この章では,選移元素の化学的性質や選移 金属錯体について学び,遷移元素について理解する。

12族元素は中性の原子およ び、イオンになったときもd 軌道に10個の電子を持ち,

遷移元素とは分類されない。

しかし, d軌道が電子で満た されていない3族から 11族 の元素と化学的性質が似てい るため, 本書では12族も本 章で解説している。

9' 1 遷 移 元 素

9' 1・1 遷 移 元 素 の 特 徴

部分的に満たされたd軌道または[軌道を持った兄素を遷移元素とい い,周期表の3‑11族元素がこれに該当する。原子番号が増すのに伴っ て,順次, d 軌道またはf軌道に電子が入っていく元素をそれぞれd‑ブ ロック元素,f‑ブロック元素という。遷移元素は全て金属なので遷移金 属ともいう。選移元素には以下のような特徴がある

1 )周期表で縦に並んだ元素の性質が似ているだけでなく,横に並んだ 元素聞にも類似性がある。これは最外殻の電子配置が似ているため で,特にランタノイド 15元素の類似性は顕著である

2 )複数の酸化数を取りやすく,連続した整数値を取ることが多い。こ れは,遷移元素が電子で満たされていないdlIilL道を持ち,イオン化 エネルギーがそれほど大きくないためである。選移元素の電子配置

と安定な酸化状態の例を下に示す。

3 )選移金属を含むイオンや化合物は, 着色しているものが多い。

4)単体は硬く, 強く,高副!点である

Sc  4s23d'  +3  Ti  4s23d +2, +3, +4  4s23d +1, +2, +3, +4, +5  Cr  4s3d +2, +3, +6  Mn  4s23d +2, +3, +4, +6, +7  Fe  4s23d +2, +3, +4, +6  Co  4s23d +2, +3  Ni  4s23d +2, +3 

Cu  4s' 3d'o  +1, +2  4s軌道の方が3d軌道よりエネル

Zn  4s23d'o  +2  ギー準位が低い (15節参照)

(10)

有機化合物の構造と命名

有機化合物は,平面的な構造式を用いて表すことができるが,この式からは立体構造 に関する情報は得られない。この章では s軌道とp軌道からなる混成軌道の作り方と 軌道を用いた有機化合物の立体構造の表し方,および 有機化合物の系統的な命名法に ついて学び,有機化学の学習に必要な基礎的事項を理解する。

10・1 有 機 化 合 物

10・1・1 有 機 化 合 物 と 無 機 化 合 物

かつては,生物体を形成する物質や代謝物を有機化合物,その他を無 機化合物と分類していた。しかし,1828年にドイツの科学者ウェーラー が,無機化合物であるシアン酸アンモニウム (NI‑L,OCN)から有機化合 物である尿素 (NH2CONlh)が合成できることを見出し,有機化合物と 無機化合物には本質的な違いがないことを示した。今日では,グメ リン の提案(1848年)に従って, CO, CO2,炭酸塩などの簡単な化合物を除 いた炭素化合物を有機化合物と呼んでいる。

10・1・2 炭 化 水 素

炭素と水素だけからなる有機化合物を炭化水素といい,単結合のみで 結合しているものを飽和炭化水素, 二重結合や三重結合を含むものを不 飽和炭化水素という。直鎖の飽和炭化水素をアル力ン, 二重結合を1つ 含む炭化水素をアルケン,三重結合をlつ含む炭化水素をアルキンと総 称する。

10・2 有 機 化 合 物 の 構 造

10・2・1 ア ル 力 ン の 構 造

炭素原子をボーアモデルで表すと,最外殻に電子が4位│入るので,原 子仙iは4となり,容易に平面的な 構 造 式 (平面構造式ともいう)を書く ことができる。アルカンの中で最も簡単な化合物はメタン (CI‑L1)で,図 10・1aのような構造式で表すことができる。しかし,この式は分子を梢

NH4+ ‑O‑CN (NH40CN シアン酸アンモニウム

尿素

有機化合物の特徴

①構成元素の種類が少ない。

主な構成元素はCH, 0,で これに次ぐのはNS,ハ口 ゲン。

②燃焼すると,二酸化炭素と 水を生じる。

③大部分の有機化合物は分 子で,融点・沸点が比較的低

、。

④水に溶けず,有機溶媒(ア ルコール, トル工ン等)に溶 けるものが多し、。

⑤一般に,反応速度か一遅い。

ボーアモテルによる 炭素の電子配置

(11)

有機化合物の反応( 1  ) 

ーハロゲン化アル キル,アルコール,アルケン,アルキンの反応 一

有機反応も,結合レベルのミク口な視点から捉えると,プラスとマイナスの電荷によっ て制御されたイオン反応と考えることができる。この章では,有機反応を結合の開裂と 生成というミク口な立場から捉える方法を学び,ハロゲン化アルキル,アルコール,ア ルケン, アルキン等の基本的な反応を論理的 ・系統的に理解する。

11・1 有機化合物の燃焼

燃焼とはものが燃えることであり,生体内の酸化反応も燃焼というが,

普通は,光と熱の発生を伴う酸化反応を燃焼という。家庭用ガスには,

現在,都市ガスかプロパンガスが使われている。前者は天然ガスで,メ タンを主成分(約90%)としたアルカンの混合物であり,後者は石油化 学工業で副製する力、スでLP(液化石油)ガスともいわれ,プロパンが95

%以上含まれている。燃焼した際に発生する熱 (燃焼熱)は, 結合解離 エネルギー(表11・1)から見積もることができる

1‑I‑C‑1‑1 

20=0 一一一→ O=C=O 

2H‑0‑H 

H  (11.1) 

メタンの燃焼では,左辺のC‑H結合と 0=0結合が,右辺ではC=

O結合と O‑H結合に変わっている。化学反応は,結合に注IJすると,

点辺の11向、結合が切れてイ7辺の析しい結合ができる過程と考えることが できる。左辺の結合 19刊j~ エネルギーの総和は 412 x 4 

498 x 2 = 2644,  右辺の総和は 805x 2 

473 x 4 = 3302なので,前者から後者を引く

と‑858で, 858kJ moCIの熱が放出されると見積もれる(図11・1)結 合解離エネルギーと結合エネルギーは,エネルギーを供給するか放出す るかの違いはあるが,値は等しい。この燃焼反応の反応熱を標準生成工 ンタルビー (5・8節)から求めると, 393.5 

2 x 286.8 ‑74.5 = 890.5  kJ mo!‑Iとなる。ただし,このとき生成する水は液体の水で、あり,結合 エネルギーから求めた値には,液化する際に放出される熱量が考慮され ていない。これを考慮すると,両者はよい一致をしている

燃焼の3要素 燃える物質 酸素(酸化剤) 着火源

これら3要素が揃わないと燃 焼は起こらなし、。

酸化炎 還元炎

1500' 1600' 1500' 500' 300'

ガスバーナーの炎の温度

CH

(g) 20

(g) 

CO

(g) H

(g) 

890.5 kJ mol 水の蒸発熱 44 kmol

(12)

有機化合物の反応 ( l l )

ー カルボニル化合物と芳香族化合物の反応一

カルボニル基

( > c = o )

を持つ化合物は,カルボン酸,エステル,アミドなど有機合 成上有用な化合物が多い。ベンゼン環を持つ化合物も,医薬品原料ともなる有機合成上 重要な化合物である。この章では カルボニル化合物と芳香族化合物の構造と反応性と の関係をミク口な視点から学び,これら化合物の反応を論理的に理解する。

12・1 力 ル ボ ニ ル 化 合 物 の 反 応

12・1・1 力ルボニル 基 の 分 極

カルボニル基の炭素は,エチレンの炭素と同様に, Sp2混成軌道をf甘 いてσ結合を形成し,残ったp軌道でπ結合を形成している。エチレン ではπ電子は

c=c

結合の炭素間で均等に分布しているが,カルボニル 基では電気陰性度が炭素2.5,酸素3.5であるため, π電子雲が酸素側 に偏り,炭素がa+,酸素がSー に分極している(図12・1)。このように 分極しているため, カルボニル基には防イオンも│主イオンも近づくこと ができる。すなわち, カルボニル化合物のjえ応は,際性条1'1FでもJtlυll 性条fi:ドでも1包こり伴る。これが カルボニル化合物が有機合成に広く 利用されている理由である

カルボニル基の分極は,電荷が分ïìJlf~ していない極限構造式 I と,電荷 が分南Ifーした極限柿造式 Eが共鴫に寄与していると して表すこともでき る。電荷が分V1Ifした極限構造式は

c=o

二重結合に関係ていた2

ふ? 。 ィ明ア分極 7 1 c T‑

〆ち

i F

下 化,く~ ~色久 ζJ - --LJ ・

料 o o J S ‑ J 匂 σ J L 3 3 │ │ │ 3

σ結合

/ 8 ‑ 8   / 0 ‑ 8  

121 カルポニル基の分極

(13)

v

( 第 1 3 章) 高 分 子 化 合 物

↓ミィ一一

分子量が10000以上である有機高分子の合成法は連鎖重合と逐次重合に大別される。

この章では,有機高分子の合成も分子量の小さな有機分子の反応を基に説明できること や平均分子量の考え方を学び,身の回りで使われている高分子の合成法や性質を理解す る。

タンパク質

αア ミ ノ 酸 (Glyを含む)が 脱水縮合した重合体で分子量 5000以上のものをいい それ以下のものはペプチドと つ、。

aーアミノ酸 H2N+COO

R=Meアラ二ン (Ala)

Phフェニルアラニン(Phe) CH2SHシステイン (Cys) (R =Hグリシン(Gly)) 多糖類

多数の単糖分子が互いにク コシド結合した重合体。

CHzOH........O

J。 ¥'円/々ーーザr"~ ¥  HCH>OH iO  HC斗/'OH 占ー←ーヤ4¥ . H  

¥ H /rτ

HC 当~" ........ 

多糖類の例 7ミ口 ス(で んぷんの成分)

核酸

糖およびリン酸からなる部分 を含む高分子で,生命維持活 動,遺伝現象に必須の物質で

ある。

天然ゴム

植物から生産される原料を用 いたコムで,ほとんどはイソ プレン (CH2=C(CH3CH= 

CH2)が単量休となっている

13・1 高 分 子 化 合 物

分子量が非常に大きな化合物を, 高分子化合物あるいは単に高分子 (ポリマ一)という。どの程度の分子量から高分子というかの基準は│慶昧 であるが, 一般に, 10000以上の分子量を持つ化合物を高分子と呼び,分 子量が1000位までの分子を低分子 1000位から 10000位までの分子を オリゴマーと呼んでいる

高分子は,主鎖が炭素からなる有機高分子と,ケイ素,硫黄,リンな どからなる無機高分子に大別される。天然に存在する有機高分子には,

タンパク質,多糖類(セルロース,デンプンなど),核酸,天然ゴムなど がある。身の回りには,ベッ トボトルなどの容器や洗面具,電気器具な どの有機合成高分子であるプラスチック製品があふれている。プラス チック製品が広く使われている理由は,軽くて丈夫で, よりも成 71~が 容易なためである。力を加えると変形し元に戻らなくなる性質を可塑性 といい,加熱すると軟化して成 71~ できるようになり,冷えると硬化する 性質を熱可塑性という。このような性質を持つプラスチックを熱可塑性 樹脂という。熱可塑性樹脂では,加熱と冷却を繰り返すと,軟化と硬化 が可逆的に起こるこれに対し,加熱すると流動性を増すが,時間が経 つにつれて硬化し,一度硬化すると,再加熱をしても軟化しないプラス チックを熱硬化性樹脂という。熱硬化性樹脂が加熱を続けていると硬化 するのは, 加熱により化学反応が起こって構造が変化するためである このように,熱や力を加えることにより目的とする形に成形できる高分 子を総称してプラスチックと呼んでおり,有機合成高分子でも繊維,ゴ

ム,塗料,接着剤はプラスチックには含めていない。

プラスチックは,合成樹脂と同義に使われることが多いが,樹脂は原

(14)

( 第 1 4 章 ) 環 境 と 化 学

産業の発展により生活が便利になったが,一方で,化石燃料の大量消費により,大気 や水の汚染,地球温暖化等の環境問題が深刻化してきた。この章では,オゾンホール,

温室効果,酸性雨,エネルギー資源等について学び,エネルギー資源問題と地球環境保 全を科学的に理解する。

141 地 球 の 大 気

現在の地球大気の組成は78%が窒素, 21 %が酸素で,これに微量の アルゴンや二酸化炭素などが含まれる(表141)。窒素は, 化学反応性 が低く安定である。酸素は地球誕生時には存在していなかったが,緑色 植物の光合成によって形成され 反応性が高く酸化反応を引き起こす。

太陽からiil高射される光(電磁波)に含まれる紫外線は,可視光よりも エネルギーが大きく,様々な化学反応を引き起こす。紫外練は, UV‑A 

(波長 315~38011m,肌が褐色になるサンタンの原因となる),UV‑B  (28~ 315 11m,肌が赤くなる日焼けサンパーンの原因となる),

U v ‑ c  

(200 ~ 280 11m,発ガン性がある)に分類されている地上高度10km 付近で,大気中の酸素分子は, 240 11m以下の波長の紫外線を吸収して, 2つの酸素原子に開裂する。生成したlつの酸素原子と lつの酸素分子

とが反応するとオゾン03を生じる。オゾンは,結合角が1160 の折れ曲 がった梢j査をしている。電子式で表そうとすると,左右の酸素のいずれ かが,中央の酸素の電子2個を使って単結合を作らないと, オクテッ ト 則をr,rijiたすことができない。構造式は2つ書くことができ(図141)

これらが共鳴に寄与している(10.24項参照)

このオゾンの濃度は,高度 20~25km付近 (成層圏)で最大となり,

中間圏下層の高度60km付近ま、比較的大きくなっているで 。この部分を オゾン層という。また,オゾンは32011m以下の波長の光をl吸収して,酸 素分子と酸素原子となり 生成した酸素原子は オゾンと反応して2個 の酸素分子となる。このとき 余分のエネルギーを赤外線として発する ので,オゾン層で紫外線は長波長の赤外線に変換されたことになる。こ のオゾンの生成と消滅反応の結果, 200 ~ 3211mの紫外線は遮蔽され,

141大気の主成分(%) 気 体 金 星 地球 火星 N 3.4  78  2.7  O 0.00ω21  0.13  H20.14  1‑2.8  0.03  Ar  0.0019  0.93  1.6  CO96  0.038  95  N0.0004 0.0018  0.00025 

n

里科年表j平成23年版(丸善) のデ一歩より作成

オソンの生成 hν(240nm

O2一一一一一2o .0+02一一一一一一0 オゾンの消滅

〆 句

O M 4

一 一 一

3 i  

0・0

メム¥

116O

0+

o

.

・ ・ 0 ‑ ・ ..  . . 0 : 

O

J o ¥ 

+ ¥ 

〆 ︒

141 オゾンの構造

参照

関連したドキュメント

ここで SWNT 生成の触媒として最もメジャーな Ni,Co といった鉄族触媒を用いた 合成法に少し触れておく。

と内部で急激な温度差を生じ,ひび割れ発生の原

プロポ リスのア ル コール抽 出物 が ほのか に甘 い香 りを出すのは このエステルのためであ る.働 き蜂 のナサ ノフ 腹中 に含 まれ ると考 え られ, プロポ リスに取

蒸留の注意点 A・・・(温度計の測定部はフラスコの枝の付け根に合わせる。冷却器に入る蒸気の温

(6).新冷媒への転換推進 新冷媒への転換推進- -機器毎の冷媒代替技術の現状

5 | 5 ③生育の仕方で見分ける 地面の中で育つ根菜類などは体を温める食材が多く、地上に育つ葉や実などには、体を冷やす食材が

成分を添加して,この147℃ という転移温度を

 液体窒素温度で使用可能な超電導バルク体は、熱容量が 小さく値段の高い液体ヘリウム