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MR 895 ノート MR 装置の安全管理に関する実態調査の報告 思った以上に事故は起こっている 圡井司 1) 山谷裕哉 2) 上山毅 3) 錦成郎 4) 5) 小倉明夫川光秀昭 6) 土橋俊男 7) 奥秋知幸 8) 松田豪 9) 10) 熊代正行 論文受付 2011 年 4 月 19 日 論文受理

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論文受付 2011年4月19日 論文受理 2011年7月5日 Code No. 261

MR 装置の安全管理に関する実態調査の報告

―思った以上に事故は起こっている―

圡井 司

1)

・山谷裕哉

2)

・上山 毅

3)

・錦 成郎

4)

・小倉明夫

5)

川光秀昭

6)

・土橋俊男

7)

・奥秋知幸

8)

・松田 豪

9)

・熊代正行

10) 1)大阪大学医学部附属病院医療技術部 2)奈良県立医科大学中央放射線部 3)彩都友紘会病院画像診断部 4)天理よろづ相談所病院放射線部 5)京都市立病院放射線科 6)神戸大学医学部附属病院医療技術部 7)日本医科大学付属病院放射線科 8)八重洲クリニック放射線科 9)GE ヘルスケアジャパン(株)技術本部 MR 研究室 10)倉敷中央病院放射線センター

An Investigative Report Concerning Safety and Management in the Magnetic

Resonance Environment: There Are More Accidents than Expected

Tsukasa Doi,1) Yuya Yamatani,2) Tsuyoshi Ueyama,3) Shigeo Nishiki,4) Akio Ogura,5) Hideaki Kawamitsu,6) Toshio Tsuchihashi,7) Tomoyuki Okuaki,8) Tsuyoshi Matsuda,9) and Masayuki Kumashiro10)

1) Osaka University Hospital 2) Nara Medical University Hospital 3) Saito-Yukokai Hospital

4) Tenri Hospital 5) Kyoto City Hospital 6) Kobe University Hospital

7) Nihon Medical University Hospital 8) Medical Satellite Yaesu Clinic 9) GE Healthcare Japan

10) Kurashiki Central Hospital

Received April 19, 2011; Revision accepted July 5, 2011; Code No. 261

Summary

Using a questionnaire, we surveyed 2,500 facilities in Japan to clarify medical accidents concerning the magnetic resonance device and its environment. Data derived from 1,319 valid responses (52.8%), allowed us to analyze the situation of (or the reason for) the occurrence of the accidents and their environmental factors. Five hundred and nine facilities (39% of all facilities) had the experience of magnetically induced displace-ment of the large ferromagnetic material. Intravenous (I.V.) drip stands were involved the largest number of them: 31% (228 cases). Oxygen bottles had the second largest number of incidents: 20% . There were also many incidents involving various materials brought in by non-medical staff (e.g. stepladder for construction). About 20% of the accidents occurred outside of working hours. Patients in 12% of the facilities (154 facili-ties) experienced burns. In 39 of the cases, burns were received to the inside of the thighs. In 38 of the cases, patients received burns from an electrical cable touching the skin. There were also frequent incidents of burning regarding the boa. We received reports of burns and pain from the halo vest even though it’s required to be worn for MR safety. Regarding incidents of contraindications, 280 patients with pacemakers were brought into the magnetic resonance (MR) inspection room. Twelve percent of the facilities experi-enced natural quench. Lack of training for the staff who introduce and operate high magnetic field devices are considered involving frequently occurring accidents of attractions and burns at hospitals with over 500 beds caused by carrying in materials.

Key words: magnetic resonance device, medical accident, risk management, questionnaire survey, adverse event

別刷資料請求先: 〒 565-0871 大阪府吹田市山田丘 2-15

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参考に各施設で医療安全対策が施されている .しか しながら,たとえインフォームドコンセントが十分に なされ過誤がない場合であっても,発生率の低い事 故に関しては,多くの患者は最初に「誰かが医療過誤 を起こした」と推測すると言われている4).このように 医療の世界では,事故がなくて当然であり,何かあ れば医療側に原因があるという社会的風潮もある.こ のような状況の中で日本放射線技術学会では,医療 安全の確保と高度専門医療に対応できる医療技術者 の育成と知識 ・ 技術を普及するために各領域に専門 技術者制度の設立を構想した5).それに沿って,関連 委員会や会員はレベルアップやリスクマネジメントに 積極的に取り組んでいるが,その成果が如実に表れ ているとは言い難い.  中でも magnetic resonance(MR)検査の領域は,放 射線とは異なる磁石や radio frequency(RF)パルス, 傾斜磁場変動などによる新たな危険性が導入当初か ら指摘されており,安全使用にあたっての注意喚起 と教育の重要性が取りざたされていた6∼8).しかしな がら,その危険性が部門スタッフをはじめ医療関係 者のみならず立入者全員に至るまで周知できていな いのが現実であり,吸引事故や火傷の発生を時々耳 にする2).事故を防ぐために,その実態を把握し安全 な取扱い方法を喚起する必要があることを論議した が,大々的なアンケート調査を行う前に試験的に日本 放射線技術学会第 65 回総会学術大会第 52 回放射線 撮影分科会 MR 部門(2009 年 4 月)に参加している会 員に磁性体の吸引経験などの簡易調査を行うことに した.約 100 名から回答を得た結果,10 名の方が 大型医療器具による吸引事故の経験があると返答し た9).放射線撮影分科会に参加しているどちらかと言 えば業務に熱心に取り組んでいる施設からのアン ケートでさえもこのような結果であることから,さら に多くの施設でアクシデントが発生していることが予 測された.  以上のような準備を経て 2010 年度学術調査研究 班に「MR 装置の安全管理に関する実態調査班」とし て申請を行い,さらに多くの国内施設の MR 装置に 保有が予測される 2500 施設を無作為に選出し, MR 検査担当責任者宛てにアンケート調査票を発送し た.アンケートの記載内容は,(1)施設環境につい て,(2)マグネットへの吸引経験,(3)発熱 ・ 神経刺 激の実態,(4)騒音対策,(5)エマジェンシコール, (6)クエンチ*1,7)金属チェックおよび問診方法,(8) 禁忌器具の持込み経験,(9)教育方法,(10)記入者の MR経験年数,に関する 10 項目の情報と実態につい てである.内容はさらに詳細に分かれている.回答は 匿名にて返送を求めた. 2.結 果  回収できたアンケートは 1353 施設であり,回収率 は 54.5%であった.その中には,MR 装置が設置され ていない 34 施設の返送もあり,有効アンケート数は 52.8%(1319 施設)であった.その内訳は,入院施設 なし : 29 施 設,1∼100 床 の 施 設 : 102 施 設,101∼ 300床の施設 : 570 施設,301∼500 床の施設 : 392 施 設,501 床以上の施設 : 226 施設であった. 2-1 施設環境  施設が保有している MR 装置の台数は,1 台の施 設が 69%(910 施設),2 台が 23%(303 施設),3 台が 5%(66 施設),4 台以上が 3%(40 施設)であった.病 床数が増えるにつれて設置台数が多くなり,500 床以 上の施設では 1 台を保有している施設が 13%(29 施 設),2 台が 50%(113 施設),3 台が 22%(50 施設), 4台 が 10 %(23 施 設),5 台 以 上 が 5 %(11 施 設)で あった.  調査対象となった装置台数は 1863 台(1319 施設) であり,その磁場強度は,1 T 以下の装置が 283 台, 1.5 T:1454 台,3 T:126 台であった.1.5 T 装置が全 体(1863 台)の 78%を占め,1 T 以下は 15%,3 T は 7%であった.  医師が MR 検査室に常駐しているかについては, 334施設(25.3%)で担当医が付いていると回答した が,放 射 線 科 医 が 常 駐 し て い る 施 設 は 60 施 設 (4.5%)にとどまった.看護師は,全 1319 施設中 24% *1 超電導磁石の超電導状態が失われることをクエンチと定義した.この時,コイルに電位差が生じるため発熱が起こり,超電導状 態を保つための液体ヘリウムが急激に気化する.

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で常駐しており,病床数が増えるにしたがって常駐 率が上昇するが,500 床以上の施設でもその占める 割合は 46%(103 施設)であった.中には,事務員が 看護師の代わりをしているところもあり,多くの施設 で技師のみで MR 検査を行っていた. 2-2 マグネットへの吸引 2-2-1 大型の強磁性体の吸引  大型の強磁性体への吸引経験を持つ施設は 509 施 設(全 1349 施設の 39%)だった.その内訳は,入院な しの施設では 10%(3/29 施設),1∼100 床の施設で 22%(22/102 施 設),101∼300 床 の 施 設 で は 32% (182/570 施 設),301∼500 床 施 設 で は 46%(18/392 施 設),500 床 以 上 の 施 設 で は 54%(122/226 施 設) と,病床数が増えるほど施設数に対する比率は増え るが,最も多く吸引事故を経験している施設は 101∼ 500床の施設であった(Fig. 1).また,複数回経験し ている施設が 34%(17/509 施設)あり,吸引事故の発 生件数は 509 施設に対して延べ 737 件であった.複 数回吸引事故を起こしている施設の施設規模に関す る比率に偏りはなかった.  吸引させた 737 件の大型強磁性体で最も多いのが 点 滴スタンドで 31%(228 件),次 いで 酸 素ボンベ 20%(147 件),ストレッチャ,車椅子,掃除機,パワー アンクルの順であった(Fig. 2).その他には,工事用 の脚立など医療関係者以外の者が持ち込んだものが 多く含まれていた.  事故が起こった時刻の約 5 分の 1 が勤務時間外で あった.吸引させた時に,業者を呼んだ事例が 37% (273/737 件)あり,磁場強度が高くなるに従ってその 頻度が多くなっていた.復旧させるために完全に消 磁させたのは 16%(118/737 件)であった.  吸引させた当事者は,主に MR 検査を担当してい る技師が最も多く 36%(265/737 件),次いで主に MR 検査を担当していない看護師が 23%(170/737 件), 主に MR 検査を担当している看護師が 15%(111/737 件),その次に清掃業者や工事関係者の 9%(66/737 件)であった(Fig. 3).事故当時の 94.6%(697/737 件) が,MR 担当技師 1 人の場合と担当技師が目を離し たすきに起こっていた.そして 50 件の人的被害が報 告され,患者に被害が及んだもの 7 件,スタッフが 怪我を負ったもの 33 件,その他 10 件であった. 2-2-2 小型の磁性体の吸引  担当技師や看護師の所持品や身につけている物が 吸引された経験に対して 2711 件(同一施設で同一物 質の複数回の経験は数えず)の回答があった.吸引

Fig. 1 Ratio of facilities which have had the experience of the attraction of large ferromagnetic materials according to the number of beds.

Fig. 2 Classification of attracted large ferromagnetic materials.

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された物の中で最も多かったのがボールペンで全 1319施設中の 833 の施設(63%)が経験していた. 次いで,ヘアピン : 458 施設,クリップ : 435 施設, はさみ : 362 施設,名札 : 172 施設,鍵 : 134 施設,ラ イター : 113 施設であった(Fig. 4).  患者が身につけていた物が吸引された経験について は 2270 件の回答があった.ヘアピンが全 1319 施設中 の 817 施設(62%)と最も多く,次いで鍵 : 408 施設,ラ イター : 334 施設,髪とめ : 174 施設,使い捨てカイロ : 155施設,クリップ : 146 施設であった(Fig. 5).

Fig. 3 Classification of persons concerned in the accidents of the attraction.

Fig. 4 Classification of the attracted ferromagnetic materials which belonged to the medical staff.

Fig. 5 Classification of the attracted ferromagnetic materials which belonged to the patients.

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2-3 発熱・神経刺激  検査中に患者が火傷を負うような事故を経験して いるかを尋ねた.患者に火傷を負わせた経験を持つ 施設は 12%(154/1319 施設)であった(Fig. 6a).その内 訳は,病床を持たない施設 : 0.6%(1/154 施設),1∼ 100床以下の施設では全くなく,101∼300 床の施設 : 22%(34/154 施設),301∼500 床 : 33%(51/154 施設), 501床以上が 44%(68/154 施設)だった.その数は 501 床以上を持つ 226 施設の中の 30%を占めた(Fig. 6b). Fig. 7は,その発生部位について回答を得たものであ る.149 件(複数回答施設あり)の回答があり,大腿部 の内側(39 件)とケーブルと皮膚が接触した場所(38 件)が最も多く,次いで,心電図モニタとの接触,身 体とボアとの接触,身体で形成された電流ループで あった.指輪による火傷も 4 件あった.  Fig. 8 は,医療用器具(ハローベストやインプラン ト)による痛みの訴えについて尋ねた結果である.101 件(複数回答施設あり)の回答があり,その原因は火 傷の予兆なのか否かは不明である.ハローベスト装 着時が 44 件,インプラントが 19 件あった.インプラ ントには,脊椎の手術で用いられたスクリューや固定 具,骨折の修復に用いるプレート類も含まれている. その他,人工関節や創外固定具,胸骨ワイヤなどの 回答があった.中には MR safety で登録・販売されて いるハローベストも含まれていた.  Fig. 9 は,患者が耐えられない神経刺激を受けて 検査を中止した経験について尋ねたものである.76 件(複数回答施設あり)の回答があり,四肢・末梢のし びれ : 12 件が最も多く,次いで術後の体内金属 : 10 件,脊椎の神経刺激 : 8 件,刺青 : 7 件,アイメイク : 4件などがあり,事例が多岐にわたっていた. 2-4 患者管理 2-4-1 騒音対策  Fig. 10a は検査中の騒音対策について尋ねた結果 である.患者によって耳栓とヘッドホンを使い分けて

Fig. 6 (a) Ratio of facilities which experienced patients who were burned, (b) Classification of the accidents accord-ing to the number of beds of each facility.

a b

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Fig. 8 Classification of the medical devices which gave pain to patients.

Fig. 9 Causes of appeal for discontinuing the scanning by patients because of the intolerable nerve impulse they received.

Fig. 10 Ratio of facilities which allowed patients emergency call.

いる施設が多かった.その他,スポンジなどで対応 している施設もあり,ほとんどの施設が何らかの対策 を施していた.中には騒音対策を施していない施設も あったが,そのほとんどが低磁場装置であった. 2-4-2 エマジェンシコール  検査室は密室状態であるため,患者との会話はマ イクロフォンとスピーカだけである.インフォームド コンセントを十分に行っていたとしても患者が自分自 身の危機をどのようにしてスタッフに伝えるのかは切 実な問題である.全 1319 施設中の 74%(976 施設)の 施設が常にエマジェンシコールを持たせていると回 答したが,持たせていない施設が 9%(119 施設),必 a b

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要性を判断してから持たせる施設が 17%(224 施設) であった(Fig. 10b).エマジェンシコールを待つこと のできない乳幼児や重症患者は対象から省いた. 2-4-3 禁忌器具の持込み  ペースメーカや除細動器,人工内耳など強磁場内 への持ち込みが禁忌であると言われている医療器具 がいくつかある.禁忌の医療器具を持込んだ経験が ないかを尋ねた.453 件の回答があり,持ち込まれた 器具で最も多かったのがペースメーカの 280 件で あった.中には同施設で複数回経験している施設が あった.次いで,脳動脈クリップ : 79 件,ステント : 28件,埋め込み型除細動器,人工心臓弁,人工内 耳,神経刺激装置などもあった(Fig. 11).脳動脈ク リップやステントには MR 対応のものも多くあり,こ の結果のほとんどが,埋め込まれているのを確認せ ず検査を行ったというものである. 2-4-4 体外金属のチェック  体外金属のチェックは,ほとんどの施設で技師が 中心に実施し,看護師もその業務を連携しているよう である.場合によって,どちらかが行っている施設か らは複数回答があった.しかし,ほんの少数であるが 看護師や事務員にその業務を任せている施設があっ た.(Fig. 12a).  そのチェック方法の多くは,問診または目視や検査 着への更衣によるもので,金属探知機や触診を行っ ている施設は少なかった(Fig. 12b).また,多くの施 設で複数の方法を併用してチェックしていることもわ かった. 2-5 クエンチ  Fig. 13a は,自然クエンチの発生頻度である.全 1319施設中の 12%である 158 施設が自然クエンチを 経験していた.そのクエンチを起こした件数は 183 件であり施設数の 158 を上回り,クエンチを複数回経 験している施設もあることがわかった.その発生タイ ミングは,スキャン中が 183 件中 26 件,スキャン中 以外は 157 件だった(Fig. 13b).スキャン中には,も ちろん中に患者がいたことになる. 3.考 察 3-1 施設環境  101∼300 床からのアンケートの返答が 1319 施設中 a b Fig. 11 Classification of contraindicated medical devices which were

taken into the scanning room.

Fig. 12 Check patients whether metals were attached to them. (a) Confirmers, (b) Check method.

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570施設(43.2%)と最も多かったことからも,この規 模の施設が国内に多いことがわかった.しかも,担当 医がいる施設が 25%,看護師が常駐している施設が 24%であることからも多くの施設で診療放射線技師 のみで運用されている実情があり,検査実施から安 全管理まで多くの業務が担当技師に委ねられている ことが明らかになった. 3-2 マグネットへの吸引と禁忌器具の持込み  大型強磁性体の吸引を回答施設 1349 施設中の約 40%の施設が経験していたのは,予測を上回る数字 であった.施設規模が大きくなるほど,経験している 比率があがり,500 床以上の施設では半数以上の施 設が経験しているという結果となった.これは,大規 模施設ほど強磁場装置が導入され危険性が増してい ることも考えられるが,施設規模が大きくなるほど, ローテータといわれる若手のスタッフが入れ替わって 装置を使用すること,当直などでも使用する機会が 増え,全病院的に危険性の周知徹底がしにくいこと が考えられる.また,担当医師や看護師の常勤率も 上がることから,スタッフが充実しているからといっ て吸引事故が減るとは限らないことを示した.反面, 病院規模が小さくなると,同じ技師,同じ看護師が 担当することが多くなり,業務に対する専門性も向上 し,危険性の周知や想定外のことが起こりにくい環 境になっているのではと推察する(Fig. 1).  吸引された物質は,点滴スタンドが最も多く,次い で酸素ボンベであった(Fig. 2).吸引事故の 35%は, 普段から MR 検査を担当している技師が起こしてい るが(Fig. 3),多くは何らかの外的刺激が要因として 関与しており,不慣れな看護師が立会っている時や 救急撮影時などが特に注意すべき時間帯であると推 察する.酸素ボンベの持込みに関しても同様で,緊 急時や状態の悪化した患者に対応している時に多く 発生していることが多く,担当者が目を離した隙や, 普段 MR を担当していない技師,看護師,医師が多 く起因していると推察する10).点滴スタンドについて は,患者を呼び入れる際に病棟から持ってきた点滴 スタンドを普段 MR 室に置いてあるはずの非磁性体 の点滴スタンドだと勘違いすることもあると聞く. MR室備え付けの点滴スタンドには,目印を付けて明 確にしておく必要がある.  健康志向による影響のためかパワーアンクルによる 事故が 37 件(吸引事故 737 件中の 5%)も報告された (Fig. 2).問診を行っても本人も気づかず申告しな かった場合が事故になっており,問診や更衣を信じ るだけではなく金属探知機を使った金属チェックや 触診も取り入れる必要がある(Fig. 13).患者チェック ということでは,禁忌医療器具装着者のチェックも同 様である.本来なら MR 検査ができない禁忌医療器 具を装着した患者を検査した事例も多く報告された (Fig. 12).医師が検査依頼時に行う問診をはじめ病 歴 のチェック,患 者 が 検 査 室に来 てからの 最 終 チェックも漏れてしまった結果である.本邦では事故 例の報告を聞かないので幸いであるが,1999 年には 心臓ペースメーカによる事故例も報告されている11) 技師は安全確保の最後の確認者として,自分の目で カルテなどを確認するといった心構えが重要である. さらに,清掃用具や工事用具による吸引事故も多くあ り,医療スタッフ以外の者が容易に検査室内に入れ る環境を見直さなければならない施設が多くある.  スタッフの所持品による小型の磁性体の吸引は, 当人が常に安全性について習慣づけることが一番で あるが,決して「うっかり」を許さないように小物で あっても,加害者になってしまう可能性を常に認識す べきである(Fig. 4).患者の所持品に関しても,吸引さ れたとしても大事故にはならないかもしれないが,行 方がわからなくなれば磁場均一を乱すこともある.使 a b Fig. 13 Experience of quenches.

(a) Ratio of facilities which had the experience of the natural quench, (b) Timing of occurrence of natural quench.

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い捨てカイロの持込みも多く報告されている(Fig. 5). 撮影のアーチファクトになる要因だけでなく,湿布や 化粧品など火傷の要因となるので怠らずチェックを励 行すべきである. 3-3 発熱と神経刺激  火傷の発生は,施設規模が大きくなるほど多く報 告された(Fig. 6).発生箇所が多岐にわたるため,吸 引事故と同じで注意喚起が行き届かないことと,重 症度の高い患者を検査することが多いためリスクも 高くなっているのだと推察する.発熱は人体に生じた 渦電流によるジュール熱だといわれているが12),ルー プの一部が点接触になることで,そこに発熱が起こ ると考えている.それが大腿部の内側や足の親指の 接触であることや,ケーブルやボアと皮膚との接触が それに相当すると考えている(Fig. 7).テーブルに仰 臥させた時の姿勢やケーブルの位置などに気を付け ることと,補助具などをうまく活用すれば防げられる と考える.しかし,刺青や化粧品によっても発生して いるので,身体チェックも必ず必要である.  痛みを訴えた器具は,以前から可能性を示唆され ていたものが報告された(Fig. 8).臨床では,インプ ラント装着者のすべてを「検査しない」とするのはナン センスであり,担当者はリスクを考えた上で MR 検 査を行うことになる.したがって,検 査 前のイン フォームドコンセントを十分に行い,異常を感じれば すぐ通報できるシステムにしておくことが大切であ る.このことは,1319 施設中の 90%の施設で患者に エマジェンシコールを持たせているという結果につな がっていると考える(Fig. 10b).一方,MR safety と記 載されているハローベストで火傷や痛みを訴えた事 例が多くあることは,メーカに報告する必要がある.  神経刺激については,人によって感じ方が異なる ので一概にいえないが,身体の表面になる箇所やイ ンプラント,刺青,化粧品で発生していた(Fig. 9). 身体部分については予測しにくいが,十分なイン フォームドコンセントとインプラントや刺青,化粧品 で起こる可能性のあることを事前に患者に通知して おいた方がよい. 3-4 患者管理  検査中の患者の安全を確保することは,私たちの 最低限の責務である.MR 検査には,検査前の患者 のインプラント,装着品,付属品のチェック,検査中 の騒音対策と患者監視など多くのリスクを伴う検査 である.オペレータは最善を尽くすのでなく完璧でな ければ事故が発生するということを念頭におかなけ ればならない.チェックやインフォームドコンセント がなぜ必要なのかのメカニズムを理解していれば, 患者への対応も通り一遍ではなく適宜適応した対処 ができると考える.必要に迫られて患者に医療管理 を必要とする生理学的ストレスを引き起こす可能性の ある第一次水準管理モード13)で撮像することもある が,その起こりうる障害の可能性を理解した上で,注 意深く患者を観察しながら検査を進めるのは当然の ことである. 3-5 クエンチ  大型の強磁性体がマグネットに吸引させた時に は,人為的にクエンチさせる場合があるが,それ以 外に 1319 施設の 12%もの施設がクエンチを経験して いた(Fig. 13).クエンチで最も危険なのは窒息であ る.そのため,MR 検査室内の酸素濃度は常に監視 され正常値(21%)が表示されているが,クエンチが起 こり正常に排気されない場合に,酸素濃度が 18%以 下になっていれば息苦しくなり,10%以下になると一 呼吸で意識を消失してしまうという14).非常時でも必 ず酸素濃度モニタを確認してから入室すべきである.  クエンチは予期することができないので,予防は不 可能である.したがって,起こったときの対処方法が 重要になる.もし検査中にクエンチが起これば,①強 制排気,②操作室の窓を開ける,③酸素濃度モニタ のチェック,④検査室の扉を開ける,⑤低い姿勢を 維持して検査テーブルに近づき患者を退避させる, ⑥患者を退避させれば扉を閉める,という順序にな る.④で検査室内が陰圧*2になり扉が開かない場合 は,監視窓をハンマーで割って入室する.この順序 では患者の助命をおろそかにしていると思われがち であるが,二次災害を避けるために必ず入室前に酸 素モニタを確認する.排気口から白煙が勢いよく出て いるので消防署にも連絡する.というような訓練を普 段から行っておく必要がある. 4.結 論  MR 検査における危険因子である吸引事故,火 傷,神経刺激,禁忌の器具の持込み,クエンチがア ンケート前に予測していた以上の件数が発生してい ることがわかった.施設規模とスタッフなどの充実度 と事故発生の頻度との因果関係は低かった.しかし ながら,500 床以上の施設で多発している持込みによ *2 クエンチ直後はヘリウムが検査室に充満し陽圧になるが,すぐに強制排気が作動し陰圧になる.最近では,ヘリウムが検査室 内に流れ込まないようになっている装置もある.

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験をお持ちの方には,今回のデータを教訓に自施設の 検査環境を今一度見直していただければ幸いである.  さらに,詳細な吸引事故に対する原因の追及と業務 謝する.なお,このアンケート調査は日本放射線技術 学会平成 22 年度学術調査研究班の経費で行った. 参考文献 1) 川光秀昭,土橋俊男,宮地利明,他.3T-MR 装置の安全 性.日放技学誌 2008; 64(12): 1575-1599. 2) 引地健生.MRI 検査における安全管理―事故事例の検 討―.日職災医誌 2004; 52(5): 257-264. 3) 團 寛子,上間あおい,新開裕幸.1-1 インシデントレ ポート再考.医療安 全ことはじめ.医学書院,東 京, 2010; 21-34.

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13) IEC60601-1 3rd ED.Medical electrical equipment-Part 1: general requirements for basic safety and essential per-formance.2005. 14) 西村健司.学術委員会医療安全対策小委員会,MRI のクエ ンチに関する多角的考察.日放技学誌 2008; 64(3): 388-390. ■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

図表の説明

■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■ Fig. 1 病床数による大型磁性体の吸引を経験した施設の割合 Fig. 2 吸引された大型磁性体の割合 Fig. 3 吸引事故の当事者の割合 Fig. 4 医療従事者の所持品うち,吸引された磁性体の内訳 Fig. 5 患者の付帯品のうち,吸引された磁性体の内訳 Fig. 6 (a)患者が火傷を負うような事故を経験した施設の割合 (b)それらの病床数による内訳 Fig. 7 火傷の原因と受傷部位 Fig. 8 痛みを生じさせた医療器具の内訳 Fig. 9 耐えられない神経刺激を患者が訴えて検査を中止にした原因 Fig. 10 安全管理体制 (a)騒音対策 (b)エマジェンシコール Fig. 11 誤って検査室に持ち込んだ禁忌の医療器具の内訳 Fig. 12 体外金属のチェック (a)誰が行っているか (b)チェック方法 Fig. 13 クエンチの経験 (a)自然クエンチを経験したことがあるか (b)自然クエンチが起きた時

Fig. 2  Classification  of  attracted  large ferromagnetic materials.
Fig. 4  Classification of the attracted ferromagnetic materials  which belonged to the medical staff.
Fig. 6  (a) Ratio of facilities which experienced patients who  were burned, (b) Classification of the accidents  accord-ing to the number of beds of each facility.
Fig. 8  Classification  of  the  medical  devices  which  gave  pain  to  patients.
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参照

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