第一部 研究論文・実践報告
大規模英語再履修クラスにおける 授業実践報告
同志社大学 全学共通教養教育センター嘱託講師
大賀まゆみ
要約
履修登録学生数120名の「イングリッシュ・セミナー2」の再履修クラスにおいて、「出 席率の改善」、「英語に対する否定的な意識の軽減」、「基本的な英語力の向上」を目的 とし、かつ自尊感情に配慮した授業実践を行った。本稿では初回及び最終回の授業時 に実施したアンケート結果に基づき、大規模英語再履修クラスにおいて効果的であっ たと思われる授業実践と教室運営の報告を行う。
1. はじめに
大学全入時代に突入し、大学生の学力低下が叫ばれる中、学力の底上げは各大学に おいて急務の課題となっている。必修英語科目についても例外ではない。各大学にお いて、必修英語科目の単位を取得できなかった学生の層が存在し、これらの単位未修 得の学生に対する救済策のひとつとして「再履修用特別編成クラス」、「通常クラス編 入」、「代替科目認定」などの対策が講じられている(津田、2007)。同志社大学にお いても、全学共通教養教育科目に含まれる外国語教育科目の一部である英語科目につ いて、再履修クラスが設けられている。これらのクラスでは、履修登録学生数が100 名を超えることも珍しくなく、担当する教員は適切な授業実践と運営が求められる。
本稿では、本学の京田辺校地で2回生以上が履修するリーディングの必修英語科目「イ ングリッシュ・セミナー2」の再履修クラスの実践報告を行う。初回授業でアンケー ト調査を実施し、本学の必修英語再履修クラスの学生像を把握した上で、実践目標を 設定し、それに即した授業実践を行った。実践効果を把握するため、授業最終回で授 業の感想、授業満足度、英語に対する意識などを調査した。この結果を考察しながら、
効果的であったと思われる大規模再履修クラスの実践と運営方法を報告する。
2. 同志社大学必修英語再履修クラスの学生像(初回授業アンケート調査より)
ここでは、当該クラスの詳細と初回授業で実施したアンケート(付録1)の結果と そこから導き出された本クラスでの目標設定について述べる。本クラスの詳細は以下 の通りである。
・科目名「イングリッシュ・セミナー2」再履修クラス 木曜1限
・登録学生数 120名(うち57名が4回生以上)
・ 使用テキスト「世界を変えた24人 “Aiming for the Top-People Who Changed the World”」三修社
・実践期間 2014年度 春学期4月〜7月 15回
アンケートでは学年、学部などの属性の他、英語に対する意識、英語学習に対する モチベーション、再履修クラスを履修するに至った理由、授業でやって欲しくないこ と、などを聞いた。また選択式の質問には選択理由を可能な範囲で出来るだけ詳しく 書くよう指示した。回収数は103であった。以下は質問項目と選択回答の一部抜粋で ある。①と④については主なもののみを示した。
①単位を落とした理由について教えてください(複数選択可)
・出席不足(39)
・試験の点数不足(29)
・履修登録ミス(20)
・時間割の都合(16)
・担当教員に関すること(16)
・授業内容に関すること(15)
・平常点不足(10)
②自分の英語力についてどう思いますか?
・かなりある(0)
・普通よりはある(6)
・ふつう(25)
・あまりない(28)
・ない(44)
第一部 研究論文・実践報告
③英語が好きですか?
・好き(8)
・どちらかと言えば好き(22)
・どちらでもない(24)
・どちらかと言えば嫌い(24)
・嫌い(25)
④授業でやらないで欲しいことを書いてください(自由記述)
・人前での発表(18)
・グループワーク・ペアワーク(8)
・難しい内容・テスト(6)
・英語での発表・会話(5)
・教科書を和訳するだけの単調な授業(4)
質問項目①の結果から、単位を落とした原因は、「出席不足」、続いて「英語力不足」
であることが明らかになった。これは津田(2007)が行った再履修クラスの意識調査 と一致する。その一方で、「履修登録ミス」、「時間割の都合」と答えた学生が36名い たのは、津田の調査とは異なっている点であった。これは本科目が希望クラスを選択 できるようになっており、所定期間内に履修希望登録を怠った、第一希望の授業が履 修できず第二希望、第三希望しか履修できなかった場合に履修中止をした、など、本 学の履修システムに起因するものであると考えられる。「担当教員に関すること」、「授 業内容に関すること」、を選んだ学生の自由記述欄には、「当てられるのがいやだった」、
「難しくてついていけなかった」、「授業が面白くなかった」などの意見があった。
また、質問項目②、③の結果が示すように、英語については、70%の学生が、英語 力がない、またはあまりない、と答えi、47%の学生が、英語が嫌い、もしくはどちら かといえば嫌い、と自信がなく否定的な感情を持っていることが明らかになった。英 語が嫌いになった理由として、中学高校での学習のつまずきを挙げた学生が15名おり、
これらの学生は中学高校で何らかの原因で嫌いになったり、ついていけなくなったり と、英語や英語学習に対して否定的な感情を持ったまま大学に入学してきたと考えら れる。
最後の質問項目④では、授業でやらないで欲しいこととして、18名が「人前での発 表」、8名が「グループワーク・ぺアワーク」を挙げた。これは第一回の授業時に、コー ス説明の一部として、グループワークやペアワークをやる、ということと本文の訳を
あてる、ということを学生に伝えたことも一因と考えられる。しかし、中には、「周 りとかかわることがないクラスが良い」、とはっきり書いた学生もおり、本再履修ク ラスは、通常クラスに比べ、人前で発言したり、他人と交流したりするのが苦手な学 生の割合が多いと推測される。以下に本アンケートで明らかになった、当該再履修ク ラスの学生像をまとめた。
・出席不足や英語力不足が原因で単位を取得することが出来なかった
・英語に対して苦手意識や否定的な感情をもつ傾向がある
・人前で発言したり、人とコミュニケーションをとったりすることが苦手である
3. 授業の実践目標
初回アンケートの結果から、再履修クラスにおいてはまず授業に参加させること、
英語に対して少しでも肯定的な意識を持たせること、英語力の底上げをすること、の 3点が不可欠と考え、「出席率の改善」、「英語に対する否定的な意識の軽減」、「基本 的な英語力の向上」の3つを目標とした授業実践を行うことにした。加えて、人前で 発言したり、人とコミュニケーションをとったりすることが苦手である学生に対して は通常のクラスとは違った配慮が必要である。清田(2010)は英語力が中位下位層の 学生の自尊感情の特徴として「自己表現に自信がない」ことと、「対人関係を築くこ とへの不安」の2つを指摘しているがこれはアンケートの結果が示すように、当該ク ラスの学生にもそのままあてはまる。清田(2011)は英語リメディアルクラスで、学 習面だけではなく、クラスメートや教員との肯定的な人間関係形成と相互交流を通し、
自尊感情を向上させる重要性を述べている。よって、上記3つの実践目標に加えて、「自 尊感情への配慮」も組み込んだ授業実践を行うことにした。
4. 実践内容
ここでは実際に行った授業内容と、3で述べた実践目標に向けて具体的に何をどの ように授業に組み込んだかを述べる。
4.1 授業内容と評価基準
表1に15回のシラバスと評価基準を示した。( )内の%は評価時の点数配分を示し ている。
第一部 研究論文・実践報告 表1 シラバスと評価基準
回 授業日 授業内容 テスト・提出物
1 4/10 オリエンテーション 参加点(30%)
2 4/17 1.Steve Jobs
3 4/24 2.The Beatles 単語テスト1(全12回15%)
4 5/8 3.Alexander the Great 単語テスト2
5 5/15 4.Pele 単語テスト3
6 5/22 5.Coco Chanel 単語テスト4 7 5/29 6.Yuri Gagarin 単語テスト5
8 6/5 *中間テスト(20%) 中間テスト
9 6/12 7.Walt Disney 単語テスト6 10 6/19 8.Toyoda Eiji 単語テスト7 11 6/26 9.Albert Einstein 単語テスト8 12 7/3 10.Audrey Hepburn 単語テスト9 13 7/10 11.Albert Schweitzer 単語テスト10 14 7/17 12.Archimedes 単語テスト11
15 7/24 *まとめテスト(25%) まとめテスト・単語テスト12・感想文(10%)
テキストは世界の偉人の伝記を扱った三修社の「世界を変えた24人 “Aiming for the Top-People Who Changed the World”」を使用した。テキストを選ぶ際には、様々な 学部の学生が履修することに配慮し、特定分野に偏っていないこと、また適切な難易 度であること、さらに、全学共通教養教育科目であるので、英語だけでなく、これか らの人生の示唆を得ることが出来る内容であること、を選定基準とした。加えて、訳 読に終わることなく、内容を膨らますことが可能であり、かつ学生が興味を持てる内 容であることが望ましいと考え、学生に馴染みのある偉人を扱った本テキストを選ん だ。
表1に示すように、毎回1 Unitをカバーし、授業の最初に前回の学習ユニットから 単語テストを実施した。また、8回目と15回目にそれぞれ中間・まとめテストを行った。
中間・まとめテストは、テキストの語彙、練習問題を7割、残りの3割は英語力のあ る学生を差別化するために、本文から中上レベルの単語の書き換えや穴埋め問題を出 題した。またテキストに登場した偉人から一人を選び、英語で200~300wordsの感想 文を書いてくるように指示し、最終回に提出させた。
表2に一回毎の授業の流れを示す。各アクティビティが前述した4つの実践目標の どれに相当するかも示した。
表2 授業の流れ
アクティビティ 目的
1. コメントシート返却 出席率の改善・自尊感情の向上
2. 単語テスト 出席率の改善・基本的な英語力の向上
3. ペアで会話 否定的な意識改善・自尊感情の向上
4. 語彙確認&Listening
5. ペアで和訳の確認 否定的な意識改善・自尊感情の向上
6. 和訳した学生はポイント付与 否定的な意識改善
7. 必要に応じてPower Pointで文法説明 基本的な英語力の向上 8. テキストの語彙、内容理解問題
9. ビデオ 否定的な意識改善
10.コメントシート提出 出席率の改善・自尊感情の向上
4.2 出席率の改善
「出席率の改善」のため、表1に示すように、平常点の割合を比較的高めに設定した。
遅刻せずに授業を真面目に受けた学生には、一回の授業参加につき2点を与えた。代 わりに、出席管理は厳しく行い、遅刻や途中退出を防ぐため、授業の最初に単語テス トを行い、さらに授業の終わりには学生が自由にその日の授業の感想等を書けるコメ ントシートを毎回提出させ、授業の最初と最後に出席確認をした。このためかトイレ 以外の途中退席者はほとんどいなかった。また居眠り、携帯の使用、私語などをチェッ クするため、授業中は可能な限り教室内を巡回した。
4.3 英語に対する否定的な意識の改善
「英語に対する否定的な意識の改善」のためには教員中心の授業ではなく、学生が 少しでも授業に参加し、英語学習が楽しいと感じることが大切であると考え、ペアワー クを導入した。まず授業の最初にテキストのWarm-up question (Ex. What Beatlesʼ song do you like best and why?) についてペアで会話させた。英語を話すことがどう してもいやなペアは日本語で話すように指示した。その後マイクを持って教室内を巡 回し、数人に発表させた。この時も英語が難しいようであれば日本語で行わせた。
次にテキストの新出語彙の確認を行い、本文の音声を聞かせた後、列ごとにパラグ ラフを割り振り、ペアで和訳の確認をする時間を与え、その後挙手して発表したペア には加点した。また学生の知的好奇心を満たすような英語以外の学びも必須と考え、
テキストの解説は文法・語彙の説明だけでなく、内容により焦点をあてるようにした。
第一部 研究論文・実践報告 具体的には、Power Pointを使って可能な限り取り扱う人物の逸話や写真、作品など
を紹介し、授業の最後にはその回に取り扱った偉人に関連したビデオを見せた。表3 に授業で使用したビデオの一覧を示した。ビデオは出来るだけテキストの内容に触れ ているもので、学生が集中できる5分〜15分くらいの長さのものをYou TubeやTED Talkから毎回かなりの時間をかけて選んだ。例えば第7回のYuri Gagarinの章では、
本文に “…he was small: 157 centimeters tall. Size was a crucial factor in the small Vostok space capsule. He remained cool as he was being strapped into his capsule,…”
という記述がでてきたので、ガガーリンが宇宙に旅立つ直前の姿を記録した旧ソ連製 作のビデオを見せた。ボストーク1号に乗り込むガガーリンの小柄で冷静な様子を実 際のビデオで見ることにより、本文中の英語表現が視覚化でき、より深く内容を理解 することが出来る。第14回は、本来ならアルキメデスを扱ったビデオを見せるところ であるが、英語以外の学びの総まとめとして、今後の生き方を考えるヒントになるよ うなプレゼンテーションの動画を選んで見せた。
表3 授業で使用したビデオ一覧 1 オリエンテーション
2 Steve Jobs: “How to live before you die”(TED Talk, 2005)
3 Beatles: “The top 20 Beatles songs of all time” (Gerry. D) You Tube
4 Alexzander the Great: 「137億年の物語『世界最初の英雄アレクサンドロス大王』」 (TV東 京, 2013)You Tube
5 Pele: “Pele-Tribute-HQ” (ShowTime HDTV, 2012) You Tube 6 Coco Chanel 「尊敬する人の名言集」 (2011) You Tube
7 Yuri Gagarin: 「ガガーリン 人類初 宇宙へ ソ連製作の「記録」映像」 (2011) You Tube 8 中間テスト
9 Walt Disney: 「すべては一匹のねずみから始まった」 (2012) You Tube 10 Toyoda Eiji: 「トヨタ自動車 豊田英二名言」 (NHKニュース, 2013) You Tube
11 Albert Einstein: 「天才アインシュタインの脳の秘密」(日本テレビ、特命リサーチ2000X、
1997)You Tube
12 Audrey Hepburn: 「オードリーヘップバーン A」 (2010) You Tube
13 Albert Schweitzer: 「アルベルトシュバイッツアー(知ってるつもり?)」 (日本テレビ, 1991) You Tube
14 Archimedes: Candy Chang “Before I die I want to…”(TED Talk, 2012)
15 期末テスト
4.4 基本的な英語力の向上
「基本的な英語力の向上」を図るために、毎回単語テストを行った。Unit毎の単語 リストを第一回授業で配布、かつ学習支援ツールであるe-classにもアップロードし、
毎回このリストとテキストの新出単語リストの中から出題し、きちんと準備さえすれ ば点数がとれるようにした。また、テキストの内容の説明は、英語が苦手な学生にも 理解できるよう、全てPower Pointを使用して行った。スライドにはアニメーション や図、矢印などを多用し、例えば文中に分詞が出てきたら、分詞の基礎から説明を行い、
分詞が理解できた後、本文に戻り該当箇所の説明を行う、というように、必要に応じ て文法・語彙の説明を行った。後部座席の学生にも見易いよう、あまりたくさんの情 報を一度に詰めこまないようにした。授業で使用したPower Pointの一部を図1に示 す。また、e-classに基本的な英文法の解説と練習問題をアップロードし、授業外でも 学習に取り組めるようにした。
図1 授業で使用したPower Point(抜粋)
4.5 自尊感情への配慮
最後に「自尊感情への配慮」であるが、ペアワークを取り入れることにより、クラ スメートとの相互交流を図った。本文の和訳を発表する際には、事前にクラスメート と答えを確認することにより、間違いを恐れて発表を躊躇しがちな学生も、安心して 発言できるのではないかと考えた。また授業では繰り返し、間違ってもいいというこ
第一部 研究論文・実践報告 と、真面目に取り組むことが大事であるということを強調した。
さらに、教員と肯定的な関係を築くために、前述したコメントシート(付録2)を 導入した。コメントシートにはあらかじめ出席簿順に番号を打っておき、学生には自 分の番号を覚えておいてもらい、コメントシートに限らず、提出物には全てその番号 を明記するように指示したii。コメントシートは授業が始まる前に番号順に並べて最前 列に置いておき、教室にきた学生から自分のコメントシートを探させ、授業終了時に 提出させた。コメントシートにはその日の授業の感想、教員への要望事項など、思い ついたことを何でも書いてよい、また書きたくなければ何も書かなくてよい、と強制 にならないよう、自主的に自由に書けるよう指示を行った。回収したコメントシート は毎回目を通し、判子を押して次回の授業の冒頭に返却した。明らかにモチベーショ ンが下がっている学生、体調が悪い学生、授業や英語に関連する質問をした学生には コメントや返事を書くようにした。また、同じ質問が複数あった場合や、授業への要望、
面白いコメントがあった場合は、匿名で授業の冒頭に紹介し、きちんと読んでいると いうことを伝え、何かあればどんなに小さなことでも書くように繰り返し伝えた。
コメントの内容は、下記のようなものが代表的であった。毎回のテキストの内容や 最後に見たビデオに対する感想が最も多く、中にはきちんと出席するという意気込み や、教員への質問、プライベートな日常の出来事を書くものもあった。
〈コメントシート記入例〉
・ トヨタ自動車は日本の工業、産業の一番大きな成功例であると思う。何をどうす ればニーズに応えられるようになるか考えるのは面白そうだと思った。
・ アインシュタインが天才だと改めて感じた。最後の頭が良くなるビデオ、面白かっ た。
・ ガガーリンが乗った宇宙船が意外にもぼろくてびっくりした。改めて勇気のある 人だなと思った。
・仮定法の説明はわかったが、実際問題を解くとなると難しいと思った
・3回欠席しているのでもう休まずちゃんと出席する!
・今日でレポート地獄から一時開放されて元気になった。
・ 留学に行くのですが、おすすめの教材はありますか?英語が出来ないので勉強し たいのですが、、。
5. 実践結果
以上のような実践を15回の授業を通して行った結果、当初設定した3つの授業目標
「出席率の改善」、「英語に対する否定的な意識の軽減」、「基本的な英語力の向上」に 効果があったのか、出席状況と最終回に実施したアンケート結果を基に報告する。最 終アンケート(付録3)では欠席した理由、英語と英語学習に対する認識、授業満足度、
授業の良かった点、改善点等を調査した。回収数は93であった。
5.1 出席状況
出席者数の推移とアンケートの結果を用いて結果を示す。15回の出席状況を表4と 図2に示した。
表4 出席者数の推移 授業回 出席者数(人)
1 103
2 88
3 85
4 76
5 75
6 79
7 84
8 94
9 82
10 71
11 77
12 77
13 78
14 81
15 93
上記の数字からわかるように、履修登録者数120名中、初回103名の出席者数から第 3回以降大幅に減ることもなく、全体を通して安定しており、平均出席者数は82名、
一度も出席しなかった10名を除いた平均出席率は74.5%であった。8回目と15回目に 出席者数が増えているのは中間テストおよび期末テスト実施によるものである。また、
0 20 40 60 80 100 120
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ฟ
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図2 出席者数の推移
第一部 研究論文・実践報告 欠席原因と当該理由で休んだ回数を尋ねたアンケート結果は以下の通りであった(複
数回答可)。
・朝起きられなかった(101)
・就職活動(26)
・体調不良(13)
・レポートが終わらなかった(12)
・クラブ・サークル(8)
・教育実習・教職履修(7)
・なんとなく(7)
・その他(12)
上記の数字から「朝起きられなかった」が圧倒的に多いことがわかる。これは学生 が苦手とする1限目の授業であったことが大きく影響していると考えられる。通常、
再履修クラスの出席者数は、2回目以降コース全体を通して徐々に減少していくこと が多く、その性格上、出席率は低いと予想される。平田(2010)は、必修英語再履修 クラスの半数以上の回で、出席者が登録者数の半数にも満たなかったことを報告して いる。本再履修クラスは、1限目の授業であること、また就職活動や教育実習などや むを得ない理由で休んだ者が相当数いたこと等を考慮すると、出席状況は良好であっ たと考えられる。
5.2 英語に対する否定的な意識の軽減
「春学期開始前と終了後では英語に対する意識に変化がありましたか?」という質 問項目に対して、以下の回答が得られた。iii
・好きになった(16)
・勉強してみようという気になった(23)
・嫌いになった(0)
・変わらない(53)
42%の学生が「好きになった」、「勉強してみようという気になった」と肯定的な感情 を持つようになったと答えた一方、過半数の学生が「変わらない」と答えた。
5.3 基本的な英語力の向上
「春学期開始前と終了後では英語力に変化はありましたか?」という質問項目に対 して、以下の回答が得られた。
・かなりついた(2)
・少しついた(50)
・変わらない(36)
・その他(3)
57%の学生が、「かなりついた」、もしくは「少しついた」、と回答した一方で「変わ らない」と答えた学生が36名いた。どのような英語力がついたかについても調査した が、ほとんどの学生が、「リーディング力」と「単語力」と回答した。
5.4 授業の満足度と良かった点
「この授業の全体的な満足度を教えて下さい」という質問に対し、以下の回答が得 られた。
・とても満足(14)
・満足(70)
・どちらでもない(9)
・不満(0)
・とても不満(0)
90%の学生が「とても満足」、または「満足」と答え、「不満」と答えた学生は一人も いなかった。
さらに「授業の中で良かったと思う項目を選んでください」(選択式 複数回答可)
という質問に対しての回答と、その理由(自由記述)の主なものを各項目別に示す。
①最後のビデオ(55)
・楽しかった
・毎回面白い映像でためになった
・ 授業内容と最後のビデオを関連付けて覚えることでより内容が記憶に残りやす かった
・英語の勉強だけでなくそこからあらゆる方面の学びがあった ・英語は苦手だけど興味を持って見られた
②テキスト(46)
・読もうと思えるテキストだった ・内容が面白かった
・興味が湧く内容だった
・内容や問題が多くもなく少なくもなくちょうど良かった
第一部 研究論文・実践報告
③Power Pointを使った授業(23)
・わかりやすい
・文法の復習がありがたかった ・内容が口頭に比べて伝わりやすい
④コメントシート(14)
・欠席が視覚化でき、休んだ分焦りがでる ・先生とコミュニケーションが取れて面白かった
⑤発表したら加点(8)
・テストが出来ないから加点は良かった ・発表はモチベーションがあがった
⑥説明のしかた(8)
⑦ペアワーク(7)
・苦手なので一人では出来ず、友達となら頑張れた ・友達ができた
5.5 授業の改善点
「授業の中でここは改善して欲しいという点があれば自由に書いてください」とい う質問に対する回答とその理由を以下に示す。
①ペアワーク(7)
・コミュニケーションをしなければいけないと思うとプレッシャー ・ペアワーク不要
②文法説明が早すぎる(4)
・もう少し丁寧に説明して欲しいところがあった ・Power Pointの内容がいつも書ききれない
6. まとめと今後の課題
本稿では「出席率の改善」、「英語に対する否定的な意識の軽減」、「基本的な英語力 の向上」の3つの目標に「自尊感情への配慮」を組み込んだ授業実践を行った。アンケー トの結果から、大規模な再履修クラスの授業に効果的であったと思われる項目をまと めた。
1.履修した学生が興味を持てるテキスト選定
再履修クラスの学生のレベル、年齢、置かれている状態などを考慮し、知的 好奇心を満たすような授業が展開できるテキストを選ぶことが重要である。
難しすぎず、易しすぎず、適当な難易度のもので、授業のやり方しだいで内 容がさらに深められるようなものを選べば、15回の授業を通して継続的に学 生の興味を引くことが可能である。
2.テキストの内容を深めるコンテント重視の授業
再履修クラスには様々な問題を抱えた学生が集まってくる。テキストを軸に して、英語だけではなく、人生における学びがあるような授業をすることに より、学生は英語の授業が面白いと感じ教室に足を運ぶようになる。今回、
特に最後のビデオが大変好評であったが、ビデオなどの視覚教材をうまく活 用することで、より深い内容理解を促進でき、授業に広がりを持たせること が可能である。
3.Power Pointを使ったわかりやすい文法説明
語彙・文法と内容を切り離すことなく、Power Pointなどの視覚教材を使用 して、中高でつまずいた文法をわかりやすく復習することにより、英語が苦 手な学生も抵抗なく授業を受けることができる。大規模クラスでは、板書よ りも見やすい上、一枚のスライドに一つの情報を提示することにより、習熟 度の低い学生の理解促進を期待できる。
4.効率的かつ正確な出席管理
きちんと出席させ、真面目に授業を受けさせるために、出席・授業態度は厳 しく管理する一方、真面目に学習に取り組んだ学生はそれに応じた評価をし てやることが大切である。また大規模クラスにおいては授業内で複数回出席 確認をしたり、出来るだけ教室内を巡回したりするなど工夫が必要である。
5.学習者を大切にする態度
再履修クラスというと出来ない、やる気がない、と決めてかかりがちである が、こういった負の先入観を捨て、大下・茨山・辻本(1998)が指摘するように、
一人ひとりの学生を大事し尊重する態度が大切である。授業内では間違いを 許容する態度を常に示し、単位取得に向けて励まし続けることが、出席率を 向上させ、ひいては英語に対する否定的感情の改善へと繋がるのではないだ ろうか。
第一部 研究論文・実践報告 しかしながら、協同学習については、良かったと答えた学生と、やめて欲しいと答
えた学生が各7名おり、微妙な結果となった。100名を超える大規模クラスであること、
コミュニケーションを苦手とする学生が多いことなどを考慮に入れ、どのような課題 をどういった形態で与えるか工夫が求められる。また、Power Pointは大教室では見 やすい上に、板書する時間が省け効率的に授業が進められる一方、学生の指摘にある ように、特に習熟度の低い学生には、ノートを取ったり、内容を理解したりするまで の時間を取ってやるなど、配慮が必要である。さらに、より質の良い授業を提供する ためには、授業や教室運営のための教員の自助努力はもちろんのことだが、一クラス の履修登録人数の削減、1限目を避けるなどの再履修クラスに配慮した時間割の設定 など、大学側の配慮も望まれるところである。
本稿では、「イングリッシュ・セミナー2」の一クラスを対象に、大規模英語再履 修クラスの授業実践の一例を報告した。今後さらに多様な視点から議論がなされ、筆 者自身もそこから学び、より質の高い授業を提供できるよう邁進していきたい。
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○ 、 三 番 目 に △ を つ け て 下 さ い 。
第一部 研究論文・実践報告 H: ࡑ ࡢ 㸦 㸧
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第一部 研究論文・実践報告
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第一部 研究論文・実践報告
i 初回アンケートでは取得している英語の資格についても調査した。その結果、英語検定二 級取得者が8名、TOEIC 600点以上取得者が1名おり、津田(2007)が指摘するように本 クラスの中にも英語力がある学生が含まれている。
ii 番号で管理することにより、提出物の整理、成績台帳への転記が効率的にできる。
iii 初回と最終回に行ったアンケートの回答の中には、選択肢の中から何も選んでいない ケースがあり、回収数と回答の合計数が合わないものがある。
6. 参考文献
平田和彦(2010) 「大学の外国語学部における必修科目再履修者の現状と取り組み」, 『関西 外国語大学 研究論集』第91号, p247-265
大下邦幸・茨山良夫・辻本文彦(1998) 「英語再履修クラスの指導」, 『福井大学教育実践研究』
第23号, p229-246
清田洋一(2010) 「リメディアル教育における自尊感情と英語学習」, 『リメディアル教育研 究』第5巻第1号, p37-43
清田洋一(2011) 「否定的な学習意識を協同学習で変える」, 『英語教育』2月号 大修館書店,
p31-33
染 谷 正 一・Fred Ferrasci・Paul Murray(2013) 「 世 界 を 変 え た24人“Aiming to the Top- People who Changed the World”」東京: 三修社
津田晶子(2007) 「大学必修英語の再履修学生に関する調査と考察」, 『リメディアル教育研 究』第2巻第1号, p1-6