実践報告 「英語での発話」を促すために (その4)
キーワード: 英語での発話/協同学習/口頭練習
堀 内 ちとせ 1.はじめに
2019年7月、文部科学省は、4月実施の小学6年と中学 3年の全国学力テストの結果を公表 した。今回、中学3年で初めて行なわれた「話す」問題の正答率は、30%程にとどまったとの報告 があった。そのような中、ついに、2020年、東京オリンピック開催まで、早くも1年を切るに至った。
日本人の「英語を使う」能力の向上が叫ばれ始めた頃より、筆者は「英語の授業」で、学生たち が「英語を使える(特に「発話できる」)ようになる」ことを意識した活動を行なっており、報告を続け ている。本稿はその続編である。
前回の試みでは、「つぶやき」練習、「リズム」練習という英語の口頭練習を採り入れ、その練習 法のどちらもが、「英語の表現を覚える」際にも「英語を口から発する」際にも、かなり高い効果が得 られることが明らかになった(堀内, 2018)。
今回は、前回の「つぶやき」・「リズム」練習に加え、英語の表現を覚える際に、英語の「文法事項」
にも触れながら、また、eラーニングの「小テスト」機能等も活用しながら、授業を行なった。その効 果について、医療系大学の2019年度1学年174名を対象とした、「アンケート調査」をもとに検討 する。
2.「今回の試み」について
2.0 「英語表現」の「小テスト」について
毎年、授業の最終時には、英語の「小テスト」を実施している。「小テスト」は、2つのセクションに 分かれている。まずは、「聞き取り」セクション、それから、「英語表現」セクションである。
小学校の英語活動を含め、高校までの8年間も英語に触れてきても、多くの学生が、「英語を聞 く」こと、「英語を話す」ことを苦手としている。実際、「英語を聞ける」ようになりたいと考えている学生、
「英語が話せる」ようになりたいと考えている学生は、「英語が読める」ようになりたいと考えている学 生、「英語が書ける」ようになりたいと考えている学生と比べると多く見られる(堀内, 2016)。
「英語を聞く」ということに対して、「英語の聞き取り」問題を出題するのは当然のこととして、「英語 を話す」ということに対して、なぜ「英語表現」問題なのかについて説明する。「英語表現」の問題用
紙には、「日本語(主に一文)」が書かれており、学生たちには、それに対応する「英語表現」を解 答させる。その際、「日本語」に対応する「英語」をその場で英作させるのではなく、学生たちが、対 応する「英語表現」を短時間の間に、どれだけ多くアウトプットすることができるか、というのが「英語 表現」セクションのポイントである。
英語を話す際、その都度、英語を組み立てていては(英作文していては)、とっさに英語を口か ら出すことはできない。口から英語を瞬時に出すためには、言うべき「英語表現」が頭にインプットさ れており、その表現を声に出し言う練習が何度もできている必要がある。「英語表現」がしっかり頭 に入っており、瞬時にそれらを「書き出す」ことができれば、その表現を瞬時に「口に出す」ことも可 能と考えられる。したがって、「英語表現」の「小テスト」は、比較的短めの「制限時間」を設けて実施 している。
「制限時間」は、学生たちの実際の「小テスト」の解答状況を確認しながら、最初の学生が「英語 表現問題」をやり切った時点を主に基準にしている。出題されている「表現」の文の長さにもよるが、
概ね20問で6分間前後から10分間程度である。
担当クラスの学生たちは、英語が専門ではないため、例年、「英語表現」の「小テスト」について は、細かいところ(主に文法的なミス)等は多めに見ようと考えていた。しかしながら、「英語表現」の
「小テスト」の結果が余り芳しくない点は、長い間、気になるところであった。
Note. 横軸は、「小テスト」の得点(100点満点)区分。縦軸は、その得点区分に該当する学生の割合を示す(縦軸:
パーセント)。
図1 2018 年度「小テスト」結果 0
5 10 15 20 25
3 8
21 22
15 13
5 6 6
1 0
図1は、2018年度の「英語表現」の「小テスト」の結果である。図1から分かるように、満点の半分 の50点にも満たない学生が、70%程も見られるのだ(3%+8%+21%+22%+15%=69%)。
図1での得点は、便宜上、「つづり」関係で1点、「単数・複数・三単現の‘s’」など文法関係で1 点、大枠ができていれば1点と、1問につき、3点満点として採点したあと、全体を100点満点に換 算している。2018年度の学生192名は3学科に渡っているが、例年、学科により「内容」・「問題数」
共に多少の違いこそあれ、どの学科も概ね同じ「英語表現」問題を出題していることから、図1では、
各「得点」区分に該当する各学科の学生の割合(%)の平均の数値を示している。
2.1 「文法的内容」を意識させることについて
授業ではリズム良く楽しく、「英語表現」を声に出し練習できていたとしても、「単数・複数・三単現 の‘s’」などの細かい部分までは、正確に覚え切れていないためか、授業での頑張りが「小テスト」
の結果に結びついていなのは、残念なことと言わざるを得ない。
「音声」で伝える場合、複数や三単現の‘s’が抜けていても、声の調子や表情やイントネーション など他の要素で、コミュニケーションは取れるものである。口にする表現が「文」ではなく、「単語」だ けだったとしても、身振り手振りや表情などで、会話が成立してしまうこともある。しかし、忠実な「英 語学習者」であれば、さらに上のレベルを目指したいと思うことを期待したいものである。
そこで、担当クラスの学生の人数が多く、口頭での面談形式が難しく、紙面上での「小テスト」を 実施せざるを得ないという現実を逆手にとって、いっそのこと、細かい部分まで(例えば、三単現の
‘s’まで)、正確に「英語表現」を覚える努力をさせてみようという考えに至った。
そのきっかけとなったのは、NHK ゴガクの「ラジオ英会話」である。それは、英文法を中心に、会 話等でも役に立つ英語力を身に付けることを目指した英語学習番組である。昨年(2018年)度から 放送が始まり、今年度は、「英単語」の持つイメージに焦点が当てられているが、継続して、その根 底に流れるのは英文法である。
英語を話す際、文法の間違いを気にし過ぎてしまうことは、悪影響を及ぼすことがある。ただ、基 礎力として少しでも多くの「英語表現」をインプットする段階では、できるだけ正確に表現を覚えて おくことは、長い目でみれば、プラスに働くのではないか。
担当する学生の多くが、それほど英語を好きではないということもあり、これまでの「英語の授業」
では、極力、「文法的内容」については避けて通ってきてしまった部分もあった。今年度は、初めて、
「文法的内容」にも焦点を当て、授業を実施してみることにした。
2.2 「リズム」情報について
前回の試みで、明らかになったように、「英語表現」を身に付けさせるために、英語の「リズム」を 意識させることは有効である(堀内, 2018)。今回は、昨年度の「リズム」練習が効率よく実施できるよ うに、リズム(拍)を取る箇所を、視覚的に確認できるような工夫を加えてみた。
昨年度実施の「リズム」練習では、学生たちの見本となるのは、少し大袈裟に発音された担当教 員(日本人)の発音のみであった。音声には、すぐに消えてしまうという特徴がある。リズム(拍)のと り方が授業内にしっかり体得されていない限り、また、誤った形で記憶されている場合など、授業内 に練習した「リズム」を、学生のみで再現するのが難しくなる。そのような場合でも、リズム(拍)を取る 箇所を視覚的に示したものがあれば、学生たち自身で「リズム」を思い出すことができるのではない か。今回は、授業で「英語表現」を覚える際、次のような「リズム」情報を示しながら、行なった。
「リズム」情報とは、例えば、「放射線技師は、放射線科で働く」という「英語表現」の場合、
A radiological technologist works in the radiology department.
のように、「リズム(拍)」を取るところを、「改行」で示したものである。
上記のような「リズム」情報を、スクリーンに映し出すのみならず、「リズム」をさらに体感しやすくす るために、教員が「英語表現」を発音する際には、「リズム」を取るところで「うちわ」を振り、学生には、
心の中で「うちわ」を振りながら表現を口に出し練習するよう声をかけた。
何回か練習して、学生だけでリズムを意識して表現が言えるようになってからは、学生たちの発 音に合わせて「うちわ」を振りながら、リズム(拍)を取る箇所の1音節のみ、教員は声を出すなどし て、最終的には学生だけで「リズム」を意識して「英語表現」が言えるよう、サポートしていった。
リズム(拍)を取る箇所を正確に示そうとすれば、
A radiological technologist works in the radiology department.
上記のようになるかもしれない。授業での練習では、改行のみの情報と、それに基づいた担当教員 の発音で、学生たちはリズムの位置をほぼ体得できるようである。「リズム」を取るのに慣れてくると、
大よその位置(改行のみの情報)が分かるだけで、学生たちは英語の「リズム」を意識して発音する ことができるようであった。
2.3 表現の「書き出し」と「つぶやき」練習について
「英語表現」をしっかり覚えるためには、覚えるべき「英語表現」を英語音声で聞き取り、細かいと ころまで書き出すことは有効だろう。2018年度は、「英語表現」を導入する最初の段階で、覚えるべ き「英語表現」の内容(日本語)をスクリーンに映しながら、音声リーダーで何回か聞かせ、「英語表 現」を書き取らせる活動から始めた(堀内, 2018)。そのためか、その年の「英語表現」の「小テスト」
では、問題用紙の「日本語」をヒントに「英語音声」を聞いて、「英語表現」を書き出すといった、「聞 き取り」問題だと勘違いしている学生が多数、見られた。
今回は、「英語表現」自体を「聞き取る」だけでなく、「記憶する」ということに集中して取り組ませ るために、表現の「書き出し」は、表現を覚える努力をしたあとの最終の確認段階で行わせることに した。表現を書き出す際には必ず声に出し、あるいは、心の中でも「つぶやく」ように声をかけた。
表 現 を 「 つ ぶ や き 」 な が ら 「 書 き 出 し 」 を さ せ る 折 り に は 、 前 回 と 同 様 、 ttsreader英 語 版
(https://ttsreader.com/)の“very slow”(堀内, 2018)で「英語音声」を何回か聞かせながら行なっ た。
今回の試みでは、ttsreaderで「英語音声」を聞くのは、英語の「リズム」を意識して何回か練習さ せた後であった。そのため、「リズム」を意識して発音すると、自分たちの発音が、アンドロイドの英 語と極めて良く似てくるということにも目を向けさせることができた。
2.4 「表現一覧」について
今回は、「リズム」練習の際に、スクリーンで示すことにした「リズム」情報(2.2参照)等を掲載し、
覚えるべき全ての「英語表現」の一覧を、eラーニングのシステムを利用して、資料として学生に提 供することにした。学生に、自ら手を動かし、授業内に「リズム」情報を書き取ってもらうのも良いが、
それよりも、覚えるべき「リズム」情報の方は一覧として提供し、学生自身が「英語表現」を覚える過 程の中で、何度も表現を書き出してもらう方が効率的だと考えた。
図2 「表現一覧」(例)
図2で示すように、「表現一覧」では、まず、覚えるべき「英語表現」の内容を日本語で示した。そ の際、例えば、「放射線技師は、放射線科で働く」のような通常の日本語の語順ではなく、少しでも 英語が出て来やすくするために、「放射線技師は働く、放射線科で」のように、英語の語順を意識 した形で表示した。そのあと、「リズム」情報を掲載した。
授業の中では、改行のみの「リズム」情報を示していたが、一覧の方では、学生たちが自習する 時のことも考慮して、「リズム」を取る箇所を、ハイライトで明示した。
また、実際の「英語音声」を確認できるように、「Google翻訳」のURLも掲載した。「Google翻訳」
では、(本来は翻訳のために)「英語表現」を入力した際に現れる、「音声リーダー」機能を利用する。
スピーカーの形をした「音声マーク」(図3参照)は、1回目のタップでは通常速度、2回目のタップ では、少しゆっくり目の速度で、入力した「英語表現」の「英語音声」を聞くことができる(ちなみに、
3回目のタップでは、再び通常速度、4回目の速度では、ゆっくり目の速度と、以降、その繰り返 し)。
図3 「Google翻訳」の音声マーク
「表現一覧」には、「リズム」情報の次に「音声リーダー」入力用に、改行のない状態での「英語表 現」の方も載せてある(図2参照)。実のところ、改行のある状態で「Google翻訳」の枠に入力しても、
問題なく「英語音声」を聞くことはできる。ただ、授業でも使用しているttsreaderでは(スマートフォ ンの場合、クロームで開く必要があるなど面倒なので、利用する学生は少ない)、改行のない状態 で入力しないと1文として認識されず、切れ切れの発音となってしまう。「Google翻訳」でも、改行な しの状態で入力することにより、隣の枠で(比較的な正確な)「日本語訳」の方も確認するこができる ようになる(図4・図5 参照)。
図4 「Google翻訳」(その1)
図5 「Google翻訳」(その2)
学生たちは、「Google 翻訳」の枠内に、「英語表現」のコピー&ペースト後、英語入力枠左下の
「音声マーク」をタップするだけで、アンドロイドの「英語音声」を簡単に確認することができる。eラー ニングは、スマートフォンでも利用できるので、「Google翻訳」を URL から開き、コピー&ペーストの 手間さえ惜しまなければ、いつでも、どこでもアンドロイドの「英語音声」を聞くことが可能となる。「表 現一覧」は、授業の予習、復習、さらには、「小テスト」対策としても、学生たちが使える便利なコン テンツである。
2.5 eラーニングの「小テスト」機能について
学生たちの「英語表現」を覚える手助けとなってくれることを期待して、今回は、eラーニング
(moodle)の「小テスト」機能を用いたコンテンツも提供した。eラーニング「小テスト」を開始すると、
次の図6のように、覚えるべき「英語表現」についての日本語の内容が表示される。このコンテンツ の、そもそもの使用方法では、学生たちは日本語の下のボックスの中に、「英語表現」を入力するこ とになる。
図6 eラーニングでの「小テスト」の問題画面(例)
この授業での目標は、学生たちが日本語の「内容」から、それに対応する「英語表現」を口頭で 言えるようになることである。そこで、学生たちには、この画面を見ながら、「英語表現」をまず口に 出して言ってみて、言えたら紙に書き出し、書けたら次の問題に進む、という形で取り組むように呼 びかけた。もちろん、入力することによって、スペリングを意識してしっかり覚えられるのであれば、
入力の形で構わない。ただ、実際の「小テスト」では、デジタル入力の形ではなく、紙面上での筆記 で行なうということもあり、上記の方法を提案した。
全て問題を終えて、「結果を送信する」のボタンを押すと、次の図7のような正解ページが開く。
図7 eラーニングでの「小テスト」の正解画面(例)
正解ページでは、「表現一覧」にも掲載されている「リズム」情報と、改行のない文の両方の形で 正解が表示される。この画面を用いて、学生たちは、自分がスペリング等も間違えずに、正しく解答 することができたかを、自分の目でチェックすることができる。
eラーニングの「小テスト」は、何回でも実施できるが、その都度、問題の出題順序が変わる仕組 みにしてある。ある時は、「問題16」として登場し、ある時は、「問題11」として登場する。図6と図7 の問題番号が異なっているのは、そのためである。
eラーニングの「小テスト」機能については、最初一回だけ授業の中で、紹介したあとは、自主勉 強用としての活用を呼びかけた。
2.6 今回の授業での「実施内容」について
前回(昨年度)の「英語表現」にまつわる活動は、授業の最初の段階では「つぶやき」練習、中盤 から最後にかけては、「リズム」練習を主に行なった。
今回の試みでは、授業の初回から最終回まで一貫して、次のような形で行なった。まず、「リズム」
練習を主体に行い、表現をしっかり覚える努力をさせ、次に、表現を覚えられたかを確認させ、最 後の確認の段階で、「音声リーダー」を用いて何度も「つぶやき」ながら、書き出させるという、前回 でいう「つぶやき」練習を行なった。
今年度の具体的な「英語表現」に関わる活動の流れは、次のとおりである。
1.「英語表現」の内容(日本語)を見て、使われている主な単語等、表現を推測させる(時間の関 係で、この部分は割愛する場合もある)。
2.「英語表現」の「リズム」情報をスクリーンで示し、学生のみで発音させてみる。
3.教員も一緒に「英語表現」を声に出し、さらに練習を進める。
4.「英語表現」で、間違えやすい「文法事項」等の確認をする。
5.再度、「リズム」情報を見ながら、細かいところまで覚えるように声かけしながら、さらに何回か声 に出して練習させる。
6.日本語の内容のみスクリーンに映し、覚えた表現を声に出して言えるか確認させる。
7.言えたら、紙面上に表現を書き出すよう声をかけ、さらに、アンドロイドの英語音声(ttsreader英 語版の“very slow”)を聞き、「つぶやき」ながら、表現の「書き出し」を完成させる。
8.最後に、スクリーンを「英語表現」の方に切りかえ、確認させる。
授業は、学生の授業参加を促すために、「協同学習(小グループで互いに助け合いながら学習 を進めていくグループ学習の1つ)」の考え方に基づき、3 人、あるいは4人の小グループを中心に 展開させている。学生に推測・発音させたりする際には、グループで意見を出し合ったり、確認させ 合ったりしながら行なった。
時間に余裕があれば、今回、初めての試みの「文法事項」の確認なども、グループで確認させ合 いながらできると良かったが、今回は、学生の記憶に少しでも残るように、教員が大袈裟に語りかけ るような形で行った。
例えば、「あっ!!! 皆ちょっと見て!!‘equipment’に‘s’がついていない!!!!!‘equipment’って‘s’
がつきそうで、つかないんだね!!実は、私も間違えてネイティブの先生に注意されたことがあるよ!」
といった感じである。
学生たちが、「英語表現」を少しでも印象的に覚えられるように、発音にしても、文法事項の確認 にしても、教員は極力、大袈裟に、かつ「楽しく」行なうことに徹した。
3.結果と考察
3.0 「アンケート」について
2019年前期、最後の授業時に、2019年度1学年174名の対象学生全員にアンケート調査を行 なった。アンケートの尺度は、安永(2012:125)に倣って「1・2・3・4・5」の 5段階とし、「1」は「全く そう思わない」、「5」は「とてもそう思う」とした。また、自由記載は可能な限り、記述してもらった。
学生たちが「英語表現」を覚える際、何を意識して(「リズム」・「文法」etc.)、何(どんな活動)をし て(「つぶやく」・「書き出す」etc.)、あるいは、何を利用して(「表現一覧」・eラーニングの「小テスト」
etc.)取り組んだかを「アンケート」調査で確認した。また、「表現を覚える際に役に立ったこと」につ いて、自由記載の形で記述してもらった。
今回採り入れたいくつかの新しい内容が、「英語表現」の「小テスト」に少しでも良い結果としてあ らわれることを期待したい。
3.1 「英語表現」の「小テスト」結果について
Note. 横軸は、「小テスト」の得点(100点満点)区分。縦軸は、その得点区分に該当する学生の割合を示す(縦軸:
パーセント)。
図8 2019 年度「小テスト」結果
図8での得点は、2018年度と同様、便宜上、「つづり」関係で1点、「単数・複数・三単現の‘s’」
など文法関係で1点、大枠ができていれば1点と、1問につき、3点満点として採点したあと、全体 を100点満点に換算している。また、図8でも、2018年度の場合と同じく、各「得点」区分に該当す る各学科の学生の割合(%)の平均の数値を示している。
2018年度は、50点に満たない学生の割合が過半数をこえていた(2.0 参照)。2019年度の結 果を示す図8では、50点に満たない学生は少数であり、逆に50点以上獲得できた学生の割合が 70%を超える結果となっている(15%+17%141%+14%+10%+1%=71%)。
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
1
6 6
7 9
15 17
14 14
10
1
Note. 横軸は、「小テスト」の得点(100点満点)区分。縦軸は、その得点区分に該当する学生の割合を示す(縦軸:
パーセント)。
図9 「小テスト」結果(2018 年度 v.s. 2019 年度)
図9は、2018年度(左側)と2019年度(右側)の「英語表現」の「小テスト」の結果を1つのグラフ に示したものである。2018年度、2019年度の学生は共にほぼ同じ3学科に渡っているが、年度、
学科により、「内容」・「問題数」共に多少の差はあるものの、どの学科も例年、概ね同じ「英語表現」
問題を出題している。
具体的には、2018年度の対象3学科の小テストの問題数の平均は、16.7問であったのに対し、
2019年度の平均は、21.7問であった。これは、どの学科においても、2018年度の問題に、平均、5問、
新たな問題が追加出題されたということを意味している。つまり、2019年度の「小テスト」の方が問題 数も多く、得点を上げるのが難しいものとなっている。
また、2019年度には学部再編成がなされ、募集人数が増加した学科がある。統計学的観点から 考えれば、標本の数が大きくなれば、様々な標本が得られる。つまり、募集人数が増えれば、様々 な学生が入って来る可能性があり、その結果、2019年度の学生の英語力の平均は、2018年度より 下がっている可能性があると考えられる。
「英語表現」の「小テスト」の結果において、「2018年度」の結果と「2019年度」の結果の平均値の 差を優位水準 5%の両側検定により検討してみると、有意差が見られた(t (366) = -8.48, p < .05)。
同じく、優位水準 1%の両側検定でも検討してみたところ、こちらにおいても有意差が認められる 結果となった(t (366) = -8.48, p < .01)。
0 5 10 15 20 25
3 8
21 22
15 13
5 6 6
1 0
1
6 6 7
9
15 17
14 14
10
1
3.2 表現を覚える際に「意識したもの」について
2018年度と2019年度の「英語表現」の小テストの結果には大きな変化が見られたが、学生たち は、何に意識を向けて表現を覚えたのだろうか。
Note. 「表現を覚える際に『意識したもの』」という項目における、「リズム」(左側)、「文法」(中央)、「スペリング」(右
側)の調査結果。縦軸は、下より「とても思う」・「思う」・「微妙」・「思わない」・「全く思わない」と答えた学生の 割合を示す(縦軸:パーセント)。
図10 表現を覚える際に「意識したもの」
今回は、授業で「英語表現」を覚える際に、新たに「リズム」情報を示してみた。図10によれば、
「リズム」を意識して表現を覚える努力をしたと答えている学生が一番多いことが分かる(左より、
28%+45%=73%、28%+34%=62%、27%+40%=67%)。
今回は、授業時に「英語表現」を覚える活動を行う際、初めて文法事項にも触れながら行なって みたが、「文法的内容」を意識しながら覚えたと答えている学生は、図10では最も少ない。また、
「英語表現」を瞬時に口にすることができれば、「スペリング」のミスは気にしなくても良いと、授業で 学生たちに伝えていたにも関わらず、「スペリング」を意識して覚えたと答えた学生が、「リズム」を意 識したと答えている学生の次に多く見られるのは興味深い。最後の「小テスト」が、筆記形式で行わ れるということも影響しているのかもしれない。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
リズム ★文法 スペリング
28 28 27
45 34 40
21
27 26
5 9 5
2 2 2
とても思う 思う 微妙 思わない 全く思わない
3.3 表現を覚える際に「行なった活動」について
授業の中でいつも呼びかけていたのは、日本語の内容を見ただけで、該当の「英語表現」がスラ スラ言えるレベルまで何度も口に出して「つぶやく」ように、ということであった。ただ、「音声」は口に 出した途端に消えてしまうものである。視覚的に「英語表現」を確認してもらうためにも、また、「書き 出す」ことによって記憶を定着させてもらうためにも、口頭で言えたら、表現を書き出してみることも、
併せて勧めていた。
Note. 「表現を覚える際に『行った行動』」という項目における、「つぶやく」(左側)、および、「書き出す」(右側)の調
査結果。縦軸は、下より「とても思う」・「思う」・「微妙」・「思わない」・「全く思わない」と答えた学生の割合を示 す(縦軸:パーセント)。
図11 表現を覚える際に「行った活動」について
大学生にもなると、実際に英語を声に出すことに抵抗を覚える学生も出てくる。図11の「つぶや く」の中には、「(心の中でも)つぶやく」という内容も含まれている。また、「英語表現」における授 業目標が、「日本語の内容を見て、英語表現をスラスラ口で言うことができる」ということであったこと もあるためか、(心の中でも)つぶやいて覚えようとした学生が多くいたようである。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
つぶやく 書き出す
33 32
48
33 14
21
4 10
1 5
とても思う 思う 微妙 思わない 全く思わない
3.4 表現を覚える際に「利用したもの」について
今回の試みでは、授業の中で紹介した「英語表現」を授業外でも確認しやすくするために、日本 語の内容、「リズム」情報等が掲載された「表現一覧」、および、「英語表現」を各自で覚えるツール として、eラーニングの「小テスト」機能のコンテンツなどを提供した。「表現一覧」(図 2参照)を見 れば、「Google翻訳」の音声機能を使って「表現」の「英語音声」の確認もできることも掲載されてい る。そこで、「表現一覧」、「eラーニングの『小テスト』」、および、「Google翻訳の音声機能」の利用 についても聞いてみた。
Note. 「表現を覚える際に『利用したもの』」という項目における、「表現一覧」(左側)、「e ラーニングの『小テスト』」
(中央)、および、「Google 翻訳の『音声機能』」(右側)の調査結果。縦軸は、下より「とても思う」・「思う」・
「微妙」・「思わない」・「全く思わない」と答えた学生の割合を示す(縦軸:パーセント)。
図12 表現を覚える際に「利用したもの」について
「表現一覧」は、担当クラスのある学生からの要望がきっかけとなって生まれたのだが、図12から もわかるように、表現を覚える際に学生たちが「最も利用した」という調査結果となった。「表現一覧」
も、「小テスト」機能のコンテンツも、共にeラーニング(moodle)を通して学生たちは同じように利用 することができる。ただ、「表現一覧」に関しては、あるページを開けば、全ての資料が見られる一 方(スクロールする必要はあるが)で、「小テスト」機能に関しては、何回もタップするなどの操作が 必要である。また、「Google翻訳」を用いて英語音声を聞く際にも、「英語表現」のコピー&ペースト をしたりするなど、少々面倒な操作が必要であった。
操作の煩雑さが、図12のような結果となったと言えるのかもしれない。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
★表現一覧 ★eラーニング ★Google(音声)
31 30
16
48 37
25 14
19
22
3 9
17
3 5
20 とても思う 思う 微妙 思わない 全く思わない
3.4 表現を覚える際の「効果的な方法」について
「英語表現」を覚える際に、学生たちが「意識したもの」、「行なった活動」、および、「利用したも の」について見てきたが、今回の調査の全てをまとめて示したものが、図13である。
Note. 「表現を覚える際に『意識したもの』・『行った活動』・『利用したもの』」という項目における、左から「リズム」、
「文法」、「スペリング」、「つぶやく」、「書き出す」、「表現一覧」、「e ラーニングの 『小テス』機能」、および、
「Google翻訳の『音声機能』」の調査結果。縦軸は、下より「とても思う」・「思う」・「微妙」・「思わない」・「全く 思わない」と答えた学生の割合を示す(縦軸:パーセント)。
図13 表現を覚える際に「意識したもの」・「行なった活動」・「利用したもの」について
今回の「小テスト」は、全体的に前回よりも大きな伸びが見られたが、図13に示された結果から、
「英語表現」を覚える際には、「リズム」を意識し、「つぶやき」ながら、「表現一覧」を利用しながら行 なうのが効果的(!?)と言えるのだろうか。「文法」を意識したり、表現を「書き出し」たり、また「小テス ト」機能などを用いたりするのは、記憶の補強のため、バックアップ的にしか行なっていなかったと いうことなのだろうか。
学生たちの、「表現を覚える際に役に立ったこと」についての自由記載を見てみると、「日本語訳 と結びつけて・・・」、「似た表現と結びつけて・・・」、「発音が近いものと結びつけて・・・」といったよう に、自分の既に持っている知識と関連付けて覚える努力をしている学生が見られた。また、表現に 出てくる、気になった単語等を自分自身で調べたり、どうしてその表現になるのかを自分自身で考
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
28 28 27 33 32 31 30
16
45 34 40
48
33 48
37
25
21 27 26 14
21
14
19
22
5 9 5 4
10 3 9
17
2 2 2 1 5 3 5
20 とても思う 思う 微妙 思わない 全く思わない
えてみたり、友達と表現について話し合ってみたり、自分なりに印象付けて表現を覚える努力をし ている学生も見られた。
幼少期には、意味のないことを覚えるのも簡単だったかもしれないが、成長するにつれ、それも 難しくなり、記憶するためには何かとの「関連付け」、「印象付け」など、何らかの「意味付け」が必要 になってくるということなのかもしれない。ただ、言葉を瞬時に発する(表現を完全に自分のものにし てアウトプットする)ことができるようになるためには、図13に示される通り、実際に口に出してつぶ やいて練習していくということが、やはり、一番大切なことだと言えるのかもしれない。
4. おわりに
今回は、以前より気になっていた「英語表現」の「小テスト」の結果をきっかけに、ラジオ講座など にもヒントを得ながら、授業内の活動等に工夫を凝らしてみた。コンテンツとしては、「リズム」情報
(2.2 参照)、「表現一覧」(2.4 参照)、それからeラーニングの「小テスト」機能(2.5 参照)などを 新たに採り入れた。また、「文法的内容」(2.1 参照)について触れてみるというのも、初めての試み であった。
その結果、「英語表現」の「小テスト」の方は、飛躍的な伸びを見せた(3.1 参照)。その原因は、
今回、初めての「文法的内容」の成果かと考えたが、実際には、学生たちは、それほど、「文法」を 意識して取り組んでいるわけでもないようであった(3.2参照)。3.までの内容では、特に言及はし なかったが、今回の「小テスト」での大きな伸びの要因は、授業の中で、表現を「覚える」ということに 集中して取り組ませたことというのが大きかった可能性もある。
今から思えば、今回の試みのような「活動」形式の実践を思いつくカギとなったのは、昨年度、あ る時、あるクラスで、「アンドロイド音声」を聞きながら「つぶやいて」書き出すという活動をする時間 が取れず、最初から「英語表現」を見せながら、声に出し覚えさせた時の授業であったかもしれな い。その時の、「(表現を)覚えてからだと、沢山、つぶやけるし、沢山、書き出せる!」といった、学 生の嬉しい「振り返り」の記述を、今でも印象的に覚えている。
これからも、学生たちの小さなつぶやきにも耳を傾けながら、学生たちが「英語が使える」・「英語 で発信できる」ようになるためのサポートをし続けていけたらと思う。
参考文献
協同学習法ワークショップ<Basic>2009年改訂版 日本協同教育学会.
NHK ゴガク 「ラジオ英会話」https://www2.nhk.or.jp/gogaku/learn/streaming/?spid=00000914&tcd=F0 堀内ちとせ(2016)「英語での発話」を促すために」Language & Literature (Japan)第25号50–64.愛知淑徳大学
大学院英文学会.
堀内ちとせ(2018)「英語での発話」を促すために(3)」Language & Literature (Japan)第27号37-49.愛知淑徳大 学大学院英文学会.
安永悟(2012)『活動性を高める授業づくり ― 協同学習のすすめ ―』医学書院.