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西山学報 31 (19830330) 02日下 俊文「方便思想の展開III : 大智度論を中心に」

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Academic year: 2021

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(1)

NII-Electronic Library Service

便

 

N工 工一Eleotronlo  Llbrary  Servloe

五 四   “ _   一  一   一 “ 目

 

次 は じ め に 種 種 な る

便 の 意 義 六 波 羅 蜜 と 方 便 般 若 波 羅 蜜 と 方 便 ま と め 一 、 は

 

 

 

に  

便 と い う 言 葉 が 、 多 種 多 様 な 意 味 に 用 い ら れ て 、 特 有 の 思 想 を 形 成 し た の は 、 大 乗 仏 教 の 時 代 に 入 っ て か ら で あ る 。 そ こ で 方 便 の 思 想 が 大 乗 仏

で は 如 何 に 発 達 し て く る か を 考 察 す る た め に 、 ま ず 初 期 大 乗 仏 教 を 代 表 す る 『 小 品

』 と 『 大 品

』 に み ら れ る

便 思 想

回 は そ れ を 受 け て 『 大 品

』 の

で あ ・ 『 大 智 度

』 で は ど の よ う に 展 開 し て く る か を 検 討 し た い と 思 う 。

便 の 用 例 を

量 の 上 か ら み る と 『 小 品 般

』 で は    

 

方 便 思 想 の 展 開 ( 三 )

(2)

      西 山 学 報 七 十 三 回 、

 

『 大

般 若 』 で は 二 百 四 十 回 で あ っ た が 、

に す る と 次 の よ う に な る 。 『 大 智 度 論 』 の 中 に は 四 百 三

二 回 使 わ れ て い る 、 そ れ ら を 小 品 般

大 品

… 大

論 − 権 巧 方 便

2

  施   造   方 便

3

化 他 方 便

5

  前 三 に 通 ず る 方 便

5

  虚 仮 方 便 6 大 品 独 自 の 方 便 三 九 八 七 十 六 五 九 五 四 五

1

五 五 1九 四 七 六 四 = 一 九 六 六 十 五 五   一 三 六

7

  論 独 自 の 方 便 合 計 七 三 二 四 〇 八 二 四 三 二     さ れ て お り 、 の 方 便 思 想 」 と は 言 い き れ な い も の が あ る が 、 竜

以 外 の 学 説

入 っ て 来 て い る と も い わ れ て い る の で 、                               今 回 は こ の 問 題 に た ち 入 ら な い こ と に す る 。   し か も 『

論 』 で は 方 便 の 意 義 が 多 様 に 用 い ら れ て い る の で 分 類 は 容 易 で は な い が 、

色 あ る も の を 挙 げ た い と 思 う 。 ま た 方 便 と 六 度 と の 係 わ り に つ い て は 、 六 度 の 上 に 方 便 が

七 波 羅 蜜 と し て 加 上 さ れ て く る 素 地 が 説 か れ て い る の か ど う か に 関 心 を 払 い な が ら 検 討 を 進 め た い と 思 う 。 ま た 方 便 と 般 若 波 羅 蜜 と は ど の よ う に 係 わ っ て い る の か 、 こ れ ら の 検 討 か ら 『 大 智 度 論 」 で は

便 思 想 が 如 何 に あ ら わ れ て い る か を 調 査 し た い と 思 う 。 周 知 の よ う に 『 大 智 度 論 』 は

什 に よ っ て 、 思 い 切 っ た 抄 訳 が な         「 大 智 度 論 の

便 思 想 」 が 、 直 ち に 「 竜 樹 二

 

便

  『 大 智 度 論 』 に み ら れ る 方 便 の 用 例 は 多 義

様 に 用 い ら れ て 、 そ の 分 類 は 容 易 で は な い が 、 そ の 特 徴 に よ っ て 分                    

し 検 討 し た い と 思 う 。

 

度 論 』 に も 『 小 品 般 若 」

 

品 般 若 」 に み ら れ た 方 便 思 想 が 受 け 継 が れ つ い る の で 、

(3)

NII-Electronic Library Service 先 に か か げ た   権 巧 方 便 、   施 造 方 便 、   化 他

便 、  

仮 の 方 便 の 分 類 に し た が っ て 整 理 し て ゆ き た い と 思 う 。  

1

、 権 巧 方 便 、 こ の

便 の 義 は 真 実 へ 導 く た め の 手 段 で 、 権 に す が た を 現 わ し て 自 由 自 在 な 活 動 を す る こ と で 、                                                                         般 若 智 に 対 す る 方 便 智 の こ と で あ る 。 即 ち 「 自 他 の 救 済 の た め の す べ て の 方 法 で 」 、 特 に 作 仏 を 願 こ う

習 者 に つ い て の 方 便 、 作 仏 す る ま で よ く

り 、 よ く 導 く と こ ろ の

便 を い っ た 。 つ ま り 菩 薩 は こ の 方 便 に よ っ て

護 さ れ 二 地 に 堕 す る こ と な く 、 修 す る

の 諸 の 功 徳 を 無 上 菩 提 に 回 向 し て 、

仏 へ す す む の で あ る 。 「 も し 菩 薩 、 一 心 に

命 を 惜 ま ず

便 あ り て 仏 道 を

む れ ば

方 の 諸 仏 及 び 諸 の 大

は 皆 共 に 護 持 す 。 こ の 因 縁 を 以 っ て の 故 に 、              

く 仏 道 を 成 ず 」 。 一

、 こ の 方 便 が 菩 薩 に 具 足 せ ぬ と き は 、 「 も し 諸 仏 を 遠 離 せ ば 、 少 功 徳 に し て 方 便

な き を 以 っ て 、 衆 生 を 化 せ ん と 欲 す る に 、 少 し く 利 益 あ り と 雖 も 、 反 っ て 堕 落 せ ん 、 是 の 故 に 新

の 菩 薩 は 、 諸 仏 を 遠 離 す                                                                             べ か ら ず 」 。 ま た

便 な き が 故 に 「 余 の

薩 を

ん じ 、 心 に 僑 高 を 生 ず 」 る の で あ る 。                                                                                    

2

、 施 造 方 便 、 こ の 方 便 は 般 若 波 羅 蜜 と 密 接 に 関 連 し て 説 か れ 、 不 取 相 の 義 を も っ て い る 。 す な わ ち 「

便 は 、                                                                                                             即 ち 是 れ 智 慧 」 と い い 、 ま た 「

便 と は 、 所 謂 般 若 波 羅 蜜 な り 」 、   「 般 若 と

便 と は

体 是 れ 一 な り 」 な ど と い っ て

便 と 般 若 波 羅 蜜 と は 同 義 に 説 示 さ れ て い る 。 菩 薩 は 「 自 ら 諸 法 実 相 空 を 学 び 、 巧 方 便 の 故 に 是 の 空 に 著 せ                                                                                                                                               、

相 を 取 ら

、 無 相 を 取 ら ず 、 有 無 の ず 」   「 六 波 羅 蜜 を 行 じ 、 福 徳 因

を 起 す と 雖 も 、 而 も 心 は 諸 法 に 著 せ ず 」                                                                 二 辺 を 離 れ て 中 道 を 行 じ 、

切 法 の 自

空 を 知 る が 故 に 有 無 に 著 せ ず 」 、 「 無 生 忍 法 を 得 て 、

に 入 り 、 菩                                                                                                     薩 の 第 一 義 諦 観 を 通 達 し 」 、

 

若 波 羅 蜜 中 に

い て 、

便 力 を 得 る が 故 に 、 亦 般 若 波 羅 蜜 に 著 せ ず 」 と い う の で あ る 。   「 諸 法 無 自 性 空 と 言 う こ と よ り も 、 此 の 空 も 亦 復 空 な り と い う こ と が 主 眼 と な り 空 と い う 観 念 を も 否 定 し                                     て 空 相 に 捉 わ れ る こ と を 避 け る の で あ る 」 。 こ の 「 第 二 の 否 定 の

面 が 、

若 の 認

の 特 質 を な

の で あ る       方 便 思 想 の 展 開 ( 三 ) 一

31

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(4)

      西 山

報 か ら 、 此 の

面 の 働 き を 単 な る 智 慧 と 言 わ ず に 、 微 妙 の 智 慧 〜 方 便 が あ る 般 若

1

と 称 し て 、 方 便 の 有 無 に よ っ て 般                                           若 の 働 き に 非 常 な る 差 の あ る こ と を 説 い て い る 」 の で あ る 。  

3

、 化 他 方 便 、 こ の 方 便 は 仏 や

薩 が 、 迷 い の 衆 生 を 導 く て だ て で 、

 

「 衆 生 を し て 涅 槃 を 得 し む る た め の 方 便 」 で あ る 。 い わ ゆ る 向 下 的 な 方 便 で 「 般 若 波 羅 蜜 は 、 甚 深 微 妙 に し て 、

便 を 以 っ て 説 か ざ れ ば 則 ち 解 す る 者 な

れ る

便 で あ る ・

仏 は

の 方 便 も て

切 の 人 を し て 尽 く 仏 道 に 入 ら し め ん と 欲

・ の で あ ・ 。                                         曾                               般 若 智 に よ り 畢

空 を 証 し 、   「 畢 竟 空 を 出 で ]

 

「 衆 生 の た め に 欲 界 に 生 じ 」 、

 

「 衆 生 を 度 す 方 便 を 得 る が 故 に 、 変 化 自

と な り ・ 「 方 便 力 を 以 ・ て ・

五 道 に 入 り ・ 五 欲 を 受 け ・

を 引 導 す 翰 」 の で あ る ・ 霊 砲 天 の

は 大 な り と 雖 も ・

薩 の 方 便 力 も 亦 大 な

と い ・ て 顯 倒 を 破 し て ・

空 を 知 ら し む る の で あ る 。 「 大 智 度 論 も 方 便 を 論 ず る の

局 は ・ 常 に 化 他

便 の 行 願 に 帰 し て あ

と 言 わ れ る ・ さ ら に 注 意 す べ き は ・ 方 便 力 な き 利 他 心 に つ い て 第 二

九 巻 に は 、   も し 諸 仏 を 遠

せ ば 、 少 功 徳 に し て 、 方 便 力 な き を 以 っ て 衆 生 を 化 せ ん と 欲 す る に 、 少 し く 利 益 あ り と 雖 も 、 反   っ て 更 に 堕 落 せ ん 、 是 を 以 っ て の 故 に 新 学 の 菩 薩 は 諸 仏 を 遠 離 す べ か ら ず 。

 

 

 

 

 

 

( 大 正 二 五 ・ 二 七 五 下 )           む     む     む     む     む     む           む     む     む     ほ             と い っ て 、 利 他 心 よ り も 、

便 の 重 視 が み ら れ る の で あ る 。

4

5

、 前 三 い ず れ に も 通

る 方 便 。 虚 仮 の 方 便 、 こ れ は 悪

が 用 い る

便 で 、 「 魔 は 大 い に

便 を 作 し て 、

薩 の 心 を 壊 す 。 も し

薩 、

怠 す

(5)

NII-Electronic Library Service                                                                                               れ ば 魔 は 大 い に 歓 喜 す 」 る の で あ る が 、 ま た

薩 も 方 便 力 を も っ て 魔 事 を 観 ず る の で あ る 。   こ れ ら の

便 の 他 に 『 大 智 度 論 』 に な っ て 、 新 ら た に 、 説 か れ る 方 便 の 用 例 が あ る 。 順

げ た い 。  

6

、 は じ め に 釈 尊 の 生 涯 が 方 便 で あ る と い う 。 す な わ ち 釈 尊 が 人 法 を

け て 、 八 十 才 の 入 滅 ま で の 一 生 涯 は 、 衆 生 に 深 法 を 信 ぜ し め る た め の 方 便 で あ る と い う 。 つ ま り 「 仏 陀 は 己 に 普 通 の 人 間 で は な い 、 無 明 の 闇 に 迷 へ る も の を

き 、 渇 愛 の 淵 に 溺 れ ん と す る も の を 救 わ ん と の

慈 悲 心 か ら 方 便 の た め に 仮 に 人 身 を 受 け た に ず ぎ な い の で あ     る 」 。   『 大 智 度 論 』 第 一 巻 に は 、  

ら 絶 え て 賢 聖 の 法 器 と 成 る こ と を 得 ず 、 是 の 人 の 為 の 故 に 、 嵐 眦 尼 園 の

に 於 い て 生 れ 、 即 ち 能 く 菩 提 樹 下 に   至 っ て 成 仏 す と 雖 も 、 方 便 力 を 以 っ て の 故 に 、 弦 童 幼 稚 少 年 、 成 人 を 現 作 す 。 諸 時 の

い て 、 次 第 に 嬉 戯 、  

芸 、 服 御 、 五 欲 を 受 け 、 人 の 法 を 具 足 し 、

漸 く 老 病 死 苦 を 見 て 厭 患 の 心 を 生 じ 、 夜

の 半 に 於 い て 、 城 を 踰   え て 出 家 し 、 云 云 、                                                                 ( 大 正 二 五 、 五 九 上 ) と い っ て 、 釈 尊 は 「 衆 生 を 度 せ ん が 為 の 故 に 、 方 便 し て 人 法 を 受 け 、 身 は 浄 飯 王 の 家 に 生 れ 、 四 城 門 よ り 出 で て 、                                                                                     老

死 人 を 問 う 」 、 「 方 便 力 を 以 っ て の 故 に 、 生 死 、 妻 子

属 あ る こ と を 現 じ 」 、 釈 尊 の 三 業 は 化 他 行 で あ り 、 利

便 示 現 で あ る 、 と 説 か れ る の で あ る 。 ( 十 回 )                                                                                            

7

、 八 聖 道 や 正

進 を

便 と 示 さ れ て い る 。 す な わ ち 「 愛 等 の 諸 の 煩

を 断 ず る

便 は 、 是 れ 道 諦 」 、 「 涅 槃 を                       得 る の 方 便 た る 八 聖 道 」 な ど と い う 。 ま た 八 聖 道 中 、 正

便 を 説 い て 、   「 正 方 便 は 、 駆 策 し て 速 に 進 ん で 息 ま ざ ら                                                                                             し め 」 、 「 精 進 し て 懈 ら ず 色 、 無 色 定 の

に 住 せ し め ず 、 是 を 正 方 便 と 名 く 」 と い っ て 、 正 方 便 を 正 精 進 に 当 て 、       方 便 思 想 の 展 開 ( 三 ) 一

33

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(6)

      西   山

十 九 巻 に は   正

便 は 、 四 正 勤 、 精 進 根 、 と い っ て い る 。 ( 八 回 ) 精 進 力 、 精 進

に 説 く が 如 し ( 大 正 二 五 二 〇 三 上 )                                                              

8

、 正 念 も 智 慧 も 慈 悲 心 も 凡 て

便 に 帰 す と こ ろ が 示 さ れ て い る 。 第 四

四 巻 に は 、   正 憶 念 な く 、

な る 智 慧 な く 衆 生 中 に 於 い て 、 深 き 慈 悲 な き は 、 内 に 是 の 如 き 等 の

便 な き な り 。                                                                                   ( 大 正 二 五 、 と い っ て い る 。 ( 一 回 ) 三 七 八 上 )  

9

、 次 に 方 便 が 、 読 誦

、 籌 量 す る こ と 等 と 同 義 に 説 示 さ れ て い る 。 第 十 八 巻 に は 、  

は 五 波 羅

を 離 れ 、 但 だ 聞 い て 読 誦 し 、 思 惟 し

量 し て 諸 法 の 実 相 に 通 達 す る あ り 。 是 れ 方 便 智 よ り 般 若 波 羅  

を 生 ず 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

   

 

   

 

   

 

 

 

 

( 大 正 二 五 、 一 九 六 c 〜 一 九 七 a ) と い う 。 こ こ で は 聞 、 読 誦 等 の 方 便 よ り 般 若 波 羅 蜜 が 生 ず る の で あ る 。 す な わ ち 「 何 か 是 れ 方 便 門 な る 。 所 謂 般 若                                                   @

蜜 経 を 読 誦 し 、 正

念 し 、 思 惟 し て 説 の 如 く 修 行 す る 」 の で あ る 。

 

( 四 回 )

10

、 次 に

便 が 念 増 長 聞 持 陀 憐 尼 の 義 に 用 い ら れ て い る 。 第 二 十 八 巻 に は 、 何 者 か 是 れ

便

、 若 し 人 聞 く 所 皆 持 つ こ と を 得 ん と 欲 せ ば 応 当 に 一 心 に 憶 念 し て 念 を 増 長 せ し め 、 先 ず 当 に

意 し 、 相 似 の

に 於 い て 、 心 を 繋 け て 見 ざ る 所 の 事 を 知 ら し む べ し … …

略 … 初 め

憐 尼 を 聞 持 す る こ と を 学 す

(7)

NII-Electronic Library Service   る に 、 三 た び 聞 い て 能 く 得 、 心 根 転 た 利 な れ ば 、 再 び 聞 い て 能 く 得 、 成 者 は 一 た び 聞 い て 能 く 得 、 得 て 忘 れ ず 、  

を 陀 憐 尼 を 聞 持 す る 初 方 便 と 為 す 。 或 時 は

薩 は 禅 定 の 中 に 入 っ て 、 不 忘 解 脱 を 得 、 不 忘 解 脱 力 の

に 、 一   切 の 語 言 説 法 を 、 乃 ち 一

一 字 も 皆 能 く 忘 れ ざ る に 至 る 。 是 れ を 第 二 の 方 便 と 為 す 。 ( 大 正 二 五 、 二 六 八 上 ) と い う 。 方 便 は た だ 「 方 法 、 て だ て 、 手 段 」 等 の 義 の み な ら ず 、 こ こ で は 不 忘 解 脱 力 に よ っ て 語 言 説 法 を

れ ざ る

を 意 味 す る の で あ る 。

 

( 四 回 )

N工 工一Eleotronlo  Llbrary  Servloe

 

11

、 次 に

便 が 、 実 義 や 実 の 教 え と 対 比 し 、

便 説 と し て 、 仮 説 さ れ た も の と し て 示 さ れ て い る 。 第 九 巻 に は 、   仏 経 に 世 界 は

量 な り と 言 う と 雖 も 、 此 れ 方 便 の 説 に し て 、 是 れ 実 の

に 非 ら ず 。 如 実 に は 神 な け れ ど も 、

便   の 故 に 説 い て 神 あ り と 言 う 。

 

 

 

 

 

                       

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 二 五 = 一 四 上 )   ま た 、 第 二 十 六 巻 に は 、     今 云 何 が 無 我 は 是 れ 実 に し て 、 有 我 は 方 便 説 と 為 す と 言 う や 。

 

   

 

   

 

   

 

  ( 大 正 二 五 、 二 五 三 下 ) と い う 。 ( 七 回 ) 一

35

一  

12

、 次 に 五 事 、 五 法 等 を 却 け 、 除 く こ と を

便 と し て 説 か れ て い る 。 第 十 七 巻 に は 。   問 う て 日 く 、 何 の 方 便 を 行 じ て か 禅

羅 蜜 を 得 る や 、

へ て 日 く 、 五 事 を 却 け 、 五 法 を 除 き 、 五 行 を 行 ず 。 云 何   が 五 事 を

け ん 、 当 に 五 欲 を 呵

す べ し 。      

 

     

 

                      ( 大 正 二 五 、 一 八 一 上 ) と い う の で あ る 。 得 禅 の

便 と し て 五 塵 、 五 蓋 等 の 除

を 示 し て い る の で あ る 。 ( 一 回 ) 方 便 思 想 の 展 開 ( 三 )

(8)

      西 山

報  

13

に 方 便 に 一 に 多 を 摂 し 、 多 を よ く 一 と す る 如 き 方 便 の 力 を

い て い る 。 第 八

巻 に は 、   問 う て 日 く 、 六 波 羅 蜜 は 各 各 異 相 な

。 云 何 が 一 波

蜜 を 行 じ て 、 五 波 羅 蜜 を 摂

る や 。

え て 曰 く 菩 薩 は 方   便 力 を 以 っ て の 故 に 、 一

羅 蜜 を

じ て 、 能 く 五 波 羅 蜜 を 摂 す 。

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 二 五 六 二 四 上 ) ま た 、

三 十 二 巻 に は 、   神 通 力 の

に 於 い て 、 巧 方 便 の 故 に 、 一 を 能 く 多 と 為 し 、 多 を 能 く 一 と 為 し 、

く 大 と 為 し 、 大 を 能 く 小 と   為 す 云 云 、  

 

   

 

   

 

                             

 

   

 

   

 

   

 

  ( 大 正 二 五 、 三 〇 〇 上 ) と い う 。 い わ ゆ る 「 一 の 中 に 一 切 を

し 、 一 切 の 中 に 一 を 成 じ 、 巧 に 相 集 成 せ る 相

」 の 集

便 が 示 さ れ て い る 。 ( 二 回 )

14

、 次 に

便 智 力 に よ る 不 可 思 議 能

さ れ て い る 。 第 三

巻 に は 、   法 性 身 の 仏 は 、 説 法 す る 所 あ り 、 十 住 の

薩 を 除 け ば   議 な る 。 方 便 智 力 あ っ て 悉 く 能 く 聴 受 す 。 と い う 。   二 回 )  

15

便 が 一 般 的 な 意 味 で 「 て だ て 」   一 切 の 人 は 、 皆 方 便 し て 楽 を 求 む 。 と い い 、 ま た 、 第 三 十 六 巻 に は 、   煩 悩 を

す る 方 便 の

、 是 を 道 と

つ く 。 二 乗 の 人 は 皆

す る こ と

わ ず 。 唯

住 の

の み 不 可 思                                 ( 大 正 二 五 、 二 七 八 上 ) 「 工 夫 」 等 の 義 と し て 用 い ら れ て い る と こ ろ が あ る 。 第 七

七 巻 に は 、                                           ( 大 正 二 五 、 六 〇 六 中 ) ( 大 正 二 五 、 三 二 六 上 )

(9)

NII-Electronic Library Service な ど と 用 い ら れ て い る の で あ る 。   ( 三 九 回 >  

16

、 次 に

便 が 、 般 若 波 羅

道 、

便 道 と し て 並 べ て 用 い ら れ て い る

が あ る 。 第 二 十 七 巻 に は 、  

道 に 三 種 あ り 、 波 羅 蜜 道 、

便 道 、 浄 世 界 道 な り 。

 

 

                       

 

( 大 正 二 五 二 五 八 上 ) と あ り 、 ま た 第 百 巻 に は 、  

道 に 二 種 あ り 、 一 に は

若 波

蜜 道 、 二 に は 方 便 道 な り 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 二 五 七 五 四 中 ) な ど で あ る 。   ( 二 回 )  

17

、 次 に 「 諸 法 の 一 一 に 九 種 あ り 」 と い っ て 、 体 法 、 力 、 因 、 縁 性 、 限 礙 、 開 通 方 便 の 九 つ を

げ て 、                                               「

の 生 ず る

は 、 体 及 び 余 の 法 、 凡 て 九 事 あ り 」 と い っ て 、

 

「 開 通 方 便 」 を 挙 げ て い る 。 ( 一 回 )  

18

、 次 に 、 方 便 あ る 者 は 、 不

相 、 観 空 の 面 に と ど ま ら ず 、 仮 名 、 因 縁 の 処 を よ く 知 る 、 と 説 か れ て い る 。 第 六 十 三 巻 に は  

実 相 を 求 む れ ど も 、 諸 法 の 相 の 好 醜 を 分 別 す る こ と を 知 ら ず 、 是 れ を 巧 便 の 慧 な し と

つ く 、 是 等 の 如 き 悪   法 あ る が 故 に 、 是 の 人 は 甚 深 の

若 を 解 し

し 、    

 

   

 

                      ( 大 正 二 五 五 〇 五 上 ) ま た 、 同 巻 に   般

は 定 相 な く 、 但 道 種 智 を 以 っ て の 故 に 、

別 し て 説 き 、

薩 を し て 般

を 行 ぜ し め 、

便 あ る が 故 に 、 法 は  

竟 空 な り と 雖 も 、 亦 是 の 如 く 知 る 。

 

   

 

   

 

   

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 二 五 五 〇 八 下 ) と い っ て 、

便 慧 あ る 菩 薩 は 、

の 畢

空 を 観 ず れ ど も 、 諸

の 相 及 び 衆

の 心 に 行

知 る の で あ る 。       方 便 思 想 の 展 開 ( 三 ) 一

37

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(10)

      西   由

報 す な わ ち 「 深

の 中 に は 、 衆 生 及 び 色

の 法 、 乃 至 一 切 種 智 な し と 雖 も 、 般 若 の

便 力 を 以 っ て 、

も よ く 衆 生                       の 心 に 行 ず る

を 知 る 」 の で あ る 。

 

( 三 回 )   こ れ ら

6

の 方 便 の 用 例 は 、 『

品 般 若 』 に は み ら れ ず 、 『 大 智 度 論 』 に 説 か れ た も の で あ る が 、 い ず れ も 権 巧

便 施 造 方 便 化 他 方 便 、 虚 仮 方 便

の 概 念 に 入 り に

い も の で あ り 、 ま た 当 然 入 れ な け れ ば な ら ぬ も の も あ る 。   例 え ば 釈 尊 の 生 涯 を 方 便 と み て い る が 、 こ れ は 衆 生 化 益 の

便 で あ る か ら 、 化 他 方 便 に 入 れ な け れ ば な ら ぬ も の で あ る が 、 こ こ で は 別 に 出 し て 列 挙 し た 。 こ れ ら の 方 便 の

が 『 小 品 般

」 や 『 大 品 般 若 』 に 比 べ て 『 大 智 度 論 』 で は よ り 多 様 に 用 い ら れ て 、 し か も い く つ か の 概 念 が 重 な り

っ て 用 い ら れ て い る の で 分 類 も 見 方 に よ っ て は う ご く こ と も あ る と 思 う 。 こ れ ら の 種 種 な る 用 例 を ふ ま え て

便 と 六 度 、 方 便 と 般 若 と の 係 わ り に つ い て 検 討 を す す め た い と 思 う 。 三

 

便

  『 大 智 度 論 』 に 於 い て 、

便 と 六 波 羅

と の 関 係 は ど の よ う に 説 か れ て い る か を

討 す る と 、 次 の 三 通 り が あ る と み て よ い か と 思 う 。 す な わ ち   方 便 が 六

で あ る と さ れ る 場 合 、 次 は

方 便 と 六

と が そ れ ぞ れ 別 異 で あ る と さ れ る 場 合 、 三 に

方 便 が 六 度 を 完 成 さ せ る

合 の 三 通 り で あ る 。   は じ め に  

便

と 六 度 と が 同 義 と し て 用 い ら れ る 場 合 で あ る 。 こ れ は 第 四 十 六 巻 に 次 の よ う に 説 か れ て い る 。   復 次 に 、 摩

は 、 初 発 心 に 願 を 作 す よ り 、 乃 ち 後 の

便 等 の 六 波 羅 蜜 に 至 る ま で な り 。   ( 大 正 二 五 、 三 九 四 下 ) と い う 。 ま た

便 力 に よ る 教 化 衆 生 が 説 か れ る が 、 「 衆 生 を 教 化 し 、 仏 世 界 を 浄 む る 等 は 、 皆 六 波 羅 蜜 の

に 存 り 」 と い う の で

る 。 す な わ ち 方 便 と 六 度 と は 同 義 に 説 か れ て い る 。 つ ま り 『 大 智 度 論 』 の 主 張 す る

薩 の も っ と                                 も 具 体 的 な

便 と は 六 波 羅

で あ る と 言 わ れ る の で あ る 。

(11)

NII-Electronic Library Service   他

方 便 と 六

と は 異 な っ た も の と し て 説 か れ る 場

が あ る 。 つ ま り 六

を 行 じ て の ち に 、

便 や 方 便 力 を 得 、 と 説 く 処 が み ら れ る 。

二 十 八 巻 に は 、   菩 薩 は 諸 の

使 、 煩 悩 、 欲 縛 、 三 毒 の 胎 中 に あ り と 雖 も 初 め 無 上 道 の 意 を 発 し 、 未 だ 所 作 あ る こ と 能 わ ず 。 而 も  

仏 の た め に

ば る 。 そ の 漸

に 当 に 六 波 羅 蜜 を 行 じ て 、 方 便 力 を 得 、

薩 の 位 に 入 っ て 乃 ち 一 切

を 得 る に   至 り 、 無 量 の 衆 生 を 度 し て 、 仏 種 法 種 僧 種 を 断 ぜ ず 、 天 上 、 世 間 の 浄 楽 の 因 縁 を 断 ぜ ざ る べ き を 以 っ て の 故 な り 。                                                                                   ( 大 正 二 五 二 六 七 上 )                                                                         @ と い う 。 「 更 に 一

し て 六 波

蜜 を 行 じ 、 更 に 一 説 し て 方 便 を 行 じ て 、 無 生 忍 を 得 」 る と い い 、

便 と 六 度 と に 隔 り が み ら れ る 。 「 六 波 羅 蜜 を

足 し 、 方 便 智 を 生 じ 、 諸 法 実 相 に 於 い て も 亦 住 せ ず 、 自 知

証 し て 他 語 に 随 わ ず 、                                      

し く は 魔

形 を 作 し

る も 心

惑 わ ず 」 と い う の で 、 方 便 と 六 度 と は そ れ ぞ れ 異 っ た も の を 示 し て い る 。 菩 薩 は 「 六 地 中 に 住 し 、 六 波 羅

を 具 足 し 、 一 切 諸 法 を 観 ず 、

だ 方 便 力 を 得 ざ る が 故 に 、 声 聞 辟 支 仏 に 堕 す る こ と を 畏

の で あ る ・ 「 乃 ち

薩 の 自 覚 は 方 便 力 を 得 る ・ と に よ ・ て 樹 立 し 、

便 道 の 可 能 は 単 に 一 切 法 空 の

に よ っ て で は な く 一 切 智 に 応 ず る 願 心 に よ っ て 基 礎 づ け ら れ ね ば な ら ぬ 。 亠 ハ 地 に 於 け る ⊥ ハ 波 羅 蜜 具 足 は 法 空 の 観 智 に                                                             よ っ て 成 立 す る が 、 方 便 道 の 成 立 は 応 智 の 願 心 に よ ら ね ば な ら な い 」 。 つ ま り 具 足 六 度 と 得

便 力 と は 同 一 同 時 で は な く 、 別 異 で あ る と 説 か れ て い る 。   さ ら に 、

 

方 便 が 六 度 を 完

さ せ る 説 示 の 場 合 で あ る 。 こ の 用 例 は 最 も 多 い 、

便 力 に よ り 六

が 成 就 し て

羅 蜜 と 称 す る こ と が で き 、 二 地 に 堕 す る こ と が な い と 示 さ れ る 処 で あ る 。 即 ち

は 「 方 便 心 な く し て 、 六 波 羅 蜜 を

じ ・ 空

無 作 の 中 に 入 れ ば ・

位 に 上 る こ と 能 わ

堕 の 菩 薩 は 二 地 に も 堕 さ ず 方 便 心 な く し て 、 六 度 を 行 ず れ ど も 大 乗

道 が 成 就 せ ず と い う の で あ る 。 さ ら に い く つ か の 例 を

げ て そ の 説 く 処 を み る と 、       方 便 思 想 の 展 開 ( 三 ) 一

39

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(12)

      西 山 学 報 第 七 十 二 巻 に は 、   般 若 波 羅 蜜 な く 方 便 な く 、 過 去 に 功 徳 を 作 す も 、

便 無 き が 故 に 邪 行 に し て 正 し か ら ず 。 ( 大 正 二 五 、 五 六 六 上 中 ) 第 五 十 六 巻 に は 、   要 を 以 っ て 之 を 言 へ ば 、 無 方 便 と は 、 六 波 羅 蜜 を 行 ず と 雖 も 、 内 に 我 心 を 離 る る こ と 能 わ ず 。 外 に 諸 法 の 相 を 取   り 、 所 謂 我 は 是 れ 施 者 、 彼 は 是 れ

者 、 是 れ 布 施 物 、 是 の 因

の 故 に 、 仏 道 に 至 る こ と 能 わ ず 。 此 と 相 違

る   を 、 是 れ 有 方 便 な り 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 二 五 、 四 六 三 中 )                                                                                         と い う 。 「 方 便

の 故 と は 六 波 羅 蜜 を 行 ず と 雖 も 、 福 徳 の 因 縁 を 起 し て 、

し て 心 、 諸 に 著 せ ず 」 、 「 も し 菩 薩 が 、 六 波 羅 蜜 等 の 諸 法 を 用 う れ ば 、

便 力 の 和

を 以 っ て の 故 に 能 く 行 ず 。 是 の 時 、 菩 薩 道 を 具 足 す 。 方 便 力 は 決                                                                       定 し て 、 是 の 布

等 の 三 事 を 得 ず 、 亦 是 の 三 事 を 離 れ ず し て 、 檀 波 羅 蜜 を 行 ず 」 。 諸 縁 が 和 合 し て 音 声 を 聞 く こ と                                                                                             が で き る よ う に 、 「 諸 仏 身 も ま た 是 の 如 く 六 波 羅 蜜 及 び

便 力 、 衆 の 因 縁 和 合 す る 辺 よ り 仏 身 生 ず 」 と い う 。                                                           「 方 便 力 を 以 っ て の 故 に 、 乾 慧 地 乃 至

薩 地 を 過 ぎ 、 仏 地 に 住 し 」 、 仏 道 を 成 就 す る 。 つ ま り 菩 薩 道 の 真 義 は

便                                       道 の 顕 現 に よ っ て 示 さ れ な け れ ば な ら な い 。   方 便 力 と 六 度 と の 和 合 が 説 か れ 、 「

便 」 の 強 調 が さ れ る と 更 に 新 ら た な

の 説 示 が み ら れ る 。 即 ち 方 便 力 に よ っ て 一 波 羅 蜜 を

ず れ ば 、 よ く 五

を 具 足 す る と 示 さ れ る 。

八 十 二 巻 に は 、   須 菩 提 菩 薩

は 大 利 根 の 相 を 聞 く

謂 一 波 羅 蜜 の 辺 に 、 能 く 五

蜜 を 生 じ 、 一 波 羅 蜜 を 行 じ て 、 即 ち   能 く 五 波 羅 蜜 を 具 す 。 … 中 略 … 是 の 事 は 希

な る が 故 に 仏 に 問 う 。 是 の 菩

は 発 心 よ り 已 来 、 幾 ば く に し て

く   是 の 如 き 方 便 を 得 る と 為 す や 。 仏

え た ま わ く 、 是 の

薩 は 発 心 よ り 己 来 、 大

を 除 け ば 、 余 の 衆 生 よ り

量   阿 僧 祗 劫 な り 。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 二 五 、 六 三 五 下 )

(13)

NII-Electronic Library Service と い う 。 こ の よ う に 一 波 羅 蜜 に 五 波 羅 蜜 を

足 し 、 ま た 六

ず る こ と に 一 切 の 福 徳 、 一 切 の 善 法 を 修 集 し 、 方 便 と 和 合 す る こ と が 力 説 て さ れ い る 。  

便 を 具 足 し 六

を 行 ず る こ と が 強 調 さ れ 、 方 便 を 具 足 す る も の は 、 諸 の 煩 悩 を 断 ぜ ず と も 諸 の 煩 悩 を 離 れ 断 じ た 者 に 勝 る と 説 か れ て い る 。 第 八 十 二 巻 に は 、   世 尊 よ 、 是 の

は 能 く 是 の 如 く 方 便 を

ず 、 所 謂 未 だ 諸 の 煩 悩 を 断 ぜ ず 、 未 だ 生 死 を 離 れ ざ る に 、 而 も 能 く 煩   悩 を 断 じ 、 生 死 の 法 を 離 る る

に 勝 る 。                                             ( 大 正 二 五 、 六 二 五 下 ) と い う の で あ る 。 以 上 の 調 査 検 討 に よ っ て 、   、

便 は 六 度 と 同 義 に 取 り 扱 う 処 が み ら れ 、

便 と 六 度 と は 別 異 な も の と し て

わ れ て 説 か れ 、 さ ら に

 

、 六 度 を 完 成 す る

便 が み ら れ た 。

便 と 亠 ハ

と の 関 係 は こ の 三 つ に 大 別 で き る か と 思 う 。   な か で も 『 大

論 』 で 最 も 強 調 さ れ て い る

は 、 大 乗 仏 教

薩 道 の 実 践 上 、 重 要 な 意 義 を も ち 、 六 波

蜜 を 行 ず る う え で 不 可

の 思 想 と し て 展 開 さ れ て い る の で あ る 。 そ し て こ れ が 六 度 の 上 に 第 七

便 波 羅 蜜 と し て 加 上 さ れ て く る の で は な い か と 思 う 。 一

41

N工 工一Eleotronlo  Llbrary  Servloe

 

便

 

乗 仏 教 で は 六

羅 蜜 は 菩 薩 の 重 要 な 実

徳 目 と し て

か れ て い る が 、   『 大 智 度

』 に お い て は 、 六 波 羅 蜜 を 、 ま た 般 若 波 羅 蜜 を 如 何 に 説 い て い る か 、 さ ら に 般 若

羅 蜜 と

便 と の 関 係 は ど う か に つ い て 検 討 し た い と 思 う 。   ま ず 前 五 波 羅 蜜 と 般 若 波 羅 蜜 と の 関 係 に つ い て は 、   「 ⊥ ハ 波

蜜 は 、 般 若 波 羅 蜜 を

と 為 す 」 。 ま た 「 般 若 は 、 是 れ 仏 道 の

と い ・ て ・

蜜 は 六

蜜 の 根 本 ・

道 の

本 で あ る と い ・ て ・

五 波 羅 蜜 と

わ な い       方 便 思 想 の 展 開 ( 三 )

(14)

      西 山 学 報 の で あ る 。 そ の 理 由 に つ い て は 、 第 五

六 巻 に は  

若 波 羅

よ り 五 波 羅 蜜 を 生 ず と は 、 後 品 の

に 、 仏 自 ら 説 き た ま わ く 方 便 、 智 慧 、 布 施 、 回 向 な き は   檀 波 羅

と 名 け ず 。

八 空 は 即 ち 是 れ

慧 な り 。

慧 の 因 縁 の 故 に 、 四 念 処 乃 至 一 切 種 押 を 生 ず 。 尽 く 是 れ 智   慧 に 非 ず と 雖 も 性 同 じ き を 以 っ て の

に 、 慧 を 以 っ て 主 と 為 す 。 是 の 故 に 般 若 よ り 生 ず と い う 。                                                                                   ( 大 正 二 五 、 四 六 五 下                                                                 と い う の で あ る 。 し か し 一

に は 「 五

は 、 般 若

羅 蜜 と 同 名 同 事 」 と い っ て 、 般 若 波 羅 蜜 と 五 波 羅 蜜 と は 同                                                                                   等 に 扱 わ れ て い る が 、 も し 般 若 波

蜜 を 離 れ て は 、 五 波 羅 蜜 等 を 修 す れ ど も 仏 道 は

就 せ ぬ と す る か ら 、 般 若

蜜 を 得 れ ば 、 こ の 五 波 羅 蜜 と 同 等 と な る と 言 う の で あ る 。 こ の 二 者 の 関 係 を 第 八

二 巻 は 譬 喩 を 出 し て 説 い て い る 。 す な わ ち 、   譬 え ば 、 善 御 駟 を 駕 す れ ば 平 道 を 失 せ ず 。 馬 は 車 を 致 す 力 有 り と 雖 も 、 若 し 御

な け れ ば 、 則 ち

至 有 る こ と 能   わ ざ る が 如 し 、 布 施 等 も 是 の 如 く 、 功 徳 果 報 の 力 有 り と 雖 も 般 若 の 調 御 な け れ ば 、 仏 道 に 至 る こ と 能 わ ず 。 是   の

種 の 譬 喩 の 如 く 、 五 波 羅 蜜 は 般 若 の 中 に 入 れ ば 、 差 別 無 し と 雖 も 是 の 事 を 以 っ て の 故 に 、 而 も 般 若 波 羅 蜜 は   最

最 妙 な り 。                                                                   ( 大 正 二 五 、 六 三 八 上 ) と い う 。 あ ら ゆ る 善 法 は 般 若 波 羅 蜜 を 根 底 と し て い る 。

 

「 五 波 羅 蜜 は 般 若 を 離 る れ ば 、 波 羅 蜜 の

字 を 得 ず 、 五 波 羅 は 盲 の 如 く 般 若 波 羅 蜜 は 眼 の 如 し 。 五 波 羅 蜜 は 坏 瓶 に 水 を 盛 る が 如 く 、

若 波 羅 蜜 は 熟 瓶 に 盛 る が 如 し 。 五 波 羅

は 鳥 の 両 翼 な き が 如 く 、 般 若 波 羅 蜜 は 有 翼 の 鳥 の 如 し 。 是 の 如 き 等 の 種 種 の 因 縁 の 故 に 般

羅 蜜 は 能 く 大 事 を 成 ず

と い ・ て ・

波 羅

六 波 羅

根 基

な る も の と い う ・ し か し

は 「

・ の 道 を 断 じ 」 、

想 分 別 を 越 え た も の で あ る か ら 、 般 若 波 羅 蜜 の み で は 功 徳 を 具 足 せ ぬ と い う 。 つ ま り 「 若 し 但 、 般 若 の

(15)

NII-Electronic Library Service                                                                     み を 行 じ て 、 五 法 を 行 ぜ ざ れ ば 、 則 ち 功 徳 を 具 足 せ ず 、

な ら ず 、 妙 な ら ず 」 、 般 若 と 五 法 、 す な わ ち 五 波 羅

と 和 合 し て 功 徳 を

足 す る の で あ る 。 次 に ・

蜜 は 六 度 の 基 底 に あ る

そ れ は 如 何

か れ て い る か を 検 討

る と ・

け ら れ る と 思 う 。 一 つ は 「 語 言 の 道 を 断 じ 」 、

想 分 別 を 超 え た 絶 対 真 空 の

で あ り 。 二 つ に は 「 よ く 善 道 を 行 ず る 」 妙 有 の 面 で あ る 。 般 若 波 羅 蜜 が

対 立 絶 対 な る 真 空 を 示 す 例 を い く ら か

げ る と 次 の よ う で あ る 。                                       般 若 波 羅 蜜 は 、 語 言 の 道 を 断 ず と 説 く 。                                 般

羅 蜜 は 、 分 別 す る 所 な し 。                                       般

羅 蜜

に は 、 一 切 の 諸 観 を

す 。                                     是 の

若 波 羅 蜜 に は 、 一 定 の 相 な し 。                                                                                       等 で あ る 。   「 般 若 波 羅 蜜 を

む と は 所 謂 、 諸 法 の 畢 竟 空 を 観 じ 、 衆 生 の 根 を 離 れ 、

相 を 離 る 」 。 「 畢 竟 空 を 得                                                                                                 れ ば 、 即 ち 是 れ 般 若 波 羅 蜜 の 智 慧 な り 」 。 ま た 「 諸 法 の 不 生 不 滅 を 知 る 」 こ と や 「 諸 法 の 不 生 の

を 観 ず 」 る こ と を 、   「 般 若 波 羅 蜜 を 得 る 」 と も 、   「

若 波 羅 蜜 を 生 ず 」 と も

い て い る 。 即 ち 「 悉 く 諸 法 の 実 相 を 知 る 智 慧 を

波 羅 蜜 と 名 つ く 」 の で あ る 。                                                                         般 若 波 羅 蜜 に は 、 定 相 が な い の で 「 無 相 の 相 」

 

「 一 相 無 相 」

 

相 」 等 と 示 さ れ て い る 。 つ ま り 般 若 波 羅 蜜 の 真 空 な る

格 、 畢 竟 空 不 可 得 が 示 さ れ て い る 。 他

、 般 若 波 羅 蜜 に 妙

格 を 示 す と こ ろ が あ る 。 般 若

は 畢

空 不 可 得 で あ る か ら

無 と 理 解 さ れ る     方 便 思 想 の 展 開 ( 三 ) 一

43

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(16)

      西   山 学 報 か も 知 れ ぬ が 、 こ の 点 空 無 断 滅 に 堕 す る こ と な く 、 自 由 躍 動 の 妙 有 的 性 格 が 説 か れ て い る 。 即 ち 「 是 の

羅 蜜                                   は 、 畢 竟 空 と

、 而 も 断 滅 に 堕 せ ず 」 、 「

を 離 れ 、 無 を 離 れ 、 非 有 非 無 を 離 れ 、 愚 痴 に 堕 せ ず し て 、

善 道                             @ を 行 ず る 。 是 を

若 波 羅 蜜 と 為 す 」 と い う 。 こ の 般 若 の は た ら き は 、

 

「 色 等 の 五

観 も 其 の 他 一 切 の 法 観 も 、 凡 て                                                               凡 夫 の 意 識 思

別 に 於 け る 五 蘊 観 と は 全 く 異 な っ た 真 空 妙 有 と し て 」 展 開 し て い る 。 二 、 三 の 例 を 挙 げ る と 、

六 巻 に は 、   般 若 波 羅 蜜 は 、 諸 の 観 法 を 滅 す と 雖 も 而 も 智 慧 力 の 故 に 、 名 け て 能 わ ざ る

な く 、 観 ぜ ざ る 所 な し と

す 。 能   く 是 の 如 く 、 二 辺 に 堕 せ ざ る こ と を 知 る 、 是 を

若 と 相 応 す と

す 。

 

   

 

          ( 大 正 二 五 三 二 七 上 ) ま た 第 七 十 巻 に は 、   般 若

羅 蜜 は 二 辺 を 離 れ て 中 道 を 説 く 空 な り と 雖 も 而 も 空 に 著 せ ざ る が

に 、 為 め に 罪 福 を 説 き 、

福 を 説 く   と 雖 も 、

に 邪 見 を 生 ぜ ず 。 亦 空 に 於 い て 礙 な し 。

 

   

 

 

   

 

 

 

   

 

 

  ( 大 正 二 五 、 五 五 一 上 )                                                                               と い う 。 す な わ ち 「 般 若 波 羅 蜜 は 空 な り と 雖 も 、 も し 修 す る 所 有 れ ば 能 く そ の

を 成 ず 」 。 菩 薩 は 「 能 く 諸

に 於                                                                                 い て 自 在 を 得 、 般 若 力 の 故 に 、 能 く 意 に 随 っ て

在 に 諸 法 を 説 き 」 、 「 能 く 衆 生 を

利 す 」 る の で あ る 。

八 巻 に は 、   若 し 菩 薩 摩 訶

は 、 不 可 得 空 を 知 っ て 、 還 っ て 能 く 諸 法 を 分 別 し 、 憐 愍 し て 衆 生 を 度 脱 す 。 是 れ 般 若

の 力   と 為 す 。                                                                       ( 大 正 二 五 、 一 九 五 下 )                                                                       と い う 。 即 ち 仏

薩 が 「 意 に 随 っ て 衆 生 を 利 益 す る は 、 皆 是 れ 般 若 波 羅

の 力 」 で あ る と い う 。 「 能 く 「 切

を 照                                                                                                       し 、 菩 薩 を 守 護 し 、 諸 の 苦 悩 を 救 い 、 所 願 を

し 」 て 「 能 く 菩 薩 を 利 益 し て 阿

多 羅 三 藐 三 菩 提 を 得 せ し め 」 、 衆                           生 に 「 無 相 の

を 得 せ し め 」 る 面 が み ら れ る の で あ る 。   こ の よ う に

に 二 面 の は た ら き が み ら れ る の で あ る 。 つ ま り 日 常 の 凡 愚 の 思 慮 分 別 を 超 え 、 一 点 の く も

(17)

NII-Electronic Library Service り も 残 さ ぬ

竟 清 浄 に し て 、 語 言 道

の 世 界 を

し 、 浄 不

の 二 辺 を 超 え 、 し か も 還 っ て 諸 法 を 分 別 し 利 益 す る 面                                                                                   が 説 か れ て い る 。 こ の 般 若 波 羅 蜜 は 「 畢 竟 清 浄 な る が 故 に 、 力 無 な く 、 力 に 非 ざ る こ と な し 」 と 言 わ れ る の で あ る 。   次 に 、

便 の 性 格 に つ い て は 、 般

波 羅 蜜 と 同

、 観 空 、 不 取 相 と 妙 有 の 二 面 が 説 示 さ れ て い る 。 は じ め に 方 便                                                                                                     の 不

、 観 空 に つ い て は 、 ま ず 方 便 な き

薩 は 「

を 観 ず れ ば 、 則 ち 相 中 に 堕 す が 故 に 般 若 波 羅 蜜 の 行 を 失 す 」 、                                                                     「 六 波 羅 蜜 を 行 ず と 雖 も 、 内 に 我 心 を 離 る る こ と 能 わ

、 外 に 諸 法 の 相 を 取 る 」 。 「 新 行 の

薩 は 、 方 便 力 な し 、 是                                                     の 般 若

羅 蜜 を 聞 い て 、 憶 想 分 別 し 尋 求 し て 取 ら ん と 欲 す 」 の で あ る が 、  

「 般 若 波 羅 蜜 の 中 に 於 い て 、 方 便 力 を 得 る が 故 に 、 亦 た

若 波 羅 蜜 に 著 せ ず 、 一 切 の 煩

を 滅 し 、 一 切

方 の 諸 仏 を 見 た て ま つ り 無 生 法 忍 を 得 、 三                       界 を 出 で て 薩 婆 若 に 至 る 」 。 「 深 く

若 波 羅 蜜 の 方 便 力 に 入 る が 故 に 、 般 若 波 羅 蜜 に 著 せ

、 但 だ 、 如 、 所 謂 諸 法                                                                   @ 実 相 を

じ 」 、 方 便 力 の 故 に 「 布

を し て 如 寂 滅 の 相 な ら し む 」 の で あ る 。 こ れ に 対 し て 方 便 あ る

薩 は 、 浬 槃 と 世 間 に 著 せ ず 、 「

を 欲 す る も 、 方 便 力 の 故 に 、 浬 槃 の 証 を 取 ら ず 、 … 中 略 … … 一 切 の 法 性 は 空 に し て 涅 槃 も           亦 た 空 な り 」 と 知 っ て 次 の よ う に 言 う 。 第 八

五 巻 に は   当 に 一 切 法 は あ ら ゆ る 相 無 し と 知 る べ し 、 是 を 菩

の 方 便 と

つ く 。

 

 

 

 

 

 

 

  ( 大 正 二 五 、 六 五 四 中 ) と い う 。 つ ま り 方 便 に 「 観 一 切 法 空 」 の 智 を も っ て

示 さ れ て い る の で あ る 。 一

45

N工 工一Eleotronlo  Llbrary  Servloe

  他 方 、 方 便 に お い て も 真 実 よ り 還 っ て 妙 有 の は た ら き を 示

と こ ろ が あ る 。

 

便 あ る

薩 は 、 一 切 法 は 畢

空 に し て 、 性 は 無 所 有 な り と 知 っ て 、 而 も 能 く 還 っ て 善 法 を 起 し 、 般 若 に 是 の 如 く 分 別 あ る を 以 っ て 、

し ょ く 邪 疑                                     を 除 く も 浬 槃 に 入 ら ず 、 是 を

便 と な す 」 と い っ て い る 。 即 ち 語

分 別 を 超 え た 「 諸 法 実 相 は 説 く べ か ら ず と 雖 も 、       方 便 思 想 の 展 開 ( 三 )

(18)

      西 山

報                                                                                         而 も 仏 は

便 力 を 以 っ て 説 き 」 、

 

「 強 い て 名 字 語 言 を 作 し 、 衆 生 を し て 解 を 得 せ し む 」 の で あ る 。 ま た 第 六 十 五 巻 に は   般

の 甚 だ 深 き が 如 く 論 議 の

便 力 の 故 に 、 種 種 に 説 い て 能 く 浅 易 な ら し む れ ば 、 乃 ち 小 智 の 人 に   至 る ま で

能 く 信 解 す 。            

 

   

 

   

 

   

 

                        ( 大 正 二 五 五 一 八 上 )                                                               と い う 。 即 ち 「 般 若 の 中 に 安 住 し て 、 方 便 力 を 以 っ て 、 衆 生 を 教 化 し 」 、 「 衆 生 を し て 、 福 徳 の 因 縁 を 種 え し め ん           と 欲 す る 」 の で あ る 。                             ま た 仏 や

薩 の 方 便 の 活 動 は 次 の よ う で あ る 。 第 八 十 二 巻 に は 、  

れ も し

便 力 を 以 っ て せ ざ れ ば 、 則 ち 度 す る こ と 得 べ か ら ず 。 方 便 と は 金 色 身 、 三 十 二 相 、 八 十 随 形 好 、

量   の 光 明 、 神 通 変 化 、 能 く 一 指 を 以 っ て

三 千 大 千 国 土 を 動 か し 、

音 も て 法 を 説 い て 厭 う こ と な し 、 色 身 、

  力 、 四 無 所 畏 、 十 八 不 共 法 、 無 礙 解 脱 、 一 切 種 智 大 慈 大 悲 等 の 無 量 の 諸 の 仏

を 具 足 し 、 然 る 後 に 能 く 衆 生 を  

化 す る に 、 衆 生 は 必 ず 能 く 信 受 す 。

 

   

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ( 大 正 二 五 、 六 二 六 下 ) す な わ ち 、

 

「 菩 薩 は 般 若 波 羅 蜜 の 力 を 以 っ て の 故 に 、 能

是 の 如 き の

便 を 成 就 し 、 種 種 に 身 を 作 し 、 能 く

国                   土

の 衆 生 を 利 益 す 」 。 方 便 の 妙 有 的

動 は 、 身 口 意 の 三 業 を 以 っ て 超 日 常 的 な 金 色 身 よ り 、 平 凡 な る 姿 の 身 に 至 る ま で 種 種 に 身 を 化 作 し て 化 益 す る と 説 か れ て い る 。   以 上 の

の 結 果 般 若 と 方 便 と は ほ ぼ 同

で あ る と み て よ く 、 第 八

五 巻 に は 、   方 便 と は 、 所 謂 般 若 波 羅 蜜 な り 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 二 五 、 六 五 八 上 ) と あ る 。 し か し 「 般 若 即

便 で あ れ ば 、

若 波 羅 蜜 の 外 に 方 便 を 必 ず し も 斯 く ま で 重 要 視 す る 必 要 は な い に も 拘 ら ず

て 「

便 」 ま た は 「

便 力 」 を 重 説

る 所 以 は 、 第 一 に 二 乗 地 の

若 思 想 と

び て 二 乗 地 に 堕 せ ざ ら し む る こ

(19)

NII-Electronic Library Service と 、 第 二 に

羅 蜜 は 、

ち ろ ん 知 と 行 と 、 理 論

践 面 を 内 具 す る 体 験 智 で あ り 実 践 智 で も あ る が 、 然 し 智 と い う 語 が 示

如 く 、 智 的 理 論 的 自 受 用 面 が 表 面 的 に あ る か ら 、 此 を 補 う た め に 、

の 「 知 」 の 上 に 、

 

「 成 る 」 「 行 ず る 」 「

現 し 現 成 す る 」 と い う

極 的

若 の 作 用

と 、 並 に 他 受 用 面 た る 「 他 に 及 ぼ す 」 面 と を 、 特 に 「

                                        便 」 ま た は 「

便 力 」 と し て 明 に せ ん と し た 」 の で あ ろ う 。

 

「 方 便 は 即 ち 是 れ 智 慧 な り 、 智 慧 は

浄 な る が 故 に 変                   じ て 方 便 と

つ く 」 と い わ れ る の で あ る 。 ま た 第 百 巻 に は 、   般 若 波 羅

に 方 便 あ り と 雖 も 、

便 に 般 若 波 羅

と 雖 も 、 而 も 多 に 随 っ て 名 を 受 く る と 説 く 、 般 若 と 方   便 と は

是 れ 一 な り 、 用 ふ る 所 の 少 し く 異 る を 以 っ て の 故 に 別 に 説 く な り 。           ( 大 正 二 五 、 七 五 四 下 ) と い っ て 、

と 方 便 と の 若 干 の 相 異 を 示

。 第 七

一 巻 に は 、   般 若 波 羅

は 能 く 諸 の 邪 見 煩 悩 の 戯

し 、 将 に

空 の 中 に 至 ら ん と し 、 方 便 し て 将 に 畢

空 を 出 で ん と す   る な り 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 二 五 、 五 五 六 中 )                                                                       と い う 。 即 ち 「

す る 所 な き を 智 慧 相 と な し 、 能 く

を 成 ず る を 方 便 相 と な す 」 の で あ る 。 つ ま り 般 若 波 羅 蜜 を 行 じ て 、 諸

空 に し て 、 空 も 亦 ま た 空 な り と 観 じ 、 諸

を 滅 し て 、

礙 の 般 若 波 羅

を 得 て 、 大 悲 の 方 便 力 を 以 っ                           て 、 還 っ て

の 功 徳 業 を 起 す と い う 。 こ こ で は 般 若 と

便 と が 同 義 に 用 い ら れ ず

便 は 専 ら 「

功 徳

」 の 義 に 用 い ら れ て い る 。 し か も こ の 方 便 は 、

羅 蜜 の

の 二 面 を 完 成 さ せ る も の と し て 説 示 さ れ て い る 。 第 二 十 七 巻 に は 、   方 便 と は 、

若 波 羅 蜜 を 具 足 す る が

に 、 諸 法 の 空 を 知 り 、 大 悲 心 あ る が 故 に 、 衆 生 を 憐 愍 し 、 是 の 二 法 に 於 い て 、 方 便 力 を 以 っ て 染 著 を 生 ぜ ず

の 空 を 知 る と 雖 も 、

便 力 あ る が 故 に 亦 衆 生 を

て ず 、 衆 生 を

て ず と 雖 も 、 亦 諸

の 実 に 空 な る こ と を 知 る 。

 

 

   

 

 

   

 

 

 

   

 

 

   

 

 

    ( 大 正 二 五 、 二 六 二 下 )       方 便 思 想 の 展 開 ( 三 ) 一

47

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(20)

      西 山 学 報 と い っ て 、 方 便 は 空 の 一 辺 や 悲 心 の 一 辺 に 偏 よ ら な い 義 を 示 し て い る 。 即 ち 「 若 し 諸

空 な れ ば 衆 生 な し 、 誰 か 度 す べ き 者 ぞ 。 こ の 時 、 悲 心 便 ち 弱 し 。 或 時 は 衆 生 を 以 っ て 愍 む べ し と す る も 、 諸 法 の 空 観 に 於 い て 弱 し 。 若 し 方 便 力 を 得 て 、 此 の 二 法 に 於 い て 等 し く し て 偏 党 な け れ ば 、 大 悲 心 は 諸 法 実 相 を 妨 げ ず 、

法 実 相 を 得 る も 大 悲 を 防                                                                         げ ず 、 是 の 如 く し て 方 便 を 生 ず 」 と い う 。   「 是 の 時 、 便 ち 菩 薩 法 位 に 入 る 」 の で あ っ て 、 こ の

便 は 「 得 入 菩 薩 法 位 」 に 重 要 な 意 義 を も つ 、 つ ま り 方 便 は 観 空 と 大 悲 心 を 調 和 し 、 大 乗

薩 道 を 完

さ せ て い る の で あ る 。                 五

 

 

 

 

 

め   以 上 、 検 討 し た と こ ろ を 要 約 す る と 次 の よ う に な る 。   一 、

 

智 度 論 」 で は 、 方 便 の 意 義 が 多 種 多 様 に 用 い ら れ て い る 。 こ れ を 十 八 に 分

し た 。 そ れ ら は ー 、 権 巧 方 便 。

2

、 施 造 方 便 。

3

、 化 他 方 便 。

4

、 前 三 い ず れ に も と れ る 方 便 。

5

、 虚 仮 方

便

6

、 釈 尊 の 生 涯 。

7

、 八 聖 道 、 正 精 進 。

8

、 正 念 、 智 慧 、 慈 悲 心 。

9

読 誦 、 思 惟 、 籌 量 。

10

、 念 増 長 、 聞 持 陀

尼 。

11

、 実 に 対

る 仮 り の 説 。

12

、 除 五

、 五 法 等 。

13

、 一 に よ く 多 を 摂 し 、 多 を よ く 一 と す る 。

14

、 不 可 思 議 力 。

15

、 て だ て 、 工 夫 。

16

、 般 若 波 羅 蜜 道 に 対 す る 方 便 道 。

17

、 諸 法 の 九 事 の 中 の 一 。

18

、 智 慧 。 な ど で あ る 。 こ れ ら の う ち 、

1

5

ま で は 『 小 品 般 若 』   『 大 品 般

』 を 引 き 継 ぎ 論 じ ら れ て い る も の で あ る が 、

6

以 降 の も の は 『 大 智 度 論 』 独 自 の も の で あ る と い っ て よ い と 思 う 。   二 、

便 と 六 度 と の 関 係 に つ い て は 、 三 通 り の 説 示 が み ら れ た 。 す な わ ち   方 便 と 六

と は 同 義 で あ る と さ れ る 場 合 、

便 と 六 度 と は 異 っ た も の と し て 説 か れ る 場 合 、

 

方 便 が 六 度 を 完 成 さ せ る

合 で あ る 。 こ れ ら の う ち

 

が も っ と も 力 説 さ れ て い る 。 こ の

 

の 概 念 が 進 展 し て 、 方 便 が 六 度 の 上 に 第 七 方

便

蜜 と し て 加 上 さ れ て く る の

参照

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