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蒸発における水の酸素・水素同位体比の変化について 

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Academic year: 2022

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蒸発における水の酸素・水素同位体比の変化について 

和歌山大学大学院システム工学研究科  学生会員  ○宮原  啓 和歌山大学システム工学部  正会員  井伊博行 和歌山大学大学院システム工学研究科  学生会員  宮路和葉

1  はじめに 

近年,人間による乱雑な水使用により水不足の問題 が起こっており,今後,計画的に水を使用していくこ とが求められる1).水資源管理を行う上でダムや貯水池 の水の漏水量を把握することは重要である.一つの方 法として蒸発パンを利用した蒸発量の推定が行われて いる.しかし,蒸発パンは実際の池と蒸発面積が異な るため,スケール効果により正確な蒸発量を測定する ことは困難である.また池の滞留時間が長い場合,現 地での長期間の観測が必要となる. 

同位体比を用いた蒸発に関する研究はAllison et al.

2) ,Gibson et al. 3)などによって以前からなされてお り,蒸発量を求める方法も少なくはない.しかし,同 位体比を用いた蒸発に関する式には様々なパラメータ ーを含んでおり,値が分からないパラメーターもある ので,実用化されていない. 

y = -0.0033x + 0.38 R2 = 0.7154

0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30

40 50 60 70 80

平均湿度(%) 18O/蒸発率

低温恒温器内 屋外

図 1 蒸発率とδ18Oの関係 

そこで,本研究では気温といった全てのパラメータ ーを考慮して計算するのではなく,湿度と同位体比を 用いて蒸発に関する式を簡略化することを目的とした.

ここでの蒸発率とは,蒸発量を蒸発する前の水量で割 ったものである.  

       図 2  湿度とdδ18O/蒸発率の関係

平均気温 / 平均湿度

-10 -5 0 5 10 15 20 25 30

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

蒸発率(%) δ18O()

7.3℃ 60.6% 7.3℃ 60.6%

8.8℃ 71.9% 8.8℃ 70.7%

9.9℃ 64.2% 12.2℃ 62.3%

19.8℃ 69.6% 19.8℃ 69.6%

24.8℃ 74.3% 24.8℃ 74.3%

24.8℃ 52.3% 24.8℃ 43.0%

24.9℃ 55.6% 24.9℃ 43.1%

25.3℃ 66.6% 27.5℃ 67.2%

28.0℃ 66.8% 30.0℃ 41.2%

  2  研究方法 

0.05  0.10  0.15  0.20  0.25  0.30 

0.0  20.0  40.0  60.0  80.0  100.0 

18O/蒸発率

1日平均蒸発量(g) 低温恒温器内

屋外

蒸発実験は,低温恒温器と和歌山大学システム工学 部B棟の屋上の常に日光が当たる場所に屋外簡易蒸発 装置を設置し行った.蒸発実験は全部で 18 回行った.

蒸発実験に使用した水は,和歌山大学の水道から採水 したもので,その水を容量 5Lのポリビンと容量 2Lの ポリビンに入れた.水を蒸発させている期間中,数日 おきに質量を測定し,残量水の採水を行った.実験期 間中の低温恒温器内の温度と湿度は,1時間おきに記憶 計により記憶し,そのデータを使用した.実験期間中 の屋上の温度と湿度は,気象庁の気象統計情報の気象 データを使用した4).酸素同位体比・水素同位体比の測 定は,水素・炭酸ガス平衡法によって前処理を行った 後,同位体比測定用質量分析装置(Finnigan Mat Delta Plus)で測定した.

  図 3  1 日平均蒸発量とδ18O/蒸発率の関係

3  蒸発実験による水の同位体比の変化 

  水の同位体比は,空気中の水蒸気の同位体比と湿度

によって支配されることが知られているので,湿度に 着目し蒸発実験を行った. 図 1 に蒸発率とδ18Oの関係 を示す.どのサンプルも蒸発率が高くなるにつれて,

酸 素 同 位 体 比 の 値 も 大 き く な っ て い る . 蒸 発 率 が 0~40%まではおおよそ同じような値をとっているが,

蒸発率が 40%を超えると同じ蒸発率に対する酸素同位

体比の値にばらつきがあった.蒸発に伴い水の同位体 キーワード  蒸発  同位体分別  水収支  湿度  天水 

連絡先    〒640-8510 和歌山市栄谷 930 番地  和歌山大学システム工学部  TEL 073-457-8376  土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

‑389‑

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(2)

比の値が大きくなり,蒸発の仕方に変化が生じたと考え られる.図 2に湿度と酸素同位体比の変化量(dδ18O)/

蒸発率の関係を示す.これらには負の相関関係があり,

その関係式は y = - 0.0033x + 0.38(x:平均湿度,y:

酸素同位体比の変化量)であった.低温恒温器内と屋外 で蒸発実験を行ったが,ほぼ同じ湿度と酸素同位体比の 変化量/蒸発率の関係式上にプロットされた.

この関係式を用いて蒸発率を算出する.平均湿度が

70.0%,酸素同位体比の値が蒸発により1‰変化したと

きの湖(滞留時間5年,面積100km2,体積3km3と仮 定する)の場合,湖に水が流入してから流出する間(滞

留時間5年)に6.7%蒸発したことになり、年間蒸発量

は約400mmとなる.年間蒸発量は湖の体積に蒸発率を

かけ,面積で割り,滞留時間で割って算出した.

図 4  蒸発におけるδ18OとδDの関係

天水線 δD = 8*δ18O + 10

-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 70

-15 -10 -5 0 5 10 15

δD(‰)

δ18O(‰) 7.3℃ 60.6% 7.3℃ 60.6%

8.8℃ 71.9% 8.8℃ 70.7%

9.9℃ 64.2% 12.2℃ 62.3%

19.8℃ 69.6% 19.8℃ 69.6%

24.8℃ 74.3% 24.8℃ 74.3%

24.8℃ 52.3% 24.8℃ 43.0%

24.9℃ 55.6% 24.9℃ 43.1%

25.3℃ 66.6% 27.5℃ 67.2%

28.0℃ 66.8% 30.0℃ 41.2%

平均気温/平均湿度

y = -0.0991x + 7.816 R² = 0.7832

4.0  4.5  5.0  5.5  6.0  6.5  7.0  7.5  8.0  8.5  9.0 

-10.0  0.0  10.0  20.0  30.0 

δD/δ18O

平均気温(℃)

低温恒温器内 屋外

‐1.9

4  蒸発速度 

図 3に 1 日平均蒸発量とdδ18O/蒸発率の関係を示す.

1 日平均蒸発量が少ない(蒸発速度が遅い)ほど,dδ18O / 蒸発率の値が小さい傾向がある.つまり,蒸発量が同 じでも一定量の水が蒸発する時間が異なれば蒸発率 1%に対するdδ18Oの値は異なる.これは,H218Oの蒸気

圧はH216Oの蒸気圧より低いため,蒸発によって水の酸

素同位体比は大きくなる.実験中の水の蒸気圧が実験前 の水の蒸気圧よりも小さくなり,蒸発に関わる大気圧

(水蒸気分圧+乾燥空気分圧)に対して小さくなり蒸発 しにくくなる.しかし,気温が高い環境では飽和水蒸気 圧は高い.よって気温が高い場合,同位体比が大きくな ることによる蒸気圧の低下が蒸発に与える影響は小さ いと考えられる.そのため,同じ蒸発率に対する酸素同 位体比の値にはばらつきがあったと考えられる.

  図 5  平均気温とδD/δ18Oの関係 

5  蒸発におけるδ18OとδDの関係 

図 4に蒸発におけるδ18OとδDの関係を示す.蒸発中の 平均気温が高いほど天水線から離れる傾向がある.また 図 5に平均気温とδD / δ18Oの関係を示す.これらに負の 相関がみられ,その関係式は y = - 0.0991x + 7.816(x:

平均気温,y:δD/δ18O)であった.この関係式より,

δD/δ18Oの値が 8(= 天水線の傾き)のとき,平均気 温はおよそ-1.9℃である.つまり,天水は過冷却であっ た水滴から生成されていることがわかる.

6  まとめ

蒸発速度が異なれば蒸発率1%に対するdδ18Oの値は 異なっていた.そのため同じ蒸発率に対する酸素同位体 比の値にばらつきがあったと考えられる.

湖水を用いた低温恒温器内での蒸発実験により,蒸発 率と同位体比の関係を導き出すことで,湖や池の平均湿 度と蒸発による同位体比の変化量から,蒸発率を推定す ることが可能である.またδD / δ18Oの値と気温の間に

負の相関がみられた.この関係より,天水は過冷却であ った水滴から生成されていることがわかる.

参考文献: 

1)   宮路和葉・岡田啓・井伊博行・長林久夫:酸素同位 体比を利用した猪苗代湖における蒸発率の簡易測定 法の提案,水工学論文集,第52巻,pp.289-294, 2008.

2)   Allison, G.B., Brown, R.M. and Fritz, P : Estimation of the isotopic composition of lake evaporate., Jour, of Hydrol. , 42, pp.109-127, 1979.

3)   Gibson, J.J., Edwards, T.W.D., Bursey, G.G. and Prowse, T.D. :  Estimating evaporation using stable isotopes: quantitative results and sensitivity analysis for two catchments in northern Canada, 24, pp.79-94, 1993.

4)   気象庁のホームページ:過去の気象データ:

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

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参照

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