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自然科学研究科バイオサイエンス専攻

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Academic year: 2022

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氏 名 授 与 し た 学 位 専攻分野の名称 学 位 授 与 番 号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位論文の題目 論 文 審 査 委 員

工藤 大蔵 博 士 農 学

博甲第3659号 平成20年 3月25日

自然科学研究科バイオサイエンス専攻

(学位規則第5条第1項該当)

抗腫瘍性酵素L-メチオニンγ-リアーゼの精密立体構造解析に基づく機能解析 教授 稲垣 賢二 教授 神崎 浩 准教授 田村 隆

学位論文内容の要旨

土壌細菌Pseudomonas putida由来L-メチオニンγ-リアーゼは,ピリドキサール5’-リン酸(PLP)依存性 酵素であり,これまで詳細が不明であった本酵素の立体構造を,1.8Åの解像度で完全に解明した。それ によると,活性中心形成にはPLP結合ドメインと隣接サブユニット由来のN末端ドメインとの会合が必 要で,特にTyr114とCys116,隣接サブユニット由来のLys240及びAsp241,Tyr59,Arg61の6残基からな る水素結合ネットワークが存在することが,本酵素の効率的な触媒回転に必須である。中でも,Cys116 残基はシスタチオニンγ-シンターゼやシスタチオニンβ-リアーゼなどが含まれるγファミリー酵素群に おいて,特徴的な残基であることが分かった。本研究では,部位特異的変異導入法や速度論解析,熱力 学的解析などにより,Cys116残基の機能を明らかにすることを目的とした。

このCys116残基はL-メチオニンのγ脱離反応において重要な残基であり,基質認識にも関与しているが,

脱離反応への直接的な寄与はないことを明らかにした。また,補酵素PLPとスタッキング作用している

Tyr114は,L-メチオニンのγ脱離反応に必須であるが,エステル型の基質に対してTyr残基は必須ではな

いことが判明した。C116S変異酵素は,野生型酵素と比べてDTT非存在下でも触媒効率が変化せず,抗 腫瘍性酵素としての安定性が向上したと考えられた。

また,これまでに本酵素のN末端において特異的な切断がおき,失活するという結果が経験的に得ら れていた。その切断酵素を用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計

(MALDI-TOF/MS)及びN末端アミノ酸解析を駆使し,切断部位がCys49-Phe50間であることを同定した。

変異導入により作製したC49Kは活性に影響があるため,その周辺残基について変異導入したA48K及び A51Kが,ポリエチレングリコール修飾の候補として挙げられた。

近年,放線菌Streptomyces avermitilisのゲノム解析が完了し,L-メチオニンγ-リアーゼと推定される遺 伝子が推定された。そこで,本遺伝子をクローニングし,発現させ,精製し,速度論解析を行ったとこ ろ, P. putida由来のL-メチオニンγ-リアーゼと比べるとL-メチオニンに対するγ脱離活性は約8%と低い が,放線菌属でL-メチオニンγ-リアーゼ活性を有していることを本研究で初めて同定した。

本研究では,L-メチオニンγ-リアーゼの立体構造の解明と水素結合ネットワークの重要性,Cys残基の 重要な機能を明らかにした。これは,学術的にもさることながら,抗腫瘍性酵素としての臨床応用の分 野への有益な知見を提供するものである。

(2)

論文審査結果の要旨

抗腫瘍性酵素L-メチオニンγ-リアーゼは,現在すでに抗がん酵素として研究開発が進んでおり,実用性があ るとされている。次世代型抗腫瘍性酵素として開発するに当たり,本酵素の詳細な構造的情報及びその機能の 解明が望まれている。社会的にこの分野の研究開発が望まれる一方,学術的にも本研究の成果は大きな知見 をもたらした。本論文では,本酵素の立体構造を1.8Åの分解能で精密に解析し,特にこれまでに不明であった N末端領域の42~63残基間の明瞭な空間的情報を提供している。このことは,高機能化抗腫瘍性酵素創製の ための大きな一助となると期待される。これらの知見から,本酵素の活性中心に補酵素ピリドキサール5’-リン酸

(PLP)を中心に,Tyr59*, Arg61*, Tyr114, Cys116, Lys240*, Asp241*からなる重要な水素結合ネットワークの存 在が明らかになった。特に,Cys116残基は生理的基質であるL-メチオニンを基質とした場合のα,γ脱離反応に重 要で,基質認識に大きく関与していることを見出した。また,この過程で得られたC116H変異酵素は,基質特異 性が大きく変化し,β脱離活性を大幅に向上させ,His残基が反応に関わっているのではないかということを新規 に見出した。本酵素を抗がん剤として血中投与するにあたり,プロテアーゼ等によるストレスを受けることで失活 することが考えられる。より安定な抗がん酵素開発に向け,低純度における本酵素がCys49-Phe50間で特異的 に切断されることを見出した。ポリエチレングリコール修飾を行うことで本酵素の抗原性の低下を目指すために 作製したC49K及びF50Kは活性を大幅に低下させたが,A48K及びA51Kは野生型酵素の半分の触媒効率を 有することが判明した。最後に,近年行われた放線菌Streptomyces avermitilisのゲノム解析によりL-メチオニ ンγ-リアーゼの遺伝子が同定された。この遺伝子配列を元に,一次構造解析を行うと共に,遺伝子クロ ーニング及び発現,精製,速度論解析等を行うことで,放線菌属でL-メチオニンγ-リアーゼ活性を有することを初 めて見出した。

上記の論文内容, 発表会における応答を総合的に審査した結果, 博士の学位に値するものと判断した。

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