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ラオス南部の都市考古学的研究

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Academic year: 2022

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(1)博士(文学)学位請求論文審査報告要旨 論文提出者氏名. 大坪 聖子. 論 文 題 目. ラオス南部の都市考古学的研究. 審査要旨 本論文は、大坪 聖子氏が過去 13 年以上にわたって続けてきた考古学的研究の集大成と言える。大坪氏 は、東南アジアの古代都市の発達に関しての研究に関心を持ち、そのため、東南アジアの初期都市国家の一 つとして考えられている、ラオス南部のチャンパサック県に存在する「古代都市」の研究を行ってきた。論文は そこで行った、遺物の表面採集と遺跡の発掘の報告と、文献調査を合わせた分析に基づいて、都市の年代お よび機能について考察がなされたものである。 論文は序章を入れて全 6 章で構成されている。序章で、本研究に入るきっかけと動機について述べたのち、 第 1 章で、遺跡(古代都市)の存在する地理的状況と自然環境について述べている。特にメコン川沿岸地域の 地理-生態学的状況について詳細な議論が展開されている。第 2 章で、地域一帯の考古学的調査に関する 先行研究にふれている。主に植民地時代のフランスによる調査をとりあげ、学問的調査以外、いわゆる探検家 による発見も含めて考古学的調査の進展が現在に至るまで、どのような流れをもって進んできたのか論述して いる。第 3 章は、現在の「古代都市」周辺の遺物の分布について述べ、約 160 ヶ所の遺物の分布状況と、そこ で採集された遺物の詳細な描写がなされている。第 4 章は「古代都市」遺跡内の発掘により明らかとなった層 位関係と、出土した遺物についての説明となっている。その後、収束の章となり、古代都市の調査からみた、東 南アジア大陸部における都市の発達の問題への考察を行っている。結論では、古代都市における職能集団 の住み分けなど、都市としての機能性の存在の可能性に言及している。また都市の構築の年代を紀元後 5 世 紀から 6 世紀ごろと設定し、6 世紀前半の洪水を境にいったん都市は衰退し、その後アンコール王朝の勢力と 治水技術によって再興がなされたとしている。これらの考察は現在までフランス人研究者によって想定されてき たものと大きな相違はないものの、編年の細分、都市機能分化の問題など、今後、他の研究者によっても検証 可能な新しい知見が見られる。 審査では、全員が難しい場所における考古学的調査を長年続けてきたことに関して、慰労の言葉がかけられ た。本遺跡は、東南アジアにおける国家発生や、都市の発展の研究にとって重要な場所であるにもかかわら ず、フランス隊、イタリア隊による調査など、ごく一部の比較的散発的な調査を除いてほとんどなされてこなかっ たことから、その空白を埋める貴重な研究として評価された。しかし、同時に多くの問題点が委員から指摘され た。それらは以下のように要約される。 古代都市の地域区分と発掘による層序の確認によって、時代区分が明らかになってきたことは認めるが、 特に空間構造に関して、歴史的背景を含めた掘り下げが必要。なぜそのような空間構造になっているのか について、もう少し踏み込んだ考察が必要である; 中心遺跡の一つ、ワット・プー遺跡に関して、ワット・プー寺院、ワット・プーコンプレックス、ワット・プーエリア など、様々な呼称が使われている。それぞれについて具体的に何を指し示すのか、説明が必要である; 古代都市がメコン川沿いにあり、明らかに川による浸食を受けているが、浸食された部分について言及が あまりなされていない。その部分の調査を抜きにして、都市の機能など論じてよいのか; 文中、ヒンドゥー教という言葉が使われているが、扱っている時代にヒンドゥー教はまとまった宗教として存 在したのか。むしろその前身であった、バラモン教といったほうが良いのではないか。もしヒンドゥー教という 用語を使用するならば、なぜその用語を使用するのか説明を入れておく必要がある; また関連して、「東南アジアのヒンドゥー教化した都市」という言い方をしているが、もう少し踏み込んで、な ぜヒンドゥー教化したのか理由を述べてほしい;.

(2) 氏名 大坪 聖子 全体的に議論に未熟さが目立つ。また参考文献表に欠陥が目立つ。本文中に引用した文献のいくつか、 特に図版、表で引用した文献が、参考文献表に載っていないなど、基本的な部分で不備が見られる; 参考文献に、ラオス語の文献が一つも載っていないのはなぜか。ラオスの遺産を扱っている以上、ラオス 語で出版されたものにも目を通しておくべきではないか。 これに対する、大坪氏の回答は以下の通りであった。 ワット・プー遺跡に関する部分で、様々な呼び方をしているが、もう少し丁寧にそれぞれについて説明をし ておくべきであった。それぞれの呼称で示すものが異なってくるので、説明を加えて、修正しておきたい; メコン川による古代都市の浸食の問題は、よく認識している。今後、水中考古学等の手段で、メコン川内の 調査も必要になってくるものと思われるが、今回の論文ではそれについては触れなかった; ヒンドゥー教の呼び名については、さらに調べてみたいと思う。またなぜヒンドゥー教化した都市なのかに関 しては、さらに広く文献を調査するなど研究を進めてみたい; 参考文献の不備など、すぐに修正してゆきたい。 審査委員会では、上記の問題をかなり重く考えたが、この地域の考古学的研究がほとんどなされてこなかっ たことにより、先行する情報が極めて少ないこと、その中で新たな知見を示している点を評価した。結果的に、 委員会では全員一致して、本論文は博士の学位を授与するのに値するものと判断した。. 公開審査会開催日. 審査委員資格. 2020 年 1. 月. 20. 日. 所属機関名称・資格. 氏名. 専門分野. 博士学位. 主任審査委員. 早稲田大学文学学術院・教授. 西村 正雄. 文化人類学、東南アジア地 域研究. 博士(ミシガン大学). 審査委員. 早稲田大学文学学術院・准教授. 國弘 暁子. 文化人類学、宗教人類学. 博士(お茶の水女子大学). 審査委員. 早稲田大学教育・総合科学学術院・ 教授. 久保 純子. 地理学. 博士(早稲田大学). 審査委員. 岡山理科大学経営学部・教授. 山形 眞理子. 考古学、東南アジア考古学. 博士(東京大学). 審査委員.

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