<論文>意味に基づく英語文法教育論--名詞を中心に
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(2) て い な い か らで あ る 。 しか し学 習 で きな い わ け で は な い 。 た く さん の 例 か ら仮 説 形 成 的 に ル ー ル を推 論 させ 、 そ れ を 反復 練 習 を 通 じ帰納 的 に確 認 させ て い く とい う方 法 が とれ る(濱 本2008、2009、2010)。 さて 、上 記 の 名詞 の指 示 対 象 の 問題 も含 み 、 英語 教 育 との 関 連 で 取 り上 げ る べ き意 2. 味 論 的 テ ー マ と して 次 の よ うな項 目が 考 え られ る だ ろ う。. [1]名. 詞 関連 と して:. (i)モ. ノ の捉 え方. (]1)冠 詞 [II]動 詞 関連 と して: ㈹. テ ン ス とア スペ ク ト. (iv)動 詞 の 固有 ア スペ ク ト (v)V動. 詞 とS動 詞. [皿]形 容 詞 関連 と して: (vi)形 容 詞 の 同義 性 ㈲. 段 階 性 と比 較 の 構 造. この 小 論 で は、 紙 幅 の 関 係 か ら[1]の 名 詞 関連 の話 題 に 限定 して議 論 を進 め る こ と にす る。 構 成 は 以 下 の 通 りで あ る。2節 で 言 語 教 育 に 関 連 す る 基 礎 概 念 を概 観 し、 次 い で3節. で 名 詞 の 意 味 論 と教 授 法 、4節 で 冠 詞 の 意 味 論 と教 授 法 を 議 論 す る。5節 は. 総 括 で あ る。. 2.言 語 教 育 に 関 連 す る 基 礎 概 念 この 節 で は言 語 教 育 に関 連 して 重 要 で あ る と思 え る諸 概 念 につ い て説 明 し、次 節 以 降 で 議 論 され る意 味 論 的 諸 問 題 を指 導 項 目 と して取 り上 げ る際 の 基 盤 を作 っ てお くこ と にす る。 取 り上 げ るテ ー マ は2.1心. の 理 論 と推 論 、2.2身 体 化 さ れ た認 知 と ジ ェ ス. チ ャー 、2.3社 会 文 化 理 論 、 で あ る。. 2.1心. の理 論 と推 論. 母 語 を第1言 語(L1)、. 学 習 され る 言 語 を第2言 語(L2)と. い う こ と にす る。 まず. 母 語 の 習 得 に関 す る 理 論 を確 認 し、 そ れ が 第2言 語 の 学 習 の 説 明 に も適 用 可 能 で あ る こ と を 見 る。 周 知 の 通 り、 生 成 文 法 で は言 語 習 得 の 中 心 概 念 と して 普 遍 文 法(UG) を想 定 す る 。 刺 激 の 貧 弱 さ にか か わ らず 言 語 能 力 が 完 成 す るの は遺 伝 的 に組 み 込 まれ たUGの. 作 用 に よ る もの とす る立 場 で あ る 。 生 成 文 法 で は 主 に文 法 の 原 理 につ なが る. パ ラメ ー タ設 定 とい う立 場 で 議 論 が な され る が 言 語 習 得 の 具 体 的 な プ ロセ ス が 示 され. (2). C117].
(3) て こ な か っ た 。 一 方 、Tomasello(2003)、Bloom(2000、2002)ら. を中 心 とす る認 知. 心 理 学 、 発 達 心 理 学 、 認 知 言 語 学 の 立 場 に は 、 言 語 習 得 に 関 して 次 の よ う な2つ. の具. 体 的 主 張 を見 出 す こ とが で き る。. (2)(D子. 供 た ち の 言 語 習 得 は 孤 立 した 連 合 形 成 や 闇 雲 な帰 納 方 式 に求 め る こ と はで き な い 。 も っ と 強 力 な 認 知 的 学 習 メ カ ニ ズ ム が 備 わ っ て い る 。 こ れ は 「心 の 理 論 」(TheoryofMind)と (intention-reading)、. 包 括 的 に 呼 ば れ る 。 こ れ に は 意 図 読 み 取 り能 力 パ タ ー ン 抽 出 能 力(pattern-findingskill)が. 含 まれ. る。 ㈲. 成 人 の言 語 能 力 は生 成 文 法 で 考 え られ て きた もの よ り も っ と子 供 に と って 近 寄. り 易 い も の で あ り、 そ れ は. linguistics)と. 「使 用 に 基 づ く 言 語 観 」(usage-based. も言 うべ き もの で あ る。. (i)につ い て の議 論 か ら始 め よ う。子 供 は9ヶ 月 を過 ぎる こ ろ に 、 子供 と養 育 者 とい う2項 的 関係 か ら進 み 、共 通 の注 意 の枠 組 の 中 に 第3の 対 象 を捉 え る こ とが で きる よ う に な る。 子 供 は他 者 と相 互 に 関心 の あ る対 象 、事 態 に対 して 、注 意 を 共 有 で きる 能 力 を 身 に つ け る。 この 共 同 注 意 を基 盤 に して 言 語 記 号(symbol)を. 学 習 して い く。. 言 語 コ ミュ ニ ケ ー シ ョンで は記 号 の使 用 を前 提 とす る。 記 号 とは 第3の 事 物 を示 す 道 具 で あ る が 自分 と他 者 との 意 図 理 解 を必 要 とす る 。 「そ の 本1」. とい う言 葉 を聞 い た. と き、 相 手 の 意 図 、 す な わ ち 「私 が 本 に注 意 を向 け る と い う私 の注 意 状 態 の変 化 の要 請 」 とい う意 図 を理 解 しな けれ ば な ら ない 。 同 時 に、 自分 が 言 葉 を使 用 す る場 合 、 相 手 に こ ち らの 意 図 を理 解 して も ら う必 要 が あ る。 この よ う な相 互 の 意 図 の理 解 を可 能 にす る能 力 を 「意 図 読 み 取 り」 とい う(Tomasello2003)。. この 「意 図 読 み 取 り」 能. 力 が 備 わ る こ とが 言 語 記 号 習 得 の 基 盤 と な る。 言 語 習 得 に 必 要 な も う一 つ の 認 知 能 力 は 「パ ター ン抽 出 能 力 」 で あ る。 人間 は言 語 記 号 を構 造 化 して 使 う。 構 造 と して 理 解 す る に は パ タ ー ンを 見 出 さ な け れ ば な ら な い 。 多 くの 研 究 が 子 供 は 類 似 性 を もつ 対 象 、 事 態 の 知 覚 的 、 概 念 的 カテ ゴ リー を形 成 で きる 能 力 を持 つ こ と を示 して い る 。 簡 単 に 言 う と、 似 た もの を集 め て 一 く く りにで きる とい う こ とで あ る 。 また 、 行 動 を知 覚 し記憶 す る 中 で 、 繰 り返 し現 れ るパ ター ン を取 り出 しス キ ー マ 化 す る こ と もで きる 。(Tomasello1999、2003)。. 我 々 は英 語 教 育. の 対 象 者 で あ る児 童 、 生 徒 、 さ ら に成 人 に も 「意 図 読 み 取 り能 力 」、「パ ター ン抽 出 力 」 と も に十 分 備 わ っ て い る と考 え る 。 こ の よ う な認 知 能 力 は 生 後9ヶ. 月 頃発 現 し、. 衰 え る こ とな く機 能 す る か らで あ る(Tomasello1999)。 (ii)に つ い て の議 論 に移 ろ う。 こ の 認知 心 理 学 派 で は文 法 を 派生 的 に み る 。 言語 の構 造 、つ ま り文 法 は使 用 の な か で形 成 され 蓄積 さ れ て きた もの で 、 個 人 レベ ル で は 遺伝. [116]. (3).
(4) 駄..ヤ. 的 に 伝 え ら れ る とい う の で は な く社 会 文 化 的 に伝 承 され る もの とす る。 こ の 立 場 を 「 使 用 に 基 づ く言 語 観 」 とい う。 つ ま り、(i)との 関 係 で 言 え ば 、基 本 的 な 認 知 能 力 で ある 「 意 図読 み 取 り能 力 」、 「パ タ ー ン抽 出能 力 」 自体 は種 に 固有 の もの と して遺 伝 的 に伝 え ら れ る。 これ に よ り言 語 習 得 はあ る言 語 の使 用 環 境 にお い て個 人 レベ ル で進 行 す る 。 初 期 に は項 目ベ ー ス で 、 そ して や が て パ ター ン の抽 出 に よ り構 造 が 与 え ら れ る。 Tomaselloら. 認 知 心 理 学 系 の 研 究 者 は基 本 的 な 認 知 能 力 と使 用 に基 づ く言 語 形 成 に. よ り言 語 が 習 得 され る とす る。 また 彼 らが 前 提 とす るい ず れ の 能 力 も人 問 に基 本 的 に 備 わ っ てい る もの と予 想 され る。 そ の 言 語 観 も母 語 の言 語 習 得 の み に関 与 す る と制 限 的 に捉 え な けれ ば な ら ない 理 由 は ない 。 つ ま り、 認 知 心 理 学 系 の 見 解 は第2言 語 学 習 につ い て も適 用 で き る(Littlemore2010:33)。 しか しこ こで 注 意 し な けれ ば な ら ない 重 要 な事 項 が あ る。 母 語 習 得 の 場 合 、 言 語 の 音 とそ の 対 象 物 との 対 応 は必 ず しも明 示 的 に与 え られ ない こ とが あ る。 親 が 子 供 に積 極 的 に 言 語 の 指 示 対 象 を示 して 教 え る こ と(ostensivelearr血g)は は ない(Lieven1994,Schieffelin1985)。. 決 して 普 遍 的 で. この 場 合 、 子 供 は 自分 で 音 と意 味(つ. ま り、. 指 示 対 象)と の 関 係 を発 見 しな け れ ば な らな い 。 また 早 期 英 語 教 育 環 境 で も児 童 に母 語 で の 説 明 を 介 さ な くて も学 習 が 進 む こ とが 報 告 さ れ て い る(濱 本2008、2009)。 つ ま り、 言 語 記 号 の 使 用 か らそ の 意 味 を どの よ う に発 見 して い くの か とい う 「発 見 の プ ロセ ス 」 が 説 明 され な け れ ば な らな い とい う点 が 重 要 にな る 。 明 らか にす べ き こ と は 、 既 に述 べ た 基 本 的 な 学 習 的 認 知 能 力 を前 提 に しな が ら も、 同 時 に 「発 見 の プ ロセ ス 」 を提 示 す る こ とで あ る 。 著 者 は 長 年 に わ た り小 学 生 を対 象 とす る 早 期 英 語 教 育 に 携 わ っ て きた 。 そ こ で 得 られ た 知 見 は 、学 習 者 は 第2言 語 の規 則 を外 か ら与 え られ る の で は な く、 仮 説 形 成 的 に 自分 で 発 見 して い く能 力 が あ る とい う もの で あ る 。 この 立 場 に た つ とTomasenoら. の 経 験 主 義 を補 強 で き意 味 を 明 示 的 に 教 え ら れ ず と も音 と. 意 味 の対 応 が 理解 され る こ とが説 明 で きる 。 こ の 発 見 の プ ロ セ ス は 人 間 の推 論 能 力 に 3. 関わる。 推 論 に は 一 般 に 演 繹 的 推 論(deductiveinference)と. 帰 納 的 推 論(inductive. inference)が. 認 め られ て い る 。 哲 学 者 の パ ー ス は さ らに 仮 説 形 成 的推 論(abductive. inference)を. 付 け加 え た 。 演 繹 の 特 性 は、 結 論 は前 提 か ら必 然 的 、 分 析 的 に 導 き出. され る こ とに あ る。 そ れ 自体 で は事 実 の真 理 の決 定 に は か か わ らず 、実 在 の世 界 に対 す る新 しい情 報 は な に も提 供 しな い。 演 繹 の分 析 的 、解 明 的性 質 に対 して 、帰 納 と仮 説形成推論 は 「 拡 張 的 」 と呼 ばれ る。 こ の2つ の タ イ プ の論 証 は実 在 世 界 に 関 す る経 験 的知 識 の拡 張 的 機 能 を持 つ か らで あ る。 帰 納 とは、 あ る こ とが 真 で あ る よ うな い く つ か の事 例 か ら一 般 化 を行 い 、そ して そ れ ら の事 例 が 属 してい る ク ラ ス全 体 に つ い て も同 じこ とが 真 で あ る と推 論 す る場 合 をい う。 つ ま り帰 納 は観 察 さ れ た事 実 を検 証 す. (4). [115.
(5) る 方 法 で あ る 。仮 説 形 成推 論 とは新 しい 発 見 を導 き出 す もの で あ り、 あ る 意 外 な事 実 の観 察 か ら、 そ の事 実 が なぜ 起 こ っ た の か を説 明 し得 る と思 わ れ る仮 説 を作 り出 す こ とで あ る。 帰 納 との 違 い は 、 新 しい 仮 説 そ の もの の発 見 は仮 説 形 成 に よる もの で あ り、帰 納 は そ の仮 説 が正 しい 説 明 とな っ て い る か を 数 多 くの事 実 に照 ら して 実験 的 に 確 か め る論 証 で あ る とい う点 で あ る。 仮 説 形 成 推 論 の 形 式 は、(i)意外 な事 実 ψが あ る 、(u)LYな ら ば ψで あ る、(11])ゆ え に、α で あ る 、 とい う よ うに 後 件 か ら前件 へ の 逆行 推 論 で あ る 。 こ こ でAliseda(2006)に. (3)表. 示 レ ベ ルe,ψ. 従 っ て仮 説 形 成 推 論 を定 式 化 す る。. → α. 推論 プロセス (a)新. (i)ψ (ii)aψ. →. α. (b)一. 奇 性(NOVELTY):θ+ψ 貫 性(CONSISTENCY):θ+∼. θ:既 存 の 知 識(知. (iii)a. 覚 状 況)、 ψ:観. ψ 察 事 実 、 α:推. 論結果. 仮 説 形 成 推 論 式 で は 論 理 的 必 然 性 は な く、α を導 出す る こ と は誤 りの 可 能 性 が あ る 。 した が って 、 仮 説 形 成 推 論 は 「弱 い種 類 の論 証 」 で あ り、 検 証 に 帰 納 推 論 が 使 わ れ る。 仮 説 αが 誤 りで あ れ ば 仮 説 β を 提 案 す る 。 この 繰 り返 しで 事 実 の 発 見 が 実 行 さ れ る。Alisedaに. よれ ば 推 論 の 帰 結 α に は事 実 、 規則 が 含 まれ る(ibid.p.46)。. 上 記 の 定 式 はパ ー スの 仮 説 形 成 推 論 を コ ンパ ク トに しか も的確 に捉 え て い る。 あ る 新 事 実 ψ は既 存 の 知 識 で は説 明 が で きず((3a)新 る こ と は な い((3b)一. 奇 性)、 しか し既 存 の 事 実 に違 反 す. 貫 性)。 これ は新 しい言 語 情 報 に触 れ た 学 習 者 の状 況 そ の も の. で あ る。 た と え ば小 学 生 に基 本 動 詞 を指 導 す る場 面 を考 え てみ て欲 しい。 講 師が 、英 語 の 発 話"1'lltaketheredmagnetandI'lltakeittothesquarebox"に. 続 い て箱 か. らマ グ ネ ッ トを と りだ しそ れ を四 角 い箱 まで 持 っ て い く。 児 童 は講 師 の何 か を示 そ う とす る意 図 を明 瞭 に理 解 す る。 これ は 「意 図 読 み 取 り能 力 」 が 備 わ っ て い る か らであ る。 しか しなが ら、音 形[teik]を. 聞 い て もそ の 意 味 はそ の時 点 で 不 明 で あ る(新 奇. 性)。 しか し、 そ れ が 既 存 の 知 識 体 系 、 そ の 場 の観 察 事 実 か ら逸 脱 して い る 理 由 は な い(一 貫 性)と 講 師 の 意 図 か ら推 察 す る。 そ こで 学 習 者 は講 師 と 自分 た ちの 共 有 す る 注 意 の 枠 組 み 内 で説 明 を さ ぐ る。 そ して 「 取 り出 す 」 とい う概 念 と[teik]を. 結 びつ. け れ ば 、状 況 は一 転 し、 理 解 可 能 に な る こ と を発 見 す る。 そ の 結 果 α → ψ形 式 で 表 示 さ れ る[Xを. 取 り出 す]→[take+X]と. い う語 規 則 を記 憶 す る 。 これ が 仮 説 形 成 的. 推 論 に よる 言 語 表 現 理 解 の 仕 組 み で あ る。 一 般 に語 、 文 型 、 抽 象 的 構 造 をす べ て 「言 語 コ ン ス トラ ク シ ョ ン」 と呼 ぶ な ら ば 、 言 語 コ ン ス トラ ク シ ョン はP→Qの. 形式で. 表 示 可 能 で あ る 。 こ こで → は 、 質 量 含 意 、 論 理 含 意 、 確 率 な どで は な く、 単 な る概 念 と音 表 示 の 恣 意 的 結 合 を示 す 。 一 般 に仮 説 形 成 推 論 プ ロセ ス で 発 見 され た 規 則 は、 帰. [114. (5).
(6) 納 的推 論 プ ロセ ス に ま わ され 、 そ こで 多 数 の例 に お い て そ の規 則 を あ て はめ て み て 、 そ れが 妥 当 で あ る か どう かが 検 証 さ れ る。Takeの. 例 で い え ば、 講 師 の 多 数 のtakeの. 使 用 実 例 を聞 く過 程 で 、 ま た 自分 で 講 師 の英 語 指 示 に合 わせ 動 作 を して み る過 程 で 、 [Xを 取 り出 す]→[take+X]と. い う規 則 が 検 証 され 、 初 め て 記 憶 に貯 蔵 さ れ る と考 え. ら れ る 。 以 上 の こ と をモ デ ル 化 し、 「言 語 習 得 エ ンジ ン」 と も言 うべ きサ イ ク ル と し て 図 示 してみ よ う。. 「意 味 」 と 「 音 形 」 が 結 びつ い た規 則 と して 明 示 的 に 示 され ず と も 「規 則 発 見 的 」 に 言 語 習 得 が 進 む プ ロセ ス は この よ うな 仕 組 み で 記 述 で き る。 も ち ろ ん 、 学 習 者 に は 「心 の 理 論 」 と包括 され る能 力 が 備 わ っ て い る こ とを前 提 とす る。 こ こ ま で の 議 論 を (5)にま とめ て み る 。. (5)言. 語習得に関わる認知能力. 心 の 理 論+推 論 能 力(仮 説 形 成 推 論 、 帰 納 推 論). とこ ろ で 中学 校 以 降 の標 準 的 文 法 学 習 は 、 まず 教 員 に よ り文 法 規 則 を既 存 の もの と して 与 え られ 、 そ れ を 演 習 に よ っ て 習 熟 す る と い う形 式 を ふ む。 こ れ は 演 繹 形 式 (モ ー ダス ポ ー ネ ンス)に 要 約 で きる。 下 は 「現 在 進 行 形 」 を演 繹 的 に学 習 す る 手 川 頁 で あ る 。 まず(i)現在 進 行 形 形 成 規 則(眼 前 で動 作Vが. 進 行 して い る→be+Vingを. 形. 成 す る)を 提 示 さ れ 、㈲ で課 題 に そ の規 則 を あ て は め る こ とで㈹ が 得 られ る 。. (6)演 繹 的文 法 学 習 (i)文 法 規 則 の提 示A→B(例)眼. 前 で動 作Vが 進 行 して い る→be+Ving. 伍)課 題 提 示A'京. 子が泳 いでいる. (lll)帰結B'Kyokoisswimming. そ れ に対 し、 母 語 習 得 や 日本 語 を介 さ な い英 語 教 育 で は規 則 を外 か ら与 え られず 学 習 者 自 身が そ れ を発 見 しな けれ ば な ら な い。 こ れ に は仮 説 形 成 的 推 論 を使 っ た規 則 発. (6). C113].
(7) 見 的 側 面 と帰 納 的検 証 が 組 み 込 まれ て い る と考 え られ る。. (7)言. 語 教授 の タ イプ と関 与 す る推 論 の 関 係. (i)演 繹 的 方 略:文 法 規 則 を先 に与 え 、 そ れ を問 題 解 決 に使 用 させ 習 熟 を図 る。 (ii)仮 説 形 成+帰 納 的 方 略:使 用 実 例 か ら文 法 規 則 に気付 か せ 、 そ れ を帰 納 的 に確 認 させ る 〈発 見学 習 〉。. 我 々 は教 材 を提 示 す る 際 、規 則 を先 に教 え る の で は な く、 規 則 そ の もの を発 見 させ る とい う方 法 もあ る こ と(そ して 早期 英 語 教 育 の場 合 は これ が 基 本 方 略)を 理 解 して お か ね ば な らな い 。 以上 の 議論 か ら、 言語 の習 得 に必 要 な心 的装 置 と して 、心 の理 論 と推 論 装 置(仮 説 形 成 推 論+帰 納 推 論)を 想 定 す れ ば よい こ とに な る 。 しか し、 そ うす る と母 語 習 得 の ほ ぼ完 全 な 達成 と外 国語 学 習 の不 完 全 な 達 成 との 違 い を ど う説 明 す る か とい う問 題 が 残 る 。上 記 の心 的装 置 、 つ ま り心 の理 論 と仮 説形 成推 論 、帰 納推 論 の い ず れ もが幼 児 期 の み に機 能す る もの で は な く、 成 人 で もそ の効 果 を期 待 して よい もの で あ る か らで あ る 。 この こ と に関 してEllis(2006)はLlに. 完 全 に 調 整 され た 言 語 の 構 造 、 意 味 、. 音 韻 特 性 に 関 す る学 習 者 の 注 意 の体 系 がL2の. 学 習 の 円 満 な 進 展 を 阻止 す る と考 え 、. そ れ を 「第1言 語 に調 整 済 み の 習 得 され た 注 意 」(Lltunedlearnedattention)と 付 け て い る。 同様 にHuntandAgnoli(1991)は (cognitivehabit)が. 名. 第1言 語 を習 得 した 際 に 「認知 習慣 」. 形 成 さ れ 、 第2言 語 学 習 で は そ れ を 意 識 的 に 再 調 整 しな け れ ば. な らない と主 張 す る。 さ ら にSlobin(1996,2000)は. 、「 我 々 は話 そ う とす る 際 、言 語. に よ って 特 定 の 視 点 を と る よ う に訓 練 さ れ て い る」 と言 う。 我 々 の言 語 は事 態 を捉 え る仕 方 にお い て我 々 を制 約 す るが 、 こ れが 起 こ る の は 自分 の思 考 を言 語 化 しよ う とす る 時 に 限 ら れ る と も 述 べ 、 こ れ を 「話 す た め の 思 考 仮 説 」(Thinkingforspeaking hypothesis)と. 呼 ん で い る 。 成 人 で も言 語 習 得 に 関 わ る認 知 的 能 力 は 十 分 使 用 可 能 で. あ る。 しか しこの 「第1言 語 に調 整 済 み の習 得 さ れ た注 意 」、 「 第1言 語 の認 知 習 慣 」、 「第1言 語 の話 す た め の 思 考 」 が 児 童 よ り も よ り深 く定 着(entrenchment)し. て いて. 第2言 語 の 習 得 を阻 止 す るの で あ る。これ が い わ ゆ る臨 界 期 仮 説 の認 知 的説 明 に な る。 また この 点 を考 慮 す る と、 成 人 の 学 習 で は母 語 習 得 と共 に既 に形 成 さ れ て い る注 意 の 体 系 を意 識 した 授 業 を考 え な くて は な ら ない こ と に な る。 一 方 母 語 の 「 定 着 」 の浅 い 児 童 で は多 量 の イ ン プ ッ トで これ を乗 り越 え、 新 しい 第2言 語 の 「認 知 習 慣 」 や 「話 す た め の 思 考 」 を よ り容 易 に構 築 で き る こ と に な る。. 2.2身. 体化 され た 認 知 とジ ェス チ ャー. 我 々の 現 実 世 界 の 把 握 の 仕 方 や 見 方 は、 我 々の 身 体 の 性 質 や そ の 身 体 の使 い 方 、 身. [112. (7).
(8) 体 を使 っ て 環境 を知 覚 す る仕 方 に制 約 され て い る とい う(Lakoff1987)。. この 見 解 に. 従 う と心 と 身体 は完 全 に分 離 され た もの で は ない こ と に な る。 例 え ば我 々が 他 者 の鉛 筆 をつ か む 、笑 う、 泣 くな どの 行 為 を見 る と、 自分 自 身が そ れ らの 行 為 を した時 に活 性 化 され る ニ ュ ー ロ ンの 運 動 回 路 部 分 が 活 性 化 され 、 そ れ を通 じて 行 為 の 意 味 を理 解 す る。 この よ う な 知 覚 の在 り方 を 「身 体 化 さ れ た 認 知!(embodiedcognition)と う(Gibbs2006)。. い. 他 者 の 行 為 を 自分 の 行 為 との 関 係 で 捉 え る 能 力 が 、他 者 と共 感 で. き、 他 者 が どの よ う に感 じ、 何 を経 験 して い るの か を理 解 す る基 盤 にあ り、 先 に述 べ た心 の 理 論 の 形 成 を助 け るの で あ る。Talmy(1988)は. 、 我 々の 多 くの 抽 象 思 考 で さ. え も 自分 た ちの 身 体 で 経 験 す る物 理 的 な力 とい う点 で 概 念 化 され て い る とい う。 例 え ば、 英 語 話 者 な ら義 務 用 法 のcanの. 意 味 は 運 動 の 進 行 方 向 に 妨 害 の な い 状 況 と結 び. つ い て考 え られ て い る。 一 方 、mustは. 背 後 に 力 が 存 在 し運 動 を進 め させ る状 況 を想. 4. 定 す る。 下 の 図 を見 て い た だ きた い 。. fg)a.can. b.must[⇒ D. 一. 一. ⇒. この よ うな 認 知 的 概 念 図 を使 っ て 英 語 の モ ダ リテ ィー を学 習 す る 事 例 も報 告 され て い る(Tyler2008)。 さ らに 談 話 で の 身 体 化 され た 認 知 の 表 出 と して ジ ェス チ ャー に 注 目す る研 究 も見 ら れ る よ う に な っ て きた。 発 話 形 成 とジ ェス チ ャー に は強 い 関連 が 認 め られ る 。 この2 つ は 同 一 の 心 の 活 動 か ら発 す る もの で あ り、 同 一 の ニ ュ ー ロ ン体系 に 由 来 す る もの で あ る と考 え られ て い る 。 発 話 能 力 と ジェ ス チ ャー は 子 供 時 代 に 並 行 的 に 習 得 され 、 失 語 症患 者 で は2つ. と も消 失 す る 。 ジ ェ ス チ ャー と発 話 は コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 場 で も. 強 く一 体 化 して お り、 そ れ らに は 同 時性 が 認 め られ る 。 さ らに ジ ェ ス チ ャー は 言 語 表 現 を 形 成 す る 助 け と もな る 。 下 の 例 を見 られ た い 。[]に. (9)a.Put[thatone][there].指. は ジ ェ ス チ ャー が 来 る 。. 示 対 象 を示 す ジ ェ ス チ ャー. b.She[]downtheslidebar.ジ. グ ザ グ の ジ ェ ス チ ャー で 動 詞 の 代 わ り. c.[].…sure,callmeathomeafterfive。:電. 話 の ジ ェ ス チ ャー (Gullberg2008:278). 以 上 の 例 か ら も発 話 と ジ ェ ス チ ャー の結 び つ き、 補 完 関 係 が 見 て 取 れ る 。 さ て次 に ジ ェ ス チ ャー と言 語 教 育 、学 習 の観 点 で 見 て み よ う。 教 室 環 境 で 教 授 者 が ジ ェ ス チ ャ ー を 使 用 した 場 合 、 「入 力 の 補 強 因 子 」(input. (s>. 111.
(9) enhancement)に. な る と考 え ら れ る。 教 授 者 が ジ ェ ス チ ャ ー を 説 明 に 付 加 す る と、. L2の 語 彙 が 覚 え や す く、 聞 き取 り も容 易 に な る こ とが 報 告 さ れ 、 そ の 理 由 と して(i) ジ ェ ス チ ャー に よる伝 達 内容 の 曖 昧性 除去 効 果 、(ii)記 憶 すべ き要素 へ の 学 習 者 の 注 意 の 誘導 効 果 、 が あ げ られ て い る(Sime2008)。. こ の 点 か ら教 授 者 は積 極 的 に 説 明 的 な. ジ ェ ス チ ャー を使 うべ きで あ る が 、学 習者 が そ の 意 味 を理 解 し易 い もの で な け れ ば逆 効 果 で あ る。 動 作 を使 っ て 動 詞 を教 え る 象 徴 的 ジ ェ ス チ ャ ー(iconicgesture)や 比 喩 的 な 表現 をや は り比 喩 的 ジ ェ スチ ャ ー(metaphoricgesture)を とな どが 考 え られ る(例:「. 、. 使 っ て教 え る こ. 途 方 に くれ て 」 と い う意 味 の 表 現"atsea"を. 教 えるた. め に泳 ぐま ね をす る)。 学 習 者 自 らが ジ ェ ス チ ャ ー を使 う場 合 に も学 習 の促 進 が み られ る 。 そ れ は相 互 に 関 連 す る2つ の 理 由 に よ る と考 え ら れ る。(i噺 しい 、馴 染 ん で い な い概 念 を 話 す 時 、 ジ ェ ス チ ャ ー に頼 る こ と で ま わ りの者 や先 生 が そ れ に気 付 き、 よ り適切 な イ ンプ ッ ト 刺 激 を くれ る。 さ らに ジ ェ ス チ ャー は会 話 に前 向 きな 感 じを参 加 者 に 与 え 、 よ り多 く の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンに参 加 で きる。 こ れ は学 習 者 と教 授 者 との 問 に 共 通 の指 示 枠 組 み が 形 成 さ れ学 習 者 は フ ィー ドバ ッ ク を受 け や す くな る と も言 って よ い 。㈹ ジ ェ ス チ ャ ー は実 運 動 化 で あ り思 考 を言 葉 に 置 き換 え る 際 、 同 じニ ュ ー ロ ン体 系 を使 う とい う意 味 で 、置 換 を よ り容 易 にす る。 自分 の伝 達 意 図 を確 認 し、 ま とめ 、順 番 化 して言 語 表 現 化 で きる(Gullburg200$)。 第2言 語 学 習 で は、 以 上 の よ うに、 教 授 者 、 学 習 者 と もに ジ ェ ス チ ャ ー を使 う こ と が 奨 励 さ れ る の で あ る。 こ れ と の 関 係 で 「全 身 反 応 教 授 法 」(TotalPhysical Response:TPR)も. 児 童 の 言 語 指 導 で よ く使 わ れ る 方 法 で あ る 。 教 授 者 が 身 体 運 動. を と も な って 表 現 を教 え、 学 習 者 に もその 動 作 を させ る。 これ は動 詞(句)の 最 適 で あ るが 、 後 で 見 る よ う に名 詞(特. 学習 に. に 身体 部 位)の 学 習 に も有 効 で あ る。 さ らに. この 方 法 を推 し進 め た 「全 身反 応 物 語 法 」(TotalPhysicalResponseStoryTelling: TPRST)も. 注 目 を集 め て い る 。 こ れ は 先 生 、 学 習 者 全 員 で 物 語 を演 じる方 式 で あ り、. 「生 活 の 中 で の 自然 な習 得 」 の シ ュ ミ レー シ ョ ン体 験 通 じ、 身 体 的 認 知 を 形 成 し よ う とす る も の で あ る(Werstler2002)。. 以 上 、 本 節 で の 議 論 を ま とめ る と次 の よ う に. な る。. (10)a.身 体 化 され た 認 知 は具 体 的 な動 作 理 解 だ け で は な く、 物 理 的 な 外 的 経 験 を経 て 内 的 に 構 成 され た 抽 象 的 な概 念 に も認 め られ る。 身 体 化 さ れ た 認 知 を 明 示 的 に利 用 す る言 語 学 習 法 も有 用 性 が 報 告 され て い る。 b.ジ ェ ス チ ャ ー は 身 体 化 され た 認 知 の 在 り方 を見 せ て くれ る装 置 で もあ る。 こ れ を言 語 の学 習 と指 導 の 両 面 に利 用 す る こ とが 奨励 され て い る 。. Cllo]. (9).
(10) 2.3言. 語 習 得 の社 会 的 側 面 一 社 会 文 化 理 論. こ こ まで 言 語 習 得 、 学 習 に お け る個 人 の 認 知 的 装 置 を 見 た 。 こ こで は見 方 を か え 、 言 語 学 習 の 社 会 的 側 面 を検 討 す る。Vygotskyが. 提 唱 しLantolf等 に よ っ て 発 展 せ ら. れ た広 大 な射 程 を持 つ 「 社 会 文化 理 論 」 を 第2言 語 と して の 英語 教 育 、 特 に 文 法 教 育 に適 用 す る こ とに 限定 して論 ず る 。 最 近 の 言 語 学 習 理 論 の 推 移 と して イ ン プ ッ ト仮 説 か ら始 ま り イ ン タ ラ ク シ ョ ン仮 説 、 そ して ア ウ トプ ッ ト仮 説 へ との 流 れが 言 及 され る こ とが 多 い 。 これ ら はJohnson (2004)に. よれば 「 情 報 処 理 モ デ ル系 」(informationprocessingmodels)と. して 包括. 的 に捉 え ら れ る とい う。 初 期 の イ ンプ ッ ト仮 説 で は 文法 教 育 は全 く不 必 要 な もの と理 解 さ れ て い た。 しか し教 育 現 場 か らの フ ィー ドバ ック等 に触 発 され 、理 論 が 進展 す る につ れ 次 第 に 文 法 教 育 のL2習. 得 に お け る 重 要 性 が 認 識 され て きて い る。 ま た文 法 形. 式 につ い て の 「意 識 活 性 化 」 につ い て は情 報 処 理 モ デ ル系 の研 究 者 の他 に も多 くの研 究 者 が 言 及 して い る 。 例 え ば 、RutherfordandSharwoodSmith(1985)で 文 法 仮 説 」(pedagogicalgrammarhypothesis)と. は 「 教育. して 次 の よ うな 指 摘 が あ げ ら れ て. い る。. (11)PGH 学 習 者 の 注 意 を伝 達 内 容 で は な く、 構 造 上 の 規 則 性 に向 け る指 導 法 は、 あ る条 件 の下 で は習 得 の 程 度 を著 し く高 め る。 そ れ は言 語 形 式 に対 す る注 意 が 最 小 に抑 え られ た い わ ゆ る 自然 状 況 で の言 語 習 得 の 程 度 を しの ぐ もの で あ る(RutherfordandSharwood Sr[uth1985:276)。. 上 記 の 仮 説 で は 「あ る 条 件 の 下 で は 」 が どの よ う な条 件 な の か が 説 明 され て い な い。 文 法教 育 の 必 要性 は 次 第 に 認 識 され て きて い る もの の 、 どの よ う に文 法 教 育 を組 み 込 む か が 大 き な課 題 と して残 され て い る。Long(1996)が 法 教 育 」 と してfocusonformsつ. 指 摘 す る よ うに 、 「適 切 な文. ま り 「文 法 一 訳 読 式 の文 法 授 業 」 を こ こ で は 指 し. て い な い の は 明 らか で あ る 。 Swain(2000)は. 、 「ア ウ トプ ッ ト」 と い う用 語 はSLAを. 「容 器 」 「コ ン ピ ュ ー. ター 」 「情 報 処 理 装 置 」 に な ぞ ら え て 見 て い る た め 、 談 話 の持 つ 社 会 的 交 流 とい う性 質 を 見 逃 し て い る と 指 摘 し た。 そ こ か ら 社 会 文 化 理 論 的 に 「協 同 的 対 話 」 (collaborativedialogue)と. 呼 ぶ こ と を提 案 して い る。 この よ うに社 会 文 化 理 論 が 「適. 切 な 条 件 」 を提 示 で き る と主 張 す る新 ヴ ィ ゴ ッ キ 派 の 第2言 語 習 得 論 研 究 者 た ち は 「 言 語 とは思 考 の 道具 で あ り、知 的精 神 活動 に お け る 媒 介 手段 で あ る 」 と考 え て い る。 こ の観 点 か ら、学 習 そ の もの も媒 介 的 な過 程 で あ り、社 会 的 に媒 介 され る もの で あ る とす る。 学 習 は 問題 解 決や 議論 な どの 共 同作 業 、 交流 に依 存 し、 未熟 な学 習 者 が 新 し. (lo>. C109].
(11) い 知 識 や技 能 を習 得 す る 際 に は 、 熟 練 者(例 え ば 教 師)の 手 助 け に よ り、 そ の タス ク を 遂 行 して い く。 成 功 す る 学 習 方 策 に は 、 共 同 的 な 人 的 関 係 を含 む 初 期 段 階(対 人 関 係 的 段 階:interpersonalplane)の. 活 動 か ら、 そ れ を 自分 の 精 神 の 内 側 に取 り組 み 自. 立 す る段 階(内 的段 階:intrapersonalplane)の. 活 動 まで カバ ー しな くて は な らな い 。. こ の 学 習 プ ロ セ ス に 支援 的 ダ イア ロー グや 指 導 が 欠 か せ な い 。 これ は 他 者 か らの 発 話 的 教 示(externalspeech)で. あ る。 こ れ ら は段 階 的 に 問 題 解 決 に い た る よ う に学 習. 者 の 注 意 を 適切 に 向 け させ 、 ス テ ップ を踏 み な が ら解 決 に 導 く もの で あ る 。 そ して 知 識 が 学 習 者 の 内 に組 み 込 ま れ る 過 程 で 自分 自 身 に 向 け られ た 発 話(privatespeech) が現 れ る 。 最 後 に 知 識 が 学 習 者 の精 神 に お い て 整 理 され 内 的 言 語(innerspeech)と して 蓄積 され る 。 こ の 他 者支 援 に よる学 習 進捗 の状 況 を建 設 の比 喩 を使 っ て 「足 場作 り」(scaffolding)と い う。 以 上 の こ と を下 に図 示 す る。. (12)足 場 の構 造 学習過程 内 的段 階. 内的言語. (自 己統 制 的). 自己 に向 け られ た 発 話. 対 人関係段階. 足場. 発話 的教示. 他 者 か らの 支 援 的 発 話 は 自己 に 向 け られ た発 話 の 発 現 を う なが し、最 終 的 に学 習 者 の 精 神 にお い て 概 念 の ネ ッ トワ ー ク を構 成 す る 内 的 言 語 と し て整 理 され 学 習 は終 了 し、 あ る概 念 あ るい は技 能 が 習 得 さ れた こ と に な る。 こ の プ ロセ ス は対 人 関係 段 階 か ら 内 的 段 階 へ の 上 昇 過 程 と見 る こ とが で き るの で あ る。 自己 に向 け ら れ た発 話 は子 供 で は 普 通 の 現 象 で あ るが 、 時 には 新 しい 課 題 に直 面 した成 人 に も観 察 され る と い う。 次 に あ げ るの はあ る作 業 に従 事 して い る成 人 のprivatespeechの. (13)privatespeechの "Wh. 例である。. 例(Lantolf2000:15). at?Next,anorangeone.Wait,No,Ican't…Done." (何 だ?次. に 、 オ レ ン ジ の か 。 待 て よ 、 で き な い な … や っ た). 学 習 の プ ロセ ス を説 明 す る た め にVygotskyは. 「近 接 発 達 領 域 」 とい う概 念 を開 発 し. た 。 そ れ は学 習 者 の現 在 の 発 達 レベ ル と潜 在 的 発 達 の レベ ル との 距 離 と定 義 され る。. Clos]. (11).
(12) 学 習 者 は習 熟 者 か らの ガ イ ダ ン スや 共 同作 業 を通 じ問 題 を解 決 す る こ とで 現 在 の レベ ルか ら よ り高 度 な段 階 へ と移 行 す る、 そ れ が 学 習 で あ る とす る。 学 習 が 成 功 す れ ば学 習 者 は現 在 の レベ ルか ら潜 在 的 レベ ル に上 昇 し、 そ れ が 繰 り返 され る こ と に な る。 学 習 者 が あ る概 念 や 技 能 の 習 得 に成 功 す るた め に は他 者 か らの 足 場 作 りや 支 援 が 必 要 で あ る。AljaafrehandLantolf(1994)で. は 、 この 支 援(つ. ま り教 え る側 か らす る教 授. 法)が 有 効 で あ るた め には 、 そ の ガ イ ダ ンス は段 階 的 か つ 随 意 的 で な けれ ば な ら な い と言 う。 下 に要 約 す る 。. (14)段. 階 的 ・随 意 的 支 援 の 定 義. (i)段. 階 的 支 援(graduatedassistance). 支 援 が段 階 的 で あ る とは そ れ が 学 習 者 が 必 要 とす る 最 小 程 度 で あ る こ と をい う。 (ii)随. 意 的 支 援(contingentassistance). 支援 が 随 意 的 で あ る とは そ れ が 学 習 者 か ら要 請 され た 時 にの み 与 え られ る こ と をい う。. またJohnson(2004)で. は以 上 の議 論 を 踏 まえ 、 教 え る側 か らみ て適 切 な指 導 方 策 と. して 次 の条 件 を 挙 げ て い る 。. (15)適 切 な指 導 方策(Johnson2004:138-141を. 少 し修正 した もの). (i)教 授 者 の介 入 は最 も間接 的 な もの(implicitlevel)か ㈲. ら始 め な け れ ば な らな い 。. 教 授 者 は 自分 自 身 も対 話 の参 加 者 と して位 置づ け 、学 習 者 との協 同 的環 境 を作 り タ ス ク を達 成 で きる よ う にす る。. 以 上 の社 会 文 化 理 論 と第2言 語 学 習 へ の適 用 の議 論 か ら次 の よ うな こ とが言 え る だ ろ う。. (1⑤ 社 会 文 化 理 論 と第2言 語 学 習 (i)情 報 処 理 モ デ ル系 のSLA理. 論 の 展 開 の 中 で も文 法 学 習 の 必 要 性 が 認 識 され て き. た。 (ii)適 切 な文 法 指 導 は学 校 文 法 的 な もの で は な い。 (iii)社会 文 化 理 論 は イ ン タ ラ ク シ ョン理 論 や ア ウ トプ ッ ト理 論 の 発 達 心 理 学 的 な発 展 形 態 と も理 解 で き る。 そ こで は 「学 習 」 そ の もの の 捉 え方 や そ の 効 果 的 な進 め 方 に つ い て 有 意 義 な提 案 が な され て い る。 (iv)適 切 な 文 法 指 導 の 一 つ の 可 能 な 方 向 と して 社 会 文 化 理 論 的 な展 開 が 期 待 で き る。. (12). 1077.
(13) 以 上 で 、言 語 教 育 に 関 連 して重 要 で あ る と思 え る3種 の概 念 に つ い て の概 観 を終 了 し た 。 次節 以 降 で は言 語 教 育 で 問題 とな る 意 味論 的諸 問 題(し か し本 論 文 で は 名 詞 と冠 詞 に 限定 され る が)を 説 明 し、 指 導項 目 と して取 り上 げ る 際 の留 意 点 を解 説 す る こ と にする。. 3.名 詞 の 意 味 論 と そ の 教 授 法 本 節 で は 名 詞 の 意 味 論 的 に重 要 な 特 性 を 議 論 し、 そ れ を指 導 す る際 の 方 法 につ い て 、2節 の知 見 を踏 まえ て 説 明 して い くこ とに す る 。 こ こで も紙 面 の関 係 か ら、名 詞 に 関 わ る 全 て の 話 題 に 言 及 で き な い の で 、3,1可 算 名 詞 と不 可 算 名 詞 の 意 味 論 、3.2 に そ の教 授 法 に絞 っ て議 論 を進 め る こ とにす る 。. 3.1可. 算 と不 可 算 名 詞 の 意 味 論. 名 詞 は 物 を 示 す 、 と一 般 的 に 言 わ れ る が 、 実 際 に は 、 出 来 事(trip,haircut,sightseeing, sun-bathingな redな. ど)や 、 属 性 ・性 質(cleverness,rapidity,honesty,pride,warmth,tallness,. ど)、 動 作(walk,swim,desire,attempt,answer,riseな. government,democracy,universityな aerodynamicsな. ど)、. ど)、 天 候(rain,snow,stormな. 一 般 的 に 、 名 詞 を 不 定 冠 詞aが. 学 問 ・ 技 術(mathematics,sociology, ど)と い う よ う に 、 多 彩 な 事 物 を 示 す 。. つ け られ る可 算 名 詞 、つ け ら れ な い不 可 算 名 詞 に二. 分 す る が 学 校 文 法 で は 、 普 通 名 詞(car,cat)、 物 質 名 詞(water,iron,milk,money)、 名 詞(Tokyo,Kenji)の5つ. ど)、 組 織 ・機 関(school,. 集 合 名 詞(family,police,people,fish)、. 抽 象 名 詞(peace,difficulty,happiness)、. に 分 類 す る 。 可 算 、 不 可 算 の2分. 固有. 法 と 学 校 文 法 の5分. 法. と をあ わ せ て 考 え る と、 次 の よ う に な る。. (17)名. 詞の分類. 可算名詞 不 可 算 名 詞:物. 普 通 名 詞(car,dog)、 質 名 詞(iron,water)、. 集 合 名 詞(family,people) 抽 象 名 詞(peace,happiness)、. 固 有 名 詞. (London). ま ず 普 通 名 詞 の 概 念 を 復 習 し よ う 。 例 え ば 、carと を 呼 び 覚 ま す 。 し か し 、carは. 具体的な個別の. い う普 通 名 詞 は. 「車 」 と い う 概 念. 「車 」 を 指 す の で は な く、 「車 の 概 念 」、. 「車 と い う も の の 種 類 」 を 指 す と 考 え ら れ る 。 「あ る も の の 種 類 」 と は 、 結 局 の の 集 合 」 と も 読 み 替 え で き る 。 だ か らcarと. は. 「あ る も. 「車 と い う も の の 種 類 」 で あ り、 そ. れ は 「車 の 集 合 」 を 示 す と い う こ と に な る 。 し か し 「こ れ は 車 だ 」 と い う 時 に は "Thi siscar"で は な く"Thisisacar1'と い う よ う にaを つ け な くて は い け な い 。 こ の 種 類 と具 体 物 の 関 係 は タ イ プ と トー ク ン と も言 わ れ る 。"a"が. [106]. つ くの は 、 あ る 種類. (13).
(14) に属 す る 要 素 の 中 で 、 他 の 要 素 と 区 別 が つ け られ る 場 合 に つ け る。"Acar"と. なれ. ば も う集 合 で は な くて 、 そ の 中の 一 要 素 、 つ ま り個 別 の もの を示 す の で あ る。 不 定 冠 詞aの 働 き は、 種 類 か ら個 別 の 要 素 を取 り出す と考 えれ ば よい こ と に な る。 次 に不 可 算 名 詞 を 考 えて み よ う。 例 え ばironな. ら、 これ は鉄 とい う物 質 を 示 して. い て要 素 の 集 合 で は な く、 鉄 とい う性 質 を持 つ 種 の 呼 び 名 で あ る。 どの よ うに 切 り 取 っ て もそ れ はironで あ る。 も と も と 分 け よ う と思 え ば 分 け ら れ る よ う な 個 別 的 要 素(distinguishableindividuatedobjects)が. 集 ま って い る集 合 で は な く、 個 別 性 の な. い 継 続 的 物 質(undistinguishablecontinuoussubstance)を. 指 す の でaを つ け て そ こ. か ら個 別 要 素 を取 り出 す こ とが で きな い 。 だ か らaを つ け ない 。 取 り出す に は量 を示 す 表 現 をつ け な け れ ば な らな い(例ashiploadofiron,threetonsofiron)。. 繰 り返 す. がaを つ け られ る の は 、 個 別 的 に識 別 可 能 な要 素 が 集 ま って 集 合 を な して い る よ う な 場 合 に 限 られ る の で あ る 。 また 、rainな ど も原 則 的 にaを つ け ない 。 しか し、 これ に light,heavyな. ど の 語 が つ い て 、 雨 の な か で も要 素 と して 見 え て くる とaが 必 要 に な. る(alightrain「. 小 雨 」)。同 様 に抽 象 名 詞 も、 要 素 が 集 ま って 集 合 を な して い るわ け. で は な い 。 だ か ら不 定 冠 詞aが つ け ら れ な い の が 普 通 で あ る。 例 え ばhappiness(幸 福)と. は心 の あ る状 態 を 示 して い て 、構城 要 素 が あ る わ け で は な い 。 しか し、 抽 象 的. に 思 わ れ る 名 詞 の 中 に は 不 定 冠 詞 の つ く も の が あ る 。(18a)はkindness(親. 切 さ). が あ る 個 別 の 「親切 な行 為 」 と して取 り出 され て い る 。 形 容 詞 や 関 係 詞 節 が つ く こ と で種 類 の な か で の あ る要 素 と して 他 と区 別 で き る よ う に 感 じ られ る場 合 、(18b,c)の よ うに不 定 冠詞 が つ く。. (18)a.Hedidmeakindness. b.Shehasadeepknowledgeofchemistry. c.Hefeltareluctancetoacceptmyoffer.. さ て さ ら に 可 算 性 、 不 可 算 性 を 考 え て み よ う。pebble(小 bean(豆)-rice(コ. 石)-gravel(砂. 利)、. メ)の 対 の 区別 は何 で あ ろ うか 。 前 者 は 可 算 名 詞 で あ り後 者 は不. 可 算 名 詞 で あ る。 可 算/不 可 算 の 区 別 は モ ノ の性 質 か ら意 味 論 的 に 次 の よ う に ま とめ られ る(SeraandGoodrich2010)。. ⑲. 可 算 名 詞 一 個 体(solid)、. 個 別 的(individuated)、. 不 可 算 名 詞 一 継 続 的 物 質(continuoussubst乏mce)、. 区 別 可 能(distinguishable) 非 個 別 的(non-individuated)、. 区 別 不 能(un‐distinguishable). 上 記 の 関 係 は 簡 単 に 言 う と 、 可 算 性 は 一 体 的 な モ ノ(solidobjects)に. (14). C1057. 対 応 し、 不 可.
(15) 算性 は 非 分 離 的 な 集 積(aggregates)に. 対 応 す る 。 しか し、 同 じ よ うな 集 合 、 集 積 物. で も可 算 不 可 算 と区 別 さ れ る こ とが あ り、 認 知 的 に 個 別性 、 区 別 可 能 性 が あ る と認 め られ れ ば 可 算 、 個 別 的 に捉 え られ ず 区 別 で きな い と判 断 され た モ ノは 不 可 算 名 詞 と され る 。 と ころ で そ の 認 知 的 判 断 は 共 通 とい うわ け で は な く判 断 は 言 語 圏 に よ って 異 な っ て い る。 英 語 で はfurniture(家 (jewelry)は. 具)、soap(石. 鹸)、 果 物(fruit)、 宝 石 類. 全 て 不 可 算 扱 い で あ る が 、 ス ペ イ ン 語 の そ れ ぞ れ の 対 応 語mueble、. jab6n、fruta、joyaは. 可 算 名 詞 で あ り複 数 化 可 能 で あ る(SeraandGoodrich2010)。. 従 っ て 意 味 的 区 別 の 根 底 に あ る 認 知 的 判 断 に 普 遍性 が あ る わ け で は な く、 各 言 語 の 使 用者 が 「一 体 的 な モ ノ と捉 え る か 、 集 積 物 と して捉 え る か 」 とい う相 対 的 な判 断 で 規 定 され て い る 。つ ま り各 言 語 の 文 法 規 定 上 、(20i)の. よ うな 環境 に 出 現 す れ ば 可 算 性 、 5. (20ii)の よ う な環 境 に出 現 す れ ば 不 可 算 性 を持 つ と判 断 され るの であ る。. ⑳(D可. 算 名詞 とは 次 の よ うな 文 法構 造 に 典型 的 に現 れ る もの を い う。 数 的 表 現(one,two,three…)+Ns 不 定 的 数 表 現(some,afew,several)+Ns. (ii)不. 可 算 名詞 とは 次 の よ うな 文法 構造 に典 型 的 に現 れ る もの をい う。. 量 的 測 度 表 現(grainsof,piecesof…)+N 不 定 量 的 表 現(some,much,little…)+N. そ れ で は 日 本 語 は ど う で あ ろ う か 。 日本 語 が 英 語 と違 う こ と の 一 つ と し て つ い てあ ま りこ だ わ ら な い と い う こ とが あ る。 例 え ば 文 は ネ コ が1匹. で も3匹. 「数 」 に. 「塀 の 上 に ネ コ が い る 」 と い う. で も か ま わ な い 。 も ち ろ ん 英 語 で はacat、catsと. 区 別 しな. け れ ば な ら な い。 ま た 日 本 語 で は 英 語 で い う 普 通 名 詞 、 物 質 名 詞 で も助 数 詞 (numerativeあ. る い はclassifier)を. 使 う(例:ネ. 名 詞 の み 測 度 表 現(measurephrases)や cats、twosheetsofpaper、threecubesofice)。. 、 紙2枚)。. 英語 では不可算 使 う(例:three. 日本 語 は こ の点 か らマ ヤ 語 な ど と. 同 じ く 「分 類 詞 型 言 語 」(classifierlanguage)に andGentner1997)。. コ3匹. 分 類 詞(classifier)を. 分 類 さ れ て い る(Lucy1992,Imai. 日本語 は、数 や量 に こだ わ らな い場 合 に は. 「ネ コ が い る 」、. 「ビ ー ル が あ る 」 の よ う に 名 詞 を そ の ま ま 使 う 。 ま た 数 や 量 に 言 及 す る 場 合 、 助 数 詞 (二 分 類 詞)を. 付 け る 。英 語 な どの. 「可 算 一 不 可 算 区 別 型 言 語 」 で の 不 可 算 名 詞 の 類. 推 か ら、 日本 語 で は 全 て を不 可 算 的 に扱 って い る、 あ るい は可 算 と不 可 算 の 区別 を し な い と 考 え る 立 場 も あ る(外 砂 利 、3袋. 見 上 全 て 、 数 詞+助. 数 詞+名. の 米 の よ う に 英 語 の 不 加 算 的 表 現 を す る か ら)。. 詞:3袋. の リ ン ゴ 、3袋. の. し か し よ く考 え る と 日 本. 語 話 者 もモ ノ の 個 別 性 と継 続 的 非 分 離 性 を 認 知 的 に 区 別 して い る こ と は. 「3つ の 」、. 「多 数 の 」 と い う 数 的 表 現 は 個 別 性 の 認 め ら れ る モ ノ に の み 使 わ れ 、 非 個 別 的 な モ ノ. [104]. (15).
(16) に は適 用 され な い こ とか ら も分 か る 。. (2Da.3つ. の リンゴ. b.3つ. の卵. c.3つ. の小 石. d.3つ. の旦. e.*3つ. の 砂 利(cf.3キ. f.*3つ. の 米(cf.3キ. (22)a.多. ロ の 砂 利) ロ の 米). 数の リンゴ. b.多 数 の 卵 c.多 数 の 小 石 d.多 数 の 豆 e.*多. 数 の 砂 利(cf.多. f.*多. 数 の 米(cf.多. 量 の 砂 利) 量 の 米). 以 上 の例 か ら も分 か る よ う に 、 日本 語 話 者 は意 味 論 的 な 区 別 を根 拠 に した認 知 判 断(19) に よ る可 算 性 、不 可 算 性 につ い て は 当然 理 解 して い る の で あ るが 、 区 別 を 表現 す る 文 法 化 ⑳ が な い た め 、 可 算 、 不 可 算 が あ た か もな い か の よ う な誤 解 が 生 ま れ た の で あ る。 もっ と も 日本 語 話 者 は ス ペ イ ン語 話 者 と同 様 、 い くつ か の単 語 に つ い て 可 算 性 、 不 可 算 性 の基 に あ る個 別 性 につ い ての 判 断が 英 語 話 者 と は ズ レが あ る。. 数 の家 具. cf.*manyfunitures. b.多 数 の 宝 石. cf.*manyjewelrieS. c.多 数 の 石 鹸. cf.*threesoaps. ㈱a.多. 日本 人 英 語 学 習 者 は可 算 、 不 可 算 につ いて は理 解 で きるの で あ るか ら 、成 人 の場 合 に は英 語 と の ズ レ とい う特 異 的 部 分 に注 意 して学 習 す れ ば よい こ と に な る。Samuelson ..Smith(1999)に. よれ ば 英 語 母 語 話 者 で も3歳 まで は可 算 名 詞 が 個 別性 を持 つ モ. ノ を示 す こ と を習 得 で きて い ない 。 まず 多 数 の 可 算 名 詞 を覚 え てい くなか で 、 それ ら が 個 別 性 を持 つ モ ノだ と分 か って くるが3歳 で は未 だ不 可 算 名 詞 が 非 個 別 性 を持 つ モ ノ に使 われ る こ と は習 得 で きて い ない とい う。 可 算 、 不 可 算 名 詞 とそ の 意 味 論 的 概 念 で あ る個 別 性 、 非 個 別 性 との 対 応 関 係 は一 挙 に学 習 され るの で は な く7歳 くら い まで か か る とい う指 摘 もあ る(Keil1979)。. (16). [103.
(17) 3.2名. 詞 の教 授 方 法. 学 習 者 の 発 達 段 階 に応 じて指 導 法 は 当 然 異 な る。2節 で 述 べ た よ うに 、児 童 で は 演 繹 的 な ル ー ル 中 心 の 指 導 に は馴 染 ま な い 。 そ こ で 当 然 、 多 くの 事 例 を示 し仮 説 形 成 一 帰 納 的 発 見 学 習 に よ り ル ー ル を 暗 黙 的(implicit)に 学 習 さ せ る 方 法 を 採 る 。一 方 、 中学 校 高学 年 以上 で あ れ ば 、 意 味論 的知 識 の演 繹 的 説 明 で も十 分 理 解 で きる の で あ る か ら、 ル ー ル を社 会 文 化 理 論 的 に 配 慮 し、段 階 的 ・随 意 的 支援(→(14))、 適 切 な 指 導 方策(→(15))を 計 画 す れ ば よ い と思 わ れ る。 どの よ うな教 授 環 境 で も共 通 して重 要 な点 は 、教 授 者 は 自分 自 身 も対 話 の参 加 者 と して位 置づ け 、学 習 者 との協 同 的環 境 を作 り タス ク を達 成 で きる よ う にす る こ と を心 掛 け る こ とで あ る。. 3.2.1早 期 英 語 教 育 の場 での 名 詞 の扱 い 一般的 に 、 児 童 を学 習 者 とす る環 境 で は文 法 規 則 中心 の明 示 的 な指 示 的教 授 方 法 は 採 られ るべ きで は な い。 絵 カ ー ド、掲 示 図、CD、DVDな. ど を総 合 的 に使 い、 学 習 者. に英 語 の 各 表 現 に対 応 す る身 体 化 され た 認 知 の 形 成 を 目指 す べ きで あ る。 名 詞 指 導 に つ い て は 、 次 の 項 目 に留 意 して 指 導 計 画 を立 案 す る と よい と思 わ れ る。 教 室 で は教 授 者 、 児 童 共 に身 体 的 運 動 が 可 能 な空 間 を確 保 し、 教 授 者 は表 現 の 意 味 理 解 を補 完 す る 意 味 的 に 明 瞭 な ジ ェス チ ャー を多 用 し、 身 体 化 され た 認 知 と して の 経 験 に な る よ う工 夫 す る 。 学 習 者 に も教 授 者 の ジ ェス チ ャー を反 復 的 に まね る こ と を指 導 す る。. ⑳. 児 童 へ の 名詞 の教 授 法. ①. 絵 カ ー ドを 使 い 日常 的 、 具体 的 な モ ノの 名 前 を教 え る 。初 期 に は 音声 と概 念 の 結 び つ きの み を 計 画 し文 字 は導 入 しな い(数 回 の絵 カ ー ドと英語 の 音声 の提 示 で即 時習 得現 象が み られ る(濱 本2008))。. 学 習 され た語 彙 が増 え る と学 習者 は音 声. の記 憶 の便 法 と して カ タカ ナ を 使 用 し始 め る 。 こ の 時点 で ア ル フ ァベ ッ トを音 声 表 示 の道 具 と して教 え る よ うにす る と定 着 し易 い。 ②. 語 彙 の確 認 に は ゲ ー ム を取 り入 れ る(こ れ に は 窓 を沢 山つ け た 家 の 後 ろ に カ ー ド を置 き、 窓 を 開 け させ そ の絵 の英 語 を言 わせ る ゲ ー ムや 、 グ ル ー プ全 員 に絵 カ ー ドを持 た せ た カ ー ドコ ー ル ゲ ー ム な どが あ る)。. ③. 身 体 部 位(toes,legs,lapな. ど)の 学 習 で は全 身 反応 教 授 法(TPR)を. 取 り入 れ 、. 動 作 と共 に 身 体 の 名 称 を学 習 させ る(例:Head,Shoulders,KneesandToesの 歌 と動 作)。 ④. 可 算 一 不 可 算 の 順 で 教 え て い く。 英 語 の 母 語 習 得 で も可 算 名 詞 か ら不 可 算 名 詞 の 習 得 に 進 む こ とが 報 告 され て い る こ とか ら、 日本 人 の 児 童 の 学 習 で も先 ず 、 可 算 名 詞 と個 別性 の 対 応 を多 数 の 例 を与 えて 学 習 させ る 。. ⑤. 可 算 名 詞 を提 示 す る 時 に は 、 両 手 で 丸 く包 む よ うな ジ ェス チ ャー を行 い 、 一 体 性. [102]. (17).
(18) を持 つ モ ノ(solidobject)で あ る こ と を 身体 化 され た 認 知 の レベ ル で 経 験 させ 、 " anapple,""aba11"の よ う に必 ず 不 定 冠 詞 を付 け て 音 声 化 す る。 不 定 冠 詞 と個 別 的 一 体 性 の 意 味 的 対 応 を 身体 的 に認 知 させ る こ とが 目標 で あ る。 ⑥. さ ら に 不 可 算 名 詞 を提 示 す る場 合 、 理 解 の 容 易 な 典 型 的 な 不 可 算 性 一 非 個 別 性 の 対 応(日. 本 語 で も 「多 数 の 」 で は な く 「多 量 の 」 を付 け る こ との で きる 名 詞. (garbage,iron,milk,sugar等)を. 学 習 させ る こ とが よ い。 こ の 際 、 両 手 は 指 を. 全 て 広 げ 、 手 の ひ ら を上 に し、 対 象 物 が 集 積 的 で 一 体 性 が な い こ と を ジ ェ ス チ ャ ー で 表 現 す る。 もち ろ ん こ れ は 、 不 可 算 性 一 非 個 別 性 の 対 応 を 身体 化 され た 認 知 段 階 で イ ン プ ッ トさせ る た め で あ る 。 例 え ば"Alotofgarbage1"と. 言い. な が ら ゴ ミ を指 の 問 か ら こぼ す よ う な動 作 をす る。 ⑦. そ の 後 、 日本 語 話 者 に は 集 積 的 で は な く一 体 性 が あ る と思 え るの に、 英 語 で は不 可 算 名 詞 とす る もの(food,fruit,furniture,soapな. ど)を 説 明 す る 。 これ ら は英. 語 に 特 異 な 判 断 で あ っ て 説 明 は極 め て 難 しい(こ れ らは ス ペ イ ン語 で は 全 て 可 算 名 詞 で あ る)。fruitで あ れ ば数 種 の 果 物 類 の 絵 を描 き、vegetablesを 示 す 各 種 の 野 菜 の 絵 と対 比 させ る。 そ し て 野 菜 全 体 を指 示 棒 で 囲 む よ うに しな が ら"Do youlikevegetables?"と. 言 う。 そ れ か ら果 物 類 全 体 の 絵 を指 示 棒 で 囲 む よ う に し. な が ら"Doyoulikefruit?"と. 聞 く。 この よ う に して"fruit"は. 「 種 」概念であ. 6. る こ と を 理 解 させ る(詳 ⑧. し く は 注6参. 照)。. 常 に 複 数 で 使 わ れ る 名 詞(scissors,pajamas,pants,socks,shorts,trousersな の 指 導 で は"Whatarethey?"あ. る い は"Whosepantsarethese?"の. く複 数 を 意 識 させ る 構 文 を 使 っ て 提 示 す る 。"Thisisapairofscissors"と. ど) よ うに 強 い う. 形 式 を 与 え る と単 ・複 で 混 乱 す る 。 強 く 複 数 を 意 識 させ る こ と が 肝 要 で あ る 。. 3.2.2成. 人 を対 象 と した場 合 の名 詞 の指 導. こ こ で成 人 とは形 式 的 操 作 期 を経 験 しさ らに抽 象 思 考 に習 熟 した と思 わ れ る 中学 校 高 学 年 以 上 とす る。 この 段 階 に お い て も名詞 の意 味 論 的 問題 につ い て上 述 ① ∼⑧ が 明 瞭 に理 解 さ れ て い な い こ とが 多 くあ る。 そ の場 合 、① ∼ ⑧ の項 目につ い て 、 よ り演 繹 的 説 明 を行 え ば よい 。 こ こ で は新 奇 な語 句 に遭 遇 した場 合 、 ど の よ う な教 授 法 が あ り得 る の か の 一 例 をあ げ た い。 これ はLittlemoreandLow(2006:34)か あ る。. (25)Classdiscussionofthemeaningof`cradlework' StudentAWhat'scradlework? TeacherWellthat'swhatIwasgoingtoaskyou.Doyouknowwhatacradleis? StudentB[P . (1s>. limesarockingmotionwithherarms]. C101]. らの実践例 で.
(19) Whydoyouthinkyouwouldtalkaboutcradleworkontowerblocks?. Teacher. Doyouknowwhatatowerblockis? StudentA. [Mimesatall,thinshapedTowerblocks.Birmingham.. Teacher. Ifyoulookabitfurtherdownyou'vegotoutsidecradles,ontheoutside oftowerblocks.. StudentB. Oh,butmaybe,1'mnotsurebuterhowcanIsayCmimesupanddown motion]OutsidethehighbuildinginacradleCmimesrockingmotion].. Teacher. Sowhydoyouthinkit'scalledacradle?. StudentB. It'sunstable.. Teacher. Anyotherreasons?. StudentC. [Standsupholdinghischairunderhislegs,mimespaintingandrocking, thenmimesthehighsidesofacradled. [Nod]. StudentA, ・i. こ の場 面 は 「高 層 建 築 の 外 側 に つ る され た 作 業 台 で の 作 業 」 を示 す"cradlework" とい う新 出 の語 に つ い て 、4人 の 日本 人 の 学 生 と教 授 者 の社 会協 同 的 な 意 味 確 認 作 業 を示 して い る 。教 授 者 は学 生 に 一 挙 に意 味 を教 え て し まわ ず 、 「揺 りか ご」 を手 が か りに推 理 させ て い る。 また 学 生 た ち は ジ ェス チ ャー を多 用 して い る。 こ れ は彼 らが 語 彙 の 意 味 を見 つ け る方 策 と して ジ ェス チ ャー を使 い 、 身 体 的 経 験 を呼 び覚 ま し、 そ こ か ら連 想 を つ な げ て い こ う と して い るの で あ る。 ま たStudentBの surebuterhowcanIsay[mimesupanddownmotion]"で. 発 話 、`'1'mnot. 見 られ る よ う に言 語 的. 表現 に 行 き詰 った 際 の 補 完 的 機 能 もジ ェ ス チ ャー が 果 た して い る。StudentCは. 一言. も発 せ ず に ジ ェ ス チ ャー だ け で 彼 の 理 解 を 表 現 し、 会 話 に 参 加 して い る 。 こ の よ うに 成 人 に対 す る指 導 の場 合 で も以 下 の 点 が 注 意 され る べ きで あ ろ う。 (i)社 会 文 化 理 論 的 な足 場 作 りに よる 共 同学 習 は重 要 で あ り、 そ の 申 で は段 階 的 ・随 意 的 支 援 の 方 策 が と られ((14)参照)、 適 切 な 指 導 方 策 と して 「教 授 者 の 介 入 は最 も問接 的 な もの か ら始 め な け れ ば な らな い」、 「 教 授 者 は 自分 自身 も対話 の 参加 者 と して 位 置 づ け、 学 習 者 との 協 同 的 環 境 を作 り タス ク を達 成 で き る よ う にす る」 配 慮(㈲ 参 照)も 重 要 で あ る。 伍)ジ. ェス チ ャ ー も感 覚 経 験 か らの連 想 の連 鎖 を作 り出す 上 で重 要 で あ り、 さ らに そ. の 言 語 に対 す る補 完 的 機 能 に も注 目 しな けれ ば な らな い。. 以 上 で 名 詞 そ の もの に関 す る意 味 論 と教 授 法 の 議 論 を終 了 し、 次 節 で は冠 詞 の 問題 に移 る。 も っ と も この 両 者 は密 接 に関 連 して い るの で 、 以 下 の 議 論 で も幾 分 か の重 複. Cloo7. (19).
(20) が 避 け ら れ な い。. 4.冠 詞 の 意 味 論 と 教 授 法 こ こ で は冠 詞 の 意 味 論 を概 観 し、 さ ら に そ れ を指 導 す る 際 の 方 法 につ い て 、2節 の 知 見 を踏 ま え て説 明 して い くこ と にす る。 不 定 冠 詞 につ い て は名 詞 の と こ ろ で基 本 的 な説 明 を終 え たの で 定 冠 詞 を 中心 に議 論 を展 開 してい く。. 4.1不 定 冠 詞 と定 冠 詞 の 意 味 論 前 節 で 不 定 冠 詞 は集 合 か らの 取 り出 しで あ る と説 明 した 。 取 り出 せ るの で あ るか ら 対 象 につ い て 特 定 的 で あ る はず で あ る。 しか し事 情 はそ れ ほ ど単 純 で は ない 。 次 の 例 を見 られ た い 。. (26)a.Kyokolikesacat.Shefeedshimeveryday. b.*Kyokolikesacat.Shefeedsoneeveryday. ②7)a.Kyokowantstobuyamotorcycle.Shewillbuyittomorrow. b.Kyokowantstobuyamotorcycle.Shewillbuyonetomorrow.. (26)で 見 る よ う に 、 動 詞likeの 目 的 語 位 置 に くるa+Nは. 特 定 性(specificity)が. との 間 に存 在 して い る こ とが前 提 で あ り、 代 名 詞himな. ら受 け る こ とが で きるがone. 対象. で は特 定性 を前 提 にで き な い の で容 認 され な い 。 と こ ろが 伽 の よ う に動 詞wantが. く. る と非 現 実 性 を示 し、非 特 定 解 釈 も可 能 に な る 。従 っ て不 定 冠詞 の 意 味 論 で は 、 対 象 との 間 に特 定 性 が前 提 に な る が 、不 確 定 性 を容 認 す る環 境 で は不 特 定 で も よい こ とに 注 意 しな け れ ば な らな い。1節 で取 り上 げ た例 を再 度確 認 しよ う。. ⑫81a.DoyoulikeanapPle? b.Doyouwantanapple?. (28a)が. 「あ な た は リ ン ゴが 好 きで す か 」 の 意 味 と して は相 応 し くな い の はanapple. の 特 定 性 が 前 提 に さ れ る か らで あ る 。(28b)は の 意 味 に対 応 す る こ とが で き、 そ れ はwantが. 「あ な た は リ ン ゴ が 欲 しい で す か 」 非 現 実 環 境 を作 り出 し、 そ の 中 で はan. appleは 不 特 定 読 み が 可 能 だ か らで あ る。 そ れ で は定 冠 詞 の 意 味 論 は ど う考 えれ ば よい の か を見 てみ よ う。. (29)a.Adogbarkedatme. b.Thedogbarkedatme.. (20). [99].
(21) 上 記 の例 で 、(a)はdo9の. 示 す 対 象 との 問 に特 定 性 が あ って もそ れ は話 し手 にの み 明. らか で あ り、 聞 き手 に は指 示 対 象 が 特 定 しない 。 そ の 対 象 は聞 き手 、 話 し手 が 共 有 す る文 脈 で は新 規 性(novelty)が. あ る。(b)を 選 択 す る に は 次 の よ うな 条 件 を考 え る必. 要 が あ る。. (30)i.話. し手 は指 示 す る対 象 を 、DOGと. い う集 合 に属 す る特 定 の もの と考 えて い る。. ii.話し手 は 、 指 示 す る対 象 が 自分 だ け で は な く、 聞 き手 に と っ て もそ の環 境 で 一 つ の もの と して確 認 で き る と信 じて い る 。. (30i)だ け で は 不 定 冠 詞 が 選 択 され る が 、 さ ら に(30ii)が 加 わ る こ とで 定 冠 詞 が 選 択 され る の で あ る 。 この(ii)条件 は、 既 知 性(familiarity)が が あ っ た と して も)あ る一 つ(uniqueneSS)に. あ り、(た と え 同 種 の もの. 定 ま る とい う こ とで あ る 。 しか しあ る. 対 象 物 が 初 め て 文 脈 に 登 場 して きた か の よ うに 見 え る に もか か わ らず 定 冠 詞 が 付 け ら れ る 場 合 も多 い 。 これ に は 間接 照 応 の ケ ー ス や イデ ィオ ム 化 した もの が 含 まれ る。 そ れ で は 次 に 指 導 方 法 の 中 で 間接 照 応 の ケ ー ス を取 り上 げ て み よ う。. 4.2冠. 詞 の指 導 方 法. 指 導 例 を2例 示 す 。 一 つ は大 学 生 に 対 す る 弱 い既 知性 を持 つ 定 冠 詞 の 用 法 、 次 に 早 期 英語 教 育 に お け る定 冠詞 の扱 い を 示 す もの で あ る 。. 4.2.1成. 人 の場 合 の定 冠 詞(間 接 照応)の 指 導. 次 に こ の弱 い既 知性 を持 つ 間接 照応 の ケ ー ス の実 際 の指 導例 を紹 介 し よ う。 対 象 の学 生 は著 者 の 近畿 大 学 文芸 学 部 で の応 用言 語 学 の受 講 者 で あ り、彼 らは こ の授 業 まで に 既 に基 本 規 則(30)の 学 習 は終 了 して い る。. (鋤. 定 冠 詞 の 意 味 論(weakfamiliarityに. つ い て) (2009年11月. A.課. 題. 間 接 照 応(弱. い 既 知 性 し か 持 た な い 場 合)の. 実施. 学 生 数43、2-3年. 生). 定 冠 詞 の用 法 に 関 わ る規 則 を. 発 見 す る。 前 提:基. 本 規 則 を了 解 して い る。. 定冠詞基本規則 Ifyousee"the+N"construction,youshouldassumethatthereisaprevious appearanceofNinthecontext. 目 標:拡. 張 規 則 を得 る。. 拡 張 規 則(弱. い 既 知 性). [987. (21).
(22) Ifyousee"the+N"construction,youmayexpectsomethingrelevanthas appearedinthecontext.. B.教. 授 手 順(TeachingProtocol:TP). (i)定. 冠 詞 の 基 本 規 則 を思 い 出 させ る。. ㈲. そ の 規 則 に適 合 しな い 例 を提 示 。. ㈲. タス ク を明 示(規 則 を拡 張 し例 外 的 な事 例 も説 明 で き る よ う にす る)。. (iv)タ ス ク に興 味 を持 た せ る。 (v)適 ㈹. 切 な ア ドバ イス を与 えて 問 題 解 決 に導 く。. 学 習 者 間 の協 同作 業 を奨 励 す る 。. (vii内 的 言 語 を口 頭 で 述 べ させ る。 ㈹. 目標 で あ る タス ク 「拡 大 定 冠 詞 規 則 」 に到 達 す る。. D.実. 際 の授 業 展 開 の 要 約. (i)既. 習 項 目の確 認 と問 題 点 、 タス クの提 示 ⇒TP(iiXih). the+Nは. 予 想 に 反 して 、 多 くの 場 合 、初 め て導 入 され た 語 に も つ き ます 。 こ れ は. 明 らか に 基 本 的 な 規則 で は 説 明 で き ませ ん ね 。 ど う考 え れ ば よい の で し ょ うか 。 次 の 例 を 読 ん で 一 緒 に 考 え て 見 ま し ょ う。. Olboughtacaryesterday,butthetiresarealittletooold. ②Thejetranintosometurbulentweather.Tokeepthepassengerscalm,the flightattendantsbroughtoutthebeveragecart. OKarentookthetraintoRomeyesterday.Thetriptook3hours. ④Mybest丘iendLindaandherhusbandRodrecentlydivorcedaftereightyears ofmarriage.Thesplitwasamicable,andI'vekeptintouchwiththem. ⑤lhadmypalmreadsixmonthsago.Thewomantoldmelwouldbemoving andshewasright. OMarydressedthebaby.Theclothesweremadeofpinkwool. ⑦loncehitastuckwindowwithmy飴tstotrytoshakeitloose。Onehandwent throughaglasspane.Ittooktenstitchestoclosethewound. ●Tenyearsago,Billimpregnatedhisgirlfriend,Sally.Bothwere16.WhenSally's conditionbecameobvious,herparentssenthertoamaternityhomeoutof state,andthebabygirlwasplacedforadoption.. (ll)展. (22). 開. ⇒TP(iv)(v)(vi). C97].
(23) ①. さ て何 か 気 づ き ま した か?気. に な る こ と、分 か っ た1と. 思 う点 を 隣 の 人 と意 見. 交 換 してみ て くだ さ い。 ②. そ れ で は一 文 ず つ 音 読 しま し ょう。 そ の時 、文 の意 味 も良 く考 え て くだ さい ね。 →. 必 要 で あ れ ば 、 各 文 につ い て 簡 単 に解 説 し、 下線 部 が 文 脈 で初 出 で は あ るが 、 全 く文 脈 上 、 何 らか の 要 素 と関 連 が ない か を示 唆 す る。. ③Aさ. ん 、君 の 意見 は面 白 そ うで す ね 。 み ん な に紹 介 して くれ ませ ん か?. そ うで す ね 。The+NのNそ. の もの は 前 に出 て きて い な くて も、 何 か 関 係 す る も. の が 出 て い ます ね 。 → ④. 一 文 ず つ 、 下 線 部 と関 連 性 を持 つ 要 素 を指 摘 させ る 。 とい う こ とは … そ うで す ね 。Bさ ん 今 言 って い た こ と を皆 に 言 って み て くだ さい 。. ⑤. 「関 係 す る もの が あ る と思 え ばthe」 とい う こ とで す ね 。. ⑥. 先 週 学 習 した基 本 ル ー ル を さ らに拡 張 しな け れ ば な り ませ ん 。. (iii)privatespeechか. ら内 的 言 語 化. ⇒TP(vii). ①. そ れ で は 発 見 し た こ と を 口 に 出 し て い っ て 見 ま し ょ う。. ②. 「文 脈 で 関 係 す る も の が あ る と思 え ばthe」. ③. こ れ を 「拡 張 ル ー ル 」 と し ま し ょ う 。 ⇒TP㈲. ですね。. (iv)定 着 ①. そ れ で は引 き続 き、 い くつ か の 例 を検 討 し、 本 当 に基 本 ルー ル と拡 張 ル ー ル で説 明 が つ くか 見 て み ま し ょ う。 →. こ こで 小 説 の 一 ペ ー ジ を渡 し、 定 冠 詞 に下 線 を. 施 し、 そ れ をル ー ル で 説 明 で き るか 、 協 同 作 業 で 確 認 させ る。 ②. そ れ で は 、 最 後 に 今 日の 学 習 結 果 を要 約 し、 コ メ ン トを書 い て 下 さい 。. 以 上 の よ うな授 業 の 後 、学 生 た ち の コメ ン トを分 析 した 。 多 くは 「問 題 点 が 解 消 した よ うに 感 ず る 、作 文 や 会話 に 応 用 で きそ う」 との コメ ン トを よせ た 。これ が どの 程 度 、 定 着 した 知識 とな っ て い る か は残 念 な が ら確 認 して い な い 。. 4.2.2早. 期 英 語 教 育 の場 で の定 冠 詞 の 扱 い. 早 期 英 語 教 育 の場 で は 、定 冠 詞 そ の もの を指 導 項 目にす る こ とは な い 。 しか し語 彙 学 習 、 ゲ ー ム な ど を通 じ定 冠 詞 の使 用 規 則 の初 歩 を分 か る よ うに計 画 す る 。実 例 を い くつ か 紹 介 す る。. (i)PointtotheN(公. 立 小 学 校3年. 生 ク ラ ス:箱. の 中 に 磁 石 、 果 物 の ミニ チ ュ ア な. ど を 入 れ て い る). [96]. (23).
(24) TeacherYousee,thisboxhasmanythings.What'sthis? ChildROrange. TeacherYes,thisisanorange.Thenwhat'sthis? ChildBAmagnet1 TeacherYesthisisamagnet.Aredmagnet.Thenpointtotheorange.Pointto themagnet. Children[pointingtotheitems? TeacherNowpointtothedoor,pointtotheceiling,pointtothewindow.. (ii)`Lookandsaゾapproach(ア 名 前 の カ ー. ル フ ァベ. ッ ト を 学 習 中 の 小 学 校3年. 生:色. と動 物 の. ド を 使 用). TeacherHereare16cardswithnamesofcolorsandanimalson. Canyoufindawordforacolor?Pickitupandreaditout. ChildA[pickingacard]Red1 TeacherGood.Thenwhocanfindthewordfor`lion'?Pickitup. ChildB[pickingthecard]Lion1 TeacherGood.Nowwhocanfindacardwithananimalnameon? ChildC[pickingupthecardsElephant1 TeacherGood.Thencanyoufindthecardwhichsays`giraffe'? (以 上2つ. の ア ク テ ィ ビ テ ィ はSlatteryandWillis2001:25、71を. ヒ ン ト に し た). (i)は教 授 者 の 指 示 で 学 習 者 が 対 象 を指 さす 簡 単 な活 動 で あ る。 学 習 者 と教 授 者 の 共 通 文 脈 で 指 示 す る こ との で き る もの が 明 確 な場 合 、"PointtotheN"で の 活 動 を 通 じて 指 さ せ る もの(つ. ま りfamiliarityの あ る も の)に. 有 効 で あ る。 こ は 定 冠 詞 が つ き、. 定 冠 詞 が つ け ば そ れ を指 させ る こ との 合 図 で あ る こ とが 自 然 に学 習 さ れ る 。(ii)はa wordとtheword、acardとthecardが. 自然 に対 比 され て い る。 早 期 英 語 教 育 の 場. で は この よ う なゲ ー ム を通 じて の 語 彙 学 習 が 形 を変 え何 度 も現 れ る 。 これ らの 活 動 か ら 自然 にa+Nの. 新 規 性 、the+Nの. 既 知 性 と唯 一 性 が(完. 全 に で は ない にせ よ)理 解. され て く る。. 5.総 括 結 局 、 言 語 は 意 味 を伝 達 す る こ と を主 な 役 割 とす る の で あ る か ら、 言 語 の 教授 者 は 意 味 に 関 わ る 知 識 を充 分 学 習 して お く必 要 が あ る 。 また 同 時 に 学 習 者 の 認 知 発 達 に 応 じた 教 育 法 に つ い て も十 分 な 知 識 を持 っ て い な け れ ば な らな い 。 著 者 が 学 習 者 に応 じ た 知 識 の伝 え 方 の 工 夫 の 必 要性 を痛 感 した の は 早 期 英 語 教 育 に 関 わ る よ う にな っ て か. (24). C957.
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