日本 料 理 に お け る 「あ え もの 」 に つ い て
家 事 教 科 書 に み る 「あ え も の 」大久保
洋 子
1は じ め に 日本 料 理 に お け る 「あ え もの 」 は 献 立 上 副 菜 と して重 要 な役 割 を 占め て い る。 その た め に 古 くか ら 日常 の 食事 に も親 し まれ,そ の 種 類 も多 く工 夫 さ れ伝 承 され て 来 て い る。 しか し 「あ え もの 」 の 定 義 を考 え る と調 理 操 作 と し て の 「あ え る」 か ら 「あ え た もの 」 とす る とそ の 範 疇 は 広 範 囲 と な る。 料 理 の 名 称 か ら 「あ え もの 」を規 定 す べ く 「○ ○ あ え 」 をみ て い くと これ も また は っ き り と し た 区 別 を 引 きか ね る現 状 で あ る。 そ して 現 在 の学 生 達 の 食事 調 査 を分 析 す る と非常 に そ の 出現 率 が 低 く 酢 の物,な ます,浸 し物,サ ラ ダ や 即 席 漬 け な ど と混 用 さ れ て い る。 加 え て 栄 養 的 に もか た よ りの あ る食事 摂 取 状 況 を見 る と,野 菜,種 実 類 の摂 取 に は 最 適 と思 わ れ る 「あ え もの 」の 必 要 性 を感 じる。 そ こで従 来調 理 教 育 の場 で 「あ え もの 」 は どの よ う に扱 わ れ て い た の か 「あ え もの 」 の定 義 付 け を知 る こ と を 目的 に家 事 教 科 書 か ら調 査,考 察 を行 っ た 。 II方 法 学 校 教 育 の 場 に お け る取 り扱 い を見 る た め に,明 治 初 期 か ら現代 に至 る 家事 教 科 書,家 庭 一 般 教 科 書89冊 を調 査 資料 と し た(表1, 2)。 日本 に お け る家 庭 科 教 育 史 の 先 覚 者 で あ る常 見 に よ る と,明 治 期 の教 科 書 は外 国 の翻 訳 家 政 書 を使 用 して お り,日 本 人 に よ る 日本 人 の 家 政 教 科 書 と して 編 集,出 版 さ れ る よ う に な っ た最 初 の教 科 書 は 明 治21年 の林 吾 一 の 家 政 読 本 で あ る とさ れ て い る。 従 って 本 調 査 資 料 は家 政 読 本 か ら現代 の 家 庭 一 般 教 科 書 ま で と した 。 尚,家 政 読 本 か ら昭和11年 中等 教 育 家 事 新 教 科 書 迄 の48年 間 を戦 前 の グ ルー プ 即 ち資 料 番 号 の1∼65番 をA群 と し,昭 和21 年 中 等 家 事 か ら平 成3年 家 庭 一 般 迄 の45年 間 を戦 後 の グ ル ー プ と し,66番 ∼89番 をB群 と し て比 較 検 討 す る こ とに し た。 III結 果 お よ び 考 察 ① 「あ え もの 」 につ い て の採 録 状 況 収録 語 彙,定 義,種 類,実 習例 の 項 目に つ い て 分 類 した(表3)。A群 に お い て 「あ え も の 」 につ い て い ず れか の 項 目 に記 載 され て い る割 合 を見 る と65冊 中 の 約3分 の1の32.3% で あ り,そ れ に対 し てB群 は す べ て に 記 載 さ れ て い る。4つ の 項 目す べ て に つ い て記 載 さ れ て い る もの はA群 で は 非 常 に 少 な く資料63 の み で あ っ た。 収 録 語 彙,種 類 の 項 目は 比 較 的 多 い が 定 義,実 習 例 は少 な くそ れ に対 し て 100%記 載 さ れ て い るB群 で は各 項 目 と も に 記 載 が 非 常 に 多 くみ られ,こ の こ とか ら 「あ え もの」 に 対 す る調 理 教 育 の 重 要 性 が 伺 え る。 A群 の 記 載 が 薄 い の は教 科 書 を使 って の 「あ え もの 」 の 講 義 に 対 す る扱 い が現 代 と異 な っ て い た ため と考 え られ る。 即 ち調 理 に対 す る 内容 が 技 術 や 実 習 で は な く,衛 生 や 栄 養 に 重 点 が 置 か れ て い る傾 向 が 強 くみ ら れ る。表1調 査 資 料 一 覧(A群) No 資 料 名 刊 行 年 著 者 備 考 1 家政 読本 1888(M21) 林 吾 一 2 家事教科 書 1899(M32) 後 閑 菊 野 ・左 方 鎮 子 3 新選 家政 学 1900(M33) 下 田歌子 4 家事教本 1900(M33) 塚本は満子 5 普通家事教科 書 1900(M33) 錦 織竹 香 6 実践家政 法 1901(M34) 山 田稲 子 ・真 能 ま さ き 7 増訂家事教科 書 1902(M35) 後 閑 菊 野 ・左 方 鎮 子 8 新撰家政学(訂) 1902(M35) 下 田歌子 9 家事教程 1902(M35) 星 常 子 ・中 島 与 志 子 10 家政教本 1902(M35) 村 田 脩 ・喜 多 仁 史 11 新編家事教本 1903(M36) 塚 本は満子 12 家事教程(訂) 1903(M36) 星 常 子 ・中 島 与 志 子 13 新撰家事教科書 1904(M37) 児崎 隆 子 ・三 輪 田 真 佐 子 14 最新家事撮要 1906(M39) 佐 々木 君代 15 家事教本 1906(M39) 中島与志子 16 最新家事教科書 1907(M40) 戸 野 み ち ゑ 17 高等女学家事教科書 1908(M41) 教育学術研 究所 18 修 訂三版家事教科書 1908(1VI41) 左 方 鎮 子 ・後 閑 菊 野 19 実 用家事教科書 1908(M41) 甫 守 ふ み 20 家事 堤要 1910(M43) 後 閑菊 野 ・左 方鎮 子 21 新 編家事教科書 1911(M44) 甫 守 ふ み 22 近世 家事定本 1912(M45) 中 島与 志 子 ・星 常 子 23 新 編家事教 科書(訂) 1912(M45) 中島与志子 24 実 用家事教 科書 1912(T1) 家事研究会 25 女学校 用家事教 科書 1912(T1) 竹 島茂雄 26 新撰 家事教科 書 1912(T1) 塚本は満子 27 家事新教科 書 1912(T1) 戸 野 み ちゑ 28 新定教科 家事教 本 1912(T1) 吉村千鶴 29 最新家事教科書 1913(T2) 佐々木君代 30 新編家事教科書 1913(T2) 戸 野 み ちゑ 31 実地応用家事教科 書 1913(T2) 吉村千鶴 32 実用家事教科書 1914(T3) 美 島 近 一 郎 33 新撰家事教科書 1915(T4) 小谷野千代 34 改訂家事新教科書 1915(T4) 戸 野 み ちゑ 35 最新家事教科書 1915(T4) 溝 口 鹿 次 郎 ・土 岐 安 共 36 新定家事教科書 1915(T4) 吉村千鶴 37 家事新教科書 1916(T5) 石 沢吉磨 38 応用家事教科書 1917(T6) 大 江 ス ミ子 39 大 正家事教科書 1917(T6) 開成館 編輯所 40 高等女学用家事教科書 1917(T6) 左 方 鎮 子 ・後 閑 菊 野 41 新 式家事教本 1917(T6) 塚本 は満 子 42 新撰 家事教科書 1918(T7) 中島与志 子 43 新定 家事教 科書 1918(T7) 甫守ふ み 44 実用 家事教 科書 1920(T9) 大 江 ス ミ子 45 近世 家事教 科書 1920(T9) 左 方 鎮 子 ・後 閑菊 野 46 新定 家事教 本 1920(T9) 塚本 は満子 47 新定家事教科 書 1920(T9) 戸 野 み ち ゑ 48 家事教科 書 1923(T12) 家庭経済研究会 49 新時代處女 家事 書 1923(T12) 日本女教員協会 50 現代家事教科 書 1925(T14) 井上秀子 51 綜合家事教科 書 1925(T14) 武 田五 一 52 家事の實 習 1925(T14) 河 口愛 子 53 現代家事教科書 1925(T14) 東京開成館編輯所 54 家事實 習教本 1926(T15) 大 江 ス ミ子 55 現代に於け る實際的家事 1926(T15) 川上紫峰 56 實際的家事教科書 1926(T15) 河 口愛 子 57 現代家事 1926(T15) 甫守ふみ 58 最 新家事 1927(S2) 倉橋 惣三 59 新 編家事教科書 1927(S2) 近藤耕蔵 60 新 編家事教科書 1927(S2) 竹 島茂雄 61 家事 新編 1927(S2) 西 野 み よ し 62 現代 家事備 考 1927(S2) 甫 守 ふ み 63 新 時代 家事教 本 1928(S3) 越 智 キ ヨ 64 現代 家事教 本 1928(S3) 甲斐久 子 65 中等教 育家事 新教科書 1936(S11) 佐保会
表2調 査 資 料 一 覧(B群) No 資 料 名 刊 行 年 著 者 備 考 66 中等家事 1946(S21) 文部省 67 一 般 家 庭 1953(S28) 日本女子大 実教出版 68 家 庭 一 般 1960(S35) 石 山脩平 教育図書 69 高等学校 家庭一般 1962(S37) 宇川和子 好学社 70 新修 家庭 一般 1962(S37) 稲葉 美佐 子 自由書院新社 71 家庭 一 般 1962(S37) 松平 友子 中教 出版 72 改訂版家庭一般 1962(S37) 石 山脩平 教育図書 73 家 庭 一 般 1963(S38) 野上 衆子 開隆堂 出版 74 家 庭 一 般 1963(S38) 成 田1幀 教育 図書 75 家 庭 一 般 1963(S38) 石 三 次 郎 ・稲 垣 長 典 学研書籍 76 家 庭 一 般 1969(S44) 山本 キ ク 一 橋 出版 77 新編家庭一般 1973(S48) 奈 良女 子大学家政学会 実教 出版 7s 高校家庭一般 1973(S48) 高校家庭 科学習指導研究会 実教 出版 79 高校家庭m 1」73(S51) 高校家庭 科学習指導研究会 実教 出版 80 改訂家庭一般 1976(551) 稲 垣長典 学研書籍 81 改訂版家庭一般 1979{S54) 青 木 茂 中教 出版 82 家 庭 一 般 1982(S57) 伊 藤 清 枝 ・松 原 治 郎 東京書籍 83 家 庭 一 般 1982(S57) 酒井 ノブ子 学習研 究社 84 新版家庭一般 1988(S63) 小 池 五 郎 ・千 波 千 代 教育 図書 85 新家庭一般 1991(H3) 岩崎芳枝 実教 出版 86 家 庭 一 般 1991(H3) 一 番 ケ 瀬 康 子 ・村 田康 彦 一橋 出 版 87 高等学校 家庭一般 1991(H3) 樋 口 恵子 一橋 出 版 88 家庭一般 最新版 1991(H3) 香川芳子 中教 出版 89 改訂 家庭一般 1991(H3) 伊藤清枝 東京書籍 実 習 に 関 して 「教 育 学事 典 」1)を以 下 に抜 粋 す る と 〔家 事 科 と実 習 教 材 〕(一)食 物 明 治15制 定 の 京都 府 女 学 校 規 則 並 に 東 京 女 子 師 範 学 校 付 属 女 学 校 の 学 則 に は あ るが 、 実 施 した 記録 は 見 あ た らぬ 。 京 都 で は 同22年 上 級 生 に 西 洋 食 礼 、 料 理 法 の 実 習 を加 えて い る。 小 学校 で は 同41年 東 京 高 等 師 範 学校 付 属 小 学 校 で 割 烹、実 習 を課 し たの が 始 め で あ る。 女 学 校 で は厨 庖 家 と して 男 子 が 多 く担 任 し同30年 代 に入 り各 地 に普 及 した よ うで あ る。 一 般 に 「学 校 は 家 庭 で 習 わ れ な い事 を習 う と こ ろ」 と考 え られ 、 当 時 は 実 務 勤 労 を卑 しみ 「高 尚 な理 論 」 を喜 ん だ 。 教 材 が教 育 思 想 の影 響 を受 け、 「技 能 」 が要 旨 に加 え られ た の は 高 等 女 学 校 に お い て 大 正9年 で あ り、 小 学 校 に お い て は大 正15年 で あ る。 云 々 とあ る。 従 っ て実 技 は も っ ぱ ら家 庭 で の 躾 と して の 役 割 と考 え られ て い た と思 わ れ る。 ま た,実 習 をす る と して も教 科 書 に は 記 載 さ れ ず に 実 施 さ れ て い た と考 え られ る。 ②r,あ え もの 」 の 収 録 語 彙 の 表 記 につ い て 本 資 料 に お け る 「あ え もの 」 の 収 録 語 彙 の 表 記 の 仕 方 に つ い て み る と(表4)「 あ え もの 」 ま た は 「○ ○ あ え」 と記 載 され て い る も の は A群 で14冊 、B群 で は19冊 で あ っ た。 「あ え」 とい う字 体 は3種 類 用 い られ て お り「和 」「韲 」 「あ え」で あ る。 現 在 も よ く使 わ れ て い る 「和 」 は 明治 期 に 使 わ れ 大 正 時 代 は古 い 字体 が 用 い られ て い る。 戦 後 の 資 料 に な る とす べ て 平 仮 名 に な る。 こ の こ とは 現 在 「和 」 の 字 を 当 用 漢 字 で は 「あ え 」 と読 ませ な い た め に平 仮 名 に統 一 され て い る と考 え られ る。 因 に辞 書 類 を見 る と次 の よ う で あ る。 日本 国 語 大 辞 典(小 学 館) あ え … …和,韲 あ え ご ろ も… … 和 衣 あ え もの … … 和 物 あ え る… … 和,韲,合 新 国語 中 辞 典(三 省 堂) あ え … … 和,韲 あ え もの … … 和 物,韲 物
表3あ え もの の収録 状況 資 料No 収録語彙 定 義 種 類 実習例 5 0 0 6 0 0 9 0 10 0 16 0 22 0 23 0 25 O 38 0 0 39 0 0 A 42 0 48 0 0 0 49 0 0 O 51 0 52 0 0 53 0 54 0 0 0 55 O 0 56 0 O 60 0 63 0 0 O 0 66 O 67 0 0 68 0 0 0 69 0 0 0 70 0 O 0 0 71 0 O 0 72 0 73 0 0 0 74 0 0 0 0 75 0 0 O 0 76 0 0 0 O B 77 0 0 0 0 78 O 0 0 0 79 0 0 80 0 0 0 O 81 0 0 0 82 0 O 0 83 0 0 0 84 0 0 85 0 0 0 86 0 0 0 0 87 0 0 88 0 0 0 89 0 表4和 え物の 収録語 彙 の表記 の仕 方 No 資 料 名 表 記 語 彙 5 普通家事教科書 和 物(ア ヒ モ ノ) 6 実践家政法 和 物(ア ヘ モ ノ) 9 家事教程 和 へ 10 家政教本 酢 和,ぬ た, 16 最新家事教科書 酢 味 噌 あ へ 22 近世家事定本 胡 麻 よ ご し,ぬ た 23 新編家事教科書(訂) 土 筆 あ へ 25 女学校用家事教科書 和 へ物 38 応用家事教科書 韲物 39 大正家事教科書 韲物 42 新撰家事教科書 土筆 あへ 胡 麻 よ ご し,ぬ た 48 家事教科書 韲物 49 新時代 女家事書 韲物 51 綜合家事教科書 木 の芽 あ へ 52 家事 の實習 和 物(あ へ もの) 53 現代 家事教科書 韲物 54 家事 實習教本 韲物 55 現代 に於け る實際的家事 韲物 56 實際的家事教科書 韲物 60 新 編家事教科書 和 へ 物 63 新 時代家事教本 韲物 66 中等家事 お ろ しあ え 67 m家 庭 ぬ た あ え,お ろ しあ え 68 家庭 一 般 あ え物 69 高等学校 家庭一般 あ え もの 70 新修 家庭一般 あ え もの 71 家m般 あ え物 72 改訂 版家庭一般 あ え物 73 家 庭 一般 あ え物 74 家 庭 一般 あ え物 75 家庭m あ え物 76 家 庭 一般 あ え物 77 新編家庭m あ え物 78 高校 家庭 一般 あ え物 79 高校 家庭 一般 ご ま酢 あ え 80 改訂 家庭 一般 あ え物 81 改訂版家庭m あ え物 82 家 庭 一 般 あ え物 83 家 庭 一 般 あ え物 84 新版家庭一般 あ え物 85 新家庭一般 あ え物 86 家 庭 一 般 あ え物 87 高等学校家庭一般 黄身酢あz 88 家庭m最 新版 あ え物 89 改訂家庭m あz.物 あ え る … … 韲 え る,和 え る 新 明解 国 語 辞 典(三 省 堂) あ え もの … … 和(え)物 あ え る … …和 え る 以上 は 現 在 の もの で あ るが 古 い もの で は10 世 紀 の 辞 書 で あ る和 名 抄2)に 韲 読 み 方 は 阿 部 毛 乃 で あ り,韲 蒜 をつ い て醋 和 の こ と と して い る。 そ の後 の 主 だ っ た料 理 書 を幾 つ か 見 る と,韲 と和 の 両 方 が あ り,ほ か に は 香 物3),醤4),御 茹 物5)等が あ る。 次 に これ ら の 表 記 が ど の よ うに位 置付 け られ て い るか を検 討 す る(表5) と 「あ え もの 」 と して独 立 して扱 わ れ て い る も の,生 物(な ま もの)の 説 明 の 中 に含 まれ て い る もの,「 な ます 」と して 扱 わ れ て い る も の に分 類 す る こ とが で き る。 表 中 に示 した △ 一46一
印 は 該 当 項 目 に も見 られ る もの で あ る。 初 期 に お い て 「あ え もの 」 は 「な ます 」 の 中 で扱 われ て お り,「 あ え もの 」と して 独 立 して 扱 わ れ始 め るの は 資料38の 大 正 6年 の大 江 ス ミ子 に よ る 『応 用 家 事 教 科 書 』 か ら で あ る。 大 江 ス ミ子 氏 は 英 国 に 留 学 し,明 治39年 帰 朝 し,学 校 教 育 の 中 で の実 習 の 必要 性 を積 極 的 に 推 し進 め た 先 駆 者 で あ る。 従 っ て こ の 頃 か ら 「あ え もの 」 が 「な ます 」 か ら分 離 し,調 理 の 実 習 も重 要 視 され る兆 しが 見 え て くる。 そ し て現 代 の 教 科 書 で は 「あ え もの,酢 の 物 」 と併 記 さ れ て 扱 わ れ て い る こ とが 多 い。 ③ 「あ え もの 」 の定 義付 け に つ い て 「あ え もの 」とは ど う い う もの か を そ の 記 載 内容 で検 討 す る と,材 料 プ ラ ス あ え 衣 を何 らか の調 理 操 作 をす る こ と に よ っ て 「あ え もの 」 が 出来 上 が る と考 え,図 示 す る と図1の よ うに な る。 材 料 に お い て は 「材 料 」 「食 品 」 「魚 肉,野 菜 」 「肉類 」 「野 菜,魚 介 類 」な ど と して 表 記 さ れ,1 種 類 ∼4種 類 の 材 料 が使 わ れ て い る。「あ え衣 」 は 「あ え衣 」 「衣 」 「調 理 味 噌 」 が 主 な 表 記 で あ り,そ の 中 で の 「調 理 味 噛 」 につ い て はA群 資 料 に み られ る も の で あ り,7冊 中 に 「味 膾 」 とい う言 葉 が 使 わ れ,3冊 に 「調 理 味 噌 」 とい う表 現 を し て説 明 が な され て い る。 即 ち, ◎ 韲 物 は 一 種 乃 至数 種 の 材 料 を適 宜 に切 り又 は刻 み た る後 卸 し大 根,卸 し山 葵,芥 子, 胡 麻,胡 麻 酢,罌 粟 酢,そ の他 各 種 の調 理 味 噌 に て 交 へ 合 は す に あ り。 ◎ 魚 肉,野 菜 等 の 一 種 乃 至 数 種 を適 宜 に切 り 又 は刻 み て 卸 し大 根,卸 し山 葵,芥 子,胡 麻,胡 麻 酢,罌 粟 酢,其 の他 各 種 の 調 理 味 噌 で韲 え て 食 ふ 。 ◎ 魚 肉,野 菜 等 の一 種 乃 至 数 種 を適 宜 に 切 り 又 は刻 ん で,芥 子,胡 麻 酢,罌 粟 酢,其 の 表5あ え ものの位 置付 け No あ え もの 生 物 鱠 備 考 5 O 酢 の物,ヌ タ 6 0 酢 の物,酢 和,作 肉, 9 △ 酢 の物,ぬ た 10 0 酢 の物,ぬ た,酢 和 16 O 酢 味 噌 あ へ,酢 の 物 25 蒸 し物 38 0 39 0 △ 48 O 49 0 54 0 55 0 D 56 0 63 0 △ 酢 の 物,鱠 68 0 70 0 71 0 72 0 73 0 酢の物 74 0 酢の物 75 0 ゆ で物 76 O 酢の物 77 0 78 O 酢 の物 80 0 ゆで物 81 0 82 0 酢 の物 83 0 酢 の物 84 0 酢 の物 85 0 酢 の物 86 0 酢の物 88 酢の物 89 酢を使 う調理 酢 の 物,サ ラ ダ 他 の調 理 味 噌 で韲 え て 食 ふ 。 従 っ てA群 に お い て 衣 「味 噌 」を使 用 す る こ と が 「あ え もの 」 の特 徴 と な っ て い る と言 って も良 い 。 そ して,香 辛料 や 種 実 類 プ ラ ス 調 味 料 が 「あ え衣 」 とな る。 「調 理 操 作 」 と して は 「和 え る」 「混 ぜ る」 「合 わせ る」 「纏 わせ る」 「調 理 す る」 「絡 ませ る」 な ど とい う表 現 が 多 い。 又,注 意 事 項 とし て 「冷 ます 」 「直 前 に和 え る」 「水 切 りを す る」 な ど が あ げ られ て い る。 そ して 「あ え もの 」 の特 徴 と して は 「衣 は 滑 らか で あ る」 「味 は 淡 泊 で あ る」 「栄 養 が あ る」 「変 色 しや す い 」 「甘 み を 多 くす る」 な ど と記 述 さ れ て い る。 「あ え衣 」の 味 膾 につ い て は 筆 者 が 明 治 期 の別 の 資料 を検 討 し た場 合 も特 徴 と して 「味 噌 」 が 重 要 な要 素 の 一 つ に な っ て い た こ と と一 致 す る(図2)。 即 ち 「あ
え もの 」 を酢 の 物 とな ます と区 別 す る こ との 要 素 に味 噌 が あ った と思 わ れ るが,そ う考 え る と酢 の 物 との 境 界 が 曖 昧 に な る。そ こで 「和 え る」 とい う調 理 操 作 を 「あ え もの」 を決 め る要 素 とす る と 「あ え もの 」 を広 義 に捕 らえ 酢 の 物 を も含 ん で考 え る こ とが 可 能 に な る と 思 わ れ る。 な お 「○ ○ あ え 」 と料 理 名 に 限 る と あ え物 の概 念 が は っ き り し な い ため 酢 の物 等 との 区別 が 難 しい 現 状 で あ る。 又 「あ え る」 と い う調 理 操 作 を 「混 ぜ 合 わせ る」 と考 え る と 「あ え衣 」 を敷 く,掛 け る,添 え る場 合 に は 食 す る側 が 食 卓 操 作 をす る こ と と解 釈 で き る。 尚,「 注 意 事 項 」 「あ え もの の 特 徴 」 に つ い て はB群 の み の 記 述 しか な か った 。 ④ 「あ え もの」 の種 類 と素 材 「あ え もの」 の種 類 を見 る と23種 類 が あ げ られ(表6),前 回6)の調 査 に よ る39冊 中約150 種 類 に 比 べ る とか な りそ の採 用種 類 数 が 少 な 図2明 治期 の料理 書 に おけ る和 物
材
料
十
あえ衣
→
調理操作
→
あ え もの↓
↓
↓
↓
◇ 材 料,食 品 ◇ 魚 肉 ・野 菜 ◇ 肉 類, や さ い ・魚 貝 類 ◇ あ え衣 ◇衣 ◇調 理 味噌 ◇ 和 え る ◇ 混ぜ 合 わせ る ◇ ま とわせ る ◇ 調理 す る ◇ か ら ませ る ◇ 衣 は なめ らか ◇ 味 は淡 泊 ◇ 栄養 が あ る ◇ 変 色 しや す い ◇ 甘 味 を多 くす る↓
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◇1種 ∼4種 胡 麻 ・芥 子etc 十 調 味 料 ★ 注 意事 項 ◇ さます ◇ 直前 に あえ る ◇水 き りをす る 図1「 あ え も の 」 と は 48表6和 え物 の種 類 記 載数 1 2 1 2 7 2 4 3 1 2 3 1 1 11 1 2 9 1 2 7 8 9 5 9 3 2 1 5 8 2 7 2 2 1 5 黄 身酢あえ ◎ ◎ 2 芥子酢味噌 あ え ◎ ◎ 2 ホ ワ イ ト ソ ー ス あ え ◎ 1 芥子醤油あ え ◎ 1 芥子味噌あえ ○ ○ ○ 3 酢油あえ ◎ 1 風 味あえ ◎ 1 卯 の 花 あえ ○ ◎ ○ ◎ 4 胡麻酢 あえ ◎ ○ ◎ ◎ 4 枝豆 あえ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 6 け し あ え ○ 1 山葵あ え ○ 1 胡 桃あ え ○ ○ ○ ○ ◎ ○ 6 落 花生 あえ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ◎ ○ 10 お ろ し あ え ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ○ 12 梅酢 あえ ○ 1 芥子 あ え ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ 9 木 の 芽あ え ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ 13 味噌 あ え ○ ◎ ○ ○ ○ 5 自 あ え ○ ○ ○ ◎ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ◎ ○ 16 胡麻 あえ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ 16 酢和 ○ 1 酢味噌 あえ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ◎ ○ 15 資料 恥 9 0 6 2 8 2 8 9 1 2 4 6 1 31123444555566 6 7 8 9 0 1 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 5 6 7 8666677777777788888888 区 分 A B か っ た 。 「わ た あ え」 「富 士 あ え 」 な ど とい う 特 殊 な 名 称 の もの は 見 られ な か っ た。 こ れ は 料 理 書 と異 な り教 科 書 と して は 基 本 的 な もの が考 え られ て しか るべ きで 当 然 と思 わ れ る。 A群 は 「酢 味 噌 あ え 」か ら 「枝 豆 あ え」の15種 類,B群 は 「酢 あ え 」 「山葵 あ え」 「け し あ え」 「梅 酢 あ え 」 を除 く 「黄 身 酢 あ え 」迄 の19種 類 とな っ た。 次 に 本 資料 に お け る 「あ え もの 」 の収 録 割 合 の 高 い もの5種 類 をあ げ る と(表7),A群 は 「酢 味 噌 あ え 」 「胡 麻 あ え 」 「木 の 芽 あ え 」 「白 あ え 」 「芥 子 あ え 」,B群 は 「白 あ え 」 「お ろ し あ え 」 「酢 味 噌 あ え 」 「胡 麻 あ え 」 「落 花 生 あ え 」と な る。A群 の 「木 の 芽 あ え 」 「芥 子 あ え 」 はB群 で は 消 え,「 お ろ し あ え 」 「落 花 生 あ え 」 が 登 場 し て く る 。B群 の こ の1位 の 「お ろ し あ え 」 は 本 資 料 中 に お い て は 戦 後 に よ く扱 わ れ る よ う に な っ た 「あ え も の 」 と い う こ と が で き る 。 「酢 味 喀 あ え 」の よ う に 味 膾 を 含 ん で い る も の は 魚 介 類 を 用 い る こ と が 多 い の に 対 し
表7多 収 録和 え物 A 順位 B 酢 味噌和 え 1位 白和 え お ろ し和 え 胡 麻 和 え 2位 木 の芽和 え 3位 酢 味噌和 え 白 和 え 4位 胡麻 和 え 芥 子 和 え 5位 落花 生和 え 表9和 え衣 に良 く使 わ れ る材 料 A 順位 B 味 噌 1位 酢 酢 2位 味 噌 胡 麻 3位 胡 麻 木 の芽 4位 芥 子 豆 腐 大 根 豆 腐 5位 て,「 お ろ しあ え」は材 料 に 野菜 を用 い る傾 向 に あ る ため 新 し い感 覚 の 「あ え も の 」 で あ る と考 え ら れ る。 材 料 の組 合 せ を見 る と1種 類 か ら2種 類 で や く76%を 占め,4種 類 の 組合 せ は2例 で あ った(表8)。2∼4種 類 の う ちす べ て に 野 菜 が 用 い られ て お り,1種 類 の 場 合 も野 菜 が 圧 倒 的 に 多 くな って い る。 野 菜 の 種 類 を見 る と 26種 類 で 筍,ほ うれ ん 草,い ん げ ん,に ん じ ん な どが 多 く用 い られ,魚 介 類 と して は イ カ, わ か め,蛤 な どが あ げ られ,芋 類 と して は ほ とん どが 蒟 蒻 で あ る。 あ え衣 に使 われ て い る材 料 につ い て 見 る と (表9),主 な もの は 味 噌,酢,胡 麻 と考 え ら れ る。A群 の伝 統 的 な 木 の 芽 に対 して,B群 の 大 根 は さ っぱ り して い る こ とか らサ ラ ダ感 覚 に通 じ る もの が あ りそ う で あ る。 この ほか 調 味 料 と して は 砂 糖 の使 用 が 多 く,本 稿 の 事 例 中約80%に 使 用 さ れ て い る。 「あ え もの」の調 味 に甘 み が 大 きな ウ ェ イ トを 占め て い る こ と が 判 る。
w要
約
1資 料89冊 の な か で 「あ え もの 」 は45冊 に 収 録 され て い た。 戦 前 のA群 は約32%で 戦 表8材 料の 組み合 わ せ 1種 類 37% H(76)L(12)A(6)D(6) 2種 類 39% DH(39)HH(22)BH(11)CH(11) LH(11)KH(6) 3種 類 20% DHK(33)HH7(22)BKH(11) BHH(11)DHH(11)DDH(11) 4種 類 4% DHHHBJKH A穀 類B芋 類 E獣 鳥 肉類F卵 類 1種 実類Jき の こ類 C豆 類 G乳 類 K藻 類 D魚 貝類 H野 菜 類 L果 実 類後 のB群 は100%で あ った 。 2「 あ え もの 」 は 近 年 の 調 理 教 育 で 重 要 な 位 置 を酢 の物 と と もに 占め て い る。 3「 あ え もの 」 は本 資料 で は 「な ます 」 か ら独 立 し,「 生 物 」 を経 て 「酢 の物 」 と併 記 され る よ うに な っ た 。 4定 義 と して は材 料 プ ラ ス あ え 衣 に調 理 操 作 す る こ とで 「あ え も の」 が 成 り立 つ と考 え られ る。 5本 資 料 中 の 「あ え もの」 の 種 類 数 は23種 類 で あ っ た。 初 期 の 資料 で は あ え衣 に 味 噌 を用 い る こ とが 「あ え もの 」 の 要 素 の 一 つ に な っ て い た が 近 年 は 必 ず し も味 噛 に と ら わ れ て い な い 。 6あ え物 の 材 料 に は 野 菜 が 多 く用 い られ て い る。 以 上 あ え衣 は サ ラ ダの ソー ス に あ た る と 考 え られ,香 辛 料 や 種 実 類 に酢 や 味 噌,調 味 料 を ブ レ ン ドさせ,組 み 立 て献 立 構 成 の 上 で 副 菜 と して の 役 割 が 高 く,し か も栄 養 的 に も 評 価 が 高 い 。 もっ と 日常 的 に取 り入 れ られ る べ き もの と思 わ れ る。今 後 さ らに 和 洋 折 衷 の 調 理 が 増 え,あ え衣 の傾 向 も変 化 して い くと 思 わ れ るが,野 菜 な どの 摂 取 に は 好 都 合 で あ るた め 調 理 教 育 の 場 で大 い に と りあ げ て い き た い 。 〈引用 文 献> 1)黒 川喜 太郎:教 育 学 辞典:岩 波 書 店:253 2)和 名 抄:巻 十 六:二 十 二 丁 3)日 本料 理 秘 伝 集 成:同 朋舎:2,25 4)日 本 料 理秘 伝 集 成:同 朋 舎:1,227 5)日 本 料 理秘 伝 集 成:同 朋 舎:8,10 6)日 本 料 理秘 伝 集 成:同 朋 舎:3, 7)大 久 保 洋 子:日 本 家政 学会 食 文 化 研 究部 会 第4 回研 究 大会 報 告