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[総説]植物を用いた新しいワクチン生産システム確立への挑戦: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

[総説]植物を用いた新しいワクチン生産システム確立へ

の挑戦

Author(s)

新川, 武; 只野, 昌之; 馬, 紹平; 當眞, 弘; 佐藤, 茂俊; 岸本,

亜耶乃; 長嶺, 勝; 根岸, 勉; 佐藤, 良也

Citation

南方資源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical

resources technologists, 16(1): 11-18

Issue Date

2000-10-01

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/14173

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総 説

植物を用いた新 しいワクチン生産システム確立への挑戦

新 川 武*・只 野 昌 之= ・馬 紹 平日 ・昔 異 弘* 佐 藤 茂 俊…*・岸 本 亜耶乃***・長 嶺 勝****・根 岸 勉**** 佐 藤 良 也* *琉球大学医学部寄生虫学 ・生体防御工学講座 ,**同 ウイルス学講座 ***琉球大学農学部育種学講座 ,****琉球大学遺伝子実験施設

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TakeshiArakawa*,MasayukiTadano**,Shao-PingMa**,HiromuToma* ShigetoshiSato***,AyanoKishimoto***,Masam Nagamine… *

TsutomuNegishiHH,YoshiyaSato*

*DePartmentofParasitolog andMedicalBiotechnology …DeparimentofVirology,Schoolof

Medicine,*…DepartmentofBioproduction,SchoolofAgricultuyle,辛… GeneResearchCenter,

tlniversi&oftheRyukyus Keywords:植物遺伝子組換 え,植物工場 ,機能性蛋 白質 ,ワクチ ン

はじめに

近年の遺伝子組換 え技術の発達 により様 々な 生物からクローニングした遺伝子を大腸菌や酵母 菌などの微生物や昆 虫由来の細胞 に組み込み、 生物種の壁 を超 えて他種生物 由来の蛋 白質を大 量生産することが可能 となった。それにより、本 来の遺伝子 を有する生物か らの蛋 白質精製に頼 らざるを得ない状況から脱 し、低 コス トで不純物 の少ない組換 え蛋 白質 を作 り出 し、その分子構 造や機能解析 を通 じて工業や 医学分野で応用で きる生産技術 を確立 した。例 えば、今 日の分子 *沖縄県西原町上原207番地 ‥同上 ***沖縄県西原町千原1番地 書目*同上 生物学の研究で用いられている酵素類のほとんど は、このような組換 え生物を用いて生産 されたも のであ り、組換 え技術が今 日までのバイオテクノ ロジーの基礎 を築 き上げてきたともいえるであろ う。しかし最近では、単細胞生物のみならず高等 多細胞生物も組換え蛋 白質のバイオ リアクターと して有用であることが示 され始めているO例 えば、 ウシ、ブタ、ヤギ等の家畜動物に外来遺伝子を導 入することによりトランスジェニック動物 を作 り 出 し、その血液や母乳、尿などに組換え蛋 白質が 分泌 されるよう工夫 した 「molecularfarming」の 手法は、β-casein,humaninsulin-likegrowthfac -torI,plasminogenactivatorな どの様 々な組換 え 蛋 白質の発現、精製 を可能に した。 このよ うな 動物バイオ リアクターの出現は、植物 を用いて も同様なことが可能であることを暗示 している。

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南方資源利用技術研究会誌 表1.植物バイオリアクターの応用 機能性蛋 白質の種類 具 体 例 応用分野 単クローン抗体 抗虫歯菌抗体、抗がん細胞抗体 感染予防、がん予防 .治療 ワクチン抗原、診断用抗原 ルス抗原、自己抗原 (自己免疫疾患)母乳蛋 白質、 ダイ ズ蛋 白質B型肝炎ウイルス抗原、ウシロタウイ 人畜の感染症予防 高栄養性 蛋 白質 生活習慣病 .栄養失調予防 酵素類 セルラーゼ 工業用 血液凝固因子,サイ トカイン FactorVⅠH、インターフェロン 医療、畜産分野での応用

世代別にみた組換 え作物

害虫.ウイルス抵抗性

高栄養性、生理.

免疫活性

除草剤耐性 (ワクチン等)

l作物生産性の向上

感染症.生活習慣病

食稚.

飼料の増産

l

人畜の健康維持.

l

増進

l l l l 先進諸国 発展途上国 先進諸国 発展途上国 図l.世代別にみた組換え作物 -その日的,応用分野からの区別 現に、タバ コやイネ、 ジャガイモ な どの作物 に 様 々な遺伝子 を導入 し、機能性蛋 白質や機能性 物 質 の 生 産 を 目指 すplantmoleculartam ing (植物工場 )の研究 は、世界 的 中の多 くの研究 者 によって進 め られ てい る。例 えば、 ジャガイ モによる ヒ ト母乳蛋 白質の発現やイネ によるダ イズ貯蔵蛋 白質 グ リシニ ンの発現 、抗 がん作用 を持つ単 ク ロー ン抗体 の タバ コによる発現やB 型肝炎 ウイル ス抗原 な どの ワクチ ンのタバ コや ジャガイモでの発現 な ど、医学や工業、畜産業 での幅広 い分野で応用可能な幾つかの研究報告 がある (表 1)。 世代別にみた組換え作物 米国を中心に して急速 に開発 か ら商品化 まで 進 め られて きた組換 え作物 は 「第-世代遺伝 子 転換作 物 」 とよばれ 、 表1に示す よ うな機 能 性蛋 白質その ものの有用性 に着 目した 「第二世 代」 とは、その 目的が異なるといえるであろ う。 第-世代 の作物 の場合、機能性蛋 白質の有用性 よ りも、む しろ、導入遺伝子 によって作物 の獲 得す る新 しい性質 に着 目してい る (図1)。例 えば

、1

9

9

4

年 に米 国で商 品化 され た、 商 品名 「フ レーバーセーバー」 で知 られ る 日持 ちの よ い トマ トは、実が熟す るのを遅 らせ るポ リガ ラ クチュ ロナ-ゼ遺伝子のア ンチセ ンス鎖 が導入 されてい るCその他 にも、殺 虫性蛋 白質遺伝子 の導入 による害 虫に強い ジャガイモや、 グ リホ サー ト耐性遺伝子 の導入 による除草剤 に強いダ イズの開発 、 日本 国内では、 ウイル スに抵抗性

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表2.植物ワクチンの利点と問題点 利 点 問題点、今後改良すべき点 ● 従来の生産システムよりも生産の低コス ト化が ● ワクチンタンパク質の生産 レベル向上を目指す 可能 (一般の農業技術の一部 として可能) (新 しいベクターの開発等)

保存の容易さ(ワクチンの植物細胞内での安定性)

腸管免疫組織-のワクチンの運搬機能の向上や ● 接種の容易さ (食べるワクチン) 新 しい免疫アジュバン トの開発

有効性 (動物 .臨床試験により立証され始めて

消化器官内での安定性の向上 免疫効果を高める「アジュバント

遺伝子との結合

a

v

ワクチ

遺伝子(

例)

狂犬病

マラリア

日本脳

ロタウイ

日本住

口蹄疫

豚コレラ

ン ・ア ジュ/ 融

合蛋

白 質 の抽 従 来 の 方 法 による ワクチンの 接 種 亀 暫 LF・ ワクチン・アジュバント 融合遺伝子(V-a)

l

t

クテリウム に遺伝子導入 期待される効果 植物によって作られたワクチン・ アジュバント融合蛋 白質 (V-A) ●安価で安全な途上国向 けのワクチンの生産 ●抗生物質使用量低減に よる耐性菌 問題の解決 ●より安全な食用肉の提供 人や家畜動物 例 :豚 、牛、鶏等 ワクチンを生産する農作物を食べ ることによる経 口免疫の拝辞 図2 ヒトや家畜動物向けの植物ワクチン生産の概要 を示すイネや ジャガイ モの開発 も進 め られ てい る。 この よ うな第-世代 に属す る作物 の開発 は 「増産」 を 目的 と しお り、農 薬や 害 虫、 ウイル スに対す る抵抗性 を高 める性 質 を導入遺伝 子 に よ り付加 し、低農薬 で高生産性 を期待す るこ と が可能 とな る。 これ に対 し、第二世代 に属す る 作物 は、生理 ・免疫活性作用 を持つ蛋 白質 の機 能 その ものに着 目してお り、先進 国 においては 生活習慣病 予防効果 、 さ らに発展途上 国にお け る感染症予防効果 が期待 で きる。 さ らに、 この よ うな機能性 蛋 白質 を産生す る作物 は、 ヒ トに 対 してだ けでな く家畜動物 に対 して も同様 な効 果 が期待 で き、畜産や 医学分野-の貢献 が期待 され てい る。 これ までの遺伝 子転換農作物 の開 発 は、 「第-世代」 に属す るものが多か ったが、 今後 は、 「第 二 世代 」 の作 物 の開発 に重点 が置 かれ るよ うにな る と思 われ る。

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第二世代遺伝子転換作物 に属する 植物 ワクチンの開発に向けて 第二世代遺伝子転換作物は、第一世代の作物 と比較 して、一般消費者が求めるような機能を持 つ作物の開発が第一の 目的である。我々は、ワク チン開発がそのひ とつであると考 えている。 ここ で、図2にヒトや家畜動物向けの植物 ワクチン生 産の概略を示す。農作物によって産生されるワク チンは、 「植物 ワクチン(plant-basedvaccines)」 とよばれ、植物の可食部位にワクチンを発現 させ、 それを直接食べることによって免疫効果を期待す るものは、「食べるワクチン(ediblevaccines)」 と よばれる。植物 ワクチンの利点 と問題点、今後の 研究による改良の必要な点などを表

2

に示す。 植物 ワクチンの研究 を世界 に先駆 けて行 った 研究者のひ とりは、米国 ミズー リ州セン トルイ スにあるワシン トン大学のCurtiss博士で、1980 年代 に共 同研 究者 のCardineau博 士 らと共 に虫 歯の原因 となるStreptococczLSTnutanSの表面抗 原 (SpaÅ)をタバ コに発現 させ ることに成功 し た。彼 らは、SpaA抗原遺伝子を発現する トラン スジェニックタバコの葉を乾燥 させ、通常の餌に 配合 してマウスに与えた。葉の中に存在する組換 え蛋 白質は、腸管免疫組織での免疫応答 を誘導 し、その結果生 じた抗SpaA抗体は、S.TnutanS

の細胞表面蛋 白を特異的 に認識 した。 以後、 1980年代後半か ら1990年代 にか けて、 様 々な 植物 ワクチ ンに関す る研究が進 め られてきた。 例 えば、米国のTacket博士 らの臨床実験では毒 素原性大腸菌のLT毒素B鎖 (LTB)遺伝子 を発 現す るジャガイモをヒ トに食べ させ、血 中お よ び腸管内での抗LT抗体 の誘導 に成功 した。 こ のジャガイモは、腸管 内でのantibody-secreting cells(As°)の活性化 を促 し、そのASCは、109 の大腸菌を接種 した場合に匹敵す る レベルにま で達 した。 このよ うな細菌蛋白毒素の一部 を産 生す る植物以外 にも、急性 胃腸炎 を引き起 こす ノー ウオー クウイル スやB型肝炎 ウイル スに対 す る植物 ワクチ ン、イ ンス リン依存型糖尿病な どの 自己免疫疾患に対す る植物 ワクチ ンな どの 南方資源利用技術研究会誌 研究報告 もある。また、 ワクチ ン抗原 による能 動免疫だけでなく受動免疫に用い られる単クロー ン抗体産生の研究 も積極的に進 め られてい る。 例 として、がん細胞特異的な抗原や虫歯の原因 となる ミュー タンス菌表面抗原 を認識す るIgG やS-IgA、1本鎖 の抗体 (scFv)な どの タバ コ による産生がある。わが国における植物 ワクチ ンに関す る研究 としては、帝京大学の岡田吉美 博士 グルー プのタバ コによる

B

型肝炎 ウイル ス のコア蛋 白質 (HBcAg)発現や、北海道 グ リー ンバイオ研究所のウシロタウイルス抗原の発現、 著者 ら琉球大学の研究 グループによる日本脳炎 ウイルス抗原 のタバ コによる発現な どがあるO また、米 国 コ-ネル大学のArntzen博士の率い る、食べるワクチン研究プロジェク トチームは、 将来的に ヒ ト-応用できるワクチ ン開発に向け て、生のまま食べ られ るバナナな どによるワク チ ンの生産 を 目指 している。 著者 らは以前 、植 物 に よる コ レラ毒 素B鎖 (CTB)遺伝子の発現系を開発 し、 トランスジェ ニ ック植物 による食べ るワクチ ンの可能性 を示 したが、現在 は、抗 コレラ毒素 ワクチ ンとして のCTBとい うよ りもむ しろ、腸管免疫組織 -の運搬体 としてのCTBの果 たす役割 に注 目し て研究 を進 めてい る。CTB蛋 白その ものは経 口摂取 しても毒性はないが、粘膜細胞表面の レ セ プ ター (GM1-ganglioside) に高 い親和性 を 有す るため、粘膜免疫組織 と親和性の低い蛋 白 質抗原 をCTBとの融合蛋 白 として植物 に発 現 させれば、 ワクチ ン抗原 の免疫原性 を高めるこ とが可能 となる。例 えば、免疫原性 の高いウイ ルス抗原でも経 口で摂取す る場合は、高い免疫 効果 を期待す るのは難 しく、免疫原性 の高い ウ イル ス様粒子 (VLPs)の形での免疫 が望 ま し い と考 え られてい る。 しか し、本来VLPsを形 成 しない抗原では、粘膜か らの免疫原性は低 く、 食べるワクチンとしての応用は難 しい。我々は、 そ の よ うな抗原 で もCTB (或い はCTBと機能 的に類似 したLTBな ど)の粘膜免疫組織-の運 搬体 を活用す ることで免疫効果 を向上できない

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表3A.植物によるワクチン抗原及び単クローン抗体産生の例 導入遺伝 子 (植物 ) 研究者 (国)発 表年 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 Ⅸ H。 J HBsAg(タバコ、レタス) LT-B(ジャガイモ) cT-B(ジャガイモ) S-IgA(タバコ) NVCP(タバコ、ジャガイモ) MouseGAD67(ジャガイモ) CTB-humaninsulin(ジャガイモ) HBcAg(タバコ) FMDV VPl(シロイヌナズナ、アルファルファ) TGEV glycoproteinS(シロイヌナズナ) RHDV VP60(ジャガイモ) HumanGAD65(ジャガイモ) HCMV glycoproteinB(タバコ) manrotavirusW 6(ジャガイモ) V E glycoproteln(タバコ) Mason/Arntzen(栄 )1992 Kapusta/Legockj(ポー ラン ド)1999 Haq/Amtzen(米 )1995 Mason/Amtzen(米 )1998 Arakawa/Langrldge(A )1997 Ma/Lehner(英 )1998 Mason/Arntzen(米 )1996 Ma/Jevnikar(カナ ダ)1997 Arakawa/Langridge (米 )1998 Tsuda/Okada(日)1998 carrlllo/Borca(アルゼンチン)1998 wigdorovitz/Borca(アルゼンチン)1999 Gomez/Escribano(スペイン)1998 castanon/parra(スペイン)1999 Arakawa/Langridge(栄 )1999 Tackaberry/Ganz(カナ ダ)1999 Yu/Langrldge(栄 )unpubllShed Tadano/Arakawa(E])unpublished

HBsAg:HepatitisBvirussurfaceantigen,LT-B:Heat-1ablleenterotoxin B subunjt;CT-BICholeratoxlnBsubunlt, NVCP・NorwalkvlruSCapSldproteln;GAD:Glutamicaciddecarboxylase;HBcAg:HepatltlSB viruscoreantlgen;

FMDV:Fooトand-mouth disease vlruS;TGEV:Swine-transmlSSible gastroenteritlS COrOnaVlruS;RHDV:Rabbit

hemorrhagicdiseasevirus,HCMV'HumancytomegalovlruS;JEV:JapaneseencephalitlSVirus

かと考えている。つま り、 トランスジェニック植 物で発現するCTBと病原体 由来蛋 白質の融合体 はCTBの性質 を利用 して腸管粘膜 リンパ組織 に 効率良 く到達 し、動物個体に高い免疫応答 を誘 導することが期待 されるため、 この方法は

VL

Ps

などの複雑 な高次構造 を単独では形成できない 病原体蛋 白質にも広 く応用できる可能性がある。 これまでの植物 ワクチンに関する研究は、 ヒト の感染症を対象にしたものがほとんどであったが、 近年は家畜などの経済動物 を対象 にした、飼料 作物 による食べ るワクチンの開発 も積極 的に進 められ ようとしているO家畜の感染症は、その 経済的打撃が大 きいため、飼料作物 によって産 生 されたワクチンによって家畜の疾病を低減でき ればその経済的効果は計 り知れないであろうOま た、感染予防のため使われている抗生物質の使 用量を低減することにより、安全な食 肉などの提 供が可能 になるだけでなく、薬剤耐性 菌出現の 問題解決にも貢献できるのではないかと考えてい るO更 に、人畜共通感染症 に対す る植物 ワクチ ンが実用化 されれば、公衆衛生的な観点か らも 重要な役割 を果 たす ことが期待 される。家畜疾 病予防用の食べるワクチンの研究 はまだ始まっ たばか りといえるが、その例 として、口蹄疫 ウイ ルスの

VP

抗原のシロイヌナズナやアルファルファ による発現およびその免疫原性に関する研究や、

トウモロコシによるブタに感染するSwine-transm issiblegastroenteritiscoronavirus(TGEV)由来 の抗原 の発現および感染防御に関す る研究報告 がある。今後 も更に多 くの家畜感染症に対する 植物 ワクチンの研究が進められると考えられるO 現在 までの人畜感染症 に対する植物 ワクチンの 開発に関する主な研究報告を表3Aにまとめる。

植物 ワクチ ン開発研究の持つ社会的意義

従来、細菌や ウイル スによる感染症の予防に は不活化 あるいは弱毒生 ワクチ ンが用い られて きた。 これ らのワクチ ンによ り、対象 となる疾 患は減少 してはい るが、その製造 には不純物に よる副作用や弱毒生 ワクチ ン株の強毒化 を防 ぐ

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南方資源利用技術研究会誌 表3B.現在進行中の主な植物ワクチンに関する研究 疾 病 ワクチン抗原 ワクチンの対象 日本脳炎ウイルス E glycoprotein,prM ブタ 狂犬病ウイルス G glycoprotein イヌ、その他の動物 日本住血吸虫 Paramyosin,GST ブタ マラ リア原虫 pfs28,Pvs25,Pvs28(伝播阻止ワクチン) ヒト ヒトロタウイルス VP2,vp4,vp6,vp7,NSP4 ヒト デングウイルス Eglycopro【ein ヒト

自己免疫疾患 TypeII

m

ncT (ア ミノ酸置換 コレラ毒素 :無毒性)sulin,GAD65,IIcollagen (cA69等 (RheumatoiIDDM)darthritis) ヒト

ために高度な生産管理技術が必要であるoまた、 新 しい感染症 (新興感染症 )の出現 によ り、そ れ らに対す るワクチ ンの開発は急務であるが、 開発製造 に対す る厳 しい基準が新 しいワクチ ン の実用化の妨げ となっている。 さらに、既に制 圧 された感染症の再流行 (再興感染症 )に対 し て既製のワクチンの使用が効果や副作用の現行 基準の面か ら痔曙 され る場合 も想定 され る (結 核 な ど)。一方では ワクチ ンによる予防の対象 が重篤化 しやすい病気か ら軽症な病気、あるい は発症が希 な病気- と広ま り、 ワクチ ン開発-の負担が増大 しつつある。 これ らの状況か らも ワクチンの種類が増加 し続 けるな ら、一回の接 種で多 くの種類の感染症 を予防できる複合型 ワ クチンや容易な接種法 (経 口ワクチ ンな ど)の 開発 も重要 となるO 植物 ワクチ ンは、感染防御機能 を持つ作物 と して経 口摂取が可能なため、生産過程 において 高度精製技術 を必要 とせず、不純物 による副作 用の問題 がないo Lたがって、大量生産が容易 であるため世界的な要求に対応できる可能性が ある。また、新 しい ワクチンの開発 を比較的早 急に行える可能性 もある。さらに、発現ベクター 上で遺伝子の操作が簡単なことか ら、既に作成 した植物 ワクチ ンの改良を容易、かつ迅速に行 えるメ リッ トがある。 このことは病原体 の持つ 抗原性の多様性や変異に即応できる可能性 を示 す。作成 した種 々の作物 をサ ラダのよ うに組み 合わせ ることによ り、一度に複数種類の ワクチ ン抗原 を摂取 し、複合 ワクチ ンに類似 した効果 を生み出す方法 も考え られ る。 植物 ワクチ ンの最 も魅力 ある要素は,そのコ ス ト面での優位性であるO従来のワクチ ンは、 その免疫効果 の面か らみ ると極 めて優れたもの があるが、感染症の浸淫地域の多 くは経済途上 国がほ とん どで、た とえ生産面でのコス トダウ ンが成 し遂げ られて も、それ を広めるための経 済的負担が大 きす ぎるので、世界的な普及が極 めて困難である場合が多い。 しか し、植物 ワク チ ンの場合、その生産過程が植物育成 とい う従 来の農業生産の一部 として成就 され、特殊な施 設や技術 を必要 としないため、 ワクチ ンの生産 コス トを大幅に削減できる。 さらに、その接種 に関 して も、特 に食 べ るワクチ ンの場合 は、 「食べ る」 とい う極 めて原始的な レベル で行わ れ るため、経済的に極 めて優れたシステム と考 え られ る。現在、 このコンセプ トを基に著者 ら のグループが 日本国内外 の研究者 と共同で進 め ている植物 ワクチ ン研究の例 を表3Bに示す。 おわ Uに ヒ トや家畜動物 を感染か ら守 る、食べ るワク チンは、次世代の新 しいワクチンとして魅力あ るものであるが、このよ うなワクチンが将来的 に実用化 され るまでには、多 くの問題 を解決 し なければな らない ことも事実である。例 えば、 作物 由来のワクチ ン抗原の経 口摂取によって ど の程度持続 的な感染防御免疫応答 をもた らす こ

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とが可能か、 ワクチン抗原特異的な経 口免疫寛 容の誘導による弊害がないか、効果的なワクチン として蛋 白質 由来の免疫 アジュバ ン トやCTB, LTBな どの腸管免疫運搬体 の使用は不可欠なの か、組換 え蛋 白質の経 口摂取による細胞性免疫 の誘導は可能 となるのか、などの幾つかの疑問 や問題点 を解 明、解決 しなければな らない。ま た、技術面の問題だけでな く、社会的な問題 も ある。特 に環境や人畜の生体-の影響である。 組換 え作物が生態系に及ぼす影響や組換 え作物 を直接 または間接的に摂取す ることに対す る健 康面での影響な どは重要な課題である。今後、 組換 え作物 に対す る環境面、健康面での消費者 側 か らの根本的な懸念 に対 して、科学的に或い は倫理的に どのよ うに対処 してい くかが最 も重 要な課題 となるであろ う。特 に表示の問題 に関 し、 日本政府は消費者か らの懸念の声に応 え、 部分的に表示の義務化 に踏み込む ことになる。 即ち、国民の知 る権利 を守 るための法律 といえ るであろ う。 しか し、カ ロリーベースの食糧 自 給率 が4割程度 しかない我 が国は、米 国な ど の農業大国が組換 え作物に肯定的立場 を とる限 り、組換 え作物及びその加工品を完全 に 日本の 市場か ら排除す ることは実質的に不可能である との声 もあるC非組換 え作物に固執すれば、消 費者に とって作物やその加工品の価格 が向上す る事態 となることを危慎す る人々がいることも 事実である。 日本国内外 において遺伝子組換 え作物 に対 し て未だ十分な社会的理解が得 られない理 由のひ とつに.米国を中心に始 まった初期の組換 え作 物の開発 が、細菌由来の殺虫性蛋 白質 を産生す る作物や特定の除草剤 に抵抗性 を示す作物など、 消費者が求めるよ うな性質ではな く生産者側の 一方的な利益追求を前提に したことに原因があ る と指摘す る学者 も少 な くない。 また、 「遺伝 子組換 え」 とい う得体の知れない ものに対す る 恐怖感 が消費者の間で広まっていることも事実 である。それ を反映 して、 日本のメーカーは、 「遺伝子組換 え大豆未使用」 とい うよ うな宣伝 文句で商品の販 売にの りだ し、その風潮 を助長 しているかのよ うにもみえる。 しか し、我々の 身近で現 に遺伝子組換 え技術 によって作 り出 さ れた製品は、特に、医薬品の分野では多数ある。 例 えば、糖尿病患者 に用い られ るイ ンス リン、 がんやC型肝炎の治療 に使 われ るイ ンター フェ ロン,貧血の治療に使われ るエ リスロボェチン、

B

型肝炎のワクチ ンな どがそれ である。 また、 遺伝子組換 え技術 によってFactorⅥlIな どの血 友病患者 に投与す る安全な血液凝固剤が製造で きれば、薬害エイズ問題 も起 こらなかったか も しれない。 こ うした、遺伝子組換 え技術の多大 な恩恵 を受けている現代社会は、その技術のも た らす利益にも着 目すべ きであると考える. 消費者 の知 る権利に関 し、第-世代の作物の 場合、表示な しでは組換 えか非組換 えかを知 る ことは実質的に不可能だが、組換 え蛋 白質の機 能その ものに着 目す る第二世代の組換 え作物の 場合、消費者の知る権利は必然的に保証 される。 例 えば、ダイズ蛋 白質 を産生す るコメや ワクチ ン蛋白質 を産生す るバナナな どの場合、それ ら の産生す る組換 え機能性蛋 白質のこ とを知 らず に食べる とい うことはあ り得ないか らである。 しか し、組換 え作物 を飼料 として家畜動物に与 えその肉や加工品を摂取す る場合 には、間接的 に組換 え作物 を摂取 した とい うふ うに も考えら れ、組換 え作物の間接的な人体-の影響な どは、 厳 しく追及 され ることになるであろ う。 近年、遺伝子組換 え作物は、このよ うな幾つ かの問題 を抱 えなが らも、米国はもちろんのこ と日本のバイオ関連の産業界 も第二世代遺伝子 転換作物の持つ将来性 に注 目し始 めている。 こ うした新 しい遺伝子組換 え作物の開発 は、農林 水産業や医学分野、さまざまな産業界での幅広 い応用範囲で、新世紀のバイオ産業の中心的役 割 を担 う可能性 があるO我々研究者は、このよ うな植物 を利用 したバイオテ クノロジーの研究 が正 しく国民に理解 され、そこか ら生 じ得 る多 大な利益 を我が国が失 うことにな らないよ う努 力す る義務があると考える。

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_~3t~

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表 2. 植物ワクチンの利点と問題点 利 点 問題点、今後改良すべき点 ● 従来の生産システムよりも生産の低コス ト化が ● ワクチンタンパク質の生産 レベル向上を目指す 可能 ( 一般の農業技術の一部 として可能) ( 新 しいベクターの開発等) ● 保存の容易さ(ワクチンの植物細胞内での安定性) ● 腸管免疫組織‑のワクチンの運搬機能の向上や ● 接種の容易さ ( 食べるワクチン) 新 しい免疫アジュバン トの開発 ● 有効性 ( 動物 .臨床試験により立証され始めて ● 消化器官内での安定性の向上 免
表 3A. 植物によるワクチン抗原及び単クローン抗体産生の例 導入遺伝 子 ( 植物 ) 研究者 (国)発 表年 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ⅨH。 J HBs Ag ( タバコ、レタス)LT‑B(ジャガイモ)cT‑B(ジャガイモ)S‑IgA(タバコ)NVCP( タバコ、ジャガイモ)MouseGAD67(ジャガイモ)CTB‑humaninsulin( ジャガイモ)HBcAg(タバコ)FMDV VPl( シロイヌナズナ、アルファルファ)TGEV glycoprote

参照

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