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音楽科における評価の観点に関する一考察 ― 教科横断的な学習としてのSTEAM教育実践への布石 ―

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(1)Title. 音楽科における評価の観点に関する一考察 ― のSTEAM教育実践への布石 ―. Author(s). 芳賀, 均; 森, 健一郎. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 9: 175-187. Issue Date. 2019-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10422. Rights. Hokkaido University of Education. 教科横断的な学習として.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第9号. 自由投稿論文. 音楽科における評価の観点に関する一考察 ― 教科横断的な学習としてのSTEAM教育実践への布石 ― 芳賀 均*1・森 健一郎*2. 概 要 合科的学習・教科横断的学習の実践をするにあたり、取り組みにくさや難しさ、効果を思うように 得られない等の問題が横たわっている。その原因は何かと考えたとき、それが教科観であり、そのこ とが評価の観点に表れていると考えられる。本稿では、合科的学習・教科横断的学習としてSTEAM 教育に取り組むことを目指したとき、上述の問題点を乗り越えるために、評価の観点の在り方につい て考え、併せて実践上の教育技術や留意点についても整理する。. はじめに 激しく変化している時代1)、高付加価値産業への構造転換を急ぐべき時代2)における課題は、複数 の分野の複雑な関連を含んでいる。そのため、知識を使いこなし、試行錯誤しながら課題を解決する 力を学校教育で養う必要がある。そのためにも各教科の領域を越えた全人的教育が求められている。 ところで、例えば、 「臓器移植」において新しい技術や手法を開発する創造性は、建設的な作業の 積み重ねである。基となる一つ一つの術式の集合体が革新的な術式のエビデンスとなる3)。子供たち の中には将来その分野の専門家になる者もいる。「臓器移植」において、新しい方法を開発するのは どのような資質・能力によるものなのか。学校のカリキュラムに「臓器移植」は存在しないが、こう いった新しい技術や手法を実現する鍵は、子供の頃からの問題解決の経験にあるのではないだろうか。 そこで本稿では、合科的学習4)・教科横断的学習を実現していくための切り口として、その構造を 理解するために好適であると考えられる評価の観点を検討していきたい。なお、合科的学習と教科横 断的学習の語句については、教科横断的学習の方が広い概念であり、この中に合科的学習が含まれて いる5)。合科的学習6)は、ねらいを達成するために、各教科の類似教材を組み合わせることが多いよ うである。一時期よく聞かれた「クロスカリキュラム」も教科横断的学習の一つであり、各教科の枠 は保ったまま、教科間の関連指導を充実させることを意味していた。教科横断的学習の対になる概念 が総合的学習(学習指導要領における「総合的な学習の時間」 )である。総合的学習は「各教科で身 に付けた力」を「教科の枠を超えた分野で活用させる」ことをねらいとするものである。. ───────────────────── *1. 北海道教育大学旭川校 学校・地域教育研究支援センター. *2. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)釧路. 175.

(3) 芳賀 均・森 健一郎. 1 昭和の評価の観点と平成の評価の観点 1)昭和55年版までと平成に入ってからの学習指導要録の比較 旧来、各教科において、学習者の知識の習得結果を測定したものを学力と見なしてきた。評価も、 習得した知識の量をテスト用紙で測定し、その結果をそのまま評価とする形(測定即評価)であった。 断片的な知識を素早く正確に回答する、つまり単純に再生することが要求され、高得点をとること自 体が目的化することもある。テストに出題される内容を機械的に暗記させる学習に偏れば、高次の思 考能力が育みづらくなる上に、子供の主体的な学習につながらず、学んだことも生きてこない。 戦後から昭和55年改定までの学習指導要録では、教科の固有性を反映した評価の観点が設定されて いた。昭和最後の改定(55年)では、 「関心・態度」が観点として設定され、 各教科に共通の観点となっ たが、各教科の学習内容を対象としている点で、各教科独自の観点であった。思考力に関係する観点 も、やはり複数の教科で設定されているが、教科横断的に設定されているのではなく、それぞれ教科 の目標から導かれた観点(内容分析的観点)であり、各教科独自の観点として設定されていた。 それに対し、平成3年の改定では、資質・能力の評価が、教科・領域横断的に各教科の観点として 設定された。この点が平成に入ってからの評価の観点の変化である。このときの改定では新しい学力 観を背景に、評価の観点が子供の能力から割り出された「能力分析的観点」になり、各教科間で観点 数や内容がほぼ同じ形に統一された記述になった。 2)評価の4つの観点 7) の中で、昭和55年までの評価の観点が「内容分 高浦は『絶対評価とルーブリックの理論と実際』. 析的観点(→教える側の立場から見る) 」であったのに対し、平成3年の改定では、学習者中心の「能 」へ転換したと述べている。このことは、多くの知識を 力分析的観点8)(→学習者の立場から見る) 教え込むことになりがちであった教育が、子供の主体的に学ぶ力を身に付ける教育へと転換したこと に伴い、評価も「学力の測定」から「学力を育てる評価」へと転換したことを意味するという。 平成3年(1991)3月に改定された学習指導要録における「観点別学習状況」欄の評価の観点は、 「自ら学ぶ意欲の育成や思考力、判断力などの育成に重点を置くことが明確になるよう配慮」して、 学習活動を構成する4つの側面であり能力である「関心・意欲・態度」 「思考・判断」 「技能・表現」 「知識・理解」の評価の4つの観点が各教科でほぼ共通に採用されるようになった。どの教科や領域 においても、統一的に採用すべき評価の観点である。すべては「新学力」の育成に貢献すべきことが 目的とされ、学習が一個の人間の行為として統合的に捉えられるようになった9)と考えられる。さら に、平成13年の学習指導要録改定では、平成3年の指導要録の評価の4つの観点「関心・意欲・態度」 「思考・判断」「技能・表現」 「知識・理解」を発展させて、より統一的に4つの観点がつくられた。 これらのような評価の4つの観点は、子供が問題解決する能力の発達状況をとらえる4つの側面で あると考えられる。これは、評価における一大転換であった。というのも、 「 『各教科の目標』から評 価の観点が割り出されるということは、 「評価の観点としての統一性はなく、各教科でマチマチ、バ ラバラということになって(中略)子供は各教科ごとの評価に振り回されることになり、評価されれ 10) からである。 ばされる程、自己の統一性が壊されていくということになりかねない」. 平成22年の指導要録の改定では、評価の観点が「関心・意欲・態度」 「思考・判断・表現」 「技能」 「知識・理解」となったが、観点数は平成13年のものと同じ4つであり、引き続き統一的に各教科の 観点がつくられていた。なお、 「思考・判断」であったところが「思考・判断・表現」に、 「技能・表 176.

(4) 音楽科における評価の観点に関する一考察. 現」であったところが「技能」になったが、ここでいう「表現」は、思考・判断したことと、その内 容を表現する活動とを一体的に評価することを示すものであって、思考・判断したことを、記録、要 約、説明、論述、討論といった言語活動等を通じて評価するものである。 また、「技能」については次のようになっている。 「今回、 『技能・表現』に替えて示す『技能』は、 各教科において習得すべき技能を児童生徒が身に付けているかどうかを評価するものである。教科に よって違いはあるものの、基本的には、現在の『技能・表現』で評価している内容は引き続き『技能』 で評価することが適当である」11)という。例えば、音楽演奏という表現行為、つまり表現は、技能の 観点で見るということである。音楽表現の技能という観点がそれである。なお、 「関心・意欲・態度」 および「思考・判断・表現」は、長期間かけて養われるが、 「技能」および「知識・理解」は、その 学習を成立させるためにも短期で身に付けるものである。成果を求められた教師は、 「教育には時間 がかかる」と返答することがあるが、そうした際には、まず後者に関する向上が目に見えるようにし つつ、長期的な視点をもって前者を育むように取り組めばよいといえよう。. 2 音楽科の評価の観点 1)他教科と異なる資質・能力の記述の順番 新しい学力の育成状況を絶対評価する際の4つの観点は、各教科でほぼ共通に採用されており、音 楽においても同様であることが望ましい。ところが、新しい学力の育成をする今日に至っても、音楽 科における評価の4つの観点は他教科と異なっている。 「能力分析的観点」と、活動の種類による「内 容分析的観点」 (第3観点=「表現の技能」 ・第4観点=「鑑賞の能力」 )が混在した形となっている。 今回の改定(第9次学習指導要領)においては、全ての教科等において、教育目標や内容を、資質・ 能力の3つの柱に基づき再整理しており、それは、資質・能力の育成を目指して「目標に準拠した評 価」を実質化するための取組でもある、と「答申」では説明している12)。 しかし、音楽科では、学習指導要領上において、各教科と資質・能力の記述の順番が異なっている。 一例として、歌唱分野の内容の一部を抜粋する。 ア 曲の特徴にふさわしい歌唱表現を工夫し, 思いや意図をもつこと。 (思考力, 判断力, 表現力等) イ 曲想と音楽の構造や歌詞の内容との関わりについて理解すること。 (知識) ウ 思いや意図に合った表現をするために必要な次のアからウまでの技能を身に付けること。 (技能) ア 聴唱・視唱の技能 イ 自然で無理のない,響きのある歌い方で歌う技能 ウ 声を合わせて歌う技能 この表記は器楽でも同様である。これらに評価の観点を対応させたものは、 【図1】のようになる。. 【図1】各教科共通の評価の観点(左)と指導要領の記述の順に整理した音楽科の評価の観点(右). 177.

(5) 芳賀 均・森 健一郎. こうした評価の観点とも関わる事項の記載順は、教育観の大きな違いである13)。なお、評価の観点 「いずれの観点についてもその特性に沿って適切に評価をお の順番は関係ないという記述14)がある。 こなうことが求められること、ここに示す評価の観点の順序が学習指導の順序と必ずしも結び付けら れるものではないことに十分留意する必要がある」というのであるが、順序が関係ないというならば、 なぜ昭和から平成の改定の際に変えたのであろうか。筆者は、音楽においても他教科と共通の観点に 揃えることが好ましいと考える。 2)表現と鑑賞の関係 【図2】に掲出する中教審の資料15)を眺めると、その構造が異なっている。. 【図2】中央教育審議会教育課程部会芸術ワーキンググループによる資料. 表現領域には「知識・技能」とあるが、鑑賞領域には「知識」しか書かれていない。表現について も鑑賞についても、あくまで「思いや意図」を実現するため、あるいは「思いや意図」をもてるため の技能として、適度に練習する意味があると思われる。音の高低、強弱、リズム等を聴き分けること は技能と考えることもできる(ただし、 「思いや意図」が存在しないと断片的な技術習得となる)。 鑑賞に技能が配されない状況が次期(第9次)学習指導要領においても見られるが、昭和40年代に は、音楽の基礎として、和声の聴き分けや聴音等の活動により、音楽的感覚の発達を目指したことが あった。そうした技能が無機的と見なされたり、さらにそれより前の時代に、音感教育が軍事利用16) されたりという経験や歴史が影響しているのかもしれない。 「表現」と「鑑賞」はそもそも一体である17)が、表現と鑑賞の分離については、さらに考えてみる 178.

(6) 音楽科における評価の観点に関する一考察. と、以下に原因があると考えられる。 昭和16年の国民学校制度施行の際、初めて「鑑賞」が制度として盛り込まれたものの、それまで過 去約70年におよび教育の中心は「唱歌」であった。制度というものは解体的に構築しなおすことが難 しく、既存のものを土台として、そこに付加するという形で発展していくということがある。この時 期にも、 「鑑賞」と「表現」は分かちがたいものであるとの認識は存在した。教師用の指導書である『ウ タノホン 上 教師用』 (文部省:当時)に見られる「歌唱、鑑賞及び基礎練習は、指導の根本方針と して一元的であることを理想とするが、指導の過程においては、その或部分が独立の形式をとるのは 18) という言葉が示すとおり、学校教育の現場では、各領域がそれぞれにお 止むを得ないことである」. こなわれていった。こうした状況が「表現」と「鑑賞」の分離を決定的なものにしたと思われる。 以上のように、音楽は他教科の共通した評価の観点と異なっているため、学力の構造が読み取りに くく、現場では運用が難しい。これは合科的学習をおこなう上で障害になるといえる。 3)鑑賞に関わる技能とは 鑑賞においても、聴取にあたっての技能を明確に位置付ける必要があるといえる。音の高低を認識 することが難しい子供がいる場合は、周波数カウンタ等で音を視覚化することも活用しながら、高低 の感覚と結びつけるような作業も試みるべきであろう。 技能とまとめて一つの観点となる知識については、能力の育成を支える側面をもっており、これは 芸術や体育の分野についても当てはまる。問題解決において、ある種の解決に至った際のプロセスを 言語化できたならば、それは知識となる。野球で言えば「バットをどのような角度で出せばボールが 飛ぶかという知識はあるが、筋力の影響で自分では飛ばせない場合」がこれにあたる。この場合、自 分ではできなくても、知識として他人に教えることはできる。 音楽については、楽曲を聴く際、集中して傾聴し続けるためには、聴く手がかりを学習者が見いだ し、言語化することはもっと重視されてよい19)。ヘビーメタル・ミュージックを題材におこなわれた 音楽知覚の分化に関する研究20)では、それに親しんでいる者とそうでない者とでは、異なる言語を用 い、異なる音楽知覚をすることが明らかにされている。すなわち、音楽を言葉で表現するトレーニン グで、より音楽を分化、知覚できるようになると考えられる。 音楽科の特性の一つとして、 〔共通事項〕を媒介にして思いや意図と表現結果とを往還( 【図3】参 照)する即時性が挙げられる。. 【図3】表現と鑑賞の一体性と〔共通事項〕の関係. 179.

(7) 芳賀 均・森 健一郎. しかし、現行の評価の観点は「表現の技能」 「鑑賞の能力」という漠然としたものであり、音のレ シピを感じ取り、表現結果を技能で即時に調整する試行錯誤できるという特徴も十分に生かされてい ない状況がみられる。その原因は、評価の観点にあると筆者は考えるのである。. 3 理科の評価の観点 1)理科の評価の特色とは 次期(第9次)学習指導要領に基づく解説書では、評価についての具体的な規準などが記載されて はいない。しかし、指導と評価は一体であり、目標を確認することで評価すべき対象が明確となって くる。目標とは、次期(第9次)学習指導要領においての目指すべき資質・能力のことである。 理科の目標は次の3つからなる。 ⑴ 自然の事物・現象についての理解を深め,科学的に探求するために必要な観察,実験などに関 する基本的な技能を身に付けるようにする。 ⑵ 観察,実験などを行い,科学的に探求する力を養う。 ⑶ 自然の事物・現象に進んで関わり,科学的に探求しようとする態度を養う。 ⑴は「知識及び技能」に関するものである。理科については、 角屋ら(2016)21)が述べているように、 自然科学の特質から「知的体系を構築していく」ことも求められている。これは目標の文中の「理解 を深め」に該当する。統合させる知識の蓄積がないと、 そもそも統合させることにつなげていけない。 また、話し合い活動、そしてそこから発展するであろう問題解決的な学習にも根拠をもってつなげる ことができない。知識の学習は、いわゆる古い学習観によってもカバーできるため、評価しやすいも のであるが、その評価がいわゆる測定に偏ってしまう懸念もあるので注意が必要である。 なお⑶は「学びに向かう力、人間性」である。これは理科だけに限らず、学校教育の目標と通じて いる広い目標であり、短期間での評価が難しい。 「学びに向かう力」 は、学習意欲と関わるものである。 学習意欲は、「自己効力」 「社会的関係性」 「メタ認知」 「学習方略」等、いくつかの要素から構成され ていることが明らかになっている。これらの要素について評価をすることで、 「学びに向かう力」を 評価することができると考える。 「人間性」は、学校教育全体でおこなうべき道徳教育との関連を意 識する部分である。広い概念であるため、長期間にわたる評価が求められる。 2)思考・判断・表現 ⑵は「思考力、判断力、表現力」に関わるものであり、理科の中で特に重要である。理科は本来、 内容ではなく方法であるといわれる。方法であるということは、思考、判断、表現をするための方法、 いわばツールを授業で明示的に伝えることが求められている。 「よく考えてみよう、わかりやすく伝 えよう」といった指示では、子供にとっては、何をどうすればよいかがわからない状態である。 方法を授業の中で示すため「見方・考え方」を活用することができる。 「見方・考え方」のうち、 物理・化学・生物・地学の各分野を構造化するために提示されている「見方」が「エネルギー」 「粒子」 「生命」「地球」の4つの概念である。そして、 「見方・考え方」の「考え方」の一部として「比較」 「関連付け」「条件制御」 「多面的に考える」といったことが提示されている。これらのうち、 「比較」 「関連付け」「条件制御」については、考えるときの具体的な方法論の提示にもなっているが、 「多面 的に考える」は方法論というよりは状態を表しており、教師の助言が必要となる。 「多面的に考える」 180.

(8) 音楽科における評価の観点に関する一考察. をより具体的に表現するために、教師側から「比較」 「関連付け」 「条件制御」をはじめとする具体的 な方法を示すことがもとめられる。さらに、これらの方法は一つの例示であるので、その他「考え方」 として活用可能なものを検討していくことが必要である。 「見方・考え方」を方法として適切に用いて表現することができているかが評価の一つの観点とな る。「比較」「関連付け」「条件制御」といった方法、そして、その他の有用な「考え方」を使うこと ができたか、この方法ツールに基づいて表現できているか、を適切に評価する観点が求められる。 3)理科における技能とは 技能は⑴の「知識及び技能」に関するものである。理科には「実験・観察の技能」という評価のカ テゴリーがある。 八杉(2003)22)は「実験は条件を制御して事象を観察する活動である。これに対して、観察は条件 を制御しない状態で事象を観察する活動である。したがって、条件制御下における観察が実験であり、 条件を制御しない場合が観察であるといえる」と述べている。 制御の考えは、他教科にはない特性であると思われるが、音楽も制御によって成り立っていると考 えることができる。創造的音楽づくりに用いる音素材や音楽で用いる音は、もともと自然界に存在す る音を、素材の調整や加工、楽器の制作によって制御し、記譜法等の規格化によって、演奏が可能に なっていると捉えられる。 自然状態の制御という「見方・考え方」をすることで、理科と音楽の横断的な扱いが可能になり、 それを評価の視点とすることができる。. 4 能力分析的観点による教科横断的(合科的)な学習 1)合科的学習の必要性 平成8年の中央教育審議会の答申において、 「生きる力」が全人的な力であるということを踏まえ、 「横断的・総合的な指導を一層推進し得るような新たな手だてを講じて、豊かに学習活動を展開して いくことが極めて有効である」とされた23)。 「教科」の統合に関しては、 「不断に見直していく必要があるが、 (中略)教科の再編・統合を含め 24) と指摘されている。 た将来の教科等の構成の在り方について、早急に検討に着手する必要がある」. 「教科」は、近年、境界領域の開拓や価値観・職業の多様化等により、他教科の内容が必然的に重なっ ており「小学校での明確な教科独立は児童の柔軟な想像や発想には好ましくない」25)との指摘も見ら れる。 『学習指導要領解説 総則編』にも「指導の効果を高めるため、合科的・関連的な指導を進める こと」26)という形で必要性が明記されている。 第8次学習指導要領における言語活動は合科へのワンステップであったが、言語活動の充実は、各 教科等を貫く改善の視点として掲げられることに留まっていた。このことは中教審答申でも指摘27)さ れており、まだ小学校において合科的な指導の取組は進んでいるとはいえない。 言語活動の導入により、思考力等の育成に一定の成果は得られつつあるものの、教育課程全体とし てはなお、各教科等において「何を教えるか」という観点を中心に組み立てられている。そのため、 教えるべき内容を中心に、つまり教科等の枠組みごとに知識や技能の内容に沿ったものとなっている。. 181.

(9) 芳賀 均・森 健一郎. 2)能力分析的観点による合科的学習 ここまでの議論を踏まえると、教科横断的な学習も能力分析的観点からおこなえばよく、音楽の内 容と理科の内容を組合せたもの、あるいは両方に親和性のあるテーマを、その枠組みで単元化すれば よい。このことで、無理に内容を組み合わせるような合科でなく、子供の能力に立脚した活動を構成 することができる。例えば、理科や図工で学んだ知識や技能をもとに、雪像づくりをおこなったとす る。その際、従来であれば、雪像づくりという共通の内容のみを軸に活動を構成することになる。そ の経験を国語で詩としてまとめ、そこに音楽でメロディを付けていく、という活動である。 子供の能力に立脚した活動とは、すなわち、雪像づくりにおいて試行錯誤しつつ行き詰りを克服し たり、知識を活用して難局を乗り切ることである。そうした態度や知識を大切にすることで、他領域 につなげ、教科を横断することができる。. 5 教科横断的な学習としてのSTEAM教育 1)教科横断的な学習が求められる背景 「芸術の知」が「科学の知」と背反的なものとして対立的、二元論的に捉えられるのではなく、影 「今日的 響し合っている両者をバランスよく育成することが重要であるという見解28)がある。また、 なコンピテンシーとして重視されているものに創造性があるが、フィンランドでは、創造性の育成の ために、ものづくりを中心とした芸術系教科の重要性に着目して多くの時間を割いている」29)という。 2)STEAM教育の考え方 そこで筆者らは、現在、米国を中心に推進されているSTEAM教育の考え方に着目しつつ、芸術を 基底に据えたいと考えている。 STEAM教育とは、Science, Technology, Engineering, Art, Mathematicsの分野を統合的に扱うこ とを志向した教育の考え方である。この考え方は、米国国内において、生命科学分野の業務に従事す る人材の不足が将来的に予想されることから、この分野に関わる人材育成をねらいとして提唱された ものである。市民の全人的教育および創造的な労働力の育成をねらいとして推進されており、近年で は韓国などにおいても実践が進められている。STEAM教育は、そもそも統合的な発想によって考え られているため、必然的に横断的な見方・考え方という発想に至り、現在はそれらを活用する教育方 法・カリキュラムの開発にも関心が向くようになっている。さらに、当初のねらいの他にも、資質・ 能力の育成の手段としても有効であると考えられるようになり、様々なねらいのもとで展開が期待さ れている。例えば、21世紀型スキルのような融合的なスキルの育成に有効30)といった指摘もなされて いる。この展開例の一つとしてプログラミング教育がある。STEAM教育では、問題解決を試行錯誤 しながらグループでおこなう学習形態が重視されている。この「問題解決を試行錯誤しておこなう」 というプロセスが、プログラミング教育で重視される学習形態と一致するのである。これらは、産業 とも密接に関わっており、その関心が各国産業の国際競争力強化であることが多い31)。 STEAM教育では、横断的32)に学習を進めるために「7つの横断的な概念」が提示されている。こ の「7つの横断的な概念」とは、 【表1】のようなものである。 これらの概念は、さまざまな事象を統合的に見るために有効である。次期(第9次)学習指導要領 で言うところの「見方・考え方」に相当するものであると考えることができる。 前述のように、次期(第9次)学習指導要領では、「見方・考え方」はツールとされている。ツー 182.

(10) 音楽科における評価の観点に関する一考察. 【表1】STEAM教育の「7つの横断的な概念」 1.パターン(Patterns) 2.原因と影響:機構と説明. . (Cause and Effect: Mechanism and Explanation) 3.スケール・比・量(Scale, Proportion, and Quantity) 4.仕組み(系)とそのモデル(Systems and System Models) 5.エネルギーと物質:流れ・循環・保存 (Energy and Matter: Flows, Cycles, and Conservation) 6.構造と機能(Structure and Function) 7.安定性と変化(Stability and Change) A Framework for K-12 Science Education Practices, Crosscutting Concepts, and Core Ideas (2012) ※日本語訳は筆者(森)による。. ルとしての「見方・考え方」を具体的に展開していくことを考える際、このSTEAM教育の「7つの 共有する大切な概念」が活用できる。例えば、 「2.原因と影響:機構と説明」は、理科の実験のま とめの場面での活用が考えられる。ここでは、原因と結果を整理すること、つまり、結果と結論を区 別して表現することが求められる。一つ例を挙げると、リトマス紙の色の変化に関する実験がある。 ここで、青色リトマス紙が赤色に変色することは現象、つまり結果であり、実験そのものの結論では ない。この結果によって導かれること、この場合は「水溶液が酸性であること」が結論である。原因 と結果、あるいは結果と結論を対応したものとして捉え、明確に区別して表現することが、理科に限 らず、文章を書く際には求められる。ここで重要なのが「表現すること」であり、これは「自分の頭 の中でわかっていても、 表現できなければ思考したことにならない」ことを意味する。次期(第9次) 学習指導要領では、これまでは「技能・表現」のように「技能」とセットになっていた「表現」が、 「思考・判断」のところに移され「思考・判断・表現」となった。現在の資質・能力の考え方を踏ま えると、 「他人に伝わるような表現ができて思考が完成した」 というスタンスを読み取ることができる。 さて、先に述べたSTEAM教育の各領域(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics) のうち、特にArtは後発のものであり、他分野に比べると萌芽的な状況であるものの、実践例などが 発表されている。例えば、ウェブサイト33)が存在するほか、紙工作を教材としたもの34)や「未来を救 「未来を救う昆虫ROBOT」に関する論文は『美術 う昆虫ROBOT」の実践を検討したもの35)がある。 教育学』誌に掲載されているものであり、また「米国では、STEM教育に美術教育を融合させ、 「Art」が「美術」であるこ STEAM教育として進化してきている」36)という記述が見られるように、 とが多いようである。このことは、近年の工業デザインの進歩とも関連があるように思われる。 Artの分野は、現在のところ美術を指すことがほとんどであるが、音楽の学習内容には即応性とい う特徴が特に強く見られる。STEAM教育においては、特にEngineeringの視点から、 「試行錯誤を繰 り返して適切な結果を見つける」経験が必要であるとされている。試行錯誤をするためには、自分た ちがおこなった試みのレスポンスが早いことが望まれる。そういった意味で、自分たちのパフォーマ ンスがすぐに結果として現れる音楽は、STEAM教育と親和性が高いと言える。これまで、学校教育 における音楽については、他教科との共通点が見出しにくいイメージがあったのではないだろうか。 学校教育法に位置づけられた教科である以上、他教科と共に「教科横断的な資質・能力を育てる教科 である」ことが再認識されることが望まれる。 183.

(11) 芳賀 均・森 健一郎. 6 教科横断的な学習への布石 1)具体的な方策の例 前節までで、理念としては整理することができた。ここでは、前節までに整理したことを具現化す るための具体的な方策について述べる。筆者は、その鍵は、音楽の授業を問題解決的な学習にする仕 掛けであると考える。 例えば、ある楽曲について歌い方の工夫をさせる場合、その際の指示が「歌い方を工夫しなさい」 というものであることが多い。ここで生徒は「何のためにやるのか」 「工夫したら何になるのか」と 感じることがある。そこで、 「自分たちが感動する合唱にしよう」 「自分たちの歌で聴衆を感動させる」 という指示をしたならば、そのためにどうしたらよいか考えざるを得なくなるであろう。単に考えた ものを述べて「全て正解」という扱いになるよりも、深みや発展性等を感じられる思考をさせたい。 音楽の授業を問題解決的な学習にするためには、 「判断(決めること) 」を組み込む必要がある。す なわち、評価の観点「思考・判断・表現」というが、その中の「判断」の場面をどれだけ意識的に設 定するかが大切であると考える。 「どのようなpp(ピアニッシモ)の歌い方にするか」とか「グルー プでの歌い方をどう統一するか」というような話し合いでは、必ず議論になる。その過程で思考は焦 点化されて収束されたり、説得のために拡散したりしながら豊かに展開していく。技能も、考えて習 得させるようする。例えば、「ppからffまで10段階に声を出してみよう」と投げかけたらどうなるで あろうか。指導要領に記載された記号の個数とその段階数が合わなければ、pとmpとの間の音も意識 され、強弱の連続性や相対性を自ら理解していくことになろう。その過程で言語化されたものは知識 として他者に伝えることができる。身体的条件によっては歌唱や器楽にもハンデが発生することは明 らかであるが、 「身体的条件が備わっていないならば、音楽ができない」ということにつなげないた めにも、技能に偏らない観点別評価は有効であるといえよう。 以上を踏まえると、よくいわれるような、音楽科は技能教科であるという捉え方は音楽のほんの一 面しか見ていないばかりか、音楽科によってもたらされるであろう多くの成長を逃してしまうことに つながりかねない。ここまで述べてきたような形で問題解決をおこなえば、諸能力はバランスよく行 使されることになるはずである。 2)問題解決をするための問題提示 授業で課題提示をおこなう際に、 「○○の秘密を探ろう」 「□と△の関係を探ろう」とすると、「秘 密があるんだな」 「関係があるんだな」と子供が気付き、問題が発生せず思考力が育たない。問題解 決の授業にするためには、抽象度の高い問題提示をした上で、教師が子供と対話し、そして子供同士 に対話をさせ、言語化して意識化させる。 筆者は、課題提示をおこなうに当たっては、 「関心・意欲・態度」に関わるもの(例: 「ベートーベ ンを好きになろう」等の、価値観の押し付けにつながるもの)は控えるべきであると考える。また、 「思考・判断・表現」 の評価の観点に関わるものも、 控えるか慎重であるべきであると考える。一方、 「教科書○○ページの音楽の記号をすべて覚えよう」という「知識・理解」の観点に関わるものや、 「リコーダーのソラシの音を間違わずに出せるようになろう」という「技能」の観点に関わるものは、 目標も具体的になるため、課題提示として授業の冒頭で行うことは効果的であると考える。. 184.

(12) 音楽科における評価の観点に関する一考察. 3)問題解決に向けた対話の在り方 課題提示をするときなど、話合いや教師と子供とのやりとりのはじめは、子供の意見や視点はばら ばら、まちまちであるが、話し合いが進むと集約されてくる。 深い学びには問いの連続があり、それが生起する展開を心がける。その呼び水は「一問一答」であっ ても構わない。対話のリズムを整えていき、やがて「一問多答」へと導いていく。そのためには、対 話のリズムが重要である。既習事項を使い続けられるようにしつつ、問題の難易度は高くしない方が、 思考が深まる。「どうなる」 (事実=知識・理解) 、 「どうする」 (方法、ツール=技能) 、 「どうして」 (理 由=思考・表現)という問いかけを活用する。こうした過程を通して、 「何となく」 (無自覚)を明確 化させていく。その際には、言語化が不可欠である。 以上が、前節〈5〉までに整理したことを具現化するための具体的な方策である。絶えず試行錯誤 を行いながら取り組む学習において、上記の指導方法は教師による活動の交通整理を実現し、子供の 資質・能力を育むことに資することができると考える。. おわりに 本稿では、合科的学習・教科横断的な学習としてのSTEAM教育に取り組むに当たって、その枠組 みや方策の整理をおこなった。今後の課題は、具体的に合科的学習・教科横断的な学習としての STEAM教育の授業を実践すること、そして、その効果を見取っていくことである。 [附記1]本稿の「はじめに」、「5 教科横断的な学習としてのSTEAM教育」 、 「6 教科横断的な学 習への布石」の2)と3) 「おわりに」については芳賀と森の共同によったため抽出は不可能である。 、 また、芳賀が「1 昭和の評価の観点と平成の評価の観点」 、 「2 音楽科の評価の観点」 、 「4 能力分析 的観点による教科横断的(合科的)な学習」 、 「6 教科横断的な学習への布石」の1)を担当し、森 が「3 理科の評価の観点」と原稿全体の調整を担当した。 [ 附 記 2] 本 稿 の 英 文 題 目 は「Consideration about Aspect of Evaluation in Music Department: Preparation to the STEAM Educational Practice as Subject Crossing Learning」とする。 註 1)10~20年後に,日本の労働人口の約49%が就いている職業が人工知能やロボットで代替することが可能との推 計がある(野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに, コンピュータ技術による代替確率を試算~」2015,https://www.nri.com/~/media/PDF/jp/news/2015/151202_1. pdf[2017.6.1.08:54閲覧] ) 。また,2045年にはコンピュータ技術や生命科学などの進歩,発展によって,現実の世 界が想像を絶する変化を遂げる社会へと変貌する可能性がある(広口正之「シンギュラリティとは~2045年問題~」 『JNSA Press』第37号,日本ネットワークセキュリティ協会,2014,pp.2-5.)。 2)我が国が「新興国にコスト競争力で勝つことは難しい。日本は高付加価値産業への構造転換を急ぐべきである」 との指摘がある(日本創成会議第2回提言「地域開国:グローバル都市創成」 (平成24年7月12日)日本創成会議, 2012,p.4.http://www.policycouncil.jp/pdf/prop02/siryo2.pdf[2017.2.1.15:50閲覧])。 3)大藤剛宏(岡山大学病院臓器移植医療センター)による講演「肺移植の現状」 (平成30.10.6.日本音楽教育学会第 49回大会)における発言内容。 4)「合科」という用語自体は,大正中期に我が国の教育界で使われ始めた。各教科の枠を超えた,総合的な学習課 題に迫る実践が各地で試みられ, 「分科」と対応して「合科」という用語が生まれ,大正期から昭和にかけてほぼ. 185.

(13) 芳賀 均・森 健一郎. 定着したものである(木原健太郎編『総合・合科的学習の教育課程化』明治図書,1977,p.21.)。 5)この区分の考え方については,静岡県総合教育センターの資料を参考にした。. . http://web.thn.jp/ninjinhouse/j-sougou-teigi.pdf(2018年8月10日確認) 6)合科には3つの形があると考える。一つは「教材(テーマ)の内容」に焦点を当てた合科的学習である。あるテー マを複数の教科で扱うという形である。二つ目は, 「活動や授業法」に焦点を当てた合科的学習である。国語と音 楽の学習を,共通の授業方法でおこなった例(芳賀均「国語と音楽の組み合わせによる授業―国語授業の方法を音 楽授業に活用する試み―」 『北海道教育大学紀要(教育科学編) 』67⑵,北海道教育大学,2016,pp.A1-A11.)が ある。しかし,筆者は,より全人的な教育を目指す上で,一歩踏み込んで「能力分析的観点による合科」(例えば, 関心・意欲・態度とか,思考・判断・表現といった観点)を目指した活動を構成する必要があると考える。その結 果,例えば理科において技能が上達すると音楽における技能も上達するなどといった変容が期待できる。このこと で, 「理科は好きだが音楽は嫌い」というような教科分断的な意識も克服したい。 7)高浦勝義『絶対評価とルーブリックの理論と実際』黎明書房,2004,p.95. 8)小林信郎『新指導要録の解説と実際』教育出版,1980,p.13. 9)高浦勝義『総合学習の理論・実践・評価』黎明書房,1998,pp.228-230. 10) 同上。 11)平成22年の学習指導要録の改定で,評価の観点が,従前の「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」 「知 識・理解」から「関心・意欲・態度」 「思考・判断・表現」 「技能」 「知識・理解」という形に変更された。しかし, 「思考・判断・表現」の中の「表現」は, 「学習活動等において思考・判断したことと,その内容を表現する活動 とを一体的に評価することを示すもの」であって, 「歌唱,器楽,絵,デザイン等の指導の内容を示す『表現』と は異なるものである」 (中央教育審議会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」平成22年3月24日) 。 12)中央教育審議会答申(抜粋) 「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及 び必要な方策等について(答申) 」 (平成28年12月21日) 13)高浦勝義『指導要録のあゆみと教育評価』黎明書房,2011,p.53.には,昭和55年版から平成3年版への改定の意 味について, 「各教科の『観点別学習状況』の観点は大人中心主義,教える内容中心主義から,学ぶ子ども中心主義, 学び方中心主義へと転換したと考えられる」 とある。評価の観点の順序は, 学習の構造を表すと考えることができる。 14)中央教育審議会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告) 」 (4.観点別学習状況の評価の在り方につい て/⑸各教科における評価の観点に関する考え方)平成22年3月24日。. . http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/attach/1292216.htm[2018.8.30.22:24.閲覧] 15)中央教育審議会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ(報告) 」 (教育課程部会・平成28年8月26日) http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/09/09/1377021_1_4.pdf [2018.8.30.22:04.閲覧] 16)軍事的にその活用を図るという動きが見られた音感教育もある(木村信之『音楽教育の証言者たち 上 戦前を中 心に』音楽之友社,1986,pp.192-193.)が,要素等のみの聴取に終始する態度は「聴音訓練の着意すべき面であっ て純然たる音楽鑑賞時における終局的態度ではない」 (村田榮吉『高度國防國家建設への藝能科音樂の基礎的錬成』 千葉書房,1941,p.161.)とされ,音楽鑑賞教育とは異なる位置にあるといえる。 17)木村素衞「美のかたち」(1941) 『美のプラクシス』燈影舎,2000,p.121.では, 「観ることと作ること」は「原理 的同一に立たねばなら」ず, 「後者は前者の必然的発展である」と述べられている。例えば,「花の絵を描く」場合 を思い浮かべると分かりやすい。すなわち,花を見て「黄色の花びらが美しい」等,何らかの価値付けをし,味わ いながら絵画として表現していくのであって,全くの直観のみで写し取っていくわけではない。 18)文部省『ウタノホン 上 教師用』文部省,昭和16年,p.13. 19)諸観念の世界が言語の中に進入し,逆に言語は諸観念に進入するように,思考や認識にとって重要な存在であ る(M.メルロ=ポンティ著/中島盛夫監訳『見えるものと見えざるもの』法政大学出版局,1994,p.310.およびp.368. を参考にした) 。 20)新原将義・有元典文「音楽知覚の分化に関する一研究―ヘビーメタル・ミュージックを主題として―」『教育相 談・支援総合センター研究論集』第10号,横浜国立大学大学院教育学研究科,2010,p.149.. 186.

(14) 音楽科における評価の観点に関する一考察. 21)日本教科教育学会編『今なぜ,教科教育なのか』ぶんけい,2016,pp.56-61. 22)八杉龍一『科学とは何か』東京教学社,2003,pp.125-133. 23)中央教育審議会「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について:中央教育審議会 第一次答申」『教育情報研 究:日本教育情報学会学会誌』12⑴,日本教育情報学会,1996,p.29. 24) 同上。 25)石橋文秀・大澤茂男・高木典子「小学校における異教科との合科的・関連的指導用カリキュラム開発―理科と 国語の合科授業の1提案―」 『大阪青山大学紀要』3,大阪青山大学,2010,p.9. 26)文部科学省『小学校学習指導要領解説 総則編』平成20年6月,第4節. 27)中央教育審議会答申「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要 な方策等について(答申) 」 (平成28年12月21日)『別冊初等教育資料』2月号臨時増刊,東洋館出版社,2017,p.37. 28)西園芳信『小学校音楽科カリキュラム構成に関する教育実践学的研究―「芸術の知」の能力の育成を目的とし て―』風間書房,2005,第1部,第3章,第2節. 29)松尾知明『21世紀型スキルとは何か』明石書店,2015,p.106. 30)渡辺謙仁「なぜSTEAM教育には『宇宙』がいいのか?」『宇宙科学技術連合講演会講演集』60,2016. 31)丸山恭司・磯﨑哲夫・古賀信吉・三好美織・影山和也・渡辺健次「STEM教育の展開可能性に関する研究」『広 島大学大学院教育学研究科共同研究プロジェクト報告書』13巻,広島大学大学院教育学研究科,2015,p.23. 32)STEAM教育が教科横断的学習か総合的学習かについては,その扱われ方によって様々である。英語では「7つ の横断的な概念」という語句が示すように,横断的な意味合いが強いようである。その立場では,合科的学習やク ロスカリキュラムにおいてSTEAM教育が実践されていると解釈できる。その一方で,STEAM教育の実践では, 教科の枠をそもそも意識せず, 地域の教育センターなどで科学教育の啓発の意味も含めつつ実施されるものも多く, このような場合は総合的学習に位置づけられることになる。論考によっては「横断的・総合的」と一括りの表現を されることも多いものの,教育課程に位置づける場合は,教科横断的学習であるのか,総合的学習であるのか,そ の実践のねらいに応じて区別することがカリキュラムマネジメントの観点からも必要であろう。 33) 『STEAM Education』https://steamedu.com/[2017.11.1.14:59閲覧] 34)孔泳泰・池仁哲「紙工作を通しての楽しいSTEAM教材の開発」 『日本科学教育学会研究会研究報告』Vol.27, No.3,2013,日本科学教育学会. 35)安東恭一郎・金政孝「科学と芸術の融合による教育の可能性と課題:韓国STEAM教育の原理と実践場面の検討」 『美術教育学』35,美術科教育学会,2014,pp.61-77. 36)松永泰弘・浜辺萌香・原田和明『科学・技術・芸術を融合したSTEAM教育における設計教材としてのオートマ タの開発』静岡大学教育実践総合センター紀要25,2016,p.107.. 187.

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参照

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