天然染料を用いた染色教材の授業実践と染色の技術的な改善
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第64巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducadon(Educadon)Vol.64,No.1. 平成25年8月 August,2013. 天然染料を用いた染色教材の授業実践と染色の技術的な改善 小於恵美子・駒津 順子*・森田みゆき**. 北海道教育大学教育学部旭川枚衣生活学研究室 *北海道北見緑陵高等学枚 **北海道教育大学教育学部札幌枚生活環境工学研究室. PracticeandImprovementofTeachingMaterialof DyeingwithNaturalDye KOMATSUEmiko,KOMATSUJunko*andMORITAMiyuki**. DepartmentofClothingLife,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducadon,Asahikawa,070−0825. *HokkaidoKitamiRyokuryouHighSchool,Kitami,090−8558 **. DepartmentofEngineeringofLifeandEnvironment,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation,Sapporo,002−8502. 概 要 高等学校家庭科における染色教材を開発し,授業実践を通して検討を重ね,実践時に顕在化した染色の技 術的な課題とその改善策について整理・分析を行った。1回日の授業実践で,本染色教材には「染色布の使 途」および「授業時間の制約」から発生した課題があることが明らかとなった。 小さな染色布では使途が無いという生徒の意見から,調理実習の三角巾に使用するという目的を設定した。. 大判の綿布を染めるには大量の染料が必要となるが,本教材の天然染料は人手が困難であるため,染料使用 量の削減を検討した。その結果,当初の25%の染料使用量で,60cm角の綿布を染めることが可能となった。 また作業時間が長く単調である,という課題を改善するために,媒染時間の短縮を検討した。最終的に, 染色時間20分,媒染時間10分,残りの20分に移染防止のための簡易ソービング等を行う,という授業時間50 分で行う染色実習の最適条件を決定することができた。. 1.緒 言 筆者らはこれまでに,戦後の高等学校家庭科に. 作業であるため苦労は大きい分,着実な思考力・ 計画性・創造性が養われるとされるが3),生徒の 作業能力の低下による授業の進度差が大きく,授. おける染色の位置づけを明らかにし1),染色教材 の開発を行い2),特に多人数を対象とする染色教. 業時間の確保が難しい4)。それに対して,従来か. 材について,授業実践を通して検討を重ねてきた。. で行われ,個別の取り組みがされにくい状況で. 被服製作学習は,一人ひとりがすべてに関わる. らの染色実習の作業は,調理実習のように班単位. あった。. 207.
(3) 小松恵美イ∴駒津 順十・森出みゆき. 一方で,新たな調理実習の取り組みが報告され. て,北海道立K高等学校(普通科)の延べ人数1,282. ている。一人ひとりの生徒に同じような調理体験. 人,33クラスを対象に約40人規模で染色実習を実. ができるような授業のしくみにより,一人で責任. 践した。実施科目は,選択科目のフードデザイン. を持って一つの調理を取り組む能力が身につく. (3年次)および必履修科目の家庭基礎(1年次). と,調理に必要な能力がついで身につく5)という,. である(表1)。. 家庭科実習における個人単位での作業を行う重要. 授業者は専任教員および非常勤講師(2名), 教育実習生(北海道立K高等学校在籍時に家庭科. 性についての報告である。. 授業において染色実習を履修している)であった。. 本染色教材では,染色と媒染は班単位で行うが, 布への模様付けや染色一媒染後のすすぎ等,生徒. 色素抽出(事前準備)から実習までの全工程を教. が個人で作業を行う場血もある。班単位の作業と. 員が1人で担当した。. 個人単位の作業それぞれの内容と時問のバランス. 染色用∩布への模様付けは,生徒があらかじめ. をどう取りながら実習を行うべきか,染色理論に. 調理室あるいは普通教室で行い,染色と媒染は調. 基づいた十で,精査する必要がある。. 理室で行った。また,個人の染色布を判別するた. そこで木研究では,実践によって顕在化した染. めに,布片に油性マジックで記名した名札を作り,. 色の技術的な問題点とその改善策を整理・分析. 安全ピンでとめてから染色した(図1)。. し,今後の課題について検討した。. 染色は,4∼5人単位で班を構成し,最人で10 の班ごとに調理台で鍋を用いて行った。染色巾に 布が浮き上がるのを染色液に沈めるために,割り. 2.授業実践の概要. 箸を人数分用意した(図2)。 媒染液は,最人10人分まで媒染が可能な人きさ. 2−1授業の概要. 2007年∼2011年の5ケ年の問で計7回にわたっ. の容器で調製した。生徒はあらかじめ媒染金属を. 表1.玉ねぎ外皮を用いた染色実習の授業実践概要 授業実践. 実施時期. ヵ. Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. 2007年. 2008年. 2008年. 6−7月. 12月. 5月. 実施科臼 実施学年. フード*. フード*. 担当者. 専任. 3年. 3年. Ⅳ 2009年. Ⅴ. Ⅵ. 2009年. 2010年. 6月. 10月. 7月. 家基**. 家基**. フード*. 家基**. 1年. 1年. 3年. Ⅶ 2011年 5月 家基**. 1年. 1年. 専任 時間講師***時間講師* 専任 時間講師***突*** 147 238 191 154 201 201 生徒数 150 4 4 クラス数 4 授業時間 150分 50分 50分 50分 50分 50分 50分 調理実習の二角巾として利用 染色布の使途 生徒任意 絹羽二重 絹羽二重 綿ローン 綿ローン 綿ツイル 繊維・織組織 綿ローン 綿ローン 布 サイズ 35cm角 35cm角 50cm角 70cm角 55cm角 55cm角 60cm角 6. 7g 1,050g. 7g l,029g. 5.5g. 9g. l,309g. l,719g. 700g. 700g. 550g. 900g. 染色液. 初回液. 初回液. 初回液. 初回液. 媒染時間. 30分. 15分. 15分. 15分. 重量 染. 色 条. 5. 総使用量 ●. 件. *:フードデザイン,**:家庭基礎,. 208. *** :専任教諭も含む. 22g. 5. 5. 22g. 22g. l,694g2,640g l,320g. l,100g. l,313g. 656g. 混合液 2回使用 完 15分. 15分. 10分.
(4) 天然染料を用いた染色教材の授業実践と染色の妓術的な改善. I8. 1. ⊆==∴● =■ ー ̄ 与I. 図1.染色用白布と,輪ゴムによる模様付け. 図2.染色の様子. および名札に必要な用具. 図3.媒染の様子(使用金属:Fe). 図4.乾燥の様子. 選んでおくが,当日の変更もできるように媒染液. 乾燥した状態のものを,100%0.W.f.(=布と同. は対応人数に余裕を持って準備し,生徒の希望に. 重量)で用いた。色素の抽出は,室温の水に玉ね. 応じて容器の数を増やした。布を媒染液に沈ませ. ぎ外皮をナイロンネットに入れ沸騰後20分間煮沸. るためにトングを用いた(図3)。. 抽出した後,ナイロンネットごと絞り濾過し,濾. 染色後および媒染後のすすぎは生徒が個人で行. 液に浴比調整のために水を追加した。色素を抽出. い,水気を切った後,調理室内の所定の場所へ干. する道具は,火力など設備に応じた方法で行うこ. した(図4)。生徒が染色したバンダナを図5に. とが望ましく,今回の実践では大鍋(アルミしゅ. 示す。. う酸鍋 満水容量:20.OL サイズ:内径/ 400mm,深さ180mm)で一度に抽出し,各班の. 2−2 染色条件. 染色および媒染・すすぎの手順は,これまでに. 検討した染色条件2)に従った。実施した内容を以 下に述べる。. 鍋(アルミ鍋満水時容量:4.OL サイズ:内径 /240mm,深さ100mm)へ分配した。浴比は布 重量と鍋の容量に合わせて,1:20∼50で行った。 媒染剤は,硫酸鉄(Ⅲ)アンモニウム(=鉄明答,. FeNH4(SO4)2・12H20:国産化学),硫酸カリウ 2−2−1色素の抽出および媒染剤. 染色材料は玉ねぎ外皮とし,調理上の廃棄物を. ムアルミニウム(=カリウム明答,AIK(SO4)2・. 12H20:協和純薬),リン醸水素ニカリウム. 209.
(5) 小松恵美子・駒津 順子・森田みゆき. ために,輪ゴムを用いた防染を行った。輪ゴムを. 布にきつく巻き付けたところは,色素が中に入っ ていくことができず,染まらずに白く残るため, その部分が模様となる。. 2−2−2 染色および媒染. 染色は,防染した染色用白布を水で濡らし軽く 絞った後,染色液に浸漬して加熱昇温し,沸騰後 に温度を90−100℃に保ちながら行った。 媒染は後媒染とし,染色液から布を取り出し, 水ですすぎ,軽く絞った後,媒染液に浸漬した。. 媒染液の温度は標準操作では室温で行うが,可能 な場合は学校設備の給湯を利用し,65℃程度で 行った。その後,水ですすぎ風乾した。水はすべ て水道水を使用して行った。. ・. 3.結果および考察 3−1最初の授業実践からの課題. 2007年12月,フードデザインで1回目の授業実 践を行った(表1の授業実践Ⅰ)。フードデザイ ト. ンは専任教員のみが担当している科目のため,教. ■. 材の検討をしやすいことが理由であった。. − r■し. 染色実習では,染色時の加熱および媒染時の浸 漬に一定の時間をかける必要がある。一方,生徒. にとっては,この間は他の作業が無いため「待ち 時間」となる。この待ち時間を解消することが, 授業実践を行う上での最初の課題であった。. 待ち時間が必要な内容の実施については,これ 図5.玉ねぎ外皮を用いた染色による生徒の作品 上:Fe媒染 中:Al媒染 下:K媒染. までにも授業者は調理実習において待ち時間に違 うメニューを組み合わせ,2時間連続の授業を 行ってきた(ガトーショコラをオーブンで焼いて. (K2HPO4:純正化学)の1級を,6%0.W.f.(= 布の6%の重量)で用いた。容量が10Lのプラス. いる間に利休まんじゅうを作る)。. 授業実践Ⅰでは,授業者にとって初めての染色. チック製の洗い桶に,ビニール袋をかけ媒染液を. 実習でもあることから,生徒の学習活動にゆとり. 用意した。. を持って行うことも考慮した。そこで,50分単位. 染色用白布は,敬愛企画・ぬの千代社製の染色 用ハンカチあるいはバンダナ(サイズ:35cm角 ∼70cm角,繊維:綿ローン,綿ツイル,あるい は絹羽二重)を用いた。また,布に模様をつける. 210. で3時間連続の調理実習の授業の中で,染色を同 時に行うこととした(図6)。. まず,ガトーショコラをオーブンで焼き始めた 後に染色を開始し,同時に利休まんじゅうを作り.
(6) 天然染料を用いた染色教材の授業実践と染色の妓術的な改善. 始め,蒸し始めた頃に媒染を行った。続いて,焼. 3−2 染色実習の技術的改善. 授業実践Ⅰで顕在化した一つ目の課題は,「授. き上がったガトーショコラを冷ましている間に,. まんじゅうを蒸し上げ,染色布をすすいで干すと. 業時間の制約」から発生したものであり,また二. いう内容にした。ガトーショコラは,すべての工. つ目の課題は,「染色布の使途」から発生したも. 程について班で役割分担して調理を行うが,利休. のである,と考えられた。本染色教材の価値を高. まんじゅう(あんを皮で包む作業)と染色(模様. めるため,これらの課題について,さらに授業実. 付け,すすぎ)は,各自で作業を行う場面を設け. 践を重ねながら改善を行った。改善の流れを表2. た。以上の内容から,染色実習と調理実習を同時. に示す。. に行うことで,染色の待ち時間を解消することが 3−2−1「授業時間の制約」から発生した課題の. 出来た。 だが一方で,新たな課題が明らかとなった。一. 改善. 授業実践Ⅰによって,生徒の作業に必要な時間. つ目は,様々な作業を組み合わせたことにより,. 生徒が染色そのものを観察し理解しながら体験す. が明らかとなった。そこで「染色や媒染の作業が. ることが難しい状況であった。二つ目は,染色用. 単調で時間が長い」という染色の特徴を,まず改. 白布に35cm角の綿ローンのハンカチ(1枚重さ. 善すべき課題と捉えた(表2の実践後の課題②)。. 7g)を用いたが,染色材料(玉ねぎ外皮)も布. 生徒が観察しながら染色の理解を深めることがで. と同じ重量が必要なため,実習合計で1,050gと. きるように,授業時間を短縮し,50分の1単位時. 大量に使用した。たが,実習後に多くの生徒から. 間での授業実践を検討した。授業実践Ⅰでは30分. だった媒染時間を15分に短縮し,染色20分,媒染. 「小さな布では使い途を見いだせない」という感. 15分,すすぎ(2回)などを15分で行うことを検. 想があげられた。. 討し,授業実践Ⅱを実施した(表2の改善策(1))。. (120分). 利 休 まんじゅう ガ ト ー. 利. シ ョ コ ラ. ま ん じ ゅ う. 休 染色布 輪ゴムで絞L」, 水に濡らし,. 砂糖計量・卵別立て. 軽く絞る. l. 全部で20分. チ]コの湯煎・生クリーム. l. 小麦粉計量・ふるう l. 型に入れ焼く(40分). 型から外し冷ます(10分) 蒸す(7分). 、 、. /. 試食・持ち帰り準備 従来の実践(100分間). 染色を導入した実践(150分間). 図6.授業実践I「フードデザイン150分授業で行う調理と染色の同時実習」. 211.
(7) 小松恵美イ∴駒津 順十・森出みゆき. 授業実践Ⅱを行ったフードデザインは,3年次. なった。. さらに,家庭基礎で調理実習に先行して染色実. に履修のため,生徒は既に1年次において調理実 習で調理室を利用し班単位の作業も紆験してお. 習を行うことによって,調理室の利用に関するガ. り,余裕を持って染色実習に取り組んでいた。. イダンスや,調理実習前に班単位で実習を行う機. しかし,授業実践ⅢおよびⅣは家庭基礎で行っ. 会が増えた。授業時数が少なくとも,家庭科授業. たため,調理室を初めて利用する1年次の履修と. における実習授業の導入を指導できる可能性が見. なった。1年生は3年生に比べて,染色・媒染以. いだされた。. 外のすすぎなど,個人で行う作業に時問を要して いた。また,媒染後に水ですすぎ,風乾しながら. 3−2−2 「染色布の使途」から発生した課題の改. 布に色素を定着させた後にアイロン仕上げを行っ. 蓋 工=コ. ていたが,アイロン時に当て布をしても移染が生 じ,作業の妨げとなった(表2の実践後の課題⑨)。. これを受け,授業実践Ⅳからは媒染後のすすぎ. 授業実践ⅠおよびⅡにおいて使用した染色用∩ 布は,重量7g,35cm角の綿ローン染色用ハン カチであった。しかし,実習後生徒に行ったアン. で食器用洗剤による簡易ソービングを行い,アイ. ケートでは,染色したハンカチの使い途を見いだ. ロン仕上げ時の移染を防いだ(表2)。しかし簡. せないという感想が得られた(表2の実践後の課. 易ソービングという新たな個人作業が増えたため. 題①)。. に,家庭基礎の実践ではますます生徒の作業に遅. 生徒の染色布を授業で活用する方法として,調 理実習の三角巾に使用するという目的を設定し. れが生じた(表2の実践後の課題⑥)。. そこで,染色布の堅牢性を損なわずに染色(20. た。ここで,身にまとうことが出来る人判の綿布. 分)・媒染(15分)の時問を短縮する染色条件を. を染色するためには,染色材料である土ねぎ外皮. 検討した2)。新たな染色条件として,染色時問は. が人量に必要となるが,その人手が困難という課. 変えずに20分で行い,媒染時問を15分から10分に. 題が発生した。. 短縮し,それ以外の作業時問を20分とした(表2. この課題を解決するために,授業実践Ⅲ,Ⅳで. の改善策(2))。これにより,生徒は染色そのもの. は,三角巾に使える人きさの絹羽二重のスカーフ. にゆとりをもって取り組むことができるように. を染色することにした。絹は,綿に比べ同じサイ. 表2.授業実践を通した染色の技術的改善の流れ. し f二梁塵旅▲の好い題カゴ甘い. 6 讐竺・芦ニ・染色の待ち時間の解消 榊実習と同時に実施 Ⅱ ㌍’告 ②実習時間の短縮(1). Ⅲ. ・(1)媒染時間の短縮(30→15分). 2008牒−7,(プニ身〆ご腐づメ▲ききの兼畠虜▲・戯紆の家定▲ 衣裳輌* 亡脅脾かフの兼創 傭→麒謝二鼓. ②作業単調で時間が長い. (1)改善. 皮葺 ③アイロン時に移染が生じる lぜ凍錐㈲の即題い力漕い). 改善. 反発郎の人手メ瀬野. Ⅳ 2慧・節イロン時の移染防止・媒染後の簡易ソービング. 2009∬ ぜ凍錮聯の顔▲ 1r. 田 2憲’脚の躍悲砂 2011.5. ⑥実習時間の短縮(2) Ⅶ. 衣裳 脚の戯貰此「d. ・戯紆の密度儒軋首→劇 ・「か虜倉梁塵彪 ̄〆ごよβ兼畠. 皮. ≒It▲ 蘭改善. ・似凝畠彪 ̄のプ脚. 仏ノ改善. ・(2)媒染時間の短縮(15→10分) ・「d虜合資畠彪 ̄のど脚. 危ノ皮葺(2)改善 豊選色塗色 こを色のバリエーション. *斜体:「染色布の使途」から発生した課題,太字:「時間の制約」から発生した課題, 下線:「今後の課題」(未改善),**:フードデザイン,***:家庭基礎. 212. ⑥作業の遅れ.
(8) 天然染料を用いた染色教材の授業実践と染色の技術的な改善. ズの布でも重量が軽いため,染色材料が少なくて. 行った際,いずれの改善策による染色布も,実習. 済み,さらに発色も良い。だが,染色後の繊維の. 教材として問題を感じないとの回答が行られたた. 取扱いが綿よりも難しいという課題があった(表. め7),染色条件として採用した。. 2の実施後の課題④)。. 調理実習の三角巾には,やはり洗濯が容易な綿. 3−2−3 最適化した染色実習の授業計画と今後の. 布が適切である。綿布を染めるためには,天然染. 課題. 料で人手が困難な染色材料である,土ねぎ外皮の. 以上の改善策から決定した最適条件をもとに,. 減量化が必要であった。そこで,染色材料を削減. 授業実践Ⅶを行った。表3に「50分で行う土ねぎ. できる染色液の調製方法について検討した。. 外皮の染色実習計画」を示す。 今後の課題としては,天然染料の特徴である「濃. 授業実践Ⅴでは,一度摘出した染色材料(玉ね ぎ外皮)から再度抽出した染色液と,始めに抽出. 色に染めることが難しい」「色のバリエーション. した染色液(=初回液)を1:1に混合して使用. が少ない」という点があげられ,さらなる染色技. した。これにより,染色材料の使用量を50%削減. 術の改善の検討が必要である。. 木研究で使用した染色用n布は,染めることそ. することが出来た(表2の改善策(a))。次に授業. 実践Ⅵでは,染色液を繰り返し利用することを検. のものを体験できる縫製済みの染色用製品を用い. 討した。染色後の染色残液に,加水し浴比調整し. たが,製品ではない布地への染色も検討課題とし. たのち,新しい布を染めた。これにより,染色材. てあげられる。染色した布は,たて糸とよこ糸が. 料の使用量を50%削減することが出来た(表2の. ゆがんだ状態になるため,地直しを行いながらの. 改善策(b))。. 織組織など被服材料の学習や,基本的なアイロン のかけ方を学ぶ機会への発展が考えられる。. さらに,授業実践Ⅶでは,授業実践Ⅴ,Ⅵの改. さらに,染色した布地を被服構成実習の一部に. 善策を取り入れ,混合した染色液を2回線り返し 使用した。これにより,染色材料の使用量を25%. 活用することで,身にまとうものすべてを染色せ. まで削減6)することが出来た(表2の改善策(C))。. ずとも染色を体験することが出来,染色材料の使. また,染色布の色について生徒に官能検査を. 用量も削減できると考えられる。天然染料の色を. 表3.授業実践Ⅶ:50分で行う玉ねぎ外皮の染色実習計画 学習f古動. 導. 指導上の留意点. 備. 考. 1 染色方法の概要(5分) ・模様(防染)が山来ていることを確認す ・染色班(1班4名). る。 ・手順を確認する。. 人. ・各班配布(箸,ボール,染色液,食器用洗 剤,布巾など). 2 イIJを水で濡らす(2分) ・布を濡らし,軽く絞らせる。 3染色(20分). ・布を染色液に入れる。 ・火傷等に注意させる。 ・布が浮いてこないように箸で沈めなが. ・鍋に入れて点火する(加熱胡整)。. ・媒染の手順を説明する. ら,点火から20分間加熱する。. 展. ・ボールで流しすすぎをする. 4すすぎ(2分). ・布を取り出し,すすぐ. 5 媒染(10分). ・3種の媒染液を選んで染色布を浸ける。 ・トングや手袋を使わせる(媒染班1班10名). 開. ・布を取り山し,輪ゴムを外して水ですす ・洗剤は布に1摘の呈 簡易ソービング(3分). ・食器用洗剤で布の抱が無くなるまでよく 水洗いする。 7乾燥(3分) ・布を絞り,広げてTす。 整 8 基本的な染色方法の確 ・媒染液による発色の違いを確認する. 理. 認(5分). ・Tす場所の指定をする(移染防止). ・布を最人限活用した作■ローの製作とする。 (調理実習で使用するバンダナ). 213.
(9) 小松恵美子・駒津 順子・森田みゆき. 生かし,既成の布地の色と組みあわせることで,. 色のバリエーションの少なさを補うことも可能で. 科「染色」の取り扱いの変遷と教材開発の視点.家教誌.. 2011,VOl.53,nO.4,p.255−266 2)駒津順子,小桧恵美子,森田みゆき.高等学校家庭. ある。. 科の染色教材開発−1単位時間で行う玉ねぎ外皮染色. また,天然染料を用いて,繊維の種類に依存す. る繊維の染色性を学ぶなど繊維理解も含め,かつ 製作と関連づけて創造的喜びを与える教材への発. 展が報告されている8)。本研究でも,染着性の異 なる繊維から成る多繊交織布を利用した作品製作. −.家政誌.2012,VOl.63,nO3,p.133−141 3)高部啓子,布施谷節子,新留理江子,高部和子.家 政系女子大生の被服製作に対する意識と基礎知識(第. 1報):製作体験と意識との関連.家教誌.1994, VOl.37,nO3,p.39−46 4)川端博子,鳴海多恵子.「刺し子」学習の効果と指導. に関する一考察.家教誌.2012,VOl.54,nO4,p.. への発展が考えられる。. 248−257 5)中屋紀子,江本光芙,堀江和子.一人・一品・三ま. わり方式での調理実習における生徒各人の成長過程. 4.総 括. 高等学校選択家庭科の授業.第45回日本家庭科教育学. 染色教材の授業実践により,小さい染色布では 使い途が見いだせず,一方,天然染料で大判の綿. 布を染めるには染料使用量の減量化が必須であ る,という「染色布の使途」から発生した課題と, 染色や媒染の作業が単調で時間が長い,という「授. 業時間の制約」から発生した課題があることが明 らかとなった。. 会大会研究発表要旨集.2002,p.3 6)駒津順子,森田みゆき,小松恵美子.天然染料の削 減が後媒染の綿染色布の色に与える影響.投備中 7)森田みゆき,駒津順子,小於恵美子.天然染料を用 いた後媒染染色布の官能評価.投稿中 8)福田典子.繊維学習のための染色実験・実習教材の 開発.第45回日本家庭科教育学会大会研究発表要旨集.. 2002,p.9. 活用しやすい大判綿布を染めるために,染料使 用量を減らす染液の有効利用について,複数回の 実践を通して検討した。染液の2回使用や混合染 色液の使用により,初回液と同程度の色の染色布 が得られることがわかった。最終的には,身にま. とうことができる60cm角の綿布を染色すること が可能となり,天然染料の使用量を当初の25%に 削減できた。. また作業時間については,媒染時間の短縮を検 討した結果,染色時間20分,媒染時間10分,残り の20分に移染防止のための簡易ソービング等を行 うという ,授業時間50分の染色実習の最適条件を 決定することができた。. 今後は,天然染料の特徴でもある「濃色に染め ることが難しい」「色のバリエーションが少ない」. という課題を改善するために,更なる染色技術の 改善の検討が必要である。. 引用文献 1)駒津順子,小桧恵美子,森田みゆき.高等学校家庭. 214. (小松恵美子 北海道教育大学旭川校准教授) (駒津 順子 北海道北見緑陵高等学校教諭) (森田みゆき 北海道教育大学札幌校教授).
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