• 検索結果がありません。

2019年延岡竜巻の映像解析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "2019年延岡竜巻の映像解析"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     

 年延岡竜巻の映像解析

CLOUD IMAGE ANALYSIS OF THE 2019 NOBEOKA TORNADO

宮城弘守1)     牧野仁胤2)     佐々浩司3) Hiromori MIYAGI1), Hitotsugu MAKINO2) and Koji SASSA3)

ABSTRACT

A tornado occurred in Nobeoka, Miyazaki on the morning of September 22, 2019, when the typhoon No.17 was approaching. About 500 houses were broken and 18 peoples were injured by the tornado. The present study aims to clarify the characteristics of the tornado. Its funnel cloud was wide bowl shape and it was difficult to identify the tornado. But its moving velocity was found to be 96 m/s. And the maximum velocity, 43 – 52 m/s, was estimated by the drop level of cloud bottom. Furthermore, we will report the result of the trial identifying the tornado with the rotating motion of the cloud.

Key words : Tornado image analysis

 はじめに 2019 年 9 月 22 日の朝、台風 17 号が接近中の宮崎県延岡市で竜巻が発生した。気象庁の発表によると、被 害延長は約8.2km で強さは JEF2(55m/s)。被害域は 2006 年 9 月の F2 竜巻被害とほぼ一致し、被害規模は 2006 年の竜巻に次ぎ、建物被害は約 500 戸、人的被害は 18 人(通報分)に達した。 本研究は、記録された11 個の映像からこの竜巻の特性を明らかにするものである。映像を見ると渡河時以 外は竜巻の特徴にあげられる漏斗状には見え難く、大きな鍋底状で同定が困難であったが、移動速度は約 96km/h、雲の垂れ下がり量から最大風速を 43~52m/s と推定した。さらに、映像に写った雲の回転から竜巻 を捉える試みについて、結果を報告する。  竜巻被害の概要 台風17 号が接近する 3 連休初日の 2019 年 9 月 21 日、宮崎県内には南からの湿った空気が流れ込み、猛烈 な雨が降った宮崎市では「記録的短時間大雨情報」も発表された。翌22 日の 9 時、大型の台風 17 号(中心気 —―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1) 宮崎大学工学教育研究部 助教 (〒889-2192 宮崎市学園木花台西1-1) 2) 宮崎大学工学部 学生 (〒889-2192 宮崎市学園木花台西1-1) 3) 高知大学教育研究部理学系 教授 (〒780-8520 高知市曙町2-5-1)

(2)

圧975hPa)は五島市の南西約 250km にあって、約 30km/h の速さで北北東へ進んでいた。また、九州北部か ら関東地方の東方沖に延びる停滞前線があって、早朝には風速 15m/s 以上の強風域に入った宮崎県内には、 台風周辺の湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定になっていた。特に延岡市で竜巻が発生した時 間帯には、活発な積乱雲が北方向に通過中であった。     図1 竜巻被害分布の概要●と刻々の竜巻位置推定 竜巻映像の記録時間と市民の証言を総合すると、竜巻は2019 年 9 月 22 日の 8 時 33 分 30 秒頃、台風 17

(3)

号が接近中の宮崎県延岡市平原町で発生してほぼ北進し、JR 延岡駅東側を通過して桜ヶ丘北側の山中に至っ た8 時 39 分頃に一旦消滅したが、その延長線上約 2.5km の竹谷神社と付近の山林に再び被害を発生して消 滅したとみられる。竹谷神社付近の被害を含めると、今回の竜巻の被害延長は約10.7km となる。図 1 に示す ように市街地の被害域は2006 年 9 月の F2 竜巻被害とほぼ一致し、JR 延岡駅構内では高さ約 30m の照明用 鉄塔が倒壊したり重さ約1.5t の貨物用コンテナが飛ばされたりしたが、建物被害数は約 1/3 の約 500 戸、人 的被害数も約1/8 の 18 人(通報分)にとどまった。なお JR 九州はこの竜巻通過時に竜巻進路上の五ヶ瀬川橋り ょうで最大風速46.3m/s を観測した。   年間の宮崎県内の突風被害の概要 気象庁の竜巻等の突風データベースによると、延岡市でF2 竜巻が発生した 2006 年 9 月 17 日から今回の 2019 年 9 月 22 日までの 13 年間に宮崎県内で発生した突風現象は 25 件で、発生時期は 8~10 月が 20 件と 台風シーズンに集中している。したがって原因となった気象現象も「台風」と「台風・暖気の移流」合計が15 件に達し、発生場所も日南市から延岡市にかけての県東部の沿岸部(発生場所が宮崎市に近い国富町を含めた) が23 件を占めている。現象区分は 17 件が「竜巻または漏斗雲」だが、原因特定に至らず「不明」とされた 7 件にも竜巻現象が含まれていると思われる。被害分布は県沿岸部で一様のようだが、F2、JEF2 の被害は延岡 市だけとなっている。  竜巻を捉えた映像 2006 年 9 月の F2 竜巻では写真 1 件があったと記憶するが、今回の竜巻は知り得るかきぎり 11 件の映像 (動画)に記録され、そのうちの 9 件を収集した。図 2 に市街地を東方から俯瞰した空撮画像(google)にカメラ の位置を示し、図 3 に映像の撮影時刻とそれに竜巻が写っているおおよその時間帯や関連する市民の証言を まとめた。図2 の赤いカメラでは竜巻を捉えたが、竜巻を捉えていない黄色のカメラの映像も当時の現象の理 解に役立った。  竜巻の移動速度 国土交通省延岡河川国道事務所から提供された4 映像と橋口さん提供映像は撮影時刻が分かっていたため、 これを基に他の映像の撮影時刻を推定した。しかし、明確な漏斗雲様の雲を識別するのは困難が多かったため、 映像から竜巻の方位を測り、これと被害線の交点から竜巻の位置と時刻を推定して、区間ごとの移動速度を推 定し、前後に外挿するなどして移動速度を求めた結果、前述の約96km/h となった。         図2 竜巻や当時の現象を捉えたカメラの位置

(4)

図3 竜巻映像や証言による竜巻の把握  竜巻に伴う風速 国土交通省延岡河川国道事務所が祝子(ほうり)水位観測所に設置したカメラの大瀬川を渡る竜巻の映像 (8:35:46)を画像解析し、上空の雲からの漏斗雲様の雲の垂れ下がり量 63.89m からランキン複合渦モデルによ る近似計算により最大接線風速を24.0m/s(移動速度を含まない)と推定した。ただしこの時の竜巻は川から大 量の水飛沫を巻き上げているため漏斗雲の垂れ下がり量の推定精度が低く、その一方で上空の鍋底状の雲は ゆっくりだが大きく回転していて、その下面を「雲底面」と見做すことにも矛盾を感じた。 そこで延岡特別地域気象観測所の相対湿度から推定した約 300m を回転のない場合の雲底高度として、こ れを基に竜巻付近の雲の垂れ下がり量から最大接線風速を推定し直したところ、43~48m/s(8:34:34)および 47~52m/s(8:34:54)となった。五ヶ瀬川以南の旭化成の工場付近を進行中の推定風速ではあるが、その後に JR 九州の五ヶ瀬川橋りょうで観測された最大風速は46.3m/s であるから矛盾しないだろう。  大きな鍋底状の雲の回転から竜巻を捉える試み 今回の現地調査の中で印象的だったのは、竜巻映像を提供くださった市民に、祝子水位観測所に設置したカ メラで撮影した約120 秒間の竜巻映像を見せたところ、「すごいけど竜巻に見えない」という言葉だった。実 際その映像には、国道橋を渡って竜巻方向にためらいなく走っていく車がたくさん写っており、ドライバーの 目にもそのように見えたのだろう。そこで今回観測された「大きな鍋底状」の雲は漏斗雲を形から検出するル ーチンでは対応不能と考えて、雲の回転から竜巻を捉える方法を試行した。本解析では、オプティカルフロー を算出するにあたり、openCV に実装されている calcOpticalFlowFarneback 関数を利用した。  雲の水平移動速度の利用 「大きな鍋底状」の雲は上空を移動する雲の下で回転しているから、進行方向の右前方から見ると竜巻が通 過する際に水平方向速度が最速になると考えて、縦18×横 60 に分割し直した大ピクセル毎に、水平方向速度 が最速になる時刻[秒]とその時の水平方向速度[大ピクセル/秒]を求めた。図 4 に y(縦方向大ピクセル)毎にま とめた結果の3 例を示す。y=0 が映像に写った空領域の上端、y=17 が同下端、y=8 がそれらの中間である。 図の横軸には横方向位置(大ピクセル)を取ってあるので、最大水平移動速度●は、竜巻との距離が近づく画面

(5)

右ほど大きく、観測時刻●も遅くなると期待される。画面の上ほど期待した結果が顕著に表れているように見 えるのは、雲表面までの距離が近づくことによると理解される。 ところで期待通りの結果が一番顕著に表れた際上端 y=0 の 図を注意して見ると、画面中央x=30 で最大移動速度が観測さ れたのが 75 秒頃となっていて、元映像を確認すると「大きな 鍋底状」の雲の左端の背後の晴れ間との境界部分の移動を検出 していたことが分かった。説明は省略するが、他では「大きな 鍋底状」の雲の右端の移動を検出していると思しき結果もあっ て、移動速度と回転速度の合計で見かけの水辺移動速度が最大 になるだろうと期待される回転する雲の手前正面付近(の位置) の移動を検出することが簡単ではないことが分かった。  背景が隠されることを利用して竜巻の通過を識別する  オプティカルフローによる画像解析は、うまくいけばリアル タイムに実行する画像解析によって竜巻を検出してアラート (警報)発信に利用したいため、単純かつ確実な処理をしたいと 意図していた。しかし5.1 に示した結果を見ると、改良の余地 はありそうだが楽観できない。そこで次善の方法を試みた。 5.1 と同様に単純な考え方であるが、竜巻を発生する親雲や 漏斗雲が垂れ下がると、それまで見えていた背後の景色が隠さ れるだろうから、それを検出する方法もあり得るだろう。図5 は、34~74 秒の 10 秒ごとの画像をもとに、0~255 諧調の輝 度値を反転処理して 10 秒前の画像と足し合わせた結果を示し ている。                           図 4 映像に写った雲の水平方向移動速度 注目したい風景は、左側の元画像の中央付近の枠内に見える遠方の愛宕山(標高約 250m)であるが、34~54 秒にかけては竜巻の通過に伴い見え隠れしている。右側の処理結果画像の中央赤枠内では、2 時刻で景色に輝 度変化がある竜巻通過時の「34 秒-44 秒」と「44 秒-54 秒」では、白表示された建物の間でグレー表示が 変化するが、竜巻が通過してしまった「74 秒-64 秒」では、背景の見え方に変化がなくなって建物との区別 がつかない白に表示されている。 なお赤枠の外側では「大きな鍋底状」の雲が右に移動する様子が、グレー表示された左右の輪郭から、5.1 の方法より容易に読み取れそうにも思える。処理画像のオプティカルフローを求めることも有望でないだろ うか。   おわりに ・2019 年 9 月 22 日に台風 17 号の接近中に宮崎県延岡市で発生した竜巻被害の概要を報告した。 ・竜巻を捉えた複数の映像を解析した結果、移動速度は約96km/h、雲の垂れ下がり量から推定される最大風 速は43~52m/s と推定され、JR 九州の五ヶ瀬川橋りょうで観測された最大風速 46.3m/s と矛盾しない。 ・明確な漏斗雲が見えない場合の竜巻現象を、人の目にはその回転が見える「大きな鍋底状」の雲のオプティ

(6)

カルフローから捉えることを試みたが、雲の移動に伴う輪郭部分の輝度変化の影響が強く表れ、単純な処理で はうまくいきそうにないことが分かった。 ・竜巻が通過する際に背景などの景色が隠されることを利用して竜巻を捉える時間差処理画像の利用方法を 試行した結果には、可能性が感じられた。 図5 雲の垂れ下がりにより隠される風景等の検出の試み例  秒  秒  秒  秒  秒  秒- 秒  秒- 秒  秒- 秒  秒- 秒

図 3  竜巻映像や証言による竜巻の把握  竜巻に伴う風速 国土交通省延岡河川国道事務所が祝子 ( ほうり ) 水位観測所に設置したカメラの大瀬川を渡る竜巻の映像 (8:35:46) を画像解析し、上空の雲からの漏斗雲様の雲の垂れ下がり量 63.89m からランキン複合渦モデルによ る近似計算により最大接線風速を 24.0m/s( 移動速度を含まない ) と推定した。ただしこの時の竜巻は川から大 量の水飛沫を巻き上げているため漏斗雲の垂れ下がり量の推定精度が低く、その一方で上空の鍋底状の雲は ゆっくりだが大

参照

関連したドキュメント

にする。 前掲の資料からも窺えるように、農民は白巾(白い鉢巻)をしめ、

 現在『雪』および『ブラジル連句の歩み』で確認できる作品数は、『雪』47 巻、『ブラジル 連句の歩み』104 巻、重なりのある 21 巻を除くと、計 130 巻である 7 。1984 年

[r]

入札説明書等の電子的提供 国土交通省においては、CALS/EC の導入により、公共事業の効率的な執行を通じてコスト縮減、品

(1)東北地方太平洋沖地震発生直後の物揚場の状況 【撮影年月日(集約日):H23.3.11】 撮影者:当社社員 5/600枚.

○講師・指導者(ご協力頂いた方) (団体) ・国土交通省秋田河川国道事務所 ・国土交通省鳥海ダム調査事務所

・コナギやキクモなどの植物、トンボ類 やカエル類、ホトケドジョウなどの生 息地、鳥類の餌場になる可能性があ

撮影画像(4月12日18時頃撮影) 画像処理後画像 モックアップ試験による映像 CRDレール