• 検索結果がありません。

比況の助動詞「ごとし」の用法と機能――『宇治拾遺物語』において――

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "比況の助動詞「ごとし」の用法と機能――『宇治拾遺物語』において――"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに

|『宇治拾遺物語』

物理的関係か否か 現代語の用例で示すと、

「ごとし」

の用法と機能

比況の助動詞「ごとし」は、 「AはBのごとし」のように用い られる。 「AはBのごとし」とは、 Aについて叙述するためにB を引き合いに出し、 AをBとみなすことによってAをAというだ けでは説明できないところを、 Bの一面を利用して述べる用法で ある。 3Eとし」が活用語であるため、 「AはBのごと

v>

する」 のように辿用修飾句となって、Aが>することを、Bという事柄· 事物との関係で述べる場合もある。 本稿では、 r字治拾辿物語』の用例から「ごとし」の用法を検 証し 「ごとし」の機 能について考察す る。 r宇治拾辿物語」を取 り上げたのは、 鎌倉時代の和文体の説話集における「ごとし」の 用法を検証するためである。 連体形「ごとく」から派生した「ご とくなり」の用例も含める。用例の()内 に、 r宇治拾遺物語』 における説話番号を 示す。

「ごとし」の用法と分類基準

「ごとし」の意味は、 「等同」「類似」「例示」等に分類されて いる。 しかし、 その意味は何に基いて決まるのか、 その意味の差 は何によって生れるのかが不明確であるため らかにしたいと 考える。 本梢は「ごとし」の用法を、 AとBの関係による意味上の分類 と、 「ごとし」に関わる文法上の分類とに分けて考察し、 その分 類基準に基いて「ごとし」の表す意味を分別する。

意味上の分類

ここでいう意味上の分類とは、 AとBがどのような関係にある かを明示的に示したものである。

において

1

比況の助動詞

由紀江

(2)

2)百宮供奉つねのごとし。 六四) (一九七) (a) あの人は虎のようだ。 (b) あの人はいつものようだ。 の場合、 A とBは、用例(a) では 「あの人」と「虎」 、用例(b) では「あの人」と「いつも」である。「あ の人」と「虎」は実体 のある物どうしの関係である。 しかし「あの人」と「いつも」は、 「いつも」が抽象的な事柄であるた め、 物どうしの関係ではない。 「あ の人」の現在の様子と、 いつもの様子との関係なのである。 そのように、「物理的閑係」とは、 A とBが実体をもつ、 物と 物との関係の場合であり 、「物理的関係 L でないというのは、 物 と物以外の関係のことである。 AB が事柄どうしの関係であっ たり、 Aにつ いて叙述するために引き合いに出された Bが、 身近 な事態を現実的、 また限定的にとらえる語であったり、 時間的な 概念を表す語であったりする場合である。 (1) 盗距をみれば、 頭の嬰は上ざまにして、 みだれること瑯外 ご と し。 用例(1)の楊合は、 盗距の上向きになってみだれた頭の嬰と、 薙との関係を取り上げている。 頭の嬰と迷とは具体的な実体をも つ物であるから、「物理的関係」をなしている。 ② A とBに共通の上位概念がたてられるか否か 用例 ( 2) の場合、「つね」の意味は「ふだん」「平素」であり、 抽象的な語である。 そして、 AB との関係は、 現に行われてい る百官供奉とふだんの百官供奉との関係であり、 事柄どうしであ る 。 (3)此内供は、(略)提に湯をかへらかして 、 折 敷を昴さしい るばかりゑり通して、(略)又二三日になれば、 さきのごとくに、 大きになりぬ。 かくのごとくしつヽ、 はれたる日数はおほくあり ければ、 物食ける時は、 弟子の法師に、 平なる板の一尺ばかりな るが、 (二五) 用例 (3) の楊合は、 A は「此内供」を指 し、 Bに「かく」と いう澗詞が用いられている。 「かく」は事態を現実的、 限定的にとらえて指示する働きをす る。 つまり、 前述した事柄を示しているのである。 したがって A は人拙、 即ち物であるが、 この場合も「概念的な閑係 L である。 「物理的な関係」の場合は、 AとBが物どうしなので具体的に その関係が把握できる。「概念的な関係」の場合 は、 Aと B の表 す内容が抽象的であるため、 把握の仕方が概念的になる。 J の関係を「概念的な関係」と名づける。

(3)

AとBが、「もみじ」と「手」のような災なる物どうしである 場合もあれば、「右手」 と「左手」のように、「手」という共通の 概念をもった物どうしの関係の場合もある。 (4)そのとき俯正、 いたゞきより焦煙をいだし て、 加持し給に、 暫有て、 まがれる臀、 はたと嗚りてのびぬ。 即、 右の腎のごとく は延たり。 (-四二) (5)陰陽師のいはく、「仰らる 、 事、 もとも道理なり。 他の過 がた ければ、 さりとては〔とて〕、 かく のごとく仕る也。 しから ずは、 なにわざをしてかは、 要子をばやしなひ、 我命をも組侍ら ん。 迎心なければ上人にもならず、 法師のかたちに侍れど、倫刈 のごとくなれば、後世のこといかゞと、かなしく侍れど、(-四0) 用例(4)の場合、「まがれる腎」は明らかに左の将を指し、 その左の臀と右の 特との関係が示されている。 つまり、「腎」と いう共通の上位概念が あり、その下位分類として「左の特」と「右 の臀」 が存在するのである。 用例(5)は、 陰腸師というある一人の人間の持つ、 堅と俗の 対比である。 つまり、 陰陽師というある一人の人間を共通の上位 概念とする下位分類に、「法師のかたち」と「俗人的な生活」が 挙げられている。 型(法師のかたち)と俗(俗人的な生活)は、 物理的ではなく概念的な 関係をなしている。 ③ A とBとが同一物か異物か 現代語の用例で示すと、 用例(6)の場合は、 用例(3)のように共通の上位概念に基 づく下位分類として「そこばくの女御、 后」 と「土くれ」 の関係 が示 されているのではない。「そこばくの女御、后 」と「土くれ」 とは全く異なるものである。 しかし「そこばくの女御、 后」につ いて叙述する ために「土くれ」を引き合いに出し、「土くれ」の ある而を用いて述べているのである c (C)彼女の頗はもとのように白くなった。 (d)彼女の顔は雪のように白くなった。 の場合、 AとBは用例 (C) では、「彼女の頗」と「もと」である 「もと」 は 「以前」という抽象的な事柄を示すが、「もと」の表 しているのは以前の頻のことで、 彼女の現在の顔と以前の頷との 関係である。 どちらも「彼女の頷」を示していることに変わりは なく、 同一物である。 つまり、 AとBにはr彼女の頗」という共 (6)そこばくの女御、 后を御翌じくらぶるに、 みな土くれのご と し。 (九

(4)

① 用例(d)では、 通概念がたてられるのである。 AとBは 「彼女の顔」とぶさで、 異物の関 係である。 (2)百官供奉つねのごとし。 (六四)(前掲) (7)俯伽多がつまにてありし、(略)これは玉のごとし。(九一) 用例(2)の場合、 AとBは現在の「百官供奉」 といつもの「百 官供奉」 であり、 同一物の関係である。 用例(8)の楊合、 AとBは「伯伽多がつま」と「宝」で、 物 理的な関係における、 AとBに共通概念がたてられない場合であ る , ニ・ニ

文法上の分類

「A はBのごと

v>

する」のように「ごとし」が「ごとく」、 あるい は「ごとくなり」 が「ごとくに」と活用して巡用修飾の働 きをなす場合もあれば、 文末が終止形「ごとし」の 場合もある。 連用修飾の働きをなすか、 文末が終止形か (8)火を山のごとくたきければ、 拶などを見るここちして、 わ かくきぴはなるほどにてはあり、 物おぼえ給はず。 (-五七) (9)それに、 このかふらきの渡にゆきて、 わたらんとするに、 (e) 彼は 狼のように肉を食った。 (f〉彼は狼のようだ。 わたりせむとする 者、 雲霞のごとし。 用例(8)の場合、「山のごとく」 は「たく」にかかる連用修 飾句となる。この場合、「山」は火を形容しているのではなく、「火 をた く様子 L を表している。 つまり、 Aが>することとBとの関 係なのである。 用例(9)では、「わたりせ むとする者」が次々にやってくる 様子そのものの様子を「槃彼」 を用いて表現している。 この二つの場合を現代語の例で示せば、 の述いとなる。 つまり、 用例 (e) では、「狼のように」は「食っ た」を修飾し、 肉を 食べる様子を狼のようだとしているのである。 それに対して用例(f)では、 彼の、 あるの面を狼のようだとし ているのではなく、 さまざまな面を「狼のようだ」と形容してい ることになる。 rごとし」が述用作飾句として用いられる場合 は、 述語部分の 動作を修飾 する場合と、 状態を修節する場合とがある。 (10)火をてんのめのごとくにともし て、 我ゐたるうつほ木のま 六)

(5)

「狼のように」は用例(g)では「食った」という動作を表す 語にかかり、 用例(h) では、 「食える」という状態を示す語に かかる。 つまり、 文法上では、 まず「ごとし」を含む句が連用修 (g)彼は狼のように肉を食った。 (h)彼は狼のように肉を食える。 ヘに、 ゐまはりぬ。 (三) (11)たけ七尺斗の鬼、 身の色は紺冑の色に て、 製は火のごとく ば赤く、 くぴ細く、 むね骨は、 ことにさしいでて、 いらめき、 腹 (一三四) ふくれて、 巡用修飾句となる楊合において、 前掲の用例(8)では、「山 のごとく」は「火をたく」という動作を形容している。 用例(10)も、「てんの めのご とくに」は、 他動詞であ る「と もす」にかかる。「てんのめのごとくに」は、「火をともした」動 作を形容しているのである。 Aが>することとBとの関係である。 それに対して、 用例(11)においては、「火のごとくに」は「赤 く」という、 状態を示す形容詞に かかる。 Aが>であることとB との隙係である。 このように連用修飾の場合は、 動作を表す述語 にかかる場合と状態 を表す述語にかかる場合とがある。 現代語でその違いを示す例を挙げる。 飾か、 または文末が終止形「ごとし」かで分類し、 その辿用修飾 句においては、 動作を表す語にかかるか、 状態を表す語にかかる かで分類される。 ② r ごとし」の上接形式が語か文か 「ごとし」は上接の格助詞に「のしと「が」の二つを持つとい う特徴がある。「の」の場合は体言が上接す る。 また、「が」の場 合は文が上接する。 (12)病者、 かし らをそらで年月を送りたるあひだ、 ひげ、 かみ、 銀の針をたてたるやうにて、 鬼のごとし。 (六0) (13)手をすりて、 念佛申て見れば、 佛の御身より金色の光を放 て、 さしいりたり。秋の月の、 雲拙よりあらはれ出たる力ごとし。 〈一六九) 用例(12)の場合、「の」 の上接語は「鬼」という体言である。 したがって、 病者 と鬼という瓶の関係となる。 用例(13)の場合は、 「が」の上接語 が「あらはれ出たる」と いう動詞の辿体形 であり、「佛の御身より金色の光を放て、 さし いりたる」ことと、「秋の月の、雲間よりあらはれ出た」るという、 文と文との関係である。 この二つの場合を現代語の用例で示す。

(6)

(f)彼は狼のようだ。 (i)彼が好物の焦を食べるのは、狼が肉を食べるようなものだ。 つまり、 用例(f)の場合は、「彼」と「狼 L という語の関係 であるのに対して、用例(i)の場合は、「彼が好物の魚を食ぺる」 という文と「狼が肉を食べる」という文との関係が示されている といえる。

「ごとし」の用法と機能

これまで検証してきた分類基準をもとに、 r宇治拾逍物語』 に みられる「ごとし」の表す意味を分別していく。 ① 等 同的用法 ぶ等同」とは、 ある事物・事柄が、 他方の事物・事柄と同じで あるという意味である。「ごとし」がこの意味を表す のは、 Aと Bが概念的な関係で、 AとBが同一物の関係の場合である。 (2)百官供奉つねのごとし。 (六四〉(前掲) 〈 14)ゆづれば鼻ちひさくしぽみあがりて、 たゞの人の鼻のやう になりぬ。又二三日になれば、 さきのごとくに、 大きになりぬ。 (―-五) (前掲) (15)しばしうらなひて、「こ、にて候」と申 所を、 掘らせてみ 給に、 土五尺ばかり堀たりけれ ば、 案のごとく物ありけり。 (一八四) (16)ある日例のごとく御供しけるが 、 門 を入らむとし給へぱ、 この犬、 御さきにふたがるやうにまはりて、 (-八四) (17)弟子をとらへて寺へおはして、 鐘をつき、 衆令をなして、 大衆にこのよし語り給。(略)かくのごとく、罪を懺悔してければ、 阿那含呆をえつ。 (一七四) 用例(14)の楊合は、 二、 三日たった後の昴 と、 以前の昴との 大きさが同じという関係であり、用例(15)では、物があると思っ ていたことと、 III心つていたとおりに事実あったこととの関係であ る。用例 (16)はある日の御供の様子といつもの御供の様子、 用 例(17)では、 前述の事柄の内容が罪の懺悔と同じであるという 関係である。 「ごとし」が「等同」の意味を表す用例は31例ある。 ②類似的用法 「類似」とは、 ある事物・事柄とある事物・畢柄が似ているこ とを表す。「ごとし」がこの意味になるの は、 AとBに共通の概 念がたてられる場合である。 用例(4)の場合は、 左の腎と、 同じ狩でもr右の竹」との関

(7)

係であり、 その一云つが同じようになったという関係である。用例 (5)では、 かたちが法師でも、 生活が俗人と同じようになった いう関係である。 前述したように、 用例(4)の場合は、 9 理的な関係 L であり、 用例(5)の楊合は「概念的な関係」であ る。 「ごとし」が「類似」の意味を表す用例は4例ある。 ぶ寺同」と「類似」は、 ともにAとBに共通の概念がたてられ 場合であるが、 「等同」は、 AとBが同一物の場合に成り立ち、 「類似」は、 AとBが、 ある共通の上位概念のもとでの下位分類 として存在する場合に成り立つといえる。 喩的用法 r比喩」とは、 ある物事を説明するのに、 他の物事を借りて表 現することである。「ごとし」がこの意味を表すのは、 AとBに 共通の概念がたてられない、 異物の関係の場合である。 (17)病者、 かしらをそらで年月を送りたるあひだ、 ひげ、 み、 銀の針をたてたるやうにて、 鬼のごとし (六0) (前掲) (18)しばしあれば、 宮、 紅の仰衣二斗に押しつ、まれて、 帷の ごとく簾中よりころぴ出させ給うて四五度ぱか り、 打たてまつ (一九三) 〔り〕て、 (19〉やごとなき人の、 軍千人ばかり具しておはしつる。今は信 濃國には入給ぬらん。 いみじき龍のやうなる馬に乗て、 飛がごと

q

しておはしき。 (-八六) 用例 (17)では、「病者」と「鬼」との関 係、 用例(18)では 「宮」がころぴ出る様子と「鞠」との関係、 用例(19)では、「い みじき他のやうなる馬に乗て」いる様子と「飛」様子の関係であ いずれもが、 異物の閑係である。 Aについて叙述するのに、 A とは異物のBを引き合いに出して、 そのBのもつ一面から述べる ことにより、 Aのもつ而を効呆的に引き出して表現するのが比喩 である。 「ごとし」が「比喩」の意味を表す用例は17例ある。 示的用法 「例示」とは、 例を挙げて示すことで ある。 AとBに共通の上 位概念がたてられ、 Bが特定の他界を代表するような場合などで ある (20)残りの樅、 我と矢を走たちて、 とり/\して、 たちかはり /\射る程に、 未のときのなからばかりに、 第二のくろみを射め ぐらして、 射おとして持て参れりけれ。「これすでに、 養由がご

ti

」と、 時の人ほめの、しりけるとかや。 (九八)

(8)

②概念的関係 A とBに共通の上位概念がたてられる場合 Aと B に共通の上位概念がたてられない場合 これによると、 次の点が明らかになったと言える。 物理的関係より、 概念的関係の場合の方が多い。 AとBに共通の上位 概念 がたてられるのは、 概念的な関係の 場合に多い。 その場合、 32例中31例 が 同一物の関係である。 3例 32例 この用例の場合、「弓の名人」を共通の上位概念とし、品双りの 輩」と孟ヰ由」が下位分類として挙げら れている が、「弓の名人」 として「接由」が春秋戦国時代の有名な人物であることから、「弓 の名人」の代表例として挙げられていると みなし、「例示」の意 味を表すとする。 「ごとし」が 「例示」の意味を表す用例は1例ある。 全用例数は52例である。それぞれの分類における用例数は次の ようになる。 意味上の分類における用例数 ①物理的関係 AとBに共通の上位槻念がたてられる場合 AとBに共通の上位概念がたてられない場合 14例 3例

とめ

3 ①上接形式が語の場合 ② 上接形式が文の場合 48例 4例 文法上の分類における用例数 魯用修飾句の楊合 また、 物理的な関係において、 共通の上位概念がたてられない 楊合が多いが、 これは異物の関係である。 動作を修飾する場合 33例 状懇を修飾する場合 6 例 ②文末が終止形の場合 11例 ただし、 巡体修飾句が2例ある。 これによると、 次の点が明らかになったといえる。 巡用修節句が多い。 巡用修飾句の中でも、 動作を表す語を修飾する場合が圧倒的 に多い。 「ごとし」の上接形式にお いて、 語の場合が圧側的に多い。 本稿においては、「 A はBのごとし」という場合の、 A とBと

(9)

の意味上の関係や、 その A と B の事柄・事物と「ごとし」の活用 形との連結を含めた 文法上の観点から、 『宇治拾遺物語」 におけ る「ごとし」の用法 を考察し、「ごとしの機能」について検証した。 島田勇雄(1955)は、 「ごとし」の意味分類として「類似」 「等同」「例示」 「状態」などを挙げている。 そして、 これらの意 味とは、 「その語の表わしうる概念内容を大きく 分類するときの、 個々のわくとしての意味をさす」としている が、 「ごとし」がそ れぞれの 場合なぜその 意味になる のか 、それらの違いはどういっ た点かがあいまいで不明確であった。 本稿は、「ごと し」で 結ぴ つく A とBの意味関係や、 あるいは「ごとし」の活用形との結ぴ つきを検証することによって、「ごとし」の用法を検証していった。 その結果、 「等同 」「類似」 「比瞼」といった 意味は、 AB との 関係によってもたらされるものであることがわかった。 AB が 同一物の場合は「等同」、 AB に共通の上位概念があり、 下位 分類と して同列に挙げられている場合は「類似 」、 異なるものの 場合は「比喩」 、 Bに特定の世界を代表するもの を例として挙げ る場合は「例示」 となる。 そして、「ごとし」 そのも のは、 AB とを同定する働きをなしているのである。 また、「ご とし」の機能と関辿するもの として、 これまで唱え られている 「ごとし」の語源説をみ ると、 橋本進吉(1941) において、「こと」を口語の「同じ」「同じこと」 、 文語の「同じく」 の意味とする説が妥当とされ、 また、 「こと」と「ごとし」 の語 幹rごと」との同 語源説が唱えられている。 そして、 「ことさけ ぱ沖ゆ放けなむ湊より辺若かふ時に放くぺきものか(万葉一四 0 二)」 の「 こと」がrことさらに L と肝されていたのに対して、「同 じ」と解する説をたてているのである。 「ごとし L の語源を考えると、「ごとし 」は 語幹である「ごと」 と「 し」に分けられるゆえ、 「ごと」 と 3t と」の 語源を同じと みて、 「A はBのこと」とならないだろうか。 AB に共通の上位概念が設定さ れる用例 、 AB が同一物で ある用例が多いことも根拠として挙げられる。 今回は、 鎌倉時代の和文体の説話集『宇治拾追物語』をテキス トとしたが、 今後は文体差やジャンルの 差、 また時代差等を考硲 にいれて「ご とし」の用 法を検証していき たいと思う。また、「ご とし」 のみならず、 「様なり」「似たり」等の直喩表現の指椋の用 法にも言及していきたい。 参考文献 五十嵐三郎(一九六四)「比況の助動詞ーごとしー(古典語)」r国文 学解釈と教材の研究』九ーニニ 稲垣瑞杷(-九六七)ぶ比況の助動詞「ごとし」ー平安時代の漢文訓 読と今昔物語集の用法ー」『静岡女子短期大学紀要』第1号 大坪併治 (l 九六四)「訓点江叩における「如し」の用法」『閥点語と澗 点打科』第28紐

(10)

宝文館 春日和男(-九六0)「カクノゴトシといふ熟語の潤説性」r語文研究』 10 春日和男(]九六八)「比況(ごとし・ようだ)」r国文学肝釈と茫

tt

三=

T-櫻井茂治(-九六二)「古代日本甜の「ごとし」について」『国学院雑 誌」六三ー六 佐々木峻(一九八一)r院政・鎌倉時代に於けるr類同·例示 」 船の 表現r如し」と「やうなり」について」『鎌紅時代甜研 究』 第4輯 島田勇雄(-九五五)r「ごと し」 の意味について」『神戸大学文学会 研究」7 格島 裕(-九五七)「ごとし」r国文学解釈と投

lt

ニニー一― 窟田正 l (一九五八) 「平安時代の「ごと し」」r解釈』 4 柏本進吉(-九四0)「「ことさけば」のrこと」と如のrごと」」r国 語と国文学』一七—10 枯本迎吉(-九匹一) 「「ことさけぱ」の「こと」の語義について(上)」 ・ 『 国話と国文学』一八 ー ニ 拙本進吉(-九四 l 〉「「ことさけぱ」の「こと」の語義について(下)、一 『国訴と国文学』一八ー―二 堀田要治(-九四一)「「如シ」と「様ナリ」とから見た今甘物栢集の 文京」『国胎と国文学」一八-10 森田良行(-九五九)「いわゆる比況の助勁胴ー「ごとし」の研究」『国 文学鮒釈と教材の研究」四ーニニ 山Ill孝雄(一九三五) r 淡文の訓韻によりて佛へられたる糾法」 文館 山田孝雄(-九三六)r日本文法学概論』 研究室受贈図書雑誌目録II 大要女子大学紀要ー文系ー(大粘女子大学) 岡山大学国柄研究(岡山大学教育学部国語研究会) 香川大学国文研究(香川大学国文学会) 二六 卑晋院大訊本國照図文卑會誌(卑習院大卑國語因文學含) 四五 学大国文(大阪教育大学国語教育講座・日本アジア言語文化講 四五 座) 香椎潟(福岡女子大学国文学会) 活水論文集日本文学科編(活水女子大学・短期大学) 金沢大学語学・文学研究 (金沢大学教育学部国語国文学会) 金沢大学国語国文(金沢大学国語国文学会) 二七 河南論集(大阪芸術大学芸術学部文芸学科研究室) 七 上方文化研究センター研究年報(大阪女子大学上方文化研究七ン タ!) 三 上林暁研究(園田学園女子大学吉村研究室) 十 季刊ぐんしょ(続群柑類従完成会)五五、 五六、 五七、 五八 岐阜女子大学紀要(岐阜女子大学) 岐阜大学国語国 文学(岐阜大学教宵学部国語教育講座) 四七 ゆきえ 四 二九 十六 二九 四五 山梨正明(-九八八) r 比喩と理招』 東京大学出版会 吉田金彦(-九七七) r 国語意味史序説』 明治術院 (しらかみ 岡山大学大学院文学研究科)

参照

関連したドキュメント

用 語 本要綱において用いる用語の意味は、次のとおりとする。 (1)レーザー(LASER:Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

たとえば、市町村の計画冊子に載せられているアンケート内容をみると、 「朝食を摂っています か 」 「睡眠時間は十分とっていますか」

わかりやすい解説により、今言われているデジタル化の変革と

つまり、p 型の語が p 型の語を修飾するという関係になっている。しかし、p 型の語同士の Merge

(自分で感じられ得る[もの])という用例は注目に値する(脚注 24 ).接頭辞の sam は「正しい」と

夫婦間のこれらの関係の破綻状態とに比例したかたちで分担額

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から