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循環器学2020年の進歩

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Academic year: 2021

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(1)

ban in patiEnts with stable coronary artery dis-ease Study)研究は安定冠動脈疾患を合併する心 房細動患者を対象に経口抗凝固薬リバーロキサバ ン単独とリバーロキサバン+抗血小板薬併用との 有効性・安全性の比較を行った多施設共同のラン ダム化比較研究である.2015年 2 月より2,200名 を目標に患者登録が行われ,2017年 9 月末までに 2,240例が登録された.平均 2 年以上の観察期間 を予定していたが,データ安全性モニタリング委 員会の勧告に基づき2018年 7 月に研究を早期終 了,2019年 1 月にデータを固定し解析を進めた. 2019年 9 月 2 日欧州心臓学会の注目演題(Hot Lines) に 選 ば れ, 同 時 に The New England Journal of Medicine(NEJM)誌に2019年 9 月 2 日付で掲載となった.  AFIRE 研究では最終的に2,215例(1,107例単 独療法vs. 1,108 例併用療法;アスピリン併用 70.2%)が研究解析対象となり,平均年齢74歳, 男性79%,PCI 施行70.6%,CABG 施行11.4%で あった.有効性の主要評価項目である,「脳卒中, 全身性塞栓症,心筋梗塞,血行再建術を必要とす る不安定狭心症,総死亡の複合」は,24カ月(中 央値)の追跡でリバーロキサバン単独群1107例中 89例(4.14%/人・年),抗血小板薬との併用群 1,108例中121例(5.75%/人・年)に認められた. 単独群のハザード比(HR)は0.72(95%信頼区 間[95% CI]:0.55~0.95)となり,併用群に対

じ め に

 2019年に「急性冠症候群ガイドライン(2018年 改訂版)」「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライ ン(2018年改訂版)」が発表されたことは記憶に 新しいところである.その後も冠動脈疾患に関す る数多くの重要なエビデンスが報告され,新たな 概念も発表された.2020年 3 月13日「2020年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈 疾患患者における抗血栓療法」が発表された1). 本項では冠疾患領域の最近の進歩,特にガイドラ インに影響を与えうるエビデンスを中心に紹介す る.

AFIRE 試験

2)  欧米や本邦のガイドラインでは,経皮的冠動脈 インターベンション(PCI)や冠動脈バイパス術 (CABG)後で 1 年を経過した安定期には抗凝固 療法単独が推奨されてきた.しかしながらこのガ イドラインの推奨は,観察研究結果を参考とした エキスパートオピニオンとしての位置づけであ り,実臨床においては多数例で併用療法(抗凝固 療法+抗血小板療法)が適応され,ガイドライン とのgap が生じていた.そのため大規模臨床試 験による検証が待望されていた.AFIRE(Atrial Fibrillation and Ischemic events with

Rivaroxa-[Key words]  AFIRE 試験,ISCHEMIA 試験,COMPLETE 試験

循環器学2020年の進歩

冠疾患領域の進歩

東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野

安 田   聡

だ やす さとし

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年の時点での累積イベント発生率は,血行再建群 13.3%,保存的治療群15.5%であった.主要副次 評価項目である心血管死亡または心筋梗塞の発症 も主要評価項目と同様の結果となったほか,総死 亡においても追跡期間で一貫して群間差を認めな かった.Ischemia 試験では28%のクロスオーバー (保存的治療群から血行再建群へ)があり,より 長期のフォローアップも含め今後のさらなる検討 が待たれるところである.なお最新の日本循環器 学会・循環器疾患診療実態調査(JROAD)報告 書(2019年度実施:2018年 1 月 1 日~12月31日) においては,待機的PCI 総件数(年間)ははじめ て減少に転じている:2015年度185,549件,2016 年 度192,774件,2017年 度199,347件,2018年 度 201,478件,2019年度192,670件.一方で緊急 PCI 総 件 数( 年 間 ) は 漸 増 傾 向 に あ る:2015年 度 69,867件,2016年度71,799件,2017年度74,169件, 2018年度76,807件,2019年度78,420件.

COMPLETE 試験

4)  ST 上昇型心筋梗塞(STEMI)患者では,責任 病変のPCI により心血管死または心筋梗塞のリ スクが低下することが知られている.一方,非責 任病変にPCI を行うことで,これらのイベント のリスクがさらに低下するかどうかは明らかに されていない.COMPLETE(Complete versus Culprit-Only Revascularization Strategies to Treat Multivessel Disease after Early PCI for STEMI)試験では,STEMI と多枝冠動脈疾患を 有し,責任病変のPCI が成功した患者を,血管 造影上有意な狭窄を認める非責任病変に対しPCI よる完全血行再建を行う戦略と,それ以上の血行 再建を行わない戦略に無作為に割り付けた.無作 為化は,非責任病変に対するPCI が予定された タイミング(指標入院の期間中または退院後)で 層別化した.第一の主要評価項目は心血管死また は心筋梗塞の複合とし,第二の主要評価項目は心 血管死・心筋梗塞・虚血による血行再建の複合と した.追跡期間中央値3 年の時点で,第一の主要 する非劣性が認められた(非劣性マージン1.46, <0.001).事後解析であるが,優越性も示され た( =0.02).また安全性の主要評価項目である 大出血(ISTH 基準による重大な出血性合併症: International Society on Thrombosis and Hae-mostasis)は,単独群1,099例中35例(1.62%/人・ 年),併用群1,099例中58例(2.76%/人・年)に認 められ,単独群のほうが有意に低率だった(HR 0.59, 95% CI 0.39~0.89, =0.01).これまでの 臨床試験は,標準治療に被験薬を加えること,つ まり治療強化による利益を検討するデザインが一 般的であった.これに対して,AFIRE は抗血栓 薬を減らすことによる利益を検討するという,新 しいコンセプトの試験となった.

ISCHEMIA 試験

3)

 ISCHEMIA (International Study Of Compara-tive Health EffecCompara-tiveness With Medical And Invasive Approaches)試験は,中等度から重度 の虚血が証明された安定狭心症患者に対する, PCI や CABG による血行再建術の有効性を検証 した国際共同臨床試験で米国の国立衛生研究所 (NIH)の研究資金にて行われた.37ヵ国320施設 (本邦からも4 施設が参加)から登録された5,179 例を,薬物治療のみの保存的治療群(2,591例) または薬物治療に血行再建術を加える血行再建群 (2,588例)にランダムに割り付け,3.3年(中央 値)追跡した.ベースラインにおける患者年齢の 中央値は64歳,糖尿病患者の割合は41% , 狭心症 既往は90%,多枝病変79%,左前下行枝狭窄は 87%で各々認められた.主要評価項目(心血管死 亡,心筋梗塞の発症,不安定狭心症・心不全・心 停止後の蘇生に伴う入院の複合)に関する血行再 建群の調整後ハザード比は0.93(95%信頼区間 0.80~1.08, =0.34)で,両群間に有意差は認め られなかった.6ヵ月の時点での両群のリスク差 が1.9%(血行再建群が高い),4 年の時点では -2.2%(血行再建群のほうが低い)であり,1 年半ごろまでは血行再建群のリスクが上回る.4

(3)

評価項目は,完全血行再建群の2,016例中158例 (7.8%)に発生したのに対し,責任病変のみの PCI 群では2,025例中213例(10.5%)に発生した (ハザード比0.74,95%信頼区間[CI] 0.60~0.91, =0.004).第二の評価項目は,完全血行再建群 の179例(8.9%)に発生したのに対し,責任病変 のみのPCI 群では339例(16.7%)に発生した(ハ ザード比0.51, 95% CI 0.43~0.61, <0.001).い ずれの主要評価項目についても,完全血行再建の 恩恵は,非責任病変に対するPCI が予定された タイミングにかかわらず一貫して認められた(第 一の主要評価項目の交互作用の =0.62,第二の 主要評価項目の交互作用の =0.27).STEMI に おいては完全血行再建を目指した積極的な治療戦 略が(事前に選択された)処置のタイミングにか かわらず有益であることが示された.

わ り に

 冠疾患領域に限らず循環器においてはエビデン スに基づく診療が他領域に先んじで進められてき た.一方で欧米のガイドラインを検証した最近の 研究ではエビデンスレベルの高い研究は依然とし て10%前後にとどまっていることも報告されてい る5).All Japan の研究組織 AFIRE により“薬剤 を減らす” 冠動脈疾患の新たな治療戦略がエビデ ンスとして世界に先駆けて創出することができた 意義は大きい.この研究に携わっていただいた 方々へ心から謝意を申し上げる.  著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表 内容に関連して特に申告なし 文  献 1) http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2020_ Kimura_Nakamura.pdf

2) Yasuda S, Matsui K, Ogawa H: Antithrombotic thera-py for atrial fibrillation with stable coronary disease, N Engl J Med 2019; 381: 1103 1113

33 N Engl J Med March 30, 2020 DOI: 10.1056/ NEJMoa1915922

4) Mehta SR, Wood DA, Storey RF et al: Complete revascularization with multivessel PCI for myocardial infarction, N Engl J Med 2019; 381: 1411 1421 5) Fanaroff AC, Califf RM, Windecker S et al: Levels of

Evidence Supporting American College of Cardiology/ American Heart Association and European Society of Cardiology Guidelines, 2008 2018, JAMA 2019; 321: 1069 1080

(4)

い2).パクリタキセルデバイスの安全性の証明, あるいは,他の薬剤の応用,新たな薬剤の開発等 によるdrug-technology の進歩が閉塞性動脈疾患 治療の進歩に不可欠である.  2. 動脈瘤に対する血管内治療の進歩  本邦に企業製ステントグラフトが導入されて以 来,日本ステントグラフト実施基準管理委員会に よるとこれまでに5 万例以上の腹部大動脈瘤およ び2 万例以上の胸部大動脈瘤がステントグラフト で治療されており,腹部では2012年にステントグ ラフト内挿術が開腹下瘤切除人工血管置換術例数 を上回った.  しかし,同時に,ステントグラフト内挿術後の 遠隔期再治療が増加してきており,その背景には タイプII エンドリークが重要であることが明ら かになってきている.初回ステントグラフト内挿 術において下腸間膜動脈が開存していれば術中塞 栓術を施すべきというエビデンスが日本から発信 され,遠隔期の再治療を低減できる治療上の工夫 として注目されている3).  3. 再生医療の臨床応用  閉塞性末梢動脈疾患の世界では,長年にわたり 再生医療が期待されているものの,従前は日常診 療に使用できるものは皆無であった.そうした 中,2017年から細胞治療(自家 CD34陽性細胞)

じ め に

 日本脈管学会は,血管外科医,心臓血管外科 医,循環器内科医,放射線科医,基礎医学者など で構成され,脈管(動脈・静脈・リンパ管)の生 理学・病理学・診断学・治療学・疾患啓発とそれ を取り巻く様々な学問が論じられる統合学会であ る.関連する分野は非常に広く,すべてを紹介で きるわけではないが,この1 年の進歩を「動脈」 「静脈」「リンパ管」に分けて概説する.

動脈疾患治療の進歩

 1.  動脈閉塞症に対する血管内治療とパクリタ キセル問題  閉塞性動脈疾患に対する血行再建手段として 血管内治療が普及,発展し,本邦においても, drug-eluting stent (DES)や drug-coated bal-loon (DCB)の治験や市販が相次いでいる.それ らデバイス用薬剤には主としてパクリタキセルが 使用されており,開存率の点でパクリタキセルデ バイスの優位性が示されている.しかし,2018年 12月にパクリタキセルデバイス使用が患者死亡率 を上昇させているというメタ解析データが発表さ れ1),以来,全世界を巻き込んで大論争が起こっ ているが,パクリタキセルデバイスが死亡率を 上昇させることについていまだ否定できていな [Key words]  血管内治療,パクリタキセル,血管新生療法,血管焼灼術,リンパ浮腫治療

循環器学2020年の進歩

脈管学の進歩

旭川医科大学外科学講座血管外科学分野

東   信 良

のぶ あずま よし

(5)

リンパ学の進歩

 リンパ管新生療法としてVEGF C(HERAN-TIS PHARMA 社により続発性を対象として第 Ⅰ,Ⅱ相試験が同時進行中)とHGF(Anges 社 および医師主導で原発性を対象に第Ⅱ相試験が終 了予定)の遺伝子治療が開発中である.HGF に ついては本年に結果報告がなされる予定である. またこれら増殖因子によるリンパ管新生に加え て,long non-coding RNA や miRNA による新し いリンパ管新生,発生のメカニズム報告が増加し ている5~9).腫瘍リンパ管新生研究の副産物とし て得られた結果も多いが,血管新生研究に伴いリ ンパ管新生の知見が得られた状況と似ており,今 後ブレークスルーとなることが期待される.  診断法の進歩として光超音波イメージングの開 発が進んでいる10~12).こちらも乳癌などの悪性腫 瘍の診断を目指して開発されたものであるが,リ ンパ浮腫についても応用がなされている.非侵襲 であり極めて詳細な画像が得られるが,一般に普 及するにはさらなる改良が必要と思われ今後の進 歩を期待したい.  診療体系としては2020年度診療報酬改訂によっ て弾性着衣の適応範囲が大きく拡大した.これま で乳癌,婦人科癌,前立腺癌術後に限られていた が,腋窩,骨盤,鼠径部のリンパ節郭清を伴うす べての悪性腫瘍と原発性リンパ浮腫が対象となっ た.さらに複合的治療の適応も病期Ⅱ期後期に限 られていたがⅡ期以降すべてとなった13).患者に とって大きな福音である.

脈管学を取り巻く新分野への展開

 急速に進む情報化社会にあって,臨床医学を取 り巻く周辺科学においても,ビッグデータ利用, 医療情報・情報工学の進歩と人工知能(AI)活用 5G 画像転送技術がより脈管学に近い存在となり つつある.そこにきて,COVID 19パンデミック を迎え,遠隔医療への規制緩和もあって,画像情 報伝達やAI 利活用が今後急速に発展・普及する が治験として,2019年からは遺伝子治療(肝細胞 増殖因子遺伝子)が条件付き承認として臨床医の 手に届くようになり,期待を集めている.  4. 内服治療

 Direct oral anticoagulants (DOAC)が登場し, 血管疾患に対する内服治療の選択肢が増え,閉塞 性動脈疾患患者の薬物療法も大きな変革期にある といえる.下肢血行再建術後の薬物療法は従来, 抗血小板薬単剤または2 剤というのが一般的で あったが,日本を含めたグローバルで実施された RCT である VOYGER 試験の結果を受け,下肢 血行再建術後の抗凝固剤の使用頻度が増えてくる 可能性が考えられる4).

静脈領域の進歩

 1. 静脈瘤治療の急速な変革  静脈瘤治療のこの数年の変革はすさまじいもの がある.2000年ころから登場し,2011年に我が国 でも保険償還された血管内焼灼術(血管内レー ザー焼灼術,高周波焼灼術)が,伏在静脈スト リッピング術に代わって下肢一次性静脈瘤治療の 第一選択治療となって久しいが,2020年からは伏 在静脈内にグルー(接着剤)を注入する伏在静脈 閉塞術が保険償還され,非焼灼非浸潤麻酔治療と して今後普及していくことが予想される.  加えて,日本静脈学会から「下肢静脈瘤に対す る血管焼灼術のガイドライン」が2019年に発行さ れ,静脈瘤治療の標準化・適正化が掲げられた.  2. 静脈うっ滞性潰瘍治療体系の変革  静脈うっ滞性潰瘍は難治であり,特に血栓症後 症候群によるそれは圧迫療法と局所療法が主とな り,時に植皮を繰り返すこともあるが,専門的知 識をもった医療者は多くない.2019年に静脈うっ 滞性潰瘍に対する圧迫療法が保険診療として点数 を獲得したことは,この領域の治療の進歩に加 え,参入してくる医療者や企業が増えることが期 待され,患者にとって大いに福音となっている.

(6)

ものと予想される.産学連携を加速して,脈管学 における医療情報・画像情報活用を進化させなけ ればならない.2019年に脳卒中および循環器病対 策基本法が制定され,法律の下で循環器病の発生 予防,重症化予防,治療成績向上が国家規模で図 られることになったが,脈管学を取り巻く上記の 各種ICT 技術の急速な普及・応用や進歩がはか られるものと予測され,本学会もそれら新規技術 と臨床とを橋渡しする重要な役割を果たす責務が あるものと考えられる.

わ り に

 日本脈管学会は昨年の学術総会(宮田哲郎会 長)で満60歳を迎え,アジア10ヵ国からの参加者 に よ る 国 際 脈 管 学 会(IUA)の Asian Chapter Meeting も同時開催し,大盛況で充実した内容で あった.臨床のトピックスの他,「大動脈瘤・大 動脈解離の成因」「ガン治療;脈管を攻める・脈 管を守る」「動脈硬化に対する薬物療法の新展開」 「リンパ管の基礎と臨床」「脈管学の基礎研究」 「医療機器開発における医工連携」など臨床と基 礎がともに同じセッションで議論するシンポジウ ムが多く組まれ,この複雑な時代における統合学 会の役割の重要性が光っていた印象深い記念学会 であった.今後,人生100年時代といわれる中に あって,100年間どうやって脈管をメインテナン スしてその機能をうまく保つかという新たな命題 に向き合う重要な場のひとつであると確信してい る.  著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表 内容に関連して特に申告なし 文  献

1) Katsanos K, Spiliopoulos S. Kitrou P et al: Risk of death following application of paclitaxel-coated bal-loons and stents in the femoropopliteal artery of the leg: a systematic review and meta-analysis of ran-domized controlled trials. J Am Heart Assoc 2018; 7:

e011245

2) Rocha-Singh KJ, Duval S, Jaff MR et al: Mortality and Paclitaxel-coated devices: An individual patient data meta analysis. Circulation 2020; 141: 1859 1869 3) Samura M, Morikage N, Otsuka R et al:

Endovascu-lar Aneurysm Repair With Inferior Mesenteric Artery Embolization for Preventing Type II Endole-ak: A Prospective Randomized Controlled TrialAnn Surg 2020; 271: 238 244

4) Bonaca MP, Bauersachs RM, Anand SS et al: Rivar-oxaban in Peripheral Artery Disease after Revascu-larization. N Eng J Med 2020; 21: 1994 2004 5) Mahamud MR, Geng X, Ho YC et al: GATA2

con-trols lymphatic endothelial cell junctional integrity and lymphovenous valve morphogenesis through miR 126. Development 2019; 146: dev184218 6) Chen C, Luo Y, He W et al: Exosomal long

noncod-ing RNA LNMAT2 promotes lymphatic metastasis in bladder cancer. J Clin Invest 2020; 130: 404 421 7) Zheng S, Yang L, Zou Y et al: Long non-coding RNA

HUMT hypomethylation promotes lymphangiogene-sis and metastalymphangiogene-sis via activating FOXK1 transcrip-tion in triple-negative breast cancer. J Hematol Oncol 2020; 13: 17. Erratum in: J Hematol Oncol 2020; 13: 23

8) Yin Q, Wang PP, Peng R et al: MiR 19a enhances cell proliferation, migration, and invasiveness through enhancing lymphangiogenesis by targeting thrombospondin-1 in colorectal cancer. Biochem Cell Biol 2019; 97: 731 739

9) Liu HT, Ma RR, Lv BB et al: LncRNA HNF1A AS1 functions as a competing endogenous RNA to acti-vate PI3K/AKT signalling pathway by sponging miR-30b-3p in gastric cancer Br J Cancer 2020; 122: 1825 1836

10) Kajita H, Kishi K High-Resolution Imaging of Lym-phatic Vessels with Photoacoustic Lymphangiogra-phy. Radiology 2019; 292: 35

11) Kajita H, Oh A, Urano M et al: Photoacoustic lym-phangiography. J Surg Oncol. 2020; 121: 48 50 12) Lillis AP, Krishnamurthy R: Photoacoustic Imaging

Addresses a Long-standing Challenge in Lymphede-ma. Radiology 2020; 295: 475 477

13) 日本リンパ浮腫治療学会 保健委員会.「リンパ浮腫 指導管理料」「リンパ浮腫複合的治療料」の保険適用 拡大について.日本リンパ浮腫治療学会雑誌,2019; 3: 6 7

(7)

解析では有意差がつかなかった要因と考えられ た.年齢別のサブ解析ではアブレーションの優位 性は65歳未満で最も大きかった.QOL は別論文 に報告され2),3 つの QOL スコアすべてにおいて 12ヵ月後の改善の度合いは,アブレーション群が 薬物群より有意に大きかった.またU.S. のデー タベース研究(183,760人)3)にてCABANA 試験 と同様の患者群の予後を傾向スコアマッチングで 調整して比較すると,CABANA 試験と同様にア ブレーション群で一次エンドポイントの有意な減 少を認めた.この研究結果からAF アブレーショ ンは比較的若年者に対してはハードエンドポイン トの改善が得られ,高齢者に対してはQOL の改 善をもたらす治療と考えられる.  連続モニタリングを用いたAF アブレーション の有効性が報告された4).薬剤抵抗性発作性AF 346人に植込み型ループレコーダーを植込み,高 周波またはクライオバルーンによる肺静脈隔離 (PVI)後 1 年間追跡したところ,AF burden は 99%減少,AF 非再発率は51~54%,症候性の AF 非再発率は73~80%であった.このことから発作 性AF 症例に対する PVI は約半数の症例で AF を完全に消失させ,残りの症例では限りなくAF burden を減少させる治療であるといえる.高周 波に代わる新しいエネルギー源として注目されて いるPulsed field ablation による PVI の結果が報 告された5).81症例の発作性 AF において 3 分以

カテーテルアブレーション

 心 房 細 動(AF) ア ブ レ ー シ ョ ン に 関 し て CABANA 試験1)の結果が報告された.この多施 設無作為化試験は2,204人の症候性 AF 患者をア ブレーション群と薬物療法群に割り付けて予後を 比較した研究である.登録患者は65歳以上,また は65歳未満で 1 つ以上の脳卒中の危険因子を有し ている患者であり,一次エンドポイントは死亡・ 後遺障害を残す脳卒中・重篤な出血・心停止,二 次エンドポイントは全死亡・心血管疾患に伴う入 院・AF 再発とした.アブレーション群では90.8 %が実際に治療を受け,薬物群のうち27.5%がア ブレーションを受けた.Intention-to-treat(ITT) 解析では48.5ヵ月の追跡期間で一次エンドポイン トはそれぞれ8.0% vs. 9.2%(ハザード比(HR) 0.86, =0.3),二次エンドポイントは全死亡5.2% vs. 6.1% (HR 0.85 =0.38),死亡または心血管 疾患入院51.7% vs. 58.1%(HR 0.83, =0.001), AF 再発49.9% vs. 69.5% (HR 0.52, <0.001) といずれもアブレーション群で低かったが,一次 エンドポイントでは統計学的有意差には至らな かった.一方でPer-protocol 解析では12ヵ月で 一次エンドポイントはHR 0.73( =0.046),全 死亡はHR 0.68( =0.047)といずれも有意な減 少を認めた.イベント発生率の低さ,クロスオー バーおよび試験離脱患者が多かったことがITT [Key words]  アブレーション,デバイス,心房細動,心室頻拍,心室細動

循環器学2020年の進歩

不整脈領域の進歩

福井大学不整脈心不全先端医療講座

晋 介

ざき みや しんすけ

(8)

される.多施設観察研究による110症例の心筋梗 塞後治療抵抗性VF storm の観察研究9)では,VF のトリガーとなるPurkinje 線維を指標としたア ブレーションにより84%の症例で storm が回避 され,その起源は左室中隔の瘢痕組織との境界に 多かった.VF 発生からアブレーションまでの時 間が院内死亡率と相関していたことから,適切 なタイミングでの治療の重要性が示唆された. Brugada 症候群(BrS)に続いて,早期再分極症 候群(ERS)においてもアブレーション治療の多 施設観察研究の結果が報告された10).VF を繰り 返すERS 52症例のマッピングの結果から,右室 流出路・下側壁心外膜に遅延脱分極異常を認め同 部位がVF の基質となる群と,基質がなく Pur-kinje 線維が VF のトリガーとなる群がいること がわかり,いずれもアブレーション治療の対象に なりうることが示唆された.

デバイス治療

 心 臓 再 同 期 療 法(CRT) で は His-SYNC 試 験11,12)が報告された.41症例の NYHA Ⅱ~Ⅳ, QRS 幅>120 ms の低心機能患者を前向き無作為 にHis 束ペーシング(HBP)と両心室ペーシング (BiV)に割り付け 6ヵ月追跡した.少ない症例数・ クロスオーバーが多くITT 解析では有意差には 至らなかったがBiV に比し HBP のほうが QRS 幅の短縮・LVEF の改善が大きかった.HBP の 限界は閾値の不安定さやより末梢での伝導障害で は改善が困難である点であるが,これを克服する 方法として左脚ペーシング(LBBB)13)が今現在 注目されており中国を中心に広がりつつある.長 期成績はまだ不明だが,非生理的なBiV に比し HBP や LBBP は刺激伝導系をペーシングするた めより生理的であり,心不全症例のみならず心 室ペーシングを要する症例では幅広くHBP や LBBP が普及することが期待される.  透析症例への予防的経静脈ICD 植込みの効果 を評価する前向き無作為化試験が発表された14). LVEF35%以上の透析症例200例を植込み・非植 下の通電で全肺静脈隔離に成功し,エネルギー源 の改良により3 ヵ月後に評価した肺静脈再伝導は ゼロになった.心タンポナーデ1 例を除いて合併 症を認めず,1 年後の AF 非再発率は87%であっ た.まだ適切なエネルギー設定やカテーテル形態 を模索している段階だが高い安全性が期待されて おり,今後のアブレーションを大きく変える可能 性が高い.  器質的心疾患を伴う心室頻拍(VT)に対する アブレーションは,頻拍中は血行動態不安定なた め,洞調律中にその基質に対するアブレーション を行うことも多い.120症例の瘢痕関連 VT に対 して洞調律中にその心室内伝導を評価し,伝導の 減速する部位がVT の必須回路部位であり,同部 位に対する比較的限局したアブレーションによっ てVT を治療可能であることが報告された6).VT アブレーションの適切な治療タイミングは議論の あるところだが,BERLIN VT 試験7)は多施設前 向きに左室駆出率(LVEF)30~50%の虚血性 VT に対して,植込み型除細動器(ICD)治療ととも に予防的アブレーションを行うか,あるいは3 回 適切作動があるまで待つほうがよいか比較した. それぞれ76例,83例が登録されたが,一次エンド ポイント(全死亡・予測しない入院)は予防治療 群のほうが多い傾向があり試験途中にて中止と なった.アブレーション自体はVT および ICD 作動を大幅に減少させており,治療は複数回の作 動を認めてから行うのが妥当と考えられた.VT を非侵襲的に低位放射線療法で治療する手法が 注目されているが,その第Ⅰ・第Ⅱ相試験が報告 された8).単形性心室性不整脈を有し,アブレー ション無効または施行不能な19症例の不整脈起源 を画像診断と体表面多極心電図を用いた解析によ り同定し,限局的な定位放射線療法を行うことに より心室性不整脈の顕著な減少を認め,2 例にお いて合併症を認めた.まだ検討すべき課題は多い が,将来的に非常に有望な戦略と思われる.  心室細動(VF)の機序に Purkinje 線維がかか わることが知られており,薬物抵抗性VF に対し て緊急避難治療としてアブレーション治療が考慮

(9)

込み群に割り付けた.5 年次の累積突然死発生率 は植込み群で高く生存率は低い傾向があり,植込 み合併症は27.5%に認め,試験は途中中止となっ た.死亡の原因は感染症が最も多かった.

そ の 他

 BrS/ERS に伴う VF に対してキニジンが有効 であることは知られている.冠動脈疾患の非急性 期(急性心筋梗塞後の回復期・冠動脈形成術後) に起こる多形性心室頻拍58症例に対して,アミオ ダロン静注を含む抗不整脈治療不応であったが, キニジンにより抑制されたと単施設観察研究によ り報告されその有用性が示唆された15).  著者のCOI(conflicts of interest)開示: [講 演料として]メドトロニック,ベーリンガーインゲ ルハイム,ブリストルマイヤーズスクイブ,第一三 共 [調査研究費として]ジョンソン&ジョンソン [寄 付として]メドトロニック,ボストンサイエンティ フィック,アボット,ジャパンライフライン 文  献

1) Packer DL, Mark DB, Robb RA et al: Effect of Cath-eter Ablation vs Antiarrhythmic Drug Therapy on Mortality, Stroke, Bleeding, and Cardiac Arrest Among Patients With Atrial Fibrillation: The CABANA Randomized Clinical Trial. JAMA 2019; 321: 1261 1274

2) Mark DB, Anstrom KJ, Sheng S et al: Effect of Cath-eter Ablation vs Medical Therapy on Quality of Life Among Patients With Atrial Fibrillation: The CABANA Randomized Clinical Trial. JAMA 2019; 321: 1275 1285

3) Noseworthy PA, Gersh BJ, Kent DM et al: Atrial fibrillation ablation in practice: assessing CABANA generalizability. Eur Heart J 2019; 40: 1257 1264 4) Andrade JG, Champagne J, Dubuc M et al:

Cryobal-loon or Radiofrequency Ablation for Atrial Fibrilla-tion Assessed by Continuous Monitoring: A

Random-ized Clinical Trial. Circulation 2019; 140: 1779 1788 5) Reddy VY, Neuzil P, Koruth JS et al: Pulsed Field

Ablation for Pulmonary Vein Isolation in Atrial Fibrillation. J Am Coll Cardiol: 2019; 74: 315 326 6) Aziz Z, Shatz D, Raiman M et al: Targeted Ablation

of Ventricular Tachycardia Guided by Wavefront Discontinuities During Sinus Rhythm: A New Func-tional Substrate Mapping Strategy. Circulation 2019; 140: 1383 1397

7) Willems S, Tilz RR, Steven D et al: Preventive or Deferred Ablation of Ventricular Tachycardia in Patients With Ischemic Cardiomyopathy and Implant-able Defibrillator (BERLIN VT): A Multicenter Ran-domized Trial. Circulation, 2020; 141: 1057 1067 8) Robinson CG, Samson PP, Moore KMS et al: Phase

I/II Trial of Electrophysiology-Guided Noninvasive Cardiac Radioablation for Ventricular Tachycardia. Circulation 2019; 139: 313 321

9) Komatsu Y, Hocini M, Nogami A et al: Catheter Ablation of Refractory Ventricular Fibrillation Storm After Myocardial Infarction. Circulation 2019; 139: 2315 2325

10) Nademanee K, Haissaguerre M, Hocini M et al: Mapping and Ablation of Ventricular Fibrillation Associated With Early Repolarization Syndrome. Circulation 2019; 140: 1477 1490

11) Upadhyay GA, Vijayaraman P, Nayak HM et al: His Corrective Pacing or Biventricular Pacing for Cardi-ac Resynchronization in Heart Failure. J Am Coll Cardiol 2019; 74: 157 159

12) Upadhyay GA, Vijayaraman P, Nayak HM et al: On-treatment comparison between corrective His bundle pacing and biventricular pacing for cardiac resynchronization: A secondary analysis of the His-SYNC Pilot Trial. Heart Rhythm 2019; 16: 1797 1807 13) Zhang S, Zhou X, Gold MR Left Bundle Branch

Pacing: JACC Review Topic of the Week. J Am Coll Cardiol 2019; 74: 3039 3049

14) Jukema JW, Timal RJ, Rotmans JI et al: Prophylactic Use of Implantable Cardioverter-Defibrillators in the Prevention of Sudden Cardiac Death in Dialysis Patients. Circulation 2019; 139: 2628 2638

15) Viskin S, Chorin E, Viskin D et al: Quinidine-Responsive Polymorphic Ventricular Tachycardia in Patients With Coronary Heart Disease. Circulation 2019; 139: 2304 2314

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行われた場合に緩和ケア診療加算を算定できる ことが2018年度の診療報酬改定で認められた2) 2020年度の診療報酬改定では,外来や在宅など, 入院以外で緩和ケアを要する患者(症状緩和を目 的として麻薬が投与されている患者に限る)に対 して,緩和ケアチームによる診療が行われた場合 の外来緩和ケア管理料が追加された.同時に,病 院の一般病床に入院し緩和ケアを要する患者につ いては,緩和ケアに係る必要な栄養食事管理を 行った場合の個別栄養食事管理加算,診療所の一 般病床に入院し緩和ケアを要する患者について は,緩和ケアチームによる診療が行われた場合の 有床診療所緩和ケア診療加算も追加となった3).

心不全緩和ケアの質評価

 前述のごとく心不全患者の病みの軌跡は,増悪 と寛解を繰り返しながら次第に生活の質を損なっ ていくものと考えられ,増悪の起点や終末の到来 は予測しがたいことを特徴としている.そのため 前もって本人や家族の終末の迎え方についての意 思確認や同意を進めておくこと(advanced care planning: ACP)の必要性が唱えられ,ACP の内 容に基づいて緩和ケアを実践することが,従来の 救命医療を補完する対処法として提案されてい る.緩和ケアは生活の質を向上させることを目的 とする集学的医療であり,診療の質を評価してい

心不全の緩和ケア

 社会の高齢化に伴い増加する慢性心不全は,根 本的な治療法が確立されていない悪性疾患であ る.これまで駆出率の低下した心不全患者を中心 に様々な薬物療法が開発されてきたが,その予後 は未だに進行肺がんに匹敵する程度に不良と考え られる.がんほどの悲壮感はないものの,再入院 や突然死への不安の中で次第に身体活動性を失 い,結局終末を迎える心不全患者の病みの軌跡 は,改訂された急性・慢性心不全ガイドラインに も取り上げられ1),広く認識されている.このよ うに長期にわたり,様々な苦痛(身体的苦痛のみ ならず,精神的,社会的苦痛を含めた全人的苦 痛)を伴った生活を送る心不全患者は,明らかに 脆弱な存在であり放置できない緩和の対象であ る.わが国の緩和ケアはがん対策基本法のもとで 整備されてきた歴史的経緯はあるが,諸家の活動 や提言をもとにようやくその適応範囲の拡大が進 み始めている.

終末期心不全患者への緩和ケア診療加算

 末期心不全の患者のうち,疼痛,倦怠感,呼吸 困難などの身体的症状または不安,抑うつなどの 精神症状を持つ者に対して,症状緩和にかかわる チーム(緩和ケアチーム)による診療が入院中に

[Key words]  緩和ケア,ACP(advanced care planning),質評価,教育プログラム

循環器学2020年の進歩

神戸市立医療センター中央市民病院病院長・広島大学名誉教授

木 原 康 樹

はら き やす き

心不全診療の進歩

̶慢性心不全における緩和とその実践̶

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ループ」では,非癌疾患に対する緩和ケアに関す る教育や研修の場を提供する必要性が示された. さらに,2018年12月には「脳卒中・循環器病対策 く必要がある.最近,デルファイ法を用い慢性心 不全における指標の策定が行われている.がん, 心不全の緩和ケア経験を有する専門医,看護師, 薬剤師などのパネル委員により,①ケアの構造と プロセス,②病期に応じた心不全治療・ケア,③ 全人的苦痛の緩和,④意思決定支援と倫理的問題 の対応のドメインから構成される35項目の指標が 選定された(表 1 ).同指標は診療録から測定で きるため実地活用が期待される4).指標の妥当性 についての評価が今後必要であるが,患者の生活 の質に直結した指標を定め,それに基づいた医 療・ケアを実践していく新しい循環器診療が展開 されることが期待される.

心不全緩和ケアの教育体制

 心不全緩和ケアの提供には,病期に応じた心不 全治療を行いながら個人の全人的苦痛を評価し て,介入する必要がある.したがって,心不全治 療に携わる診療チームと緩和ケアを提供するチー ムとの連携が重要である5).心不全治療に携わる 診療チームが学ぶべき基本的緩和ケアに関する事 項として,予後予測,コミュニケーション,ケア の目標設定,蘇生希望の議論,緩和ケアについて の理解,専門的緩和ケアへの紹介,症状緩和の方 法論,ICD の除細動機能中止の倫理的判断などが 示されている6).本邦における緩和ケア研修は従 来,がん対策基本法に基づいている.緩和ケアに ついての基本的な知識を習得し,がん治療の初期 段階から緩和ケアが提供されるために,各都道府 県に厚生労働省健康局長通知「がん診療に携わる 医師に対する緩和ケア研修会の開催指針」(平成 20年 4 月 1 日付け健発第0401016号)が出された. そのため,日本緩和医療学会が中心となり,教育 プ ロ グ ラ ムPEACE(Palliative care Emphasis program on symptom management and Assess-ment for Continuous medical Education)が開発 され,運営されている7).一方,2017年から厚生 労働省に設けられた「循環器疾患の患者に対する 緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググ 表 1 慢性心不全緩和ケアにおける質評価指標 ドメイン 1:ケアの構造とプロセス 1. 多職種チームの存在 2. 多職種チームへのアクセス体制の整備 3. 多職種チームの定期的なディスカッション施行率 4. 多職種チームによる介入率 ドメイン 2:病期に応じた心不全治療・ケア 5. β ブロッカー導入検討率 6. ACE 阻害薬/ARB 導入検討率 7. アルドステロン拮抗薬の導入検討率 8. ICD 治療に対する選択肢の説明率 9. CRT 治療に対する選択肢の説明率 10. 心臓移植適応者の治療検討率 11. 冠動脈疾患および弁膜症の評価率 12. 再発防止に対する患者教育率 13. ICD の相談窓口の整備 ドメイン 3:全人的苦痛の緩和 14. 全人的苦痛に対する評価用紙の整備 15. 苦痛緩和目標の診療録の記載率 16. 定量的スケールを用いた症状評価率 17. 疼痛患者の介入率 18. オピオイドに関する説明文書の整備 19. 治療抵抗性の呼吸困難に対するオピオイド投与率 20. オピオイド投与患者の便秘評価率 21. オピオイド投与患者の嘔気・嘔吐評価率 22. 精神症状に対するスクリーニング実施率 23. 精神科医への紹介体制整備 24. 死別前のグリーフケア実施率 25. 家族構造と機能についての情報収集率 26. 退院支援(カンファレンス)実施率 27. 延命治療の差し控え・中止の検討率 28. 死亡前の ICD deactivation 率 29. ICD 非作動についての検討率 30. Palliative Sedation に対する多職種カンファレン ス実施率 31. Palliative Sedation 実施時の同意取得率 ドメイン 4:意思決定支援と倫理的問題の対応 32. 心不全の経過に対する説明文書の整備 33. ACP に関する医療者用マニュアルの整備 34. 延命治療の決定に関する多職種カンファレンス の実施率 35. 倫理的問題を検討する諮問機関の整備 (文献4 より引用)

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基本法」が成立し,日本心不全学会内にも緩和ケ ア推進委員会が設置され,学会が開催する基本的 心 不 全 緩 和 ケ ア ト レ ー ニ ン グ コ ー ス(HEPT: HEart failure Palliative care Training program for comprehensive care provider)8)2020年の診

療報酬改定で身体症状の緩和を担当する医師の要 件に認可されたところである.今後,がんを中心 とした緩和医療に従事した医療者への心不全研修 会もPEACE の枠組みで企画されており,専門職 種の協働がスムーズに行われる基盤が整備されて きたといえよう.  著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表 内容に関連して特に申告なし 文  献 1) 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン,急 性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)p. 11 12, http://www.asas.or.jp/jhfs/pdf/ topics20180323.pdf 2) 厚生労働省:平成30年 1 月24日(水) 中央社会保険医療 協議会 総会(第386回)議事次第 https://www. mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000191963.pdf 3) 厚生労働省:個別改定項目について https://www. mhlw.go.jp/content/12404000/000590739.pdf

4) Hamatani Y, Takada Y, Anzai T et al: Development and practical test of quality indicators for palliative care in patients with chronic heart failure. Circ J 2020 84: 584 591

5) Kavalieratos D et al: Palliative Care in heart failure: rationale, evidence, and future priorities. J Am Coll Cardiol 2017; 70: 1919 1930

6) Munoz-Mendoza J et al: Competencies in palliative care for cardiology fellows. J Am Coll Cardiol 2015; 65: 750 752

7) 日本緩和医療学会 PEACE project http://www.jspm-peace.jp/about/index.html

8) 心不全の基本的緩和ケア研修プログラム HEPT (Heart failure Palliative care Training program for compre-hensive care provider) http://hept.main.jp/

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いる.判読可能な冠動脈狭窄を有する患者では, FFR CT が機能評価の第一選択となると思われ るが,PCI(特にステント留置)の既往歴がある 患者や冠動脈CT で判読不能な部位のある患者, 石灰化スコアが高い患者などでは,CTP による 心筋血流評価が優先される.このようなCT を用 いた冠血流予備能(CFR)の評価は,狭心症状を 伴うが冠動脈造影で明らかな狭窄病変が指摘でき ない,いわゆる微小血管狭心症のような病態を非 侵襲的に明らかにする可能性がある3).  近年では,遅延造影撮影を利用した非虚血性心 筋症の評価が可能となっている他,局所の心筋の 運動について評価するストレイン解析や間質に移 行した造影剤量から心筋性状を評価する extra-cellular volume(ECV)解析についても研究が進 められている.冠動脈CT,CTP,遅延造影を組 み合わせることで1 回の検査で包括的に「冠動脈 評価+虚血評価+心筋症,心機能評価」が可能な One Stop Shop としての役割が期待されている.  しかし,こうしたプロトコルでは,通常の冠動 脈CT に追加撮像が必要であり,造影剤量や被ば く量の増加が問題となる.造影剤量,被ばく量の 低減かつCT 画像の高画質化を目的として,ワイ ドカバレッジCT や深層学習に基づいた CT 画像 再構成(DLIR: deep learning image

reconstruc-心臓

CT の進歩

 2018年の診療報酬改定に伴い,安定労作性狭心 症に対する経皮的冠動脈ステント留置術(PCI) には「機能的虚血」の証明が必要となった.同年 に本邦で保険収載されたハートフローFFR CT は虚血評価のモダリティのひとつとして注目され ている.日本循環器学会慢性冠動脈疾患診断ガイ ドラインでは「安定狭心症で心臓CT 上で中等度 以上の狭窄病変を認め,総合的に心筋虚血の有無 の判断が困難かつ虚血が検出された場合に血行再 建術の適応となる患者」に対してFFR CT は推 奨クラスⅡb となっている1).2019年 1 月に発表 されたPACIFIC 試験のサブスタディで,冠動脈 CT,SPECT,PET および標準的な侵襲的冠血流 予備量比(FFR)測定を受けた208人の患者を対 象に,冠動脈CT から遡及的に FFR CT 解析を 行ったところ,FFR CT 解析の血管ベースでの 診断性能はAUC 0.94と優れており,冠動脈 CT の AUC 0.83,SPECT の AUC 0.70,PET の AUC 0.87をいずれも上回ると報告されている2)

 また,ATP や adenosine などの薬物負荷によ るCT perfusion(CTP)も心筋虚血の評価が可 能であり,慢性冠動脈疾患診断ガイドラインにも 記載がある通り,近年多くの有用性が報告されて

[Key words]  FFR CT,包括的心臓 CT,4D flow MRI,負荷心エコー図検査

循環器学2020年の進歩

岐阜大学医学部循環病態学・同大学医学部附属病院検査部

渡 邉 崇 量

なべ わた たかとも 岐阜大学医学部放射線医学

藤 本 敬 太

もと ふじ けい た 岐阜大学医学部循環病態学

大 倉 宏 之

くら おお ひろゆき

心血管画像動態領域の進歩

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が進められている.また,人工知能(AI)技術を 用いた撮像時間の短縮やノイズ除去の研究・臨床 応用も進んでいる8).

心エコー図法の進歩

 2018年の診療報酬改定で負荷心エコー法の点数 が1680点から2010点に大幅に増加した.運動負荷 心エコー図検査は,これまでに多くの心疾患につ いて予後とリスク評価に関する報告があり,その 有用性が認められている.特に虚血性心疾患につ いては,日本循環器学会慢性冠動脈疾患診断ガイ ドラインでも,安定胸痛の評価において「冠動脈 疾患の可能性が中等度以上の場合」は負荷心エ コー図がクラスⅠで推奨されている.さらに,安 定冠動脈疾患の診断アルゴリズムにも,SPECT などの負荷心筋血流イメージングと並列で負荷心 エコー図が明記されている1).また,近年ではま だエビデンスが不十分との指摘もあるが弁膜症の 診断・予後推定にも有用であるとされる.2020年 に改訂された日本循環器学会弁膜症治療のガイド ラインには,僧帽弁閉鎖不全症(MR)において, 「重症だが無症状のMR,または症状を有するも 重症とは診断されない中等度のMR」についてク ラスⅡa で運動負荷心エコー図検査が推奨され, 特に二次性MR で病態の把握や予後推定に有用 とされる9).大動脈弁狭窄症(AS)においても, 左室収縮不全を伴ったいわゆる低流量低圧較差 AS(low-flow low-gradient AS)について,真の 重症AS(true severe AS)と偽性重症AS(pseudo severe AS)の鑑別に Dobutamine 負荷心エコー 図検査がクラスⅡa で推奨されている9).ただし, 運動負荷心エコー図検査は運動による体動や脈拍 増加の影響で撮像が難しくなることに加え,壁運 動の評価も難しくなる場合が多く,施行には一定 の修練が必要である.  検者間誤差,心拍変動,体動などによる誤差を なくすために,以前からAI の応用が試みられて おり,積極的に研究が進められている.近年は畳 み込みニューラルネットワーク(Convolutional tion)などを利用した試みが研究されている4)

心臓

MRI の進歩

 心臓MRI は心臓の形態評価,機能評価に広く 使用されてきたが,近年では冠動脈評価と虚血 評価を放射線被ばくなしに行うことができるモダ リティとして,冠動脈MR Angiography と MR perfusion を組み合わせた評価法も確立されてい る.  新たなイメージングとしてT1 mapping や 4D flow 法による血流 mapping が注目されている. これまでの遅延造影MRI では梗塞心筋や心筋線 維化を有する異常心筋を高信号域として描出でき るが,軽度の心筋性状の変化を評価することは困 難であった.T1 mapping ではこれまで定量化が 困難であったMRI 固有の信号を定量的に評価す ることで,正常心筋と異常心筋の分離が可能と なった.また,造影前後のT1 値とヘマトクリッ ト値を用いてECV を計測することが可能であり, 遅延造影では指摘できないびまん性心筋線維化の マーカーとして有用である5,6).MRI による ECV イメージングは,虚血性・非虚血性,局在性・び まん性の両方の心筋異常を可視化し,定量的な評 価により従来の遅延造影画像とは臨床的に異なる 知見を得ることができると期待されている6).  4D flow MRI は位相コントラスト(phase con-trast)法と双極傾斜磁場を用いてプロトンの歳差 運動の位相差から速度を計測する方法である7). 心臓内の血流や血管内の渦流を可視化し,エネル ギー損失値(energy loss)や wall shear stress (WSS)を計測することができる.今後,肺高血 圧症や腹部大動脈瘤の病態評価や心臓手術後の血 行動態の予測などへの応用が期待される.  MRI 撮像,特に心機能の低下した患者の撮像 においては撮像時間が長いことや頻回の息止めが 要求されることが問題となる.近年,圧縮センシ ング(compressed sensing: CS)を用いた撮像 時間の短縮に向けた試みや体動補正を用いた自由 呼吸下での撮像の試みがあり,心臓領域でも研究

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Neural Network:CNN)を用いた解析が最も一 般的である.米国Stanford 大学のグループは左 室駆出率や心筋症の評価において,人間による評 価よりも高い正確性,再現性を有する深層学習ア ルゴリズム(EchoNet)を開発し,このアルゴリ ズムを用いた検討で,心エコー図画像から左室肥 大,左房拡大,左室収縮期・拡張期容積などの心 機能を正確に評価できるとし,さらに年齢・性 別・身長・体重の予測も可能であると報告してい る10,11).日本からも,CNN を用いた二次元心エ コー図画像からの局所壁運動異常の検出12)や,三 次元心エコー図画像からの左室駆出率の評価13)が 可能であると報告されている.  これらの技術の進歩により,診断精度が担保さ れ,心エコー図検査が検者に依存した主観的な検 査から客観的な指標へと変化することも期待され る.  著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表 内容に関連して特に申告なし 文  献 1) 日本循環器学会 循環器病ガイドラインシリーズ 慢 性冠動脈疾患診断ガイドラインhttps://www.j-circ. or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_ yamagishi_tamaki.pdf(2020年 5 月閲覧)

2) Driessen RS, Danad I, Stuijfzand WJ et al: Compari-son of Coronary Computed Tomography Angiogra-phy, Fractional Flow Reserve, and Perfusion Imag-ing for Ischemia Diagnosis. J Am Coll Cardiol 2019; 73: 161 173

3) Schuijf JD, Ko BS, Di Carli MF et al: Fractional flow

reserve and myocardial perfusion by computed tomography: a guide to clinical application. Eur Heart J Cardiovasc Imaging 2018; 19: 127 135 4) Benz DC, Benetos G, Rampidis G et al: Validation of

deep-learning image reconstruction for coronary computed tomography angiography: Impact on noise, image quality and diagnostic accuracy. J Cardiovasc Comput Tomogr

5) 後藤義崇,佐久間 肇:MRI による心筋疾患の診断. 日本内科学会雑誌 2016; 105: 2041 2047

6) Ugander M, Oki AJ, Hsu LY et al: Extracellular vol-ume imaging by magnetic resonance imaging pro-vides insights into overt and sub-clinical myocardial pathology. Eur Heart J 2012; 33: 1268 1278

7) 秋山 浩.心臓血管内の血流解析とその応用.Cardio-vascular Anesthesia 2018; 22: 1 11

8) Lundervold AS, Lundervold A: An overview of deep learning in medical imaging focusing on MRI. Zeitschrift fur Medizinische Physik 2019; 29: 102 127 9) 日本循環器学会 循環器病ガイドラインシリーズ 

2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン https:// www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/04/ JCS2020_Izumi_Eishi.pdf(2020年 5 月閲覧) 10) Ouyang D, He B, Ghorbani A et al: Video-based

AI for beat-to-beat assessment of cardiac function. Nature 2020; 580: 252 256

11) Ghorbani A, Ouyang D, Abid A et al: Deep learning interpretation of echocardiograms. NPJ Digit Med 2020; 3: 10

12) Kusunose K, Abe T, Haga A et al: A Deep Learning Approach for Assessment of Regional Wall Motion Abnormality From Echocardiographic Images. JACC Cardiovasc Imaging 2020; 13 (2 Pt 1): 374 381 13) Kusunose K, Haga A, Yamaguchi N et al: Deep

Learning for Assessment of Left Ventricular Ejection Fraction from Echocardiographic Images. J Am Soc Echocardiogr 2020; 33: 632 635.e1

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下の基準としては従来のEF≦60%,LVESD≧ 40 mm の他に体格の小柄な日本人(特に体表面 積(BSA)≦1.7 m2の場合)を考慮し,LVESDI (LVESD index=LVESD/BSA)≧24 mm/m2 いう基準も加わった.この早期手術の方針は耐久 性のある形成術が安全に施行できることが前提で あり,形成術が不成功となると予後は不良となる ため適応は慎重に決定すべきとされている.また 重症MR(EROA≧0.4 cm2,逆流量≧60 ml,VC 幅0.7 cm など)が不確かな場合は左房の大きさ, 運動負荷心エコーによる肺高血圧の変化,運動負 荷による耐運動耐容能,心筋ストレイン,BNP 値,経時的左室機能低下の有無などを参考に早期 手術の適応を決定する.  ② 二次性僧帽弁閉鎖不全症  また,二次性MR に心房性機能性 MR が追加 された.持続性心房細動に心房拡大,房室弁輪拡 大を伴うMR で,僧帽弁輪の saddle shape の消 失,後尖のテザリング,後尖のHamstringing 現 象,弁葉リモデリングの不足などにより起こると されている(図 1 ).こうした症例に対する僧帽 弁形成術は人工弁輪による弁輪縫縮が基本であ るが,広範囲後尖拡大術が有効とする報告もあ る1).心房性機能性MR では弁輪拡大のため前後 尖の接合が不良となるため自己心膜により後尖の パッチ拡大を行う術式である.また,生体弁での

じ め に

 「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」 は2012年に一部改定されたのち,しばらく up-date されていなかった.しかし,近年の弁膜症 関連,特にカテーテル治療の進歩により弁膜症治 療は大きく変貌を遂げようとしている.それに伴 いガイドラインの改訂が待たれてきたが,2020年 に全面改訂され,治療の全てを包括する意味で 「弁膜症治療のガイドライン」が登場した.  ここでは,改訂された「弁膜症治療のガイドラ イン」の要点,特にその中の外科治療に関する部 分について述べる.

新ガイドラインの改訂点

 1. 僧帽弁閉鎖不全症(MR)  ① 一次性僧帽弁閉鎖不全症  僧帽弁閉鎖不全症(MR)のうち一次性 MR に 対する僧帽弁形成術の普及と良好な治療成績を反 映して無症状の重症MR においては,早期手術 が条件付きで推奨された.症状なしで左室機能低 下がなく,新規心房細動の発症や,肺動脈収縮期 圧上昇(PASP>50 mmHg)がない場合でも安全 に耐久性のある弁形成が可能であるならば早期の 弁形成術がclass Ⅱa で推奨された.左室機能低 [Key words]   弁膜症治療のガイドライン,心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症,経カテーテル的大動脈弁置換術 あるいは経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI),非弁膜症性心房細動 川崎医科大学心臓血管外科

金 岡 祐 司,種 本 和 雄

もと たね おか かな ゆう じ かず お

循環器学2020年の進歩

外科,弁膜症領域の進歩

̶「2020 年改訂版 弁膜症治療の

ガイドライン」から̶

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mm は class Ⅱb での手術適応となった.体格差 を考慮したLVESDI(LVESD/BSA)>25 mm に ついては前回ガイドラインでははっきりとした根 拠はないとされていたが今回ガイドラインでは推 奨class IIb での手術適応となった.  3. 大動脈弁狭窄症(AS)  経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)の登 場により大動脈弁狭窄症(AS)の治療にはパラ ダイムシフトが起こった.今回のガイドライン でもTAVI,外科的大動脈弁置換術(SAVR)な ど手術の適応のフローチャートが追加された. ま ず, 重 症AS(Vmax≧4.0 m/秒,mPG≧40 mmHg,AVA≦1.0 cm2)患者のうち,並存疾患 や全身状態不良で手術の利益の少ない患者は除外 され,有症状の場合および症状がなくても心機能 の低下(EF<50%)がある場合や負荷により症 状が出現する場合はclass Ⅰで手術適応とされ た.また,無症候性でも超重症(Vmax≧5.0 m/ 秒,mPG≧60 mmHg,AVA≦0.6 cm2)の場合は 早期の手術が推奨された(class Ⅱa).手術とし ては大きくSAVR,TAVI に分けられるが,大ま かに若年,他の心臓手術,感染性心内膜炎の疑 いはSAVR,高齢,フレイル,開胸困難などは TAVI の要件となった.年齢に関しては明確な基 両弁尖温存僧帽弁置換術も選択肢のひとつであ る.心房性機能性MR の手術の時期については 現時点では内科的治療にかかわらず心不全を繰り 返す症例に限られるべきであるとされた.  一方,弁膜症に対するカテーテル治療が普及し つつあり,2018年 4 月からわが国でも保険適用と なったMitraClip もガイドラインで言及された. 手術high risk の一次性 MR あるいは二次性 MR に対してガイドラインに準じた十分な薬物治療, CRT など既存の治療を行っても心不全症状が残 存する重症MR に対する治療として位置づけら れた.  2. 大動脈弁閉鎖不全症(AR)  MR の Carpentier の分類のような機能的弁複 合体の考えに基づいた大動脈弁閉鎖不全症(AR) の分類が提唱されている(図 2 ).この分類と術 式がガイドラインに記載された.  また,慢性AR の手術時期については様々な指 標が提唱されていたが,今回のガイドラインで は,有症状あるいは無症状でもEF<50%あるい は他の心臓手術を行う場合はclassⅠ,LVESD> 45 mm の場合,他の手術を要する場合の中等症 AR は class Ⅱa での手術適応となった.LVEDD に関してはエビデンスが少ないためLVEDD>65

A B

図 1 心房機能性僧帽弁閉鎖不全症の一例

A:後尖の hamstringing 現象による前尖の pseudoprolapse

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準はないが概ね80歳以上は TAVI,75歳未満で SAVR というのがおおまかな参考基準とされて いる.

 近年はhigh risk 患者だけではなく moderate risk に対する TAVI の非劣性を示唆する報告, さらにはlow risk 患者に対する TAVI の非劣性 あるいは優位性示す報告も出てきた2~4).これら については中長期成績がまだ明らかではないこと もあり今回のガイドラインでは個々の患者の価値 観や希望も考慮したうえで弁膜症チームでの議論 を経て決定されるべきであるとされた.この分野 はエビデンスが年々更新されるため適宜focused update が必要と結ばれている.  SAVR においても MICS によるアプローチに 加え,2018年12月からは sutureless valve も保険 適用となり,さらなる低侵襲化が進むと考えられ る.現在,sutureless valve としては INTUITY Elite バルブシステム(Edwards Lifesciences 社) とPERCEVAL 生体弁(LivaNova 社)が使用で きる5,6).  4. 生体弁置換術後の心房細動に対する DOAC  以前は経口抗凝固薬としてはワルファリンのみ であったが,2011年からトロンビンまたは第 Xa 因子を直接,選択的に阻害するDOAC が非弁膜 症性心房細動に使用可能となった.「弁膜症性」 というのは,2013年心房細動治療(薬物)ガイド ラインでは人工弁置換術後(生体弁,機械弁と も)とリウマチ性僧帽弁膜症とされていた.その 後,非弁膜症性の定義は一定しなかったが,今回 のガイドラインでは「弁膜症性」は中等症以上の 僧帽弁狭窄症および機械弁と定義している.生体 弁置換および形成術後の患者に対するDOAC の ワルファリンと同等な成績を示した報告から「非 弁膜症」である生体弁置換術後のDOAC 使用は 可能とのスタンスを取っている.ただ,エビデン スは不十分であり推奨度は高くない.今後もう少 しエビデンスを重ねれば推奨度は上がる可能性が あると思われる. Bentall 手術 AVR Type I 弁尖に器質的異常なし Type II 弁尖の逸脱 弁尖の穿孔 Id Type III 弁尖の可動制限 (硬化・短縮) 弁輪の拡大 Ic SoV-STJ の拡大 Ib STJ-AAo の拡大 Ia Reimplantation Remodeling STJ 縫縮人工 血管置換 人工弁輪 心膜パッチによる修復 弁尖自由縁縫縮Central plication 心膜パッチによる修復 図 2 Boodhwari らの分類と手術術式

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ま と め

 今回全面改訂された「弁膜症治療のガイドライ ン」のうち,外科に関する部分について概説し た.弁膜症治療はTAVI,MitrClip をはじめとし たカテーテル治療が急速に普及してきた.さらに 新しいTAVI,MVP 用デバイスや心尖部からの 僧帽弁置換デバイスなどがわが国でも使用される ようになることが予想される.それにともなって 次々新しいエビデンスが登場し,ガイドラインが update される必要があると思われる.  著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表 内容に関連して特に申告なし 文  献

1) Takahashi Y, Shibata T, Hattori K et al: Extended posterior leaflet extension for mitral regurgitation in giant left atrium. J Heart Valve Dis 2014; 23: 88 90

2) Mack MJ, Leon MB, Thourani VH et al: PARTNER 3 Investigators. Transcatheter Aortic-Valve Replace-ment with a Balloon-Expandable Valve in Low-Risk Patients. N Engl J Med 2019; 380: 1695 1705

3) Popma JJ, Deeb GM, Yakubov SJ et al: Evolut Low Risk Trial Inves- tigators. Transcatheter Aortic-Valve Replacement with a Self-Expand- ing Valve in Low-Risk Patients. N Engl J Med 2019; 380: 1706 1715 4) Thyregod HGH, Ihlemann N, Jorgensen TH et al:

Five-Year Clinical and Echocardiographic Outcomes from the Nordic Aortic Valve Inter- vention (NOTION) Randomized Clinical Trial in Lower

Surgi-cal Risk Patients. Circulation 2019; 139: 2714 2723 5) Borger MA, Moustafine V, Conradi L et al: A

random-ized multicenter trial of minimally invasive rapid deployment versus conventional full sternotomy aortic valve replacement. Ann Thorac Surg 2015; 99: 17 25, 6) Andreas M, Wallner S, Habertheuer A et al: Conven-tional versus rapid-deployment aortic valve replace-ment: a single- centre comparison between the Edwards Magna valve and its rapid-deployment suc-cessor. Interact Cardiovasc Thorac Surg 2016; 22: 799 805

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であった心リハ普及率が,2009年に39%まで上昇 したものの( =0.005),2015年には32%まで低 下した2).本邦でも導入率と継続率はともに40% に届かないのが現状である3).海外では女性であ ることや喫煙者,医療保険の加入状態や人種差な どが不参加要因としてあげられたが2),本邦にお いては心リハ参加の障害となっている因子を理解 し,患者教育を行うことが重要である.急性冠症 候群の入院期間は以前と比較して短縮してきてい ることから,効率のよい介入が望まれる.興味深 いものとして,心筋梗塞後のヨガを基本とした心 リハがMACE に悪影響を与えないとする多施設 ランダム化比較試験の結果が最近報告された4).  慢性冠動脈疾患に対しては,運動療法を中心と した心リハの有用性については,2018年の本邦ガ イドライン内ではclassⅠに位置づけられた5) ところが,海外からの報告では,安定狭心症患者 に対する心リハの短期間の運動耐容能改善に対す る効果はあるものの,長期予後に対するエビデン スレベルとしては高くないとする研究結果を報告 し,更なる研究が必要と結論づけている6).本邦 での報告からは,安定狭心症患者に対してPCI 前後で運動療法を中心とした心リハが行われて も,心筋梗塞の発症率や死亡率には差が認められ なかったとの報告があり,長期的な予後について は期待通りではない7).

COVID 19時代の心臓リハビリテー

ション

 すでに日本心臓リハビリテーション学会のホー ムページ上に指針が掲載されているが,心臓リハ ビリテーション(以下,心リハ)を行うにあたっ て,いわゆる「3 密」を避けなければならず,今 までの概念を踏襲していては心リハを継続するこ とが難しい.医療スタッフの感染対策の徹底はい うまでもないが,換気を行い,患者との距離以外 に機器と機器の距離を保つこと,息づかいが激し くなるような高強度運動を避けることが重要であ る.心リハの要であった心肺運動負荷試験は,感 染症蔓延期,運動処方のためであれば基本的に回 避するべきとの学会からの声明である.代用評価 方法の確立が急がれる.

虚血性心疾患に対する心リハ

 心リハの中でも最も歴史のある対象疾患であ り,急性期の心リハの重要性は本邦最新の急性冠 症候群ガイドライン1)においても,リスク管理の ための心リハ導入や,心リハクリニカルパスの使 用に関してはclassⅠ,超急性期の心リハに関し てはclassⅡa を獲得したが,最も問題なのはそ の参加率と継続率の低さである.米国の急性心筋 梗塞患者を対象とした調査では,2005年に約35% [Key words]  運動処方,Frailty,外来心リハ,遠隔リハ

循環器学2020年の進歩

心臓リハビリテーション領域の進歩

聖マリアンナ医科大学循環器内科

明 石 嘉 浩

し あか よしひろ

参照

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