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ICT が促進及び維持する健康・スポーツに関する行動変容 - 大学生の健康・スポーツ行動に着目して -

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■ 第80 回大会予稿集【自由論題】

ICT が促進及び維持する健康・スポーツに関する行動変容

- 大学生の健康・スポーツ行動に着目して -

Health and Sports Behaviors promoted and continued by ICT

-Focusing on the healthy and sports behaviors in University students-

新潟国際情報大学 経営情報学部 経営学科 藤田 美幸 Niigata University of International and Information Studies Miyuki Fujita

1.研究の背景と目的 近年、健康増進・維持志向の高まりは超高齢社 会の日本だけでなく世界各国でも同様な志向がみ られる(WHO,2019)。この健康増進・維持志向を 実現するためには自ら身体活動を実施する必要が ある。スポーツや健康分野における行動変容に関 しProchaska&Diclemente(1983)は、変化ステ ージモデルを提唱している。変化ステージモデル は、行動変容過程を「無関心期」から「維持期」 までの5 段階に分類したものであり、スポーツ活 動などを増進する行動変容のプロセスに関しても 応用研究がされている。一方で、Bandura(1977) は行動変容を促進するためには自己効力感(以下、 セルフ・エフィカシー)が重要であると論じてい る。セルフ・エフィカシーは、変化ステージモデ ルの構成要素の一つとして取り入れられ、ステー ジ の 移 行 に 伴 い 増 加 す る と い わ れ て い る (Provhaska,1997)。 昨今では新型コロナウイルス感染症の影響もあ り、より健康増進・維持活動に高い関心が寄せら れている。日本では2020 年 4 月 7 日に緊急事態 宣言が発出されたことから外出自粛が要請され屋 内で過ごす時間が増加傾向となった。各学校の多 くは新学期の開始時期が遅れた上、大学を中心に オンライン授業が実施されている。このようなこ とからスポーツ庁では、活動量の低下による健康 リスクを懸念し自宅や屋外での安全に身体活動を 実施することを推奨している。 以上の背景から、本研究では大学生を対象にス ポーツ・健康分野における行動変容の各ステージ において、セルフ・エフィカシーの関連性を明ら かにすることを目的とする。それを明らかにする ことで、今後の健康増進・維持志向を探求する一 助になると考える。 2.先行研究 2-1.変化ステージモデル Prochaska&Diclemente(1983)によって開発 さ れ た 行 動 変 容 の 変 化 ス テー ジ モ デ ル (= Transtheoretical Model)では、行動変容を起こす 人は5 つのステージである「無関心期」、「関心期」、 「準備期」、「実行期」、「維持期」を経て進んでい くとしている。本モデルは一方向性ではなく、ど のステージからでもプロセスに入ったり、前のス テージに戻ったり、もう一度やり直したり、どこ かの段階でプロセスを打ち切ったりすることがあ るとしている。定期的なスポーツなど身体活動の 実施は、身体的・精神的な恩恵をもたらすことは 165

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知られている一方で継続率も低い。Dishman (1988)によると、身体活動を始めたにも関わら ず、3-6 ヶ月後には約 50.0%の人がドロップアウ トすると述べている。いいかえれば、最終段階の 「維持期」にとどまることは難しいといえる。 2-1.セルフ・エフィカシー セルフ・エフィカシーは、Bandura(1977)に よると、行動変容の先行要因として「結果予期」 と「効力予期」の2 つのタイプがあるとしており、 「達成をもたらすような一連の行動を計画し実行 する能力に対する確信の程度」と定義している。 また、従来まで行動の要因は環境や刺激であると されていたが、これに加え上記のセルフ・エフィ カシーと結果期待感、2 つの個人的要素の認知も 関連していると論じている。 Transtheoretical Model の各段階とセルフ・エ フィカシーの関係に関する研究レビューをした岡 (2000)は、「無関心期」と「関心期」は、「準備 期」、「実行期」、「維持期」と比較しセルフ・エフ ィカシーが低いことと、「維持期」においては、「準 備期」や「実行期」と比較してセルフ・エフィカ シーが有意に高いことを示している。また、身体 活動に関する行動変容の規定要因においては、年 代に関わらずセルフ・エフィカシーは重視される 概 念 で あ る こ と が 示 唆 さ れ て い る (Sallis&Owen,1998)。したがって、セルフ・エ フィカシーは身体活動を実行、維持する行動にお いて重要な心理的要因であると考える。 3.研究方法 3-1.対象者と方法 大学生の健康・スポーツ行動に関する調査とし て、N 県 N 市の大学生 2,3,4 年生 166 名を対象に 2020 年 5 月に無記名で調査を行った。調査はイ ンターネット上で回答を募り、無回答であると次 の調査項目にすすめないため欠損値は生じない (回収率100%)。基本属性を表 1 に示す。 表 1 対象者基本属性 3-2. 調査票の概要 調査票は、年齢、性別の基本属性の他、現在の 運動・スポーツ活動における Transtheoretical Model の確認(Prochaska らのステージ分類基準 を参考に独自に作成した定義、表 2)と一般性セ ルフ・エフィカシー尺度16 項目(坂野&東城,1986) で構成した。尺度のクロンバックα係数は.80 で あり高い水準である。16 項目に対し、「はい」ま たは「いいえ」の2 件法で回答し、「はい」を1 点、 「いいえ」を0 点として高得点を得たものほどセ ルフ・エフィカシーが高いと判断される。なお、 得点の範囲は0-16 点である。続いて、行動要因の 刺激を確認するため運動に関する情報入手方法に ついて、「家族・親しい友人」、「学校(小中高大)」、 「部活動(小中高大)」、「インターネット上での動 画」、「インターネット上での写真・イラスト」、「実 際の写真・イラスト」、「その他」から構成した。 回答は複数回答とした。 表 2 Transtheoretical Model 3-3.分析手順 最初に、運動・スポーツ活動における変化ステ ージを確認するため、対象者を以下の5 つのステ ージ「無関心期」、「関心期」、「準備期」、「実行期」、 項目 n % 男性 127 76.5% 女性 39 23.5% 19歳 102 61.4% 20歳 39 23.5% 21歳 18 10.8% 22歳 7 4.2% n=166,M =19.6, SD =0.84 性別 年齢 ステージ 定 義  無関心期 6ヶ月以内に運動を始めようと思っていない  関心期 6ヶ月以内に運動を始めようと思っている  準備期 30日以内に、運動を始めようと思っており、準備している  実行期 現在、運動している(6ヶ月未満)  維持期 運動を始めて6ヶ月以上である 166

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「維持期」に分類した。次に、これらの各ステー ジにおける一般的セルフ・エフィカシーの得点を 単純集計した。続いて各ステージにおける情報入 手方法について確認した。 4.結果 4-1.対象者における運動・スポーツ活動における変化 ステージの分布 対象者を運動・スポーツ活動における変化ステ ージを5つに分類した。各ステージの対象者の分 布は表3に示す通りである。 表 3 各ステージの対象分布 4-2. 運動・スポーツ活動の変化ステージにおける一般 的セルフ・エフィカシーの平均値の比較 各ステージの一般的セルフ・エフィカシーの平 均値と標準偏差を表 4 に示す。「関心期」が最も 高く、続いて「維持期」が高い値であった。また 「無関心期」が最も低い値であった。 表 4 各ステージにおける 一般的セルフ・エフィカシーの平均値の比較 4-3. 運動・スポーツ活動の変化ステージにおける運 動・スポーツの情報入手方法 各ステージにおける運動・スポーツ活動の情報 入手先を表5に示す。「無関心期」では、「学校」 が最も多く、つづいて「部活動」であった。他の ステージでは、「インターネットでの動画」が最 も多く、次に「部活動」であった。また、「維持 期」では「インターネットでの写真・イラスト」 が 3 番目に多かった。 表 5 各ステージにおける運動・スポーツ活動の情報入手方法 5.考察 本研究では、運動・スポーツ活動における変化 ステージの分布は表 3 に示す通りであった。岡 (2000)が解説した海外での運動行動におけるス テージの分布は「無関心期」12.0-23.9%、「関心期」 8.5-18.8%、「準備期」7.3-21.6%、「実行期」7.1-10.6%、「維持期」39.5-48.5%であり、本研究の分 布と比較すると異なった分布となっている。「無関 心期」「関心期」が高い傾向である一方、現在、運 動をしている「実行期」は高い値であった。調査 は外出自粛が要請されている期間の特徴的な分布 であるのか、あるいは大学2,3,4 年生の特徴的な 分布であるのかについては、今後検討を重ねる必 要がある。 次に各ステージにおける一般的セルフ・エフィ カシーの平均値の比較についてである。先行研究 では行動変容のステージが「無関心期」から「維 持期」に移行するにつれ、セルフ・エフィカシー が高まるとされているが、本研究では「関心期」 が最も高い値であり、つづいて「維持期」であっ た。最も低い値は「無関心期」であった(表 4)。 これは、表3 で示したように「関心期」の割合が 先行研究と比較して高い傾向であった本研究の対 ステージ n % 無関心期 42 25.3% 関心期 37 22.3% 準備期 19 11.4% 実行期 49 29.5% 維持期 19 11.4% 計 166 100.0% ステージ n M SD 無関心期 42 8.10 2.22 関心期 37 9.30 2.37 準備期 19 8.37 1.75 実行期 49 8.29 2.54 維持期 19 8.74 1.37 全体 166 8.52 2.27 ステージ イン ター ネット での 動画 部活 動 (小中 高大) 学校 (小中 高大) 家族・ 友人 イン ター ネット での 写真・ イラス ト 実際 の 写真・ イラス ト そ の 他 無 回 答 全体 無関心期 19 26 27 8 6 1 1 1 42 45.2 61.9 64.3 19 14.3 2.4 2.4 2.4 100 関心期 28 20 19 19 10 4 1 0 37 75.7 54.1 51.4 51.4 27 10.8 2.7 0 100 準備期 13 13 8 7 4 1 1 0 19 68.4 68.4 42.1 36.8 21.1 5.3 5.3 0 100 実行期 40 29 17 13 16 10 1 0 49 81.6 59.2 34.7 26.5 32.7 20.4 2 0 100 維持期 14 13 7 7 8 4 0 0 19 73.7 68.4 36.8 36.8 42.1 21.1 0 0 100 全体 114 101 78 54 44 20 4 1 166 68.7 60.8 47 32.5 26.5 12 2.4 0.6 100 上段=n,下段=% 167

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象者の特徴的な傾向なのかどうかについては検討 を重ねる必要がある。また、本研究では一般的セ ルフ・エフィカシーについて検討したが、身体活 動に特化したセルフ・エフィカシーの研究では、 運動特異的セルフ・エフィカシーを測定したもの もあり(McAuley,1992)、今後は一般的セルフ・ エフィカシーと運動特異的セルフ・エフィカシー を測定し、更に検討を重ねる必要がある。 続いて運動・スポーツの情報入手方法について であるが、「無関心期」では、「学校」が最も多く、 つづいて「部活動」であったが、他のステージで は「インターネットでの動画」が最も多く、次に 「部活動」であった。研究対象者は大学 2 年生が 最も多かったため、学校の部活動での入手方法が 多いことが予測される。また「維持期」では、他 ステージと比較し「インターネットでの写真・イ ラスト」の値が高いことが示されている。この結 果から、健康・スポーツの行動変容を促進するに はインターネットを介したアプローチは有効であ ることが示唆される。 6.まとめ 本研究では、大学生を対象に2020 年 4 月以降 のスポーツ・健康分野におけるTranstheoretical Model の各ステージにおいて、「関心期」が高い割 合であった。またセルフ・エフィカシーは、「無関 心期」が最も低い値であり「関心期」が最も高い 値であった。本研究結果は、先行研究とは異なっ た傾向であることが明らかになった。これは、外 出自粛が要請された調査時期によるものなのか、 あるいは対象者の特徴的なものなのかを検討する 必要がある。次に、運動・スポーツの情報入手方 法は、「無関心期」以外は「インターネットの動画」 であることが明らかとなった。Bandura(1977) はセルフ・エフィカシーの獲得には、1.遂行行動 の達成、2.代理的経験、3.言語的説得、4.情動的喚 起の4 つがあると述べており「インターネット動 画」は、2,3,4 を獲得できる可能性があることから 「関心期」から「維持期」までのステージにおい てセルフ・エフィカシーを高め行動変容を促進す るため ICT を活用することが有効であることが 示唆される。今後は、一般的セルフ・エフィカシ ーと運動特異的セルフ・エフィカシーに加えICT を含めた他の要因と検討した上での包括的な研究 を進めることでスポーツ・運動の行動特性が明ら かにできると考える。 謝 辞 調査にご協力いただきました学生の皆さまには 感謝いたします。なお、本研究の一部はJSPS 科 研費20K19653 および新潟国際情報大学経営情報 学部共同研究費の助成を受けたものです。 参考論文

Bandura, A. (1997) ,“Self-efficacy: toward a unifying theory of behavioral change”, Psychological review.vol.84. No.2, pp.191-215

Dishman K.Rod. (1988) Exercise Adherence: Its Impact on Public Health, Human Kinetics.

James F.Sallis , Owen’s Neville (1998) Physical Activity & Behavioral Medicine, SAGE Publications

McAuley Edward (1992) “The Role of Efficacy Cognitions in the Prediction of Exercise Behavior in Middle-Aged Adults” Journal of Behavioral Medicine vol.15, pp.65-88 Prochaska J.O, C.Dicemente (1983) “Stages and

Processes of Self-Change of Smoking - Toward An Integrative Model of Change” Journal of Consulting and Clinical Psychology 51(3), pp.390-395

WHO (2019) “World Health Statistics 2019”,

https://www.who.int/gho/publications/world_health_statisti cs/en/(2020.03.02 アクセス) 坂野雄二、東條光彦(1986)「一般性セルフ・エフィ カシー尺度作成の試み」『行動療法研究』12(1), pp.73-82 岡浩一朗 (2000)「行動変容のトランスセオレティカ ル・モデルに基づく運動アドヒレンス研究の動 向」『体育学研究』45(4),pp.543-561 168

参照

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