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左第1中足骨頭の疼痛による左内反足歩行に対し足底挿板療法の効果が得られた1症例

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Academic year: 2021

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1.はじめに

中足骨の疼痛は第 2 中足骨頭および第 3 中足骨頭に疼 痛が多数出現するが、第 1 中足骨頭に負荷が増加するも のや種子骨障害などがある。中足骨頭の疼痛には、足 底挿板療法の使用があり、その効果は、報告されてい る1-3)。第 1 中足骨の負担を軽減する方法の 1 つとして 足底装具が使用されている。今回は、何らかの原因で左 第 1 中足骨に強い疼痛が出現し、荷重が掛けられないた めに左内反足歩行を行っている。家族の要望は、左内反 足歩行を治して欲しいとのことであった。この症例に対 して足底挿板療法を施行した結果、左第 1 中足骨頭の疼 痛が改善し、左内反足歩行が改善したため報告する。

2.対象

対 象 は、 靴 の サ イ ズ 21.5 cm、 身 長 130 cm、 体 重 30 kg の 10 歳の女性である。1 年前より左足の第 1 中足 骨の疼痛が強く、歩行時に母趾への荷重が掛けられない ため、左内反足歩行を行っている。他院にて治療を受け ていたが改善がみられなかったため紹介により当院の受 診となった。家族の要望は、左内反足歩行を修正して欲 しいとのことであった。 なお、対象者には口頭ならびに書面にて同意が得られ ている。

3.評価

歩行時の疼痛箇所の確認を問診にて行う。疼痛の原因 を確認するために視診、触診を行う。また足部のアーチ の状態や足関節の可動域評価、筋力評価を行う。大切な ことは患者と患者の家族への疼痛原因と足底挿板療法の 有効性を説明することである。 3-1.問診 症例は、左第 1 中足骨頭に荷重を掛けると痛いという 思いが強く、荷重を掛けることができず左足を内反させ ていたため、疼痛箇所についての評価が重要となる。何 年前から痛いのか、何が原因で痛くなったのか、また荷 重時、寝ている時、いつ痛みが出現するのか、を患者と 患者の家族から問診を行った。 3-2.視診と触診 視診にて疼痛箇所の腫れや変形の有無を確認した。ま た触診にて熱感や圧痛の有無を確認した。疼痛に対して 対象者の反応を確認した。

【症例報告】

左第 1 中足骨頭の疼痛による左内反足歩行に

対し足底挿板療法の効果が得られた 1 症例

清水 新悟

1)

  早川 康之

1)

  昆 恵介

1)

  花村 浩克

2) 抄録:今回は、何らかの原因で左第 1 中足骨頭に強い疼痛が出現し、疼痛からの防御反応により左内反 足歩行を呈し、病院に相談にきた症例である。症例の家族の方からは、左内反足の歩行を治して欲しい との強い希望であった。症例は、左第 1 中足骨頭が痛くて荷重が掛けれない 10 歳の女の子である。この 症例に対して、左第 1 中足骨が下方へ変位していたため、挙上しアライメントを正しい位置に補正する ように足底挿板を製作し装着した結果、左第 1 中足骨頭の疼痛が軽減し、左内反足歩行の改善が得られ たので報告する。足底挿板装着により、第 1 中足骨頭に荷重を安心して掛けられる心理的な影響も改善 した理由と考えられた。臨床の場にて装具療法は、患者様への問診にて安心感を与えることも重要であ り、何よりも原因と効果が得られる理論を説明することが必要である。 Key words: 第 1 中足骨頭痛、内反足歩行、足底挿板療法 1) 北海道科学大学 保健医療学部

Shingo SHIMIZU (PO, PT), Yasuyuki HAYAKAWA (PO), Keisuke KON (PO)

2) 三仁会 あさひ病院 Hirokatsu HANAMURA (MD)

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底屈角度、膝屈曲時の足関節背屈角度と底屈角度の計測 を行う。足関節の筋力評価は、徒手筋力検査を使用し、 前脛骨筋、腓骨筋、後脛骨筋を計測する。 3-7.疼痛評価 疼痛の評価として、安静時痛の有無、圧痛の有無、荷 重時痛の有無にて問診から問題となる疼痛評価を選定 し、さらに 10 m 歩行時の検査を Visual Analogue Scale (VAS)を用いて評価する。VAS は、100 mm の線分を用 いて、最も痛いときは 100 mm、最も痛くないときは 0 mmとし、点数化して評価する。 3-8.歩行観察評価 10 m 距離を決めて歩行して頂き、ビデオ画像を用い て歩行時の姿勢を二次元解析ソフト Kinovea.0.9.1 を用 いて評価する。立脚期中期および初期接地時の骨盤や肩 の傾き、体幹の左右の揺れなどを確認する。また 10 m での時間および歩数を計測する。

4.結果

4-1.問診、視診、触診について 問診にて第 1 中足骨頭の疼痛は、原因不明で 1 年前か らの荷重時の疼痛が発生時であり、その後は、安静時や 荷重時にでも疼痛が出現する。また疼痛が出現するとい う気持ちが強いため、第 1 中足骨頭に荷重を掛けられな い歩行(内反歩行)をしている。視診にては、腫れや変 形はなかった。触診では、熱感はなかったが圧痛が認め られた。疼痛に対する過敏な反応がみられ、気持ちの面 からの疼痛への恐怖心がみられた。足底挿板療法による 治療のための、必要となる理論を説明した。ポイントと しては、荷重を安心して掛けられるようにするために第 1 中足骨頭に掛かる荷重を免荷する効果を説明した。 3-3.第 1 列と第 5 列の評価 第 1 列および第 5 列の評価を行った4)。第 1 列の評価 は、第 2 ~第 5 中足骨を固定し、第 1 中足骨の上下の動 きを確認するテストである(図 1)。上方向と下方向の 動きが同じであれば正常であるが、上方向に大きいと最 初から第 1 中足骨は下方向に下がっていることになる。 第 5 列の評価は、第 1 ~第 4 中足骨を固定し、第 5 中 足骨の上下の動きを確認するテストである(図 1)。第 1 列の評価と同様に、上方向に大きいと最初から第 5 中 足骨は下方向に下がっていることになる。第 1 列が上方 向に大きく動いている場合は、第 1 中足骨が最初から下 方向に位置しており、歩行時に第 1 中足骨頭に荷重が掛 かっている状態となる。 3-4.足部アーチの評価方法 足部アーチの評価は、フットプリントおよび内側縦 アーチ高率値の評価を行った。フットプリントは両足静 止立位時にて計測する。内側縦アーチ高率は、両足静止 立位時での床面から舟状骨直下までの距離を足長で除し た値に 100 を掛けた値とする5) 3-5.足部アライメント評価 足部アライメント評価は、後足部のアライメント評価 と Navicular Drop Test を用いて評価を行った。後足部の 評価は、両足静止立位時にて床面からの踵の傾きを踵骨 二等分線としての角度を二次元解析ソフト Kinovea.0.9.1 で計測した。Navicular Drop Test は、座位での下腿垂直 位置にて床面から舟状骨直下までの距離と立位での床面 から舟状骨直下までの距離を計測して差をみる。差が 10 mm 以上の差があれば後足部回内位と評価される6) 3-6.関節角度と筋力評価 関節角度は、膝の伸展角度、膝伸展時の足関節背屈と 図 1 第 1 列と第 5 列の評価方法

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4-6.歩行観察結果 左足は初期接地時にて回外がみられ、立脚中期は足部 toe outにて左肩が下制した。左足は立脚期にて足部は回 外していた。右足は初期接地時にて回外がみられ、立脚 中期は足部 neutral にて左肩と左骨盤が下制した。10 m 歩行時間は 9.06 秒の 19 歩で VAS が 55 点であった。

5.評価結果からの足底挿板の製作

第 1 中足骨頭の疼痛により、後足部回外位の歩行によ り、左足内反歩行になったと推察した。静止立位時の踵 骨二等分線が左足が回外位、内側縦アーチ高率が左足が 高値であった。また歩行観察にて右足立脚中期時に骨盤 と肩が左下制となったことから、左足部の第 1 中足骨 頭接地を意識して足部回外位に接地する疼痛逃避と推 察した、足底挿板の製作は、三進興産社製の DSIS 三軸 アーチパッドと EMSOLD 社製の中足骨パッド、フォー ムラックス 3 mm 厚を削り製作したパッドを使用した。 DSIS三軸アーチパッドとフォームラックスパッドで左 踵骨は回内誘導し7)、EMSOLD 中足骨パッドとフォー ムラックスパッドで第 1 中足骨頭を挙上位に誘導し、第 1 中足骨のアライメントを正しい位置に補正する。また 第 1 中足骨頭が下方向にあることで骨頭の圧が上昇しや すく疼痛が出現するため、安心して荷重が掛けられるよ うに内側縦アーチの中足骨部を挙上させ、前足部を回外 誘導した8-11)(図 4)。したがって内反足歩行を改善する ために後足部は回内誘導、逆に前足部は回外誘導するよ うにイメージして製作した。 4-2.第 1 列と第 5 列の評価結果 第 1 列は、下方向への動きは小さく、上方向に大きく 動いていた。第 5 列は、下方向への動きも上方向の動き も同じであった。したがって、第 1 中足骨は下方向に位 置しており、第 5 中足骨は正常な位置にあった。歩行時 に第 1 中足骨頭が下方向にある場合、通常歩行時に第 1 中足骨頭には荷重が強く掛かることが予測できる。 4-2.足部アーチの評価結果 フットプリントの評価では、左第 1 中足骨頭のインク の付きが右と比べて薄かった(図 2)。内側縦アーチ高 率では、左が 17.8%、右が 12.7%であった。 4-3.足部アライメントの評価結果 二次元解析ソフト Kinovea.0.9.1 を用いた後足部の評 価では、右が回内 2°、左が回外 8°であった(図 3)。 Navicular Drop Testでは、左が 2 mm、右が 5 mm であっ た。 4-4.関節角度と筋力評価の結果 膝関節の可動域は、問題なく正常であった。足関節の 可動域評価は、膝屈曲位で背屈 10°、底屈 50°、膝伸展 位で背屈 10°、底屈 50°であった。足関節の筋力評価は、 前脛骨筋は MMT5 と左右差が無かった。腓骨筋は右が MMT5、左が MMT4 と右と比べて左が弱かった。後脛 骨筋は MMT5 と左右差が無かった。 4-5.疼痛の評価結果 左第 1 中足骨頭の安静時痛は 7 点、圧痛は 25 点、荷 重時痛は 63 点であった。 図 2 症例のフットプリント 図 3 後足部の評価

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にて左肩と左骨盤の下制の改善は見られなかった。疼痛 が改善したため後 1 ヵ月間、様子をみることとした。足 底挿板装着 2 ヵ月後では、 7.2 秒、15 歩、VAS が 0 点と 改善した(表 1)。画像解析では、左足は初期接地時に て回外がみられ、立脚中期は足部 toe out にて左肩が下 制、立脚後期は足部回外での蹴りだしの改善がみられた (図 5)。左足は立脚期にての足部回外の改善はみられた。 右足は初期接地時にて回外がみられ、立脚中期は足部 neutralにて左肩と左骨盤の下制の改善は見られた。歩容 が安定したことで家族からも満足度が得られた。

7.考察

今回は、第 1 中足骨頭の疼痛により、疼痛からの逃避 のための左足部内反歩行の症例に対して第 1 中足骨頭の アライメントを補正し、荷重が掛かりやすくするために 内側縦アーチの第 1 中足骨部の挙上、また踵骨の回内誘 導を目的に足底挿板療法を施行した。その結果、疼痛お よび歩容の改善がみられた。第 1 中足骨痛の疼痛の軽減 により歩行時の荷重が得られた効果と思われた。

6.足底挿板の効果判定

足底挿板の効果は、10 m 歩行の時間と歩数、VAS を 用いての疼痛評価を 3 施行行った。またビデオを用い て二次元解析ソフト Kinovea.0.9.1 を用いての歩行評価 を行った。1 ヵ月後、2 ヵ月後と評価を行った。その結 果、足底挿板の装着前後での 3 施行の平均値にて比較 を行った。足底挿板装着前は、9.0 秒、18.7 歩、VAS が 52.0 点、足底挿板装着後は、8.0 秒、17 歩、VAS が 24.3 点と改善がみられた(表 1)。画像解析では、左足は初 期接地時にて回外がみられ、立脚中期は足部 toe out に て左肩が下制の改善がみられた。左足は立脚期にての足 部回外の改善はみられなかった。右足は初期接地時にて 回外がみられ、立脚中期は足部 neutral にて左肩と左骨 盤の下制が改善した。足底挿板装着 1 ヵ月後では、7.7 秒、16.7 歩、VAS が 0 点と改善した(表 1)。画像解析 では、左足は初期接地時にて回外がみられ、立脚中期は 足部 toe out にて左肩が下制の改善がみられた。左足は 立脚期にての足部回外の改善はみられなかった。右足は 初期接地時にて回外がみられ、立脚中期は足部 neutral 図 4 足底挿板 表 1 足底挿板療法の 10 m 歩行試験 3 回の平均値 装着前 装着後 1 ヵ月後 2 ヵ月後 10 m 歩行時間(秒) 9.0 8.0 7.7 7.2 10 m 歩行歩数(歩) 18.7 17.0 16.7 15.0 10 m 歩行 VAS(点) 52.0 24.3 0 0

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1 中足骨頭に荷重を掛けない様に歩行しているが、第 1 中足骨頭のアライメントが悪かったことで、荷重による 疼痛が再発し、悪化したと思われた。 足底挿板療法は、評価が大事であり、何よりも患者様 や患者様の家族の方への説明が大事である。また臨床の 場では、評価に掛ける時間も短い時間でしかないため、 患者様に会った評価を選択し、有効性を確認することも 必要である。

8.まとめ

今回、何らかの原因で左第 1 中足骨に強い疼痛が出現 し、荷重が掛けられないために左内反足歩行を行ってい る症例に対して、第 1 中足骨頭のアライメントを補正す る足底挿板療法を行った結果、第 1 中足骨頭への疼痛が 軽減し、左内反足歩行が改善した。評価にて原因を追究 し、患者様やその家族への説明によるインフォームド・ コンセントが大事である。 第 1 中足骨頭のアライメントを正しい位置に補正し、 荷重を掛けやすくするために第 1 中足骨を挙上するため に内側縦アーチ前部を支持するように足底挿板を設計し た。また第 1 中足骨頭に掛かる疼痛からの防御反応から の後足部回外歩行を改善し、第 1 中足骨頭に荷重を掛け やすくするために後足部の回内誘導を行った。さらに足 底挿板装着により、疼痛に対する心理的な恐怖心を取り 除き、第 1 中足骨頭に荷重を安心して掛けられる心理的 な効果も考えられた。患者様や患者様の家族の方への説 明が大事であり、疼痛の原因および改善する方法を説明 し、納得して頂くことが大事である。今回の最初の原因 は第 1 列の評価にて第 1 中足骨が下方に下がっており、 下方向への動きは小さく、上方向への移動が大きかっ た。したがって歩行時に第 1 中足骨頭への負荷が大き かったと推察され、それが原因となって第 1 中足骨頭の 疼痛が出現していたと考えられた。この疼痛を軽減する ために足底挿板療法の理論を患者様と患者様の家族の方 に説明した。第 1 列の評価にて第 1 中足骨頭に荷重を掛 けていることが理解でき、その後に疼痛回避のために第 立脚前期 立脚中期 立脚後期 足底挿板装着前 立脚前期 立脚中期 立脚後期 足底挿板装着 2 ヵ月後 図 5 足底挿板療法による歩容時の左足部

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motion and plantar pressure during the stance phase of gait. BMC Musculoskelet Disord, 2008, 18(9), 111. 7) 佐々木克則ほか:ダイナミック・シュー・インソー ル・システムについて,靴の医学,10,31-34,1997. 8) 林 典雄ほか:足底挿板が足部内在屈筋力に及ぼす影 響について,日本義肢装具学会誌,16(4),287-290, 2000. 9) 林 典雄ほか:舟状骨パッドが歩幅に及ぼす影響につ いて,日本義肢装具学会誌,19(3),228-232,2003. 10) 昆 恵介ほか:インソール外側壁トリミングラインの 有無による足底接地剪断性の影響,第 32 回日本義肢 装具学会学術大会,142,2015. 11) 清水新悟ほか:横アーチパッドの位置と足趾握力との 関係,靴の医学 30(2),53-56,2016. 文  献 1) 遠藤 拓ほか:中足骨頭底部痛に対する足底板の効 果,靴の医学,25(2),5-9,2011. 2) 中宿伸哉ほか:中足骨頭部痛におけるタイプ分類と所 見の検討,靴の医学,21(2),78-81,2007. 3) 中宿伸哉:第 4 中足骨基部疲労骨折に対し足底挿板が 有効であった 1 症例,東海スポーツ傷害研究会会誌, 32,23-25,2014. 4) 入谷 誠:結果の出せる整形外科理学療法,メジカル ビュー社,182-183,2011. 5) 清水新悟ほか:扁平足に対するフットプリントとアー チ高率値の信頼性,臨床バイオメカニクス,30,243-248,2009.

参照

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