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2016 年度研究会優秀賞受賞論文集

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Academic year: 2021

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(1)

●授賞理由 本論文では,順列決定グラフとして圧縮表現で与えら れる順列集合について,サイクルタイプによる同値類へ の分割のための効率的なアルゴリズムを提案し,既存の 手法と比較し実験的に約 20 倍高速,約 5 倍省メモリに 改善している.順列は現実の問題によく現れる基礎的な 離散構造であり,その効率的処理は近年の組合せ構造を 伴う人工知能分野の基本技術としても重要である.より 省メモリな処理への展開など今後の発展性も含めて,優 秀賞に値する優れた研究である. ●アブストラクト 現実問題によく現れる重要な離散構造の一つとして順 列がある.順列とはアイテムの並びを表す列であり,ス ケジューリングやルーティング,ランキングなどの問題 に現れる.また,アイテムに 1 から n までの番号を付け ると,順列の数列を i から i 番目のアイテムへの写像と 捉えることで,n 個のモノの集合{ 1, …, n }上の全単射 関数だと考えることができる.このような有限集合上の 全単射関数は組合せ問題でよく現れるほか,マッチング や符号化などにも関連する. 順列の特徴付けの一つに,サイクルタイプがある.与 えられた順列について,1 から n までの n 個の頂点を用 意し,i から i 番目のアイテムへ辺を引いた有向グラフ を考えると,独立した複数のサイクルからなるグラフと なる.このグラフにおいて,各長さのサイクルをいくつ もつかの分布がその順列のサイクルタイプに対応する. 順列の集合が与えられたとき,その順列集合にどのサ イクルタイプの順列がいくつ含まれているか調べること はさまざまな応用をもつ.例えば,順列集合に含まれる 順列のサイクルタイプから得られる多項式は,ポリアの 数え上げ定理にも用いられる母関数を与える.サイクル タイプが同じ順列同士に同値関係を定義することで,順 列集合は同値類に分割できる.与えられた順列集合に対 し,サイクルタイプ同値類分割を求めることで,上述の 応用で用いられるようなサイクルタイプの分布などの分 析が可能となる. 本研究では,与えられた順列集合に対し,そのサイク ルタイプ同値類分割を計算する.サイクルタイプは順列 の長さの線形時間で求められるため,順列集合がメモリ に納まる場合は一つずつ計算することも現実的である. しかし,順列の特徴のみが指定されているなど,集合は 一意に定まるが実際の要素数が膨大である場合も考えら れる.ここではそういった順列集合が圧縮表現で与えら れることを考える. 本研究では順列集合の圧縮表現として,順列決定グラ フを用いる.順列決定グラフは順列の集合を効率的に保 持するだけでなく,条件付き絞り込みや 2 集合間の共通 集合などの計算を解凍せずに行えるため,効率的な操作 を提供できる特徴ももつ.本研究では,与えられた順列 集合を表す順列決定グラフを入力とし,サイクルタイプ 同値類それぞれを表す順列決定グラフの集合を求める効 率的な手法を提案した.計算機実験により,提案アルゴ リズムは既存手法よりも約 20 倍高速で,約 5 倍省メモ リであることを示した. 人工知能基本問題研究会:SIG-FPAI-504-09  2016 年 8 月 7 日

順列のサイクルタイプ同値類分割に対する

順列決定グラフの適用

井上 祐馬,湊  真一

著 者 紹 介

井上 祐馬(正会員) 2012年北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科 卒業.2014 年同大学院情報科学研究科修士課程修 了.2017 年同博士後期課程修了.博士(情報科学). 2015∼ 17 年日本学術振興会特別研究員 DC2 とし て順列集合を表現するデータ構造の設計・応用に関 する研究に従事.2017 年よりグーグル合同会社に勤 務(現職). 湊  真一(正会員) 北海道大学大学院情報科学研究科教授.大規模離散 構造データの表現と演算処理アルゴリズムの研究・ 教育に従事.1988 年京都大学工学部情報工学科卒業. 1990年同大学院工学研究科修士,1995 年同研究科 博士(社会人)修了.博士(工学).1990 ∼ 2004 年 NTT 研究所に勤務.2004 年北海道大学助教授, 2010年同教授(現職).2009 ∼ 16 年 JST ERATO 湊離散構造処理系プロジェクト研究総括(兼務).2010 ∼ 14 年本会評議 員.電子情報通信学会,情報処理学会,IEEE 各会員.

(2)

●授賞理由 本論文は,研究室配属問題に対する CSP 符号化手法 を示している.その特長は,(1)フェアな解に対する完 全性,(2)満足度の導入による解の評価,(3)学生の研 究室に対する選好順位に同順位を認めることにある.評 価実験の結果は,同順位の導入によって,より上位に希 望する研究室に配属される学生の増加を達成することが できることを示している.問題の拡張や,提案方法の高 速化も期待でき,今後の発展性を含め,優秀賞に値する 優れた研究である. ●アブストラクト 研究室配属は,大学で 4 年生(もしくは 3 年生)にな ると行われ,どの研究室にどの学生達が配属するかを決 定する.学生の多くは希望する研究室をもち,研究室側 も同様にほしい学生の基準がある場合が多い.研究室配 属問題では,この希望や基準を使って学生と研究室間の 割当てを決定する.割当ての望ましさに関する尺度とし て,“むだがない”,“フェア”,“ML(Master List)フェア” がある.研究室の配属人数上限に余裕があるにもかかわ らず,その研究室を希望する学生が配属されない割当て をむだな割当てといい,そのような学生がいなければ“む だがない”割当てという.ある研究室 L への配属を希望 する学生 A,B がいるとしよう.L の配属基準において は A のほうが B より望ましいとする.このとき A では なく B が L に配属されたとすれば,A は B に不満をもつ. そのような不満をもつ学生がいないときフェアな割当て と呼ぶ.しかし,問題によってはフェアが存在しない場 合があるため,GPA のような全学生を順位付けられる ものを用いて,不満の中でも特に強い不満をなくした割 当てを ML フェアという. 研究室配属問題を解く既存手法として Fragiadakis ら は,問題を高速に求解可能なアルゴリズム MSDA(Multi Stage Deferred Acceptance)を提案している.しかし, この手法ではフェアな解が存在したとしても,それを見 逃す可能性がある.学生にとって研究室配属は,卒業研 究や就職に関わる重要なイベントであり,できる限り希 望を充足したい.そこで本研究ではフェアな解がある場 合には,必ずフェアな解を求解できる健全かつ完全な手 法を提案する.またフェアな解はしばしば複数存在する. そこでできる限り学生の希望を満たすため,配属された 研究室の選好順序における順位の総和を最小化する.さ らに既存手法では,各学生がもつ研究室に対する選好順 序は全順序で与えられていた.しかし,研究室数が増え た場合,すべての研究室を順序付けることは現実的には 難しい.そこで本研究では学生の研究室に対する選好順 序において,いくつかの研究室を同順位とすることを認 める.例えば第 1 希望の研究室を複数記述すること,ま た第 1 ∼ 3 希望まで指定したのち,残りの研究室は同順 位とするといったことが可能になる. 本研究では前述の研究室配属問題を制約最適化問題と して定式化した.評価実験の結果,既存手法ではフェア な解を見逃していた問題に対しても発見できることを確 認した.また配属先研究室の選好順序における順位の総 和最小化ならびに同順位の導入によって,従来手法より もより多くの学生が高い希望順位の研究室へ配属される 可能性が高くなることが確認できた.特に同順位の導入 が効果的であった.今後の課題として,求解時間の低減 や,研究室側の選好順位に対する同順位を考慮すること などがあげられる. 人工知能基本問題研究会(第 103 回):SIG-FPAI-506-05  2017 年 3 月 13 日

同順位を含む研究室配属問題の

CSP ソルバーによる解法の検討

藤井  樹,伊藤 靖展,鍋島 英知

「2016 年度研究会優秀賞受賞論文紹介」

(3)

藤井  樹(学生会員) 2017年山梨大学工学部コンピュータ理工学科卒業. 同年,同大学院医工農学総合教育部工学専攻コン ピュータ理工学コースに入学.現在に至る.主とし て CSP ソルバーを用いた配属問題の解法に関する 研究・開発に従事.オペレーションズリサーチの研 究に興味をもつ. 伊藤 靖展 2016年山梨大学工学部コンピュータ理工学科卒業. 同年,株式会社サンセイコンピュータシステム入社, 現在に至る.在学中は主として CSP ソルバーを用 いた配属問題の解法に関する研究・開発に従事. 鍋島 英知(正会員) 2001年神戸大学大学院自然科学研究科情報メディア 科学専攻博士課程修了.同年,山梨大学工学部コン ピュータ・メディア工学科助手.現在,同大学院医 学工学総合研究部准教授.博士(工学).SAT,プ ランニング,定理自動証明,Web 知的処理などの研 究に従事.2004 年 FIT 優秀論文賞受賞,2012 年日 本ソフトウェア科学会高橋奨励賞受賞,2014 年日本 ソフトウェア科学会ソフトウェア論文賞受賞.

(4)

●授賞理由 本論文は,一部の観測事例に対するラベル情報が利 用可能な半教師ありクラスタリングを対象とし,著者ら のグループが過去に提案した進化的距離計算を用いたク ラスタリング手法にカーネル関数による高次元空間への データの写像を組み合わせることで,従来手法が線形分 離可能なデータしか扱えなかったものを線形分離不可能 なデータも適切にクラスタリングできるように拡張した 手法を提案している.評価実験では,線形分離不可能な 人工データ,および実データそれぞれに対して,提案手 法によるクラスタリング精度が従来手法よりも統計的に 有意に高いことが示されている.対象データは人工デー タ,実データともに 1 セットずつと少ないものの,手法 自体の理論的枠組みはしっかりとしており,関連研究と の比較も含めて論文の完成度も高い.また,他のカーネ ル関数を利用した今後の発展性も期待でき,分類問題へ の適用も含めて広範囲に応用可能な技術であることも高 く評価できる.加えて,第一著者は博士後期課程の学生 であり,若手の研究を奨励するという意昧でも受賞候補 としてふさわしいと考える. ●アブストラクト 機械学習・データマイニングにおいて,多くの識別器 やクラスタリングはあらかじめ定義されたデータ点間の 距離計量に基づいて,クラスを判別したり類似データを 分類したりする.同じ学習アルゴリズムであっても,距 離計量によってその精度は大きく変わってくる.しかし, 基準となる性能が高められるような距離計量は解析対象 によって異なることから,対象に応じた適切な距離計量 を事前に定めることは難しい.そこで,適切な距離計量 をデータから学習する距離計量学習と呼ばれるさまざま な研究が行われている. 我々は以前,データ集合を類似データの集合に分割 するクラスタリングのタスクにおいて,進化計算による 最適化を用いた距離計量学習:Evolutionary Distance Metric Learning(EDML)を提案した.通常,クラス タリングは教師なし学習であるが,EDML ではクラス ラベルもしくはペアワイズ制約(Must-link/Cannot-link と呼ばれる同じクラスのデータであるか,そうでないか を示すデータ点間の制約)を教師情報として,クラスタ 妥当性指標に基づいて距離計量を最適化する.すなわち, クラスタリングの結果,同じクラスラベルをもつデータ は同一のクラスタに属し,異なるクラスラベルをもつ データは異なるクラスタに属すように距離計量の変換を 行う.しかし,クラスタ妥当性指標を評価関数に設定す ると,距離計量学習の変数に関して微分不可かつ超多峰 性の関数となる.よって勾配法は使えず,また貪欲法に よる探索ではすぐに局所解に陥ってしまい良い解は得ら れないため,これまでクラスタ妥当性指標を直接最適化 することは行われていなかった.そこで,EDML では 多峰性関数の最適化に確率的多点探索法である進化計算 の利点を生かし,クラスタ妥当性指標を評価関数として 直接最適化することを可能にしている.さらに,EDML は一部のデータのみに教師情報が付与される状況に対し ても,近傍の教師なしデータのデータ分布を活用し,精 度の低下を抑えることができる. しかし,EDML は他の多くの距離計量学習と同様に, 距離計量のモデルはユークリッド距離からの線形変換に 限定されていた.そこで本研究では,EDML の自然な 拡張として,サポートベクタマシン(SVM)などで有名 なカーネルトリックを利用する方式を提案した.すなわ ち,非線形写像した空間で(線形の)距離計量学習を行 うことでモデルの自由度を向上させて計量学習の精度向 上を試みた.実験では,線形分離不可能な人工データな らびに糖尿病データセットを用いて,提案法であるカー ネル EDML,従来の線形 EDML,提案法と同じくカー ネル法を用いたカーネル K-means 法を比較し,提案法 では F 値の観点で有意にクラスタリング精度が向上する ことを確認した. 知識ベースシステム研究会:SIG-KBS-B505-10  2016 年 11 月 10 日

Proposition of Kernelized Evolutionary

Distance Metric Learning for

Semi-supervised Clustering

Kalintha Wasin,小野 智司,沼尾 正行,福井 健一

(5)

Kalintha Wasin(学生会員)

Wasin Kalintha is currently a Ph.D. student at Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University. He received Master of Information Science and Technology from Osaka University in 2016 and Bachelor of Computer Engineering from Chulalongkorn University in 2013. His research interests include artificial intelligence and data mining, especially distance metric learning and clustering. 小野 智司(正会員) 2002年筑波大学大学院博士課程工学研究科修了. 2001年日本学術振興会特別研究員.2003 年鹿児島 大学工学部情報工学科助手.2010 年同大学院理工学 研究科情報生体システム工学専攻准教授,現在に至 る.博士(工学).進化計算とその応用の研究に従事. IEEE,情報処理学会,電子情報通信学会,進化計 算学会などの各会員. 沼尾 正行(正会員) 1982年東京工業大学工学部電気電子工学科卒業. 1987年同大学院情報工学専攻博士課程修了.工学博 士.東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学 専攻助教授を経て,2003 年より大阪大学産業科学研 究所教授.1989 ∼ 90 年スタンフォード大学 CSLI 客員研究員.人工知能,機械学習,関数型言語など の研究に従事.日本認知科学会,日本ソフトウェア 科学会,電子情報通信学会,AAAI,ACM 各会員. 福井 健一(正会員) 2003年名古屋大学大学院人間情報学研究科物質・生 命情報学専攻博士前期課程修了.2010 年博士(情報 科学,大阪大学)取得.2005 年より大阪大学産業科 学研究所新産業創造物質基盤技術研究センター特任 助手,特任助教を経て,2010 年同大学産業科学研究 所助教.2015 年より同准教授.データマイニング・ 機械学習とその応用に興味をもつ.IEEE Computer Society,情報処理学会,進化計算学会,電子情報通信学会各会員.

(6)

●授賞理由 本発表は,システムとユーザが Q&A を行いながら, インタラクティブに会議の議事録を生成するシステムの 試作と評価を行った結果を報告したものである.各議論 参加者の視点で要約を行うことを目指し,階層構造化さ れた発言群に対し,ユーザがテキストによる質問応答を 通じて,議論内容情報を抽出できる,インタラクティブ 型の議事録生成システムを提案した.2 名のユーザにシ ステムを利用させ,質問紙を用いた主観評価と,システ ム使用履歴を用いた評価を行い,システムの有用性を示 した.重要発言を同定し,議論の局所的なグループ構造 を抽出するために,多様な発言間の類似性尺度を導入し, 議論内容を木構造で表現することで,重要発言の簡約レ ベルをパラメータで切り替えられる機能を実装している 点に高い新規性が認められる.大規模な参加者による評 価実験や,他の議論要約システムとの要約性能の比較検 証は,今後の課題であるものの,今後,後続の研究が期 待できる.以上を総合的に勘案し,本研究が受賞に値す るという判断に至った. ●アブストラクト 我々は,システムとユーザがインタラクティブに質 問応答を繰り返しながら会議に関する情報を検索し,議 事録を生成するプロトタイプシステムを設計した.本シ ステムでは,議事録に対してさまざまな問合せを行い, その結果を受け,さらに新たな問合せを繰り返すこと で,その会議を個人的な視点から振り返ることができる. 我々の問題意識は,従来の議事録では会議の表面的な事 実をまとめることが多いため,明示的に示されていない 情報を把握することが難しい点にある.また,記録され た会議録は,会議中いかに意見が交わされたのか,どの ような流れを経てその結論に至ったのかなど,多くの情 報を含んでいるため,再利用することで新たな価値を生 むコンテンツである.会議録の再利用性を高めるために は,議論の構造的な情報やそこに含まれる意図を理解す る必要がある.我々は,議論に含まれる意図を明示的に 表現するため,発言間の関係や階層的な重要度を表す木 構造とその抽出方式を提案した.提案システムでは,こ の木構造をインタラクティブに操作することで,ある観 点に対応した意図の抽出や要約などの情報抽出を可能と している.提案システムを用いた実験結果から,システ ム利用者が会議の流れや重要な主張に関しておおむね同 じ理解に到達することが確認された.システム利用者は 各機能を有効に活用しながら,探索的に議事録を生成し た.以上より,我々は,提案システムが探索的な情報検 索に貢献することを実証した. 言語・音声理解と対話処理研究会:SIG-SLUD-077-03  2016 年 8 月 10 日

議論における意図のモデル化と質問応答を

繰り返しながら議事録を生成するシステムの

プ口トタイピング

三浦 寛也,竹川 佳成,平田 圭二

「2016 年度研究会優秀賞受賞論文紹介」

著 者 紹 介

三浦 寛也(学生会員) 2014年公立はこだて未来大学大学院システム情報科 学研究科博士前期課程修了.同年,同研究科博士後 期課程に進学.現在,博士後期課程 3 年.対話モデル, 自然言語処理,インタラクティブシステムに関する 研究に従事. 竹川 佳成 2007年大阪大学大学院情報科学研究科博士課程修 了.同年より神戸大学自然科学系先端融合研究環重 点研究部助教.2012 年より公立はこだて未来大学 システム情報科学部助教.2014 年より同学部准教 授,現在に至る.2011 年には MIT MediaLab. に て Assistant Visiting Professor を兼務.博士(情報 科学).ヒューマンコンピュータインタラクション, エンタテインメントコンピューティング,音楽情報科学の研究に従事. 平田 圭二(正会員) 1987年東京大学大学院工学系研究科情報工学専門 課程博士課程修了.同年,NTT 基礎研究所入社. 1990∼ 93 年(財)新世代コンピュータ技術開発機 構(ICOT)に出向.2011 年より公立はこだて未来 大学教授,現在に至る.1993 ∼ 95 年情報処理学会 音楽情報科学研究会初代主査,2010 ∼ 15 年デジタ ルプラクティス誌編集委員長.博士(工学).音楽 情報処理,オンデマンド公共交通システム SAV,医療システム「みまも メイト」の研究に従事.

(7)

●授賞理由 本論文は,論理的思考力の育成という,近年重要視さ れている研究テーマを対象としている.論理的思考力を, 「根拠・理由付け・主張を意識し,その組合せを考えら れる力」と定義したうえで,この力を養うには,論理構 造そのものを直接操作する活動が重要であると提唱して いる.そして,根拠推論・理由付け推論・主張推論とい う 3 種類の推論を扱うことを可能とする汎用性の高い三 角モデルをもとに,用意された部品を組み合わせること で論理構造を学ばせる Kit-Build 型学習システムを開発 した.さらに,評価実験によって,抽象度が高く従来向 上させることが難しかった論理的思考力の顕著な向上を 確認し,提案手法の有効性を実証した.以上より,新規性, 有効性に優れ,信頼性も担保された将来性の高い論文で あると判断し,本論文を研究会優秀賞に推挙する. ●アブストラクト 本研究では,論理の構造を組み立てることで論理的 思考力の育成を図る演習支援システムを情報構造指向ア プローチに基づき設計開発した.情報構造指向アプロー チとは,対象を情報構造化し,その情報構造を操作する 活動を通して対象について学ぶものである.論理の構造 の情報構造化としては,論証構造の可視化モデルとして 知られる Toulmin モデルの三要素モデルを採用してい る [Toulmin 03].これを三角ロジックモデルと呼び,さ らに,表現する論理の構造を三段論法に限定することに より,正誤判定と判定に基づくフィードバックを実現し た.これにより,学習者は自身の行った論理構造に対す る操作の結果を得ながら,論理の構造を完成させるため の試行錯誤的な活動を行うことができる.この演習環境 の評価として,(1)実験群:プレテスト,システムを用 いた演習,ポストテスト,(2)統制群:プレテスト,ポ ストテスト,の二つのグループを設けて比較を行った. 演習環境利用の有無を被験者間要因,テストのプレ・ポ ストを被験者内要因として ANOVA4 を用いた 2 要因分 散分析を行ったところ,交互作用が有意であった( p= 0.000<0.001).下位検定を行ったところ単純主効果と して,プレテストにおいて実験群と統制群の有意差は なく(p = 0.059>0.05),ポストテストにおいて有意差 が見られた(p = 0.020<0.05).また,実験群において プレテストとポストテストにおいて有意差があり( p= 0.000<0.001),効果量大(Cohen’s d=1.30)となった. このことから,本演習の有効性が示唆された.なお,プ レテスト,ポストテストとしては,国立教育政策研究所 が実施した「特定の課題に関する調査(論理的な思考)」 の一部である,「特定の教科の内容によらない論理的な 思考に関する調査(調査Ⅰ)」を用いている.また本演 習では,学習者は正解となる論理構造を組み立てるまで 次の課題に進めないようになっている.このため,各被 験者で演習を終了するまでにかかった演習時間は異なっ たものになっている.演習時間とプレテストの成績に有 意に高い負の相関が出ており,プレテストの時点で成績 が悪い場合には,演習を終了するのにも時間がかかって いることを示している.これは,演習が論理的思考を要 するものになっていることを示唆する.今回,他の学習 の方法との比較を行っていないため,従来型の論理の演 習との比較を行うことも次の段階として必要であると考 えている.

◇ 参 考 文 献 ◇

[Toulmin 03] Toulmin, S. E.: The Uses of Argument, Updated Edition, Cambridge: Cambridge University Press(First published:1958)(2003) 先進的学習科学と工学研究会:SIG-ALST-B505-02  2016 年 11 月 12 日

論理の三角モデルを用いた三方向論理組み立て

活動の設計と演習システムの開発・評価

北村 拓也,長谷 浩成,前田 一誠,林  雄介,平嶋  宗

著 者 紹 介

北村 拓也(学生会員) 2016年広島大学工学部第二類情報工学課程卒業. 2017年同大学院工学研究科情報工学専攻博士課程前 期修了.現在,同専攻博士課程後期に所属. 長谷 浩成 2007年兵庫教育大学大学院学校教育研究科教科領域 教育専攻修了.兵庫県公立小学校教諭,姫路市教育 委員会指導主事を経て,現在,環太平洋大学次世代 教育学部教授.国語科教育に関する研究に従事.教 育学修士.

(8)

前田 一誠 1996年福岡教育大学小学校教員養成課程数学科卒 業,2004 年同大学院教育学研究科修了.福岡県公立 小学校教諭,広島大学附属小学校主幹を経て,2015 年より環太平洋大学次世代教育学部准教授,現在, 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期に所属. 算数科教育に関する研究に従事.教育学修士. 林  雄介(正会員) 1998年大阪大学基礎工学部システム工学科卒業, 2003年同大学院工学研究科博士課程修了.北陸先端 科学技術大学院大学助手,大阪大学特任助教,名古 屋大学准教授を経て,2012 年より広島大学大学院工 学研究科准教授.知識モデリング,知的教育システ ムの研究に従事.工学博士. 平嶋  宗(正会員) 1986年大阪大学工学部応用物理学科卒業,1991 年 同大学院工学研究科博士課程修了.同年,大阪大学 産業科学研究所助手.同講師,九州工業大学情報工 学部助教授を経て,2004 年より広島大学大学院工学 研究科教授.人間を系に含んだ計算機システムの高 度化,特に学習工学に関する研究に従事.工学博士.

(9)

●授賞理由 ロボカップサッカーは,複数のエージェントが不完 全な観測下で時開的な制約のある環境で意思決定を行う 研究プラットフォームとなっている.本研究はその中の 一つサッカーシミュレーションを題材にしている.サッ カーシミュレーションは,現在相手に合わせた戦略が必 要な段階にまで高度化してきている.そのような戦略を 適切に切り替える準備として,戦略の基礎となる行動決 定方法にヒトの意図を効率的に反映する方法の提案であ る.探索木を用いて意思決定をするエージェントを作成 する場合に,設計者の意図を反映するには評価関数の設 計が重要である.一方で,評価関数の設計には試行錯誤 を伴い時間がかかるため,戦略が違っても同じ評価関数 を利用できると設計効率が良い可能性がある.そこで, 発表者らは評価関数は一定のまま,探索範囲の選択と集 中を行うため SVM を用いた枝刈りを提案している.発 表では設計者の意図を反映した枝刈りが実現されたこと が報告されており,今後の展開が期待されるアプローチ である ●アブストラクト ロボット工学と人工知能の領域横断型研究プロジェク トとして RoboCup が知られている.RoboCup にはさま ざまなリーグが存在しており,それぞれにおいて活発な 研究開発が行われている.RoboCup サッカーシミュレー ション 2D リーグはその中でも最も古いリーグの一つと して知られている.RoboCup サッカーシミュレーショ ン 2D リーグでは,毎年各チームが変化を加えることに より,フィールドの片側に選手を固め攻撃する戦術や守 備を偏重する戦術など,多種多様な戦術が存在している. かつては,チーム開発者が戦術を一つ決め,その完成度 が勝敗を決めていた.近年では,各チームの戦術が成熟 期に達しており,戦術と戦術の相性を考える必要が出て きた.このため,一つの戦術ですべてのチームに勝つこ とは困難となり,複数の戦術を用意し,敵チームに合わ せて戦術を変更することで試合を有利に進めることが求 められるようになった.人手を使ってすべての敵チーム の戦術に合わせた戦術を作成することには限界があるた め,システム化された方法が必要である.そこで,本研 究では,プレーヤの行動制御に着目し,多様な行動制御 を効率的に生成できるような枠組みを目指す. プレーヤの行動制御に関して,探索木を用いたプレー ヤの意思決定法を提案している.探索木で用いられる評 価関数では,敵ゴールからの距離や敵との距離といった サッカー特有の特徴量の重み付き総和により,状態を評 価し,評価値が高くなるような行動を選択する.評価関 数内で用いられる特徴量の重みは人手により調整されて いるため,戦略や戦術を表現する評価関数を新たに試作 するだけでも,高い時間的コストが必要である.人手の 作業をできるだけ減らしてプレーヤの行動を制御する方 法として,探索木生成段階で不要な行動列を直接制限す ることが考えられる.本論文では,この方針により探索 木生成のプロセスを変更することで,評価関数を調整す ることなく,設計者の意図どおりに戦術を実装する方法 を提案する. 提案手法では,探索木生成段階において,行動が設計 者の意図を反映しているかどうかを判断し,枝刈りを行 う.枝刈り判定を行うモデルとして,サポートベクタマ シンを採用する.サポートベクタマシンが探索ノードの 要不要を判断する識別器となる.識別器の構築に必要な 学習用データをつくるための GUI アプリケーションを 開発し,人の判定結果をデータ解析した.数値実験では, 本手法により,評価関数を直接調節することなく,効率 的に開発者の意図どおりの戦術を実現できることが示さ れた.例えば,人手のみにより作成された評価関数では, スルーパスを過剰に警戒するフォーメーションに対して 無理なスルーパスを狙っていたが,提案手法でサイド突 破を強く意識する戦術をつくり,一試合当たりのスルー パスキック数を 11.35 から 6.78 に減らしながらも同じ 勝率を維持することができた. AI チャレンジ研究会:SIG-Challenge-047-01  2017 年 3 月 30 日

RoboCup サッカーにおける枝刈りを用いた

行動制御

田中  翔(辞退),中島 智晴,秋山 英久

(10)

著 者 紹 介

中島 智晴(正会員) 2000年大阪府立大学大学院工学研究科電気・情報 系専攻経営工学分野博士後期課程修了.博士(工 学).2012 年大阪府立大学現代システム科学域教授, 現在に至る.南オーストラリア大学,ノッティンガ ムトレント大学,インド統計数理研究所,ノッティ ンガム大学,ラフバラ大学,CSIRO で客員研究員. 2012,2017 年 RoboCup 世界大会サッカーシミュ レーションリーグ優勝.日本知能情報ファジィ学会,電気学会会員. 秋山 英久(正会員) 2008年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能シ ステム科学専攻博士後期課程修了.同年,独立行政 法人産業技術総合研究所情報技術研究部門特別研究 員,2011 年福岡大学工学部助教,現在に至る.博士 (工学).RoboCup を中心にマルチエージェントシス テムの研究に従事.2010,2012,2017 年 RoboCup 世界大会サッカーシミュレーションリーグ優勝.情 報処理学会,日本知能情報ファジィ学会会員.

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●授賞理由 本論文では,駄酒落への反応および生成を行う頻度を 対話の話題の変遷に従って自動的に調節するような質問 応答の可能な非タスク指向型対話システムを提案してい る.ユーモアの認識をすることをモデル化し,それを含 めた対話システムを開発している.必ずしも,仮説のと おりの結果は得られてはいないが,ユーモアをもって対 話ができるシステムの一つの可能性を示したという意昧 で,ことば工学の発展に有益であり,受賞に値すると考 える. ●アブストラクト 近年の対話技術は,携帯情報機器に搭載される汎用 エージェント,企業の Web サイトや SNS,そして自律 型ロボットへの搭載など,その応用範囲が広範化してい る.その一方で,人間性の理解やストレス対処にも寄与 する領域への適用など,なお質的な成長も遂げている. 人間の言語的・社会的な成長になぞらえてみると,会話 をする相手としての成長が進めば進むほど,このような 感情や人間性の理解が一層求められることは当然のこと と考えられる. 対話には,さまざまな情報の提供や,意思決定などの 目的の達成を意図したタスク指向型対話,および基本的 にいかなる制約も受けず自由なトピックを扱う雑談(非 タスク指向型対話)がある.特に感情表現,ユーモアな どの人間性に関わる表現が現れる頻度が高くなるのが雑 談である.駄洒落などのユーモア表現は,対話の一時点 のタスクやトピックと関連性が低い傾向にある.これに 着目すると,ユーモア表現の認識時,およびその認識後 の応答生成時に,特定の話題との関連の強さを重視すれ ば,雑談においてより高い人間性の感じられる応答を行 うことができるという仮説を立てることができる. 本研究では,小型人型ロボットに搭載された動作機能 付き音声対話システムにユーモアの生成・認識能力を獲 得させることを通して,この仮説の検証を試みている. 特定の話題との関連の強さの変化に伴うユーモアの発 現・認識確率の変化(話題適応)モデルを,話題を示す 概念と対話全体の意味類似度に二つの段階(状態)を設 定し,駄洒落への反応・生成に関して各状態に異なる確 率値を与える形で実装した. 実験では,雑談に加えて駄洒落の生成のみを行うシス テム,雑談に加え駄洒落の認識および反応のみを行うシ ステム,駄洒落に対し双方の動作を行うシステムの 3 種 類のシステムをロボット上に構築し,ロボットとの対話 を通して,これらの条件下での印象を 5 段階で被験者に 評価してもらい,話題適応の有無によるその平均値の差 を比較した.印象評価の対象項目は,対話の自然性,文 法的正確性,印象としての知識量,駄洒落認識反応の適 切さを含む 5 項目とした. 統計的な有意さは伴わないものの,認識を行う二つの 条件下での平均評価値の向上が認められた.すなわち, 駄洒落認識を行うシステムの場合では,話題適応あり条 件の評価がより高くなる傾向がある.これは,適切な駄 洒落認識を行っているという印象をロボットが得るため に,対話中の話題に適応することが必要となることを示 唆している. 今後はモデルの改良を通じ,多様なユーモアの理解可 能な人工知能の実現に向けた研究を進めていく予定であ る. ことば工学研究会:SIG-LSE-B601-3  2016 年 10 月 7 日

話題遷移に適応した駄酒落ユーモア統合型

対話システムの性能評価

谷津 元樹,荒木 健治

著 者 紹 介

谷津 元樹(正会員) 2010年北海道大学文学部人文科学科言語・文学コー ス卒業.2017 年同大学院情報科学研究科メディア ネットワーク専攻博士後期課程修了.博士(情報科 学).現在,青山学院大学理工学部情報テクノロジー 学科助手,自然言語処理,特に音声対話処理および ユーモア理解の研究に従事している.言語処理学会, IEEE Computer Society各会員.

荒木 健治(正会員) 1982年北海道大学工学部電子工学科卒業.1988 年 同大学院博士課程修了.工学博士.同年,北海学 園大学工学部電子情報工学科助手.1989 年同講師. 1991年同助教授.1998 年同教授.1998 年北海道大 学大学院工学研究科電子情報工学専攻助教授.2002 年同教授.現在同情報科学研究科メディアネット ワーク専攻教授.自然言語処理,特に,音声対話処 理,機械翻訳,ユーモア処理などの研究に従事.日本知能情報ファジィ 学会,電子情報通信学会,情報処理学会,言語処理学会,日本認知科学会, ACL,IEEE,AAAI 各会員.

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●授賞理由 本論文では,定型発達者を対象として自閉症者との コミュニケーションについて学習するシリアスゲームを 開発,提案している.具体的には,自閉症者が,会話中 の言外の意昧をくみ取れないことや汎化が困難という問 題に対して,自閉症者との会話における言外の意昧を含 む発言の話し方を学習するシリアスゲームを提案してい る.このようなコミュニケーションは,人同士で行うこ とは経験のない人には大変難しいことで,ゲーム感覚で 学習できるシステムは社会的にも重要である.今回は, 人間が学習するツールとして提案されているが,例えば, 自動対話などへのさらなる可能性も秘めていると思われ る.その意昧で,ことば工学の発展に有益であり,受賞 に値すると考える. ●アブストラクト 本研究は,定型発達者を対象とした自閉症者との言外 の意味を含むコミュニケーションを支援することが目的 である.定型発達者と自閉症者は会話が成立しにくいた め,対人関係において問題が生じやすい.言外の意味と は,言葉自体には明言されていない,その言葉に含まれ る意図やニュアンスのことである.自閉症者は,文脈把 握ができず言葉を字義どおりに受け取るため,言外の意 味をくみ取ることができない.また,自閉症者は汎化が 困難なため,仮に言外の意味を教示したとしても,話し 手や場所などが変化した場合,同様の会話でも意味をく み取ることが難しい.この問題の解決策として,定型発 達者が自閉症者に分かりやすい話し方を工夫することが 考えられる.そのため,本研究では定型発達者を対象と して自閉症者との言外の意味を含む対話の方法を学習す るシリアスゲームを考案した.ここでは自閉症者が言外 の意味をくみ取れない場面の事例を複数用いて,それを 擬似体験し,自閉症者がなぜ言外の意味をくみ取ること ができないのか,またどのようにすれば自閉症者に的確 に伝えることができるのかを学習することができる.具 体的には,プレーヤが小学校の先生という立場から,自 閉症児と定型発達児の会話を聞き,自閉症児が言外の意 味をくみ取ることができない様子を体験する.本システ ムでは,キャラクタに 3D モデルを用い,会話の内容に 則したジェスチャを表示させることで,会話内容を理解 しやすく表現した.そして,自閉症児にとって分かりや すい話し方をプレーヤに選択肢の中から選んでもらい, 選んだ答えの正誤判定を行う.その後,正誤判定を行っ た自閉症児と定型発達児の会話について,コミック会話 を参考にした図解表現を用いて,選択した話し方がなぜ 正しいまたは誤っているのかの解説を行う.本システム の有用性を検証するため,大学および短大生 56 名を対 象に評価実験を実施した.事前および事後テストの成績 並びに 5 段階評価と自由記述によるアンケートから評価 を行った.結果,事前テストの平均点は 78.57 点で,事 後テストは 98.21 点となり,約 20 点上昇した.また, 事前テストを全問正解できなかった定型発達者のうち, 91.30%が事後テストを全問正解した.よって,定型発 達者に対して自閉症者との言外の意味を含む対話につい ての学習効果が認められた.特に,言外の意味を含む対 話についての知識が乏しい人への学習効果が顕著であっ た.しかしながら,アンケート結果から,プレーヤの学 習意欲が保たれにくいという結果となったため,その改 善が今後の課題となった. ことば工学研究会:SIG-LSE-B603-2  2017 年 2 月 3 日

自閉症者との言外の意味を含む対話について

学習するシリアスゲームの研究

矢吹 渓悟,角  薫

「2016 年度研究会優秀賞受賞論文紹介」

著 者 紹 介

矢吹 渓悟(学生会員) 2017年公立はこだて未来大学システム情報科学部情 報アーキテクチャ学科卒業.現在,同大学院システ ム情報科学研究科システム情報科学専攻博士(前期) 課程在学中.定型発達者と自閉症者の語用障害にお けるコミュニケーション支援に従事.自閉症者の言 外の意味がくみ取れない特徴について,定型発達者 を対象に自閉症者との適切な話し方を支援するシス テムの開発および研究を行っている.情報処理学会学生会員. 角  薫(正会員) 東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博 士課程修了.博士(工学).郵政省通信総合研究所, 大阪大学産業科学研究所,情報通信研究機構,一橋 大学情報基盤センター准教授を経て,現在,公立は こだて未来大学教授.メディア情報学,インタラク ティブストーリーテリング,シリアスゲーム,アフェ クティブコンピューティング,説得技術などの研究 に従事.情報処理学会,日本認知科学会各会員.ACM Senior Member.

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●授賞理由 本論文は商品ごとの季節購買傾向を明らかにするた め,トピックモデルを使って,ID-POS データ分析をし, さらに,BN で購買の構造まで分析したというもの.特 に実用面での有用性が大きく「社会における AI」とい う研究会テーマの趣旨に即して選出されている.研究 面では,商品 ID に“月” 番号を割り振ることで,季節 商品のクラスタリングが効率的に実現できたとしてい る.さらにベイジアンネットワークを用い,購買に関わ る構造についても明らかにしている点に新規性・有用性 がある.また,特定のスーパーマーケット系列 150 店舗 3 500人,約 1 年分の実データを用いていることで,説 明力,実用性がある.発表時の質疑においても,複数の 企業から関心が寄せられ,一般投票時の高評につながっ た. ●アブストラクト 1.序論 本研究の目的は,スーパーの購買履歴である ID-POS データを用いて,各顧客の購買行動の時間軸上の変化を 捉える確率的モデリングと,その確率モデルを用いた購 買行動の変化の理解である.さらに季節変化や健康状態 の変化,家族構成の違いなどにより起こる購買行動や生 活の変化を再現可能な確率モデルを構築し,それを活用 した AI 技術の応用も本研究の目的である. 2.プロセス

POSデータとは,Point of Sales の略で,ある商品が 購入された時間や店舗を含むデータである.個々の顧 客を示す ID とひも付けられた ID-POS データの活用に よって,顧客を個人ごとに,来店時間や店舗,購入商品 を知ることができる.本研究では,通年の ID-POS デー タに対して,顧客を月別に分けて集計する前処理を行 い,時間軸上での月ごとの変化を pLSA(確率的潜在意 味解析,Probabilistic Latent Semantic Analysis)とベ イジアンネットワークによってモデル化する.これによ り ID-POS データから顧客おのおのの購買行動変化を潜 在クラスに分類し,さらに季節要因などの説明変数との 交互作用として計算モデル化することができた. 3.結果 本研究により,pLSA による月別・顧客別のクラスタ リングを行うことで,時間軸に従う購買行動について, 季節変化をする顧客としない顧客の,大きく分けて二つ の購買行動を潜在クラスとして抽出した.月間のクラス タの移動について,各顧客への購買行動の嗜好性に関す るアンケートデータとの関係性をベイジアンネットワー クによりモデル化することで,時間の変化に伴う健康や 家族構成などとの統計的な関係性を表現することがで き,このモデルを使った確率推論を実行できた. 4.考察 本研究の新規性として,購買行動について時間軸上 での変化のモデリングがあげられる.従来の研究はすべ ての期間のデータを一括で分析し,データが観測されて いる期間を通した購買行動の分析であったが,本研究に よって,時間の変化とともに,季節や顧客の生活背景が 変化することによる顧客別の購買行動の変化を捉えるこ とができた. さらに,購買行動の変化をもたらす要因を説明する ために,個別アンケート回答データと統合したモデル化 によりベイジアンネットワークによる確率推論を可能に した.関西で主に事業を展開している総合スーパーの 2008年からの 1 年分のデータを用いたが,購買行動の 変化をもたらすと推測できる要因を洗い出すことで,よ り長期的に,今後顧客おのおのの年齢が上がり,家族構 成や健康状態が変わった場合の変化についても予測をす ることが可能になる.本技術を用いることにより,サー ビスや業務効率などの仕事の質向上のための事業者の判 断を支援する,人と相互理解する AI 技術を実現するこ とができる. 5.今後の課題 本研究では時間軸によるモデリングを行ったが,時間 軸に加え,空間軸についてもアプローチを行うことで顧 客購買行動の理解とサービス向上を目指していきたい. 社会と AI 研究会:SIG-SAI-27-07  2016 年 11 月 11 日

POS データを用いた購買行動の季節変化の

分析と視覚化

原田 奈弥,山下 和也,本村 陽一

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著 者 紹 介

原田 奈弥(正会員) 株式会社豊田自動織機技術・開発本部 R&D 統括部 調査 G.産業技術総合研究所人工知能研究センター 確率モデリング研究チーム技術研修生.自社の将来 の基盤技術の一つとして,人工知能の技術習得と社 内展開を担当.技術研修では,縦・横断的ビッグデー タの実例として,ID-POS データの分析手法や実装 推進を研究.AI の普及推進のため,産業技術総合研 究所人工知能技術コンソーシアムにて,製造業 WG リーダーとしても活 動中. 山下 和也 産業技術総合研究所人工知能研究センター確率モデ リング研究チーム所属.次世代人工知能技術開発・ 社会応用に従事.幅広く実社会のニーズを聞き取り 解決しながら,共通の課題を見いだし広く社会に適 応・普及ができる仕組みづくりを目指す. 本村 陽一(正会員) 産業技術総合研究所人工知能研究センター首席研究 員,確率モデリング研究チーム長,東京工業大学特 定教授,統計数理研究所客員教授を兼務.博士(工 学).1993 年通産省工技院電子技術総合研究所入所 後,アムステルダム大学招聘研究員,産業技術総合 研究所サービス工学研究センター副研究センター 長,同人工知能研究センター副センター長を経て 2016年 4 月より現職.次世代人工知能技術開発・社会応用などに従事. 本学会理事,サービス学会理事,行動計量学会理事,人工知能技術コンソー シアム会長も歴任.

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●授賞理由 本論文では,時系列解析,深層学習,ウェーブレット 解析の三つを組み合わせることで,為替,株価,鉱工業 生産など,さまざまな時系列データに対して一定の予測 力を確保する予測モデルを開発した.大量の時系列デー タから目標とする変数の予想に役立つパターンを発見 し,いくつかの景況感を表すファクタを抽出する.その 結果,予測したい変数からなる多変量自己回帰モデルに 加えることで,予測精度を向上させることに成功し,実 務面への応用が可能である点が評価に値すると判断し た.研究会での参加者の反応も良く(推薦率:55.8%), 研究会優秀賞にふさわしい論文である. ●アブストラクト

1)時系列解析(Factor Augment Vector Auto Regression: FAVAR),2)深層学習(Long Short Term Memory: LSTM),3)ウェーブレット解析,の三つを組み合わせ ることで,株価などの時系列データに対して一定の予測 精度をもつ予測器を開発した. この予測器は,大量の時系列データから,目標とする 変数の予想に役立つパターンを発見し,有限個のファク タに集約する.具体的には,従来,主成分分析を用いて 推定されていた FAVAR のファクタ部分を,ニューラル ネット(LSTM)の隠れ層として表現することで,非線 形性を考慮したデータ集約化を行った.同予測器では, こうして推定されたファクタが,予測したい変数から なる多変量自己回帰モデル(Vector Auto Regression: VAR)に差し込まれる点で FAVAR と同じ構造となって いる.さらに,事前処理として,使用するデータをウェー ブレット変換によって複数の周波数帯域(時間解像度) に分解し,それぞれの帯域ごとのデータに対して,同予 測器の学習,並びに,外挿予想値の出力を行った.帯域 ごとの出力を事後的に合算して原データの予測値とす ることで,その精度を向上させることができた.具体的 には,257 変数× 127 か月の経済時系列データを用い, TOPIXなどを予想する外挿(Out-of-sample)テストを 行った結果,この予測器は単純な VAR による予測を上 回るパフォーマンスを示した. 同予測器は,市場や経済の「先を読む」ために,日々, 市場の値動きや GDP の値だけでなく,関連する大量の データをウォッチし,「相場感」や「景況感」(一種の ファクタ)を形成しているプロの市場参加者(フォー キャスタ)の知的作業を模したものともいえよう.もっ とも,こうした予測器による精度が,専門化されたプロ のフォーキャスタを上回るか否かなどはテストしておら ず,あくまでも,単純な VAR を超えたに過ぎない.通常, プロのフォーキャスタによる時系列データの予測は,理 論的・経験的に想定される因果関係や相関関係(先行指 標)に基づいて変数を選んだ回帰分析によって行われる. 他方,VAR のような時系列モデルは,データ自身の過 去の変動パターンを参照するより恣意性の低い予測方法 である.注意深く変数選択された回帰モデルであれば, その予測精度は関連データをすべて用いるような VAR よりも高くなり得る.つまり,どのような変数を選んで 回帰モデルを組むかがプロのフォーキャスタの経験に基 づく知見と工夫すべき点である. 同予測器では,こうしたプロによる変数選択を模した 情報集約アルゴリズムを用いることで,人手で変数を選 ぶことなく,シンプルな VAR モデルを上回る予測精度 を得ることに成功した. 金融情報学研究会:SIG-FIN-017-03  2016 年 10 月 5 日

深層学習とウェーブレットを用いた

多変量時系列予測器

塩野 剛志

著 者 紹 介

塩野 剛志(正会員) 2007年英国ヨーク大学経済学研究科において経済学 修士号を取得後,UBS 証券にて日本のマクロ経済分 析に従事.2009 年 7 月にエコノミストとしてクレ ディ・スイス証券に入社.日本経済の分析・予測業 務に加え,計量経済学的手法や先端的な AI 技術(深 層学習,自然言語処理など)を用いたデータ解析, マクロ経済シミュレーション,当社独自インデック スの開発などを担当.2006 年早稲田大学政治経済学部卒業.

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●授賞理由 本論文は,介護業務プロセスの知識共有を対象とし た現場主体の知識獲得手法について述べている.提案手 法は知識獲得を 2 段階に分け,1 段階目で共通的な業務 プロセス知識を構造化し,2 段階目で構造化された知識 をもとに現場主体の議論から現場固有の知識を外在化す る.外在化された知識は構造化された知識と関連付けて 可視化され,現場主体の議論を繰り返すことでさらなる 知識を獲得する.実際に介護施設の職員によって提案手 法を用いた知識獲得のワークショップを開催し,提案手 法の有効性が示されている.以上のように,今後の日本 が直面する社会的課題の一つである介護現場に対して, 学術的な面だけでなく現場主体で業務を改善するための 手法に取り組んでおり,その実用化によって多大な貢献 が期待できるため,受賞に値する. ●アブストラクト 高齢化の進展に伴い,日本の医療・介護コストは世界 に先駆けて増大しており,介護人材は不足している.こ のような現状のもとで,介護業務を支援する取組みの必 要性も増大している.業務支援方法の一つとして業務プ ロセスに関する知識の共有が考えられるが,介護業務は 現場ごとに多様性があるため,全国共通の介護業務プロ セスの把握と共有は難しい.さらに,時間とともに業務 が変化するため知識の更新も求められる. 本研究では,“知識発現”と呼ぶ現場主体で介護業務 プロセス知識を構造的に記述,更新できる方法論につい て検討している.本方法の特徴は,プロセス知識の共通 部分(以下,共通プロセス知識と呼ぶ)を基盤として, 現場固有のプロセス知識(以下,固有プロセス知識と呼 ぶ)を従業員が主体的に記述することにある.また,目 的指向の知識モデルを採用することで,単なる行為の羅 列を覚えるのではなく,行為の背景知識までを理解でき る知識を得ることができる. 知識発現方法のうち,共通プロセス知識に基づいて, 固有プロセス知識の素材となる情報を従業員から表出で きることを示した.具体的には,介護現場でワークショッ プを開き,共通プロセス知識に不足している業務プロセ ス知識を従業員同士の対話を通して記述させた.固有プ ロセス知識としての構造化は,著者ら研究者の手で行っ た.結果として,褥瘡予防のためのプロセス知識につい て,共通プロセス知識から 3 倍の知識量をもつ固有プ ロセス知識が得られた.ワークショップで得られた情報 をもとに,従業員が固有プロセス知識の構造化を実施し た内容を追加した論文が,本学会の論文誌に採択された [西村 17a] ので,詳細はそちらを参照してほしい. 結果として,現場主体でプロセス知識を構造的に記 述する方法である知識発現の概要を述べ,従業員が固有 プロセス知識を記述するための素材を自律的に記述でき ることを示した.本方法は介護現場の協力のもと生み出 されたものではあるが,その後の実践を通して,大学教 育分野や地域コミュニティの活性化支援などの他分野に 対しても適用できることが明らかになった [Nishimura 17b].

◇ 参 考 文 献 ◇

[西村 17a] 西村悟史,大谷 博,畠山直人,長谷部希恵子,福田賢一郎, 來村徳信,溝口理一郎,西村拓一:現場主体の“知識発現”方 法の提案,人工知能学会論文誌,Vol. 32, No. 4, pp. C-G95_1-15 (2017)

[Nishimura 17b] Nishimura, S., Fukuda, K. and Nishimura, T.: Knowledge explication: Current situation and future prospects, Proc. Workshop on Cognition and Artificial Intelligence for Human Centered Design 2017, pp. 1-6(2017)

知識・技術・技能の伝承支援研究会:SIG-KST-028-04  2016 年 7 月 28 日

現場ごとの多様な介護業務プ口セス知識の

獲得方法の検討

西村 悟史,大谷  博,畠山 直人,長谷部 希恵子,福田 賢一郎,來村 徳信,溝口 理一郎,

西村 拓一

「2016 年度研究会優秀賞受賞論文紹介」

著 者 紹 介

西村 悟史(正会員) 2015年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修 了.博士(工学).産業技術総合研究所特別研究員 を経て,2015 年より同人工知能研究センター研究員. 介護,教育など,業務プロセス知識の構造化と活用 の研究開発に従事.2011 年度本学会第 25 回全国大 会優秀賞インタラクティブ発表部門,2012 年度本学 会研究会優秀賞受賞.2015 ∼ 16 年度サービス科学 研究フレーム構築委員会委員.2016 年度より本学会編集委員.日本看護 科学学会,医療情報学会,サービス学会,機械学会各会員.

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にて航空計器の開発を経て,半導体生産システム事 業に取締役責任者として従事.2003 年株式会社サ ミュエル常務取締役就任.介護付き有料老人ホーム 「ヒルデモア」の運営に従事.2009 年退任後,医療 法人社団はなまる会理事(非常勤)就任.2010 年 株式会社ボンセジュールグラン代表取締役社長に就 任し,事業再生従事.同年,株式会社シティインデックスホスピタリティ 顧問に就任し,同じく事業再生に従事.2012 年 12 月医療法人社団はな まる会常務理事就任. 長谷部 希恵子 1987年私立駒沢学園女子高等学校卒業.2000 年よ り按摩指圧マッサージ師.2004 年株式会社アースサ ポート(在宅ヘルパ−),2006 年株式会社チームメ ディカル「宅老所ももちゃん」管理者を経て,2008 年より医療法人社団はなまる会「グループホームも もちゃん」管理者.按摩指圧マッサージ師,ヘルパー 2級,認知症介護実践者研修・認知症対応型サービ ス事業管理者研修修了,介護福祉士,キャラバン・メイト養成研修修了, 認知症介護実践リーダー研修修了,介護支援専門員,摂食・嚥下機能支 援推進事業リハビリチーム養成研修修了.世田谷区シニアボランティア 研修講師,世田谷区研修運営検討会委員(世田谷区グループホーム代表), せたがや介護の日実行委員. 畠山 直人 2004年法政大学卒業.同年,東京海上日動サミュエ ル株式会社(現 東京海上日動ベターライフ株式会社) 入社.介護付き高齢者住宅「ヒルデモアたまプラー ザ」勤務.2008 年介護福祉士取得,パーソンセンター ドケア,DCM 基礎ユーザー取得.2015 年より医療 法人社団はなまる会介護付き高齢者住宅「ひだまり ガーデン南町田」介護主任・生活相談主任. 福田 賢一郎 産業技術総合研究所人工知能研究センター所属.博 士(理学).2001 年東京大学大学院理学系研究科情 報科学専攻博士後期課程修了.2001 年学位取得. 2001年より現職.2015 年電子情報通信学会言語理 解とコミュニケーション研究会優秀研究賞受賞.専 門はサービス工学,テキストマイニング,オントロ ジー.サービスマネジメントの観点からハイコンタ クトなサービス産業・製造業における共創価値の創出支援,評価・分析 および社会実装の研究に従事. 修了.大阪大学産業科学研究所助手,准教授などを 経て,2015 年立命館大学情報理工学部教授.現在に 至る.博士(工学).2007 ∼ 08 年スタンフォード 大学客員准教授.知識工学,オントロジー工学,主 に物理的システムや人間の行為に関するそれらの研 究に従事.1996 年本学会設立 10 周年記念優秀論文 賞,2009 年日本機械学会設計工学・システム部門フロンティア業績表彰, 2012年度本学会論文賞などを受賞.2011 ∼ 12 年度本学会理事.情報処 理学会,日本機械学会,IAOA,ASME 各会員. 西村 拓一(正会員) 1992年東京大学大学院工学系研究科修士(計測工学) 課程修了.同年,NKK 株式会社入社.X 線,音響・ 振動制御関係の研究開発に従事.1995 年 RWCP に 出向,1998 年 NKK 株式会社復帰.2001 年産業技 術総合研究所サイバーアシスト研究センターに所 属,2005 年同情報技術研究部門実世界指向インタ ラクショングループ長,2009 年 NEC 出向,2011 年産業技術総合研究所サービス工学研究センターサービスプロセスモデ リング研究チーム長.2015 年同人工知能研究センターサービスインテリ ジェンス研究チーム長,現在に至る.博士(工学).サービス現場として, 介護・看護,健康増進,教育サービスにおけるコミュニティ支援,身体 動作計測分析などに興味をもつ.情報処理学会,サービス学会各会員. 溝口 理一郎(正会員) 1977年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修 了.大阪大学産業科学研究所助手,助教授,教授を 経て,2012 年 10 月より北陸先端科学技術大学院 大学サービスサイエンス研究センター特任教授.工 学博士.エキスパートシステム,知的学習支援シス テム,オントロジー工学の研究に従事.本学会編集 委員長,教育システム情報学会編集委員長,本学会 会長,Intl.AI in Education(IAIED)Soc.President,APC of AACE President,Semantic Web Science Assoc.Vice-President を歴任.現在, ACM TiiSの Associate エディタ.

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●授賞理由 当該研究は,企業内 Portal でのグローバルコミュニ ケーションの事例を対象として,世界的な組織横断型問 題解決に対し仮説を立て検証している.さまざまな文化 的背景をもつ委員会メンバ間で実際に行われたコミュニ ケーションを,依頼,参照,統合,確認,評価,理解な どのタイプに分類し,そのタイプの遷移のパターンを分 析して得られた知見は有用であると考える.グローバル 化する企業活動における知識移転の事例研究として有意 義であるため,研究会優秀賞として推薦する. ●アブストラクト

企 業 に お い て Portal や SNS(Social Networking Service)などの新しいディジタルプラットフォームが, コミュニケーションを活性化する手段として注目されて いる.特に最近のディジタル IT 変革を推進するグロー バル企業において,これらのコミュニケーション手段の 活用が顕著であり,知識共有や知識流通を促進しつつ問 題解決や意思決定を行うための手段として Portal が有 効となることも期待されている. 本稿では,先行研究(組織進化論,組織転換プロセス, 仲介知モデルなど)での提言に基づき,企業内 Portal におけるグローバルコミュニケーションの過程を解明す るために,まず企業内 Portal でのグローバルコミュニ ケーションプロセスに対する仮説を提案している.次に, あるグローバル企業内 Portal におけるコミュニケーショ ン事例に対して,この仮説の妥当性を確認している. 具体的には,グローバル企業内 Portal を用いた 30 人 が世界から参画するアーキテクチャ委員会活動を対象 に,グローバルコミュニケーションプロセスを分析して いる.特に仲介知モデル(社員が企業内のディジタルメ ディアで組織横断的に発信する断片的な知識を仲介知と 呼び,これに基づく知識流通モデルのこと)やグローバ ルコミュニケーションの構造の観点でも考察を実施し た.これにより,企業内 Portal によるグローバル論理 組織の壁,各国・各地域の場所の壁を超えた,グローバ ル組織横断的な問題解決がなされるグローバルコミュニ

ケーションプロセス(Global Communication Decision-making Process:GCDP)の存在を明らかにしている. また本研究では,企業内 Portal を活用したグローバ ルコミュニケーション活動の中で,特にディジタル IT 変革を Portal 上のコミュニティを通じて推進するとい う企業 Portal の在り方にも着目している.さらに,要 求マネジメントの成熟度向上の観点で「技術・事業変化 に応じて要求を最適化する」ために,アプリケーション ポートフォリオ分析の機能を Portal に含めるなどの施 策が今後有効であることも示唆している. 知識ネットワーク研究会:SIG-KSN-020-06  2017 年 3 月 11 日

企業内 Portal を活用したグローバル

コミュニケーション・プロセスについて

増田 佳正,山本 修一郎,白坂 成功

「2016 年度研究会優秀賞受賞論文紹介」

著 者 紹 介

増田 佳正(正会員) 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメン ト研究科博士課程に在籍し,現在武田薬品工業株式 会社に勤務(エンタープライズアーキテクチャ担 当).慶應義塾大学理工学部電気工学科卒業後,日 本アイ・ビー・エム株式会社に勤務(1991 ∼ 2013 年) 数多くのグローバル案件を担当,海外赴任(東欧ト ルコ,上海).2011 年 MIT Sloan School Executive

Education/MOTプログラム修了.2017 年カーネギーメロン大学大学院 オーストラリア校へ交換留学.ディジタル IT 時代に適する EA 手法の研 究などに従事. 山本 修一郎(正会員) 1979年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻博 士(前期)課程修了.同年,日本電信電話公社入社. 2002年株式会社 NTT データ技術開発本部副本部長. 2007年同社初代フェロー.2009 年名古屋大学情報 連携統括本部情報戦略室教授.2016 年同大学院情報 科学研究科教授.現在に至る.博士(工学).ソフ トウェア工学,知識創造デザインなどの研究に従事. 2001年情報処理学会業績賞,2002 年電子情報通信学会業績賞.IEEE, ACM,情報処理学会,電子情報通信学会各会員. 白坂 成功 1994年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了. 同年,三菱電機株式会社入社.宇宙システムの開発 に従事.2011 年慶應義塾大学大学院システムデザイ ン・マネジメント研究科博士後期課程修了.博士(シ ステムエンジニアリング学).2010 年より慶應義塾 大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 准教授.2017 年同教授.現在に至る.大規模システ ムなどの開発方法論の研究に従事.

参照

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