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大動脈壁合併切除を行った浸潤型胸腺腫の1例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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大動脈壁合併切除を行った

浸潤型胸腺腫の1例

山梨県立中央病院 外科 弘瀬雅教 三枝修 桜井裕幸 千葉聡 羽田真朗 千葉成宏 同 心臓外科 土屋幸治 佐々木啓明 斎藤聡 安原清光 病理科 小山敏雄 木村聖子

  はじめに

 胸腺腫は、浸潤性であっても悪性度の低い腫瘍であるため、正岡の臨床病期 分類皿,IVa期の症例に対しても、主病巣並びに播腫巣の可及的広範囲切除に 加え、放射線療法等の補助療法を併用することにより、長期生存が期待できる との報告がある。今回我々は、人工心肺を利用して、上行大動脈播腫巣の合併 切除をおこなった、浸潤型胸腺腫の一例を経験したので報告する。

  症例

 症 例:71歳,男性

 主 訴:喀疾及び咳噺

 既往歴:虫垂切除術(昭和18年〉  家族歴:特記すべきことはない。  現病歴:平成6年10月頃より、喀疾及び咳噺出現したため当院内科を受診。 胸部単純X線写真にて気管の右方変位認め、胸部CT施行したところ、前縦隔に 石灰化を伴う径5cm大の腫瘤が認められたため、平成7年2月3日手術目的にて 外科入院となる。  入院時現症:理学的所見に異常はなく、重症筋無力症の所見もなかった。 入院時検査では、アルカリホスファターゼの軽度の上昇以外に、異常所見は 認められなかった。

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 画像所見:胸部単純X線写真正面像では、気管の右方変位が認められ、 側面像では、前縦隔に異常な高吸収領域を認めた。(Fig 1)縦隔CTおよび MRI像で腫瘍は、径5cm大、上行大動脈の左前方で肺動脈の前方に位置しており、 CTではiso densityな部分とlow densityな部分からなり、中心部に石灰化を 認めた。MRIでは、T1強調像でiso、T2強調像でiso+high intensityな腫瘍とし て描出され、(Fig 2)上行大動脈前面には、径1cm程度の腫瘤も認められ、播腫 の可能性が示唆された。他のスライスでは、肺動脈及び心膜への浸潤が疑われ た。67Gaシンチグラムでは、上縦隔から中縦隔にかけてRIのび慢性な沈着 が認められた。 これらの結果より、胸腺腫、胸腺扁平上皮癌等を疑い、CT guide下にaspiratio nbiopsyを施行したが、cytologyの結果はclass Hで、リンパ球のみが検出され、 確定診断にはいたらなかった。しかし画像上、肺動脈への浸潤も強く疑われる ことから、心臓外科と共同で平成7年3月1日手術を施行した。 Fig 1:胸部単純X線写真 Fig 2;胸部CT,皿互写真  手術所見および手術術式:腫瘤は正中上部に存在し、7x6x5c皿大、心膜に 浸潤しその内腔に突出しており、左縦隔胸膜へも浸潤していたが、肺動脈 大動脈への直接浸潤は認めず、明らかなリンパ節転移もなかった。上行大動脈 一21一

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前面には、1x1.5cm大及び半米粒大の播種3個を認めた。(Fig3)手術は、最初に 拡大胸腺摘出術、心膜、胸膜の合併切除を行い次に、人工心肺使用下に大動脈 前壁を3.5x3. Ocm大の楕円形に切除し、Dacronにて裏打ちした心膜Patchを 縫着した。最後に人工心肺離脱前、心嚢内を検索すると、左心室側壁にも 二か所播種を認めたが、冠状動脈に近いため切除不能と判断し、手術を終了し た。手術中採取された心嚢液の細胞診では、赤血球,リンパ球,中皮細胞が認め られた。  摘出標本の肉眼所見:大きさは5x3.5x5cm大、灰白色調、充実性のTumorで あり、割面像では、一部necrosisによるものとおもわれるcysticな部分と、石 灰化を認めた。(Fig 4)  病理組織学的所見:組織学的にTumorは、上皮細胞成分とリンパ球成分が 混在し、分葉状結節状構造を示しており、上皮細胞が優位だった。(Fig 5) Tumor辺縁部は、繊維性被膜で覆われており、数箇所で被膜を越え心膜面に 露出していた。(Fig 6)また摘出した大動脈には、明らかな播腫巣が認められ、 浸潤型胸腺腫,組織型は混合型,病期は、正岡の分類にてWa期と診断した。  術後補助療法:放射線治療は、Tumorの存在していた部分を中心に12x12cm の照射野とし、前方一門にて行い、照射線量はTota137.5Gyだった。(Fig 7) 化学療法は施行せず、患者は、放射線治療終了後合併症の出現もなく、 平成7年5月1日退院となった。    考察  胸腺腫の予後を左右する重要因子として、病期(浸潤性増殖の有無),組織型, 切除根治度があげられる。諸家1)’2)’3)の報告によると、病期では胸腺腫全体 の10生率が60−75%であるのに比し、IVa期のそれは、0−35%と悪い。 組織型では、Masaoka 4),清水5)らは、上皮型の方が予後不良と報告しているが、 他の報告では、有意差を認めていない。手術根治度においては、完全切除で 10生率50−70%であるのに、試験開胸では、O−30%と低い値を示している。 IVa期胸腺腫の外科治療について検討した岡田3)らの報告によると、全摘は 部分切除,試験開胸とのあいだに、亜全摘は試験開胸とのあいだに統計学的 有意差を認めている。1982年より1995年の間に、当院で経験した全12例の胸腺

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腫においても試験開胸に終わった皿期の1例のみ死亡しており、これらを考慮 して考えると、主病巣並びに播腫巣の可及的広範囲切除を行うことによって、 手術根治度を高めることが長期生存につながり、そのためには、人工血管や人 工心肺の使用も不可欠だと考える。それでもIV期の進行浸潤性胸腺腫におい ては、試験開胸になる場合がある。このような症例に対して、術前化学療法 (CDDP, ADM, Me thy l predn i soloneの3剤併用)を導入することにより、手術適応 が拡大され予後が改善される可能性があるとの報告6)があり、当科にても、検 討していきたいと考えている。また、術後の再発において、放射線照射野外で の局所再発が見られることから、術後少量広範囲照射(広範囲照射の上限15Gy) を追加するほうがよいとの報告7)があり、本症例においては、これからの注意 深い経過観察が必要であると考える。    結語 胸膜・心膜への浸潤と、上行大動脈及び左心室への播種を認めたIVa期の胸腺 腫に対し、主病巣の切除と人工心肺を利用した播種巣の可及的広範囲切除を 行った1手術例を報告した。

  文献

1)家接健一,他:胸腺腫の外科治療胸部外科.46(1>:4,1993 2)有安哲哉,他:胸腺腫の治療方針と成績.胸部外科.46(1):21, 1993 3)岡田克典,他:IVa期胸腺腫の外科治療.胸部外科.46(1):36,1993 4)Masaoka A, Nagaoka Y e t a 1:Study on the ra t i o of lymphocytes to          epithelial cells in thymoma. Cancer 40:1222,1977 5)清水信義,他:胸腺腫の外科治療一血行再建例を含む一一.臨胸外3:424,

       1983

6)横井香平,他:進行浸潤性胸腺腫に対する化学療法を含めた集学的治療の        試み.胸部外科.46(1):26,1993 7>加勢田 静,他:浸潤型胸腺腫に対する少量広範囲照射の治療成績.         日胸外会誌37(5):216,1988 一23一

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Fig 3

Fig 4

Fig7

Fig6

参照

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