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軟骨前駆細胞におけるポリリン酸の作用

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Academic year: 2021

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【目的】 ポリリン酸(polyphosphate)は,リン酸が高 エネルギーリン酸結合で直鎖状に重合したリン酸 ポリマーで生体の多くの組織や細胞に存在する. ポリリン酸に関する研究は,細菌や酵母を用いた 研究から,adenosine triphosphate(ATP)を利 用して無機リン酸を基質としてポリリン酸を合成 する polyphosphate kinase やポリリン酸を分解 する polyphosphatase が同定されている.一方, 哺乳動物細胞を用いた研究では,ポリリン酸存在 下で線維芽細胞の増殖促進,骨芽細胞の細胞外基 質の石灰化および破骨細胞の分化抑制作用などが 明らかにされ,生体内の細胞増殖や骨形成過程に おけるポリリン酸の生理的役割は明らかにされつ つあるが,内軟骨性骨化におけるポリリン酸の作 用やポリリン酸の代謝機構は未だ明らかにされて いない. 本研究では,軟骨前駆細胞に対するポリリン酸 の作用を明らかにすることを目的として,マウス 軟骨前駆細胞株(ATDC5細胞)を用いて,in vi-tro 内軟骨性骨化モデルによる軟骨細胞形質の獲 得とポリリン酸代謝について検討した. 【実験方法】 1.細胞および培養方法:培養細胞としてマウス 軟骨前駆細胞株(ATDC5細胞)を用い,分化 誘導培地に,平均鎖長60のポリリン酸ナトリウ ムを1mM の終濃度で添加し培養した. 2.遺伝子発現の評価:軟骨分化マーカーの発現 は,Sox9,Agrrecan,TypeⅡcollagen,Type Ⅹcollgen,骨形成関連遺伝子の発現は,Osteo-pontin,Osteocalcin,リン代謝関連関連遺伝 子の発現は,Pit−1,ANK,ホスファターゼ関 連遺伝子の発現は ALP,ENPP1について, 各々の遺伝子特異的プライマーを用いた Real− timePCR 法で検討した. 3.蛋白発現の評価:骨形成関連蛋白の発現は, Osteopotin,リ ン 代 謝 関 連 蛋 白 の 発 現 は, ALP,Pit−1,ANK,ENPP1について,各々 の特異的抗体を用いた Western Blot 法で検討 した. 4.特殊染色:リン酸カルシウム生成の評価はア リザリンレッド S 染色を,軟骨基質の評価は アルシャンブルー染色を行った. 5.ポリリン産分解活性の測定:[32 P]標識長鎖 ポリリン酸と細胞抽出液を反応させ,混合溶液 を展開溶媒とした薄層クロマトグラフィーで検 討した. 【結果と考察】 1)ポリリン酸を添加して ATDC5細胞を培養 すると,コントロールに比べ Sox9と Aggre-can の発現が低いレベルで増加すること,さら に軟骨細胞分化初期に発現する TypeⅡcolla-gen と肥大化軟骨形質を獲得した後期に発現す る TypeⅩcollagen がともに抑制されることが

〔学位論文要旨〕

松本歯学38:168∼169,2012

軟骨前駆細胞におけるポリリン酸の作用

田 匡基

松本歯科大学 大学院歯学独立研究科 硬組織疾患制御再建学講座

Effect of inorganic polyphosphate on chondrogenic precursor cell

M

ASAKI

TAKADA

Department of Hard Tissue Research, Graduate School of Oral Medicine, Matsumoto Dental University

(2)

明らかとなった.また,骨関連マーカーの発現 を検討したところ,ポリリン酸を添加して培養 すると軟骨分化過程の初期から Osteopntin が 高発現し,成熟,肥大化軟骨に分化する過程で Osteocalcin 遺伝子が誘導されていた.この現 象は,ポリリン酸によって軟骨前駆細胞の軟骨 細胞分化は抑制されるものの,骨芽細胞形質を 早期に獲得し,基質の石灰化が亢進するものと 考えられた. 2)ポリリン酸存在下では Pit−1および ANK な どのリントランスポーターの発現が亢進したこ とから,ポリリン酸は,軟骨前駆細胞のリント ランスポーターの発現を上昇させ,石灰化が亢 進すると考えられた. 3)薄層クロマトグラフィーの結果では,ポリリ ン酸を添加して培養すると正リン酸,二リン 酸,三リン酸などの代謝産物の著明な増加がみ られ,ALP や ENPP1などのエキソホスファ ターゼのほかに,エンドポリフォススフェー ト・ホスファターゼ活性を示すとともにリント ランスポーターの発現が増加した. これらの結果から,ポリリン酸が軟骨細胞前駆 細胞から軟骨細胞への分化を抑制しながら骨芽細 胞形質を獲得させ,内軟骨性骨化の一次骨化を促 進する可能性が示唆された. 松本歯学 38 2012 169

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