病 院 図 書 室 17(4):141−144,1997
臨床に 役立つ 雑誌 ⑩
一臨床病理 −
石
原
明
徳
病理 は疾 病の 本態 、原 因を 究 明 する ことを 目的 と した 医学 の一 分野 であ り 、 研究対 象 に よ って 大 きく基 礎病 理と 臨床 病 理 に分 け るこ と がで きま す。 前者 は実 験 病理 と も呼 ば れ、 今 日で は遺 伝子 解析を 中 心 とし た 分子 病理 学 が 研究 の主 流 にな ってい ま す。 他方 臨 床病 理 は人体 病理 、診 断病 理 と もよば れ 、日 常の 臨 床 医学 に とって 重要 な診 療 部門 の ひとつ で す。 診 療を 円滑 に し、安 全 かつ 健全 な 医療を 保 証 し 、患 者生 命 の保全 の ため に大 切 な役 割を 果 たして い ます。 病理 診断 業 務 に は組織 診、 細 胞 診、 病理 解 剖、電 子顕 微鏡検 査 、免 疫組 織 化 学 検査 があり 、 具体的 に 光学 顕 微鏡 、電 子 顕 微鏡 あ るい は免 疫組 織化 学 など の技 法を 用 い て、 患者 か ら採取 さ れ た細 胞・ 組 織か ら得 られ る生 体情 報を もと に疾 病 の診 断、 治 療法 の選択 の指 針、 お よび 治療 の 効果 判定 など を 行な いま す。 従って 臨 床各 科 の広 範な 疾 病に つ いて 臨床 経 過、 治療 法、 予 後、 検 査法 の意 義 につ いて 理 解して お く こと が要 求さ れ 、病 理以 外の 専門 誌に も目を 通 し 、日 進月 歩 の医 学 的知 識を 吸 収して お く こと が大 切で す。 臨床 検 査診 断の 広範 な 分野 の紹 介 は、 紙面 の制 限があ るため 割愛 させ て い ただ き、 ここ で は病理 検査 に関 連す る 雑誌 につ いて 紹 介す るこ とに し ます。 3。 病理 診断 に 関連 する 雑誌 病 理一 般 雑誌 のう ち、 日常 の 病理診 断 に役 立 つ 雑 誌 と し て は 「American Journal of Surgical Pathology」「Human Pathology」 − 141−臨床病理 に関連する雑誌 について
1. はじ め に 最 近の 遺 伝子 、 分子生 物学を 中心 と す る医 学・ 生物 学 の発 展 はめざ まし く、 日 々膨大 な 量 の 情報 が 蓄積 さ れつつ あり ます。 こ の中 に は診断 や 治療 に 応用で き る成 果が着 実 に みら れ ま す 。 臨 床 応 用可 能 な 成果 を 患 者 さ ん に とっ て利 益 にな るよ う に還元 する のが わ れわ れ臨 床医 の 役目 です 。 新 しい 医学 的 知識 や研 究成 果を 知 る手段 の 主 な もの は学 会 へ の参加 と医 学雑 誌で あり ま しょ う。 し か し、忙 しい 臨床 の現 場で は学 会 への 参加 は ま まな らず、 お のずと 医学 雑誌 が 情 報 源と して 重 要 にな って きます。 市 中病 院 に勤 務す る病 理 医 として ど のよう に情 報を 入 手 し てい る かを 述 べて みま す。 2. 臨床 病理 と は 臨 床病 理 とい う用 語 は、漠 然と 分か って は いて も、 内容 を 理 解で きてい ない 人が い るの で は な いで し ょ う か 。 臨床 病理 (Clinical pathology)は、 血液 検 査を はじめ 臨床 化学 、 免疫 ・血 清 検査 、微 生物 検 査、遺 伝子 検 査、 そし て病 理 検査 などを 包 括 した検 査医 学 の総 称 と し て 用 い ら れ る 場 合 があ り 、 臨 床 検 査 (Clinicallaboratory) と もい われて い ます。 一方 、 臨床 検 査 の1分 野で あ る病理 検 査を 臨 床病 理 と呼 ぶ 場合 があ り ます。 こ れは基 礎 病 理 に対 す る言 葉と して 用い ら れ臨床 に 役立 つ 病理 を 意味 し てい ます。 い し は ら あ き の り : 松 阪 中 央 総 合 病 院 診 療 部 長「Histopathology」 が あ り ま す 。 病 理 形 態 学 的 診 断 を 中 心 に 、 免 疫 組 織 化 学 、 超 微 形 態 所 見 、 臨 床 経 過 、 予 後 な ど が 詳 し く 報 告 さ れ て お り 、 病 理 医 で あ れ ば 必 ず と い っ て も い い ほ い ど 目 を 通 す 雑 誌 で す 。「Virchows Archiv」 も 同 系 の 雑 誌 で 、 免 疫 組 織 化 学 に つ い て の デ ー タ が 多 く 掲 載 さ れ て い ま す 。「American Journal of Clinical Pathology」 は 病 理 を は じ め 臨 床 化 学 、 血 液 学 、 感 染 症 な ど 臨 床 検 査 全 般 に つ い て の 論 文 が 掲 載 さ れ て い て 広 義 の 臨 床 病 理 の 内 容 を も っ た 雑 誌 で す 。 臨 床 検 査 の 測 定 方 法 や デ ー タ の 解 釈 の し か た な ど 、 日 々 の 診 療 に 役 立 つ 内 容 の も の が 多 い 。 日 本 病 理 学 会 の 機 関 誌 「Pathologylnternational」 に も 病 理 診 断 に 関 す る 報 告 が 増 え て き ま し た 。 和 雑 誌 で は 「 病 理 と 臨 床 」 を 最 も活 用 し て い ま す 。 臨 床 の た め の 病 理 を 意 識 し た 数 少 な い 和 雑 誌 の 一 つ で 、 内 容 も 充 実 し て い ま す 。 各 号 に 特 集 記 事 が 編 集 さ れ 、 テ ー マ ご と に 整 理 さ れ て い る の で 、 後 の 文 献 検 索 に 便 利 で す。 各 地 で 活 躍 し て い る 一 人 病 理 医 の 紹 介 や 、 病 理 医 間 の 意 見 交 換 の コ ー ナ ー も あ り 楽 し め ま す 。「 病 院 病 理 」 は 日 本 病 理 医 協 会 が 交 見 会 で 検 討 し た 症 例 を 短 報 形 式 で 収 録 し た も の で あ り 、 討 論 内 容 を 含 め た 記 載 が な さ れ て い ま す 。 そ の 他 、「American Journal Pathology」 「Laboratory Investigation」 は 細 胞 生 物 学 や 分 子 生 物 学 に 関 す る レ ベ ル の 高 い 研 究 論 文 が 多 く 掲 載 さ れ て い ま す 。 腫 瘍 を 専 門 に 扱 っ た 雑 誌 に は 、「Cancer 」 が あ り ま す 。 原 著 論 文 や 症 例 報 告 は 病 理 診 断 に 大 変 参 考 に な り ま す 。「Cancer Research」 は 、 ベ ー シ ッ ク な 研 究 論 文 が 大 半 で 、 臨 床 に 直 結 し た 論 文 は 姉 妹 本 の 「Clinical Cancer Research」 に 、 ま と め ら れ て い ま す 。「British Journal Cancer」 「InternationalJournal Cancer」 も 分 子 生 物 学 に 関 す る 論 文 が ほ と ん ど で す 。「Japanese Journal of Cancer Research」 に は 病 理 診 断 に 参 考 と な る も の も あ り ま す が 、 ど ち ら か と い う と 研 究 が 主 体 の も の で す 。 和 雑 誌 の 「 癌 の 臨 床 」「 乳 癌 の 臨 床 」 に は 症 例 報 告 が 多 い の で 、 症 例 を チ ェ ッ 142 病 院 図 書 室 Vol.17 Na4,1997 クして お きま す。 細胞 診 は婦 人科 、呼 吸 器、泌 尿 器な ど の剥 離 細胞 診が 対 象で あり ま したが 、 近年 は、 細 い 針を 用 いた 穿刺 吸引 細胞 診を 積 極的 に 行な う よう にな り 、 ほとん ど の臓 器の 細胞 診が 可 能 とな り 診断 精度 も向 上 してい ま す。 患者 の 身 体的 負 担が 少な く安 全 でし か も安 価 な 検査 法 と して 普及 して い ます。 和 雑誌 で は 「日本 臨 床 細 胞 学 会 雑誌 」、 欧文 で は 「Diagnostic Cytopathology」 「Cytopathology」 「Acta Cytologica」があ り ます 。い ず れ も総 説 や症 例報 告を 主 とし て構 成さ れて い ます。 か つて 「Cancer」 に掲 載さ れて い た細胞 診 の論 文 は 「Cancer;Cytopathology」 に分冊 (Vo1.81よ り ) さ れ、 大変 便利 にな り ました 。穿 刺 吸引 細胞 診を 中 心と した 総説 論文 が 掲載 さ れて い ま す。 電 子顕 微鏡 検査 は、 細胞 組織 の微 細 構造を 観察 す るこ と によ って 、病理 診断 を より 正 確 に する 補助 検 査と して 実施 され ます。 専門 誌 とし て 、「 Ultrastructural Pathology 」 「 Journal of Electron Microscopy 」と 。 「Medical Electron Microscopy 」 があ り ま す。「Journal of Ultrastructure 」 は研 究 論文 が主 流 で す。 免疫 組織 化学 検 査は 抗原 一抗 体反 応を 利 用 して 組 織、 細胞 、 細胞 膜な どに 存在 す る抗 原 を 目 に みえ る形 で 検出 す る もので す 。 診断 精 度を 上げ る補助 手 段と して 、 またよ り 決め の 細 かい 病理 診断 を可 能 とし 、病 態の 理 解度を 高 める 検 査法 とし て普 及し てい ます。 免疫 組 織化 学 、細 胞化 学 のみを 扱 った 専門 誌 は見当 たり ま せん 。病 理 や腫 瘍関 連 雑誌の 総 説や 特 集 記事 で報 告さ れ てい る ものを 参考 に して 、 整 理 し て い き ま す。「 Cancer 」「American Journal 0f Surgical Pathology 」「 Human Pathology 」「Histopathology 」「Virchows Archiv」、「病 理と 臨床 」な ど に多 く 掲 載さ れ て いま す。 4。 病 理診 断 に直 接関 連し ない 雑誌 病理 関連 以 外の 雑誌 に目を 通 し、 情 報の 網
病 院 図 書 室 Vol.17 Na4,1997 を 張り 巡 らす こ とが 病理 医 には必 要で す。 「 Lancet 」「 NewEngland Journal of Medicine」 の一 流誌 は 欠か せ ませ ん。「医 学 のあ ゆ み」の メデ ィカ ルト ピッ ク スは要領 よ く ま と め ら れ て い ま す し 、「 内 科 」「 日 本 臨 床 」「最 新 医 学 」 な どの 和 雑 誌 の特 集 に は目 を 通 して いま す。 ま た、 病理 医 と 臨床医 の接 点と な るのが 、 CPC (Clinicopathological conferance 臨 床 病理 検 討) で す。 症 例の 臨床症 状、 検 査所 見 の 解釈 、治 療 法 の適否 、病 理所 見を 検討 し、 疾 患を 総 合的 に 理 解す ると と もに 反省 し、 診 療の 質の 向上 に 欠 かせな い ものの ひと つで す。 「NewEngland Journal of Medicine」や 、 「American Journal of Medicine」に 掲載 さ れ て い る CPCは各 科 の 専 門 医 に よ る デ ィ ス カッ ショ ンの 内 容、 病理 診断 に至 る検 査値 の 解 釈や 考え 方 は 病理 医に と って大変 勉強に な り ます。 また テ ーマ とな っ た疾患 の最 先端 の 考 え方を 知 る こ とがで きます。 病理 は形 態 学 的診 断を 基本 として お り、 形 態 に関 す る情 報を 必 要と す るの は当 然で あ り ま す が 、 観 察 す る 標 本 の 善 し 悪 し( 出 来 具 合 )が とて も大 切で す。生 体 から 得 られ た細 胞 ・組 織を そ の まま 顕 微鏡で 観察 す るわけ に はい きませ ん 。 標本を 固 定し 、薄 切し 、染 色 して はじ めて 観 察で きま す。 病理 標本 の作 成 に はヒ ト の手 作業 に 頼る 部 分がま だ残 って お り、 作 成過 程 の 技術 がま ずい と診断 不 可能 と な った り、 判 定 ミスや誤診 の 原因 にな りま す。 す なわ ち 標本 作成 技 術と その 精度管 理 が重 要 な ので す。 技 術 や精 度管 理、 精度 保証を 専 門 的 に扱 っ た雑 誌は見当 たり ませんが 「Medical Technology 」「臨 床 検査 」「病 理 と 臨床 」 に 技術 講 座と し て シ リーズで 掲 載さ れて いま す。 将来 、技 術 革 新 にと もな って 新しい 手 技、 工 夫 や検 査 法が 開発さ れ ると予 想さ れ 、 標本を 作 成す る臨 床 検査技 師 の技術 の向 上 に欠 か せ な い情 報で あ ると と もに、 われ われ 検査 に 携 わる医 師 にと って も大変 参考 にな り ます 。近 年 医療 の 質が問 わ れる よう になり 、 かつ てあ ま り重 要 視さ れてい な かっ た病 院で 実施 さ れ る 検 査の 精度 管理や 精 度保証 が クロ ー ズア ッ プ さ れて きて いま す。米 国 など と比 較 して こ の 分野 の立 ち遅 れ が目 立って おり 、 関連 記 事 の 充実 が望 ま れます 。 5。 お わ り に 病 理医 の仕 事の うち 、半 分 は読書 に時 間を 割 いて い ると 言って い いで しょ う。 そ れで も す べて の 雑誌 に目を 通 すこ とは物 理 的 に不可 能で あ り ます。 お びた だし い情 報を い かに 効 率 よ く整理 し 、迅速 に 間違 いの ない 知 識を 取 得 して い くか は、 臨床 医に とって 共 通し た 悩 みで す。 現在 、文献 の 検索 は、MEDLINE や 医 学 中央 雑誌CD−ROM版を 利用 して いて 、 かつて のIndex Medicus と医 学中央 雑誌 を 使 って の 手 作業 の ころ に比 べれ ば随 分楽 に なり まし た。 し かし こ の検索 手段 も今や イ ンタ ーネ ット に 取 って 変 わろ うと して いま す。 幸い イ ン ター ネ ッ トの導 入 にか かる 経済的 負 担 は軽 くなり 個 人で も支 払 いう る金 額に なって きま した。 イ ンタ ーネ ットによ る 情報 収集 がど の 程度 ま で 発達 す るの か想 像 もつ きませ んが 、 病院図 書 館 の必要 性 がな くな るこ と はない で しょ う。 子 供 のころ 、待 ち 佗び た新 刊雑 誌を 手 にす る 時 の新 鮮さ と その喜 びを 無 くし た くは ない も ので す。 イ ンタ ーネ ットが 病院 に導 入 され る 日を 待 ち わび なが ら、 診療 の合 間 に少 しで も 図 書館 に足 を 運ぶよ う ここ ろか けて い ます。 最後 に、 恒 例に 従 って臨 床病 理関 連 雑誌 の Impactfactorを 記し てお き ます。 143−
1 。 2 . 3 . 4 . 5 . 6 . 7 . 8 . 9 . 10 . 1 1. 12 . 13 . 14 . 15 . 16 . 17 . 病 院 図 書 室 Vol.17 Na4,1997 表 臨床 病 理関 連 雑誌 のImpact Factor(1996) Impact Factor Immediate 8.958 7.246 4.640 4.424 Cancer Research American Journal Pathology Laboratory Investigation Journal Pathology American Journal Surgical Pathology British Journal Cancer Human Pathology International Journal Cancer Cancer Clinical Cancer Research American Journal Clinical Pathology Japanese Journal Cancer Research Histopathology Virchows Archiv Cytopathology Ultrastructural Pathology Diagnostic Cytopathology 3.797 3.666 3.659 3.534 3.296 3.162 2.522 1.839 1.734 1.718 1.063 0.930 0.903 Index 0.982 0.781 0.492 0.370 0.418 0.293 0.265 0.344 0.368 0.550 0.397 0.000 0.278 0.041 0.137 0.030 0.074 出 典 「Jounal Citation ReportR ’1996」 144−