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PAGE 1 of 20 ◇ KDDI総研R&A 2009年4月号

「作品『で』楽しむ」コンテンツ創作の厚み

執筆者

芝浦工業大学 システム理工学部 准教授 小山 友介

ž 記事のポイント サマリー マンガ、アニメに代表される日本のコンテンツが世界を席巻しているのは周知のこと だが、そのクリエイティビティはどこからやってくるのか? そして、彼らの作品が生み出され続ける源泉はどのようなものなのだろうか? そうした問題意識を抱きつつ、マンガ出版社、コンテンツ政策立案者、内外の研究者 など幅広く取材を重ねながら、「仕組み」の理解を進めてきた(*)。本稿では、その 一部である、「スキルの獲得」をテーマに行ったアンケート調査の集計結果を報告す る。 具体的には、「創作している人の割合」「創作に必要な技術の習得」について調査し た。筆者の主観も入るが、思いのほか創作し続けている人が多い。そして、特に教育 を受けることなく好きに書いていること、せいぜい近しい人に見せる程度で書くこと 自体が楽しみであること、が数字の上から明らかとなった。 つまり、「作品『で』楽しむ」膨大な書き手の存在、すなわち「参加」の土壌こそが 日本のコンテンツ産業におけるひとつの支点となっていると考えられるのである。 なお、上記(*)の研究成果は『コンテンツ産業の深層構造(仮題)』(出口弘、田中 秀幸編著、東京大学出版会)として今秋出版を予定している。 主な登場者 コミックマーケット キーワード コンテンツ産業 アンケート調査 マンガ アニメ イラスト ゲーム 映像

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PAGE 2 of 20 はじめに 近年、マンガ・アニメ・ゲーム等の「コンテンツ産業」が注目を集めている。著 者は日本のコンテンツ産業の強みが、「創作者の裾野が広く、分厚いこと」にあると 考えている。次世代の創作者予備軍が多数いるため、次々と作品が産み出されるの である。いわゆるプロフェッショナル(=創作した作品を商業流通で販売すること を主たる収入源とする人たち)でない、同人創作者たちの集まりとして、同人誌即 売会であるコミックマーケット(コミケ)が代表的である。コミックマーケットは 毎年2回行われるが、毎回3万サークルが参加している。しかも、スペースの上限の 関係で、約3分の1のサークルが毎回抽選で落ちている。日本全体では相当な数の創 作者予備軍がいることがわかるだろう。 しかし、こういった創作活動を行っている人がどれぐらいの比率で存在するのか、 創作活動のための技術をどうやって修得したのかについてのデータは存在しない。 唯一参考となるのは、社会経済生産性本部が毎年発行している『レジャー白書』に ある、「文芸の創作(小説・詩・和歌・俳句など)」という項目である(図1)。これ を見ると、年によって数字に変化があるが、20代以下の若い年代では数%∼20%程 度の人が年に1回以上文芸の創作を行っている。 女性 10 代 男性 10 代 女性 20 代 男性 20 代 (出典:社会経済生産性本部「レジャー白書2004年版」) 図1 「文芸の創作(小説・詩・和歌・俳句など)」の推移 今回は、日本のコンテンツ産業に関連する、イラスト・マンガ・小説を中心に、 創作活動を行っている比率を調査した。

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PAGE 3 of 20 1 調査概要 本調査の関心は、大きく言うと次の2点である: 1)イラスト・マンガ・小説などを、定期的に創作している人の割合はどれぐらいか。 2)創作活動を行っている人は、創作に必要な技術をどうやって修得したのか。 創作活動を行っている人の割合はそれほど高くないと思われる。そのため、単純 な集計を行っただけでは、2)の分析をする際には多くのサンプルが無駄(=創作活 動をしていないサンプル)となってしまう。そのため、今回の調査では下に示す2 段階の調査を行った。 該当者抽出 【第 2 次調査】 イラスト・マンガ小説を定期的に描く 1236 サンプル 男女、20 代・30 代 40 代以上各 206 (株)マクロミルに Web 調査依頼 約 44000 サンプルに調査 【第 1 次調査】 10000 サンプル 全体的な傾向の把握に利用 人口比調整 調査の枠組み まず、調査候補者のサンプリングを目的とした予備調査として、20代・30代・40 代の男女それぞれに、創造活動に関する質問を行った。質問を行ったサンプル数は 44000サンプルに及ぶ。このサンプルから、年齢階層・性別で人数調整した10000 サンプルを「第1次調査データ」として分析に用いる。また、同じサンプルからイラ スト・マンガ・小説のうち定期的に描いていると回答した質問が1つでもあるサンプ ルから、20代・30代・40代の男女それぞれ206サンプル、合計1236サンプルを集め た。 なお、調査は、(株)マクロミル社のwebアンケートモニターを対象に、第1次調 査(2008年12月1日∼2008年12月2日)、第2次調査(2008年12月8日∼2008年12月9 日)の日程で行われた。

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PAGE 4 of 20 2 第1次調査の結果 2−1 第1次調査データのプロフィール 第1次調査データのプロフィールは表1・表2の通りである。年齢・性別は男女共に 30代が若干多いものの、大まかに6等分されているといっていいだろう。居住地に関 しては首都圏を含む関東エリアの比率がかなり高い。職業では、パート・アルバイ トや学生サンプルといった、自由な時間がとりやすい層がやや多いという、インタ ーネット調査特有の傾向が存在しているが(労働政策研究・研修機構2005)、調査 結果に大きな影響を与えるものではないと考える。 男性20代, 1589, 16% 男性30代, 1875, 19% 男性40代, 1600, 16% 女性20代, 1525, 15% 女性30代, 1829, 18% 女性40代, 1582, 16% 図2 性別・年代別の分布 北海道 5% 東北地方 5% 関東地方 42% 中部地方 16% 近畿地方 17% 中国地方 5% 九州地方 8% 四国地方 2% 図3 居住地別の分布

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PAGE 5 of 20 公務員 4% 会社員(技術 系) 16% 会社員(その 他) 12% 専業主婦 19% パート 0% アルバイト 11% 学生 7% その他 6% 経営者・役員1% 会社員(事務 系) 17% 自営業 5% 自由業 2% 図4 職業別の分布 2−2 創作者のサマリー 26.6 34.0 22.0 23.1 21.5 13.6 28.5 18.4 21.2 17.3 9.1 30.0 20.2 15.8 16.9 43.1 46.2 32.1 9.0 13.2 21.9 35.1 22.4 5.6 7.0 15.2 36.5 24.3 4.1 7.1 0 50 100 150 200 250 イラスト マンガ 小説 ゲーム 映像 男性 20代 男性 30代 男性 40代 女性 20代 女性 30代 女性 40代 (注:各年代のコンテンツ創作の経験率を積み上げたもの。ただし、「イラスト」は「定 期的に描く」を集計したもので、他は「描いた(書いた、作った、撮った)」を全て足 し込んだもの。なお、6つの年代の経験率を積み上げたものなので、最大では600%とな る) 図5 性年代別のコンテンツ創作の状況

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PAGE 6 of 20 図5は、イラスト、マンガ、小説、ゲーム、映像の各コンテンツの創作経験を積み 上げたグラフである。これを見ると、マンガ、小説が各年代とも平均して経験率が 高いことがわかる、それに較べると、ゲームや映像は創作のための技術の習得が必 要であったり、また、機材や装置が比較的効果であったりするため、経験率は低く なっている。 各コンテンツの創作の詳細について次節にて説明する。 2−3 クロス集計結果 第1次調査では、イラスト・マンガ・小説の3つに加え、ゲーム制作・映像作品制 作の経験も質問した。この5種類の傾向について、主に性別×年齢階層別のクロス集 計の結果を紹介する。 2−3−1 イラスト 図6にイラストを定期的に描くと回答した割合を示す。既存キャラとは既存のマン ガやアニメなどに登場するキャラクター(人間や動物など)のイラストをさす。オ リジナルキャラとは参考とする対象の存在しないキャラクター(人間や動物など) のイラストを指す。 6.3 8.1 6.9 8.6 8.9 9.1 4.7 3.6 4.6 4.3 3.1 2.4 10.4 17.9 14.8 6.3 8.5 7.2 4.6 6.6 4.1 0 5 10 15 20 風景 オリジナルキャラ 既存キャラ 全体 男性_20代 男性_30代 男性_40代 女性_20代 女性_30代 女性_40代 図6 イラストを継続的に描く人の割合 3つすべてで10%超と、女性20代が他と比べて圧倒的に高い。だが、それ以外の 項目でも、男性40代を除くと5%程度の人が現在継続的にイラストを描いている。

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PAGE 7 of 20 2−3−2 マンガ 図7は、マンガを描いている人の割合を示している。現在定期的に描いている人は、 全体で2.6%、最も多い女性20代でも5.1%であり、イラストと比べると少ない。だ が、イラストとは異なり、コマ割や話の構成も考える必要があるマンガをこれだけ の人が描いているのは驚きである。過去の経験者)(脚注)を含めると、どの世代も10% を超している。 2.6 3.7 1.9 1.2 2.0 2.2 11.6 10.6 8.9 9.7 15.8 13.9 11.0 20.6 19.8 17.7 19.1 25.2 19.2 23.3 5.1 0 10 20 30 40 50 全体 男性_20代 男性_30代 男性_40代 女性_20代 女性_30代 女性_40代 現在、定期的にマンガを描いている 過去に描いていた 模写経験のみ 図7 マンガを描く人の割合 2−3−3 小説 図8は、小説を書いている人の割合である。現在でも定期的に書いていると答えた 人は、全体では4.7%、女性20代で9.9%となっている。過去に書いていた比率ではマ ンガよりはるかに高く、イラストより若干少ない程度である。 )(脚注) このアンケート項目における「過去の経験者」とは、中学生以降に描いた経験を 問うている。小学生以前まで含めてしまうと、ほとんどの人が描いたことがあるのでは ないかと考えたからである。

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PAGE 8 of 20 4.7 6.2 3.0 2.6 9.9 4.0 3.1 18.3 15.9 15.4 17.6 22.2 18.3 21.2 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 全体 男性_20代 男性_30代 男性_40代 女性_20代 女性_30代 女性_40代 現在、定期的に書いている 中学生以降に書いたことがあるが、現在は書いていない 図8 小説を書く人の割合 2−3−4 ゲーム 図9は、ゲーム製作の割合である。 1.3 3.1 1.4 0.5 1.4 0.9 0.3 11.9 19.9 19.8 15.3 7.6 4.6 3.9 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 全体 男性_20代 男性_30代 男性_40代 女性_20代 女性_30代 女性_40代 現在、定期的にゲームを制作している 過去に制作したことがあるが、現在は制作していない 図9 ゲームを制作している人の割合 イラスト・マンガ・アニメと異なるのは、男性の方が創作者の比率が高いことで ある。理由としては、以下の2点が挙げられるだろう。

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PAGE 9 of 20 1)これまでの3種類のコンテンツと異なり、ゲームで遊ぶ人の割合が男性に偏って いる(大まかに2対1かそれ以上)。 2)プログラミングや画像処理などの技術的スキルを要する作業が多く、その技術を 持つ人に男性が多い。 2−3−5 映像作品 図10に、映像作品(YouTubeやニコニコ動画などのムービーなど)の制作者割合 を示す。女性で一番制作者比率が高い20代でも男性で最も低い40代より制作者比率 が低い。映像作品の制作は、ゲーム以上に男性優位であることがわかる。また、全 般的に制作者の割合はゲームより高い。 2.3 5.0 3.5 2.3 1.7 1.0 0.4 11.5 16.5 13.9 14.6 11.5 6.0 6.7 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 全体 男性_20代 男性_30代 男性_40代 女性_20代 女性_30代 女性_40代 現在、定期的に映像作品を制作している 過去に制作したことがあるが、現在は制作していない 図10 映像作品を制作している人の割合 2−4 創作活動を行っているジャンル数 図11、図12は、現在継続的に創作活動を行っているジャンル数と過去に少しでも 創作活動を行ったことがある(回答が「全くなし」以外だった数)ジャンル数の分 布である。現在、1つ以上創作活動を継続的に行っている人の比率は最も高い20代女 性では20%を超え、最も低い40代男性でも10%程度存在する。複数のジャンルで現 在定期的に創作している人の割合は、20代男性で約6%、女性で約9%となる。

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PAGE 10 of 20 また、過去に1つでも創作経験がある人の割合だと、すべての階層で50%を超える。 複数のジャンルを創作したことがある人も、すべての階層で30%を超える。 (注:1%以下のところは数値を省略) 図11 現在創作しているジャンル数 図12 過去に創作していたジャンル数

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PAGE 11 of 20 2−5 第1次調査まとめ ここまでの結果は、次の通りである: 1.過去に何らかのジャンルのコンテンツを創作した経験がある人は過半数である。 また、現在、継続的にコンテンツを創作している人は20代では20%程度存在する。 2.イラスト・マンガ・小説では女性の方が創作活動をしている比率が高く、ゲーム と映像制作では男性の方が創作活動をしている比率が高い。 日本の創作経験者・現在創作者の割合が高いのかどうかは国際比較を行う必要が あるが、第1次調査の結果は、データを集めた筆者にも驚くべきものだった。この潜 在的な創作者の層の厚みが、日本のコンテンツ産業の競争力に影響を与えているの では、という仮説に強い示唆を与えるものであった。また、「実際に創作活動をした ことがあるか」によって、作品への批評眼が変化する可能性がある。日本から海外 に通用する優れた作品が多数出るのも、制作者の観点を持つ厳しい批評眼が影響を 与えている可能性があるだろう。 3 第2次調査の結果 3−1 第2次調査のプロフィール 第2次調査のデータは、第1次調査と同じデータプールから、イラスト・マンガ・ 小説のうち少なくとも1つ)(脚注)の項目で「定期的に制作している」と回答した回答 者を、20代・30代・40代の男女それぞれ206サンプルずつサンプリングしたもので ある。 第2次調査データの現在創作中のジャンル別人数は図13の通りである。以後 の、ジャンル別集計では、図13の母数を用いる。 )(脚注) 調査実施前に同人誌を発行している学生に質問案を見せた際に、「独学というほ ど必死に勉強していないので、この選択肢は選びづらい。だけど他に選ぶものがない」 というコメントがあった。そのため「特に何もしていない」という項目を足すことにな った。

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PAGE 12 of 20 全体 1236 イラスト、1036 小説、843 マンガ、685 図13 ジャンル別創作者数 3−2 技術の習得先 図14は、各ジャンルの創作者が創作技術を学んだ方法を集計したものである。「完 全な独学」「特に何もしていない」の2項目 は排他項目(この項目を選択すると、 他の項目を選択できない)、その他の選択肢は複数回答可能な選択肢とした。 0 10 20 30 40 50 完全な独学 市販の「○○のかきかた」的教則本 大好きな作品の模写・模倣を通じて盗んだ サークルで仲間や先輩から学んだ 専門学校や大学など、フルタイムの学校で学んだ(高 校までの講義は除きます) カルチャースクールなど、フルタイムの学校でない教室 で学んだ 雑誌で学んだ 特に参考にしたものはなく、独学というほど努力して技 術習得もしていない その他 イラスト マンガ 小説 図14 技術の習得先(一部複数回答)

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PAGE 13 of 20 すべてのジャンルで、「独学」と「特に何もしない」で過半数を占めている。特に 小説は、とりあえず書いてみるための敷居が低いためか、2つの選択肢で合計は7割 以上にのぼる。次に続くのは「模写・模倣」「教則本」「雑誌」であり、誰かに教え てもらう形式である「サークル」「専門学校・大学」「カルチャースクール」はそれ ぞれ10%に満たない。 3−3 作品の発表形式 図15は、制作した作品の発表形式である(一部複数回答)(脚注)。私的な創作と いうと同人誌即売会などのイベントが浮かぶが、発表の場としての回答比率が高い のは各ジャンルともに「家族・友人」と「個人Webページ」の2つである。また、「う まくなったら」、「見せる気がなし」という創作した作品を他の人に公開しない回答 も各ジャンル3~4割ある。 即売会などのイベントや委託販売店などでメディア(多くは小冊子だが、ディス クメディアもある)を販売しているのはイラスト10.4%、マンガ13.0%、小説7.0% だった。同人誌即売会であるコミックマーケットが毎回約3万サークル参加している が、創作活動をしている人の中では少数派であることがわかる。同じ販売でもダウ ンロードサイトでの販売はどのジャンルも2%程度で、まだ普及しているといえない。 コンクールに応募した人の割合では、メディア販売が最も少ない小説が一番多く 18.4%、以下マンガ13.0%、イラスト12.7%となった。イラストやマンガでは、販売 されている場所でパラパラとめくってみれば内容(腕の良し悪し、自分の嗜好と合 うかなど)判断できる。小説は販売されているその場で内容を判断することが難し いため、イベントでのメディアの販売数が大きく異なる。人気のあるイラスト・マ ンガ系で数千部に対して、小説系では100部行くかどうかということも珍しくない。 小説のコンクール応募率の高さは、「プロ同人作家(=同人誌の販売のみで生活の糧 を得る人)」という選択肢がないことを反映している。 )(脚注) 回答者にはプロ(制作活動を職業として行っている人)も含まれているため、プ ロの人には同人活動(=商業出版・流通にのらない活動)の有無を答えてもらい、同人 活動がある人は発表形態も回答してもらう形をとった(そのため、「すでにプロ、同人 活動なし」の選択肢を排他で設定)。また、「見せる気がない」という回答も排他回答で 設定した。

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PAGE 14 of 20 0 10 20 30 4 作品を家族や友人に見せたことがある 個人Webページで公開したことがある 誰にも見せたり発表したりする気はない 誰にも見せたり発表したりしたことは ないが、うまくなったらそうしたい プロを目指して、コンクールに応募したことがある 配布用メディアを作って、イベントで販売 (もしくは店舗で委託販売)したことがある 配布用メディアを作って、 家族や友人に配布したことがある YouTubeやpixiv、Vectorなど、不特定多数の人が 作品を投稿するサイトで無料公開したことがある すでにプロとして活動しているが、 個人的な活動(同人活動など)はしていない すでにプロとして活動しているし、 個人的な活動(同人活動など)もしている ダウンロード販売サイトで有料販売したことがある その他 0 イラスト マンガ 小説 図15 作品の発表形式 (一部複数回答) 3−4 過去に発表した作品の制作形式 3つのジャンルともに殆どが個人による制作である(イラスト:90.7%、マンガ: 82.3%、小説:91.7%)。 そのため、個人制作以外の制作形式だけをとってグラフにしたものが図16である。 既存サークルへの参加、新規サークルの組織は5%未満である。これは、作品の発表 形態で「誰にも見せない」が多いことから、自然な結果である、 0 5 10 15 20 既サークルに参加 サークルを組織 直接勧誘 公募して集めた その他 イラスト マンガ 小説 図16 制作形態(個人以外)

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PAGE 15 of 20 3−5 創作形態(マンガ・小説) 単純集計 表1は、創作した作品の種類である(複数回答)。オリジナル作品が二次創作作品 より創作されている割合が高い。同人誌即売会では多くが二次創作なのでこれは一 見矛盾する結果である。 表1 創作形態(マンガ・小説) 単純集計 マンガ 小説 オリジナルなコマ割りマンガ 65.7% オリジナルの長編創作小説 33.0% オリジナルの4コママンガ 46.3% オリジナルの短編創作小説 76.7% 二次創作のコマ割りマンガ 30.1% 二次創作の長編小説 10.6% 二次創作の4コママンガ 21.2% 二次創作の短編小説 26.1% そこで、作品の発表形式とクロス集計した結果が表2(マンガ)・表3(小説)であ る。作品の発表形式は選択肢が多いため、ここでは「メディアを販売したことがあ る」「Webで公開」という作品を外部に発表する志向の強い2つに加えて、プロ志向 である「コンクールに応募」と個人内で完結した志向の「見せる気がない」の結果 を示す。オリジナル作品の創作割合については「メディア販売」「Web公開」がやや 少ないものの、「コンクール応募」「見せる気がない」とあまり差がないが、二次創 作については、「メディア販売」、「Web公開」が「コンクール応募」、「見せる気がな い」2つに比べて非常に高いことがわかる(その他の選択肢の集計結果は、この中間 に属している)。特に「マンガ」の「メディア販売」においては、「オリジナル」よ りも「二次創作」の経験率のほうが高くなっている。 単純集計で二次創作作品の制作割合が低かったのは、作品を外部に公開してみて もらおう、という創作者の割合が全体の中では少数派だったためである。 表2 創作形態(マンガ)クロス集計 メディア販売 Web公開 コンクール応募 見せる気がない オリジナルな コマ割りマンガ 64.0% 66.7% 87.6% 60.7% オリジナルの 4コママンガ 34.8% 53.5% 50.6% 46.8% 二次創作の コマ割りマンガ

70.8%

58.9% 34.8% 16.2% 二次創作の 4コママンガ

61.8%

51.2% 24.7% 9.8%

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PAGE 16 of 20 表3 創作形態(小説)クロス集計 メディア販売 Web公開 コンクール応募 見せる気がない オリジナルの 長編創作小説 47.5% 47.0% 62.6% 19.0% オリジナルの 短編創作小説 64.4% 66.0% 80.6% 78.2% 二次創作の 長編小説 49.2% 25.5% 6.5% 5.6% 二次創作の 短編小説 61.0% 52.6% 19.4% 21.2% また、これら外部に自分の作品を公表する人は、同人文化との親和性が高い。図 17には、それぞれの発表形態ごとにマンガ同人誌の消費動向を集計したものである。 作品を見せる気がない人はマンガ同人誌を全く読まない層が半数を超えている。一 方、コンクールに応募する層も含めて自分の作品を対外的に公表する意思のある人 では、半数以上が同人誌を年に1冊以上は読んでいる。週に複数冊読むヘビーなユー ザーも多い。 68.2 42.7 28.7 16.9 15.6 23.6 31.0 44.9 8.1 10.1 13.2 16.9 5.2 10.1 13.2 6.7 2.9 13.5 14.0 14.6 0 20 40 60 80 100 見せる気がない コンクール応募 Webで公開 メディア販売 全くない 年に数冊 月に1冊程度 週に1冊程度 週に複数冊 図17 マンガ制作者のマンガ同人誌消費状況 3−6 第2次調査のまとめ 第2次調査の分析で得られた結果は、次の通りである: 1)イラスト・マンガ・小説のいずれも、制作は個人、技術の習得は独学が大半であ

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PAGE 17 of 20 る。 2)制作された作品は、Webで公開するのが3割、イベントなどで販売するのが10% 程度である。自分の周辺の家族・友人に見せる程度の人が多く、人に見せる気が全 くない層も存在する。 3)創作される作品は、全体でみるとオリジナル作品の制作経験率が二次創作経験率 を上回る。特に、コンクールに応募する層・誰にも見せずに個人で創作を楽しむ層 でその傾向は顕著である。一方、Web公開・メディア販売といった形で外部に公開 する層では二次創作の制作率が高い。 1つめの、制作活動者に独学が多いというのは、これまでそれとなく言われてきた /思われてきた言説の「裏付け」が取れた、といっていいだろう。注目すべきは2 つめと3つめの結果である。これらの結果が示唆しているのは、次の2点である: a)制作活動を行っている人は、すでに目に見えている(メディアやwebを通じて公 開されている)だけでも膨大な数なのに、その陰にはその数倍の数の活動者が存在 している。 b)自分の作品をイベントやWebといった非商業メディアで公開している人たちは、 二次創作活動を活発的に行っている。 玉川(2006)はコミックマーケット30周年記念調査のデータ(全申込サークル対 象)を分析し、「強く希望しているという意識的にプロ志向を持っている人は、 13.1%と非常に少なく、一方、職業としてのマンガ家に興味を感じていない者が半 数強という結果」を得ている。創作活動を行う人のすべてがプロを志向しているわ けでなく、同人という場で遊び続けたい、という層が分厚く存在している。 そのことを考慮すると、作品を公開する意思のある人の中で二次創作が活発であ る理由は、1)二次創作物がコミュニケーションツール(共通の話題)として機能 していること、2)多くの人に自分の作品を見てもらいたい(さらに言えば、売り たい)と考えたとき、オリジナルより二次創作の方が受け入れられやすいこと)(脚注) 、ということになるだろう。 )(脚注) さらに言うなら、二次創作にも売れ線がある。いくつかの定番ものに加えて、そ の時に話題となっているいわゆる「旬」の作品があり、旬の作品は半年(コミケ1回) ごとに変化している

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PAGE 18 of 20 4 発表の場の中心のシフト:同人誌からWebへ もともと、同人誌は商業流通メディアで作品を発表していない人にとって、自ら の創作物を発表でき、批評を受けることができる「場」であった。また、同人誌即 売会の初期は印刷費用も高かったため、同人誌は大学のサークル(いわゆる「学漫」) や気のあった数人でサークルを作って予算を出し合って作るものだった。それが、 イラストのコミュニティサイトであるpixiv(http://www.pixiv.net/)、YouTubeやニコニ コ動画のような投稿サイトが急成長すると、同人誌即売会の「自分(たち)の作品 を安価に制作して発表する場」としての重要性は下がってくる。 初期の同人誌の主たる機能が「発表の場」と「コミュニケーションツール」だっ たとするなら、その部分の機能は間違いなく弱っている)(脚注) 。その代りにウェイ トが増しているのが多くの人が集まる「祭り」の空間としての同人誌即売会そのも のの機能と、大手サークルの同人誌がコレクターズアイテム、もしくはイベントア イテム的に購入されるいわば「第二の流通」とも言える機能である。 同人誌即売会を「第二の流通」と考えると、創作活動を行う人たちの間でWebサ イトの重要性が増している理由がわかる。同人作家・イラストレーターの多くは、 個人サイトを持ち、そこで自分の作品のサンプルを公開している。また、「どの同人 誌即売会に参加し、ブースの場所はどこか」をWebで告知する。ファンはWebサイ トの告知を見て足を運ぶ。「壁」や「シャッター前」の人気サークルの同人誌は、事 前に情報をチェックして開始早々に並ばないと買えないからである。 また、以前、あるライトノベル編集部にヒアリングしたところ、ライトノベルの 挿絵を描く絵師の新人のスカウトはすべてWebサイトのサンプルを見て行っている、 とのことであった。このように、個人Webサイトは、作品の公開場所としての重要 性が増している。 5 単に商品というだけでは売れない時代の消費のされ方 最後に、コンテンツ消費全般とコンテンツ作成能力の関連を議論してまとめたい。 近年、海外で日本のコンテンツが注目されていることとは逆行する形で、マンガ・ アニメ・ゲーム・音楽CD等の正規の製品としてのコンテンツの売上は長期低下傾向 )(脚注) もちろん、現在の同人誌即売会でも頒布数が多くても数百部程度のサークルがほ とんどであり、そういった小規模サークルではこの2つの機能の側面は大きい。

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PAGE 19 of 20 にある。これは少子高齢化の効果もあるが、消費形態が変化しつつあるのも間違い ないだろう。 特に、音楽(J-POP)が象徴的だが、最近の商業流通では、単に著名なアーティ ストの楽曲というだけでは売れなくなってきている。しかし、テレビ番組からの派 生したイベント的ユニットが出した楽曲)(脚注) やアニメ主題歌)(脚注2) 、ネットで 話題となった楽曲など、「買うことがイベントに参加した感覚につながる商品」は、 短期間で売り上げるスマッシュヒットとなる傾向が強い。ライブの興業が好調なの も、同様の「参加的消費」の隆盛を示唆するものであるといえよう。これらは「同 調・帰属意識の発露としてのコンテンツ消費」もしくは「コミュニケーションツー ルとしてのコンテンツ消費」であり、先に議論した同人誌が持っている消費機能に 近い)(脚注3) 同人誌の制作・販売・消費は、初期の役割であるコミュニケーションツールとし ての役割と、非日常の場での消費、コレクターズアイテムとしての購入=消費とし ての役割を持っている。こちらもいくつかの定番を除くと売れ線のジャンルは頻繁 に入れ替わり、短期間のスマッシュヒット型の消費となっている。 現在のコンテンツ消費は、広い領域で「作品『を』楽しむ」傾向より「作品『で』 楽しむ」傾向が強まっているといえる。そして、そういった「作品『で』楽しむ」 ことを可能とする、コンテンツを創作する人の厚みが、日本には存在している。さ らに、そういった参加意識を支える土台(もしくは揺籃機能を持つ場)として、Web サイトの持つ役割が非常に大きくなっているのである。 )(脚注) 古くはASAYAN(テレビ東京系)の「モーニング娘。」がそうであるが、最近の 例としては、フジテレビ系列で放送されているクイズ番組『クイズ!ヘキサゴンⅡ』から 生まれた男性アイドルグループである羞恥心(しゅうちしん)がある。2008年4月9日に 発売されたデビューシングル(この名前も「羞恥心」である)はオリコンで2位となり、 第2弾・第3弾シングルもヒットした。最終的に第50回日本レコード大賞 特別賞を受賞 し、紅白歌合戦にも出場した。 )(脚注2) 2005年にテレビ東京系で放映された「魔法先生ネギま!」の主題歌「ハッピー☆ マテリアル」は歌うキャラクターを毎月変えて(設定が学園で、クラスの生徒役の声優 に交代が歌う)6枚発売された。一連のCDが「2ちゃんねる」で「世間で不当に貶め られているアニソン(アニメソング)をオリコン1位にしよう」という運動の対象とな った。最終的にオリコン1位をとることはできなかったが(最高3位)、すべてのCDがオ リコンのトップ5入りし、かなりの売り上げとなった。 )(脚注3) 重要なのは、これらのCDは発売前にYouTubeやニコニコ動画などで既に無料で 視聴可能な状態になっていることが多いことである。たとえ無料で消費可能でも、消費 者は「あえて買う」という行動をとっている。

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PAGE 20 of 20 参考文献 ・インターネット調査は社会調査に利用できるか−実験調査による検証結果−労働 研究・研修機構,『労働政策研究報告書サマリー』,No.17,2005 ・玉川博章,「コミックマーケットにおける同人作家の商業誌経験」,『マンガ研究』, vol.9,67-82,2006 ・霜月たかなか『コミックマーケット創世記』 ・ http://www.comiket.co.jp/info-a/WhatIsJpn080225.pdf 【執筆者プロフィール】 氏 名:小山 友介(こやま ゆうすけ) 所 属:芝浦工業大学システム理工学部准教授 日本学術振興会特別研究員,東京工業大学大学院総合理工学研究科助手 (2005年より助教)を経て2009年より現職. 東京工業大学エージェントベース社会システム科学研究センター特任准教授兼務. 専 門:専門は理論経済学,コンテンツ産業論. 著 書:(翻訳)『進化的経済学―シュンペーターを超えて』 (E.S.アンデルセン,八木・小山他訳,2003年) 『人工市場で学ぶマーケットメカニズム―U‐Mart経済学編 』 (塩沢・中島・松井・小山・谷口・橋本著,2006年)

参照

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