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空間的相互作用のモデル化について

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(1)

空間的相互作用のモデル化について  

州−−・そ・の展望と研究課題・−  

井 原 健 雄  

Ⅰ ほじめ匿  

本稿の目的ほ,空間的相互作用(Spatialinteraction)の現象をモデル紅・よ  

。て・とらえる際軋随伴する委要な研究課題を整数することにより,将来の研究   の指針をもとめることにある。そ・の手段として,われわれは,F・J・Cesario  

〈1)  

&T.E.Smithの卓越した共同論文に準拠して,当該研究課題をつぎの3項   目に.分類し,その各々について\逐次検討を加えることにする。   

i)空間的相互作用を微視的にモデル化するための行動仮説の範囲を確定   すること。   

ii)空間的相互作用のミクロの理論とマクロの理論との密接な関連性を吟  

味すること。  

iii)空間的相互作用紅関する各種の仮説を系統的軋検証する方法を考察す   ること。  

ⅠⅠ行動仮説  

(可能な仮説のスぺクトル)   

空間的相互作用の現象を微視的に・モデル化するとき,通常用いられる仮説と   して,つぎの2つがある。まず,・その1つは,Niedercorn&Bechdolt〔27〕,  

Golob&Beckmann〔12〕,Golob,G血tafson&Beckmann〔13〕らの研究  

(1)Cesario,F J.&Smith,T E, Direction$forFutureResearchinSpatial    Interactioh Modeling,〃Pa♪ers,Vol.35?1975.   

(2)

空間的相互作用のモデル化について  

117    ーJヱ7−  

紅よって.m示された効用最大化仮説(Utility−maXimizing hypothesis)であ  

(2)  

る。他の1つは,Stopher&Lisco〔35〕,Stopher&Lavender〔36〕,Talvitie  

〔38〕らによって一研究された logit model や probit model によって例示  

(3)  

される確率論的仮説(Probabilistic hypothesis)である。これら2つのアプロ  

−チほ,空間的相互作用の可能な仮説のスぺクトルのなかで,相対時する両極   に.位置するものとみなすことができる。このうち,効用最大化仮説は,当該主   体の行動に関する公理の解明に.力点がおかれるが,他方,確率論的仮説ほ,当   該主体の行動をその直接的な前提とはしていなt、。とく紅,′後者の仮説が「行   動的」であるといわれる場合に.ほ,もっ′ばら当該主体の微視的選択行動紅蘭す   る観察結果がその分析のため紅用いられる,という意味紅かぎられているので   ある。見方をかえれは,効用最大化仮説では,空間的相互作用の現象が,ラソ   ダムな成分よりもー一層レステマテイツクな成分によって決定されるものとみな   されているのに対比して,確率論的仮説では,ちょうどそれと逆の場合が想定   されているのである。  

l  さて,こ.の2つの異なったアブロ−チ・のうち,そのいずれを選択すべきかと  

t、う問題は,われわれが対象とする空間的相互作用の具体的状況紅応じて一決定   されるべきことがらなのである。たとえば,ある家族の年次休暇をどこで過ご   すかといったこと紅関する当該家族の意思決定は,効用最大化仮説のプレイム   ワークのなかで十分に処理し得るものと考えられる。他方,ある個人が行なう   衝動や変化の要請紅よってもっぱら動機づけられ,しかも細心の注意を払わな   いようなトリップ行為ほ,おそらく単純な確率論的仮説によってもっとも..良く   把捉されることに・なるであろう。したがって,肝要なことは,われわれが対象  

とする空間的相互作用の具体的状況を,目的や動機,さらにまた,相互作用の   盗意性の程度,等々に.よって特徴づけることなのである。   

さらに.,われわれは,上記2つの極端な仮説のあいだ紅,厳密な効用計算が   不適切であり,しかも単純な選択確率よりもー周明示的な行動様式を示唆する  

(2)この点の詳細については,郡罵孝・井原健雄〔始〕,1977,pp一93−104,参照。  

(3) この点紅ついての検討は,稿を改めて試みる予定である。   

(3)

第51巻 籍1・2弓  

−−JJ∂−−  

118  

紅足るだけの構造がみられる,ある重要な空間的相互作用の中間領域が存在す   ると考えることができる。事実,現実問題としての空間的相互作用の大半は.,  

おそらく,この中間儀域に位置づけられるものであろう。つぎに,かかる中間   儀域のなか ご,とくに注目すべき3つの重要な仮説を抽出し,その各々につt、  

て,逐次検討を加えるこ.とにしよう。   

まず,その第1の恢説ほ,Isard〔19〕,Smith〔33〕によって提起された空間  

(4)  

割引仮説(Spatialdiscountinghypothesis)である。この仮説ほ,当該主体の   行動を単純化した公理紅よってとらえるものであり,したがって,空間的相互   作用のモデルに関する可能な仮説のスぺクトルのなかで,そ・の中間的なカテゴ  

リー一札属するものとみなすことができる。とく紅,そのなかでの基本的な比例   性の公理は,当該主体の距離と機会とに介在するトレ−・ド・オフの関係を,複   雑なタイプの効用最大化仮説が不適当であるような具体的状況においても十分   に.適用可能なように.単純化されたかたちで,明示的に.想定して−いるものであ   る。したがって,この空間割引仮説は,観察可能な行動に.よって直接定式化さ   れる結果,叙上の効用最大化仮説よりも,・一層容易に.その仮説を検証すること   が可能となるのである。   

つぎに,その第2の仮説は,Simon〔30〕,およびStouffer〔37〕に.よって   最初に.提起され,そLの後Schneider〔芦8〕やHarris〔16〕に,よ・つて発展させ  

られた探索仮説(Search hypothesis)である。この仮説は.,空間的相互作用の   現象を,ある主体が自己の有する必要性をみたすために企てる探索の過程と魂   なす鳥のであり,その意味で,この仮説は,スぺクトルの中間鱒域のなかでも,  

とくに.確率論的仮説の方に−・層近く位置づけられるものなのである。たとえ   ば,ある人が一山足の靴を必要とするとき,その人ほ,満足のいく靴がみつかる   まで店から店へと探し続けるものと想定され,自分の気に㌧入った靴がみつかっ  

(5) たときに,そ・の空間的相互作用の現象が終わるものとみなされているのである。   

(4)この点の詳細紅ついては,井原健雄,「空間割引行動の理論」に・ついて一行動仮説   にもとづく方法岬,日本交通政策研究会シリーズに.於いて近刊,参照。  

(5)かかる仮説は,Simonが satisficing として規定した,もっとも単純な効用最    大化の形式のみを含んでいること転注意せよ。   

(4)

−∫J9叫   空間的相互作用のモデル化について   

119  

とくに.,この仮説によって規定される空間的相互作用の現象ほ,みたされるべ   き必要性の内容や,探索されるべき空間の構造,さらにまた,用いられる探索   過程のタイプによって大きく影響を受けるものとなる。その意味で,この探索   仮説は,空間的相互作用の一般モデルを提示するものでほないが,しかし,あ   る限定された領域での現象をモデル化するのには,すぐれて豊富な行動モデル   を提示し得るものである,ということができよう。   

最後に,その第3の仮説は,Smith〔31■〕に.よって−提起された敷居距離仮説  

(Threshold・distance hypothesisr)とよばれるものである。この仮説ほ,可   能な仮説のスペクトルのなかで,探索仮説と空間割引仮説とのいわばそのあい   だ紅位置づけられるもので,いまなお研究が進められているものである。この   仮説の背後にある基本的な考え方ほ,当該主体がトリップ行為に.対してつね紅   ある回遊性(Aversion)を抱いて.いるが,しかし探索仮説を直接適用するのほ   無理であるという事前的情報を,当該主体が熟知しているものと想定している  

ことである。たとえば,買物のトリップや,リグレ一−ションのトリップ紅つい   て考察してみよう。そのとき,まず当該主体ほ,彼の萌する必要性(たとえば,  

食料品の購入や,リクレ−・レヨンの享受,等)をみたすのに可能な多数のトリ   ップを継続的紅考慮したうえで,つぎに.,その結果として遮好されたトリップ   が,彼の抱くトリップ行為に.対する回遊性を克服する紅十分なだけ短かV、もの   であると判断したとき,はじめでその空間的相互作用の決鱒過程が終わ為もの  

(8)  

と考えているのである。そして,このトリップ行為に対する回遊性が,当該主体   の敷居距離(Threshqld distance)として規定される,ある確率変数に,よって   表わされることに,なるのである。この仮説は,uCalibration が比較的容易紅 

(7)  

行なわれ,しかもまた,標準的な統計学の方法に.よって容易に.検証が可能とな  

(S)  

るような,〜L群の確率モデル(Probabilistic model)へ,われわれを導くもの   である。  

(6)B‡・and〔2〕,参照。  

(7)TellieI〔沖〕,参照。  

(8)Smitb〔31〕,参照。   

(5)

第51巻 弟1・2号  

ーーJごクー−   120   

以上紅=おいて,われわれほ,空間的相互作用に関する行動仮説の発展とその   検証に.思いを馳せ,その各々紅ついて,逐−・検討を加えてきた。とく紅肝要な  

ことほ,その各々の仮説が,・「■・方紅おいて,検証可能なモデルを与えるに十分   なほど撃純化されており,また他方紅.おいて−,限定された具体的状況を正確に  描写し得る紅十分なこほど詳細化されている,ある空間的相互作用の scenario    あるいほ.如paIadigm を表わすものである,という点紅・もとめられる。   

(仮説領域の拡張)   

つぎ紅,効用最大化仮説と確率論的仮説とをその両極として構成される空間   的相互作用の仮説空間(Hypothesis space)を−とく紅,より複雑な,した   がって,より現実的な決定構造を発展させる方向に.w…−さら紅拡張することを   考えて魂よう。現在までのところ,この方向に沿った研究としては,つぎの2   つが指摘される。その第1は.,多属性効用関数(Multiattributeutilityfunc,  

tion)の考え方を採用するものである。その節2ほ,個人間の効用依存(1nter・  

personalutility dependency)という考え方を明示的に取り扱かうことに・よ   って,上記の仮説空間をさらに拡げようとするものである。.以下,その各々に   ついて,検討を加えること紅しヰ.う。   

まず,算1の多属性効用関数の研究ほ,有効な帰結をもたらすべく,着手さ   れてからまだ日が浅い占そのなかでも,とく軋注目すべき論文としてほ,Golob  

(91  

&Beckmann〔12〕,Keeney〔22j,Huber〔17〕,等が指摘される。この研究   に.とって重要なことほ,場所的効用(Place utility)を構成すると思われるも   のの実体を正確把捉えるため隼,山般化された多属性の効用関数を空間的相互   作用の仮説のなか紅導・入することである。通常,周いられる多属性効用関数は,  

比較的単純な,加法,また隠乗法の形式をとっている。これをより具体的に.述   べれば,線形加法のモデルは,つぎのよう紅表わされる。  

(9)このうち,Golob&Beckmann〔12〕は,交通領域での草分け的な業績であるが,  

Keeney〔22〕およびHuber〔17〕は.,多属性効用関数に関する優れた以review〃を   与えるものである。なお,わが国に.おける多属性効用関数の適用例としてほ,たとえ   ば,河野・氷飽・吉田〔44二j,瀬尾〔45二がある。   

(6)

空間的相互作用のモデル化について  

121  

ーJ2∫叫   

JⅣ  

ぴ=∑吼動  

こ=1    (1)  

ただし,ぴは,効用を表わし,方乞ほ,当該眉的(たとえば,機会)の有する属性左  を表わす測度であり,さらに,α£ほ,そ・のパラメターーを表わしている。さらに  また,こ.のモデルの変形として,.勘を直接用いる代わりに,一方£のある関数/{方・乞)  

を想定するものもあれば,あるいはまた,属性間の交絡効果を考慮して,α沸プ,方た   といった項を付加してヽ、るものもある。つぎに・,パラメターの推定ほ.,もっぱ   ら多運回帰の方法紅よって∵いる、が,とき紅.は,2段階評価のアプローチがとら  

(10) れることもある。この2段階評価のアブロ−−チとは,場所的効用びを有するあ  

る目的(すなわち,機会)紅.関して,まず最初に.,属性よ■(ただし,去■=1,2,  

,Ⅳ)の関数ノ(ズ威)をなんらかの方法に.よって評価し,つぎに.,各属性よの相   対的重要度紅ついて,そのパラメター釣をそれぞれ評価する方法を意味する  

ものである。   

また,多属性効用関数の単純な乗法モデルほ,つぎのよう紅.表わされる。  

一Ⅳ   ぴ=一げ  

(2)   

ただし,ぴ,およぴ・尤乞は,(1)と同様紅.定義され,∂豆は,乗法モデルに.お   けるパラメタ一−を表わしている。つぎに,このパラメター∂乞の推定は,(2)  

を対数変換して,その結果に.多重回帰の方法を適用するのが通常であるが,こ   こでもまた,さきの2段階評価のアプローチを準用してもとめる場合もある。   

叙上の定式化におけるぴの値は,ある特定の機会紅対して空間的行為者が抱   くその機会の誘引(Attractiveness)と解されよう。もとより,誘引というこ   とばの使用は,広く行きわたっているとはいえ,・そのことばの正確な意味に.つ   t■、て,科学的な議論は.殆んどといってよいはどなされてはいない。たとえば,  

ショッピング・センタ・一に・関する調査では,床面積が,その誘引を表わす琴数   として,非常に・よく用いられている。しかし,現実由題としてわれわれは,シ  

ョッピング・センタ一紅かぎらず,その他の機会の誘引が,床面積という規模  

(10)KlabI■〔23〕,Stimson〔34〕,参照。   

(7)

簿51巻 鱒1・2弓  

122  

−エ22・−  

紅関する変数だけ紅依存していると考えるのではなく,さらに加えて,そ・の他  

多くの属性軋も依存しているものと考えるのでほなかろうか。もし,そうだと   すればこの点を科学的紅究明するべく,多属性効用関数紅よる理論的かつ実証  

(11)  

的研究が,とくにこの分野で強く望まれること紅なるであろう。   

つぎに,第2の個人間の効用依存紅言及しておこう。ここでいう個人間の効   用依存とは,個人間の効用比較と明確常区二別されるべきものであり,それほ,  

つぎのよう紅.定義される。すなわち,いま,ある個人がある機会に関して享受   する満足の度合が,他の誰かによるその機会の利用,またほ.享受によって制約   を受けるとき,個人間の効用依存カモ存在する,というのである。したがって,そ   の典型的な例として,われわれほ,混雑(Congestion)という状況を指摘する  

ことができよう。なぜなら,混雑した交通システムや,また混雑した道路,あ   るいほ.また,混雑した機会に対して,空間的行為者の行なうトリップ行為の決   定ほ,そ・の同じ施設がまったく混雑していない状態■で行なう決定と比攣して,  

明らか紅異なったものとなるであろう。このことを,空間的相互作用のモデル   のなかで明示的に取り扱かおうとすれば,もっぱら空間の次元のみを考慮して   いる現行の静学的なモデルをさらに.改良してあらたに時間の次元を当該−モデル   のプレイムワークのなか紅.導入する必要が生じてこよう。かかるモデルの動学   化は,ようやく始められたばかりであり,われわれは,その研究の推移を注目  

\】ブ) することに.しよう。  

ⅠⅠⅠ ミクロの理論とマクロの理論  

すで紅検討した可能な仮説のスぺクトルは,その各乍が微視的行動単位に・注   意を集中しているという意味で,すべて空間的相互作用のミクロ理論(Micf・0−  

(11)また,ある場合には,機会の誘引が,属性≠の単純な加法,ないし乗法の関数では    なく,もっと復雑な関数形鹿とるかもしれない。こういった複雑な関数形の経験的抽   出紀聞する研究ほ,すでに.部分的にほ提起され,しかもまた,パイロット・モデルと  

して構築されている。たとえば,CesaIio〔4〕,〔7二〕,参照。  

(12)この分野での先駆的業績として,Codey&Hayes〔10〕,Wilson〔41〕,1こ42〕,Isard  

&Liossatos「20〕,等がある。   

(8)

空間的相互作用のモデル化について   ーJ2β−  

123  

theories)に.相当する。他方,従来の空間的相互作用のモデルといえば,もっ  

(13)  

ばらマクロの記述的モデルに限定され,そこでほ巨視的行動バク−ソの反映す   る経験法則を発見することにもっぱら注意が集中されていた。したがって,こ   れを空間的相互作用のマクロ理論(MacIO・theories)とよぶことができる。そ  

して,この両者ほ,それぞれ独立に取り上げられ,その関連性を問うこと枚,  

殆んどなかったのである。しかし,いうまでもなく,マクロ的現象は,ミクロ   的行動の結果として惹起されるものである。したがって,マクロの理論とミク   ロの理論とは,けっして無縁のものではなく,ある整合的関係がネのあいだに   要請されるべきものなのである。以下,この点について,さらに立ち入った検   討を加えることにしよう。  

(集糾問題の概要)   

まず,マクロの理論とミクロの理論との整合的関係を考えるとき,いわゆる   集計問題(Aggregationproblem)が,きわめて重要な意味をもつことが判明  

(14)  

する。そこで,この集計問題の概要を,つぎのような仮設例によ云て明らかにし   ておこう。いま,100人の個人からなる集団があるものとする。その集団に・属す   る任意の個人よは,トリップ行為を誘発する,ある刺激.芳を受けたとき,それ   を.γ紅よって表わされる,ある特定の仕方で反応するものと想定しよう。この   とき,反応.γは,たとえば個人よが実際に.トリップ行為を行なうか否かを示す   指標であるとみなすことができる。さらに.,簡単化のため,刺激.方と反応.γと   のあいだにみられる関係を,つぎのような関数形として想定しよう。  

γ=す  (3)   

2)  

このとき,,ズ夏(∠=1,2,1‥…,100)の値が与えられれば,われわれほ.(3)によっ   て.γi(左=1,2,…,100)の倦をもとめることが1でき,さらにその結果  

(13)たとえば,グラビテイ・モデルを想起せよ。  

(14)集計問題を経済学の分野で取り上げたものとして Theil〔40〕,Green〔14:〕等が   あり,また,社会学の分野で取り上げたものとしてHanpan〔持〕,等がある。   

(9)

第51巻 算1・2号  

124  

ーヱ24・−  

100  

y=∑.γ£  

乞=1  

(4)   

の幽係に.よって,当該集団全体の集計された反応yをもとめることができる。  

100   

しかし,ここで注意を要することほ,各刺激.方宜の集討鼻方=∑.勘だけでは,  

i=1  

各反応グ£の集計鼠y=∑.γiを規定するのに十分ではない,という点である。  

l=l  

この点をより八・一・−h層明確軋するため,さきの集団に属するすべての個人に対して・L,  

つぎのような刺激が与え.られたものと想定して−みよう。  

・こ・・−・、 

ー  ご   

二 __、  

このとき,当該集団全体の集計された反応yほ,(3′)と(4)の関係より  

100  100  

£=1  

∑乃羊50となるが,・一方,各刺激.机の集計鼠gほ,(5)の関係より∑机=      豆=1  

100であることから;さきの微視的関係(3■)が集計された水準でほストレー   トに成立していないことが,容易に判明する。要するに,ここでの集計問題ほ,  

100  

農計され卑反応y=∑グ£が,当該儀周に属する各個人の受ける刺徴・方の分布  

宜=1  

(Distribution)に.依存するということに,その原因をもとめることができるの   である。言い換え.るならば,反応の集計鼠yを予測するとき,刺激の集計鼠ズ   だけの知識でほ不十分であり,さらに,各個人の受ける刺激.方の分布を知って   おく必要がある,ということである。   

最後に,ここでの論旨をさらに徹底させるため,もう1つの例を示しておこ   う。いま,わに・よって,ある継続期間中に行なわれた去 地点から.グ地点への紘  

一ジップ数を表わすものとし,この方りを,われわれが,ある条件のもとで推   定することを考えてみよう。このとき,その推定法として,つぎの2つが考え  

られる。まず,発1の方法は.,最初に各個人別のトリップ・バク−ンをそ・の行動   様式にもとづいて推定し,つぎに,その結果を加え合わせることによって絵ト  

リップ数′官メを推定するものである。したがって,これをミクロのアプローチ  

(Micro approach)とよぶことができよう。つぎに,第2の方法ほ,当該主体   の微視的行動様式を考慮せず紅,直接集計蔑としての才えノを推定するものであ   

(10)

空間的相互作用のモデル化について 

125  

ー」.25−  

る。したがって,これをマクロのアプローチ(Macro approach)とよぶe,とがで   きよう。そのうち,前者にあってほ,本稿で検討した可能な行動仮説を前提と   してそのモデルが構築されるが,他方,後者にあっては,エントロピー最大化  

(11)  

(ErltrOpy maXimization)の仮説によってそのモデルが導出される。もとより,  

この両者のモデルに整合性(Consistency)が要請されることほいうまでもな   いが,しかし,その推定結果が厳密に−−・致する保証ほ.ない。なぜなら,ミクロ   のモデルでほ,さきの例で検討したように,教祖的刺激.方官(∠=1,2,……)に関   する情報を所与として,それに対応する微視的反応.γ名(吏=1,2,巾…)の推定値   をもとめるものであるが,マクロのモデルでは,集計された反応yの推定値を得   る手段として,各刺激・ズ官の集計鼠ズという非常にかぎられた集計情報(Ag−  

(ユ8)  

gregateinformation)のみを用いることになるからである。まさに.,と.の点   に集計問題の生ずる基盤があり,空間的相互作用のモデル化に.とって,とくノに   そ・の解明が強く要請されること紅なるのである。  

(集劉問題の解法)   

集計問題とは,Lancaster〔24〕が指摘するように,単なる1つの問題とい   うよりも,そのなかに磯つかの問題を含むその全集合と解すペきものである。  

しかも,その内容ほ,理論的かつ実証的なものの双方をともに.包摂している。  

かかる集計問題を解きはぐすとき,われわれは,つぎの3つの関係を明確に区   別しておく必要がある。  

i) ミクロの関係。  

ii)マクロの関係。  

iii)集計の関係。   

まず,ミクロの関係とほ,微視的行動主体の水準において,その行動を記述   する関係を指してV、る。っぎに,マクロの関係とほ,巨視的水準において,す   でに集計された行動の結果を記述する関係を意味している。最後に.,集計の関   

(15)エソトロビ」一概念の検討に.ついてほ,郡罵孝・井原健雄〔43〕,pp.68−93,参照。  

(16)換言すれば,エントロピー一概念では,微視的行動主体間の職別が額祝されている?  

というこどである?   

(11)

第51巻 第1・2一弓  

126  

−エ26−  

係とは,さきのミクロの関係をそれに対応するマクロの関係に・リンクさせる場   合の関係を指すものである。   

上記3つの関係を,より具体的に・明らかにするため,つぎのようなトリップ   行為の例示を与えることに・しよう。すなわち,いま,簡単化のため,交通シス   テムと目的地の変数を無視することに・し,個人∠の行なうトリップ数が,  

γ£=ノー(勒,∬鋸,…,.方托官.)(よ=1,2,い‥,∽)   (6)   

ただし,   

γ£:与えられた状況のもとで,個人左■の行なったトリップ数,   

方ヶ£:個人よ一に.固有の属性7・(たとえば,年令,所得,等々.)を表わす指標,  

沼:個人まの総数,  

によって表わされるものと想定しよう。   

このとき,われわれは,必要な標本観測値(一γ宜,∬=,一升鋸,∫・′,尤れi)が利用可能   であることを前提とし,しかも.γiに関する(6)の具体的な関数形(たとえ   ば, lo由tmodel )が想定されたならば,そのモデルにとって必要なパラメタ  

−を実際に推定することができる。したがって,ミクロの変数とミクロのパラ   メタ・−から成り立つミクロの関係(Micro・relations)が導出できることにな   り,その推定値を.γtで表わすこ・とにしよう。   

一方で,われわれほ,必要に応じて異なてった種類の集計を行なうことがある。  

たとえば,ミクロの変数を単純に加算することもあれば,連続変数をさらに細   かく区切ることもあるし,また,全体の関係を1つにとりまとめることもある。  

あるいほまた,われわれは,異なった個人を,空間や時間,さら紅また,さま   ざまな組織体紅関して集計することもある。かかる異なった集計の仕方を総称   するものとして,集計の関係(Aggregation relations)ということばが用い   られ,いま,この関係を,つぎの(紹+1)個の式に・よって琴わすことに・しよ  

(1r)  

う。  

.γ=.γ(.γ1,.γ2,…・,.γm)   (7)  

(17)通常,集計の関係は,ミクロの変数について,そのラ恥平均,あるいはまた,比率   をとることが多い。   

(12)

−−J27⊥−  

空間的相互作用のモデル化紅ついて  

127  

鴛γ=完(.方γ1,.尤・γ2,…,∬用)(㌢・=1,2,…,〝)   (8)   

最後に,この集計された変数相互の関係は,前述したマクロの関係(MacI0・・  

(18)  

Ⅰelations)として,つぎのように表わされる。  

γ=ダ(一が,.尤2,1‥,.芳り   (9)   

さて,われわれの課題ほ,どのようにして政策的に有意兎マクロの従属変数  

(19)  

γを最良に推定(ないし,予測)するか,ということである。この場合,つぎ   の2つの方法が考えられる。すなわち,  

i)まず,(6)にもとづいて.γ官(よ■ニ1,2,…,∽)をもとめ,つぎに.,その結   果を集計するか,あるいはまた,  

ii)噴按,マクロの関係に注目し,(9)にもとづいて\γを推定する。   

このとき,問われるぺき問題は,この両者のあいだで,はたして総トリップ   数の推定(ないし,予測)砥が−・致鵬すなわち ∑一γ£キγの関係が成立−  

£=1  

し,しかもまた,ミクロのパラメタ− がマクロのパラメタ一に対応して:いる   か,ということである。もし,そうでないとすれは,そこに集酌の偏り(Ag・  

gregation bias)が存在することに・なる。   

以上のことから明らかなように.,集計問題を解明しようとすれば,われわれ   は,集計の関係を媒介として,ミクロとマクロの相互関係に,注意を集中する   必要がある。すでに.述べたよう紅,いわゆる集計問題が生ずるのほ,マクロの   変数がミクロの変数とある関数関係によって関連しており,しかもまた,ミク  

ロの変数とマクロの変数が,それ自体のあいだで相互に.関連し合っているから   にはかならない。とくに肝要なことほ,そのすべての関係を,われわれが独立   に.規定することができない,という点に.ある。これをより具体的に述べれば,  

ミクロ,マクロ,および集計風関する上記3つの関係のうち,われわれほ,そ   の2つだけを自由に規定することができる,ということである。したがって,  

(18)たとえば,グラビテイ・モデルや1エントロピ一−・モデルを想起せよ。  

(19)たとえば,大都市圏内における交通システムのトリップ・パタ−・ンについてその予    測を行なおうとする場合,マクロ的アブロ−チの有効性を疑うものは,はとんどとい  

ってよい程いないであろう。   

(13)

籍51巻 第ト・2号  

ーヱ2β−   128  

任意に2つの関係が規定されると,その残りの1つの関係ほ,整合性の条件に   よって,つねにある制約を受けることに・なるのである。   

整合的な集計が期待できるのほ,ある条件がみたされている場合にかぎられ   ているのである。その条件とほ,上記3つの関係がすべて線形であり,しかも   マクロの変数がミクロの変数の単純和として与えられるとき,ミクロのパラメ   タ」−・がすべての個人に対してつねに等しいものでなけれほならない,というき   わめて厳しい内容をもったものなのである占 しかし,現実軋,各個人がそ・れぞ   れ異なぅた選好構造をもっているかぎり,かかる条件をみ.たす単純な世界を,  

われわれが現実のなかでもとめることほ,至難のわざといわざるを得ない。し   たがって,われわれほ,つねに集計の偏りに・遭遇せざるを得ないのである。   

そこで,つぎの課題は,この集計の偏りをできるかぎり最小にする方途をも   とめることに・なるであろう。この点に・関して,つぎの3つのアブロ、−チが考え   られる。   

i) ミクロの変数とミクロの理論を所与として−,まずマクロの理論を想定  

し,つぎ紅その両理論の命題と整合的なミクロの変数とマクロの変数   との関係を究明すること。   

ii) ミクロの変数とミクロの理論を所与として,まず1組のマクロの変数  

を定義し,つぎ紅それと整合的なマクロの理論を究明すること。  

iii)マクロの変数とマクロの理論を所与として,まず1組のミクロの変数  

を定義し,つぎ紅それと整合的なミクロの理論を究明すること。   

上記3つのアプローチを,すでに・与えたトリップ行為の例示に沿って述べれ   ば,つぎのようになる。まず,第1のアブロ−チに従がえば,かりに.(6)を   微視的トリップを予測する logitmodel とみなし,また(9)を巨視的トリ  

ップのバク・−ンを予測する gravitymodel とみなした場合に,その両者と整   合的な集計の関係−すなわち,(7)と(8)−が具体的に.どのようなも   のであるかを究明することに・なる。また,第2のアプローチに.従がえば,かり   に(6・)を lo由tmodel (あるいほまた,微視的効用関数)とみなした場合   匹,集計の関係(7)と(8)を媒介とレて,そのミクロの関係(6)と整合   

(14)

ーーJ2.9−  

空間的相互作用のモデル化について   

129  

的なマクロの関係(9)をもとめることになる。最後に・,第3のアプローチに  従がえば,かりに.(9)を山gravitymodel とみなして実際に.適用した場合に,  

集計の関係(7)と(8)を媒介として,そのマクロの関係(.9)と整合的な   ミクロの関係(.6)が具体的にどのような形式のものであるかを問うことにな   ろう。   

そ・れでほ,上記3つのアプロ−チのう、ら,そのいずれを選択すべきかという   問題は,空間的相互作用のモデル化に.とって,きわめて重要であることはいう   までもない。しかし,この分野での研究ほ.,ようやく始められたばかりであり,  

(20)  

山・般化された有意な帰結ほ,現在までのところ,まだ現われてはいない。とは   いえ,現段階でも明言できることほ,集計問題の研究が,与えられた具体的状   況に.対して,そ・の集計(ないし,分解)の最適水準(Optima11evel)を認定す   ることに資する,という点である。事実,空間的相互作用の大半の事例におい   て,きわめて多数の異なった水準の集計が岬一少なくとも概念的にほ一可能   であり,したがって,われわれほ,その最善の水準を決定したいと望むであろ  

う。この場合,最善の水準とは,最小の費用で必要な情報をもたらす−…−すな   わち,集計の偏りをある許容水準以下に・おさえるTような集計の水準を意味   するか,あるいはまた,おそらく所与の費用で集計の偏りを最小にするような   集計の水準を意味することになるであろう。しかし,そ・のいずれの場合におい  

ても,集計に.伴なう偏りの程度を知っておくことは,きわめて重要なことがら   なのである。以上の点に鑑みて,われわれは,琴計問題の解明を,今後の最蛋  

(21)  

要な研究課題の1つとして数え上げなければならない。  

ⅠⅤ 仮説の検証  

最後に,空間的相互作用のモ≠ルの検証に.関する今後の研究課題を要約して  

(20)なかでも,その萌芽的な研究業績としてSmith〔32〕,〔33〕,Meyburg,Stopher   

〔26〕,MeybuI官〔25〕が指摘される。  

(21)この分野で,とくに注目すべき研究として,A、.Wilsomが提起した混成モデル   

(Hybrid model)の考え方がある。これは,効用最大化モデルがもっとも適してい   るような集計の水準と,エ・ソトロピ−最大化モデルがもっとも適しているような別の    水準が存在することを示現したもの、である。Ⅵ11son〔41〕参照。   

(15)

策51巻 発1・2号  

・一人れト  

130  

おこう。そ・の籍1ほ.,当該モデルを部分的,あるいほまた全体的に検証するた   めの方法を確立させることであり,その籍2は,モデルの険証過程において有   効となるデー・タを改良し,また開発することである。以下,この2点について∴  

さらに説明を加えること紅する。  

(部分仮説と全体仮説)   

空間的相互作用のモデルに関する部分仮説(PaItialhypothesis)の検証と   して,古くから用いられてきた方法ほ,も・つばら回帰分析に・おけるパラメタ−  

の有意性の検定を準用したものであった。しかし,この方法によって検定され   る仮説ほ,現実の行動仮説と殆んど無縁のものであり,したがって1そ・の結果   に.対して明確な行動的解釈を与えることは,きわめて困難なことであった。言   い換え.るならば,検証されるペき仮説自体が,なんらかの行動紅関する公理に   よって明らか紅されて.はいなかった,ということである。したがゥて,たと.え  当該モデルのパラメター紅ついて,有意性の検定が可能であったとしても,そ  の結果に対して,われわれほ,ある行動的内容を伴なったことばで解釈を与え 

(22)  

るなんらの根拠も,持ち合わせてほいなかったのである。その意味で,ただ機   械的に伝統的な統計基準(Statisticalcriteria)を用いることは,きわめて危   険なことだといわざるを得ない。われわれほ,かかる統計基準の慎重な適用に   加えて,さらに.なんらかの先験的情報にもとづく府加的基準を考慮する必要が   ある,と考える。   

しかし,最近紅至って,空間的相互作用の理論も次第に内容豊富になり,当   該■主体の行動仮説に.もとづく相互作用の解明も,幾つか試みられるように.なっ  

(28)  

た。したがって,この理論の発展過程に照応して,部分仮説の検証も,また発   展しつつあるように.思われる。そのなかでも,とくに注目すべきものとして,  

Hyman〔18〕,Evans〔11〕,Batty&Mackie〔1.】,Cesario〔3〕,〔5〕,  

(22)たとえば,グラビテイ・モデルに.おける賀意(Mass)の概念を想起せよ。  

(23)郡罵孝・井原健雄〔43〕,pp..93−106,参照。   

(16)

ーJβJ綱  

空間的相互作用のモデル化について   

131  

(31)  

〔6〕,〔8〕,〔9.〕,Slater〔29〕,等が指摘されよう。   

っぎに,上述した部分仮説の検証を越えて,さらに与えられた仮説の全体的   な有意性を,その対立仮説に対して検証することを考えてみよう。この場合,  

競合的な仮説湛.ついて,−H=般的な評価を行なう必要がある。そ・のための手段と   して,もっとも有効だと思われる方法ほ,尤度比検定(Likelihood・Ⅰ・atio tests)  

と最大エントロピー検定(Maximum entropy tests)の2つである。もとよ   り,そのいずれも,きわめて標準的な統計基準でほあるが,空間的相互作用の   モデルに関する実証研究においてほ,あまり注目されていない。したがって,  

われわれほ,かかる標準的な統酎基準を,さまざまなタイプの行動仮説−⊥・一た   とえば,古典的なグラビテイ・モデルの仮説や,敷居距離仮説,等々一に対   して,今後,積極的に・適用していく必要がある。  

(デ一夕の改良)   

これまでの議論は,すべて当該仮説を検証するための適切なデー・タがつねに   利用可能である,という暗黙の前提で進められてきた。しかし,この前提は,  

必ずしも現実に.妥当してこいるとはかぎらないのである。事実,マクロ・モデル   の検証によっては,比較的豊富なデー・夕・バンクが調ってこはいるものの,空間   的相互作用のミクロ・モデルを検証するのに必要なデータほ,殆んどといってI  

もよい程,利用可能でほないのである。したがって,ミクロの水準での信頼で   きるデータの収集・整理がす とくに重要な課題として浮かび上がってくる。   

しかし,無条件にミクロのデータを集めればよい,というわけではない。い   うまでもなく,その賀が問われなければならない。とくに,社会科学の分野で   は,自然科学の分野と違って,実験に・よって十分に制御されたデータを得るこ   とは,きわめて困難なことなのである。その結果,われわれが車道にも入手し   得るデータといえば,その大半が,非実験的なデータなのである。したがって,  

もしもそのデータをある仮説鱒検証のために・用いようとすれば,そのデー才に  

(24)ただし,これらの研究は,いずれも空間的相互作用に関するマクロの分野にかぎら   れている。   

(17)

貨51巻 第1・2弓  

ーヱ∂.2−  

132  

ついて,あらかじめ ⅠObust test を行なっておく必要がある。なぜなら,前   節の最後で指摘した,最大エソトロピ一検定も,また最大光度比検定も,とも   にこの条件をみたさなければならないからである。仮説の検証を試みるという   ことからも,また,純粋匿信顧できる情報を入手したいということからも,つ   ねに質の高いデー一夕の継続的収集と・その改良が,強く望透れているのである。  

〔鮎秋   

本稿は,昭和53年3月,本学経済学部を御退官された松枝寅男教授の記念弓のために.,  

とくに執筆したものである。なお,本学経済学部副手,石田和子さん把.は,清書の労を煩   わした。ここに記して,謝意を表明したい。  

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参照

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