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副査    准教授   根本幸児(理学研究院)

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 島 竹 克 大

学 位 論 文 題 名

電荷密度波におけるトポロジカル効果の光学的検証 学位論文内容の要旨

  本研究ではトポロジー構 造をもつ電荷密度波(CDW)物 質に特徴的を物性を、光学測 定により明 らかにすることを目的とし た。特に針状結晶とりング結 晶の電子緩和ダイナミクスの違いに着目 し、トポロジカル効果を反 映した物性変化を検証した。

  電荷密度波(CDW)は低次元 導体特有の量子現象であり 、電子密度の波と格子の新た を周期ひず みに よっ て生 じる 電 子の 巨視 的量 子 状態 であ る。CDWのコヒ ーレンス長は伝導軸方向に対 して pmオーダ―に達することが 知られており、端を持たず、 繋がった結晶構造をもっトポロジカル結 晶上では閉ループコヒーレンスを反映した物性変化が顕在化する可能性がある。例えば抵抗ゼロで 電荷の波を伝え得るCDWの並 進運動(フレーリッヒ超伝 導)は、トポロジカル結晶上 で顕著と謡 る可能性が指摘されている。このようを結晶トポロジーに起因した電子物性を調べるため、本研究 では非接触・非破壊を光学測定を用いる。さらにコヒーレンスを反映した物性変化を捉えるため、

超短パルスレ―ザー励起による電子緩和ダイナミクスについて調査する。高品質かつ比較的大型の トポ ロジ カル 結晶 の 作製が確立さ れている擬1次元NbSe3を測 定対象とし、光励起による一 粒子 緩和と集団励起からトポロ ジカル効果の定量的を検討を 実現した。

  本論文は全五章から構成 される。以下に各章の要旨を まとめる。

  第一章では、序論として 巨視的を量子現象であるCDW物性について述べる。またト ポロジカル 結晶 にお けるCDW物性 の重 要 性と 期待 され るト ポロジカル効 果について研究背景と共に示 す。

  第二章では、測定に用い たNbSe3トポロジカル結晶試 料と光学測定手法について述 べる。トポ ロジ カル 結晶 は化 学 気相輸送法(CVT)によって作製可能であり 、半径50 pm程度のりング結 晶を 得ることに成功した。また 、微細をNbSe3結晶を測定す るためにフェムト秒パルスレ ーザーを用 いた二色励起顕微分光を確立した。異をるエネルギーをもつ二色励起では、ポンプ光とプロープ光 を同軸で結晶に照射できるため回折限界励起と高感度化が同時に実現される。顕微分光ではさらに 実空間解析を実現した。

  第 三章 では 、CDW相 の選 択 検出 を行 った 。NbSe3は単 位 胞内 に6本3種 類の一次元伝導軸 が存 在 し 、 そ の う ち2種 類 がTc1 145K、TC2=59KでCDW相転 移 する こと が知 られ て いる 。そ のた め、各伝導軸における電子緩和を正確に見積もるためには、光学遷移を利用した選択検出が有効で ある。NbSe3の励起状態はい くっかの共鳴が重をって存在しているため、励起工ネルギーを変化さ せをがら一粒子緩和の温度 特性から選択性を見積もった 。その結果、プローブェネルギーを1.56 eVに 調整 した とき 、TC2 59Kの相 転移応答がTci−―145Kの応 答に対して約5倍程度増強さ れる ことが明らかとをった。こ の選択性にもとづき、BCS温 度依存性を正確に反映した緩 和時間の増 大が観測され、低温での緩 和時間に比ベ20倍程度大きい 約10 psの緩和時間を持つこ とが明らか にをった。相転移温度付近の緩和時間の発散は急峻であることから、高感度を相転移ダイナミクス

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の 検出が実現されたと言える。 一方、集団励起においては低温で2つの共鳴ピークを示し、そのシ フ ト 量が 過去 に報 告さ れ たCDWギ ャッ プ値 〜100 meVと 同程 度 であることを 見出した。以上の 結 果から、工ネルギーによる単 一のCDW相の選択励起メカニ ズムを明らかにした。これ により得 ら れた知見は、高温超伝導体等の複数の秩序相を持つ物質に対して、選択的教検出を実現できる可 能 性がある。

  第四章では、一粒子緩和と集団励起スベクトルから、結晶トポロジ―に依存した電子緩和ダイナ ミ クスの違いを明らかにし、トポロジカル効果の詳細について議論する。一粒子緩和に関して、前 章 の結果を踏まえた相転移近傍の緩和時間の変化を比較対象とする。その結果、リング結晶と針状 結 晶との間に著しい相違が存在 することを見出した。針状 結晶はBCS温度依存性を反映 した緩和 時 間の増大が観測されたのに対して、リング結晶では緩和時間が抑制され、臨界緩和の顕在化が明 ら かとをった。このことは、針 状結晶上ではCDWの隣接鎖間 の秩序形成がスムーズであ るのに対 し 、リング結晶上では隣接鎖間の位相ゆらぎが顕著とをることを示唆している。リング結晶におけ る 位相ゆらぎの顕在化は、伝導軸方向のコヒーレンスが高いことを意味しており、閉ループコヒ―

レ ンスを反映した結果であると解釈することができる。この解釈をさらに検証するために、一粒子 緩 和の実空間特性を調べた。そ の結果、緩和時間がりング 半径に依存した特性を示すことを発見 し 、隣接鎖間のディスロケーション(位相欠陥)モデルを用いて定量的にトポロジカル効果を検証 す ることに成功した。リング結晶中心付近では、ディスローションによって隣接鎖間の相関が著し く 抑制され、位相ゆらぎが顕著とをる。このディスロケーションは動径方向に沿って緩和され、リ ン グ端付近では針状結晶と同程 度の緩和時間に近似される 。このことは、CDWのトポロ ジカル効 果 がコヒーレンス長程度の範囲内でのみ発現可能であることを示唆しており、実験結果の信頼性を 高 め てい る。 なお 、デ ィ スロ ケー ショ ンモデル はりング上で閉じたCDWが形 成されることを前 提 としており、結果は閉ループコヒーレンスを裏付けている。集団励起に対しても、同様の比較を 行 った。集団励起は格子間の相関を反映しているので、両結晶における結晶性を評価することがで き る。その結果、集団励起スベクトルが、リング結晶と針状結晶において同程度の半値幅を示すこ と を見出した。これは、結晶トポロシーに付随する歪の効果については十分小さく、結晶性につい て も同等であることを示唆している。さらに、本章の後半では、結晶性の影響を取り除き、照射面 を 一致させた比較が可能を針状部とりング部を併せ持つ結晶を作製し、その電子緩和ダイナミクス を 測定した。これにより上述と同一の結果が得られ、リング部でのみ、閉ループコヒーレンスを反 映 した位相ゆらぎが顕在化する ことを見出した。

  第 五 章 で は 、 本 研 究 に よ り 得 ら れ たCDWの ト ポロ ジカ ル 効果 に関 する 知見 を まと めた 。 以 上、本研究では光学的手法に より、結晶トポロジーの異 をる場で振る舞うCDW物性を 観測し、

そ の トポ ロジ カル 効果 を 検証 した 。研 究成果と して、トポロジカル結晶上でCDWが閉ループコ ヒ ーレンスを獲得するため、位 相ゆらぎが顕在化すること を見出した。この研究で得られた知見 は 、普遍的であり、様々をトポ ロジー場での応用が期待で きる。

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学位論文審査の要旨

主査    准教授   戸田泰則 副査    教授   森田隆二 副査    教授   丹田   聡 副査    教授   折原   宏

副査    准教授   根本幸児(理学研究院)

学 位 論 文 題 名

電荷密度波におけるトポロジカル効果の光学的検証

本論文ではトポロジー 構造をもつ電荷密度波(CDW)物質に特徴的を物性を、光学 測定により明ら かにすることを目的と している。CDWは低次元導体 特有の量子現象であり、電子 密度の波と格子 の新た橡周期ひずみに よって生じる電子の巨視的量 子状態である。CDWのコヒー レンス長は伝導 軸方向に対してpmオー ダーに達することが知られて おり、端を持たず、繋がった結晶構造をもつ トポロジカル結晶上で は閉ループコヒーレンスを反映した物性変化が顕在化する可能性がある。こ のようを結晶トポロジ ーに起因した電子物性を調べ るため、著者は非接触・非破壊を光学測定を 用いることを提案した 。CDWコヒーレンスを捉える ため、超短パルスレ―ザー励 起による電子緩 和ダイナミクスの観測 手法を確立し、一粒子緩和と 集団励起からトポロジカル効果の検証を実現 した。

  本論文は全五章から 構成される。以下に各章の要 旨を示す。

  第一章では、序論と して巨視的を量子現象であるCDW物性について述べている 。またトポロジ カル結晶におけるCDW物 性の重要性と期待されるト ポロジカル効果について研究 背景と共に示し ている。

  第二章では、測定に 用いたNbSe3トポロジカル結 晶試料と光学特性、およびに 超短パルスレー ザーを用いた時間分解 分光手法ついて述べている。 トポロジカル結晶は化学気 相輸送法(CVT)に よって作製可能であり 、半径50 pm程度のりング結 晶を得ることに成功した。また、微細をNbSe3 結晶を測定するために フウムト秒パルスレーザーを用いた二色励起顕微分光を確立した。異をるエ ネルギーをもつ二色励 起では、ポンプ光とプロープ光を同軸で結晶に照射できるため回折限界励起 と 高 感 度 化 が 同 時 に 実 現 さ れ て い る 。 顕 微 分 光 で は さ ら に 実 空 間 解 析 を 実 現 し た 。   第 三章 で は、CDW相 の 選択 検出 を確 立 した 。NbSe3は単 位胞 内に6本3種類 の一次元伝導軸が 存在 し、 そ のう ち2種 類 がTcl=145K、Tc:z =59KでCDW相転 移 する こと が知 られ て いる 。そ の ため、各伝導軸におけ る電子緩和を正確に見積もるためには、光学遷移を利用した選択検出が有効 である。NbSe3の励起状 態は複数の共鳴から成るこ とに着目し、励起工ネルギー を変化させをが ら選 択性 を 見積 もっ た。その結果、プロープェネ ルギーを1.56 eVに調整した とき、TC2=59Kの 相転 移応 答 がTcl=145Kの 応答 に 対し て約5倍程度 増強されることが明らかと 誼った。この選択

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性にも とづき 、BCS温度 依存性 を正確 に反映 した緩和時間の増大が観測され、低温での緩和時間 に比ベ20倍程度 大きい 約10 psの 緩和時 間を持つ ことが明らかにされた。相転移温度付近の緩和 時間の発散は急峻であることから、高感度を相転移ダイナミクスの検出が実現されたと言える。一 方、集 団励起 におい ては低 温で2つ の共鳴 ピーク を示し、 そのシ フト量が過去に報告されたCDW ギャップ値〜100 meVと同程度であることを見出した。以上の結果から、エネルギーによる単一の CDW相の 選択励起 メカニ ズムを 明らか にした 。このメカニズムは、高温超伝導体等の複数の秩序 相を持つ物質に対しても適用できるため、将来的を展開も見込める。

  第四章では、一粒子緩和と集団励起スペクトルから、結晶トポロジーに依存した電子緩和ダイナ ミクス の違い を明ら かにし、トポロジカル効果の詳細について議論している。一粒子緩和に関し て、前章の結果を踏まえた相転移近傍の緩和時間の変化を比較対象とする。その結果、リング結晶 と針状 結晶と の間に 著しい 相違が 存在す ることを見出した。針状結晶はBCS温度依存性を反映し た緩和時間の増大が観測されたのに対して、リング結晶では緩和時間が抑制され、臨界緩和が顕在 化さ れるこ とを見 出した 。このこ とは、 針状結 晶上で はCDWの隣 接鎖間 の秩序 形成が スムー ズ であるのに対し、リング結晶上では隣接鎖間の位相ゆらぎが顕著とをることを示唆している。リン グ結晶における位相ゆらぎの顕在化は、伝導軸方向のコヒーレンスが高いことを意味しており、閉 ループコヒーレンスを反映した結果であると解釈することができる。この解釈をさらに検証するた めに、一粒子緩和の実空間特性を調べている。その結果、緩和時間がりング半径に依存した特性を 示すことを発見し、隣接鎖間のディスロケーション(位相欠陥)モデルを用いて定量的にトポロジ カル効果を検証することに成功した。リング結晶中心付近では、ディスローションによって隣接鎖 間の相関が著しく抑制され、位相ゆらぎが顕著とをる。このディスロケーションは動径方向に沿っ て緩和 され、 リング 端付近 では針 状結晶 と同程度の緩和時間に近似される。このことは、CDWの トポロジカル効果がコヒーレンス長程度の範囲内でのみ発現可能であることを示唆しており、実験 結果の 信頼性 を高め ている 。をお 、ディ スロケーションモデルはりング上で閉じたCDWが形成さ れるこ とを前 提とし ており、モデルと実験結果との一致はトポロジカル結晶上で閉ループコヒー レンスが存在することを裏付けている。他方、集団励起に対しても比較を行っている。集団励起は 格子間の相関を反映しているので、両結晶における結晶性を評価することができる。その結果、集 団励起スベクトルが、リング結晶と針状結晶において同程度の半値幅を示すことを見出した。これ は、結晶トポロシ―に付随する歪の効果については十分小さく、結晶性についても同等であること を示唆している。さらに結晶性の影響を取り除き、照射面を一致させた比較が可能を針状部とりン グ部を併せ持つ結晶を作製し、その電子緩和ダイナミクスを測定している。これにより上述と同一 の結果が得られ、リング部でのみ、閉ループコヒーレンスを反映した位相ゆらぎが顕在化すること を見出した。

  第五章は総括である。

これを要するに、本研究はトポロジーに起因した新物質のコヒーレンス変化を時間分解分光手法に より初めて捉えることに成功したものであり、応用物理学、特に物性と技術の新領域開拓に寄与す るところ大をるものがある。よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるも のと認める。

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参照

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