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幼児のカテゴリー化における典型性と次元性

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

幼児のカテゴリー化における典型性と次元性

著者 桜井 茂男, 桜井 登世子

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 25

ページ 101‑108

発行年 1989‑03‑01

その他のタイトル Typicality and Dimensionality in Young Children's Categorization

URL http://hdl.handle.net/10105/6669

(2)

幼児のカテゴリー化における典型性と次元性‡

桜井茂男 ・桜井登世子.

     (奈良教育大学心理学教室)

要旨:幼稚園年長児に顔の総力一ドの自由分類を行わせ、幼児のカテゴリー化 に及ぼすカテゴリーの典型性と次元性の影響を検討した。その結果、分析的様 式と全体的様式を用いる者に大別され、分析的様式を用いる者は次元価の同一 性に基くと考えられたが、全体的様式を用いる者については次元価の数に基く 者と知覚的類似性に基く者に分けられた。カテゴリーの典型性と次元性に対す

る認知プロセスが、カテゴリー化様式を決定することが示唆された。

キーワード:典型性、次元性、カテゴリー化様式

 カテゴリー化(CategOriZation)とは、対象間に等価性を見出し、その等価性に基づいて対象 のまとまりを形成していくことである。等価性に関しては、これまで多くの研究が行われてきた。

Bmnerら(1966)は、知覚的属性による等価性、機能的属性による等価性、名義的属性による 等価性の3つの等価性があることを見出しれ

 K1ausmeierら(ユ974)は・等価性の水準に基づいて低次な概念から高次な概念へと・次の4 つの水準を提唱した。①以前に見た対象に再び出会ったとき、以前に見たことがあると認めるこ

とができる具体的水準の等価性、②対象を以前とは異なる視点から見たときでも、以前に見た対 象と同じものであると認めることができる同一性の水準の等価性、③2っ以上の異なる対象が同

じクラス(類)に属するものであると認めることができる分類水準の等価性・④概念の定義づけ ができ、それによって対象を分類することができる形式的水準の等価性。

 以上のうち・同一性の水準の等価性はPiagetの保存性に相当するものであり・Br㎜erら

(1966)が扱った等価性は分類水準に相当するものとみなすことができる。知覚的属性と名義的 属性に基づく等価性に関しては、知覚様式によるカテゴリー化から名義様式によるカテゴリー化 へという発達的な変化が示唆されてきている。知覚的一名義的という観点は、Br㎜erら(1966)

の研究以降、すでに定着していると思えるが、近年になって、異なる視点から学習、知覚、認知 の発達が再検討されるようになってきた。それはKe㎜1er(1983)のいう全体的一分析的、Sbepp

(1983)のいう非分析一分析的という視点である。

 Kem1er(1983)は、分析的様式は全体的様式よりも抽象的であり、知覚の発達が全体的様式

*   Typica1ity and Dimensiona1ity in You口g Chi1dren s Categorization

** Shigeo SAKURAI(Department of Psycho1ogy,Nara University of Education)

***Toyoko SAKURAI

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から分析的様式へ進んでいくと主張した。ここで全体的様式というのは、刺激間の全体的類似性 によって刺激が処理され、体制化されることであり、分析的様式というのは、刺激間に共通する 次元(属性)によって処理され、体制化されることである。

 Smith&Kem1er(1977)は、2次元で変化する3つの刺激(A,B,C)を呈示して、似てい るものまたは同じ仲間のものを2つ選択させる強制分類課題を用いてカテゴリー化様式を査定し た。この課題では、3つのうち2つの刺激(A,B)は、一方の次元に関して等価であるが他方 の次元に関して大きく異なっている。残りの1つの刺激(C)は、他の2っのうちのいずれか

(たとえばB)の刺激と両次元において等価ではないが、非常に類似した価を持っている。Aと Bを仲間にした者は分析的様式を用い、BとCを仲間にした者は全体的様式を用いたとみなされ るが、Sm1th&Kemler(1977)は年令とともに分析的様式を用いる者が増加することを示した。

 Smith(1979)は、色と大きさの2次元が8価で変化する二等辺三角形を刺激として、カテゴ リー般化課題を考案し、カテゴリー化様式の発達的変化を検討した。この課題では、グループA に属する3つの刺激とグループBに属する3つの刺激を標本刺激としてブロック呈示し、それぞ れが仲間であることを教えたあとで、別に用意した刺激を1枚すっ呈示して、それぞれがグルー プAに属するか、グループBに属するかを判断させる。その結果、幼児は全体的類似性によって カテゴリー化する者が多く、5年生は次元によってカテゴリー化する者が多かったことから、

S㎡ith(1979)はカテゴリー化様式が全体的様式から分析的様式へと発達的に変化すると結論し

た。

 Kemler Ne1s㎝(1984)は、図式的な顔の絵事例の分類学習課題を用いて、大学生と子供のカ テゴリー化様式が全体的か分析的かを査定した。この課題では、1つの基準次元でも全体的類似 性でも分類できるルールを持っ課題を学習させてから、プローブ事例を呈示して、カテゴリー化 様式を査定する。Kem1er NeIsonは、意図条件と偶発条件の下で大学生に分類学習を行わせた 結果、意図条件下では分析的様式を用いやすく、偶発条件下では全体的様式を用いやすいことを 示し、また、幼児は全体的様式を用いやすく、小学5年生は全体的様式と分析的様式を同程度に 用いることを示した。杉村・井上(1987a)は、類似性と基準次元の両方で分類できるルールを 持つ課題では、幼児も大人と同様に分析的様式を用いやすく、類似性でしかカテゴリー化できな いルールを持つ課題では、大人も幼児も全体的様式を用いやすいことを示した。Ward&Scott

(1987)もまた幼児も大人と同様に、全体的様式よりもむしろ分析的様式を用いやすいと主張し ている。さらに杉村・井上(1987b)は、2つのルールを持っ課題で標本(プロトタイプ)事 例と学習事例の類似性が低い課題の方が高い課題よりも分析的様式を用いやすいことを示した。

 以上のように、3つの課題を用いてカテゴリー化様式が全体的であるか分析的であるか検討さ れてきており、カテゴリー化様式の発達的変化については様々な要因が関与していることが示唆 されている。本研究では分類学習課題を用いてカテゴリー化様式を査定するが、この課題におい て図1に示すような認知的プロセスが考えられる。

(4)

①標本事例を認知

②標本事例と学習事例を対照

③次元を認知 ③知覚的類似性を認知

④各事例を関連化 ④各事例を個別化 ④各事例を関連化 ④各事例を個別化

⑤事例間に共通する ⑤標本事例と個々 ⑤事例間の直感的

次元価の同一性 の学習事例との 類似度

共通次元価の数

分析的様式. 全体的様式

図1 カテゴリー化における認知プロセス

 まず、①標本事例を認知し、②標本事例と学習事例を対照する。この後、分析的様式では、③ 次元を認知し、④各事例を関連化し、⑤事例間に共通する次元価の同一性を見出す。全体的様式 では、③次元を認知するが、④各事例を個別化し、⑤標本事例と個々の学習事例との共通次元価 の数を数える場合と、③知覚的類似性を認知し、④各事例を関運化、又は④各事例を個別化し、

⑤事例間の直感的な類似度による場合を考えることができる。

 本研究の目的は・カテゴリーの典型事例であるプロトタイプ事例(Rosch&Mervis,1975)

を標本事例として呈示し、幼児に自由分類をさせてカテゴリー化様式が全体的か分析的かを査定 し、幼児の分類学習課題における典型性と次元性の影響を検討していくと共に幼児のカテゴリー 化のプロセスを明らかにすることである。

方      法

被験者  被験者は幼稚園年長組の幼児125名(男児62名、女児63名)であり、平均年令は 5:9才であった。

 刺激  耳の大き・さ(大・小)、前髪の分け目(左・右)、目と目の間隔(広・狭)、鼻の形

(三角・四角)、口の大きさ.(大・小)の5次元2価を組み含わせてできる32通りの図式的な絵 からなる。これらの絵は6,O㎝×8.0㎝の白い紙に描かれ、ゼロックスにとり、6.5㎝×8.5㎝の白 い厚紙に貼布された。刺激を1,0の記号で表したものが図2に示されている。図2において 1m1で表される事例は、耳が小さくて、前髪の分け目が右で、目と目の闇隔が広く、鼻の形が

(5)

三角で、口が小さい顔であることを示し、00000で表される事例は、耳が大きくて、前髪の分け 目が左で、目と目の間隔が狭く、鼻の形が四角で、口が大きい顔であることを示す。

●    ●

11111 00000

図2 刺    激

 カテゴリー構造  カテゴリー1の典型価を1、カテゴリー0の典型価を0としたとき、この 図は、便趾、典型量によって表したものである。

標本事例

分類事例

カテゴリー1

11111 11110 11101 11011 10111 01111 11100 11010 11001 10101 10110 10011 01110 01101 01011 00111

カテゴリー0

00000 00001 00010 00100 01000 10000 00011 00101 00110 01010

01001

01100

10001 10010 10100

1工000

図3 カテゴリー構造

a)標本事例 カテゴリー1の典型価を1、カテゴリー0の典型価を0としたとき、標本事例 は全ての次元が各カテゴリー一の典型価を持っているので、11111はカテゴリー1の、00000 はカテゴリー0の典型事例である。本研究ではこれら2っの典型事例を標本事例として左右 に呈示し、次に述べる30枚の事例を分類させた。

(6)

 b)分類事例 分類事例は、カテゴリー1とカテゴリー0の典型事例から派生したものであり、

  各カテゴリーの典型価を4つ持つ5事例・3つ持つ10事例の合計30事例であっれ  手続き  個別実験であり、被験者と実験者は机をはさんで向かいあってすわった。机の上に

は赤い分類箱(低面15㎝X27㎝、前面の高さ5c迦、後面の高さエ5㎝、斜面に向けられた投入口

(1.5㎝x8㎝)か投入口を被験者の方に向けて置かれていた。各々の没入口の下にはカテゴリー iのプロトタイプ事例11111、カテゴリー0のプロトタイプ事例00000が貼布されていた。実 験者は次のような教示を与えた。

 「今からお姉さんと仲間集めっていうお遊びをしましょうね。(被験者の向かって左の標本事 例を指しながら)この子はけんちゃんよ。(被験者の向カ)って右の標本事例を指しながら)そし てね、この子はたけしちゃんよ。(カードを1枚手に持って見せながら)これから○○ちゃんに カードを渡すから、けんちゃんの仲間がたけしちゃんの仲間か教えてほしいの。げんちゃんの仲 間だと思ったらここ(けんちゃんの顔の上の投入口を示す)、たけしちゃんの仲間だと思ったら ここ(たけしちゃんの顔の上の投入口を示す)に、カードを入れてちょうだい。じゃ、このカー

ドはどっちの仲間がな。」

 教示に続き、30枚の分類事例を1枚すっランダムに呈示し、どちらかの標本事例の上の投入 口に入れさせた。自由分類なので、反応に対して正誤のフィードバックは与えなかった。

結     果

 表1は、各事例ごとにカテゴリー1に分類した人数とその割合(%)を示したものである。表 が示すように、カテゴリー1の典型価を4っ持っ事例は平均75%、典型価を3つ持っ事例は平 均62%、典型価を2つ持っ事例は平均40%、典型価を1つ持っ事例は平均22%の割合で、カ テゴリー1の仲間であると判断された。

表1 カテゴリー1に分類した人数と割合 事 例   人 数

11110      93 11101      89 11011      98 10111      69 01111      98

11100      66

uO10     71

11001      74

10101    69 10110     73 10011      74 011王0      69 01101     78 01011     88 00n1     78

(%)

74,4 71,2 78,4 76,8 78.4

52,8 56,8 59,2 55,2 58,4 59,2 55,2 62,4 70,4 62.4

事例   人数

11000     43 10100     45 10010     58 10001     47 01100     52 01010     53 01001     54 00101     47 00110     49 00011     56

10000      26 01000     29 00100     24 00010     31 0000工     31

(%)

34,4 36,0 46,4 37,6 41,6 42,4 43,2 37,6 39,2 44.8

20,8 23,2 19,2 24,8 24.8

(7)

 表2は、分析的様式、全体的様式(次元価の数、直感的類似性)、不定別にカテゴリー化様式 を示したものである。期待値(41.7)とのパ検定を行った結果、パ(2)=35.12,P<.001とな り幼児が用いるカテゴリー化様式が期待値と有意に異なることが示された。そこで、各カテゴリー 化様式を対にしてそれぞれ期待値とのパ検定を行った結果、分析的様式者と全体的様式者の対 については有意差がみられず、不定様式者との対について有意差がみられた。

表2 カテゴリー化様式

人  数 分析的      全体的

125      65

%         52.O

不  定

48       12 38.4       9,6

 分析的様式者について、どの基準次元を用いたかを調べてみると、表3に示すように鼻が最も 多く(63%)・次いで髪(23%)、耳・口・目は同程度(5%)に用いられた。全体的様式者につ いて、事例間に共通の同一次元伍の数によるか、あるいは知覚的類似性によるかを調べてみると、

次元価の数を数えたと思われる者は26名(54%)・知覚的類似性による者は22名(46%)であっ

た。

表3 分析的様式者における基準次元別の人数と割合

基準次 元

耳      口

入 数     3

目     髪 3      41       3

%      5      5 63       5

15 23

考      察

 表2に示されるように、幼児は分析的様式か全体的様式のいずれかによってカテゴリー化を行っ ている者が大部分を占めている。このことは、図1に示された認知のプロセスによると、幼児は 標本刺激と分類刺激を対照したあと、次元を認知する者と知覚的類似性を認知する者に分かれる

ことを示唆するものである。本研究では、91名が次元を認知し、22名が知覚的類似性を認知し ていた。従来の研究において(Kem1er,1983;Kem1er Ne1son,1984;Smith,1979)、全体的 様式は直感的類似性の認知のみによると考えられていたが、本研究では、次元認知によると思わ れる全体的様式者が26名いた。図1に示された次元認知の後、事例間の共通次元価を数えるこ

(8)

とによる全体的様式のプロセスは、主として大人の用いる全体的様式について考えられていたが

(杉村・井上、1987a)、このプロセスは幼児にもあてはまるものであり、幼児の全体的様式者の 中にも分析的様式者と同様に次元を認知する者が居ることが示された。本研究の標本刺激はプロ

トタイプであったので、すべての次元がカテゴリーの典型価を持っていた。したがって、次元を 認知したあと、各事例を関連化させて次元性に注意を向けたか、あるいは各事例を個別化して、

各カテゴリーの典型性を表すものとして次元価をとらえていたかによって分析的様式者と全体的 様式者に分かれたと考えてよいであろう。

 知覚的類似性による全体的様式者がもっとも少なかったことは、Kem1er Ne1s㎝(1984)の主 張である全体的様式から分析的様式へという発達的変化を支持するものではなく、幼児でも大人 と同様の認知プロセスによってカテゴリー化を行い得ることを示している。特に分類学習課題の ように、1枚の標本刺激との対照といった状況下では1対1の対応は幼児にとって困難なもので はなく、分析しやすいと思われる。カテゴリー般化課題のように、複数の標本刺激の場合は次元 認知より、知覚的類似性を認知する方が容易であるかもしれないが、このことは今後検討する必 要があるであろう。

 表3に示すように、分析的様式を用いた者のうち、鼻と髪の次元を用いた者が多かった。耳、

口、目の次元は、大小、広狭というように相対的な概念関係の理解を必要とする量的変化である のに対し、鼻は形、髪は位置というように、1対1のマッチングによる質的変化である。幼児の 発達検査においても、1対1のマッチング関係による概念関係より、相対的な概念関係の方が高 いレベルにある。したがって、鼻の次元を用いた者がもっとも多かったという本研究の結果は、

概念の発達関係と一致するものであるといえよう。

 以上のように、幼児のカテゴリー化はカテゴリーの次元性に注目するか典型性に注目するか、

という認知プロセスを経ており、次元価の同一性、次元価の数、直感的類似性のいずれを見出す かによって、カテゴリー化様式が決定されることが示された。

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