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論文の内容の要旨

氏名: 澤 信 輔

専攻分野の名称:博士(医学)

論文題名:腎芽腫におけるKCNQ1OT1を標的とした転写因子結合阻害薬pyrrole-imidazole polyamide による抗腫瘍効果の検討

【はじめに】Genomic Imprintingとは,父母の配偶子形成過程でepigeneticな情報がgenomeに刷り 込まれ,受精後から生涯を通して父母由来対立遺伝子の発現に差が出る現象である.Imprinting異常の代 表的疾患である Beckwith-Wiedemann症候群(以下,BWS)は,11p15.5に原因遺伝子座をもつ先天性 疾患であり,高率に腎芽腫などの胎児性腫瘍を合併する.11p15.5内の2つのdifferentially methylated region(KvDMR,H19DMR)にはKCNQ1OT1/p57KIP2IGF2/H19というimprinting control region それぞれ存在し,それらの遺伝子の欠失,メチル化異常,uniparent disomyによってimprinting異常が 生じ,その結果 BWS が発症すると考えられている.KvDMR では,long non-coding RNA である KCNQ1OT1によって腫瘍抑制遺伝子であるp57KIP2(以下,KIP2)を含む周辺遺伝子がcisに発現抑制さ れている.KCNQ1OT1 promoter領域の脱メチル化およびKIP2の低発現は様々な腫瘍で認められており,

KCNQ1OT1 の過剰発現による KIP2 の発現低下は腫瘍発生に関わっていることが推測される.一方,

pyrrole-imidazole polyamides(以下,PIP)は DNA 配列を特異的に認識・結合することが可能であり,

目的遺伝子の転写因子結合領域に競合的に結合することで目的遺伝子の発現を抑制することができる新規 化合物である.

【目的】KCNQ1OT1の発現を抑制するPIPの開発およびKCNQ1OT1の過剰発現とKIP2の発現低下が 腫瘍発生に関連していると考えられる腎芽腫細胞株(G401)に対して,PIPを用いて抗腫瘍効果を検討す る研究を計画した.

【方法】KCNQ1OT1 promoter領域で最も活性が高いCCAAT boxに結合するようにPIPを設計・合成し た.それらのDNA配列特異的結合能の確認を行い,同PIPを用いてKCNQ1OT1の発現抑制をヒトBWS 線維芽細胞株(以下,BWS6789)とヒト腎芽腫細胞株(以下,G401)で検討した.また,KCNQ1OT1 の発現抑制による抗腫瘍効果をG401で検討した.

【結果】KCNQ1OT1 promoter領域のCCAAT boxを認識・結合するように設計・合成した2種類のPIP が,それぞれ配列特異的に結合することと生細胞核内に取り込まれることを確認した.BWS6,7,8,9 のうちKvDMR promoter領域が低メチル化であったBWS6,9 と,同様に低メチル化であったG401 対して2種類のPIPの同時投与によりKCNQ1OT1の有意な発現抑制を認めた.G401ではPIP投与によ って,KIP2の発現増加は確認されなかったが,KIP2蛋白の発現増加を認めた.さらに,PIP投与によっ て非投与群と比較して有意に細胞増殖抑制効果と早期・後期apoptosis誘導の有意な増加を認めた.

【結語】BWS6,9G401とを用いたin vitroの系において,PIP投与によりKCNQ1OT1の有意な発現 抑制が確認された.PIPによりG401で生じた細胞増殖抑制効果は,KCNQ1OT1の発現抑制によりKIP2 の発現抑制が解除され,KIP2蛋白の発現が上昇しapoptosis誘導が増加したことによるものと考えられた.

以上より,このPIPは腎芽腫およびKCNQ1OT1が発現増加している腫瘍に対する新規分子標的治療薬と なる可能性が示唆された.

参照

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