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産みたいのに産めない 卵子老化の衝撃

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Academic year: 2021

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75 書   評

この本は、将来、自分の子どもを持つであろう学生たちに、是非読んでもらいたい本である。本書で は、20歳の女性が読んだ場合、その女性が子どもを産めるタイムリミットは、ほぼ15年であるという事 実が突きつけられている。しかし、この事実を知っている日本人はとても少ない。

日本は、過去にないほど出生率が減少している。その原因の一つとして卵子の老化による不妊があげ られる。日本で行われている学校での保健に関する教育では、卵子の老化について全く触れられていな い。イギリスの大学教授が日本の現状について指摘した言葉で「日本は不妊についての正しい知識が不 足している上に、不妊について話すことを避けてきた。そのことが新たな不妊を次々に生んでいるの だ。このままでは、日本は次の世紀を生き延びることができないでしょう」がある。本書は、この状況 を変えることができるのか?そのために何が必要なのか?についてその手がかりを求めて、国内外を駆 け巡った取材班の記録である。そして本書は、HPアクセス100万件という大反響を呼んだNHKスペ シャルを単行本化したものである。

ここで大きな問題として取り上げられているのは、不妊治療を希望してくる30代後半の母親が、不妊 の原因は卵子の老化にあると言うことを初めて知る事実である。世間によく知られていることは、35歳 を過ぎると、染色体異常などの生まれつき体に障害を持った子どもの出生率が高くなると言うことであ るが、30代で卵子が老化してしまうという事実は、教育されていない。今、「美魔女」や「アンチエイ ジング」という言葉が飛び交っているおかげで、いつまでも若々しい30代、40代の女性たちがあふれて いる。しかし、外見は若く作れても、人間が持っている「卵子」は確実に年をとっていくと言うことで ある。卵子の外見は変わらなくても、35歳を過ぎるとなかなか出産ま

でに行かない。「高齢でも体外受精などの高度治療を受ければ妊娠で きる」と考えている患者が85%と非常に多い。

日本は体外受精件数、クリニックとも世界一であるが、採卵一個あ たりの出産の割合を見ると18%で、20%に満たないのは、先進国の中 で日本だけである。体外受精を行う女性の内40歳以上の人の割合は 30%で、他の先進国の 2 倍から 4 倍になっている。

不妊治療の初診患者の80%が35歳以上、初診患者の平均年齢は36.3 歳であり、過去10年間で 3 歳も年齢が上がっている。この原因とし て、社会的背景がある。それは、雇用機会均等法が施行されること で、社会人として成長期となるのは20代から30代前半で、丁度、妊娠 適齢期と重なってしまう。キャリアを積んで、仕事が落ち着いたとき には30代後半となってしまう。女性の社会参画が進み、晩婚化、晩産 化はいまや先進国の社会問題となっている。日本以外の先進国では、

NHK取材班 編著

産みたいのに産めない 卵子老化の衝撃

小 玉 正 志

書  評

*弘前大学教育学部

Faculty of Education, Hirosaki University

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76 書   評

他の健康問題と同等に扱っているか、国を挙げて取り組んでいるが、今の日本では、不妊に関する議論 もなされず、不妊に関する知識も乏しい。本書では、男女とも若いうちから、特に社会に出る前の学生 に不妊の知識を啓蒙するべきと述べている。

〔文藝春秋 1,400円〕

参照

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