◎論説特集◎中国ポスト五十年の胎動
中 国 に お け る 現 代 型 犯 罪 と 規 制 対 策郭翔
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本論文の主旨は中華人民共和国成立以来︑特に改革・開
放政策が実施されて以降の中国における現代型犯罪の状況
および変化の傾向について検討するとともに︑犯罪の予防・
規制対策にも適宜触れることにある︒
犯罪の概念について
政治︑経済︑文化︑法律制度及び社会発展の歴史的過程
が国によって異なるため︑犯罪についての定義も全く同じ
というわけにはいかない︒同じ国の中であっても︑学科が
違えば研究の対象が異なるから︑例えば刑法学と犯罪学と
では︑その犯罪に対する定義にも違いがある︒したがって
本論文では中国の犯罪に関する概念について少し紹介する 必要がある︒
刑法学の角度からみると︑犯罪とは通常︑社会に危害を
及ぼし︑国の刑事に係わる法律に抵触し︑それによって刑
事罰を受けるべき行為を指す︒新たに改正された﹁中華人
民共和国刑法﹂(一九七九年七月一日採択︑一九九七年三月
一四日改正︑一九九七年一〇月一日施行)第=二条は次の
ように規定している︒﹁国の主権︑領土の保全と安全に危害
を及ぼし︑国を分裂させ︑人民民主独裁の政権を転覆させ︑
社会主義制度を覆し︑社会秩序と経済秩序を破壊し︑国有
財産もしくは勤労大衆による集団所有の財産を侵犯し︑公
民の私的所有の財産を侵犯し︑公民の人身の権利︑民主的
権利やその他の権利を侵犯し︑および社会に危害を及ぼす
その他の行為で︑法律に従い刑事罰を受けるぺきものは︑
中国 におけ る現代型 犯罪 と規制対策
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すべて犯罪である︒ただし情状が著しく軽微で危害の大き
くないものは︑犯罪とは認めない︒﹂これが犯罪に関する中
国刑法の定義であり︑中国において犯罪を認定し︑および
罪と罪でないものとを区別する基本的な法律的根拠である︒
犯罪の概念に関する中国刑法の規定に基づいて︑犯罪に
は次の三つの基本的特徴があると刑法学は考えている︒第
一に︑犯罪は社会に危害を及ぼす行為である︒すなわち社
会的危害性を有している︒社会的危害性のない行為は︑犯
罪を構成しない︒ただし︑社会的危害性が重大でない場合
にも︑犯罪とは認めない︒社会的危害性の大きさ・重さが︑
犯罪であるか︑それともその他の違法︑規則違反もしくは
錯誤行為であるかを区別する境界である︒第二に︑犯罪は
刑法に触れる行為である︒すなわち刑事的違法性を有して
いる︒社会に危害を及ぼす行為が一般的違法行為に過ぎず︑
国の刑法に触れる程度にまで達していない場合は︑一般的
違法行為としかみなされず︑犯罪行為と認めることはでき
ない︒第三に︑犯罪は刑事罰を受けるべき行為である︒す
なわち懲罰を受けるべき性格を有している︒いかなる違法
行為も相応の法律的結果(すなわち責任)を担わねばなら
ない︒刑法に違反する行為は︑刑事罰という法律的結果を
担わねばならない︒刑事罰を受けるべきでない行為は︑た
とえ社会に危害を及ぼす行為であっても︑犯罪と認めるこ
とはできない︒刑事罰を受けるべきでないということは︑ 司法実践において刑事罰を受ける必要がないということと
同じではない︒一部の行為はすでに犯罪を構成しており︑
刑事罰を受けるべきであるが︑ある種の情状酌量条件(自
首︑未成年者の犯罪等)を考慮し︑刑罰を下す必要がなく︑
刑罰を免除されるが︑その前提はやはり刑事罰を受けるべ
き犯罪行為であるということである︒この三つの基本的特
徴が完全な犯罪の概念を構成する︒
犯罪の概念に関する刑法学の解釈のほか︑犯罪学研究の
中にも犯罪の概念に関する解釈がある︒両者は基本的に一
致するものであり︑かつ犯罪学における犯罪の概念は刑法
学における犯罪の概念をベースとするものである︒しかし
ながら刑法学が主として犯罪と刑罰の問題を研究するのに
対して︑犯罪学は犯罪の発生︑発展変化の法則および予防
対策を主として研究するものであるため︑犯罪学において
犯罪の概念に含まれる範囲はやや広い︒すなわち厳密な刑
法の意義における犯罪だけでなく︑麻薬吸飲︑売買春等︑
刑事責任を負わないが社会に危害を及ぼすその他の違法行
為も含まれる︒本論文でいうところの犯罪の概念は︑主と
して刑法学における犯罪の概念を指すが︑犯罪学における
犯罪の概念にまで及ぶこともある︒
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一一犯罪の分類と犯罪統計について
犯罪の分類については︑刑法学上の犯罪の分類もあれば︑
犯罪学上の分類もある︒この二種類の分類は違いもあれば
関連もある︒
犯罪現象は複雑で多様である︒犯罪の性質およびその危
害の程度を判断し︑量刑決定の根拠とするために︑刑法総
則と刑法各則はそれぞれの角度から犯罪に対して分類を
行っている︒中国刑法総則の犯罪分類には主として故意犯
罪と過失犯罪があり︑故意犯罪はさらに予備犯罪︑未遂犯
罪︑既遂犯罪︑中止犯罪に分けられる︒共同犯罪は︑一般
共同故意犯罪と集団犯罪に分けられる︒犯罪人によって区
分すると︑満一八歳以上の成年者犯罪と満一四歳以上一八
歳未満の未成年者犯罪︑精神病者犯罪︑聾唖者犯罪︑盲人
犯罪等に分けられる︒中国の刑法各則の犯罪分類は︑犯罪
が侵害した客体およびその行為の特徴によって︑さまざま
な犯罪行為を一〇種類にまとめている︒すなわち︑国家の
安全に危害を及ぼす罪︑公共の安全に危害を及ぼす罪︑社
会主義市場経済秩序を破壊する罪︑公民の人身の権利︑民
主的権利を侵犯する罪︑財産を侵犯する罪︑社会管理秩序
を妨害する罪︑国防利益に危害を及ぼす罪︑贈収賄罪︑汚
職罪︑軍人の職責に違反する罪である︒犯罪学における犯 罪の分類は︑主として犯罪行為の性質およびその特徴によっ
て犯罪の種類を区分している︒現在︑中国の犯罪学におけ
る犯罪の分類には主として︑暴力犯罪︑財産犯罪︑性犯罪︑
経済犯罪︑毒物犯罪等がある︒このほか︑犯罪人の年齢に
よって︑満一八歳以上の成年者犯罪と満一四歳以上一八歳
未満の少年犯罪に分けられるが︑二五歳以下の者の犯罪は
青少年犯罪とも呼ばれる︒犯罪人の性別によって︑男性犯
罪と女性犯罪に分けられる︒犯罪人の職業によって︑在職
勤労者犯罪︑失業待業者犯罪︑学生犯罪︑農民犯罪等に分
けられる︒戸籍管理状況によって︑都市住民犯罪︑農村住
民犯罪︑都市流入外来者犯罪等に分けられる︒犯罪主体形
態の違いによって︑個人犯罪︑グループ犯罪︑組織的犯罪︑
暴力団犯罪等に分けられる︒犯罪活動が行われる空間の差
異によって︑固定区域の犯罪︑逃亡者犯罪︑越境犯罪︑国
際的犯罪等に分けられる︒
中国の犯罪統計は︑主として刑法の罪名に関する規定に
したがい︑さまざまなタイプの刑事案件に分けて統計を行
うものである︒刑事訴訟法に定められた︑刑事司法部門が
刑事案件を扱う職権によって分けると︑公安部門の﹁刑事
立件﹂統計︑検察機関が逮捕を認めた犯罪容疑者︑自己調
査案件︑提訴案件の統計︑裁判所一審・二審の刑事案件受
理および結審に関する統計︑ならびに刑務所の収監者に関
する統計等に分けられる︒本論文は主として公安部門の刑
中国 における現代型犯罪 と規制 対策 215
事立件に関する統計に基づいて犯罪状況およびその変化の
動向・特徴を分析する︒
中国の犯罪統計に関する資料は八〇年代中期までは社会
に公表されなかった︒一九八七年以降︑中国はようやく犯
罪統計資料を徐々に公表するようになり︑また過去の犯罪
統計資料も補足的に公表された︒公安部門の刑事立件に関
する統計は︑刑法の罪名に関する規定ならびに犯罪の実際
状況に基づいて分類統計を行うものであるから︑犯罪の変
化や次々に行われる刑法の補足規定の公布によって︑刑事
立件統計の項目も絶えず修正・補充されている︒例えば︑
一九八七年には︑全国の刑事立件の種類としては︑殺人︑
傷害︑強奪︑強姦︑窃盗(重大窃盗を含む)︑詐欺︑通貨証
票偽造の七項目があった︒一九九一年の統計ではこれに﹁人
身誘拐売買﹂﹁密輸﹂﹁毒物製造販売﹂﹁その他﹂の四項目が
付け加えられた︒一九九五年にはまた﹁殺人﹂﹁傷害﹂﹁強
奪﹂﹁強姦﹂﹁人身誘拐売買﹂﹁窃盗(①重大窃盗︑②自転車
窃盗を含む)﹁詐欺﹂﹁密輸﹂﹁通貨偽造販売輸送﹂﹁その他﹂
の一〇項目に改められた︒世界の多くの国・地域と比べる
と︑中国の犯罪統計資料はなお大ざっぱであり︑今に至る
まで中国では詳細な統計資料を集計した﹁犯罪白書﹂もし
くは国の﹁統一的犯罪報告﹂が出版されていない︒歴史的・
現実的な不正常さから︑犯罪統計の中にはまだある種の人
為的な﹁ブラック・データ﹂が存在する︒とはいえ︑中国 公安部門の刑事立件に関する統計資料は︑やはりわれわれ
が中国における犯罪状況およびその変化・特徴を分析する
場合の主たる政府側データである︒このほか︑喜ばしいの
は︑中国では八〇年代以降︑学術界と刑事司法部門が犯罪
問題に対する研究を強化していることである︒一部の研究
プロジェクトは国もしくは地方の哲学社会科学研究計画に
組み入れられ︑重点研究プロジェクトとなっているものも
ある︒こうした研究プロジェクトにおいても︑さまざまな
角度から犯罪統計資料が集められている︒これらはいずれ
も︑中国の現代における犯罪問題の研究のために資料とし
ての根拠を提供するものである︒
中国の現代社会における刑事犯罪の状況およびその変化
犯罪は一種の複雑な社会現象であると同時に︑変化の多
い社会現象でもある︒犯罪現象は孤立し静止しているもの
ではなく︑政治︑経済︑文化︑科学技術及び国内外の社会
的関係の変化によって変化するものである︒犯罪はつねに
時代の特徴と歴史の烙印とを帯びているものなのだ︒
一九四九年一〇月一日に中華人民共和国が成立してから
すでに四九年が過ぎた︒この半世紀近くの間に︑中国社会
の政治︑経済︑文化︑科学技術︑国内外の関係・交流には
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