熊大教育工学センター紀要、
第2号,45-54,1985
課題学習を通してみた重度精神発達遅滞児の 交信行動形成過程
池 部 義 信 *
TheFormationProcessofCommunicative BehaviorinaProfoundlyMentallyRetardedChild
YoshinobulKEBE
(Receivedl,Octoberl984)
Thispaperreportsontheformationprocessofcommunicativebehaviorduring2 yearsinafourteen、year-oldprofoundlymentallyretardedgirl,whoneedsthemaxi・
mumaidinmostofADL・Shehasseverelimitationsinhercommunicativebehavior anddisplaysstereotypies,e,9.,blindisms・Theresultofthestudypointstothe
necessityofthemethodsofhumanbehavioralOrganization・
Themainleamingtasksgiventoherweredesignedtoprompthermanipulatory sensori・motorabilitiesandcomunicativebehaviors、Aftertheformationofmatching,
to、samplebehavior,manykindsofstimuli(e、g、,objects,colors,geometricalfigureS photocards、picturecards)wereusedandthenumberofchoice、stimuliwasincreased・
Hervisualsearchandcomparisonwerefacilitatedthroughsuchlearning・Asa result,hercommunicativebehaviorsweredeveloped.
問題の所在と目的
教育とは人と人との関りあいから出発するもので あると言われている.しかし,対象の子どもの障害 の程度が重度であったり,その種類が重複している 場合問題が生じてくる.すなわち,教師の目にはそ のような子どもが,「反応のない子ども」「何もできな い子ども」「いつも同じことしかしない子ども」とし て写ってしまい,教育的な関りあいが円滑に進めら れない場合が多い.これは教師にとっては子どもの ことが分からず何をしてよいか途方にくれている状 況であり,子どもにとっては教師の意図にどう対処 すればよいのか分からず右往左往している状況であ る.このような状況を梅津(1974)')は「相互障害状
況」と言っている.この状況から脱却を試みない限り,
教育活動はそこで滞ってしまう.その解決のための 1つの方法として,教育活動における子どもと教師 の関係を改めて問い直すことの必要性を痛感する.
教育現場においては,教師が子どもの実態を十分 とらえず一方的に子どもの特徴を決めつけ,それに .附属養護学校
基づいて指導を行うために,子どものニードに合わ ない教育を行っていることが多く見られる.ある場 合には子どもの自発的な行動の発現を抑えてしまう
という事態が生じている●これは子どもと教師との 関係について,「教え導く」という「指導」を前面に押
し出したために起った問題であると考えることがで きる.重度重複障害児の教育に当っては,始めから
「指導」を前面に押し出すのではなく,子どもと関り あいながら,「子どもの実態を子どもから教わる」こ
との大切さを認識することが重要である.この点を おろそかにして,重度重複障害児に「指導」をする ことは,子どもにとって可能なことを無視すること になったり,無理なことを押しつけたりすることに つながる・松田(1984)2)は「このような状況におい ては,子どもと大人の関りあいの成立.発展を,教 師自身が妨げていることである。」と指摘している.
子どもと関りあいながら,「子どもの実態を子ども から教わる」ためには,子どもが物や人に対してど のように感覚を使い,どのような運動を起こしてい るかに着目して行動を観察する必要がある.その際 重要なことは,教師が子どもの行動を適確にとらえ るための観察眼を養いながら,その底にある子ども
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の考え方や行動の原則を理解して,子どもに適した 学習条件を工夫していくことである.このような子 どもと教師の関りあいの中から,「相互に分かりあ い,安心できる関係」が徐々に培われてくると考え られる.
一 方 , 子 ど も の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 行 動 を 検 討 し ていく時に,音声言語の獲得あるいは未獲得という ことが子どもの発達の上で大きな要因になることは 一般に了解されている.しかし,それ以前にもいく つかの大事な節目があることも事実である.たとえ ば,物へのかかわり方や人へのかかわり方,さらに 目や手の動き・使い方などの質的な変化は,その後 の子どものコミュニケーション行動の形成の上に大 きな影響を与えるものであると考えられる.音声言 語による交信が成立していない重度重複障害児のコ ミュニケーション行動を検討していく際には,この 視点が特に重要である.すなわち,子どもと教師が
「相互に分かりあい,安心できる関係」をもとにしな がら,その関りあいの中で状況を徐々に変えその変 化に子どもがどう応じていくかを観察していくこと であり,その際子どもの受信行動や発信行動の特微 を見極めることである。このことは子どもと教師の 関りあいの出発点であり,相互のコミュニケーショ ン関係そのものであると言える.
そして,このような関りあいを出発点としてその 取り組みを継続・発展させながら,対応行動のレパ ートリーを拡大させていくことが大切になってくる.
そのためには,教師側には教材・教具を含めて種々 の学習条件を工夫すること,さらに援助や交信の仕 方について工夫することが必要になってくる.この ことは,これらの取り組みを通して物や人への対応 行動のレパートリーを掘り起こし,より高次のコミ
ュニケーション行動の成立をめざして,その土台づ くりを工夫している過程であるととらえることがで きる.
さらに,子どもの行動の拡大と共に子どもと教師 の関りをより整った形式で成立させることが重要に なってくると考えられる.たとえば,身振りサイン によるやりとり,教師の要請どおりに物を分類する こと,教師の示す見本と同じ特徴をもった物を選択 すること等である.このような選択的なやりとりが できるようになると,教師は子どもの刺激受容の実 態についてより適確に把握できるようになると同時 に,刺激受容を一層高めることも可能になってくる と考えられる.
このような関りを一層発展させて,次の段階では
少しずつ空間の基礎的学習に進み,平仮名文字や音 声言語等構成的なレベルの課題へ移行することが可 能となるであろう.
重度重複障害児の場合,「コミュニケーション」を 主要な視点とした取り組みは,上記のような関りを 長期間継続して行うことが大切であると思われる.
そして,そこで展開される学習は,日常生活のしつ け,遊び,集団参加などの基礎であると共に,道具 の使用を可能にし,思考を促し,より精神活動を豊 富にするために必要なものである.このような学習 は自然に獲得されるものではなく,沢山の細かい学 習段階を経て徐々に形成されるものである.このよ うな意味から,子どもと教師の関りあいを大切にし ながら,相互にその関りあいを高めあう関係を進展 させていくことが,今日の重度重複障害児を含めた 障害児教育の中で最も重要な課題であると考える.
ここでは上記の観点から,日常生活が受動的で,
かつ種々の要求表現や意思表示が微弱な重度のダウ ン症児に対する関りについて事例報告を行うことに する.
本児との関りにおいては,身振りを伴った簡単な 指示には応ずるものの,発語はほとんど見られず音 声言語による交信は困難である.また一人の場面で は,自分の身体で遊んだり揺り動かしたりして常同 行動を繰り返している.このような子どもの場合,
指導の手がかりをどうつくっていくのか,その時子 どもの行動のどこを見て指導を行うかが問題となっ てくる.本児に対して,昭和57年11月より取り組み を開始した.これまで感覚運動機能などの初期学習 を重視し,その学習の成立を土台として分類学習や 見本合わせ学習を導入した.その経過は本紀要第1 号(1984)鋤で報告した.
本報告は,これまでの取り組みを継続することに し,とくに本児の遂行可能な選択的なやりとりを拡 大させることに重点を置いて,刺激受容の実態をよ り適確に把握すると同時に,刺激受容を高めさせて コミュニケーション行動の拡大・高次化をめざして かかわってきたものである.この取り組みをとおし て,重度重複障害児のコミュニケーション行動とい う観点から考察を加えることにする.
指 導 事 例 事例の概要
1.事例T、T・児,女,昭和45年2月生 2.生育歴
家 族 父 , 母 , 本 児
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課題学習を通してみた重度精神発達遅滞児の交信行動形成過程
難産で陣痛3日後に出産.生下時体重36009.チ アノーゼがあり出生後1週間保育器使用.身体が 著しく柔軟だった.首の坐り6カ月.這いはい8 カ月.2~3分坐位がとれたのは1歳.2歳前に 高熱を出す.つかまり立ちは見られず,尻をふす まや壁につけて立ち上がったのは2歳.歩行3歳.
3歳の時高熱(40℃以上)が1週間続く.6歳で 片言をいう.
3.医学的所見
ダウン氏症候群.昭和51年心電図検査の結果呼吸 性不整脈があったが正常.同年脳波検査結果異常 なし.かぜをひき易く鼻汁がよく出る.知能末測 定.
4.身体発育の状況(昭和59年4月現在)
身長133.0cm体重30.0kg胸囲67.7cm坐高 76.0cm頭囲50.5cm
5.行動の状況(昭和58年9月現在)
(1)運動特徴的なことは身体が著しく柔軟なこ とである.教室の隅に坐り込み,脚を必要以上 に広げたりして自分の身体で遊ぶ.指導当初(昭 和57年11月)では自ら身体を起こして動くこと が少なかったが,最近本児の好きな歯ブラシを 洗面所まで取りに行ってくわえたり証机上のカ ードやシールを取りに行き床に散らすなど自ら 動いていく行動が観察されるようになった.ま た階段の昇降は苦手だが,そばに連れていくと 50cm程の高さの台によじ登ったり,平均台をく
ぐったりした.登下校や教室移動の際には,手 を引かれずに母親や教師の後をついて歩くよう になった.
(2)初期学習指導当初では,ごく短い時間絵本 を覗き込んだり,対象の事物をじっと見たりし て一瞬の追視や注視は可能であった.しかし事 物の特性を把えた目の動きはなかった.また自 分の囲りにある物(新聞紙,雑誌)はつかんだ り抱えたりして分化した行動を示したが,それ を持たせようとすると手を引っ込めたり放り投 げたりして持つことを嫌がった.ただ棒にリン グベルをさしたり,板にペグをさしたりして提 示の仕方を工夫すると手を伸ばしてそれをつか みにきた.このような状況を踏まえて,昭和57 年11月より指導を開始した.リングベルやペグ 等を用いた課題には抵抗なく応じたことから,
前述した子どもと教師の関りあいを大切にしな がら,本児の遂行可能な課題を発見することに 努めた.そして教材・教具を工夫しながら課題
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を少しずつ変化させ,その課題を通して目の使 い方と手の動かし方のコントロールの高次化を 図ることを目標として学習を継続した.
リ ン グ ベ ル や モ ノ プ ロ ッ ク を は ず し た り さ し たりする課題では,視線がそれらの動きをよく 追いかけて対応行動を起こすことができた.こ の課題は対象の事物をペグ,乾電池,管に変化 させ,より複雑なより細かいコントロールを必 要とする課題へと発展させた.ただ事物を棒や 板からはずす際に本児の方へ引き寄せることが 多く,垂直上方への手のコントロールのまずさ が残った.はずした事物を提示した箱や容器に 入れる課題では,箱や容器を様々な位置に動か してもそれらを追いかける目や手の動きがあっ た.しかし型はめでは型板を何とか凹部に入れ るものの,それを滑らせて入れるということに はガイドが必要であった.また両手を協調させ て行動を起こす必要のある棒とおしやギロチン 箱の課題では,十分な対応行動がとれなかった.
このように事物を注視したり追視することはス ムーズに行えたが,手の動かし方のコントロー ルにいくつかの問題が残った.また,ペグや乾 電池を順番にはずしたりさしたりすることもう
まく行えなかった.
(3)選択課題初期学習を通して本児の遂行可能 な課題がいくつか発見された.またいくつかの 問題を残しながらも,目の使い方や手の動かし 方のコントロールが進んだ.それで上記で学習 した課題を用いて,2つの事物を操作的に分け る分類学習や型はめ選択状況等の選択課題を導 入した.さらに,それらの学習と並行して,写 真カードを用いて写真と実物との対応をねらい とした見本合わせ学習を導入し概念行動の拡大 を図った・分類学習等の選択課題では2つの選 択項を見比べる視線の動きが観察された.誤り に気付くと正しい方にさし直したりして,行動 の修正も見られた.また写真と実物との対応の 学習では,リュックや水筒や下着等本児の身近 かな持ち物との対応が可能になった.行動の上 では,実物同士あるいは写真と実物とを見比べ ることが確実になった.さらに見本と実物とを 照合しながら行動を起こすことや行動の修正が 可能になった.ただ興味のある方に手を伸ばし たり,なかなか手を出そうとしなかったりして,
その時の気分に引きずられて反応してしまうこ ともあった.
(4)コミュニケーション聴覚面ではオージオメ ーターによる聴力検査の結果異常なしというこ
とである.遠くからの呼びかけに応じたり,テ レビやステレオから流れる音楽に合わせて身体 を揺り動かすなどの行動を示すが,言語音を分 化した形では聞き取れていない.
音声言語による交信は困難であるが,身振り を伴った移動に関する指示や禁止には対応した 行動をとることが多くなった.また「チョーダ イ」,「ゴシゴシ」(手洗い,机ふき,歯みがき,
モップかけ),「くつ」等の身振りを伴った声か けにも応ずるようになってきた.学習場面で用 いた「おしまい」のサインを少ない頻度だが自 発した.課題ができたりほめたりすると,両手 の平を打ち合わせて拍手し,手を伸ばして握手 を求めるようになった.一方発信面では,本児 が坐り込んでいる際移動を促すことばかけや事 物を持たせようとするなど種々の働きかけを拒 否する場面では,rイヤー」との発声を伴った強
いものがある.また,本児にとって嫌な場面や 助けを求める場面では,「パ・パ」という発声が ある.しかし,他の場面では微弱な発信しか見
られない.好きな食べ物や飲み物に対する要求 表現も,自らそれらを取りに行くことはないが,
「ネーネー」という発声があり,要求に合った物 を持っていくとニコリと笑って喜ぶ程度である.
課題場面では教師が教材・教具をもって本児の 前に立つと,それに手を伸ばしたり,課題の準 備をしているとそれを覗き込むなどの行動があ る.これは「課題をやりたい」との発信行動で あろうと判断される。
(5)日常生活基本動作衣服を脱ぐことはボタン の つ い て い な い も の な ら 一 人 で で き る . パ ン ツ・シャツ・体操服等簡単なものなら床に広げ てやると一人で何とかはくことができる.食事 はスプーンですくって食べる.排池は連れてい けばパンツを降ろし,用を足し,パンツを上げ る.水道の栓をひねって手洗いを行う.
問題の整理と指導方針
本児はこれまで身辺処理面で自発的な行動を促す ような介助が必要であるものの,日常生活ではほと んど手がかからず,おとなしくて扱い易い子どもで あると見られてきた.しかし,一人のみの場面では 坐り込んで身体で遊んだり,揺り動かしたりして常 同的な行動を繰り返している.ただ世話をよくして くれる人の指示には従ったり,その人が事物を提示
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するとそれに手を伸ばして課題に取り組んだりして 本児なりの水準で行動を起こしていると考えられる.
さらに,教材・教具等の学習条件を工夫して本児に 関ると,徐々にではあるが課題を発展させることが でき,現在操作を伴った分類学習や身近かな実物と 写真カードとの対応をねらいとした見本合わせ学習 が導入できる段階にまで学習が高まってきている.
このような学習を通して筆者とのやりとり関係を発 展させてきているが,その他の場面では受身の行動 が多く,要求表現や意思表示を明確に発信すること が余り見られない.
このようなことを考察してみると,本児が要求表 現や意思表示を明確に発信できるようになることを 期待しながら,そのための土台づくりを十分行うこ とが必要であると考える.幸い,本児の行動の起こ し方や目の使い方・手の動かし方が明確に理解でき る課題学習場面が成立しているので,これまでの指 導を継続し,とくに選択的なやりとりを一層継続・
発展させ,刺激受容の実態をより適確に把握すると 同時に,刺激受容を高めさせてコミュニケーション 行動の拡大および高次化を図りたい、具体的な指導 に当っては,これまでの取り組みと小寺他(1982)5)
の言語発達遅滞児に対する訓練プログラムを合わせ て考察することにし,以下の項目を指導方針とする.
(1)目の使い方と手の動かし方のコントロールを 一層図ること.
(これまでの学習で問題として残っている,事 物を滑らせその動きを追視すること,両手を協 調させて事物を操作すること,事物を順番には ずしたりはめたりすること)
(2)色の弁別・分類.
(3)形の弁別・分類およびその分解・組み立て.
(4)絵カード(写真カード)と切り抜きカードと の対応.
指導経過
本実践は本校中学部の時間割の中で,国語,数学 の教科の時間(原則的に週3回,1回40分,実際に は諸行事のため減少)に行った.3~4名の生徒に
2名の教師がつき教室内にそれぞれの生徒のコーナ ーを設置して,教師が生徒の間を巡回する方法をと った.指導記録は毎回自由記述式で残すことにした.
また必要に応じてVTRを活用し,本児の行動の状 況を詳細に観察したり,本児と筆者との具体的なや りとり関係を把握した.さらに母親に指導場面を参 観してもらい,夏休み等長期の休みに教材・教具を 貸し出して学校と同様の課題を試行してもらった.
課題学習を通してみた重度精神発達遅滞児の交信行動形成過程
指 導 期 間 お よ び 指 導 回 数
1期昭和58年9月~昭和59年2月30回 2期昭和59年4月~昭和59年7月27回 (本紀要1号では昭和57年11月から昭和58年6月ま での経過を報告した.)3)
1.初期学習について
(1)事物を滑らせその動きを追視すること 本 児 に 型 は め 課 題 を 行 わ せ る と , 型 板 を 手 に もち板の凹部の近くにそれを持っていってはめ ようとするが,型板を回転させたりしてスムー ズにはめることができない.これは目の使い方 や手の動かし方が,一定方向に方向づけられて いないために起こる問題であると考えられる.
それでスライディングブロックやスライド式型 はめを用いて,ブロックや型板を滑らせその動 きを追視させる課題を設定した.初めの段階で はブロックや型板を拾いあげたり,口にくわえ て遊ぶという行動が多かった.本児の手の甲に 筆者の手を添え,ゆっくりと移動させるガイド の仕方を行うとうまく滑らせることが可能とな った.次の段階では自分で滑らせようとして,
手の動きが素早く乱雑になり,視線もその動き からそれてしまった.「ゆっくり」と声かけしな がら上記のガイドの仕方を丹念に行うと,スム ーズな行動がとれるようになった.現在はガイ ドがなくてもこの課題が成立するようになった.
また型はめ課題でも,型板を型はめ板にのせて 提示すると滑らせ追視してはめることができた.
(2)両手を協調させて事物を操作すること 日常生活場面では片手に靴やカバンを持ち,
他方の手でロッカーを開けてそれらを入れると いう様な両手を協調させて事物を操作する状況 が多い.このような課題として管の一方に棒を 通し,他方からそれを抜き取る棒通しやギロチ ン箱の活動を設定した.棒通しでは棒を管の入 口にさすことはできたが,もう一方の手を使っ てそれを抜くような両手協調の動きはガイドを 繰り返しても出現しなかった.ギロチン箱から 両手を使って中の事物を取り出すことは,ふた を上方に固定したまま他方の手を差し入れると いうタイミングに留意してガイドを行うと何と かできるようになった.ただふたを開ける時に はそれを自分の方へ引き寄せるなど運動のコン トロールのまずさが残った.しかし板からペグ をはずし,もう一方の手で透明箱のふたを開け,
ペグをその中に入れる課題は現在十分な対応行
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動がとれるようになった.
(3)事物を順番にはずしたりさしたりすること リングペル,モノプロック,乾電池,ペグ,
管を棒や板にさしたりはずしたりすることは課 題として易しくなった.この課題はリベットや ピンを使った活動に発展させ,一層細かいコン トロールを図ることをねらいとした.リベット はその先に棒をつぎ足して,凹部にさし易くな るような工夫を途中に行ったことにより,さす ことができるようになった.たださしたりはず したりする活動自体はコントロールされていっ たが,それらを順番に行うことはなかった.
② 1 一 一 分
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図 1 管 の 移 し か え
’管を用いた活動を喜ぶことから,図lの管の 移しかえの課題を設定した.これは1個ずつ管 を移しかえて端の棒から順番にささせることに より,方向性や順序性の基礎づくりを行うこと をねらいとした.初めの段階では一段高いとこ ろにさしてある管に手を伸ばさせるようなガイ ドをするとそれをはずし,さす場所をポインテ イングするとそこにさすことができた.しかし ポ イ ン テ ィ ン グ が な い と ラ ン ダ ム に さ す こ と が 多かった.後半になるとすでにさしてある管を たどりながら,次の空いている場所にさすこと が出現した.棒にささずにその横に置くことも あったが,それに気付くとさし直すことも見ら れた.この順序性が確かなものとなるよう.こ の課題のみでなくペグや乾電池を使った活動も 現在継続中である.板の上面に透明板をのせ,
凹部を順番に滑らせることにより,ペグや乾電 池をさす位置をはっきりさせるということが有 効であるように思われる.
2.色の弁別・分類
(1)赤白の弁別・分類
この課題は運動会の玉入れに使用する赤白の 玉を用い,教師が見本として提示した玉と同じ 色の玉を箱に入れたり箱から出したりするもの である.箱には視覚的な手がかりを得易くする
たところで,さし台を本児の方にゆっくり近づ ける.誤ったところにさそうとした時には,「違 う」と声かけして一旦さし台を遠ざけ再度近づ けるという提示方法をとった.色リングが2種 の場合正答率は80~90%であるが,3種になる
と反応はランダムになることが多かった.ただ
「巡う」と声かけすると正しい‘位慨にさし直すこ ともあった.さす場所をポインティングしなが ら提示すると,確実な反応を示した.また色リ ングが7~8枚さしてある場合には,正しく反 応することが多かった.現在継続中である.
3.形の弁別・分類およびその分解・組み立て
(1)型はめ(単独状況,選択状況)
スライド式型はめ等の教材・教具を用いて事
= 呈 竺 ・ =
需零1
図 2 赤 白 の 弁 別 ・ 分 類
ために外側にも内側にも色画用紙を貼った.ま た学習の初期の段階では,側面も上而も透明板 を用いた縮を‘使い,中に赤白の玉をそれぞれ入 れておいた.学習の進展と共にそれらの視覚的 な手がかりを徐々に除いていった.
提示された玉を同じ色の箱の中に入れるとい う意味を理解させるために,一方をふたつきの 箱にし他方をふたなしの箱にして,ふたなしの 箱に入れさせる課題から始めた.これは数llllの 試行で反応が確実になった.次に,提示された 玉を赤箱か白箱かいずれか一方を選んで入れる 課題に取り組んだ.前述した視覚的な手がかり がある場合には確実な反応が見られたが,手が かりがなくなると右位置に反応して誤反応が多 かった.それで中が透けて見える透明箱を使用 し,しかも初めの段階では箱の中にあらかじめ 同じ玉を入れておいた。すると透明のふたから 中を覗き込み正反応が増えた.このことにかな りの時間を費した.さらに,2つの箱の中から 提示された玉と同じ玉を選んで取り出す課題に 発展させた.昨年度は視線を使わず位置反応が 多かったが,今年度同じ課題に取り組ませたと
ころ確実な反応を示した.このような状況下で は赤白の弁別・分類行動が成立したと判断され る.
(2)色リングの弁別・分類
この課題は,提示した色リング(直径5cm)
をすでにさしてある同色のリングのところの棒 にさすものである.色リングは赤,青,黄の3 種各10枚ずつを用意した.
色リングを本児に手渡し,さし台を机の下か らゆっくり持ち上げる.さし台にすでにさして ある.色リングを見比べる視線の動きが観察され
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図 3 ス ラ イ ド 式 型 は め
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物を滑らせる経過は先に述べた.型はめ課題で もその学習効果が認められた.とくに丸や四角 の型はめでは,上面をなめらかに滑らせ凹部に 入れることができた.三角の型はめはこれらに 比べて抵抗があり,型板を表や裏に返しながら はめることが多かったただこの場合,型板を 凹部のすぐ横に置いて提示すると滑らせてはめ
ることができた.
次に選択状況での課題を設定した.型板を提 示した後しばらくそれを触索させたり,板の凹 部をよく触れさせるようなガイドを行ってから 課題を行わせるようにした.型板の種類では丸 はどの型板と組み合わせても,またどちらの位 置においても,すぐにはめることができた.し かし四角やとくに三角では,他方に入れてそこ にはめることができないと再度入れ直すことが 多かった.
(2)図形片の分類
この課題は提示した図形片を,2つの台から
課題学習を通してみた重度精神発達遅滞児の交信行動形成過程
一 方 を 選 ん で 同 じ 図 形 片 の と こ ろ に さ す も の で ある.同じ図形片を選択することにより,形の 分類を行うことがねらいである.
この教具はさし台の棒を2本にしたために,
さすこと自体が難しかった.提示した図形片を 正しい台の方にもっていき棒にさそうとするが,
さ す こ と が 難 し く 台 の 上 に そ の ま ま 置 く こ と が 多 か っ た . さ せ な い 時 に は 教 師 の 方 に 視 線 を や り,助けを求めるような表情を示した.そのタ イミングを待って,本児の両方の手首を軽く握 り図形片を棒の近くまで運ぶようなガイドを行 った.図形片を棒にさすことができると「ほっ」
とした表'情を示した.
(3)図形の分解・組み立て
本児の場合,上記の型はめ課題や図形片の分 類等を十分学習させることが必要だと考えられ る.ここでは図形の分解・組み立てに関する現 在の状況を述べることにする.
図形の大小および系列化では,大きい方の型 板を提示すると正しい方にはめるが,小さい方 は誤反応が多かった.「違う」と言うと入れ直す ことができたが自ら行うことはなかった.輪郭 線図形の組み立ては,空いている場所に図形片 をもっていくがそれを溝に立てるようにして置 くことが多かった.分割図形は図形片を入れる 場所までもっていくが,入れる時には教師のガ イドが必要であった.これらの課題は今後再度 取り扱うべきものであることがうかがわれた.
4.絵カードと切り抜きカードとの対応
(1)写真カードと絵カードとの対応
(用意したカード)靴,帽子,くつ下,パン ツ,スプーンゥ歯ぶらし,コップ
この課題は,2枚の絵カード(輪郭線を切り 抜き着色して板に貼ったもの)の中から,見本 の写真カードと同じものを選ぶものである.指 導回数が少なく本児の十分な反応を引き出すま で至っていないが,今後の進展に期待がもてた.
靴と帽子の場合は確実な反応を示すこともあ ったが,ランダムな反応も時おりありまだ不安 定な反応のように思われた.その中でフェルト を貼ったカードには確実な反応を示した.フェ ルトの肌ざわりが気に入ったのか,見本の写真 カードに視線をやりそれに合った絵カードを選 ぶことができた.選び出したカードのフエルト の部分をなめたりほおにこすりつけたりしてし ばらく遊ばせるような時間的なゆとりを与え,
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次の課題を提示する方法をとることで課題を持 続することができた.好反応を示したカードは この他に,くつ下,歯ぶらしがあった.本児は 学校の休み時間中歯ぷらしをくわえて遊ぶこと がよく見られるが,選び出したカードを口にく わえようとすることもある.
(2)絵カードと切り抜きカードとの対応 これまで行ってきた視覚による見本合わせと いう選択的なやりとりを発展させること,本児 の興味のありそうな事物を探りそれを実際の場 で活用すること,絵カードが学習を進める際の 信号と成り得るかを確めることの3点をねらい
として学習を進めた.
切り抜きカードは絵カードと同型のものを板 に貼り,その輪郭線部分を切り抜いた.そして 動物,果物,乗り物,器物,野菜,花の種類ご とに各5~8種ずつ,それぞれの切り抜きカー ドごとに赤,青,黄,白,輪郭線と5枚ずつ用 意した.提示方法は切り抜きカードの中から2
~3種を提示盆に載せる.見本の絵カードを見 せ,それと同じ切り抜きカードを選んで自分で 持ったり教師に渡したりさせた.
車のカードでは確実な反応が見られた.時々 父親の運転で送迎があり,またドライブを大変 喜ぶそうである.それだけ車への関心が高いの であろう.見本の絵カードの車は赤で着色して あるが,車を選択する際には他の色の切り抜き カードでも取ることができた.その他本児にと って興味があり確実に選び出すものには,ハサ ミ,バナナ,ブドウ,イチゴ,茶碗,コップ,
電話,歯ぶらしがあった.ハサミを選ぶ理由は よく分からないが,他の物は好きな食べ物であ ったり,身近かにあって興味のあるものであろ うと判断される.
(3)スプーン,皿,茶碗の分類
スプーン,皿,茶碗をそれぞれのかごに入れ ておき,手渡した事物を同じ種類のかごに入れ させた.課題の意味を理解させるために7試行 を要したが,その後はほぼ確実な反応を示した.
考察と今後の課題
筆者は先に子どもと教師との関りあいの大切さを 指摘した.そしてその関りあいの中から子どものコ ミュニケーション行動を育て,拡大し,高次化させ ていくことをめざした指導経過を記した.ここでは これまでの指導経過を振り返り,重度重複障害児の
コミュニケーション行動という観点から考察を加え ることにする.
1.子どもを取り巻く日常生活にはいろいろなもの に手がかりがあり過ぎ,子どもにとって自分の行 動をどう決定してよいかが分かりにくい状況にな っ て い る と 考 え ら れ る . そ の た め に 1 つ に は 子 ど もは無目的に動き回ったり,本児のように坐り込 んで身体を揺り動かすなどの同じような行動を繰 り返したりしていると解釈できる.従って子ども にとって分かり易い手がかりを準備し,そのよう な状況を整理し直してやることが必要であると思 われる.
課題学習場面はその点で意義があると考える.
すなわち,机と椅子あるいはそれに類似した場面 での活動ということから場所が限定され子どもを 取り巻く空間が整理されるということ,また子ど もにとって手がかりが得易いように工夫された教 材・教具を用いて学習を進めること等により,子 どものとるべき選択の方法が方向づけられている という点である.たとえば本児の場合,靴を靴箱 から出し入れすることがスムーズに行えなかった.
直接的にその動作を援助することも考えられるが,
本児の場合靴を片方の手に持ち他方の手で戸を開 けるという両手協調のまずざがあった.それで直 接的な援助を継続すると同時に,課題学習場面で は板からはずしたペグ等の事物を他方の手で透明 箱のふたを開けて入れるという課題に取り組ませ た.この課題がスムーズに行えるようになるのと 前後して,靴の出し入れもうまくなっている.現 在では援助がなくても,一人で行えるようになっ た.このようなことから課題学習場面は子どもの 実態を明らかにしていく過程であると同時に,そ の中で子どもがとるべき行動を分かり易くしてや るための場であると言える.
2.一般にコミュニケーション行動というと,身振 りサインや音声言語によるやりとりであると考え がちである.しかし,その基本は日常生活の中で 相互に相手に自分の意図を伝え,あるいは相手の 意図を自分の中に組み入れることによって成立し ている.この観点から課題学習場面を考察してみ ると,それは課題の内容を子どもに学習させるこ とに目的があるが,その基盤はお互いのやりとり 関係によって成立している点に着目したい.すな わちそれは本来その「課題」という言葉が示すよ うに,指導者が意図している活動内容を他方の内 にできるだけ手際よく伝え,活動ができるように
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輔けるための教材・教具を介したコミュニケーシ ョンの場であると考えることができるからである.
そのためには子どもの実態をよく見極め,相互に 納得のいく関りあいを行い,子どもが納得して解 決できるような課題を見出す必要がある.
し か し そ の よ う な 課 題 が 見 出 せ て も , 課 題 学 習 場面で指示がうまく通らない等学習に支障をきた す場合もある.たとえば,本児は事物を滑らせて 操作するということに問題があったことは先に述 べた.滑らせる行動を引き出せるような教材・教 具を工夫することはもちろんであるが,その際本 児の手の甲に筆者の手を軽く添え滑らせるという ガイドを行った.このガイドという方法は,教師 側から発せられた一種の発信行動であると考えら れる.それを受けて本児は初めの段階では筆者と いっしょに手を動かした.次第に自分で自発的に 動かそうとする行動が出現すると,素早く滑らそ うとする粗雑な手の動きが現われた.そこで「ゆ っくり」という声かけと共に,同様のガイドを丹 念に繰り返した.このような一連のやりとりはコ ミュニケーション関係そのものであると把えるこ とができる.このようにして本児はゆっくり滑ら せて事物を操作するという行動を自発できるよう になった.このことはガイドという方法がお互い の行動を規制しあう信号となり,ゆっくり滑らせ て事物を操作するという行動を調整する役目を果 したものであったと考えることができる.このよ うな関係は他に,ギロチン箱から事物を取り出す こと,管の移しかえ,図形片の分類の学習の中に も見出すことができる.
また筆者は,教材・教具を机上に出したままに して学習を進めるのでなく,課題が解決されるご とに教材・教具を引っ込め,課題ごとに机上に提 示するという方法をとった,これは課題の出現と 消滅が明確に交代して起こり,その切れ目がはっ きりしているという特徴がある.これは課題の始 めと終りの関係を明確にするためのやりとりであ り,子どもにとっては課題解決の予測がたて易く なるという状況であったと考えられる.
この他,色リングの弁別・分類や絵カードと切 り抜きカードとの対応で行った2つの事物のうち から一方を選んで取るという課題では,見本を提 示したあと机の下から選択肢をゆっくり持ち上げ る.選択肢同士を見比べる視線の動きが観察され たところで選択肢をゆっくり本児の方へ近づける.
誤った反応をしようとした時には「違う」と声か
課題学習を通してみた重度精神発達遅滞児の交信行動形成過程
けしながら選択肢を一旦遠ざけ,見比べる行動を 十分行わせたところで再度近づけるという方法を とった.このような課題提示の方法やそのタイミ ングもコミュニケーション行動と深い関りがあっ たと判断される.
3.一方このような子どもとのやりとりが,コミュ ニケーション行動を育てていくという視点をもっ て , 日 常 生 活 の 中 で も 十 分 に 行 わ れ る こ と が 重 要 であると考える.
透明箱を利用してペグ等の事物を出し入れする 課題を,靴の出し入れにつなげていった例は先に 述べた.これから考えられることは,課題学習は 基礎的な概念的な行動を養い,それを日常の生活 につなげて,行動を高めそれを円滑化していくた めに必要な学習であると把えることができる.た とえば「くつをはく」という日常行っている行動 も,靴ははくもので洋服は着るものであるという 事物をふるい分ける概念的な行動が育っていない と行動の上に混乱が生じてくると予想される.本 児の場合,筆者は靴をたたく身振りを行いながら
「くつ」と声かけする方法をとっている.これは単 に音声のみでなく,靴をたたくという身振りが本 児に「靴をはきなさい」という分化した信号とな り,それを受信して行動を起こすことがスムーズ に行えるようになること,さらに筆者とのやりと り関係が一層明確になりより分化した行動がとれ るようになると考えたからである.現在これらの 行動をより整った型で分化できるようになること を願いながら,絵カードを用いた学習を進めてい る.その中で本児の興味のある事物がいくつか見 出された.生活単元学習の場面ではそれらの絵カ ードを活用して合宿に必要な品物を選んだり,学 校の近くのスーパーまで買物に行き品物を探した
りすることが少しずつ可能になってきている.
その他の日常生活場面で観察された行動には,
次のようなものがあった.「○○を入れて,○○を 取って」と身振りを伴った声かけをすると自分の ロッカーへ行き,カバン,帽子,靴など指示した 物を出し入れすることができた.休み時間にはい くつもある歯ぷらし(信号として赤いひもをつけ た)を選び,口にくわえて遊ぶことが多くなった.
下校時には駐車場へ行き,父親の車を探しそれに 乗り込むようになった.途中でその行動を制止す ると地面に坐り込んでむずがるなど,意思表示が 若干はっきりしてきた.歯ぶらしが高いところに あるとその方を指さし,「ネーネー」と言ってそれ
を要求した.課題場面では学習に飽きたり,難し い課題の場合提示盆を押し返したり,「おしまい」
のサインを自発した.
4.本児の場合,種々の要求表現や意思表示が微弱 であることが大きな問題である.これまで子ども と教師の関りあいを大切にしながら課題学習場面 を設定し,コミュニケーション行動という視点か らそれを日常生活場面に関連づけてきた.その結 果,課題学習場面でも日常生活場面でも行動が拡 大し,高次化してきたように思われる.それと共 にむずがり,歯ぶらしの指さし。要求,「おしまい」
のサインの自発等の要求表現や意思表示が筆者を はじめ他の大人にも理解できるようになってきた.
これらのことは,本児のコミュニケーション行動 が少しずつ豊かになってきていることを示してい ると考えられる.
今後ともこれまでの取り組みを継続し発展させ て,本児のコミュニケーション行動を拡大させ高 次化させていくことが大切である.
結 び
本研究を進めるに際し,T、T・さんおよび御両 親,本校中学部教官の方々の快い御協力をいただき ました.また,熊本大学教育学部特殊教育学科助教 授進一鷹先生には,本研究全般について御指導を仰
ぎました.記して感謝致します。
尚,写真の掲載についてはT、T・さんの御両親 の許可を受けました.
本研究は文部省昭和59年度科学研究費補助金(奨 励研究B)の適用を受けて継続していることを付記 する.
文 献
1)梅津八三:重度・重複障害者の教育のあり方,特殊教育、
4,2-5,1974.
2)松田直:重度重複障害児の日常生活と身辺自立,全国 心身障害児福祉財団,190-208,1984.
3)池部義信:重度精神発達遅滞児における概念行動の形成 過程,熊本大学教育学部附属教育工学センター紀要,1,
57-66,1984.
4)大坪明徳他:重度・重複障害児の事例研究(第2集),国 立特殊教育総合研究所重複障害教育研究部,1978.
5)小寺富子他:言語発達遅滞児の治療,大修館嘗店.33-
67.1982.
6)中島昭美:人間行動の成り立ち,重複障害教育研究所紀 要,2,1~58,1977.
7)高杉弘之:障害児教育における課題学習の意味と役割,
教育と医学,28(5),55~61,1980.
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8)中漂恵江:探索活動とコミュニケーション,精神薄弱児 研究,316,18~25,1984.
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