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価値訴求型プロモーションに関する一考察

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(1)

1.は じ め に

価 格 競 争 の 激 化 や 特 売 に よ る 利 益 圧 迫 が 指 摘 さ れ て い る。上 田 ほ か

(26)では,日用消費財メーカー33社において,値引き原資となる販売促 進費が毎年確実に増え続け,広告費の3倍ものお金が費やされているデータ や,ある調味料において,全日数のうち,特売をしている6〜7%の日数で,

販売数量の半分近くを稼いでいるデータが示されている。こうした販促費比 率の上昇は,コモディティ化の裏づけとも解釈できる(恩蔵 27)

値引きや特売など,価格に訴求するプロモーションは「価格プロモーショ ン」と呼ばれる(上田・守口編 24)が,価格プロモーションは,商品の ブランド知覚品質を損なうこと,消費者の内的参照価格(値頃感と同義)を 引き下げ,安くないと売れないという事態を招くこと,消費者が値引きを待っ てしまうことなどの弊害が指摘されている(DelVecchio, Krishnan and Smith

2007)

。若干値引きした価格でもモノが売れなくなる状態がさらに特売を促

進するという悪循環に陥り,この悪循環がメーカーや小売の利益を奪ってゆ く。

このような現状から脱却するには,店頭をブランド接点のひとつと捉え,

ブランドの価値を訴求し,安くしない価格でも消費者に受け入れてもらうこ とが重要となる。近年は,メーカーや小売に,激化する価格競争から脱却す

価値訴求型プロモーションに関する一考察

―― 店頭プロモーションにおける経験価値アプローチ ――

太 宰 潮

−3 4 7−

( 1 )

(2)

る動きが現れている!)

本論では,利益に与える影響を考慮せずに無意味に乱発される価格プロ モーションに対して,値引きに頼らず,ブランドと消費者の関係性,さらに 小売店舗と消費者の関係性をより良好なものにするための「価値訴求型」プ ロモーションの有効性を,経験価値という視点から実証することを目的とす る。経験価値に着目する理由は,コモディティ化した市場における有効な戦 略と位置づけられるから(恩蔵 27),またセールス・プロモーション(以

SP)は消費者の「経験」と捉えることができるからである。ブランドに

まつわる有意義な経験をさせることでブランドの価値を訴求でき,結果とし て価格を下げなくても購買が促進されると考えた。

尚,本論は学習院マネジメント・スクールが主催する「価値創造型プロ モーション研究会」")の研究活動の一部として行われたものである。本研究 会では,研究会に参加されているメーカーの意向により,各メーカーの商品 カテゴリーに限定し,さらに店頭におけるプロモーションに対象を絞って研 究を行った。参加企業と対象カテゴリーは,カゴメ㈱がケチャップ,サント リーフーズ㈱がウーロン茶,㈱資生堂がシャンプー,ハウス食品㈱がシチュー となっている。この4つのカテゴリーは価格競争が激しく,コモディティ化 が進んでいる市場とも言えるが,このカテゴリーにおいて,店頭で消費者に 経験価値を訴求し,それよってブランドへの態度を高め,値引きしなくても 消費者に購買してもらうことが目的となる。販促活動,SPは当然店頭に限 られるものではないが,本論は店頭に限らない

SP

についても応用可能な枠

!) 日経ビジネス 2006 年 7 月 17 日号, 「特集 売れる値上げ」 ,pp.26 ‐ 41

") 価値創造型プロモーション研究会は主に 2006 年 5 月から 2007 年 9 月にかけて

活動。主要研究メンバーは上田隆穂教授(学習院大学) ,守口剛教授(早稲田大学) , 熊倉広志准教授(専修大学) ,奥瀬喜之准教授(専修大学) ,菅野佐織専任講師(千 葉商科大学) ,仲井間滋之氏・コメンダー・パーヴェル氏(サイモン・クチャーア ンドパートナースジャパン株式会社) ,学習院大学大学院 上田隆穂研究室のメン バーである。

−3 4 8−

( 2 )

(3)

組みと考えられる。

2.文献レビュー

本節では,経験価値,店頭におけるマーケティング・コミュニケーション,

店舗態度に関する既存研究を振り返る。

1.経験価値について

「経験」を重視するマーケティングは,Holbrook and Hirshman(12)が

「快楽的消費」「消費の体験的側面」といった概念を提唱した頃から始まった が,当時は芸術作品,スポーツ観戦など,「文化的製品」を対象とした議論,

もしくはサービス・マーケティングにおける議論であった。しかし近年では パッケージグッズにおけるブランド構築においても経験価値が重視される時 代となっている。ブランド構築における経験価値を包括的に論じた青木

(26)では,「経験経済」を論じた

Pine and Gilmore

(19)「経験価値マー ケティング」を論じたシュミット(Schmitt and Simonson 1997, Schmitt 1999,

Schmitt 2003)

,ブランド訴求において「五感」に訴えることを論じた

Lindstrom

(25)「ブランド接点」を論じた

Davis and Dunn(2

2)などを紹介しな がら,経験価値をベースとして築かれる情動的な絆こそが,永続的な関係 性形成の基盤となる と 述 べ て い る。さ ら に 青 木(26)は,シ ュ ミ ッ ト

(Schmitt and Simonson 1997, Schmitt 1999, Schmitt 2003)を,伝統的な「機 能的特性と便益」を重視するマーケティングを批判する立場とし,経験価値 こそがブランドと顧客のライフスタイルを結びつけることができるとしてい る。こうした主張は石井(24)による「消費者がなぜその製品を消費する のかを理解し,消費者自身がまだなお自覚していない未来のあるいは不在の 需要を理解するために,どのような工夫が必要なのだろうか。(中略)従来 の消費者行動分析の議論ではこの問題に対処できないのははっきりしている。

価値訴求型プロモーションに関する一考察(太宰) −3 4 9−

( 3 )

(4)

消費者の「消費経験」についての理解を徹底的に推し進めることが重要であ る」(石井 24,p6より抜粋)という主張とも共通している。

Schmitt(1

9)は,経験価値マーケティングの基礎として,5つの顧客 経 験 価 値 を 挙 げ て い る。5つ の 顧 客 経 験 価 値 と は,① 感 覚 的 経 験 価 値

「SENSE」,②情緒的経験価値「FEEL」,③創造的・認知的経験価値「THINK」

④肉体的・行動的経験価値「ACT」,⑤準拠集団や文化との関連付け・関係 的価値「RELATE」である!)。これら5つを「戦略的経験価値モジュール」

と呼び,これらと「経験価値プロバイダー」と呼ばれる要素を組み合わせて,

経験価値マーケティングの戦略的プランニングを行うことを主張している。

シュミットの枠組みに着目し,ブランド体験の測定尺度を開発したのが,

㈱アサツーディ・ケィ(以下

ADK)である。伊藤・赤穴・宇賀神(2

4)

では,広告,店舗,WEBサイトなどのブランド接点において,5つの経験 価値のどの部分を,どの程度刺激・活性化しているのかを測定する目的で

「EX-Scale#」という尺度を開発したことを紹介している。益田(27)では,

EX-Scale

#の開発プロセス,16の全質問項目,集計の仕方や尺度の検証結果

などが詳しく紹介されている。この尺度は

Schmitt(1

9)でのオリジナル のものを,日本市場で応用すべく改良したものである。Schmitt(19)の オリジナルの尺度との違いとして特徴的な点は,情緒的経験価値「FEEL」

を,気持ちが高揚する方向の情動反応である「FEEL-upbeat」と,気持ちが リラックスする方向の情報反応である「FEEL-warm」に分けている点であ ")

!) 以下本文では,伊藤・赤穴・宇賀神(2004)を参考に, 「THINK」を「思考的経 験」 , 「ACT」を「身体的経験」 , 「RELATE」を「社会関係的経験」と呼ぶ。

") 伊藤・赤穴・宇賀神(2004) ,益田(2007)では, 「経験価値」を「体験」と呼

んでいるが,本論の表記上は引用部分を除き, 「経験価値」で統一している。

−3 5 0−

( 4 )

(5)

2.店頭におけるマーケティング・コミュニケーションについて

続いて,店頭における

SP

やコミュニケーションについての既存研究をレ ビューする。

白井(24)では,消費者による

SP

のカテゴリー化を取り上げ,既存研 究をもとに,SPが購入価格と統合して評価される場合を「出費という経済 的負担を減少させる

SP」として「統合型 SP」と名付け,SP

が購入価格と 分離して評価される場合を「出費とは無関係の

SP」として「分離型 SP」と

名付け,既存の

SP

を分類している。その上で,一般的な大きさの値引きと クーポンを「統合型

SP」に,大きな値引き,リベート,増量,おまけ,一

つ購入するともう一つをプレゼント,および二つ購入すると半額という

SP

は「分離型

SP」にカテゴリー化している。さらに「分離型 SP」を,SP

よって感じる相対的な知覚価値の高低によって二つに分類し,単純な値引き やキャッシュバックを「価格

SP」に,複数個購入による値引きやおまけ,

スタンプ○個でおまけ,他製品との同時購入で対象商品を同額分値引きと いった

SP

を「非価格

SP」と分類している。

しかし,白井の研究ではクーポン・増量・おまけなど,現存し,一般的に 広く行われている

SP

と価格の知覚に主眼があり,「その場でどのような経 験をさせ,ブランド訴求をどう行うか」という視点ではまとめられていない。

そこで,価格には主眼を置かない,店頭・店舗内におけるプロモーション研 究を次に紹介する。

店舗内における顧客接点と捉え,店舗内コミュニケーションに関する既存 研究を総括した中野(25)では,店舗内コミュニケーションの構成要素を まず雰囲気要因,デザイン要因,社会的要因に分類した後,デザイン要因を さらにエスセティックスデザイン要因,スペースデザイン要因,販促・商品 要因の3つに分類!)し,その要素の整理を行っている。また,店舗内コミュ ニケーションの効果の整理も行っており,その効果を大きく「購買」と「ロ

価値訴求型プロモーションに関する一考察(太宰) −3 5 1−

( 5 )

(6)

イヤルティ・愛顧」に分けている。その上で,感情や知覚などの媒介変数を 介在させた間接効果を測定する視点も必要となり,そうした視点が感情的体 験を促進させる店舗戦略立案に活かすことができると述べている。

次に,五感刺激のうち,嗅覚に訴える店頭プロモーションを現場で実証し た平木・恩蔵(27)では,スーパーマーケットでのポン酢の売り場におい て,ポン酢の香りがする香料噴霧器を用い,購入点数の変化という行動的側 面と,非計画購買を介して満足に繋がるモデルの確認という心理的側面の両 面においてその効果を検証している。その結果,香りが明らかに非計画購買 を促進することと,香りが心理的コストを低下させることで非計画購買を促 進し,そして満足に繋がるという結果を示している。

店舗内の研究には他に価格表示や棚・導線についての研究などがあるが,

店頭におけるブランドの

SP

に焦点を当てた研究,また店頭での経験訴求に ついて包括的にまとめた研究は少ない。それが近年,中野(25)や平木・

恩蔵(27)が指摘するように,店舗をマーケティング・コミュニケーショ ンの場やブランド接点と捉えられるようになってきていると言えよう。

3.店舗態度の向上について

次に,価値訴求型

SP

が店舗への態度を高める点に関する既存研究をレ ビューする。

店舗選択に関する比較的初期の研究としては

Martineau(1

8)が,店に おける購入経験を楽しい経験とすることの重要性を述べているが,その後店 舗選択に関する研究では,経験ではなくストア・イメージ,ストア・ロイヤ

!) それぞれの要因の細かい説明は以下の通りとなっている。雰囲気要因: 「顧客の 潜在意識に対して影響を及ぼす,目に見えづらい要素」 ,社会的要因: 「店舗内に いる人的要素」 ,エスセティクスデザイン要因: 「顧客の感性に影響を与える,目 に見える要素」 ,スペースデザイン要因: 「顧客の店内行動に直接影響を与える,

スペースに関する機能的要素」 ,販促・商品要因: 「顧客の購買行動に直接影響を 与える,販促・商品に関する機能的要素」 。

−3 5 2−

( 6 )

(7)

ルティやストア・パトロネージに関する研究が行われてきた(清水 19を 参照)。個々の製品または製品群に対する訴求が,店舗への訴求に繋がる点 に関しては,店舗選択行動を幅広くレビューした佐藤(16)が,商品部門 ごとのイメージの集計が全体としてのストア・イメージを構成しているとい う見解を述べている。店舗環境と商品価値の知覚が店舗愛顧意図に影響する ことを実証した

Baker et al.(2

2)では,デザイン手がかり(レイアウト,

商品の陳列)が,買い物経験コスト!)に影響し,最終的に店舗に対する愛顧 意図にも強い影響を有していることなどが確認されており,小売業者はレイ アウトや商品陳列という店舗デザイン特性に対して今まで以上に注意払うべ き,としている。またデザイン手がかりという店舗環境が,商品価値の知覚 を介し,店舗の愛顧意図へ繋がっていることも確認されている。店舗の雰囲 気について纏めた高柳(23)では,店内

POP(point of purchase display)

が「買い物客に商品に関する情報を提供し広告にもなるという役割を持つと 共に,雰囲気そして消費者の購買行動に大きく影響する」と述べている。ブ ランドとストアのロイヤルティについて論じた陶山・後藤(27)では,

①ブランド・ロイヤルティの向上とストア・ロイヤルティの向上とは密接不 可分であること,②ストア及びブランドに同時にこだわりを持つカスタ マー・ロイヤルティの構築が,小売企業とメーカーの双方にとって戦略的に 重要となること,③小売企業は単に店舗の雰囲気やサービスの向上によって そのイメージや魅力を高めるだけでなく,戦略的に提携関係にあるメーカー のブランド・ロイヤルティをも同時に高めていくために,商品や価格をも含 む高利ミックスの効果的な展開を図る必要性があり,その際,価格プロモー ションだけでなく,ブランドを意識させる製品プロモーションを展開するこ とが有益であることを指摘している。

!) 製品購入に要する時間・努力コストと,うるさい音楽や人ごみによって喚起さ れるイライラ感などを示す心理的コストのこと。

価値訴求型プロモーションに関する一考察(太宰) −3 5 3−

( 7 )

(8)

以上のレビューより,近年経験価値の訴求がパッケージグッズにおいても 重要となってきていること,その測定尺度が開発されていること,これまで 店頭で行われてきた値引き・クーポンなどの

SP

以外に,店頭におけるコ ミュニケーションや経験の訴求が,ブランドロイヤリティの向上やブランド 選択に影響を与えること,店頭における経験は,商品価値の向上だけでなく,

店舗への態度も向上させること が確認できた。また,店頭における経験を 包括的に考慮し,店頭における訴求をどう行ってゆけばよいかといったこと に関する研究は,十分とは言えないこともわかった。

以上のレビューを踏まえ,本論の目的である,店頭における価値訴求型

SP

の有効性を測る枠組みを示す。その後,アンケートによる実証結果を示し,

実務への示唆や研究の限界・発展を述べる。

3.実証の枠組み

枠組み提示の前に,「有効な価値訴求型

SP

をどうやって創るか」という 点に関して述べる。これは「良い広告はどうやって創ればよいか」という問 いにほぼ等しく,絶対的な答えはないだろう。どうやって良い

SP

を創造す るかという点に関しては本論の枠を超えるが,価値創造型プロモーション研 究会においては,消費者の潜在意識・無意識を探索するモチベーション・リ サーチ(Dichter

2002

等を参考)を

WEB

調査に応用した,Web Motivation

Research(以下 WMR)という手法を用いて,プロモーションにおいて訴求

するポイントを探索した!)。この調査結果からは,例えば,シャンプーに関 する分析からは「一日の終わりの儀式」という意味が込められていること,

ケチャップの分析からは「食卓にお父さんがいると食事がおいしくなる,情 緒的満足が強まる」こと,ウーロン茶の分析からは,根拠のない「飲みすぎ

!) WMR について詳しくは上田・太宰・星野(2007)を参照されたい。

−3 5 4−

( 8 )

(9)

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図表1 本論の枠組み

ると胃を荒らす」といったネガティブイメージがあること,シチューの分析 からは「クリームシチューは家庭のイメージ・日常に食し,野菜(じゃが・

たま・にんじん)が合う。その反面ビーフシチューは大人のイメージ・特別 なハレの日に食し,サラダ・パン・ワインなどが合う」といった結果を得る ことができた。どの点も,消費者の顕在意識にはあまり現れず,要素還元主 義的なアプローチでは見出しにくい訴求点といえるのではないだろうか。

では,上記の調査を参考に作成された,価値訴求型

SP

の有効性実証に関 する枠組みを提示する。本論では,店頭におけるプロモーションがどのよう な点を訴求すると,それがどういう経験価値を媒介し,ブランドと店舗に対 する態度のどういう要素を高めるかという「価値の流れ」(図表1)を,WEB アンケートによって実証した。

実証には

Jaccard

の類似指標と共分散構造分析を用いた。Jaccardの類似指 標で経験価値を定量化する枠組みについては日経リサーチ(24)を,共分 散構造分析で定量化する枠組みについては

EX-Scale

!を活用している益田

(27)を参考にした。益田(27)を参考にする理由は,経験価値を定量 化する尺度として,他に類を見ない研究と言えるからである。

価値訴求型プロモーションに関する一考察(太宰) −3 5 5−

( 9 )

(10)

1.測定指標

まず,これまで実施されてきた店頭プロモーションがどのような内容を訴 求しているのかを示す「訴求ポイント」を洗い出した。店頭プロモーション の収集については,研究会員各社に店頭画像を提供していただくと共に,SP の専門会社である㈱

KANKO

と,生活共同組合コープさっぽろに特別にご 協力を頂き,現存するプロモーション事例を見せていただいた。具体的には プロモーションの写真を見て,「このプロモーションは××型の訴求をする プロモーションだ」ということを検討した。「××型」とは,具体的には「原 料訴求型」「家庭内会話促進型」「季節感訴求型」などである。訴求ポイント を決定する際には,研究者3名(学習院大学・上田隆穂教授,専修大学・奥 瀬喜之准教授と筆者)による同意が得られた場合にのみとし,一人で判断す る際の主観的な偏りを回避するよう工夫した。チェックした画像は計20枚,

洗い出した訴求ポイントは合計29項目となった。しかし29項目の訴求ポイン トでは調査上,回答者への負担が大きくなってしまうため,学習院大学大学 院の大学院生を対象にプレ調査(画像を見せて,『このプロモーションは「×

×型」と思うか』を5段階評価)を行い,因子分析等を用いて最終的に11項 !)にまで絞り込んだ。後述する

WEB

調査においては,プレ調査の文言を わかりやすい表現に変え,リッカートスケールを7段階にして尋ねている。

例えば「利用場面訴求型」であれば,『この売り方は,商品の利用場面を思 い起こさせる』を「まったくそう思わない」から「非常にそう思う」まで7 段階で評価する,といった具合である。

次に経験価値を測る尺度であるが,前述した

ADK

の「EX-Scale"」を使用 した。ただし,元の尺度では16項目で5つの経験価値を測定するものであっ

!) 訴求ポイント 11 項目は, 「原料・成分訴求型」 , 「自然イメージ訴求型」 , 「利用 場面想起型」 , 「高級感訴求型」 , 「製品に関する新知識提供型」 , 「健康イメージ訴 求型」 , 「家庭内会話促進型」 , 「ブランドイメージ(製品に込めたメーカーの思い)

訴求型」 , 「新利用機会提案型」 , 「品質訴求型」 , 「話題提供型」である。

−3 5 6−

( 1 0 )

(11)

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図表2 調査対象

SP

たが,大学院生によりプレ調査の結果,肉体的・行動的経験価値「ACT」を 構成する3質問に対する反応がかなり低かったため除外し,代わりに「その 商品を試してみたくなる」という1問を入れた。

続いて,ブランドと店舗への態度を測る尺度については,畑井(24)の

「消費者とブランドの関係性測定のための尺度」を用いた。畑井(24)で は,既存文献のレビューと実証より,消費者とブランドの関係性の規定要因

(因子)として「信頼」「愛着」「親しみ」「自己表現」「興味」の5因子を抽 出しているが,この関係性規定要因をブランドまたは店舗に対する態度とし て捉えることとした。しかし畑井(24)の項目は27項目あるため,回答者 負担を考慮し,まず店頭プロモーションという観点から,プレ調査で訴求し にくいと判明した「自己実現」因子を除外した。さらにプレ調査からアンケー ト項目を絞り込み,最終的に9つの質問項目を用意した。店舗への態度に関 しても同じ9項目を採用している。

2.WEB調査

調査は,研究会に参加した各社4案ずつ,計16の

SP

案について行われた。

各社より代表的な

SP

の一部をひとつずつ図表2に示す。ひとつの

SP

案に 対し15サンプル,計20サンプルを取得した。調査では㈱インタースコー プ(当時)のアンケートモニターを利用し,年代に対して割付を行い,20代,

0代,40代,50代の各年代の人数が,SPあたり31人もしくは32人になるよ うに調整した。

価値訴求型プロモーションに関する一考察(太宰) −3 5 7−

( 1 1 )

(12)

実施時期は26年11月2日から6日までの4日間である。訴求ポイント,

EX-Scale

!,ブランド関係性,店舗関係性のそれぞれについて,売り場を模

した画面と,図表2のようなメッセージボードのアップ画像を見せながら質 問をしている。

4.実

1.トップボックス和集合による経験価値の確認

伊藤・赤穴・宇賀神(24),益田(27)に従い,まずはトップボック ス和集合(EX-Scale!の各経験価値への質問のいずれかに,「非常にそう思 う」と回答した人の割合。「EXスコア」と呼ばれる。)による刺激レベルを 測定した。経験価値領域を刺激できているか否かの判断基準は,SENSE,

FEEL,THINK

で40%以 上,RELATEは30%以 上 と さ れ る が,今 回16の

SP

案の中で,このラインを超えたものは,ハウスの「今夜はおうちがレストラ ン」というビーフシチューを訴求した

SP

案における

SENSE

項目(58.4%)

のみであった。全般的な値の低さには,CMなどの動画を見たり,店舗の実 経験をした時点での調査と比べ,WEB調査において画像を見て回答すると いう形式が影響したものと思われる。雑誌などの平面広告の評価においては,

EX

スコアの値が低めになる(ADK社内資料による)が,今回刺激ライン直 前の値となった

SP

が複数観測されたことを付け加えておく。

2.バリューチェーンマップ!による価値の流れの仮説抽出

続いて,日経リサーチ(24)を参考にして,バリューチェーンマップ! を描いた。バリューチェーンマップ!とは,Jaccardの類似指標を等高線のよ うに表したものである。訴求ポイントとブランド・店舗の評価は7段階,経 験価値が4段階(いずれも1が「そう思わない」,4段階の4または7段階 の7が「非常にそう思う」)の評価であるが,7段階における6と7,4段

−3 5 8−

( 1 2 )

(13)

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図表3 バリューチェーンマップ!:訴求ポイント⇔経験価値(ハウス)

階における3と4を「評価している」と判断している。

このマップによって,価値の流れを仮説として抽出し,後の共分散構造分 析でその流れを実証した。図表3はハウスの4案をまとめて,訴求ポイント と経験価値のバリューチェーンマップ!を描いたものであり,色が濃くなっ ているところほど,Jaccardの類似指標の値が高いことを示している。経験 価値側の後ろ二〜三文字はそれぞれの経験価値を示しており,Re=RELATE,

Few=FEEL-warm,Se=SENSE,Feu=FEEL-upbeat,Th=THINK,Ac=ACT

となっている。

表頭が訴求ポイント11項目,表側が経験価値項目14項目である。ハウスの 4案は「我が家流のシチュー」「親子でクッキング」「野菜たっぷりのバラ ンスシチュー」「今夜はおうちがレストラン」であるが,実践部分で示すと おり,これらの

SP

は「ブランドイメージ訴求型」「利用場面想起型」「製 品に関する新知識提供型」「新利用機会提案型」の訴求ポイントにおける評 価が,特に

THINK

と,FEEL-upbeatなどの経験価値の評価と類似している ことを示しており,価値の流れが繋がっていると解釈できる。

価値訴求型プロモーションに関する一考察(太宰) −3 5 9−

( 1 3 )

(14)

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図表4 バリューチェーンマップ!:経験価値⇔ブランド態度(ハウス)

次に,同じハウスの4案における,経験価値とブランド態度とのバリュー チェーンマップ!を図表4に示す。表頭が経験価値,表側がブランド態度を 示す。表側のアンダーバー以降は,畑井(24)における,ブランド関係性 の因子を示している。

実線部分で示している部分から,THINK,FEEL-upbeatの経験価値が信頼 と,興味・親しみの一部分との繋がりが強いことが分かる。訴求ポイントか ら考慮すると,利用場面想起型などの訴求が

THINK,または FEEL-upbeat

の経験を刺激し,そしてその経験がブランド態度のうちの「信頼」や,「興 味・親しみ」の一部へと繋がる様子が確認できた。分析前の想定では,ブラ ンド態度の各因子にまとまって関係が見られることを予想した。

しかし結果としては,「楽しい気分」という興味に繋がっても,「話の広が り」という興味にはあまり繋がらないなど,個別の質問項目に対して経験と の繋がりが確認できる結果となった。また図表4では

RELATE

の評価と興 味,親しみ,信頼の一部の関係も強くみられる(図表4の点線部分)が,

−3 6 0−

( 1 4 )

(15)

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図表5 共分散構造分析仮説モデル(ハウス)

RELATE

型経験価値については訴求ポイントからの繋がりが弱い(図表3の

点線部分)。従って,RELATE型の経験価値を強く訴求できれば,それがブ ランド態度向上に繋がる可能性があることも伺えた。この2つのマップから,

今回のハウスの4案は

THINK,または FEEL-upbeat

という経験を中心とし て,ブランドへの態度を高めることができよう。

3.共分散構造分析による仮説の確認

バリューチェーンマップ!で確認された関係は,図表5のように仮説とし てまとめることができる。矢印の太さはバリューチェーンマップ!における 影響の強弱を示している。次にこの仮説を共分散構造分析によって実証した。

分析に用いたソフトは,SPSS社が提供する

Amos6.0

である。

しかし,図表5に示したモデルでは,全ての潜在変数を残した状態では,

高い適合度を得ることはできなかった。その原因は相対的な影響の違いにあ る。例えば訴求ポイントではブランドイメージ訴求型による影響が強いため,

利用場面,利用機会などの影響が薄まってしまったものと考えられる。同様 に,FEEL-upbeatの経験価値も相対的には

THINK

の影響力よりは弱いため,

適合度が下がってしまったものと思われる。そこで,最も影響が強い

THINK 価値訴求型プロモーションに関する一考察(太宰) −3 6 1−

( 1 5 )

(16)

ା㗬

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ⷫㄭᗵ䯂 ᭉ䬦䬓᳇ಽ THINK

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.74 .98

.91 .86

䚚n=500

䚚ㆡวᐲ䰆GFI=.911, AGFI=.868 RMSEA=.084 䚚ᮡḰൻ⸃䭡⴫␜

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図表6 共分散構造分析結果(ハウス)

を中心に,訴求ポイントを別々のモデルによって図表6のように評価したと ころ,GFIが0.9以上,RMSEAが0.1以下となり,妥当といえる適合度を得 ることができた(適合度の基準については豊田(18)を参照)

SENSE

からブランド態度へのパスが棄却されたことから,SENSEの経験

価値を訴求できていても,ブランド態度にまで繋がっていない様子がわかる。

図表6における訴求ポイントを「新利用機会」「利用場面」「新知識」をまと めた潜在変数に置き換えても,同様に適合度の高い結果を得ることができた。

また

FEEL-upbeat

のみを媒介する個別モデルでも,訴求ポイントからブラン

ド態度まで繋がる適合度の高いモデルが作成できた。

この分析結果から,店頭における訴求ポイントが経験価値を介し,ブラン ド関係性を高めることが部分的に確認できた。以上はハウスの4案における 分析結果であるが,他社の

SP

案に対する分析結果の詳細説明は,誌面の都 合により割愛する。4社の分析結果に共通することは,経験価値は

THINK,

それから

FEEL-upbeat

を主に介在すること,ブランド態度は「信頼」または

親近感,楽しい気分といった「親しみ」や「興味」の要素,もしくは「愛着」

の要素を高めることである。また

SENSE

RELATE

までのパスが確認でき ても,それがブランド態度まで有意な影響を及ぼしているケースは一部だけ であった。これは,店頭においては表面的なメッセージを情報処理すること

−3 6 2−

( 1 6 )

(17)

となり,どうしても認知的な評価が中心であることが原因と考えられる。店

SP

においては,THINK以外の経験価値をいかに訴求するかが課題と言え る。

当然であるが,訴求ポイントはその

SP

の内容によって変化する。例えば カゴメであれば,訴求ポイントが「自然志向訴求型」「健康訴求型」「ブラン ドイメージ訴求型」から構成される潜在変数が

THINK

に強く影響すると いった具合である。

以上がブランド態度における分析結果である。今回は,Jaccardの類似指 標と共分散構造分析による実証を,店舗への態度に対しても実施した。若干 分析対象による違いはあるが,ブランド態度と同様に,店舗への態度も,経 験価値を介して高められることがわかった。主な傾向としては,介在する経 験価値は主に

THINK,SENSE,FEEL-upbeat

であること,経験価値から繋が る店舗態度としては信頼や親近感,それに楽しい気持ちなどの要素が抽出さ れた。また店舗への態度を高めることができる経験価値は,FEEL-upbeat 介在するケースが多いということも分かった。ブランド態度と同様に,訴求 できていない経験価値などにビジネスチャンスが伺える。

4.実証結果からの示唆

本論では店頭でのコミュニケーション活動による価値訴求型プロモーショ ンを実施することで,店頭における経験価値を介在し,ブランド・店舗への 態度が高められるという結果を部分的に得ることができた。この価値訴求型 プロモーションを,値引きをしないで行うという点が実務上重要である。効 果や弊害をろくに気にせず,習慣から値引きをしてしまうのではなく,価値 訴求型の店舗を作ることで,ブランドに対する態度,そして店舗に対する態 度も好転させることができるのである。本論の結果はメーカーの営業担当,

価値訴求型プロモーションに関する一考察(太宰) −3 6 3−

( 1 7 )

(18)

小売店の売り場作りの担当者にとってひとつの示唆を与えるものとなるだろ う。また経験価値についても,今回訴求できていない経験価値に関する

SP

を考案し,ブランドや店舗への態度を高めるといった対応も取れよう。

5.研究の限界と発展

まず本論の限界である。本論ではアンケートによる心理的側面の実証にと どまっており,実際にこうした

SP

を行うことが購買につながったのかとい う実証を提示していない。しかし,店頭での実験は,既に実施済みであり,

集計・実証を終えている。本論で述べた

SP

に若干改良を加えたものを実践 すると,価格を下げなくても売上が上がる傾向にあることが示されている!)

また本論では,研究会に参加した企業を単位とした分析となってしまって おり,SP個別のモデル実証ができていない。本来は

SP

ごとに,SPが想定 した訴求ポイントが,然るべき経験,ブランド訴求に繋がっているかを確認 すべきであった。SP別に個別モデルも分析したところ,個々の経験価値に おいてある程度適合度の高いモデルは示せているが,サンプル数が15と少 なくなることから,今回は個別モデルの提示はしなかった。予算上,取得サ ンプル数が決まっていたこと,また実証する

SP

案の数が決まっていたこと からやむを得なかったことではあるが,サンプル数の多い個別モデルの実証 が望まれる")

次に本論の発展である。本論は,店頭におけるプロモーションに限定した 議論を行ってきたが,当然

SP

は店頭に限らないし,店舗の中と外を連動さ せる動きも考えられる。近年は,マス媒体を使わない

SP

や販促活動が広告 化してきており(秋山・杉山24),またブランド接点のマネジメントとい

!) 店頭実験を踏まえた本研究会の成果発表は 2007 年 9 月(札幌) ,同年 10 月(東 京)にて発表済みである。また本研究会の成果をまとめた書籍(講談社ランダム ハウスより刊行予定)にも記載予定である。

−3 6 4−

( 1 8 )

(19)

う観点からも,SPに関する研究が進むものと考えられるが,本研究の枠組 みは店頭

SP

に限らず応用が可能である。

これからのメーカー,小売によるマーケティング・コミュニケーション活 動は,マス広告のみならず,地域社会のコミュニティなど,生活を機軸とし た様々な場に対して,積極的に行われると考えられるが,その際には複雑な 経験の要素が絡むこととなる。そのようなケースにおいて,本論で提示した

「価値の流れ」を実証するモデルを応用すれば,その効果を測る上でも有効 なものとなる。

【謝辞】実証にあたり,宇賀神様,益田様をはじめとした

ADK

の方々に,

公表前の

EX-Scale

#の使用を快諾していただくと共に,使用について丁寧な

助言,貴重な資料を頂いた。㈱

KANKO

とコープさっぽろのご担当者から は,画像などの売り場情報を特別に研究会にご提供頂いた。価値創造型プロ モーション研究会員の参加企業のご担当者からは,調査時に特にお世話にな ると共に,本論文への画像掲載を快諾頂いた。それにプレ調査などで協力を いただいた学習院大学大学院の皆様,そして論文指導を頂いた学習院大学・

上田隆穂教授に,ここに記して感謝の意を表したい")

!) サンプルの少なさをとりあえず無視した上で,ハウスの 4 案における多母集団 同時分析を行った結果からは,プロモーションによってパス係数に大きな差が確 認できている。例えば「我が家流のシチュー」と「ビーフ」を比較すると, 「我が 家流」の方は「利用場面・新知識・新利用機会」の訴求ポイントから「THINK」

へのパス係数が強いが, 「ビーフ」では「ブランドイメージ・品質」の訴求ポイン トから「THINK」へのパス係数が強まる,といったことが確認できている。サン プル数の問題もあり,頑健性のあるモデルは構成できたとは言い難いが,POP・プ ロモーション別の訴求ポイントや経験価値の構造を見てゆくことは,本枠組みで 可能であると考える。

") 尚,本論文中の企業・所属等は全て 2006 年 5 月時点のものである。

価値訴求型プロモーションに関する一考察(太宰) −3 6 5−

( 1 9 )

(20)

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価値訴求型プロモーションに関する一考察(太宰) −3 6 7−

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