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BaSO 4 結晶表面での摩擦と磨耗に関する研究 Study of friction and wear at BaSO 4 crystal surfaces

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佐々木 達也, 1

BaSO 4 結晶表面での摩擦と磨耗に関する研究 Study of friction and wear at BaSO 4 crystal surfaces

応用化学専攻 佐々木 達也 SASAKI Tatsuya

1. 緒言

摩擦・磨耗現象を原子レベルで理解するために は、単結晶表面におけるナノ・ミクロスケールで の塑性変形を調べる必要がある。特に、複数の非 等価な変形モードがあるとき、どのようなモード が優先されるかを知ることは重要である。BaSO

4

は斜方晶で、空間群 Pnma、格子定数は a=0.885 nm、b=0.543 nm、c=0.713 nm、Z=4 である。劈開 性は (001)>(210)>(010) の順であり、すべり系と して常温では T{001}t[100], T{011}t[011]、高温でT{110}t[1-10] が報告されている [1]。本研 究では (001) 面および非対称性を持つ (210) 面 においてサファイア針で異なる向きに掻引を行 い、摩擦測定及び表面に生ずる変形の光学顕微鏡、

原子間力顕微鏡 (AFM) 観察を行った。

2. 実験方法

BaSO

4

(001) および (210) 劈開面においてバウ デン‐レーベン型摩擦試験機を用い、サファイア 針 (先端曲率半径 0.05 mm) で走査方向および垂 直荷重を変えて、掻引実験を行い、摩擦力を測定 し た 。 表 面 に で き た 傷 を 光 学 顕 微 鏡 (HiRoX KH-7700) 及 び 、 AFM (Digital Instruments

NanoScopeⅢ) を用いて、観察した。

3. 結果と考察

3-1. BaSO

4

(001) 面

[010] 方向及び、 [100] 方向での摩擦測定の結果

を Fig. 1 に示す。荷重の増加に伴い、[010] 方向

では 3 段階、[100] 方向では 2 段階で摩擦力の 勾配 (摩擦係数に相当) が変化している。

Fig. 1 BaSO

4

(001)

面上

[010], [100]

方向の 摩擦力

vs.

垂直荷重

Fig. 2 BaSO

4

(001)

面上 [010] 方向の顕微鏡像;

光学顕微鏡像. ((a) 中荷重領域

(b)

大荷重領域)

AFM

像 ((c) Height 像

(d) Deflection

像)

[010] 方向の場合、光学顕微鏡では中荷重の領

域においては、 {210} 劈開 (Fig. 2(a)) が、また大 荷重の領域においては、 {011} すべりと {110} す べりが合わさった特徴的な三角形の磨耗痕 (Fig.

2(b)) が針跡の外側に観察され、これらの塑性変

形が摩擦力増加の原因だと考えられる。

大荷重での塑性変形の痕跡を AFM 観察によ り調べると Fig. 2(c), (d) のようであり、(b) で見

られた {110} すべりの他、光学顕微鏡では見ら

(2)

佐々木 達也, 2

れなかった多数の {011} すべりや {110} 劈開に 先行する {210} 劈開が観察された。これら 3 つ の塑性変形が合わさって三角形の磨耗痕を形成 したものと考えられる。{011} すべりは数が多く、

最も起こりやすい変形だと考えれるので、中荷重 の場合でも {210} 劈開に先だって起こっている ものと推定できる。

塑性変形のメカニズムは Fig. 3 のように考え られる。まず (a) 針の垂直荷重により、 {011} す べりが針の前方で起こる。次に (b) この段差を針 が水平方向に押すことにより表面層にせん断力 が加わり、 {210} 劈開が左右対称に起こる。(c) 断裂した三角形の表面領域がさらに圧縮される ことにより {011} すべりがくり返し発生する。

最後に (d) 針跡から遠い{210} 劈開の末端では 針の進行方向と直角方向の力の割合が大きくな

り {110} すべりが誘発される。

Fig. 3

三角形の塑性変形痕形成のメカニズム

[100] 方向の摩擦力増加率は Fig. 1 に示した

ように 2 段階に変化するが大荷重でも {011}

すべりの痕跡が見られない。等価な (011), (0-11) すべりが干渉してどちらも起こらなかったと考 えられる。b 軸から 20° 傾けた方向に大荷重で 針を掻引すると {011} すべりは針の左側で有利 となり、右側では劈開が多く起こっていた。この ような異方性は Fig. 3 の変形メカニズムを支持 する。

3-2. BaSO

4

(210) 面

構造的に非対称な [-120], [1-20] 方向の摩擦測 定の結果を Fig. 4 に示す。

Fig. 4 BaSO

4

(210)

面上

[-120], [1-20]

方向の 摩擦力

vs.

垂直荷重

荷重増加に伴い、[-120], [1-20] 方向では共に 2 段階で摩擦力の勾配が変化し、小荷重および大荷 重領域共に摩擦力は [-120]<[1-20] であった。

小荷重で針跡を生じないときの摩擦の非対称 性は表面の S=O 結合の傾斜によることが推定さ れる。最外層の S=O 結合は一方向に (法線から

54.7 °)、摩擦の小さい [-120] 方向掻引では毛並み

に対して逆撫でになっている。これは結合の法線 からの傾斜角が大きいときの特徴である。

大 荷 重 領 域 で の 掻 引 で は [-120] 方 向 で は

{021} 面 (未報告) と推定されるすべりが、また

[1-20] 方向掻引では針跡内部の塑性変形のみが

観察された。

4. 結論

複数の変形パターンのある斜方晶では加重点 に対する場所の違いに依存して複数の塑性変形 がひき続いて起こり、摩擦力が複雑に変化する。

しかし、低荷重においては表面原子配列に基づく 非対称性も観察できた。

発表記録

1. 佐 々 木 , 新 藤 , 森 谷 , ト ラ イ ボ ロ ジ ー 会 議 2012 春東京 (2013, 5) C14

2. Shindo, Sasaki, et al. Intl. Tribology Conf. (2015.

9) Tokyo (発表予定)

参考文献

[1] Palanche et al., “Dana’s System of Mineralogy”

7th ed, vol.2, pp. 407-413, Wiley, New York (1951).

[2] 森谷 大樹 中央大学卒業論文 2011 年度

参照

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