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中高年スポーツ実施者の睡眠に関する調査研究

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(1)

中高年スポーツ実施者の睡眠に関する調査研究

著者 小田 史郎, 小田嶋 政子, 佐々木 浩子, 木下 教子

雑誌名 北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報

巻 1

ページ 47‑50

発行年 2010

URL http://id.nii.ac.jp/1136/00001417/

(2)

中高年スポーツ実施者の睡眠に関する調査研究

Sleep pattern in middle ! aged and older adults engaged in physical exercise

小 田 史 郎

1)

小田嶋 政 子

1)

佐々木 浩 子

2)

木 下 教 子

3)

Shiro O

DA1)

Masako O

DAJIMA1)

Hiroko S

ASAKI2)

Noriko K

INOSHITA3)

キーワード:睡眠,中高年,スポーツ,調査

Ⅰ.緒

良好な睡眠が得られていることは,心身ともに充実し た生活を送るために重要である。しかしながら,わが国 においては,顕著な睡眠問題が認められている。1995年 に粥川によって行われた大規模な疫学調査では,27. 2%

の人が不眠に悩んでいることが明らかにされた

1)

。この 調査ではさらに,50歳以上の女性において睡眠障害を訴 える割合が男性に比べて顕著に高いこと,加齢とともに 不眠率が増加する傾向にあることが併せて報告された。

また2000年に NHK が実施した「国民生活調査」では

「アテネ不眠尺度」を用いた不眠症に関する自己評価が 行われ,国民全体の49. 4%が「少し不眠症の疑いがある」

「不眠症の疑いがある」のどちらかに該当することが報 告された

2)

粥川の報告にみられるように,中高年者では睡眠不調 を訴える率が高くなる。睡眠ポリグラフをみても徐波睡 眠やレム睡眠の減少,中途覚醒や浅いノンレム睡眠の増 加といった睡眠変化が認められること,また生理機能の 低下が睡眠悪化の大きな要因であることが報告されてい る

3,4)

。一方,この加齢に伴う睡眠悪化は体力レベルに 依存することが知られており,活動的で体力レベルの高 い高齢者の睡眠が,非活動的な高齢者のそれに比べて良 好であるとの報告がなされている

5)

。もともと健康な高 齢者だけが運動に参加できるという解釈もできるが,運 動習慣がなく不眠傾向のある高齢者が継続的な運動を生 活に取り入れることによって睡眠改善するとの報告も数 多くなされている

6,7,8,9)

。これらの研究においては被 験者の体力向上効果が併せて認められており,睡眠改善 に体力向上が関与していると考えられる。体力以外の側

面では,運動が脳に適度な刺激を与えたことで脳機能が 改善し,これが睡眠改善に寄与した可能性が考えられる。

また日中に運動を取り入れることによって体温リズムの 振幅が増加するなど,日内リズムの強化が睡眠改善に関 与した可能性も考えられる。いずれにしても,高齢者に おいて定期的な運動実施は睡眠に良い影響を及ぼすこと が期待される。

北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センターでは,平成 19年度よりスポルクラブを設立し,地域住民に様々なス ポーツプログラムを提供し,生涯スポーツの実現に寄与 してきた。平成21年度からは,スポルクラブ会員の運動 支援だけでなく,「健康相談室」を開設するなど,健康 全般を支援するサポート研究を開始した。こうしたサポー ト研究を円滑に進めて行く上で,スポルクラブ会員がど のような健康問題を抱え,どのようなサポートニーズを 持っているのかについて明らかにすることは重要と考え る。そこでトータルサポート研究分野では,スポルクラブ会 員の健康状態や生活,睡眠,食生活を総合的に把握する ための調査を実施することとした。本研究はその一環で,

スポルクラブ会員の睡眠問題に関する部分を報告する。

Ⅱ.方

本調査は2010年2〜3月に,北翔大学北方圏生涯スポー ツ研究センタースポルクラブに所属する会員を対象に実 施した。本研究の倫理性については,北翔大学北方圏生 涯スポーツ研究センター倫理委員会にて承認を受けた

(HOKUSHO

!

UNIV:200904)。また本調査の目的や個 人情報保護等については調査依頼書にて十分な説明を行った。

本調査では,スポルクラブのマネージャーを通じて150 名の会員に調査質問紙を配付した。対象者には自宅にて

1)北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学科 2)北翔大学人間福祉学部医療福祉学科 3)北翔大学生涯学習システム学部学習コーチング学科

― 47 ―

(3)

記入してもらい,クラブマネージャーが回収した。調査 質問紙は,プロフィールに関する質問(年齢,性別,身 長,体重,喫煙習慣,運動習慣),生活・健康に関する 質問(第1部),睡眠に関する質問(第2部),食生活に 関する質問(第3部)で構成した。睡眠に関する質問は,

アテネ不眠尺度

10)

,ピッツバーグ睡眠質問票(日本語版)

11)

で構成した。

アテネ不眠尺度は,不眠に関する8つの質問で構成し,

回答者はそれぞれ4段階評価(0〜3点)を行った。解 析はマニュアルに従って行い,すべての質問の合計点が 4点未満を「問題なし」,4〜5点を「少し不眠症の疑 いがある」,6点以上を「不眠症の疑いがある」と評価 した。ピッツバーグ睡眠質問票もまたマニュアルに従っ て総合得点を求め,この総合得点が5. 5点未満を「睡眠 障害なし」,5. 5点以上を「睡眠障害あり」として評価し た。この他,就床時刻および起床時刻,睡眠時間,寝つ きに要した時間の値を得た。以上のデータは,性別と年 代別に分類して検討した。年代は59歳以下,60〜69歳,70 歳以上の3群に分類した。

Ⅲ.結

本調査では150名中83名より回答が得られた。回答に 不備のあった7名とスポルクラブ会員でありながら「運 動習慣はない」と回答した5名を除外したため,71名分 を有効回答数とした(有効回答率は47. 3%)。回答者の プロフィールおよび運動実施状況について表1に示した。

本調査の回答者は男性が18名(25%),女性が53名(75%)

で あ っ た。ま た 年 齢 別 で 見 る と,59歳 以 下 が24名

(34%),60〜69歳 が39名(55%),70歳 以 上 が8名

(11%)であった。週あたりの運動時間では,男性にお いて年代による大きなばらつきがみられ,高齢になるほ ど運動時間が長い傾向にあった。一方,女性の運動時間 には年代によるばらつきが見られず,どの年代も週あた り3〜5時間の範囲内にあった。運動継続期間について は,男女とも70歳以上が最も長いという結果が認められた。

表1 対象者のプロフィール

N 数 運動時間

(分/週) 運動継続期間

(月)

男性 59歳以下 3 190±105 16±7 60〜69歳 12 314±196 31±17 70歳以上 3 450±42 160±160 女性 59歳以下 21 221±120 55±65

60〜69歳 27 252±104 79±82 70歳以上 5 203±86 117±55 運動時間と運動継続年数は Mean±SD で表示した。

睡眠に関して,まずアテネ不眠尺度の結果を図1に示 した。上述したようにアテネ不眠尺度では,総合得点が 4点未満を「問題なし」,4〜5点を「少し不眠症の疑 いがある」,6点以上を「不眠症の疑いがある」と評価 する。男性においては「不眠症の疑いがある」に該当す る人はいなかった。「少し不眠症の疑いがある」人は3 名(17%)であり,70歳以上において高い割合で認めら れた。女性では「不眠症の疑いがある」に該当する人が 9名(17%)認められ,その内訳は70歳以上で2名(40%),

60〜69歳で3名(11%),59歳以下で4名(19%)であっ た。「少し不眠症の疑いがある」を含めると,43%の女 性が不眠傾向にあることが明らかとなった。

次にピッツバーグ睡眠質問票の結果を図2に示した。

上述したように,ピッツバーグ睡眠質問票では総合得点 が5. 5点以上の人を「睡眠障害あり」と評価する。男性 においては,年代に関係なく「睡眠障害あり」と評価さ れた人はいなかった。一方,女性で「睡眠障害あり」と 評価されたのは70歳以上で2名(40%),60〜69歳で8 名(30%),59歳以下で4名(19%)であり,アテネ不 眠尺度で「不眠症の疑いあり」と評価された人はすべて,

これに該当した。また本調査の対象者で日常的に睡眠薬 を使用している人は女性5名(全体の7%)であったが,

うち4名が「睡眠障害あり」に該当する人であった。ア テネ不眠尺度とピッツバーグ睡眠質問票の総合得点の関 係について図3に示した。ピアソンの相関係数の検定を 行ったところ,両者に高い正の相関関係が認められた

(p<0. 05,r=0. 753)

図1 アテネ不眠尺度からみた不眠者の割合

図2 ピッツバーグ睡眠質問票からみた睡眠障害者の割合

中高年スポーツ実施者の睡眠に関する調査研究

― 48 ―

(4)

図3 アテネ不眠尺度とピッツバーグ睡眠質問票の総合得点の関係

ピッツバーグ睡眠質問票より,対象者の睡眠の内容に ついてさらに検討した。就床時刻,起床時刻について図 4,5に,睡眠時間と寝つき時間について図6,7に示 した。59歳以下の人は,男女ともに就床時刻が他群に比 べて遅い傾向が認められた。起床時刻については,顕著 な年代差が認められなかった。睡眠時間については,男 女とも70歳以上が最も長い傾向にあった。寝つきに要し た時間は,男性では短く,年代による差もほとんど認め られなかった。女性では全体的に寝つきに要する時間が 長い傾向にあり,特に年齢が高くなるにつれて寝つき時 間が延長する傾向が認められた。

図4 就床時刻の比較

図5 起床時刻の比較

図6 睡眠時間の比較

図7 寝つきに要した時間の比較

Ⅳ.考

本研究では,スポルクラブ会員の睡眠状況について把 握することを目的として,会員を対象としたアンケート 調査を行った。その結果,サンプル数が少ないという問 題はあったものの,男性において顕著な睡眠問題は認め られなかった。睡眠に対する男性の自己評価がよかった 理由として,男性は女性ほど睡眠に対する評価が厳しく ないことが影響した可能性が考えられる。男性では睡眠 自体に問題があったとしてもそれを大きな睡眠問題と感 じていない可能性があり,アクチグラフやポリグラフを 用いた詳細な検討が必要と考えられる。また3名と非常 に少ないサンプル数であるが,70歳以上の男性において も比較的良好な睡眠が得られていたことは注目すべき結 果といえる。本調査では,体力に関する指標は得ていな かったが,彼らの運動時間,運動継続期間は非常に長かっ た。彼らが同年代の人に比べて活動的かつ高い体力レベ ルを有していたことが推察され,これらが良好な睡眠を 保つ要因であったのではないかと考えられる。高齢であっ ても非常に活動的な人は睡眠を良好に保つことができる という先行研究を支持する結果といえる

6,7,8,9)

一方の女性については,男性に比べて睡眠問題を訴え る率が高かった。精神生理性不眠や睡眠状態誤認などの 睡眠障害が女性に多いことが知られており

12)

,女性の方 が睡眠に対する自己評価が厳しいことが影響しているか もしれない。女性の方が睡眠に対する自己評価が良くな い傾向は,大学生においても認められている

13)

。本研究 ではさらに,年齢を重ねるごとに睡眠問題を抱える人の 割合が高くなる傾向が認められた。特に寝つきに関して は,加齢とともに増加する傾向が顕著に認められた。国 民全体の不眠傾向が49. 4%に認められたことからすると,

中高年者でのこの割合は決して高すぎる値ではないと考 えられる。中高年女性において運動習慣が睡眠に良い影 響を及ぼすかについては,同じ地域に住む,運動習慣の ない同年代の女性と比較しながら今後も検討していく予 定である。

本調査結果において,アテネ不眠尺度とピッツバーグ

― 49 ―

(5)

睡眠質問票の総合得点が高い相関を示したことも注目す べき結果である。筆者が大学生を対象に行ったアンケー ト調査においては,睡眠自体には問題がないのに,睡眠 時間が短いために日中の眠気が高くなるといった傾向が みられた

13)

。特に女子学生の睡眠時間が短い傾向にあっ た。こうしたいわゆる「眠らない問題」は,今回の中高 年者にはあてはまらないと考えられる。就床時刻が早く,

睡眠への意識は高いことが示唆される。中高年女性にお いては,「眠りたいけど眠れない」という不眠に対する アプローチが重要と考えられる。

以上の調査結果から,スポルクラブ会員の睡眠傾向を ある程度把握することができたと考える。少ないながら も不眠で悩む会員が存在することが明らかとなったこと から,こうした方々のフォローアップを行うことが重要 と考える。また本調査に回答しなかったクラブ会員のな かにも睡眠問題を抱えている人が存在する可能性がある。

本調査結果の紹介を通じて,トータルサポート研究で取 り組んでいるテーマへの理解を深めてもらい,さらに多 くの人の研究参加を促すことが重要と考えている。

本研究は,「平成21年度北翔大学北方圏生涯スポーツ 研究センターの研究費」の助成を受けて実施したもので ある。

1)粥川裕平:各種不眠と睡眠パターン.病態生理,14:

875

!

881,1995.

2)日本放送文化研究所:2000年国民生活時間調査報告 書.東京,2001.

3)林泰:加齢に伴う睡眠の変化.老年精神医学雑誌,

2:309

!

317,1991.

4)平沢秀人,小山恵子,渥美義賢他:睡眠ポリグラフィ を用いた睡眠の加齢変化に関する研究.体力研究,

77:38

!

44,1991.

5)Edinger JD,Morey MC,Sullivan RJ,et al.:

Aerobic fitness,acute exercise and sleep in older men.Sleep,16:351

!

359,1993.

6)King AC,Oman RF,Brassington GS,et al.:

Moderate

!

intensity exercise and self

!

rated quality of sleep in older adults.A randomized controlled trial.JAMA,277(1):32

!

37,1997.

7)King AC,Pruitt LA,Woo S,et al.:Effects of moderate

!

intensity exercise on polysomnographic and subjective sleep quality in older adults with mild to moderate sleep complaints.J Gerontol A Biol Sci Med Sci,63(9):997

!

1004,2008.

8)Singh NA,Clements KM,Fiatarone MA:A ran- domized controlled trial of the effect of exercise on sleep.Sleep,20(2):95

!

101,1997.

9)Stevenson JS,Topp R:Effects of moderate and low intensity long

!

term exercise by older adults.

Res Nurs Health,13(4):209

!

218,1990.

10)Soldatos CR,Diokes DG,Paparrigopoulos TJ:

Athens Insomnia Scale:validation of an instru- ment based on ICD

!

10 criteria.J Psychosom Res,

48:555

!

560,2000.

11)土井由利子,箕輪眞澄,内山真他: ピッツバーグ 睡眠質問票日本語版の作成.精神科治療学,13:755

!

763,1998.

12)井上昌次郎:睡眠障害.講談社,東京,2000.

13)小田史郎:大学生アスリートの睡眠状況について.

北翔大学生涯スポーツ学部研究紀要, 創刊号:9

!

16,

2010.

中高年スポーツ実施者の睡眠に関する調査研究

― 50 ―

参照

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