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     二 商法・各種保険約款における重過失免責

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(1)

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一Y

播   阿 憲

   目 次

     一 はじめに

     二 商法・各種保険約款における重過失免責

      1 商法六四一条および各種の損害保険約款にいう重過失の意義

      2 災害関係特約および共済契約にいう重過失の意義

      3 重過失による保険事故招致の効果︵以上︑本号︶

     三 ドイッ法およびスイス法における重過失免責

     四 重過失免責の再検討

゜    五 終わりに

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七ー二︶ 八一

(2)

八二

一 はじめに

 商法六四一条後段は︑損害保険契約一般について︑保険契約者または被保険者の悪意もしくは重大な過失によって

生じた損害は︑保険者がこれを填補する責任を負わないと定めて︑悪意︑すなわち故意のほか︑重過失による保険事

故招致の場合にも︑保険者が免責されることを明らかにしている︒また︑火災保険においては︑火災によって生じた

損害についてはその火災の原因を問わず保険者がこれを填補しなければならないといういわゆる危険普遍の原則が採

られているが︑保険契約者または被保険者の故意または重過失に基づいて生じた火災損害については︑保険者は填補       ユ  責任を負わないことが明文で定められている︵商法六六五条但書︶︒さらに︑航海に関する事故によって生ずべき損害

の填補を目的とする海上保険契約︵商法八一五条︶においても︑商法六四一条と同じく︑保険契約者または被保険者の

故意または重大な過失による損害は保険者の法定免責事由として掲げられている︵商法八二九条一号︶︒そして︑火災

保険約款などの損害保険の約款においても︑商法と同様の重過失免責規定が設けられることが多い︵例えば︑火災保険        ︵2︶ 普通保険約款︵一般物件用︶二条一項一号︑住宅総合保険普通保険約款二条一項一号など︶︒

 他方︑生命保険契約においては︑それ自体については商法六四一条のような重過失免責の規定は置かれていないも

  ヨ 

のの︑これに付帯して締結される傷害特約︑災害割増特約および災害入院特約︵以下︑これらの特約をまとめて﹁災害関

係特約﹂という︶は︑被保険者が責任開始時以後に発生した不慮の事故を直接の原因として︑特約の保険期間中に死亡

し︑または高度障害状態に該当し︑もしくは入院したときに︑災害死亡保険金や災害高度障害保険金等を支払うと定

めるとともに︑保険契約者または被保険者が故意または重大な過失によって支払事由に該当したときは︑保険者は保

険金支払義務を免れる旨を定めている︵傷害特約一〇条一項一号︑災害割増特約八条一項二号など︶︒また︑各種協同組合

(3)

や公益法人等の共済事業として行われている共済契約においても︑被共済者の故意または重大な過失による事故招致

は︑共済規約上︑共済金等の支払免責事由とされており︑ここにも重過失免責が認められている︵例えば︑JA共済の

養老生命共済契約災害給付特約6条一号など︶︒

 このように︑損害保険契約または生命保険の災害関係特約等においては︑故意による事故招致のほか︑重過失の場

合も保険者免責が認められているが︑その根拠としては︑仮にこのような場合をも保険保護の対象とすると︑保険契       ︵4︶ 約の当事者に要求される信義誠実の原則に反し︑公益上好ましくないからだと一般的に理解されてきた︒もっとも︑

商法六四一条または保険約款の重過失免責条項にいう重過失の意義については︑必ずしも明確な解釈が確立されたわ

けではなく︑実際に︑これまで多くの議論がなされてきた︒後に検討するように︑従来の判例は︑重過失を限定的に

解釈し︑これをほとんど故意に準ずるものとしてとらえてきたが︑近時の裁判例においては︑重過失を単に﹁注意義

務違反の著しいもの﹂と解したうえで︑保険者免責の範囲を広く認めようとするものも多く現れるようになってきた︒

このように︑重過失免責の成立が多く認められるようになった背景には︑近年における保険金の不正請求の事例が多

発してきた中で︑約款上の重過失免責の解釈を柔軟に操作することによって︑モラル・ハザードの抑止に努めようと       ︵5︶ いう実務側の要請が働いていることは︑否めない事実である︒

 しかし︑保険契約の重過失免責条項にいう重過失の概念を広く緩やかに解釈して︑安易に保険者免責を認めてしま︑

うと︑保険契約者は保険事故の発生による損害の填補を受けられないという不利益を被ることになり︑その結果︑保

険の効用が損なわれ︑保険制度に対する保険加入者側の信頼と期待が裏切られる事態も生じかねない︒したがって︑

保険契約者側の利益保護の観点からすれば︑重過失条項にいう重過失の意味を厳格にとらえることが望ましいと言え

る︒ただ他方では︑重過失の概念としては︑限りなく故意に近いものから︑軽過失よりは若干程度の重いものまで︑

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七ー二︶ 八三

(4)

八四

種々の態様のものが考えられ得るのも事実であり︑従来は主として︑そのいずれの段階のものを重過失免責条項にお

ける重過失としてとらえるべきかについて議論がなされてきたが︑ただそのいずれの基準を採るにしても︑重過失に

当たるとされた場合には︑保険者の全部免責という効果が認められる点については︑特に異論は提起されて来なかっ

たようである︒しかし︑このように重過失という概念自体が必ずしも明確に確立されていない状況下で︑保険事故の

発生につき保険契約者ないし被保険者に重過失が認められるからといって︑一律に保険金の支払を認めないという

オール・オア・ナッシング原則︵≧穗・・−o鮎o︹巳6宮ω七ユ昌ばO︶に基づいて処理することが︑今日の一般契約者ないし消

費者の保護という時代の要請から見て果たして適切なものかどうか︑今一度︑検討する余地があるように思われる︒

 そこで︑本稿は︑重過失の意義をめぐるこれまでの判例・学説の立場を明らかにしたうえで︑ドイツおよびスイス

の保険契約法において重過失による保険事故招致の問題がどのように取り扱われているかを検討し︑これらの立法例

を参考に︑重過失免責の問題を再検討してみることにする︒

︵1︶ 火災保険は︑損害保険の代表的なものであるので︑当然︑損害保険総則における保険者免責の規定が適用されるが︑商法

  六六五条はその本文で危険普遍の原則を掲げたことから︑念のために︑但書において︑商法六四一条の規定が適用されるこ

  とを確認したものである︒大森忠夫・保険法︹補訂版︺二〇五頁︵昭和六〇年︑有斐閣︶︑西島梅治・保険法︹第三版︺二四

  八頁︵平成一〇年︑悠々社︶︒       −

︵2︶ もっとも︑例えば自動車保険約款では︑重過失について保険者免責を定めていない︒これは︑自動車事故の発生には過失  ︐

  があるのが通常であるので︑保険の効用とその使命から過失の軽重を問題にすることが適切でないだけでなく︑過失の軽重

  の判断そのものが極めて困難だからであると言われている︒また︑賠償責任保険普通保険約款でも︑被害者保護の観点から

 重過失免責条項が設けられてない︒商法六四一条は任意規定であるから︑保険契約の当事者が重過失の場合を保険者有責と

 することについては︑合理的な理由があるときは︑その効力を妨げないと解されている︒西嶋・前掲注︵1︶二九〇頁︒

︵3︶ 生命保険契約における保険者の法定免責事由を定めた商法六八〇条一項は︑被保険者の自殺︑決闘その他の犯罪等を免責

(5)

  事由として掲げているが︵拙稿﹁保険金支払義務と免責事由﹂新版生命保険の法律問題︵金融商事判例=三五号増刊号︶

  一〇八頁以下参照︶︑重過失による保険事故招致についてはこれを免責事由として定めていない︒生存保険の場合には︑そも

  そも重過失のような免責事由は問題とならず︑死亡保険の場合にも︑約款上の自殺免責期間内における自殺は免責︵故意免

  責︶となるが︑重過失による死亡は担保される︒       ・

︵4︶ 大森・前掲注︵1︶一四七頁︑石田満・商法W︵保険法︶︹改訂版︺一九四頁︵平成九年︑青林書院︶︑金澤理・保険法上

  巻︹改訂版︺一〇二頁︵平成二二年︑成文堂︶︒裁判例においても︑このような理解を示すものが多い︒例えば︑仙台地判平

  成五・五・一一判時一四九八号一二五頁︑最判平成一六・六・一〇民集五八巻五号一一七八頁︒

   なお︑重過失を含む保険者免責規定の理論的根拠に関しては︑このほか︑危険除斥説などがあるが︵学説の詳細について

  は︑大森忠夫﹁被保険者の保険事故招致﹂保険契約法の法的構造二〇四頁以下︵昭和二七年︑有斐閣︶︑坂口光男・保険契約

  法の基本問題五二頁︵平成八年︑文眞堂︶︑竹濱修﹁保険事故招致免責規定の法的性質と第三者の保険事故招致︵一︶﹂立命

  館法学一七〇号五一四頁以下︵昭和五八年︶︑田邊光政﹁災害保険特約における重過失・犯罪免責について1最近の判例を中

  心にー﹂三宅一夫先生追悼論文集・保険法の現代的課題四〇八頁︵平成五年︑法律文化社︶︑黒沼悦郎﹁保険事故の招致と保

  険者の免責﹂損害保険の法律問題︵金商増刊号︶六五頁︵平成六年︶参照︶︑近時︑重過失免責は︑重過失の場合について保

  険給付をすることが公序良俗違反となるという趣旨は含まれず︑重過失を免責とするかどうかは保険者の任意に委ねられた

  営業政策上の問題に過ぎないもの︵古瀬村邦夫﹁生命保険契約における傷害特約﹂ジュリ七六九号一四五頁︵昭和五七年︶︑

  久保田光昭﹁判批﹂ジュリ一〇三六号一二五頁︵平成五年︶︶︑または︑著しい不注意による保険事故を保険保護の対象とす

  るときに︑それによる保険料を保険契約者全般が負担させられるのは不公平だという一般人の常識を踏まえて保険保護の対

  象から除外するという極めて商品政策的な判断に基づくもの︑とする見解が有力に主張されている︵山下友信・保険法三六

  七頁︑四六二頁︵平成一七年︑有斐閣︶︒

︵5︶ この点については︑例えば︑竹濱修﹁火災保険における被保険者の保険事故招致﹂民商一一四巻四・五号六七〇頁︵平成

  八年︶︑西村捷三﹁保険における重過失免責と故意受傷﹂三宅一夫先生追悼論文集・保険法の現代的課題四六一頁−四六二頁

  ︵平成五年︑法律文化社︶参照︒

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七ー二︶ 八五

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八六

二 商法・各種保険約款における重過失免責

1 商法六四一条および各種の損害保険約款にいう重過失の意義

 商法六四一条にいう重過失の意義に関して︑直接にその具体的な解釈を示した最上級審判決はまだ存在しない︒

 しかし︑貨物海上保険契約に関する事案で︑船員の重過失により生じた損害について保険者を免責する旨の約款条

項にいう重過失の意義について︑これを明確に示した大審院判決が存在する︒これは︑荷主Xと保険会社Yとの間で

締結された貨物海上保険契約において︑Yが負担する危険は保険貨物に損害を生ずべきすべての海上危険とされ︑た

だ不可抗力に起因しない損害および船員の重大な過失に基づく損害については填補の責めに任じない旨の特約がなさ

れていたところ︑本件保険荷物を満載した訴外A会社の汽船が港で荷物陸揚げのため注水を行った際︑同汽船の測水

管に破損があったため保険荷物が浸水し損害を生じたという事案であるが︑大判大正二年一二月二〇日民録一九輯一

〇三六頁は︑本件船舶の構造上の欠陥に起因する本件損害は海上危険の中に含まれるとしたうえで︑船員の重過失の

有無については︑﹁過失トハ違法有害ノ結果ヲ避クルニ付キ為スヘキ注意ヲ訣如スル状態ヲ指称シ其注意ヲ要スヘキ

程度ハ取引ノ性質各場合二於ケル事物ノ状況等二依リ一様ナラサルモ本件ノ如キ場合二於テハ船員ハ船積運送品二対

シ善良ナル管理者ノ注意ヲ為スヘキモノナレハ普通注意ヲ用フル人力其場合二於ケル事物ノ状況二応シテ為スヘキ注

意ヲ標準トシ其程度二相当スル注意ヲ訣如スルハ過失ニシテ其訣如ノ最モ著シキモノハ重大ナル過失ナルコト疑ヲ容

レス従テ重大ナル過失トハ如上相当ノ注意ヲ為スニ及ハスシテ容易二違法有害ノ結果ヲ予見シ回避スルコトヲ得ヘカ

リシ場合二於テ漫然意ハス之ヲ看過シテ回避防止セサリシカ如キ殆ト故意二近似スル注意訣如ノ状態ヲ指示スルモノ

(7)

トス﹂と判示し︑本件海上保険契約の特約にいう重過失とは故意に近似する注意欠如の状態を指すとの解釈を示した        ︵1︶ うえで︑本件船員の重過失についてはこれを否定した︒

 本件は︑海上保険契約についての商法八二九条が問題となった事案ではなく︑保険荷物の所有者である被保険者の

従業員ではない船員の重過失を免責事由とした約款条項の適用の有無が問題となったものであるが︑同条項にいう重

過失の意義を︑﹁故意に近似する注意欠如の状態﹂と厳格に解釈したこの大審院判決は︑後の失火責任法等に関する事

例において踏襲されることとなった︒

 すなわち︑最判昭和三二年七月九日民集=巻七号一二〇三頁は︑﹁失火ノ責任二関スル法律﹂︵明治三二年法四〇︶

但書にいう重過失に関して︑前記大審院の大正二年判決を引用して︑﹁重大な過失とは︑通常人に要求される程度の

相当な注意をしないでも︑わずかの注意さえすれば︑たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるの

に︑漫然これを見すごしたような︑ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指すもの﹂と判示し︑これと同様の

解釈を示したうえで︑家屋の賃借人が落葉を集めて焚火をした際に︑火が賃貸家屋に移り火災となった事案について︑

・   家屋の出火当時における気象状況︑当該賃借人のなした焚火の場所の選定︑監視の状況その他諸般の事情に照らし︑

    当該賃借人に注意義務を怠った過失が認められるが︑その程度は右にいう重大な過失に達するものではなかったとし        ︵2︶     た原審判決を是認した︒この判決については︑重大な過失の概念は︑ローマ法に由来するが︑ローマ法における重大

    な過失は︑今日の概念からすれば︑損害の発生という結果について当然認識があると客観的に判断されるような場合

    に︑加害の意識はないが敢えて加害を回避する作為または不作為に出ない場合の過失の程度を意味するものと解され︑

    これはほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態と言えるので︑この最高裁判決の示した判断も︑重過失に関する        ︵3︶     ローマ法以来の法的観念に合致し妥当である︑との評価が見られる︒

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七ー二︶ 八七

(8)

八八

 このほか︑最判昭和五一年三月一九日民集三〇巻二号一二八頁は︑国際航空運送についてのある規則の統一に関す

る・条約︵いわゆるワルソー条約︑昭和28年条約17号︒右条約を改正する議定書︵いわゆるヘーグ議定書︑昭和42年条約11号︶によ        る改正前のもの︶二五条一項にいう﹁訴えが係属する裁判所の属する国の法律によれば故意に相当すると認められる

過失﹂の意義について︑﹁同条は︑法廷地法にその決定を委ねているのであるが︑航空機による貨物の運送が船舶に

よる貨物の運送に類似することを考えると︑同条約二五条は︑我が国の商法五八一条を準用する同法七六六条︑国際

海上物品運送法二〇条二項の規定と同趣旨の規定であると解され︑したがって︑﹃故意に相当すると認められる過失﹄

とは︑我が国の法律上﹃重大な過失﹄を意味するものと解するのが相当であり︑運送人は︑その使用人が職務を行う

に当たって重大な過失により貨物を滅失させたときは︑同条約二五条により有限責任に関する規定の適用が排除され

る結果︑荷受人に対し︑その滅失によって生じた全損害額を賠償すべき義務があるものといわなければならない﹂と

判示したうえで︑航空運送人の従業員が︑輸送途中のダイヤモンドの入った木箱を手違いにより積残しまたは荷下ろ

ししたため︑当該木箱が滅失した事案について︑当該木箱の滅失について当該従業員に重大な過失があったことを認       ハら  め︑航空運送人の責任を肯定した︒本件において︑最高裁は︑へーグ議定書による改正前のワルソー条約にいう﹁故

意に相当すると認められる過失﹂を︑商法五八一条を準用する商法七六六条などにいう重大な過失を意味するものと

解しているが︑前記大審院大正二年判決以降︑運送契約における運送人の重過失とは︑通常人のなす注意よりも軽度       ハ   の注意すらしないことで︑ほとんど悪意に近いものと理解されてきたので︑この最高裁判決の示した重過失の意味は︑       ︵7︶ 従来の判例の立場を踏襲したものと言える︒

 このように︑一般民事法上の重過失の意義に関しては︑大審院および最高裁は︑これを厳格に解釈し︑ほとんど故

意に近い著しい注意欠如の状態としてとらえてきた︒このため︑重過失の意義をこのように厳格にとらえる判例の立

(9)

       場は︑すでに確立されているとの評価もみられる︒そしてパこのような判例の流れを受けて︑火災保険契約や動産総

合保険契約等に関する事例において︑商法六四一条および各種の損害保険約款上の重過失の意義についても︑ほぼ同

様の解釈を示す下級審裁判例が︑数多く現れるようになってきた︵例えば︑①東京高判昭和五九・一〇・一五判タ五四〇

号三一〇頁︑②大阪高判平成元・一二・二六金商八三九号一八頁︑③東京高判平成四・一二・二五判時一四五〇号一三九頁︑④東

京地判平成七・八・二八判タ九一〇号二〇六頁︑⑤旭川地判平成九・一二二一日判タ九四四号二五三頁︑⑥東京高判平成一〇・

四・二三判タ一〇三二号二六七頁︑⑦熊本地判平成=・三・一七判タ一〇四二号二四八頁︑⑧大阪高判平成一四・一二・二六判

時一八四一号一五一頁︑⑨神戸地判平成一五・五・一四判例集未登載︵目×\OUdインターネット目○法律情報データベース・文献

番号二八〇八二一四七︶︑⑩東京地判平成一五・六・二一二金商一一七五号二頁など︶︒

 このうちごく最近の事例を見てみると︑例えば︑前記⑧大阪高裁平成一四年判決は︑自動車保険契約の被保険者A

が自動車を運転中に︑踏切上で電車と衝突し即死したという事案であるが︑本件事故の発生につき︑Aに人身傷害補

償条項にいう﹁極めて重大な過失﹂があったかという点について︑裁判所は︑まず︑この約款にいう﹁極めて重大な

過失﹂とは︑﹁損害保険給付について免責事由を定める商法六四一条及び八二九条にいう﹃重大ナル過失﹄と同趣旨

のものと解され︑その意義は︑通常人に要求される程度の相当の注意をしないでも︑わずかの注意さえ払えば︑たや

すく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに︑漫然とこれを見過ごしたような︑ほとんど故意に等し

い注意欠如の状態をいうものと解するのが相当である﹂との一般論を示した︒そして︑本件では︑Aの運転した車が

オートマチック車で︑踏切の前でフットブレーキのみを用いて停止していたから︑フットブレーキが緩まないよう注

意すべき義務があったにもかかわらず︑何かに気をとられるなどして足がブレーキペダルから離れた結果︑フットブ

レーキが緩み︑本件踏切内に進入してしまったAの行為が過失に当たることは否定できないが︑Aは︑警報機︑遮断

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七ー二︶ 八九     .

(10)

九〇

棒に従って本件踏切の手前で停止し︑電車の通過を待っていたこと︑踏切の前で停止する際︑サイドブレーキを引い

たり︑ギアをパーキングにすることは交通法規で義務付けられているわけでもないことから︑本件踏切に進入する直

前のAの行為は︑通常の運転行為にすぎなかったものと解され︑Aの足が何らかの理由でブレーキペダルから離れ︑

A車が前進を始めてから本件事故に至るまでの時間は二︑三秒程度に過ぎず︑Aの不注意はほんの一瞬の出来事とい         うことができ︑これをもって故意に等しい注意欠如と決めつけることはできないとして︑重過失の成立を否定した︒

 また︑前記⑨神戸地裁平成一五年判決は︑居住しているマンションの一室を目的物として︑火災保険契約および火

災共済契約を締結したXが︑火災により自宅が焼失したとして︑▽保険会社および罷共済連合会に対し︑火災保険金

および火災共済金の支払を求めた事案であるが︑Yらの重過失免責の抗弁に対しては︑裁判所は︑本件火災は︑Xが

紙の空き箱で作成した仏壇の前の燭台に立てた蝋燭に点火し︑そのまま外出していた間に︑蝋燭が風に煽られて転倒

し︑仏壇の側辺に着火し延焼拡大して︑本件火災が起きた可能性が大きいが︑本件火災が発生したことについては︑

多くの不幸な偶然が重なったために︑たまたま火災になったもので︑﹁Xが︑本件火災発生直前︑本件建物の各部屋

の窓や扉を開け放ち︑蝋燭の火を消し忘れて外出したことについては︑蝋燭の火から火災になる予見可能性がなかっ

たとまではいえないので︑過失があったことは認められるが︑重大な過失があったものとは認めることができない﹂

と結論づけたうえで︑前記最高裁昭和三二年判決は︑﹁失火責任法上の重過失については︑失火者にほとんど故意に

近いような著しい注意欠如があった場合でない限り︑重過失を認めておらず︑相当ひどい程度の過失があると思われ

る事例であっても︑重過失を認め難いと判断していることが分か﹂り︑﹁本件火災保険約款︑火災共済約款上の重過

失の意義についても︑失火責任法上の重過失の意義についての上記最高裁判決の判断が参考となる︒そうすると︑本

件火災についても︑前記⁝で認定したように︑原告には重過失がないことが︑失火責任法上の重過失の意義について

(11)

の上記最高裁判決の判断からも裏付けることができる﹂と判断し︑Xの重過失を否定する本件結論は︑失火責任法上

の重過失の解釈によっても正当化されるとした︒ただ︑Xは︑妻子との離婚・別居の事実を秘匿し︑世帯人員を実際

よりも多く申告することによって︑より多くの被害認定が得られるものと期待して不実の申告を行ったとして︑不実

申告による共済金の支払免責を認めた︒

 さらに︑前記⑩東京地裁平成一五年判決は︑たばこの不始末により倉庫で火災が発生し︑保管していた商品が焼水

汚損した事案であり︑本件火災事故の発生につき︑保険契約者たるX会社の代表者に火災保険約款所定の免責事由た

る故意または重大な過失があったか否かなどが争われたが︑重過失の有無という点に関して︑裁判所は︑﹁重過失免

責を定めた本件約款は︑商法六四一条の規定を具体化したものと解するのが相当であるところべ同条の規定は︑信義

則ないしは公序良俗を一般化したものであり︑重過失免責の成立範囲は限定的に解釈するのが相当である︒加えて︑

保険制度︑保険法の分野における免責事由としての重過失とは︑通常人に要求される程度の相当の注意をしないでも︑

僅かの注意さえすれば結果を予見することができた場合であるのに︑漫然とこれを見過ごしたような︑ほとんど故意

に近い著しい注意欠如の状態をいうと解するのが相当であるとされており︑本件保険約款における重過失免責の意義

も同様に解するのが相当である﹂と判示したうえで︑本件倉庫内での火災の発生については︑確かに周りに火がつき

やすい紙類があったにもかかわらず︑たばこの火が消えているのかを確認しなかったことについて︑X代表者に注意

義務違反があるとしても︑X代表者はたばこの火を消したという認識を有していたこと︑出火現場や本件倉庫内に

あったのは︑一般的に燃えにくいとされる革製品であり︑この上にたばこの火がこぼれ落ち︑三︑四時間にわたって

無炎燃焼を続けた末に出火することは一般的には想定しにくいことから︑僅かの注意さえすれば結果を予見すること        ︵10︶ ができたのにこれを見過ごしたとまでいうことは困難であるとして︑重過失の成立を否定している︒

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七ー二︶ 九一

(12)

九二

 以上のように︑商法六四一条およびこれを具体化した各種の損害保険約款上の免責事由たる重過失の意義について

は︑近時の多数の下級審裁判例は︑貨物海上保険契約に関する前記大審院大正二年判決および失火責任法に関する最

高裁昭和三二年判決の立場を踏襲し︑これを限定的に解釈し︑ほとんど故意に準ずるものとしてとらえてきているこ

とが分かる︒

 学説においても︑商法六四一条の重過失の意義について︑これを厳格にとらえる立場が多数である︒この立場をと

る学説の特徴としては︑個別の事案において︑保険者が故意による事故招致を立証するのが困難であることから︑い

わば保険者による︵故意の︶立証の困難を救済するために︑重過失を故意の代替概念としてとらえている点である︒

例えば︑田辺教授は︑保険契約者または被保険者の重大な過失によって生じた保険事故による損害について︑保険者

の免責が認められているが︑これは一般に︑故意の立証が困難なため︑重過失を立証することによって︑実際上故意

をとらえるためのものと解されるのであり︑したがって︑この重過失はなるべく狭く解し︑準故意ともいうべきもの       ︵H︶ に限定すべきであると結論づけられる︒また︑石田教授は︑重大なる過失とは︑通常人が一般に尽くすべきである注

意を著しく欠くことをいうとしながらも︑商法では︑一般に﹁悪意﹂とならべて﹁重大なる過失﹂を主観的要件とし

ているが︑このことは︑一般に﹁悪意﹂の立証は難しいので︑﹁重大なる過失﹂をこれとならべているのだ︑と説明      ︵12︶ しておられる︒さらに︑江頭教授も︑保険契約者または被保険者の重過失による事故招致が免責事由とされている理

由は︑悪意の立証が困難ケースが多いからであり︑したがってここにいう重過失は︑悪意に準ずる狭い範囲に限定し        ︵13︶ て解すべきであると述べておられる︒

 もっとも︑以上の多数説に対し︑商法六四一条および各種の損害保険約款上の重過失免責については︑それが現実

には故意免責を補完する役割を果たしている面があることを認めながらも︑重過失の意義については︑ほとんど故意

(13)

に近い不注意と解する必要はなく︑一般人を基準とすれば甚だしい不注意であれば足り︑故意が高度に疑われる場合       ︵14︶ に限り重過失免責を適用するというような限定的解釈をすべきではない︑とする見解も有力に主張されている︒

 他方︑民法の領域においては︑重過失の問題は︑失火責任法に関連して論じられることが多い︒民法の学説におい

ても︑前記失火責任法に関する最高裁昭和三二年判決と同様︑重過失を﹁ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態﹂

      ︵15︶      ︵16︶ と解する見解が有力であるが︑単に﹁著しく注意義務を欠いたもの﹂ととらえる見解も少なくない︒ただ︑後者の見

解に対しては︑平井教授は︑このような解釈は同語反復的説明にとどまり︑甚だ明確さを欠いていると批判したうえ

で︑理論的には︑過失概念の要素たる予見義務をもっぱら意思の緊張を欠くために予見できなかったことによって

怠ったことと考えるべきであり︑予見義務は︑損害回避義務と同じく規範的判断によって生じるが︑客観的な行動の

逸脱によってこの義務に違反したと判断されるべきではなく︑意思の緊張を欠いたことによる怠りという点で︑通常

の過失とは性質を異にし︑故意に近くなるが︑加害の意思ではないという点で︑故意とも異なっていると考えるべき       ︵17︶ である︑と主張しておられる︒

2 災害関係特約および共済契約にいう重過失の意義

 生命保険の災害関係特約または共済契約の災害給付特約における重過失の意義をめぐっては︑判例・学説上争いが

多い︒これまでの裁判例を見てみると︑おおよそこれを次の三類型に区分けすることができるように思われる︒

 まず︑第一類型としては︑災害関係特約等にいう重過失を商法六四一条の重過失と同趣旨のものと解したうえで︑

前述した損害保険契約に関する判例と同様︑重過失の意義を厳格に解釈し︑これを故意に準ずる注意欠如の状態を指

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七ー二︶ 九三

(14)

九四

すものとしてとらえるというタイプのものが挙げられる︒

 裁判例のうち︑代表的なものとしては︑①大阪地判平成元・二・二一二判時=二二六号一四七頁が挙げられる︒これ

は︑被保険者Aが従兄のBと飲食店で飲酒後に喧嘩となり︑出刃包丁を持ち出したBに丸太棒で殴りかかったところ︑

刺し殺されたという事案であり︑生命保険の災害関係特約に基づく重過失免責の可否が争点となった︒裁判所は︑本

件では︑Aは︑Bから出刃包丁で反撃を受け︑ひいて自己が死亡するに至る可能性があることことを十分に予見でき

たはずであるから︑過失があったことは明らかであるが︑災害関係特約にいう重大な過失とは︑商法六四一条後段に

いう重大な過失と同趣旨のものと解すべきであり︑﹁被保険者の不注意が著しいばかりでなく︑右不注意による保険

事故招致が故意によるものと同視しうるほどに悪質であるため︑具体的事案のもとにおいて当該事故により保険金を

支払わせることが信義則上不当とされる場合をいうと解するのが相当である﹂と判示し︑本件事故当時︑Aは泥酔状

態で正常な知覚や判断能力を喪失していたこと︑その攻撃に対し出刃包丁を持ち出したBの非が大きいことなどの事

情によれば︑﹁なるほどAには前記のとおりBから反撃を受けて自己が死亡するに至る可能性を予見しなかった過失

があるものの︑これはAが泥酔のために正常な知覚や判断能力を失っていたからであるとの疑いが強く︑しかも右泥

酔がAとしては異例の深酒に起因していることに照らすと︑右過失をもって著しい不注意であったと断定するには躊

躇があり︑かつ⁝⁝本件事故は全体としてみるとBの非の方が大きいと認められること︑さらには本件保険契約の締

結から本件事故まで既に二年余以上の期間が経過しており︑また本件全証拠によってもAが本件保険契約を念頭にお

いてBと対決した事実を認めえないことをも合わせ考慮するならば︑Aの右過失による本件事故招致が故意によるも

のと同視しうるほどに悪質であり︑信義則上保険金請求権の成立を阻止すべき事案であるとは未だ認められない﹂と        ︵18︶ して︑Aの重過失の成立を否定した︒

(15)

 この判決が重過失を故意と同視しうる場合に限定している点では︑従来の損害保険契約に関する判例の立場と同様

   ︵19︶ であるが︑﹁保険金を支払わせることが信義則上不当とされる場合﹂も︑重過失による免責を認めるための要件の一

つとされている点では︑従来の判例よりも一層厳格に重過失の意義をとらえていると言える︒

 また︑②大阪地判平成一三・六・一五交通事故民事裁判例集三四巻三号七五八頁は︑訴外Bがその運転する大型ト

ラックを横断歩道手前で信号待ちにより停車させたところ︑保険契約者兼被保険者Aが酒に酔った状態でBの車両運

転席外側ステップによじ登り︑窓ガラスを連打し大声で叫び出すなどしたことから︑Bは同人と関わり合いになるこ

とをおそれ︑Aの動静を十分に確認しないまま車両を時速約10キロメートルの速度で進行させ︑同車運転席ステップ

から路上に転落し転倒していたAを右前輪で礫過し死亡させたという事案であるが︑災害保険金の免責事由である重

過失の有無という点について︑裁判所は︑まず︑失火責任法に関する最高裁昭和三二判決を引用し︑﹁﹃重過失﹄の意

味については︑一般民事法上にいう﹃重過失﹄と特段別異に解すべき理由はないから︑﹃通常人に要求されている程

度の相当の注意をしないでも︑わずかの注意さえすれば︑たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であ

るのに︑漫然これを見過ごしたような︑ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指すもの﹄と理解するのが相当

である﹂との一般論を示した︒そして︑Aに重過失があったかという点については︑本件では︑確かに︑Aが酒に

酔った状態で停車中のB車両の運転席外側ステップによじ登り︑運転席側窓ガラスを手拳で殴打する行動に出たこと

は軽率のそしりを免れないが︑本件事故は︑Aが運転席外側ステップに乗ってB車両にしがみついていることを認識

しながら︑しかも対面の信号が赤だったにもかかわらず︑Bが車両を十数メートルにわたり時速約10キロメートルに

加速させながら走行させた行為に起因して発生したこと︑停車中の車両のステップによじ登り運転席窓ガラスを手拳

で叩くというAの行為は必ずしも運転者を差し迫った危険に直面させるものとはいえないこと︑運転者が交通法規を

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七ー二︶ 九五

(16)

九六

無視して車両外に掴まっている人が転落するかもしれない危険を敢えて冒して車両を進行させるという行動に出るこ

とは︑通常人にとって予見可能とは言い得ないこと︑上記Aの行為それ自体には必ずしも車両に礫過されて死亡する

に至るということまでの具体的な危険性が認められないことなどからすれば︑﹁Aがわずかの注意によって有害な結

果を予見することができたのに漫然とこれを見過ごし︑ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態により本件事故を

惹起したものとまではいうことができない﹂と判断した︒

 以上のように︑災害関係特約または災害給付特約上の重過失の意義を厳格にとらえ︑これを故意に近い著しい注意

欠如の状態を指すものと解する裁判例としては︑このほかにも少なからず存在している︒例えば︑③大阪地判平成

元・三・一五判時二三一八号一一一頁︑④京都地判平成元・六・二八文研生命保険判例集六巻三九頁︑⑤大阪高判平

成元・一二・二六判タ七二五号二一〇頁︑⑥札幌地判平成二・七・一一文研生命保険判例集六巻二一一頁︑⑦大阪高

判平成四・六・一九文研生命保険判例集七巻九〇頁︑⑧仙台地判平成五・五・=判時一四九八号一二五頁︑⑨盛岡

地判平成七・六・二九生命保険判例集八巻一六三頁︑⑩福岡地判平成八・八・二八生命保険判例集八巻六〇二頁︑⑪

京都地判平成九・一・二四生命保険判例集九巻四一頁︑⑫大阪高判平成九・一〇・二四生命保険判例集九巻四四八頁︑

⑬松江地判平成九・一二・一八生命保険判例集九巻五六七頁︑⑭名古屋地判平成一四・一〇・二五交通事故民事判例

集三五巻五号一四〇八頁などは︑いずれもこの類型に属するものである︒そして︑このように重過失の意義を狭く解

釈していることから︑この類型の裁判例においては︑保険事故の発生についての保険契約者または被保険者の重過失

を否定するものが多い︵前記事例のうち否定例としては︑③︑⑤︑⑧〜⑩︑⑫︑⑭の各判決がある︶︒

 そして︑学説においても︑災害関係特約等にいう重過失の意義に関して︑重過失が故意とともに免責事由として併

記されていること︑他の免責事由︵例えば精神障害または泥酔の状態を原因とする事故など︶に比べて︑重過失免責

(17)

の適用範囲が不明確で︑保険者の裁量の余地があること︑リスクが多様化している現実の社会において保険契約者が

自己の不注意が保険で担保されるとの期待を有していること︑損害保険会社の扱っている傷害保険契約の多くが被保

険者の重過失を免責事由としておらず︑これとの均衡も考える必要があることなどから︑重過失の意義を極力狭く解       ︵20︶ すべきであるとの見解が多い︒

 次に︑第二類型は︑災害関係特約または災害給付特約にいう重過失を商法六四一条所定の重過失と同趣旨のものと

とらえながらも︑これを﹁注意義務違反の程度が顕著であるもの﹂︑もしくは単に﹁通常の過失に比べ注意を著しく

欠くこと﹂と解して︑またはこのような一般的な解釈を特に示すことなく︑端的に当該事案における具体的事情に基

づいて保険契約者または被保険者の重過失の有無を判断する︑というタイプのものである︒この類型に属する裁判例

は︑公表されたものとしては︑既に昭和三〇年代から五〇年代にかけて数件見られるが︵東京地判昭和三四・一・二八

判時一八一号二二頁︑大阪地判昭和四七・七二一二判時六八二号七六頁︑大阪高判昭和五五・九・二四判タ四四〇号一四六頁︑大

阪地判昭和五七・一・二八判タ四六三号一四一頁︑大阪高判五七・五・一九判時一〇六四号二九頁︶︑平成に入ってからは飛

躍的にその数を増やしてきている︒例えば︑①大阪高判平成二・一・一七判時一三六一号一二八頁︑②名古屋地判平

成三・二・二二文研生命保険判例集六巻二九六頁︑③大阪地堺支判平成三・一〇・三一文研生命保険判例集六巻四二

〇頁︑④福岡地判平成六・六・一五文研生命保険判例集七巻三七〇頁︑⑤新潟地判平成六・七・一九文研生命保険判

例集七巻三九八頁︑⑥東京地判平成七・四・一九生命保険判例集八巻二一頁︑⑦東京高判平成八・九・=生命保

険判例集八巻六二八頁︑⑧大阪地裁岸和田支判平成九・二・二五生命保険判例集九巻一〇七頁︑⑨広島地判平成九・

一〇・八生命保険判例集九巻四二二頁︑同控訴審である⑩広島高判平成一〇・三・一七生命保険判例集一〇巻一二一

頁︑⑪東京地判平成九・一〇・二七生命保険判例集九巻四四三頁︑⑫仙台地判平成一〇・三・一九生命保険判例集一

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七−二︶ 九七

(18)

       九八

〇巻一二一二頁︑同控訴審である⑬仙台高判平成一〇・一〇・二〇生命保険判例集一〇巻四〇一頁︑⑭福岡高判平成一

〇・一〇・二三生命保険判例集一〇巻四〇三頁︑⑮東京地判平成=二・一二・五判例集未登載︵目×\Ob︒インターネッ

ト目O法律情報データベース・文献番号二八〇七〇六六七︶︑⑯大阪高判平成一三・一二・二一判例集未登載︵曼\OCdイン

ターネット目O法律情報データベース・文献番号二八〇七一一八︶︑⑰札幌高判平成一六・一二・二二通事故民事裁判例集

三七巻六号一五六七頁︑⑱広島高判平成一七・一・二五保険事例研究会レポートニ〇五号一頁︑などが挙げられる︒

この類型の裁判例のうち︑故意の事故招致とまでは断定できないものの︑被保険者の常軌を逸するような行為によっ

て事故を引き起したため︑いわば故意による事故招致に限りなく近いケースについて重過失ありと認定されたものも

確かに存在するが︵例えば︑被保険者が泥酔状態で交通量の激しい自動車道路に進入した結果︑車に衝突され死亡した⑤新潟地

裁平成六年判決︑真夜中の薄暗い道を自動二輪で制限速度の二倍の高速で蛇行運転しながら︑他の車両に対し幅寄せ・空ぶかしな

どの行為を行い︑その結果他の車に衝突され死亡した⑥東京地裁平成七年判決など︶︑他の多くの事例では︑災害関係特約等

にいう重過失の意義を比較的に緩やかに解しているため︑保険事故発生についての保険契約者または被保険者の重過

失が比較的に容易に認められているように見受けられる︵前記事例のうち重過失が否定されたのは︑わずか⑰札幌高裁平成

一六年判決ぐらいである︶︒

 前述のように︑第一類型の①大阪地裁平成元年判決は︑被保険者Aが従兄のBに飲酒後の喧嘩で刺し殺された事案

についてAの重過失を否定したが︑その控訴審判決である第二類型の前記①大阪高裁平成二年判決は︑災害関係特約

にいう重過失は商法六四一条所定の重過失とは同趣旨のもので︑﹁注意義務違反の程度が顕著であるもの︑すなわち︑

わずかの注意さえ払えば違法︑有害な結果を予見することができたのに︑右注意を怠ったために右結果を予見できな

かった場合をいうと解すべきであ﹂り︑﹁具体的にどのような場合に保険金の支払を認めないことにするかは︑⁝⁝

(19)

当該保険約款に定める各免責事由の文言に従って決定されるべきものであ﹂って︑﹁重過失の意義を特別狭く解すべ

き理由はない﹂と判示したうえで︑本件事故当時︑Aの泥酔の程度はさほどでなく︑自己の攻撃に対しBが包丁を使        ︵21︶ 用する可能性は予見できたとして︑原判決とは逆に︑Aの行為が重大な過失に該当すると判断したのである︒

 原審の大阪地裁判決が重過失の意義を厳格に解釈して︑Aの過失を否定したのに対し︑この高裁判決が﹁重過失の

意義を特別狭く解すべき理由はない﹂として︑逆にAの重過失を認定したという点を見ると︑本件事案解決の具体的        ︵22︶ 結論が異なったのは︑重過失についての解釈の違いによるところが大きいと見ることができる︒

 また︑同じく第一類型の②大阪地判平成一三判決は︑前述の通り︑酒に酔った被保険者Aが停車中のB車両によじ

登って窓ガラスを連打するなどしたため︑BがAの動静を十分に確認しないままB運転車両を発進させたことにより︑

路上に転落していたAを礫過し死亡させた事案について︑Aの重過失を否定したが︑その控訴審判決である第二類型

の前記⑯大阪高裁平成=二年判決は︑ほぼ同様の認定事実を前提に︑﹁亡Aの訴外Bに対する行動は︑相当酒に酔っ

ていたとしても︑過失行為ではなく故意に基づくもので︑何の落ち度もない訴外Bを著しく困惑させるものであった

ことは明らかで︑B車両を発進させて亡Aを礫過した訴外Bの行為に先行しているのであり︑本件事故は亡Aの先行 −

した行動がなければ起こり得なかった﹂から︑﹁亡Aの行動は︑自ら本件事故を招いたと評価し得るものといってよ﹂

く︑﹁本件事故を﹃不慮の事故﹄に該当するとみることには疑問があり︑仮にこれを﹃不慮の事故﹄とみることがで

きるとしても︑本件事故の発生について亡Aに重大な過失があったことが明らかである﹂と判示し︑原判決を取り消

した︒この高裁判決は︑重過失の意義については特に具体的な解釈を示していないが︑仮にAの行為が故意によらず︑

それゆえ不慮の事故が成立するとしても︑重大な過失に当たるとして︑原審とは逆に︑重過失の成立を認めたのであ

る︒ここにも︑ほぼ同様の認定事実について異なる法的評価がなされたのは︑重過失の意義についてのとらえ方の相

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七ー二︶ 九九

(20)

一〇〇

違によるものと考えられる︒

 このように︑近時の多くの裁判例は︑災害関係特約または災害給付特約にいう重過失の意義を相当緩やかに解釈し

たうえで︑保険事故の発生時の具体的な諸事情から保険契約者または被保険者の重過失を積極的に認定していること

が分かる︒この類型の裁判例が多く現れるようになってきた背景には︑生命共済契約に関する最判昭和五七・七・一

五民集三六巻六号一一八八頁がある程度影響しているものと推測される︒

 これは︑農業協同組合の養老生命共済契約の被共済者Aが︑夜間飲酒酩酊のうえ車の運転を開始し︑屈曲した道路

を前方注意義務を怠ったまま制限速度を三〇キロ以上超える高速度で運転し︑道路右側に駐車中の車に衝突して死亡

したという事案であるが︑最高裁は︑災害給付金および死亡割増特約金の免責事由たる被共済者の重大な過失を︑

﹁損害保険給付についての免責事由を定める商法六四一条及び八二九条にいう﹃重大な過失﹄と同趣旨のものと解す

べき﹂であるとしたうえで︑本件被共済者Aは﹁極めて悪質重大な法令違背及び無謀操縦の行為によって自ら事故を

招致したものというべきであるから︑右は本件共済契約における免責事由である﹃重大な過失﹄に該当するものと解       ︵23︶ するのが相当である﹂と判示し︑原判決を維持した︒

 この最高裁判決の原審︵名古屋高裁昭和五六年八月二〇日判決︶および第一審判決︵名古屋地裁豊橋支部昭和五五年八月四

日判決︶は︑商法六四一条の重過失に該当するか否かは︑﹁被保険者と同種の職業地位にある者に課せられる注意義務

の程度︑当該人が右注意義務を怠った程度︑これに対し向けられるべき社会的非難の程度︑等を考え合せて︑同事故

に対し保険給付をなすことが保険団体に対する信義に反し︑公序良俗に反するか否かにてらし決すべきものであり︑

故意に近似する注意欠如の状態である必要は必ずしもな﹂く︑共済契約における重過失免責条項の解釈もこれと同様

に考えてよいと判示していることから︑原審を維持した本件最高裁判決も︑この原審および第一審における重過失に

(21)

関する前記解釈を是認し︑本件約款にいう重過失の適用はほとんど故意のようにみえるが主観的意図ありと断定しが

たい場合に故意の代替概念として使用されるような場合に限るという考え方を排斥したもの︑と理解する有力な学説

  ︵24︶ がある︒

 もしこのような理解が正しいとすれば︑この最高裁判決は︑一般民事法上の重過失概念を厳格にとらえてきた︵失

火責任法に関する︶最高裁昭和三二年判決以降の判例の流れとは逆に︑重過失の概念についての弾力的な解釈に途を開

いたことになり︑重過失の意義を広くとらえることによって保険契約者または被保険者の重過失を積極的に認定する

近時の多くの下級審裁判例は︑この最高裁判決の立場を事実上踏襲しているという位置づけになろう︒しかし︑注意

すべきなのは︑この最高裁昭和五七判決が事例判例とされたため︑商法六四一条ないし約款上の免責事由たる重大な

過失の意義について︑その具体的な解釈を示しておらず︑°単に︑共済契約における免責事由たる重大な過失が商法六

四一条と同趣旨のものであること︑また原審で認定された事実への当てはめとして︑被共済者に重大な過失があった

ことを認めたに過ぎない︑という点である︒すなわち︑本件最高裁判決は︑本件事故の原因となった被共済者の深夜

の飲酒運転︑スピード違反︑前方不注意等の違法運転・無謀運転などの認定事実から被共済者に重過失があったとす

る結論について︑これと同趣旨の原判決を正当として是認しただけであって︑原審および第一審判決の重過失につい

ての具体的な解釈を正当としたものではない︒むしろ︑判旨の﹁極めて悪質重大な法令違背及び無謀操縦の行為に

よって自ら事故を招致した﹂という判示部分で︑重過失の解釈につき﹁極めて悪質重大な法令違背及び無謀操縦の行

為﹂という絞りをかけていること︑また本件事故を﹁自ら⁝⁝招致した﹂ものとも評価していることからすれば︑本

件最高裁判決も︑本件のような限りなく故意の事故招致に近い事案について重過失の成立を認めたに過ぎない︑とい

うことができる︒したがって︑本件最高裁判決が商法六四一条を援用したからといって︑重過失の解釈につき大審院        〜

   重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶      ︵都法四十七⊥一︶ 一〇一

(22)

一〇二

以来の最高裁判例とは異なった判断基準を立てたものと解するのは困難ではないかと考えられる︒実際に︑本件最高

裁判決の調査官解説も︑﹁民事上﹃重大な過失﹄を要件とする諸規定の中︑特に商法六四一条後段に依拠する保険契

約における免責条項についてのみ︑特別の﹃重大な過失﹄概念ないし判定基準を定立しなければならない必要がある

のか⁝⁝疑問である︒⁝⁝本判決の前掲判示事項を注意深く読むかぎり︑少なくとも第一小法廷は︑最高裁が保険制

度︑保険法の分野における免責事由としての﹃重大な過失﹄の判定基準を二元的に考えることにより︑ひいては﹃重

大な過失﹄の概念︑定義づけを変えてしまうことは必要ではないと考えているものと理解できよう︵また︑そう理解        ︵25︶ すべきであろう︒︶﹂と指摘しており︑また︑学説においても︑この最高裁判決が重過失について述べている部分は︑        ︵26︶ 従来の判例における重過失の解釈と同様のものであると指摘する見解が少なくない︒

 もっとも︑学説においては︑生命保険の災害関係特約等にいう重過失を特別の意味に解する必要がないとの立場か       ︵27︶ ら︑重過失の意義を弾力的に解釈するこの第二類型の裁判例の立場に賛成する見解も多い︒

︑     最後に︑第三類型に属する裁判例は︑重過失をこれまでの裁判例とはやや異なる意味に解するものであり︑秋田地

     判昭和三一・五・二二下民集七巻五号=二四五頁のとる立場である︒

      これは︑被保険者Aがオートバイを運転し︑鉄道の駅間の線路踏切を横断しようとした際︑オートバイの車輪が進

     行してきた列車の機関車に触れてオートバイから放り出されて死亡したという事案であるが︑裁判所は︑︑Aが軽自動

     二輪車による遠乗経験が少ないのに制限速度に反し時速六〇キロを超える速度で運行し︑かつ踏切で一時停車の措置

     をも採らず︑踏切を通過しようとしたことは事実であるが︑Aの運行した国道は市街地を離れた交通量の少い場所で

     あり︑かつ踏切手前四〇〇メートルまでは視野をさえぎる障害物もなく︑列車の運行も容易に予知し得る地形状況下

     において︑列車より相当距離を先行していたため列車が追走してくるのを全然予知せず︑自車の爆音と切通し小山に

(23)

さえぎられて警笛を聴き洩らし︑列車の接近を知覚し得なかったのみならず︑反対方向より踏切を横断してくるバス

を認めたことなどから踏切通過を安全と思料したような本件の場合においては︑被保険者Aに過失があるといい得て

も︑重大な過失ありとは言えず︑﹁保険者の一方的に決定された約款に基いてのみ契約をなし得るに過ぎない保険契

約のような附合契約の場合においては︑一般人が容易に理解し得るよう規定するを望ましいものというべく︑保険契

約における免責条項においては殊更に条項の概念の明確は望ましいものというべきを以て︑本件免責条項としての

﹃重大な過失﹄という如き抽象的条項の解釈に際しては附合契約における一般人の理解という点を考慮してなさるべ

き﹂であり︑﹁右の点から理解すれば︑被保険者の重大な過失とは︑保険者に免責を与えることが当然であると一般       ︵28︶ 人が認め得るような被保険者の過失と解すべ﹂きであるとして︑Aの重過失を否定した︒

 この判決の特徴としては︑前記第一類型および第二類型の裁判例とは異なり︑重過失の概念について︑保険者に免

責を与えるのが当然だと一般人が認める得るような被保険者の過失という基準で判断することである︒これは︑実質       ︵29︶ 的には︑保険者が免責される範囲を従来の判例の場合よりも狭く限定することを意図したものであり︑このため︑重       ︵30︶ 過失の意義を厳格にとらえる学説からは︑この判決の打ち出した重過失の判断基準が支持されている︒

 しかし他方︑この判決に対しては︑災害関係特約上の重過失をこの判決の言う意味に解する合理的な理由に乏しい

こと︑この解釈では軽過失との限界付けが困難となること︑また︑生命保険会社の災害関係特約と損害保険会社の傷

害保険契約とで填補範囲が異なっている現状では︑=般人の理解﹂とはいかなるものかを知るのが容易ではないと         お  いった批判もあり︑実際に︑その後︑この判決の立場をそのまま踏襲した裁判例は見あたらないようである︒

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶       ︵都法四十七ー二︶ 一〇三

(24)

一〇四

3 重過失による保険事故招致の効果

 商法六四一条後段によれば︑保険契約者または被保険者の悪意もしくは重大な過失によって生じた損害は﹁保険者

が之ヲ填補スル責二任セス﹂︑とされている︒すなわち︑故意または重過失による保険事故招致の場合には︑保険者

免責という効果が認められるわけである︒そして︑火災保険約款など各種の損害保険約款および生命保険の災害関係

特約においても同様である︒

 このように︑現行商法では︑重過失による保険事故招致は︑故意の場合と同様︑保険者免責とされているが︑商法

六四一条の立法過程を見てみると︑旧商法では重過失に文る事故招致の場合について保険者免責の効果が認められて       ︵32︶ いなかったことが分かる︒

 すなわち︑現行商法六四一条の基礎となったロエスレル氏起稿の商法草案第六九五条は︑﹁被保険者已ヲ得サルニ

非スシテ躬ヲ随意二起シ或ハ起サシメタル紛失或ハ損害又ハ保険物ノ性質功用或ハ固有暇瑳二由テ直接二生シタル紛       ︵33︶ 失或ハ損害ハ保険者之ヲ賠償スルノ義務ナキ者トス﹂という規定であった︒ここでは︑被保険者が﹁随意二起シ或ハ

起サシメタル紛失或ハ損害﹂︑すなわち︑任意︵故意︶に招致した損害についてのみ保険者が賠償する義務を負わな

いとされ︑重過失については保険者免責という効果が認められていなかったのである︒その理由として︑﹁夫レ保険

ハ百般ノ不随意ナル損害ヲ担保スヘキモノナレハ縦ヒ怠慢ヨリ自カラ起シタル損害トテモ其大小ヲ論セス之ヲ担保ス

ヘキハ当然ナリ凡ソ人ノ怠慢ナキヲ保スヘカラサルコトニシテ自己ノ過失二対シ保険ヲ為サシムルモ禁スヘキニ非ス

然レモ若シ保険ヲ受ケタルノ故ヲ以テ故ラニ怠慢ノ行為アルニ於テハ之力為メニ実二生シタル損害二就キ賠償ヲ受ル

ノ限二非ルナリ何トナレハ是レ好テ自カラ危険ヲ招キタル者ナレハナリ⁝⁝太過ハ故意ト同視スヘシトハ一般是認ノ

(25)

典則タリ以テ甚タ注意ヲ怠ルモノハ随意二変事ヲ起サント欲セシニ非サルヤノ嫌疑ヲ受クヘシト難モ是レ必然トスル        ︵34︶ ヲ得ス若シ故意ノ怠慢タルノ証ナキニ於テハ太過タリト難モ要償権ヲ失ナフノ理由ナキモノナリ﹂と説明されている︒

要するに︑人間に対し︑怠慢すなわち不注意・過失のないことを求めることはできないから︑過失については大小を

間わず担保すべきであるのに対し︑自ら故意に危険を招いた者は賠償を受けることができず︑また重過失︵太過︶は

一般に故意と同視されるが︑甚だ注意を怠ることは故意に事故を起こしたものとはいえず︑故意であるという証明が       ︵35︶ ない限りは︑重過失であっても賠償請求権を失う理由はない︑という考え方である︒

 そして︑このロエスレル氏の草案を受けて︑旧商法︵明治二三年法三二号︶六三五条は︑﹁被保険者力巳ムヲ得サル

ニ非スシテ任意二加へ若クハ加ヘシメタル喪失若クハ損害又ハ被保険物ノ性質︑固有ノ毅疵若クハ当然ノ使用二因リ

テ直接二生シタル喪失若クハ損害二付テハ保険者ハ賠償ヲ為ス義務ナシ﹂と規定していた︒ここでも︑故意の保険事

故招致のみが保険者免責とされていた︒

 ところが︑旧商法を改正するための法典調査会商法委員会議事要録では︑保険事故招致免責の規定は第三一三条と

して︑﹁保険契約ノ目的ノ性質︑蝦疵︑其自然ノ消耗︑保険契約者又ハ被保険者ノ故意若クハ重大ナル過失二因リテ        ︵36︶ 生シタル損害二付テハ被保険者ハ保険者二対シテ其填補ヲ請求スルコトヲ得ス﹂と規定された︒ここにおいて初めて

﹁重大な過失﹂という文言が付け加えられたが︑その理由について︑同議事要録は︑﹁重大ノ過失アル場合モ保険者力

之ヲ賠償スルハ酷ナリト考フ然レトモ亦重大ナラスシテ僅少ノ過失アル為メ賠償ノ責任ヲ免ルルハ不都合ナリ﹂と説

    ︵37︶ 明している︒要するに︑重大な過失による事故招致の場合について賠償責任を認めることは︑保険者にとっては酷で       ︵38︶ あるから︑保険者免責としたのだという︑いわば保険者保護の考え方に立っていた︒

 その後︑商法修正案理由書では︑事故招致免責規定は三九五条として定められ︑﹁保険ノ目的ノ性質若クハ暇疵︑

重過失による保険事故招致と保険者免責の再検討︵一︶      ︵都法四十七ー二︶ 一〇五

参照

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